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特許6992771磁気ユニット、位置検出装置および磁気部材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】磁気ユニット、位置検出装置および磁気部材
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
G01D5/12 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019013656
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020122685
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】岡 禎一郎
(72)【発明者】
【氏名】福岡 誠二
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114536(JP,A)
【文献】特開2012-002325(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0015971(US,A1)
【文献】特開2012-094558(JP,A)
【文献】特開2014-095614(JP,A)
【文献】特開2015-010876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
G01D 5/00-5/252
5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気部材と、
軸方向に延在すると共に前記磁気部材を保持する保持部材と、
前記軸方向において前記磁気部材と隣り合うように配置され、前記軸方向において前記保持部材と連結されたシャフトと
を有し、
前記磁気部材は、
前記軸方向に延在すると共に、前記軸方向と直交する断面積が前記軸方向において実質的に一定であり、前記軸方向と直交する径方向において第1の最大外径を有する磁石と、
前記軸方向において前記磁石と隣り合うように配置され、前記径方向において前記第1の最大外径よりも大きい第2の最大外径を有する第1の磁気ヨークと
を含む
磁気ユニット。
【請求項2】
前記磁気部材は、
前記磁石から見て前記第1の磁気ヨークと反対側において前記磁石と隣り合うように配置され、前記径方向において前記第1の最大外径よりも大きい第3の最大外径を有する第2の磁気ヨークをさらに含む
請求項1記載の磁気ユニット。
【請求項3】
前記磁石、前記第1の磁気ヨークおよび前記第2の磁気ヨークは、それぞれ、前記軸方向を高さ方向とする円柱状もしくは円筒状の外観を有する
請求項2記載の磁気ユニット。
【請求項4】
前記磁石における前記軸方向の第1の厚さは、前記第1の磁気ヨークにおける前記軸方向の第2の厚さおよび前記第2の磁気ヨークにおける前記軸方向の第3の厚さの双方よりも厚い
請求項2または請求項3に記載の磁気ユニット。
【請求項5】
軸方向に延在すると共に前記軸方向と直交する断面積が前記軸方向において実質的に一定であり、前記軸方向と直交する径方向において第1の最大外径を有する磁石と、前記軸方向において前記磁石と隣り合うように配置されて前記径方向において前記第1の最大外径よりも大きい第2の最大外径を有する第1の磁気ヨークとを含む磁気部材、前記軸方向に延在すると共に前記磁気部材を保持する保持部材、および前記軸方向において前記磁気部材と隣り合うように配置され前記軸方向において前記保持部材と連結されたシャフト、を有する磁気ユニットと、
前記軸方向に沿った前記磁気ユニットの移動に伴って変化する磁場を検知するセンサと
を備える位置検出装置。
【請求項6】
前記センサは、前記磁場の向きおよび前記磁場の強度のうちの少なくとも一方を検知する
請求項5記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記センサが検知する前記磁場に基づいて前記センサに対する前記磁気ユニットの位置を検出する演算部をさらに備える
