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特許6992760パルプ、スラリー、シート、積層体及びパルプの製造方法
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  • 特許-パルプ、スラリー、シート、積層体及びパルプの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】パルプ、スラリー、シート、積層体及びパルプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/20 20060101AFI20220105BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20220105BHJP
   B32B 29/06 20060101ALI20220105BHJP
   C08B 5/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
D21H11/20
B32B27/10
B32B29/06
C08B5/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018542943
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2017035525
(87)【国際公開番号】W WO2018062502
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2016193393
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】趙 孟晨
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕一
(72)【発明者】
【氏名】本間 郁絵
(72)【発明者】
【氏名】轟 雄右
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-125691(JP,A)
【文献】特開2013-107927(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185505(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/073652(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/182438(WO,A1)
【文献】特開2005-068630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D21H 11/00-11/22
C08B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5mmol/g以上のリン酸基又はリン酸基由来の置換基を有し、繊維幅が1000nm以下であるリン酸化微細繊維状セルロースを含み、
下記式dで算出されるYI30が0.57以下であるシート。
(式d)
膜厚30μm換算のシートの黄色度(YI30)=シートの黄色度(YI)×(30(μm))/(シートの膜厚(μm))
上記式において、シートの黄色度(YI)は、JIS K 7373に準じて測定したシートの黄色度である。
【請求項2】
請求項に記載のシートと、前記シートの少なくとも一方の面側に配される樹脂層と、を有する積層体。
【請求項3】
0.5mmol/g以上のリン酸基又はリン酸基由来の置換基を有するセルロース繊維を含むパルプを漂白する工程を含むパルプの製造方法。
【請求項4】
前記漂白する工程の前のセルロース繊維のリン酸基量と、前記漂白する工程の後のセルロース繊維のリン酸基量の差が0.2mmol/g以下である請求項に記載のパルプの製造方法。
【請求項5】
前記漂白する工程の前のセルロース繊維を含むパルプを下記条件eにより微細化処理して得られる微細繊維状セルロースの粘度平均重合度と、前記漂白する工程の後のセルロース繊維を含むパルプを下記条件eで微細化処理して得られる微細繊維状セルロースの粘度平均重合度の差が100以下である請求項又はに記載のパルプの製造方法;
(条件e)
セルロース繊維を含むパルプをイオン交換水で0.5質量%の濃度となるように希釈しスラリーを得て、エム・テクニック社製のクレアミックス2.2Sを用いて回転数21500rpmで30分間微細化処理をする。
【請求項6】
前記漂白する工程の前のセルロース繊維を含むパルプを下記条件eで微細化処理し、0.4質量%の濃度の微細繊維状セルロース含有スラリー1とした際の該スラリー1の粘度をPとし、
前記漂白する工程の後のセルロース繊維を含むパルプを下記条件eで微細化処理し、0.4質量%の濃度の微細繊維状セルロース含有スラリー2とした際の該スラリー2の粘度をQとした場合、
P/Qの値が0.5以上2.0以下である請求項のいずれか1項に記載のパルプの製造方法;
(条件e)
前記パルプをイオン交換水で0.5質量%の濃度となるように希釈しスラリーを得て、エム・テクニック社製のクレアミックス2.2Sを用いて回転数21500rpmで30分間微細化処理をする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ、スラリー、シート、積層体及びパルプの製造方法に関する。具体的には、本発明は白色度の高いパルプ、シートにした際の黄色度が低いスラリー、黄色度の低いシート、これを有する積層体及び該パルプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロース繊維は、衣料や吸収性物品、紙製品等に幅広く利用されている。セルロース繊維としては、繊維径が10μm以上50μm以下のセルロース繊維に加えて、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。
【0003】
セルロース繊維は、木材や非木材を蒸解処理することで得られる。そして、蒸解処理工程の後には、漂白工程が設けられる場合があり、漂白工程を経ることにより白色度が高いセルロース繊維が得られる。また、漂白工程を設けることで、印刷古紙から脱墨パルプ(再生セルロース繊維)を得ることもできる。
【0004】
特許文献1には、印刷古紙を漂白する工程を含む脱墨パルプの製造方法が開示されている。ここでは、印刷古紙を再生するための漂白薬品として過酸化水素、ハイドロサルファイド、二酸化チオ尿素、ハイポ等が使用されており、漂白条件を適宜調整することで白色度の高い脱墨パルプを得ることが検討されている。また、特許文献2には、二酸化塩素と漂白助剤を用いた漂白工程を経て得られるセルロースパルプの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-125153号公報
【文献】特開2009-108430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、セルロース繊維にリン酸基等のイオン性置換基を導入することで、セルロース繊維の物性をコントロールすることが検討されている。また、リン酸基等のイオン性置換基を有するセルロース繊維を用いて微細繊維状セルロースを得ることも検討されている。しかし、リン酸基を有するセルロース繊維においては、その白色度が十分ではない場合があり、改善が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、リン酸基を有するセルロース繊維の製造工程における漂白プロセスを最適化し、白色度の高いセルロース繊維を含むパルプを提供することを目的としたものである。本発明はさらに、黄色度の低いシートを実現可能なスラリー、黄色度の低いシート、及びこれを有する積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、リン酸化セルロース繊維の製造工程における漂白プロセスを最適化することにより、リン酸基の導入量が多いセルロース繊維を含むパルプにおいてもその白色度を高め得ることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] 0.5mmol/g以上のリン酸基又はリン酸基由来の置換基を有するセルロース繊維を含むパルプであって、パルプを条件Aでシートとし、JIS P 8148に記載の試験片を、条件Aで得られたシートを4枚重ねたものとする以外は、JIS P 8148に準拠して測定された、該シートのISO白色度が82%以上であるパルプ;
(条件A)
パルプにイオン交換水を添加し、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度が0.3質量%の懸濁液を調製し、該懸濁液から絶乾坪量が200g/m2のウェットシートを形成する;ウェットシートをろ紙から剥がし取ってステンレストレーに乗せ、23℃、相対湿度50%の条件下で3日間乾燥させる;乾燥済みのシートの両面を紙及び金属プレートではさみ、7.7MPaの加重圧で1分間プレスし、パルプシートを得る。
[2] パルプを条件Aでシートとし、4枚重ねたもののL***表色系におけるb*値が5.5以下である[1]に記載のパルプ。
[3] 下記条件aで微細化処理及び遠心分離処理をした際、下記式bで算出される上澄み収率が50%以上である[1]又は[2]に記載のパルプ;
(条件a)
パルプをイオン交換水で0.5質量%の濃度となるように希釈しスラリーを得て、エム・テクニック社製のクレアミックス2.2Sを用いて回転数21500rpmで30分間微細化処理をする;その後、得られたスラリーをイオン交換水で固形分濃度が0.1質量%の濃度となるように希釈し、12000Gで10分間遠心分離処理をする。
(式b)
上澄み収率(%)=遠心分離処理後に得られる上澄み中に含まれる固形分濃度(質量%)/遠心分離処理前のスラリーに含まれる固形分濃度(質量%)×100
[4] 0.5mmol/g以上のリン酸基又はリン酸基由来の置換基を有し、繊維幅が1000nm以下のリン酸化微細繊維状セルロースを含有するスラリーであって、スラリーを用いて下記条件cでシートを形成した際、下記式dで算出される膜厚30μm換算のシートの黄色度(YI30)が0.57以下であるスラリー;
(条件c)
スラリーのリン酸化微細繊維状セルロースの濃度を0.5質量%に調整し、該スラリーを、孔径650nmのPVDFメンブレンフィルターを濾材とした吸引濾過により、リン酸化微細繊維状セルロースの固形分が4質量%以上になるまで脱水する;その後、23℃、相対湿度50%の調湿室で2日間緊張乾燥して絶乾坪量が40g/m2のシートを得る;
(式d)
膜厚30μm換算のシートの黄色度(YI30)=シートの黄色度(YI)×(30(μm))/(シートの膜厚(μm))
上記式において、シートの黄色度(YI)は、JIS K 7373に準じて測定したシートの黄色度である。
[5] 0.5mmol/g以上のリン酸基又はリン酸基由来の置換基を有し、繊維幅が1000nm以下であるリン酸化微細繊維状セルロースを含み、
下記式dで算出されるYI30が0.57以下であるシート。
(式d)
膜厚30μm換算のシートの黄色度(YI30)=シートの黄色度(YI)×(30(μm))/(シートの膜厚(μm))
上記式において、シートの黄色度(YI)は、JIS K 7373に準じて測定したシートの黄色度である。
[6] [5]に記載のシートと、前記シートの少なくとも一方の面側に配される樹脂層と、を有する積層体。
[7] 0.5mmol/g以上のリン酸基又はリン酸基由来の置換基を有するセルロース繊維を含むパルプを漂白する工程を含むパルプの製造方法。
