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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/01 20060101AFI20220105BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B60C5/01 A
B60C9/18 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019185319
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021059258
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-06-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】安藤 寛太
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502290(JP,A)
【文献】特開2010-047072(JP,A)
【文献】特開2012-116222(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017556(WO,A1)
【文献】特開2014-189084(JP,A)
【文献】特開2015-016834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00
5/01
9/18
11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
タイヤ内腔面とタイヤ接地面との間に配されるトレッド補強要素、及び、一対のビード部と、一対のサイドウォール部と、前記一対のサイドウォール部をつなぐアンダートレッド部とを含むトロイド状のタイヤ骨格部材を含み、
前記トレッド補強要素は、熱可塑性樹脂からなり、
前記トレッド補強要素を横切りかつタイヤ赤道と平行な任意の基準線上において、前記タイヤ内腔面から前記トレッド補強要素の厚さ中心点までのタイヤ半径方向の距離L1が、前記タイヤ内腔面から前記タイヤ接地面までのタイヤ半径方向の距離L0の50~95%の範囲であり、
前記タイヤ骨格部材は、同一又は複数種類の熱可塑性樹脂からなる、空気入りタイヤ。
【請求項2】
記アンダートレッド部のタイヤ半径方向内面が、前記タイヤ内腔面をなし、タイヤ半径方向外面上に前記トレッド補強要素が配される、請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記トレッド補強要素のタイヤ半径方向外側に、前記タイヤ接地面をなすトレッド接地要素を具える、請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
記トレッド接地要素は、加硫ゴム又は熱可塑性樹脂からなる、請求項記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記トレッド補強要素をなす熱可塑性樹脂は、引張弾性率が1000MPa以上である、請求項1~4の何れかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記タイヤ骨格部材をなす熱可塑性樹脂は、引張弾性率が30~200MPa以下である、請求項1~5の何れかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記トレッド補強要素は、前記熱可塑性樹脂内に繊維状のフィラーを含む、請求項1~6の何れかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記フィラーは、タイヤ周方向に配向する、請求項7記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド補強要素を熱可塑性樹脂で構成した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気入りタイヤは、加硫ゴム、及び有機繊維やスチール繊維等のコード材料を用いることで、タイヤの基本的な特性が確保されてきた。しかし、加硫ゴムには、マテリアルリサイクルをすることが難しいという問題がある。加えて、コード材料、特にカーカスコードの使用は、製造工程を複雑にし、製造コストを増加させるという問題がある。
【0003】
そこで下記の特許文献1には、タイヤ骨格部材を熱可塑性樹脂で形成したカーカスレスのタイヤが提案されている。タイヤ骨格部材は、一対のビード部と、一対のビード部から延びる一対のサイド部と、一対のサイド部を連結するクラウン部とを具える。又クラウン部上には、加硫ゴムからなるトレッドが配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6138695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記提案のタイヤでは、トレッド補強要素として、スチールコード等の補強コードを螺旋状に巻回したコード層が使用されている。
【0006】
そのため、タイヤを製造する際、タイヤ骨格部材の外周面上で補強コードを巻回する工程が必要となり、生産効率を低下させるという問題がある。また補強コードにスチールコード等が用いられるため、マテリアルリサイクル性を充分に高めることができないという問題がある。
【0007】
本発明は、トレッド補強要素を熱可塑性樹脂で構成し、かつトレッド補強要素の形成位置を規制することを基本として、タイヤの接地形状の安定性を確保しながら、生産効率の向上を図り、かつマテリアルリサイクル性を高めうる空気入りタイヤを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、空気入りタイヤであって、