請求項5または請求項6記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ユニット、位置検出装置、ならびに磁気部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の部材について、その位置を検出する位置検出装置として、検出対象とする特定の部材に例えば永久磁石を取り付け、その永久磁石の位置変化に伴う磁場変化を磁気抵抗効果素子などの磁気センサにより検出するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-83516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような位置検出装置に対しては、より小型化であることが望まれる。したがって、より小型化に適した構造の位置検出装置、ならびにそのような位置検出装置に搭載され得る磁気部材および磁気ユニットを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施の形態としての磁気ユニットは、磁気部材と、軸方向に延在すると共にその磁気部材を保持する保持部材とを有する。ここで磁気部材は、磁石と、第1の磁気ヨークとを含む。磁石は、軸方向に延在すると共に、軸方向と直交する断面積が軸方向において実質的に一定であり、軸方向と直交する径方向において第1の最大外径を有する。第1の磁気ヨークは、軸方向において磁石に隣接配置され、径方向において第1の最大外径よりも大きい第2の最大外径を有する。
【0006】
本発明の一実施の形態としての磁気ユニットでは、保持部材が延在する軸方向において互いに隣り合う磁石および第1の磁気ヨークを備え、径方向において磁石よりも第1の磁気ヨークのほうが突出している。したがって、第1の磁気ヨーク近傍での径方向における磁場強度が向上する。
【0007】
本発明の一実施の形態としての位置検出装置は、磁気ユニットと、センサとを備える。磁気ユニットは、軸方向に延在すると共に軸方向と直交する断面積が軸方向において実質的に一定であり、軸方向と直交する径方向において第1の最大外径を有する磁石と、軸方向において磁石に隣接配置されて径方向において第1の最大外径よりも大きい第2の最大外径を有する第1の磁気ヨークとを含む磁気部材、および軸方向に延在すると共に磁気部材を保持する保持部材、とを有する。センサは、軸方向に沿った磁気ユニットの移動に伴って変化する磁場を検知する。
【0008】
本発明の一実施の形態としての位置検出装置では、保持部材が延在する軸方向において互いに隣り合う磁石および第1のヨークを含み、径方向において磁石よりも第1のヨークのほうが突出している。したがって、径方向における磁場強度が向上し、センサは、磁石からより離れた位置であっても磁石により発生する磁場分布の変化を検出できる。また、センサと磁石との距離を近づけることなく、磁石の小型化が可能となる。
【0009】
本発明の一実施の形態としての磁気部材は、磁石と、磁気ヨークとを含む。磁石は、軸方向に延在すると共に、軸方向と直交する断面積が軸方向において実質的に一定であり、軸方向と直交する径方向において第1の最大外径を有する。磁気ヨークは、軸方向において磁石と隣接配置され、径方向において第1の最大外径よりも大きい第2の最大外径を有する。
【0010】
本発明の一実施の形態としての磁気部材では、軸方向において互いに隣り合う磁石および磁気ヨークのうち、磁気ヨークのほうが径方向において突出している。したがって、磁気ヨーク近傍での径方向における磁場強度が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施の形態としての磁気ユニットおよび位置検出装置によれば、位置検出を可能としつつ、より小型化に適した構造が実現できる。また、本発明の一実施の形態としての磁気部材によれば、上述の磁気ユニットおよび位置検出装置に適用できる。
なお、本発明の効果はこれに限定されるものではなく、以下に記載のいずれの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の一実施の形態としての位置検出装置の全体構成を表す斜視図である。
図1B図1Aに示した位置検出装置の全体構成を表す正面図である。
図2図1Aに示した磁気部材の正面図である。
図3A図1Aに示した磁気部材の周囲に形成される磁場分布を表す説明図である。
図3B】参考例としての単体磁石の周囲に形成される磁場分布を表す説明図である。