[8] 漂白する工程の前のセルロース繊維のリン酸基量と、漂白する工程の後のセルロース繊維のリン酸基量の差が0.2mmol/g以下である[7]に記載のパルプの製造方法。
[9] 漂白する工程の前のセルロース繊維を含むパルプを下記条件eにより微細化処理して得られる微細繊維状セルロースの粘度平均重合度と、漂白する工程の後のセルロース繊維を含むパルプを下記条件eで微細化処理して得られる微細繊維状セルロースの粘度平均重合度の差が100以下である[7]又は[8]に記載のパルプの製造方法;
(条件e)
セルロース繊維を含むパルプをイオン交換水で0.5質量%の濃度となるように希釈しスラリーを得て、エム・テクニック社製のクレアミックス2.2Sを用いて回転数21500rpmで30分間微細化処理をする。
[10] 漂白する工程の前のセルロース繊維を含むパルプを下記条件eで微細化処理し、0.4質量%の濃度の微細繊維状セルロース含有スラリー1とした際の該スラリー1の粘度をPとし、漂白する工程の後のセルロース繊維を含むパルプを下記条件eで微細化処理し、0.4質量%の濃度の微細繊維状セルロース含有スラリー2とした際の該スラリー2の粘度をQとした場合、P/Qの値が0.5以上2.0以下である[7]~[9]のいずれかに記載のパルプの製造方法;
(条件e)
セルロース繊維を含むパルプをイオン交換水で0.5質量%の濃度となるように希釈しスラリーを得て、エム・テクニック社製のクレアミックス2.2Sを用いて回転数21500rpmで30分間微細化処理をする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、リン酸化セルロース繊維の製造工程における漂白プロセスを最適化することに成功したものである。本発明によれば、リン酸基の導入量が多いセルロース繊維を含むパルプであって、白色度が十分に高いセルロース繊維を含むパルプを得ることができる。本発明によればさらに、黄色度の低いシートを実現可能なスラリー、黄色度の低いシート、及びこれを有する積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、繊維原料に対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(パルプ)
本発明は、0.5mmol/g以上のリン酸基又はリン酸基由来の置換基を有するセルロース繊維を含むパルプであって、パルプを条件Aでシートとし、JIS P 8148に記載の試験片を、条件Aで得られたシートを4枚重ねたものとする以外は、JIS P 8148に準拠して測定された、該シートのISO白色度が82%以上であるパルプに関する。
(条件A)
パルプにイオン交換水を添加し、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度が0.3質量%の懸濁液を調製し、該懸濁液から絶乾坪量が200g/m2のウェットシートを形成する。ウェットシートをろ紙から剥がし取ってステンレストレーに乗せ、23℃、相対湿度50%の条件下で3日間乾燥させる。乾燥済みのシートの両面を紙及び金属プレートではさみ、7.7MPaの加重圧で1分間プレスし、パルプシートを得る。
【0014】
本発明においては、リン酸基の導入量が多いセルロース繊維を含むパルプであって、白色度が十分に高いパルプを得ることができる。そして、本発明においては、このような高白色度のパルプの微細化を行うことで所望の物性を発揮し得る微細繊維状セルロースを得ることができる。
【0015】
セルロース繊維にリン酸基を導入する際のリン酸化工程においては、セルロース繊維に生じる着色を改善する余地がある。特に、多くのリン酸基をセルロース繊維に導入する際には、その着色が強くなる傾向があり、改善が求められている。ここで、リン酸化セルロース繊維の着色を少なくするためには、リン酸化セルロース繊維を含むパルプを漂白することが考えられる。しかし、セルロース繊維を含むパルプを漂白する際には、セルロース繊維自体が加水分解されたり、その物性が変化することがある。すなわち、漂白工程を設けることにより、セルロース繊維にダメージが与えられことがあり、ダメージを受けたセルロース繊維や、セルロース繊維を含むパルプの物性が大きく変化することが懸念されている。例えば、リン酸化セルロース繊維を含むパルプを微細化した際には、微細繊維状セルロース含有スラリーは高い透明性と高い粘度を発現する。しかし、漂白工程を経て得られるリン酸化セルロース繊維を含むパルプを用いた場合、リン酸化セルロース繊維がダメージを受けることによって微細化が良好に進行せず、微細繊維状セルロース含有スラリーの透明性と粘度が低下することが懸念されている。つまり、セルロース繊維にダメージが与えられことにより、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの微細化が妨げられる可能性が考えられていた。
【0016】
通常、リン酸化セルロース繊維を含むパルプは、リン酸基を導入する前の原料パルプをリン酸化することで得られる。このような原料パルプは、広葉樹や針葉樹などのチップ化された木質材料や草本系の非木質材料を、苛性ソーダ又は硫化ソーダなどからなる蒸解薬液で蒸解した後に、漂白処理を施すことで得られる。原料パルプとしては、着色原因物質であるリグニン等が除去されたパルプが通常使用される。そして、このようにして得られた原料パルプとリン酸化剤を混合し加熱処理等を行うことでリン酸化セルロース繊維を含むパルプが得られる。リン酸化工程では、リン酸化を効率良く行う目的で加熱処理を行うが、この加熱処理とリン酸化剤の影響により、得られるリン酸化セルロース繊維を含むパルプが黄変することが本発明者らの検討により見出されている。また、蒸解工程で残存したリグニンがリン酸化工程で着色の原因となることも懸念されている。
【0017】
セルロース繊維のリン酸基導入量を高くしたい場合には、複数回のリン酸化工程を設けることもあり、また加熱時間を長くすることも検討される。このため、リン酸基導入量の多いセルロース繊維を含むパルプにおいては、白色度が低下(悪化)しやすいという問題がある。
【0018】
また、多くのリン酸基を導入した後の工程では、pH調整工程以外の化学的処理を行わないことが一般的である。これは、導入されたリン酸基の量、セルロース繊維の重合度を保持するためである。このため、原料パルプを得る際に一度漂白処理を行っているのであれば、通常であれば、リン酸化処理工程の後に再度漂白処理工程を設けることは想定されない。すなわち、白色度の高いリン酸化セルロース繊維を含むパルプを製造しようとした際には、リン酸化工程における着色を極力抑える条件を探ること以外に有力な手法は見出されていなかった。
【0019】
本発明においては、リン酸化処理工程の後に敢えて漂白処理を行うこととした。本発明においては、リン酸化処理工程の後に漂白工程を設けた場合であっても、導入されたリン酸基量を高いレベルで維持できることがわかった。また、本発明においては、リン酸化処理工程の後に漂白工程を設けることにより、白色度の高いリン酸化セルロース繊維を含むパルプが得られる。そして、本発明においては、このようにして得られた白色度の高いリン酸化セルロース繊維を含むパルプであっても、その物性や特性が漂白工程で損なわれないことが見出された。具体的には、リン酸化処理工程の後に漂白工程を設けた場合であっても、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの微細化を良好に行うことができ、微細化することで得られる微細繊維状セルロースを含有するスラリーは所望の物性を発揮することができる。例えば、微細繊維状セルロースを含有するスラリーは透明性が高く、高粘度を発現することができる。
【0020】
本発明においては、適切な量の漂白剤及び漂白条件で漂白処理を行うことにより、リン酸化セルロース繊維のリン酸基量と重合度低下を抑制することができる。本発明は、白色度向上という本発明の目的を果たしながらも、このような知見に基づいてリン酸化セルロース繊維のリン酸基量と重合度低下を引き起こさない漂白剤の種類、量、処理時の温度を見出したものである。
【0021】
以上のように、本発明は、リン酸基導入量の高いセルロース繊維であって、高白色度を有するセルロース繊維を含むパルプを製造する方法を見出したものである。また、本発明の高白色度リン酸化セルロース繊維を含むパルプは、その微細化が妨げられることがない。このため、本発明の高白色度リン酸化セルロース繊維を含むパルプは、リン酸化工程後に漂白工程を経ていないセルロース繊維を含むパルプと同様に、微細化後のスラリーの透明性が高く、該スラリーは高粘度を発現する。
【0022】
セルロース繊維が有するリン酸基又はリン酸基由来の置換基(以下、単にリン酸基ともいう)の含有量は、セルロース繊維1g(質量)あたり0.5mmol/g以上であればよく、1.00mmol/g以上であることがより好ましく、1.10mmol/g以上であることがさらに好ましい。また、リン酸基の含有量は、3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.5mmol/g以下であることがより好ましく、3.0mmol/g以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、セルロース繊維が有するリン酸基の含有量は、後述するようにセルロース繊維が有するリン酸基の強酸性基量と等しい。本発明においては、セルロース繊維を含むパルプが有するリン酸基の含有量も上記範囲内であることが好ましい。
【0023】
セルロース繊維が有するリン酸基の含有量は、中和滴定法により測定することができる。中和滴定法による測定の際には、リン酸基を完全に酸型に変換させた後、機械処理工程(微細化工程)により微細化を行い、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーに、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を求めることにより、導入量を測定する。
【0024】
リン酸基の酸型への変換は、得られたリン酸化セルロース繊維を、セルロース繊維の濃度が2質量%となるようイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、十分な量の1N塩酸水溶液を少しずつ添加することで行う。リン酸基の酸型への変換では、上記のスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水で希釈し、1N塩酸水溶液を添加する操作を繰り返すことにより、セルロース繊維に含まれるリン酸基を完全に酸型へ変化させることが好ましい。そして、リン酸基の酸型への変換工程の後には、得られたスラリーを攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の塩酸を十分に洗い流すことが好ましい。
【0025】
機械処理工程(微細化工程)では、得られた脱水シートにイオン交換水を注ぎ、セルロース繊維の濃度が0.3質量%のスラリーを得て、このスラリーを、解繊処理装置(エム・テクニック社製、クレアミックス‐2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で30分間処理する。このようにして、微細繊維状セルロース含有スラリーを得る。
【0026】