図4A図3Aに示した磁気部材の端部近傍に形成される磁場分布を拡大して表す説明図である。
図4B図3Bに示した参考例としての単体磁石の周囲に形成される磁場分布を拡大して表す説明図である。
図5A図3Aに示した磁気部材における、軸方向に沿った磁場強度分布を表す特性図である。
図5B図3Aに示した磁気部材における、磁石を小型化したときの軸方向の磁場強度分布を表す特性図である。
図6図1に示した位置検出装置における、軸方向に沿った磁気部材の位置と磁気センサユニットからのセンサ出力との関係を表す特性図である。
図7A】本発明の第1変形例としての磁気部材の全体構成を表す正面図である。
図7B】本発明の第2変形例としての磁気部材の全体構成を表す正面図である。
図7C】本発明の第3変形例としての磁気部材の全体構成を表す正面図である。
図7D】本発明の第4変形例としての磁気部材の全体構成を表す正面図である。
図7E】本発明の第5変形例としての磁気部材の全体構成を表す正面図である。
図7F】本発明の第6変形例としての磁気部材の全体構成を表す正面図である。
図8図7Fに示した磁気部材における軸方向の磁場強度分布を表す特性図である。
図9】本発明の第7変形例としての磁気部材の構成を表す部分破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.一実施の形態(磁石の両端に一対の磁気ヨークを隣接配置するようにした例。)
2.変形例
【0014】
<1.一実施の形態>
[位置検出装置1の構成]
図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係る位置検出装置1の全体構成例を表す斜視図である。図1Bは、位置検出装置1を正面から眺めた正面図である。図1Aおよび図1Bでは、外観には現れない内部構造を破線で示している。位置検出装置1は、例えば磁気ユニット2と、磁気センサユニット3とを備えている。この位置検出装置1では、磁気ユニット2が、例えばZ軸方向(図1Aなど参照)に沿って磁気センサユニット3に対し相対的に移動可能に設けられている。具体的には、図1Aおよび図1Bに示したように、磁気ユニット2が+Z方向および-Z方向に可逆的に移動可能に設けられている。位置検出装置1は、磁気センサユニット3により、磁気ユニット2の中心軸2Zに沿ったZ軸方向の移動量を検出可能に構成されている。あるいは、位置検出装置1は、磁気センサユニット3により、Z軸方向における、例えば磁気センサユニット3の位置を基準とした磁気ユニット2の相対位置を検出可能に構成されている。
【0015】
[磁気ユニット2の構成]
磁気ユニット2は、Z軸に沿って延びる中心軸2Zを有すると共に、その中心軸2Z上に順に並ぶシャフト10、ホルダ11および磁気部材12を有する。磁気ユニット2は、本発明の「磁気ユニット」に対応する一具体例である。
【0016】
(シャフト10)
シャフト10は、例えばZ軸方向を高さ方向とする略円柱状もしくは円筒状の部材であり、中心軸2Zにおいてホルダ11と隣接するように配置されている。
【0017】
(ホルダ11)
ホルダ11は、Z軸方向における一端がシャフト10と接続された部材であり、その内部に、Z軸方向を高さ方向とする円柱状の空間11Vを有している。その空間11Vには磁気部材12が収容されている。ホルダ11は、本発明の「保持部材」に対応する一具体例である。
【0018】
(磁気部材12)
図2は、図1Aに示した磁気部材12の正面図である。磁気部材12は、永久磁石21と、2つの磁気ヨーク31,32とを有している。永久磁石21および2つの磁気ヨーク31,32は、ホルダ11およびシャフト10と一体となって+Z方向および-Z方向に可逆的に移動可能となっている。
【0019】
永久磁石21は、中心軸2Zに沿って延在すると共に、Z軸方向と直交するXY断面の断面積がZ軸方向において実質的に一定である。永久磁石21は、例えばZ軸方向を高さ方向とする円柱状もしくは円筒状の外観を有し、図2に示したように例えばZ軸方向において厚さT21を有すると共にZ軸方向と直交するXY断面に沿った径方向において最大外径D21を有する。永久磁石21は、例えばフェライトや希土類元素を含有する硬質強磁性体を含み、自らの周囲に磁場分布(後出の図3Aなど参照)を形成する。また、本実施の形態では、永久磁石21は、N極部分21NとS極部分21SとがZ軸方向に沿って並ぶように、ホルダ11に保持されている。