アルカリを用いた滴定では、微細繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、分散液が示すpHの値の変化を計測する。この中和滴定では、アルカリ(水酸化ナトリウム水溶液)を加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点を二つ与える(増分が最大となる点と、2番目に大きくなる点)。このうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点(以下、第1終点と呼ぶ)までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用した分散液中の強酸性基量と等しく、次に得られる増分の極大点(以下、第2終点と呼ぶ)までに必要としたアルカリ量が滴定に使用した分散液中の弱酸性基量と等しくなる。第1終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象の微細繊維状セルロース含有スラリー中の固形分(g)で除して、第1解離アルカリ量(mmol/g)とし、この量をセルロース繊維が有するリン酸基の含有量とする。
【0027】
図1は、中和滴定において、アルカリ(水酸化ナトリウム水溶液)を加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線を例示したものである。第1終点までの領域を第1領域、第2終点までの領域を第2領域という。なお、第2領域の後には第3領域がある。すなわち、3つの領域が現れる。図1において、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。
【0028】
本発明のセルロース繊維を含むパルプを上述した条件Aでシートとし、JIS P 8148に記載の試験片を、条件Aで得られたシートを4枚重ねたものとする以外は、JIS P 8148に準拠して測定された、該シートのISO白色度は、82%以上であればよく、83%以上であることが好ましく、84%以上であることがより好ましい。なお、シートのISO白色度は100%であってもよい。ISO白色度を測定する装置としては、分光白色度測色計(スガ試験機株式会社製、SC-10WN)を用いることができる。
【0029】
本発明においては、以下の条件Aでシート化したシートを4枚重ねてISO白色度を測定している。
(条件A)
パルプにイオン交換水を添加し、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度が0.3質量%の懸濁液を調製し、該懸濁液から絶乾坪量が200g/m2のウェットシートを形成する。ウェットシートをろ紙から剥がし取ってステンレストレーに乗せ、23℃、相対湿度50%の条件下で3日間乾燥させる。乾燥済みのシートの両面を紙及び金属プレートではさみ、7.7MPaの加重圧で1分間プレスし、パルプシートを得る。なお、乾燥済みのシートのプレスは、たとえばミニホットプレス(株式会社東洋精機製作所製、MP-SNH)を用いて行うことができる。
【0030】
本発明のセルロース繊維を含むパルプを上記条件Aでシートとし、4枚重ねたもののL***表色系におけるb*値は5.5以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、4.6以下であることがさらに好ましく、4.0以下であることが特に好ましい。b*値の測定は上述したISO白色度の測定と同様の方法で測定することができる。本発明のセルロース繊維を含むパルプはシートとし、4枚積層した際のb*値が上記範囲内であるため、黄色発現が抑制されている。これによりシートの白色度がより高められる。
【0031】
本発明のセルロース繊維を含むパルプにおいては、リン酸化工程後に漂白工程を設けた場合であってもセルロース繊維にダメージが与えられることが抑制されている。このため、リン酸化工程後に漂白工程を経ていないセルロース繊維と同様に、セルロース繊維を微細化することができる。すなわち、本発明のセルロース繊維を含むパルプを微細化した際には、微細繊維状セルロースの収率が高い。具体的には、下記条件aで微細化処理及び遠心分離処理をした際、下記式bで算出される上澄み収率が50%以上であることが好ましい。上澄み収率は、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが一層好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
(条件a)
パルプをイオン交換水で0.5質量%の濃度となるように希釈しスラリーを得て、エム・テクニック社製のクレアミックス2.2Sを用いて回転数21500rpmで30分間微細化処理をする;その後、得られたスラリーをイオン交換水で固形分濃度が0.1質量%の濃度となるように希釈し、12000Gで10分間遠心分離処理をする。
(式b)
上澄み収率(%)=遠心分離処理後に得られる上澄み中に含まれる固形分濃度(質量%)/遠心分離処理前のスラリーに含まれる固形分濃度(質量%)×100
【0032】
なお、本明細書において、セルロース繊維の繊維幅は特に限定されるものではない。セルロース繊維の繊維幅は1000nmよりも大きいものであってもよく、1000nm以下であってもよい。また、繊維幅が1000nmよりも大きいセルロース繊維と、繊維幅が1000nm以下のセルロース繊維が混在していてもよい。本明細書においては。セルロース繊維の繊維幅が1000nm以下である場合、このようなセルロース繊維を微細繊維状セルロースと呼ぶ。
【0033】
ここで、セルロース繊維の繊維幅は、電子顕微鏡観察によって以下の方法で測定することができる。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下のセルロース繊維水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。この際、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
【0034】
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
【0035】
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。
【0036】
セルロース繊維の平均繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、0.1mm以上であることがさらに好ましく、0.6mm以上であることが一層好ましい。また、5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。ここで、セルロース繊維の平均繊維長は、例えば、カヤーニオートメーション社のカヤーニ繊維長測定器(FS-200形)を用い、長さ加重平均繊維長を測定することにより求めることができる。また、繊維の長さに応じて走査型顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等を用いて測定することもできる。
【0037】
セルロース繊維が微細繊維状セルロースである場合、微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。この場合、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
【0038】
本発明においては、セルロース繊維はリン酸基(リン酸基又はリン酸基に由来する置換基)を有する。本明細書においては、このようなセルロース繊維をリン酸化セルロース繊維、リン酸化セルロース、もしくはリン酸化セルロース繊維と称してもよい。
【0039】
リン酸化セルロース繊維におけるリン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には-PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれ、イオン性置換基であることが好ましい。
【0040】
本発明では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であってもよい。
【化1】
【0041】
式(1)中、a、b及びnは自然数である(ただし、a=b×mである)。α1,α2,・・・,αn及びα’のうちの少なくとも1つはO-であり、残りはR,ORのいずれかである。各αn及びα’の全てがO-であっても構わない。nが2以上であり、α’がR又はORである場合には、各αnのうちの少なくとも1つがO-で残りがR又はORである。nが2以上であり、α’がO-である場合には、各αnは全てRであってもよいし、全てORであってもよいし、少なくとも1つがO-で残りがR又はORであってもよい。Rは、各々、水素原子、飽和-直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和-環状炭化水素基、不飽和-直鎖状炭化水素基、不飽和-分岐鎖状炭化水素基、不飽和-環状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基である。
【0042】
飽和-直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はn-ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和-分岐鎖状炭化水素基としては、i-プロピル基、又はt-ブチル基等が挙げられるが、特に限定されない。飽和-環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和-直鎖状炭化水素基としては、ビニル基、又はアリル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和-分岐鎖状炭化水素基としては、i-プロペニル基、又は3-ブテニル基等が挙げられるが、特に限定されない。不飽和-環状炭化水素基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、特に限定されない。芳香族基としては、フェニル基、又はナフチル基等が挙げられるが、特に限定されない。
【0043】
また、前記Rにおける誘導体としては、前記各種炭化水素基の主鎖又は側鎖に対し、カルボキシ基、ヒドロキシ基、又はアミノ基などの官能基のうち、少なくとも1種類が付加又は置換した状態の官能基が挙げられるが、特に限定されない。 また、前記Rの主鎖を構成する炭素原子数は特に限定されないが、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。Rの主鎖を構成する炭素原子数が20を超えると、Rを含むリンオキソ酸基の分子が大きくなりすぎて、繊維原料に浸透しにくくなり、微細セルロース繊維の収率が低下するおそれがある。
【0044】
βb+は有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、脂肪族アンモニウム、又は芳香族アンモニウムが挙げられ、無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、若しくはリチウム等のアルカリ金属のイオンや、カルシウム、若しくはマグネシウム等の2価金属の陽イオン、又は水素イオン等が挙げられるが、特に限定されない。これらは1種又は2種類以上を組み合わせて適用することもできる。有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、βを含む繊維原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、又はカリウムのイオンが好ましいが、特に限定されない。
【0045】
(スラリー)