【0020】
ここで、永久磁石21は本発明の「磁石」に対応する一具体例であり、最大外径D21は、本発明の「第1の最大外径」に対応する一具体例である。
【0021】
磁気ヨーク31は、Z軸方向において永久磁石21に隣接配置され、XY断面に沿った径方向において最大外径D21よりも大きい最大外径D31を有する。また、磁気ヨーク32は、永久磁石21から見て磁気ヨーク31と反対側において永久磁石21と隣接して配置され、XY断面に沿った径方向において最大外径D21よりも大きい最大外径D32を有する。磁気ヨーク31および磁気ヨーク32は、いずれも、例えばニッケル鉄合金(NiFe)などの高飽和磁束密度を有する軟磁性金属材料により構成された軟磁性体である。磁気ヨーク31の構成材料と磁気ヨーク32の構成材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。磁気ヨーク31,32は、いずれも例えばZ軸方向を高さ方向とする円柱状もしくは円筒状の外観を有し、図2に示したように例えばZ軸方向において厚さT31,T32をそれぞれ有すると共にZ軸方向と直交するXY断面に沿った径方向において最大外径D31,D32をそれぞれ有する。なお、図2などにおいては、厚さT31と厚さT32とが等しく、最大外径D31と最大外径D32とが等しい場合を例示している。また、本実施の形態では、永久磁石21における厚さT21は、磁気ヨーク31における厚さT31および磁気ヨーク32における厚さT32の双方よりも厚い場合を例示している。
【0022】
ここで、磁気ヨーク31および磁気ヨーク32は本発明の「第1の磁気ヨーク」および「第2の磁気ヨーク」にそれぞれ対応する一具体例であり、最大外径D31および最大外径D32は、本発明の「第2の最大外径」および「第3の最大外径」にそれぞれ対応する一具体例である。また、厚さT21が本発明の「第1の厚さ」に対応する一具体例であり、厚さT31が本発明の「第2の厚さ」に対応する一具体例であり、厚さT32が本発明の「第3の厚さ」に対応する一具体例である。
【0023】
[磁気センサユニット3の構成]
磁気センサユニット3は、Z軸方向に沿った磁気ユニット2の移動に伴って変化する磁場を検知する。すなわち、磁気センサユニット3は、磁気ユニット2における磁気部材12の永久磁石21が形成する磁場分布におけるYZ平面に投影された磁場の強度および向き(図3A参照)を検知するものであり、例えばY軸方向センサ素子3YおよびZ軸方向センサ素子3Zを含むセンサパッケージ3P(図1A図1Bなど参照)を有している。磁気センサユニット3は、本発明の「センサ」に対応する一具体例である。Y軸方向センサ素子3YおよびZ軸方向センサ素子3Zは、いずれも、例えば磁気抵抗効果膜を含む薄膜デバイスである。Y軸方向センサ素子3Yは主にY軸方向の磁場強度を検出し、Z軸方向センサ素子3Zは主にZ軸方向の磁場強度を検出する。Y軸方向センサ素子3Yが磁気抵抗効果膜を含む場合、その磁気抵抗効果膜は、例えばZ軸方向に沿って固着された磁化を有するピンド層を含むと共にYZ面内において回転可能な磁化を有するフリー層とを含む。一方、Z軸方向センサ素子3Zが磁気抵抗効果膜を含む場合、その磁気抵抗効果膜は、例えばY軸方向に沿って固着された磁化を有するピンド層を含むと共にYZ面内において回転可能な磁化を有するフリー層とを含む。センサパッケージ3Pは、例えば共通の基板上にY軸方向センサ素子3YおよびZ軸方向センサ素子3Zや配線等が設けられ、樹脂等により封止されたチップ状の電子デバイスである。磁気センサユニット3は、図1Bに示したように、例えばマイクロコントローラ(マイクロプロセッサ)を含む演算部4をさらに有している。演算部4は、Y軸方向センサ素子3YおよびZ軸方向センサ素子3Zにより検知される磁場の強度および磁場の変化のうちの少なくとも一方に基づいて磁気センサユニット3に対する磁気ユニット2の位置を検出する。
【0024】
[位置検出装置1の作用および効果]
本実施の形態の位置検出装置1では、上述したように、磁気ユニット2が、例えば中心軸2Zに沿って磁気センサユニット3に対し相対的に移動可能に設けられている。位置検出装置1は、磁気センサユニット3を用いて、磁気ユニット2の中心軸2Zに沿ったZ軸方向の移動量や、中心軸2Zに沿った方向における、例えば磁気センサユニット3の位置を基準とした磁気ユニット2の相対位置を検出することができる。