本発明は、上述したセルロース繊維を含むパルプを用いて製造されるスラリーに関するものでもある。本明細書においては、このようなスラリーをセルロース繊維含有スラリーと呼ぶこともある。本発明のスラリーに含まれるセルロース繊維は微細繊維状セルロースであることが好ましい。すなわち、本発明のスラリーは、0.5mmol/g以上のリン酸基又はリン酸基由来の置換基を有し、繊維幅が1000nm以下のリン酸化微細繊維状セルロースを含有するスラリーに関するものであることが好ましい。
【0046】
本発明のスラリーを用いて下記条件cでシートを形成した際、下記式dで算出される膜厚30μm換算のシートの黄色度(YI30)は、0.57以下である。膜厚30μm換算のシートの黄色度(YI30)は0.55以下であることが好ましく、0.50以下であることがより好ましく、0.45以下であることがさらに好ましい。
(条件c)
スラリーのリン酸化微細繊維状セルロースの濃度を0.5質量%に調整し、該スラリーを、孔径650nmのPVDFメンブレンフィルターを濾材とした吸引濾過により、リン酸化微細繊維状セルロースの固形分が4質量%以上になるまで脱水する。その後、23℃、相対湿度50%の調湿室で2日間緊張乾燥して絶乾坪量が40g/m2のシートを得る。
(式d)
膜厚30μm換算のシートの黄色度(YI30)=シートの黄色度(YI)×(30(μm))/(シートの膜厚(μm))
上記式において、シートの黄色度(YI)は、JIS K 7373に準じて測定したシートの黄色度である。シートの黄色度(YI)は、上記条件cで形成したシートの黄色度(YI)の実測値である。
【0047】
これまで、微細繊維状セルロースを含有するスラリーを用いて製造されるシートについて、その黄色度を抑えることが求められる場合があった。本発明によれば、上述のとおり黄色度の低いシートを実現可能なスラリーを得ることができる。これは、たとえば黄色発現が抑制された白色度の高いパルプを用いていることによるものと考えられる。
【0048】
リン酸化微細繊維状セルロース含有スラリー(以下、微細繊維状セルロース含有スラリーともいう)の25℃における粘度は、8000mPa・s以上であることが好ましく、10000mPa・s以上であることがより好ましく、11000mPa・s以上であることがさらに好ましい。なお、微細繊維状セルロース含有スラリーの25℃における粘度に特に上限はないが、例えば、50000mPa・sとすることができる。
ここで、微細繊維状セルロース含有スラリーの粘度は、以下の手順の測定した値である。まず、微細繊維状セルロース含有スラリーの固形分濃度が0.4質量%となるように希釈し、ディスパーザーにて1500rpmでスラリーを均一に攪拌する。得られたスラリーを24時間静置し、その後スラリーの粘度をB型粘度計(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T-LVT)を用いて測定する。測定条件は、25℃の条件とし、3rpmで3分間回転させて測定する。
【0049】
微細繊維状セルロース含有スラリーのヘーズは、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。なお、微細繊維状セルロース含有スラリーのヘーズは0%であってもよい。
ここで、微細繊維状セルロース含有スラリーのヘーズは、以下の手順の測定した値である。まず、微細繊維状セルロース含有スラリーを、イオン交換水で固形分濃度が0.2質量%となるように希釈し、スラリーを均一に攪拌する。その後、スラリーを光路長が1cmの液体用ガラスセル(藤原製作所製、MG-40、逆光路)に入れ、JIS K 7136に準拠して、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM-150)を用いて測定する。なお、ゼロ点測定は、該ガラスセルにイオン交換水を入れて行う。
【0050】
微細繊維状セルロース含有スラリーに含まれる微細繊維状セルロースの重合度は500以上であることが好ましく、600以上であることがより好ましく、700以上であることがさらに好ましく、800以上であることが特に好ましい。また、微細繊維状セルロースの重合度は2000以下であることが好ましい。なお、上記重合度は後述するように粘度法によって測定された平均重合度であることから、粘度平均重合度と称されることもある。
微細繊維状セルロースの重合度は、Tappi T230に従い測定されたパルプ粘度から計算される。具体的には、測定対象の微細繊維状セルロースを、分散媒に分散させて測定した粘度(η1とする)、及び分散媒体のみで測定したブランク粘度(η0とする)を測定したのち、比粘度(ηsp)、固有粘度([η])を下記式に従って算出する。
ηsp=(η1/η0)-1
[η]=ηsp/(c(1+0.28×ηsp))
ここで、式中のcは、粘度測定時の微細繊維状セルロースの濃度を示す。
さらに、下記式から重合度(DP)を算出した。
DP=1.75×[η]
【0051】
セルロース繊維含有スラリーは、さらに、その他の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、たとえば、消泡剤、潤滑剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、填料、安定剤、アルコール等の水と混和可能な有機溶媒、防腐剤、有機微粒子、無機微粒子、樹脂(ペレット状、繊維状)等を挙げることができる。なお、本明細書においては、セルロース繊維を含むパルプは、セルロース繊維の他、ヘミセルロース、リグニン、樹脂成分(テルペン等の抽出成分)、灰分を含んでいてもよい。
【0052】
(セルロース繊維を含むパルプの製造方法)
本発明は、0.5mmol/g以上のリン酸基又はリン酸基由来の置換基を有するセルロース繊維を含むパルプを漂白する工程を含むパルプの製造方法に関するものでもある。本発明のパルプの製造方法は、得られるセルロース繊維を含むパルプを上記条件Aでシートとし、JIS P 8148に記載の試験片を、上記条件Aで得られたシートを4枚重ねたものとする以外は、JIS P 8148に準拠して測定された、該シートのISO白色度が82%以上となるパルプの製造方法である。
【0053】
<原料パルプ>
セルロース繊維を含むパルプを得るための原料パルプは特に限定されない。原料パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。
【0054】
原料パルプは、広葉樹や針葉樹などのチップ化された木質材料や草本系の非木質材料を、苛性ソーダ又は硫化ソーダなどからなる蒸解薬液で蒸解した後に、漂白処理を施すことで得られる。原料パルプとしては、着色原因物質であるリグニン等が除去されたものが用いられる。
【0055】
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程は、上記のようにして得られた原料パルプに含まれるセルロース繊維にリン酸基を導入する工程である。リン酸基導入工程では、セルロース繊維を含むパルプに対し、リン酸基又はリン酸基由来の置換基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化剤」又は「化合物A」ともいう)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化剤は、乾燥状態または湿潤状態のセルロース繊維を含むパルプに粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、セルロース繊維を含むパルプのスラリーにリン酸化剤の粉末や水溶液を添加してもよい。すなわち、リン酸基導入工程は、少なくとも、セルロース繊維を含むパルプとリン酸化剤を混合する工程を含む。
【0056】
リン酸基導入工程は、セルロース繊維を含むパルプにリン酸化剤を反応させることにより行うことができるが、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で行ってもよい。
【0057】
化合物Aを化合物Bの共存下でセルロース繊維を含むパルプに作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態のセルロース繊維を含むパルプに化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を混合する方法が挙げられる。また別の例としては、セルロース繊維を含むパルプのスラリーに化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態のセルロース繊維を含むパルプに化合物A及び化合物Bの水溶液を添加する方法、または湿潤状態のセルロース繊維を含むパルプに化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が好ましい。また、化合物Aと化合物Bは同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、初めに反応に供試する化合物Aと化合物Bを水溶液として添加して、圧搾により余剰の薬液を除いてもよい。セルロース繊維を含むパルプの形態は綿状や薄いシート状であることが好ましいが、特に限定されない。
【0058】
リン酸化剤(化合物A)は、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種である。リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。中でも、リン酸、リン酸のナトリウム塩、又はリン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩は好ましく用いられる。
【0059】
反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率がより高くなることからリン酸化剤(化合物A)は水溶液として用いることが好ましい。リン酸化剤(化合物A)の水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基の導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、セルロース繊維の加水分解を抑える観点からpH3以上pH7以下がさらに好ましい。化合物Aの水溶液のpHは例えば、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものとアルカリ性を示すものを併用し、その量比を変えて調整してもよい。リン酸化剤(化合物A)の水溶液のpHは、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものに無機アルカリまたは有機アルカリを添加すること等により調整してもよい。
【0060】
セルロース繊維を含むパルプに対するリン酸化剤(化合物A)の添加量は特に限定されないが、リン酸化剤(化合物A)の添加量をリン原子量に換算した場合、セルロース繊維(絶乾質量)に対するリン原子の添加量は0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、2質量%以上30質量%以下が最も好ましい。セルロース繊維に対するリン原子の添加量が上記範囲内であれば、リン酸化セルロース繊維の収率をより向上させることができる。セルロース繊維に対するリン原子の添加量を100質量%以下とすることにより、収率向上の効果とコストのバランスをとることができる。一方、セルロース繊維に対するリン原子の添加量を上記下限値以上とすることにより、収率を高めることができる。
【0061】
本実施態様で使用する化合物Bとしては、尿素、ビウレット、1-フェニル尿素、1-ベンジル尿素、1-メチル尿素、1-エチル尿素などが挙げられる。
【0062】
化合物Bは化合物Aと同様に水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性が高まることから化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。セルロース繊維(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましく、150質量%以上300質量%以下であることが特に好ましい。
【0063】
化合物Aと化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
【0064】
リン酸基導入工程は、加熱をする工程(以下、加熱処理工程ともいう)を有することが好ましい。加熱処理工程を設けることで、セルロース繊維にリン酸基を効率的に導入することができる。
【0065】
加熱処理工程における加熱処理温度は、セルロース繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。加熱処理温度は、具体的には50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。
【0066】
加熱処理の際、化合物Aを添加したセルロース繊維を含むパルプのスラリーに水が含まれている間において、セルロース繊維を含むパルプを静置する時間が長くなると、乾燥に伴い水分子と溶存する化合物Aがセルロース繊維表面に移動する。そのため、セルロース繊維中の化合物Aの濃度にムラが生じる可能性があり、セルロース繊維表面へのリン酸基の導入が均一に進行しない恐れがある。乾燥によるセルロース繊維中の化合物Aの濃度ムラ発生を抑制するためには、ごく薄いシート状のセルロース繊維を含むパルプを用いるか、ニーダー等でセルロース繊維を含むパルプと化合物Aを混練又は撹拌しながら加熱乾燥又は減圧乾燥させる方法を採ればよい。
【0067】
加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分及びリン酸基などの繊維の水酸基への付加反応で生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましく、例えば送風方式のオーブン等が好ましい。装置系内の水分を常に排出すれば、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、セルロース繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することができる。
【0068】
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるがパルプスラリーから実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本発明では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
【0069】
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、複数回繰り返すこともできる。この場合、より多くのリン酸基が導入されるので好ましい。例えば、リン酸基導入工程を2回行うことも好ましい態様である。
【0070】
<アルカリ処理工程>
リン酸基導入工程の後には、アルカリ処理工程を設けることが好ましい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、リン酸化パルプを浸漬する方法が挙げられる。
【0071】
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、水系溶媒であってもよい。また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
【0072】
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、リン酸化セルロース繊維の絶乾質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
【0073】
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、リン酸化セルロース繊維を含むパルプを水や有機溶媒により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、アルカリ処理済みリン酸化セルロース繊維を含むパルプを水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
【0074】
<漂白工程>
上述したリン酸基導入工程の後、もしくはアルカリ処理工程の後には漂白工程が設けられる。漂白工程は、上述したリン酸基導入工程で得られた0.5mmol/g以上のリン酸基又はリン酸基由来の置換基を有するセルロース繊維を含むパルプを漂白する工程である。
リン酸化処理は、通常、弱酸性条件で行われ、また高温での加熱処理を伴うため、リン酸化処理過程で原料パルプに由来しない新たな着色原因物質の生成が考えられる。そのため漂白処理はリン酸基導入工程の後に設けられることが望ましい。
【0075】
漂白工程で用いることができる漂白剤としては、例えば、過酸化水素、ハイドロサルファイド、二酸化チオ尿素、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素等を挙げることができる。なお、漂白工程では、漂白剤と漂白助剤を併用してもよく、漂白助剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0076】
漂白工程では、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度を0.2質量%以上20質量%以下に調製したスラリーに、漂白剤を添加することが好ましい。この際、漂白剤の添加率は、スラリー中のリン酸化セルロース繊維の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。なお、漂白剤の添加率は、スラリー中のリン酸化セルロース繊維の全質量に対して、30質量%以下であることが好ましい。なお、漂白剤が塩素系の漂白剤である場合、スラリー中の有効塩素濃度が50ppm以上となるように漂白剤を添加することが好ましく、100ppm以上となるように漂白剤を添加することがより好ましい。また、有効塩素濃度の上限は2000ppmであることが好ましい。漂白剤の添加量を上記範囲内とすることにより、白色度の高いセルロース繊維を含むパルプを得ることができる。
【0077】
漂白処理温度は、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、25℃以上であることがさらに好ましい。また、漂白処理温度は、150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。漂白処理温度を上記範囲内とすることにより、白色度の高いセルロース繊維を含むパルプを得ることができる。
【0078】
漂白処理時間は、10秒以上であることが好ましく、30秒以上であることがより好ましく、1分以上であることがさらに好ましく、5分以上であることが特に好ましい。漂白処理時間は1時間以下であることが好ましく、30分以下であることがより好ましい。
【0079】
漂白工程の後には中和工程を設けてもよい。中和工程では、特に漂白剤として塩素系漂白剤を使用した場合、例えば、チオ硫酸ナトリウムや亜硫酸ナトリウム等の中和剤を添加することでスラリー中に残存する漂白剤を中和し、漂白処理を終了させることができる。
【0080】
中和工程の後には、洗浄工程を設けることが好ましい。また、中和工程の後には、上述したアルカリ処理工程を再度設けてもよい。
【0081】
<解繊処理>
セルロース繊維が、繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースである場合、漂白工程の後には、解繊処理工程を設けてもよい。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
【0082】
解繊処理の際には、繊維原料を水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶剤を使用することができる。好ましい極性有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、またはt-ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素などを含んでも構わない。
【0083】
微細繊維状セルロースは、解繊処理により得られた微細繊維状セルロース含有スラリーを、一度濃縮及び/又は乾燥させた後に、再度解繊処理を行って得てもよい。この場合、濃縮、乾燥の方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維状セルロースを含有するスラリーに濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる脱水機、プレス、乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、及びWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。また、微細繊維状セルロース含有スラリーをシート化することで濃縮、乾燥し、該シートに解繊処理を行い、再度微細繊維状セルロース含有スラリーを得ることもできる。
【0084】
微細繊維状セルロース含有スラリーを濃縮及び/又は乾燥させた後に、再度解繊(粉砕)処理をする際に用いる装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできるが特に限定されない。
【0085】
(漂白前後のセルロース繊維(パルプ)の物性)
本発明のセルロース繊維を含むパルプの製造方法においては、漂白工程の前後でセルロース繊維もしくは、セルロース繊維を含むパルプの各種物性が大きく変化しない点にも特徴がある。すなわち、本発明のセルロース繊維を含むパルプの製造方法においては、0.5mmol/g以上のリン酸基又はリン酸基由来の置換基を有するセルロース繊維を含むパルプを漂白した場合であっても、セルロース繊維もしくは、セルロース繊維を含むパルプはその物性や特性を維持することができる。
【0086】
本発明においては、漂白する工程の前のセルロース繊維のリン酸基量と、漂白する工程の後のセルロース繊維のリン酸基量の差は、0.2mmol/g以下であることが好ましく、0.1mmol/g以下であることがより好ましく、0.05mmol/g以下であることがさらに好ましい。
【0087】
また、本発明においては、セルロース繊維を含むパルプからは、重合度の低下を所望の範囲とし得る微細繊維状セルロースが得られる。具体的には、漂白する工程の前のセルロース繊維を含むパルプを下記条件eで微細化処理し、得られた微細繊維状セルロースの粘度平均重合度と、漂白する工程の後のセルロース繊維を含むパルプを下記条件eで微細化処理し、得られた微細繊維状セルロースの粘度平均重合度の差は、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。
(条件e)
セルロース繊維を含むパルプをイオン交換水で0.5質量%の濃度となるように希釈しスラリーを得て、エム・テクニック社製のクレアミックス2.2Sを用いて回転数21500rpmで30分間微細化処理をする。