【0025】
より具体的には、位置検出装置1では、例えば図3Aに示したように、磁気センサユニット3に内蔵されるセンサパッケージ3Pが、磁気部材12の永久磁石21の形成する磁場分布が及ぶ範囲に設置され、磁力線ML1がセンサパッケージ3Pを通過するようになっている。なお、図3Aは、位置検出装置1の作用を説明するための模式図である。図3Aでは、永久磁石21および磁気ヨーク31,32を有する磁気部材12と、その磁気部材12の周囲に現れる磁場分布および磁力線ML1とが描かれている。図3Aに示したように、Z軸方向に沿って、例えば紙面右方向へ磁気ユニット2が移動することにより相対的にセンサパッケージ3Pが破線で示した位置P3Aから破線で示した位置P3Cを経て、実線で示した位置P3Bに紙面左方向へ移動するとする。その際、Y軸方向センサ素子3YおよびZ軸方向センサ素子3Zは、磁気ユニット2の移動に伴い発生する、自らに及ぶ磁場の強度変化を検出することとなる。Y軸方向センサ素子3YおよびZ軸方向センサ素子3Zが磁気抵抗効果膜を含む場合、Y軸方向センサ素子3YおよびZ軸方向センサ素子3Zに付与される磁場の強度変化は抵抗値の変化として検出される。位置P3Aでの抵抗値と、位置P3Cでの抵抗値と、位置P3Bでの抵抗値との比較により、センサパッケージ3Pに対する磁気ユニット2の相対位置(移動量)を算出できる。なお、Y軸方向センサ素子3YおよびZ軸方向センサ素子3Zが磁気抵抗効果膜を含む場合、Y軸方向センサ素子3YおよびZ軸方向センサ素子3Zにそれぞれ付与される磁場の強度とY軸方向センサ素子3YおよびZ軸方向センサ素子3Zの各抵抗値との関係はそれぞれ既知であるとする。
【0026】
図3Aにおいて、位置P3Aは永久磁石21と磁気ヨーク32との境界近傍に対応する位置であり、位置P3CはZ軸方向における永久磁石21の中央に対応する位置であり、位置P3Bは永久磁石21と磁気ヨーク31との境界近傍に対応する位置である。センサパッケージ3Pに及ぶ磁場は、位置P3Aから位置P3Cに至る手前までは-Y方向の成分および+Z方向の成分を含み、位置P3Cにおいてほぼ+Z方向の成分のみとなり、位置P3Cを超えて位置P3Bに至るまでは+Y方向の成分および+Z方向の成分を含むこととなる。そのため、センサパッケージ3Pに及ぶ+Y方向の磁場強度は、図3Aの下部の表に示したように、位置P3Aから位置P3Cに至る手前までは負となり、位置P3Cにおいてほぼ0(零)となり、位置P3Cを超えて位置P3Bに至るまでは正となる。また、センサパッケージ3Pに及ぶ+Z方向の磁場強度は、図3Aの下部の表に示したように、位置P3Aから位置P3Cに至る手前までは弱となり、位置P3Cにおいて強(極大)となり、位置P3Cを超えて位置P3Bに至るまでは弱となる。センサパッケージ3Pにおいては、Y軸方向センサ素子3Yが主にY軸方向の磁場強度を検出し、Z軸方向センサ素子3Zが主にZ軸方向の磁場強度を検出する。センサパッケージ3Pにおいては、Y軸方向の磁場強度に応じたY軸方向センサ素子3Yの抵抗値と、Z軸方向の磁場強度に応じたZ軸方向センサ素子3Zの抵抗値とに基づき、センサパッケージ3Pにおよぶ磁場の向きを検出し、Z軸方向における磁気ユニット2の相対位置(移動量)を検出する。
【0027】
なお、ここではY軸方向センサ素子3YおよびZ軸方向センサ素子3Zの双方を用いて磁気ユニット2の相対位置(移動量)を検出するようにしたが、Y軸方向センサ素子3Yのみ、またはZ軸方向センサ素子3Zのみを用いてセンサパッケージ3Pに対する磁気ユニット2の相対位置(移動量)を検出するようにしてもよい。但し、Y軸方向センサ素子3YおよびZ軸方向センサ素子3Zの双方を用いたほうが、検出精度および検出範囲の点において有利である。
【0028】
ここで、本実施の形態の磁気ユニット2では、Z軸方向において永久磁石21の両側に隣接配置された磁気ヨーク31および磁気ヨーク32を有するようにした。さらに、磁気ヨーク31の最大外径D31および磁気ヨーク32の最大外径D32を、永久磁石21の最大外径D21よりも大きくするようにした。そのため、永久磁石21の径方向において永久磁石21よりも磁気ヨーク31,32のほうが突出している。したがって、本実施の形態の磁気部材12では径方向における磁場強度が向上し、例えば図3Bに示した参考例のように単体の永久磁石121を配置した場合と比較して、センサパッケージ3Pに対しより強度の高い磁場が付与されることとなる。なお、図3Bでは、参考例として、単体の永久磁石121と、その永久磁石121の周囲に現れる磁場分布および磁力線ML101とが描かれている。図3Bの参考例では、センサパッケージ3Pに対し、図3Aに示した磁力線ML1と同じ強度の磁力線ML101が届いていない様子を表している。
【0029】
図3Aに示した磁場分布と図3Bに示した磁場分布との差異は、次のように解釈できる。図4Aは、図3Aに示した磁気部材12の端部近傍に形成される磁場分布を拡大して表す説明図である。図4Aに示したように、本実施の形態の磁気部材12では、永久磁石21の端面S21から出る磁力線の向きが、磁気ヨーク31においてZ軸方向から磁気ヨーク31の突出方向、すなわちZ軸方向と直交する永久磁石21の径方向へ大きく変化している。このため、本実施の形態の磁気部材12では、Z軸方向と直交する径方向における磁場強度が向上すると考えられる。
【0030】
これに対し、参考例としての単体の永久磁石121のみを配置した場合には、永久磁石121の端面S121から外部へ出る磁力線はZ軸方向を向いた状態であり、その後、緩やかに永久磁石121の径方向へ変化している。したがって、本実施の形態の磁気部材12と比較して、Z軸方向と直交する径方向における磁場強度が低下すると考えられる。
【0031】
次に、図5Aに、磁気部材12のZ軸方向の位置と、磁気センサユニット3に付与される合成磁場強度との関係を示す。図5Aでは、横軸が磁気部材12のZ軸方向の位置を表し、縦軸が磁気センサユニット3に付与される合成磁場強度を表す。合成磁場強度とは、Y軸方向の磁場強度とZ軸方向の磁場強度とを合成したものである。また、符号HL付した2点鎖線は、磁気センサユニット3において検出可能な最低磁場強度を表している。また、符号C1を付した実線が本実施の形態の磁気部材12における磁場強度分布に対応し、符号C2を付した破線が永久磁石21のみによる磁場強度分布に対応している。図5Aに示したように、永久磁石21のみの場合、位置P1から位置P2までの範囲において最低磁場強度HLが確保されるところ(曲線C2)、磁気部材12の場合、位置P1Aから位置P2Aまでのより広い範囲において最低磁場強度HLが確保される(曲線C1)。したがって、永久磁石21に磁気ヨーク31,32を追加することにより、より広い移動範囲において磁気ユニット2の位置を検出することができる。
【0032】
次に、図5Bに、曲線C1Aとして、位置P1から位置P2までの範囲において最低磁場強度HLが確保されるように永久磁石21の体積を縮小させた場合の磁気部材12について、Z軸方向の位置と磁気センサユニット3に付与される合成磁場強度との関係を示す。図5Bに示した曲線C2は、図5Aに示したものと同じである。ここで、曲線C1Aの磁場強度分布を示す永久磁石21の体積は、曲線C2の磁場強度分布を示す永久磁石21の体積の4/5程度である。よって、本実施の形態の磁気部材12によれば、小型化および軽量化に有利である。
【0033】
また、本実施の形態の磁気部材12は、磁気ヨーク31,32を永久磁石21に付加するようにしたので、磁気ヨーク31,32の最大外径D31,D32や厚さT31,T32などの寸法を調整したり、磁気ヨーク31,32の構成材料を変更したりすることにより、磁気ユニット2のZ軸方向の位置に対する磁気センサユニット3からの出力電圧の変化をリニアにより近づけることができる。すなわち、設計自由度が広がる。図6は、磁気ユニット2のZ軸方向の位置と、磁気センサユニット3からの出力電圧との関係を表す特性図である。図6では、横軸が磁気ユニット2のZ軸方向の位置を表し、縦軸が磁気センサユニット3からの出力電圧(センサ出力)を表している。図6において、実線は本実施の形態の磁気部材12の特性を表し、破線は本実施の形態の磁気部材12から磁気ヨーク31,32を取り除いた場合の特性を表している。図6に示したように、破線よりも実線のほうがより直線に近似していることがわかる。
【0034】
なお、先に挙げた特許文献1では、所定数の磁石と所定数の軟磁性体とが被位置検出部材の直線移動方向に直線状に接合された磁界発生部材を備えた位置検出センサが記載されている。しかしながら、特許文献1の位置検出センサでは、直線移動方向に直交する面に平行な寸法は、磁石と軟磁性体とにおいて実質的に等しい。したがって、上記実施の形態の磁気ユニット2における磁気部材12の作用効果は得られない。