【0088】
上記条件eで微細化処理し、得られた微細繊維状セルロースの粘度平均重合度は、Tappi T230に従い測定されたパルプ粘度から計算した値である。具体的には、微細繊維状セルロースを、分散媒に分散させて測定した粘度(η1とする)、及び分散媒体のみで測定したブランク粘度(η0とする)を測定したのち、比粘度(ηsp)、固有粘度([η])を下記式に従って算出する。
ηsp=(η1/η0)-1
[η]=ηsp/(c(1+0.28×ηsp))
ここで、式中のcは、粘度測定時の微細繊維状セルロースの濃度を示す。
さらに、下記式から重合度(DP)を算出した。
DP=1.75×[η]
この重合度は粘度法によって測定された平均重合度であることから、「粘度平均重合度」と称される。
【0089】
さらに、本発明においては、セルロース繊維を含むパルプからは、所望の粘度を発揮し得る微細繊維状セルロースが得られる。具体的には、漂白する工程の前のセルロース繊維を含むパルプを条件eで微細化処理し、0.4質量%の濃度の微細繊維状セルロース含有スラリー1とした際の該スラリー1の粘度をPとし、漂白する工程の後のセルロース繊維を含むパルプを下記条件eで微細化処理し、0.4質量%の濃度の微細繊維状セルロース含有スラリー2とした際の該スラリー2の粘度をQとした場合、P/Qの値は0.5以上2.0以下であることが好ましい。P/Qの値は、0.5以上1.5以下であることがより好ましく、0.5以上1.2以下であることがさらに好ましい。
なお、微細繊維状セルロース含有スラリーの粘度は、ディスパーザーにて1500rpmでスラリーを均一に攪拌し、得られたスラリーを24時間静置し、その後スラリーの粘度をB型粘度計(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T-LVT)を用いて測定する。測定条件は、25℃の条件とし、3rpmで3分間回転させて測定する。
【0090】
(シート)
本発明は、本明細書において上述したセルロース繊維を含むパルプを用いて製造されるシートに関するものでもある。本発明のシートに含まれるセルロース繊維は、例えば微細繊維状セルロースである。本明細書においては、微細繊維状セルロースを含有するシートを、微細繊維状セルロース含有シートとも称する。本発明のシートは、0.5mmol/g以上のリン酸基又はリン酸基由来の置換基を有し、繊維幅が1000nm以下のリン酸化微細繊維状セルロースを含有するシートに関するものである。
【0091】
本発明のシートは、下記式dで算出されるYI30が0.57以下である。YI30は0.55以下であることが好ましく、0.50以下であることがより好ましく、0.45以下であることがさらに好ましい。
(式d)
膜厚30μm換算のシートの黄色度(YI30)=シートの黄色度(YI)×(30(μm))/(シートの膜厚(μm))
上記式において、シートの黄色度(YI)は、JIS K 7373に準じて測定したシートの黄色度である。
【0092】
(シートの製造方法)
本発明のシートは、例えば、微細セルロース繊維を含む組成物(例えば、懸濁液またはスラリー)を濾過し、ろ紙上にウェットシートを形成することにより製造することができる。形成したウェットシートをろ紙から剥がし取って、ステンレストレーなどの上で乾燥させることにより乾燥済みのシートを得ることができる。
また本発明のシートは、微細セルロース繊維を含む組成物(例えば、懸濁液またはスラリー)を基材上に塗工することによって、又は、微細セルロース繊維を含む組成物(例えば、懸濁液またはスラリー)を抄紙することによって製造することができる。
【0093】
<塗工工程>
塗工工程は、組成物(スラリーなど)を基材上に塗工し、これを乾燥することにより、シートを得る工程である。塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。スラリーを塗工する場合、塗工するスラリーの濃度は特に限定されないが、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0094】
塗工工程で用いる基材の材質は、特に限定されないが、組成物(スラリー)に対する濡れ性が高いものの方が乾燥時のシートの収縮等を抑制することができて良いが、乾燥後に形成されたシートが容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂製のフィルムや板または金属製のフィルムや板が好ましいが、特に限定されない。例えばアクリル、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂のフィルムや板、アルミ、亜鉛、銅、鉄板の金属のフィルムや板、および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレスのフィルムや板、真ちゅうのフィルムや板等を用いることができる。
【0095】
塗工工程において、組成物(スラリー)の粘度が低く、基材上で展開してしまう場合、所定の厚み、坪量の微細繊維状セルロース含有シートを得るため、基材上に堰止用の枠を固定して使用してもよい。堰止用の枠の質は特に限定されないが、乾燥後に付着するシートの端部が容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂製のフィルムや板または金属製のフィルムや板を成形したものが好ましいが、特に限定されない。例えばアクリル、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂のフィルムや板、アルミ、亜鉛、銅、鉄等の金属のフィルムや板、および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレスのフィルムや板、真ちゅうのフィルムや板等を成形したもの用いることができる。
【0096】
組成物(スラリー)を塗工する塗工機としては、例えば、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。厚みをより均一にできることから、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーターが好ましい。
【0097】
塗工温度は特に限定されないが、20℃以上45℃以下であることが好ましく、25℃以上40℃以下であることがより好ましく、27℃以上35℃以下であることがさらに好ましい。塗工温度が上記下限値以上であれば、組成物(スラリー)を容易に塗工でき、上記上限値以下であれば、塗工中の分散媒の揮発を抑制できる。
【0098】
塗工工程においては、シートの仕上がり坪量が10g/m2以上100g/m2以下になるようにスラリーを塗工することが好ましい。坪量が上記範囲内となるように塗工することで、強度に優れたシートが得られる。
【0099】
シートを形成する工程は、基材上に塗工した組成物(スラリー)を乾燥させる工程を含むことが好ましい。乾燥方法としては、特に限定されないが、非接触の乾燥方法でも、シートを拘束しながら乾燥する方法の何れでもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0100】
非接触の乾燥方法としては、特に限定されないが、熱風、赤外線、遠赤外線または近赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができる。加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよいが、通常は、加熱乾燥法が適用される。赤外線、遠赤外線または近赤外線による乾燥は、赤外線装置、遠赤外線装置または近赤外線装置を用いて行うことができるが、特に限定されない。加熱乾燥法における加熱温度は特に限定されないが、20℃以上120℃以下とすることが好ましく、25℃以上105℃以下とすることがより好ましい。加熱温度を上記下限値以上とすれば、分散媒を速やかに揮発させることができ、上記上限値以下であれば、加熱に要するコストの抑制及び微細繊維状セルロースが熱によって変色することを抑制できる。
【0101】
なお、シートは、基材から剥離してから、巻き取ることができる。あるいは、シートと基材とを積層したまま巻き取って、シートの使用直前にシートを基材から剥離してもよい。また、基材を剥離することなく、積層体の一部として基材が含まれたものを使用してもよい。
【0102】
<抄紙工程>
シートを形成する工程は、組成物(スラリー)を抄紙する工程を含んでもよい。抄紙工程で抄紙機としては、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。抄紙工程では、手抄き等公知の抄紙を行ってもよい。
【0103】
抄紙工程では、組成物(スラリー)をワイヤー上で濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、プレス、乾燥することでシートを得ることができる。スラリーの濃度は特に限定されないが、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。スラリーを濾過、脱水する場合、濾過時の濾布としては特に限定されないが、微細繊維状セルロースは通過せず、かつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては特に限定されないが、有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。具体的には孔径0.1μm以上20μm以下、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1μm以上20μm以下、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0104】
組成物(スラリー)からシートを製造する方法としては、特に限定されないが、例えばWO2011/013567に記載の製造装置を用いる方法等が挙げられる。この製造装置は、微細繊維状セルロースを含むスラリーを無端ベルトの上面に吐出し、吐出されたスラリーから分散媒を搾水してウェブを生成する搾水セクションと、ウェブを乾燥させて繊維シートを生成する乾燥セクションとを備えている。搾水セクションから乾燥セクションにかけて無端ベルトが配設され、搾水セクションで生成されたウェブが無端ベルトに載置されたまま乾燥セクションに搬送される。
【0105】
本発明において使用できる脱水方法としては特に限定されないが、紙の製造で通常に使用している脱水方法が挙げられ、長網、円網、傾斜ワイヤーなどで脱水した後、ロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、乾燥方法としては特に限定されないが、紙の製造で用いられている方法が挙げられ、例えば、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、近赤外線ヒーター、赤外線ヒーターなどの方法が好ましい。
【0106】
(積層体)
本発明においては、上述したシートと、シートの少なくとも一方の面側に配される樹脂層と、を有する積層体を製造してもよい。
【0107】
樹脂層は、天然樹脂や合成樹脂を主成分とする層である。ここで、主成分とは、樹脂層の全質量に対して、50質量%以上含まれている成分を指す。樹脂の含有量は、樹脂層の全質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、樹脂の含有量は、100質量%とすることもでき、95質量%以下であってもよい。
【0108】
天然樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル等のロジン系樹脂を挙げることができる。
【0109】
合成樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、及びシリコン樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、合成樹脂はポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、又はシリコン樹脂であることが好ましい。
【0110】
また、合成樹脂としては、接着層を構成する接着剤を挙げることもできる。このような合成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン/アクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂や、SBR、NBR等のゴム系エマルジョンなどが挙げられる。
【0111】
樹脂層を構成する樹脂は1種を単独で用いてもよく、複数の樹脂成分が共重合または、グラフト重合してなる共重合体を用いてもよい。また、複数の樹脂成分を物理的なプロセスで混合したブレンド材料として用いてもよい。
【0112】
シートの各々の面側に設けられる樹脂層としては、単一の樹脂層を設けてもよく、複数の樹脂層を設けてもよい。複数の樹脂層を設ける場合における樹脂層としては、上記した接着層を構成する接着剤と、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、及びシリコン樹脂から選ばれる少なくとも一種とを含む樹脂層を形成してよい。
【0113】
積層体を製造する際には樹脂層形成用の樹脂組成物をシート上に塗工することで形成してもよい。また、予め形成した樹脂層をシート上に積層してもよい。この場合、樹脂層とシートの間には接着層を設けてもよく、このような接着層も樹脂層に包含されるまた、シート製造時の基材が樹脂の場合、基材を剥離せずに、樹脂層の一部としてもよい。
【0114】
(用途)
本発明のセルロース繊維を含むパルプは、各種形態で使用される。例えば、スラリー状や固形状、といった形態とすることができる。本発明のセルロース繊維を含むパルプが固形状である場合、セルロース繊維を含むパルプからシートや粉粒物を形成してもよい。このようなシートや粉粒物は高白色度であるため、白色度が求められる用途に好ましく用いられる。例えば、高白色度の特性を生かす観点から、見た目にも清潔感が求められるおむつ、生理用品などの吸収剤、同様に清潔感が求められる除塵フィルタ等の不織布の用途に適している。
【0115】
また、上述したセルロース繊維のリン酸基導入量は漂白後であっても漂白前のリン酸基導入量と同レベルであり、リン酸基導入量は十分である。このため、上述したセルロース繊維は容易に微細化することができ、リン酸化微細繊維状セルロース含有スラリーやリン酸化微細繊維状セルロース含有シートの透明性は十分に高くなる。すなわち、着色が少なく、十分に微細化されたリン酸化微細繊維状セルロースが得られる。このような特性を活かす観点からリン酸化微細繊維状セルロースは各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池、等の光透過性基板の用途に適している。また、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適している。さらに、糸、フィルタ、織物、緩衝材、スポンジ、研磨材などの他、シートそのものを補強材として使う用途にも適している。
【実施例
【0116】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0117】
(実施例1)
<リン酸化反応工程>
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93質量%、坪量208g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を原料として使用した。上記針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を加え、リン酸二水素アンモニウム45質量部、尿素120質量部、イオン交換水150質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で200秒間乾燥・加熱処理し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化セルロース繊維Aを含むパルプを得た。
【0118】
<洗浄・アルカリ処理工程>
得られたリン酸化セルロース繊維Aを含むパルプに、イオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の薬液を十分に洗い流した。次いで、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度が2質量%となるようにイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加して、pHが12±0.2のスラリーを得た。その後、このスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の水酸化ナトリウムを十分に洗い流して、リン酸化セルロース繊維Bを含むパルプを得た。
【0119】
<漂白・アルカリ処理工程>
得られたリン酸化セルロース繊維Bを含むパルプに、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度が2質量%になるようにイオン交換水を注ぎ、均一になるよう撹拌し、499gの懸濁液を得た。懸濁液に懸濁液中の有効塩素濃度が549ppmになるよう有効塩素濃度が53.8g/Lの次亜塩素酸ナトリウムを5mL加え、撹拌しながら室温で漂白処理を開始した。なお、次亜塩素酸ナトリウムの添加量はリン酸化セルロース繊維を含むパルプの質量に対して2.7質量%であった。5分間の漂白処理の後、懸濁液中の有効塩素濃度を0とするのに十分量の0.1Nチオ硫酸ナトリウムを加えて懸濁液中に残存する有効塩素を中和し、漂白処理を終了した。漂白済みの懸濁液を濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰のチオ硫酸ナトリウム等の残存イオンを十分に洗い流した。次いで、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度が2質量%となるようにイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加して、pHが12±0.2のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の水酸化ナトリウムを十分に洗い流して、漂白リン酸化セルロース繊維Cを含むパルプを得た。漂白リン酸化セルロース繊維Cを含むパルプのISO白色度、色相及び重合度を後述の方法により測定した。
【0120】
<機械処理>
漂白リン酸化セルロース繊維Cを含むパルプにイオン交換水を添加し、漂白リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度が0.5質量%の懸濁液を調製した。この懸濁液を、解繊処理装置(エム・テクニック社製、クレアミックス-2.2S)を用いて、21500rpmの条件で30分間微細化処理(解繊処理)し、微細繊維状セルロース含有スラリーを得た。得られた微細繊維状セルロース含有スラリーの上澄み収率、粘度、ヘーズ及びリン酸基量を後述の方法により測定した。
【0121】
(実施例2)
実施例1の<漂白・アルカリ処理工程>において、懸濁液中の有効塩素濃度が110ppmになるように有効塩素濃度が53.8g/Lの次亜塩素酸ナトリウムを1mL加えた以外は実施例1と同様にして、リン酸化セルロース繊維Bを含むパルプ及び漂白リン酸化セルロース繊維Cを含むパルプを得た。
【0122】
(実施例3)
実施例1の<漂白・アルカリ処理工程>において、懸濁液中の有効塩素濃度が1097ppmになるように有効塩素濃度が53.8g/Lの次亜塩素酸ナトリウムを10mL加えた以外は実施例1と同様にして、リン酸化セルロース繊維Bを含むパルプ及び漂白リン酸化セルロース繊維Cを含むパルプを得た。
【0123】
(実施例4)
実施例1の<漂白・アルカリ処理工程>において、漂白処理時間を1分とした以外は、実施例1と同様にして、リン酸化セルロース繊維Bを含むパルプ、漂白リン酸化セルロース繊維Cを含むパルプ及び微細繊維状セルロース含有スラリーを得た。
【0124】
(実施例5)
実施例1の<漂白・アルカリ処理工程>において、漂白処理時間を15分とした以外は、実施例1と同様にして、リン酸化セルロース繊維Bを含むパルプ、漂白リン酸化セルロース繊維Cを含むパルプ及び微細繊維状セルロース含有スラリー得た。
【0125】
(実施例6)
実施例1の<漂白・アルカリ処理工程>において、懸濁液中の有効塩素濃度が110ppmになるように有効塩素濃度が53.8g/Lの次亜塩素酸ナトリウムを1mL加え、漂白処理を40℃の温浴中で行った以外は実施例1と同様にして、リン酸化セルロース繊維Bを含むパルプ及び漂白リン酸化セルロース繊維Cを含むパルプを得た。
【0126】
(実施例7)
<リン酸基導入工程(2回目)>
実施例1と同様に、<リン酸化反応工程>及び<洗浄・アルカリ処理工程>を行い、リン酸化セルロース繊維B1を含むパルプを得た。得られたリン酸化セルロース繊維B1を含むパルプを原料として、上述した<リン酸化反応工程>を再度行い、パルプ中のセルロースに、さらにリン酸基を導入し、リン酸化セルロース繊維B2を含むパルプを得た。
【0127】
<洗浄・アルカリ処理工程(2回目)>
得られたリン酸化セルロース繊維B2を含むパルプに対し、上述した<洗浄・アルカリ処理工程>を行い、リン酸化セルロース繊維B3を含むパルプを得た。
【0128】
<漂白・アルカリ処理工程>及び<機械処理>
実施例1の<漂白・アルカリ処理工程>において、懸濁液中の有効塩素濃度が1097ppmになるように有効塩素濃度が53.8g/Lの次亜塩素酸ナトリウムを10mL加え、漂白処理時間を15分に変更した以外は実施例1と同様にして、<漂白・アルカリ処理工程>及び<機械処理>を行い、漂白リン酸化セルロース繊維Cを含むパルプ及び微細繊維状セルロース含有スラリーを得た。
【0129】
(実施例8)
<リン酸化反応工程>及び<洗浄・アルカリ処理工程>
実施例1と同様に、<リン酸化反応工程>及び<洗浄・アルカリ処理工程>を行い、リン酸化セルロース繊維Bを含むパルプを得た。
【0130】
<漂白・アルカリ処理工程>
得られたリン酸化セルロース繊維Bを含むパルプに、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度が2質量%になるようにイオン交換水を注ぎ、均一になるよう撹拌し、447gの懸濁液を得た。懸濁液に懸濁液中の有効塩素濃度が549ppmになるよう有効塩素濃度が5.1g/Lの二酸化塩素を52.8mL加え、二酸化塩素が懸濁液中で十分にいきわたるよう十分にもみほぐした後、70℃の温浴中で漂白処理を開始した。なお、二酸化塩素の添加量はリン酸化セルロース繊維の質量に対して2.7質量%であった。5分間の漂白処理ののち、二酸化塩素を中和するのに十分量の0.1Nチオ硫酸ナトリウムを加えて懸濁液中に残存する有効塩素を中和し、漂白処理を終了した。漂白済み懸濁液を濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰のチオ硫酸ナトリウム等の残存イオンを十分に洗い流した。次いで、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度が2質量%となるようにイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加して、pHが12±0.2のスラリーを得た。その後、このスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の水酸化ナトリウムを十分に洗い流して、漂白リン酸化セルロース繊維Cを含むパルプを得た。