【0035】
<2.変形例>
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、1つの永久磁石21の両隣に、永久磁石21の最大外径D21よりも大きな最大外径D31,D32を有する磁気ヨーク31,32を設けるようにした磁気部材12を例示したが、本発明の磁気部材はこれに限定されるものではない。
【0036】
例えば、本発明の磁気部材は、図7A図7Fにそれぞれ示した、本発明の第1~第6の変形例としての磁気部材12A~12Fであってもよい。
【0037】
図7Aの磁気部材12Aは、上記実施の形態の磁気部材12から磁気ヨーク32を除去した構造を有している。
【0038】
図7Bの磁気部材12Bでは、磁気ヨーク32の最大外径D32が永久磁石21の最大外径D21と実質的に等しい構造を有する。
【0039】
図7Cの磁気部材12Cは、上記実施の形態の磁気部材12に、さらに永久磁石22および磁気ヨーク33を追加したものである。
【0040】
図7Dの磁気部材12Dは、図7Cの磁気部材12Cにおける磁気ヨーク32の厚さT32をより拡大したものである。
【0041】
図7Eの磁気部材12Eは、図7Cの磁気部材12Cにおける永久磁石21の厚さT21および磁気ヨーク31の厚さT31をそれぞれ縮小すると共に磁気ヨーク31の最大外径D31を縮小したものである。
【0042】
図7Fの磁気部材12Fは、上記実施の形態の磁気部材12に、永久磁石22をさらに追加した構造を有している。但し、永久磁石22の最大外径D22は、最大外径D21,D31,D32よりも小さい。図7Fに示した磁気部材12Fは、Z軸方向と直交するXY平面を対称面とする左右対称の磁場分布ではなく、特定の偏りのある分布を得たい場合に好適である。図7Fに示した磁気部材12Fの場合、例えば図8に示したように、Z軸方向における中心位置CLよりも左側における磁場強度のほうが中心位置CLよりも右側における磁場強度よりも高くなるような磁場強度分布を呈する。磁気部材12Fの場合、中心位置CLよりも左側における磁気ボリュームが中心位置CLよりも右側における磁気ボリュームよりも大きいからである。
【0043】
このように、本発明の磁気部材においては、永久磁石の数、寸法および形状と、磁気ヨークの数、寸法および形状とを任意に設定することにより、用途に応じた磁場の強度分布を得ることができる。
【0044】
また、上記実施の形態およびいくつかの変形例では、永久磁石21および磁気ヨーク3
1,32などを、それぞれ円柱状(円板状)としたが、本発明の磁石および磁気ヨークの形状はそれに限定されず、移動方向と直交する断面形状が例えば矩形や楕円などであってもよい。また、本発明の磁気部材は、例えば図9に示した磁気部材12Gのように、円筒状の永久磁石21Aおよび円環状の磁気ヨーク31A,32Aを含むものであってもよい。なお、図9は、磁気部材12GをZ軸方向に沿って半分に切断した状態を表す部分破断斜視図である。
【0045】
また、上記実施の形態では、演算部4を磁気センサユニット3におけるセンサパッケージ3Pの内部に設けるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、磁気センサユニット3のうち、センサパッケージ3P以外の部分に演算部4を設けるようにしてもよいし、磁気センサユニット3の外部に演算部4を設けるようにしてもよい。あるいは、位置検出装置1の外部の構成要素として演算部を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の位置検出装置は、例えば自動車などの車両に搭載される手動変速機に設置され、シフトレバーの操作位置の検出に適用される可能性を有する。
【符号の説明】
【0047】
1…位置検出装置、2…磁気ユニット、2Z…中心軸、3…磁気センサユニット、3P…センサパッケージ、3Y…Y軸方向センサ素子、3Z…Z軸方向センサ素子、4…演算部、10…シャフト、11…ホルダ、11V…空間、12,12A~12G…磁気部材、21,21A…永久磁石、31,32…磁気ヨーク、D21,D31,D32…最大外径、T21,T31,T32…厚さ。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9