【0131】
(実施例9)
<リン酸化反応工程>及び<洗浄・アルカリ処理工程>
実施例1と同様に、<リン酸化反応工程>及び<洗浄・アルカリ処理工程>を行い、リン酸化セルロース繊維Bを含むパルプを得た。
【0132】
<漂白・アルカリ処理工程>
得られたリン酸化セルロース繊維Bを含むパルプに、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度が2質量%になるようにイオン交換水を注ぎ、均一になるよう撹拌し、499gの懸濁液を得た。懸濁液中のリン酸化セルロース繊維を含むパルプの質量に対し、二酸化チオ尿素(FAS)の添加率が15質量%となるように、懸濁液に二酸化チオ尿素(FAS)を1.5g加え、80℃の温浴中で撹拌しながら漂白処理を開始した。15分間の漂白処理ののち、漂白済み懸濁液を濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰のチオ硫酸ナトリウム等の残存イオンを十分に洗い流した。次いで、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度が2質量%となるようにイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加して、pHが12±0.2のスラリーを得た。その後、このスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の水酸化ナトリウムを十分に洗い流して、漂白リン酸化セルロース繊維Cを含むパルプを得た。
【0133】
(比較例1)
実施例1において、<漂白・アルカリ処理工程>を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、リン酸化セルロース繊維Bを含むパルプ及び微細繊維状セルロース含有スラリーを得た。
【0134】
(比較例2)
実施例7において、<漂白・アルカリ処理工程>を行わなかった以外は、実施例7と同様にして、リン酸化セルロース繊維を含むパルプB及び微細繊維状セルロース含有スラリーを得た。
【0135】
(分析及び評価)
<リン酸化セルロース繊維を含むパルプのISO白色度及びb*値測定>
実施例で得られた漂白リン酸化セルロース繊維を含むパルプもしくは、比較例で得られたリン酸化セルロース繊維を含むパルプにイオン交換水を添加し、リン酸化セルロース繊維を含むパルプの濃度が0.3質量%の懸濁液を調製し、撹拌して十分に均一にした。この懸濁液をセパロートを用いて濾過し、ろ紙(ADVANTEC東洋株式会社製、φ90mm)上に絶乾坪量が200g/m2のウェットシートを形成した。ウェットシートをろ紙から剥がし取ってステンレストレーに乗せ、23℃、相対湿度50%の条件下で3日間乾燥させた。乾燥済みのシートの両面を紙及び金属プレートではさみ、ミニホットプレス(株式会社東洋精機製作所製、MP-SNH)で7.7MPaの加重圧で1分間プレスし、パルプシートを得た。なお、各実施例及び各比較例についてパルプシートを4枚ずつ作製した。パルプシートを4枚重ね合わせ、分光白色度測色計(スガ試験機株式会社製、SC-10WN)を用いて、ISO白色度(JIS P 8148に準拠)及びb*値(JIS P 8150に準拠)を測定した。
【0136】
【表1】
【0137】
実施例1、4、5及び7並びに比較例1及び2については、上述した<機械処理>を行い、微細繊維状セルロースを得た。得られた微細繊維状セルロース含有スラリー及び微細繊維状セルロースについて、以下の測定行った。
【0138】
<上澄み収率の測定>
微細繊維状セルロース含有スラリーについて、遠心分離した後の上澄み収率を以下に記載の方法により測定した。遠心分離後の上澄み収率は、微細繊維状セルロースの収率の指標となり、上澄み収率が高い程、微細繊維状セルロースの収率が高い。
微細繊維状セルロース含有スラリーにイオン交換水を添加して、固形分濃度を0.1質量%に調整したスラリーとした(スラリーA)。スラリーAを、冷却高速遠心分離機(コクサン社製、H-2000B)を用い、12000Gの条件で10分間遠心分離した。得られた上澄み液(スラリーBとする)を回収し、上澄み液の固形分濃度を測定した。そして、下記式に基づいて、上澄み収率(微細繊維状セルロースの収率)を算出した。
上澄み収率(%)=(スラリーBの固形分濃度(質量%))/(スラリーAの固形分濃度(質量%))×100
【0139】
<重合度の測定>
微細繊維状セルロースの重合度は、Tappi T230に従い測定されたパルプ粘度から計算した。具体的には、測定対象の微細繊維状セルロースを、分散媒に分散させて測定した粘度(η1とする)、及び分散媒体のみで測定したブランク粘度(η0とする)を測定したのち、比粘度(ηsp)、固有粘度([η])を下記式に従って算出した。
ηsp=(η1/η0)-1
[η]=ηsp/(c(1+0.28×ηsp))
ここで、式中のcは、粘度測定時の微細繊維状セルロースの濃度を示す。
さらに、下記式から重合度(DP)を算出した。
DP=1.75×[η]
この重合度は粘度法によって測定された平均重合度であることから、「粘度平均重合度」と称されることもある。
【0140】
<粘度の測定>
微細繊維状セルロース含有スラリーの粘度は、微細繊維状セルロース含有スラリーの固形分濃度が0.4質量%となるように希釈した後に、ディスパーザーにて1500rpmでスラリーを均一に攪拌した。得られたスラリーを24時間静置したのち、スラリーの粘度をB型粘度計(BLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T-LVT)を用いて測定した。測定条件は、25℃の条件とし、3rpmで3分間回転させた際の粘度を測定した。
【0141】
<ヘーズの測定>
ヘーズは、微細繊維状セルロース含有スラリーの透明度の尺度であり、ヘーズ値が低いほどスラリーの透明度が高い。ヘーズの測定は機械処理工程(微細化工程)後の微細繊維状セルロース含有スラリーを、イオン交換水で固形分濃度が0.2質量%となるように希釈し、スラリーを均一に攪拌する。ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM-150)を用いて測定した。測定には光路長が1cmの液体用ガラスセル(藤原製作所製、MG-40、逆光路)を用い、JIS K 7136に準拠して測定した。なお、ゼロ点測定は、該ガラスセルにイオン交換水を入れて行った。
【0142】
<リン酸基の導入量の測定>
リン酸基の導入量は、伝導度滴定法により測定した。具体的には、機械処理工程(微細化工程)工程により微細化を行い、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーをイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定した。
イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%の微細繊維状セルロース含有スラリーに体積比で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024;コンディショング済)を加え、20分間撹拌処理を行った。その後、目開き200μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の微細繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、分散液が示す電気伝導度の値の変化を計測した。
この伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図1に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。すなわち、3つの領域が現れる。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用した分散液中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用した分散液中の弱酸性基量と等しくなる。図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象分散液中の固形分(g)で除して、第1解離アルカリ量(mmol/g)とし、この量をリン酸基の導入量とした。
【0143】
<微細繊維状セルロース含有シートの黄色度測定>
微細繊維状セルロース含有スラリーの黄色度を評価するために、微細繊維状セルロース含有シートの黄色度を評価した。固形分濃度が0.5質量%の微細繊維状セルロース含有スラリーを最終的なシートの絶乾坪量が40g/m2となるよう所定量分取し、孔径650nmのPVDFメンブレンフィルターを挟んだセパロートに注ぎ入れ、吸引濾過を行うことにより脱水し、微細繊維状セルロースの固形分が4質量%以上の微細繊維状セルロース含有ウェットシートを作製した。微細繊維状セルロース含有ウェットシートをメンブレンフィルターから剥がし取り、ポリカーボネート板に乗せて23℃、相対湿度50%の調湿室で2日間緊張乾燥させ、微細繊維状セルロース含有シートを得た。
JIS K 7373に準拠し、Colour Cute i(スガ試験機株式会社製)を用いて微細繊維状セルロース含有シートの黄色度(YI)を測定した。次いで、下記の換算式を用いて、膜厚30μm換算のシートの黄色度(YI30)を算出した。
膜厚30μm換算のシートの黄色度(YI30)=シートの黄色度(YI)×(30(μm))/(シートの膜厚(μm))
【0144】
【表2】
【0145】
実施例で得られたリン酸化セルロース繊維を含むパルプはISO白色度が高く、かつb*値が低いものであった。そして、このような高白色、低b*値を有するリン酸化セルロース繊維を含むパルプを微細化した場合であっても、微細繊維状セルロースのスラリーの物性は維持されており、微細繊維状セルロース含有スラリーから形成されるシートの黄色度も低く抑えられていた。
【0146】
なお、上記において、比較例1で得られるセルロース繊維を含むパルプは、漂白する工程の前のセルロース繊維を含むパルプに相当するものである。このため、実施例1と比較例1を比較することで漂白する工程の前のセルロース繊維のリン酸基量と、漂白する工程の後のセルロース繊維のリン酸基量の差を算出することができ、その差は0.04mmol/gであった。
また、漂白する工程の前のセルロース繊維を含むパルプを微細化して得られる微細繊維状セルロースの粘度平均重合度と、漂白する工程の後のセルロース繊維を含むパルプを微細化して得られる微細繊維状セルロースの粘度平均重合度の差は22であった。
漂白する工程の前のセルロース繊維を微細化処理し、0.4質量%の濃度の微細繊維状セルロース含有スラリー1とした際の該スラリー1の粘度をPとし、漂白する工程の後のセルロース繊維を微細化処理し、0.4質量%の濃度の微細繊維状セルロース含有スラリー2とした際の該スラリー2の粘度をQとした場合、P/Qの値は、1.0であった。
図1