タイヤ内腔面とタイヤ接地面との間に配されるトレッド補強要素を含み、
前記トレッド補強要素は、熱可塑性樹脂からなり、
前記トレッド補強要素を横切りかつタイヤ赤道と平行な任意の基準線上において、
前記トレッド補強要素の厚さ中心点は、前記タイヤ内腔面からのタイヤ半径方向の距離L1が、前記タイヤ内腔面から前記タイヤ接地面までのタイヤ半径方向の距離L0の50~95%の範囲である。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤでは、一対のビード部と、一対のサイドウォール部と、前記一対のサイドウォール部をつなぐアンダートレッド部とを含むトロイド状のタイヤ骨格部材を含み、
前記アンダートレッド部のタイヤ半径方向内面が、前記タイヤ内腔面をなし、タイヤ半径方向外面上に前記トレッド補強要素が配されるのが好ましい。
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤでは、前記タイヤ骨格部材は、同一又は複数種類の熱可塑性樹脂からなるのが好ましい。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤでは、前記トレッド補強要素のタイヤ半径方向外側に、前記タイヤ接地面をなすトレッド接地要素を具え、前記トレッド接地要素は、
加硫ゴム又は熱可塑性樹脂からなるのが好ましい。
【0012】
本発明に係る空気入りタイヤでは、前記トレッド補強要素をなす熱可塑性樹脂は、引張弾性率が1000MPa以上であるのが好ましい。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤでは、前記タイヤ骨格部材をなす熱可塑性樹脂は、引張弾性率が30~200MPa以下であるのが好ましい。
【0014】
本発明に係る空気入りタイヤでは、前記トレッド補強要素は、前記熱可塑性樹脂内に繊維状のフィラーを含むのが好ましい。
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤでは、前記フィラーは、タイヤ周方向に配向するのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の空気入りタイヤでは、トレッド補強要素が熱可塑性樹脂からなる。これにより、補強コードを巻回する工程などが不要となり、マテリアルリサイクル性を高めつつ、生産効率の向上を図ることができる。
【0017】
また、トレッド補強要素を熱可塑性樹脂で形成する場合、スチールコード等の補強コードを使用する場合に比して拘束力が劣るため、タイヤの接地形状の安定性が減じ、走行性能に悪影響を与える傾向を招く。これに対して、本発明では、トレッド補強要素の厚さ中心点の、タイヤ内腔面からのタイヤ半径方向の距離L1を、タイヤ内腔面からタイヤ接地面までのタイヤ半径方向の距離L0の50~95%の範囲に規制している。即ち、トレッド補強要素を、タイヤ接地面寄りに配置している。
【0018】
これにより、トレッド補強要素を熱可塑性樹脂で形成しながらも、タイヤの接地形状の安定性を確保でき、走行性能への悪影響を低く抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施例を示す断面図である。
図2】ビード部を拡大して示す断面図である。
図3】トレッド部をトレッド補強要素とともに拡大して示す断面図である。
図4】(a)~(c)は、空気入りタイヤの製造方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ1(以下、単にタイヤ1という場合がある。)は、タイヤ内腔面1Hとタイヤ接地面1Sとの間に配されるトレッド補強要素4を含み、このトレッド補強要素4は、熱可塑性樹脂から構成される。
【0021】
具体的には、本例のタイヤ1は、タイヤ内腔面1Hを有するトロイド状のタイヤ骨格部材2、タイヤ接地面1Sを有するトレッド接地要素3、及び前記タイヤ骨格部材2のアンダートレッド部7とトレッド接地要素3との間に配されるトレッド補強要素4を含んで構成される。
【0022】
本例では、タイヤ1が乗用車用のタイヤである場合が示される。しかし、これに限定されるものではなく、例えば自動二輪車用、ライトトラック用、大型トラック用等など、種々のカテゴリのタイヤに採用することができる。
【0023】
タイヤ骨格部材2は、一対のビード部5と、一対のビード部5からタイヤ半径方向外側に延びる一対のサイドウォール部6と、一対のサイドウォール部6をつなぐアンダートレッド部7とを含む。アンダートレッド部7のタイヤ半径方向内面が、前記タイヤ内腔面1Hをなす。
【0024】
ビード部5は、リム組み時にリムRに嵌合する部位である。サイドウォール部6は、タイヤ1の側部を構成する部位であり、タイヤ軸方向外側に向かって凸となる円弧状に湾曲しながらタイヤ半径方向外側に延びる。アンダートレッド部7は、トレッド接地要素3を支持する部位であり、前記サイドウォール部6のタイヤ半径方向外端部間を連結する。
【0025】
タイヤ骨格部材2は、同一又は複数種類の熱可塑性樹脂からなる。タイヤ骨格部材2が同一の熱可塑性樹脂からなるとは、ビード部5とサイドウォール部6とアンダートレッド部7とが、同一の熱可塑性樹脂から構成されることを意味する。また複数種類の熱可塑性樹脂から構成されるとは、例えば、ビード部5とサイドウォール部6とアンダートレッド部7とが、異なる熱可塑性樹脂から構成されることを意味する。
【0026】
本例では、一対のサイドウォール部6とアンダートレッド部7とが、第2の熱可塑性樹脂M2で構成され。また一対のビード部5が、第3の熱可塑性樹脂M3で構成される場合が示される。
【0027】
言い換えると、タイヤ骨格部材2は、第2の熱可塑性樹脂M2からなる第1基体8Aと、第3の熱可塑性樹脂M3からなる第2基体8Bとを含む。そして、第1基体8Aが、一対のサイドウォール部6とアンダートレッド部7とを形成する。又第2基体8Bが、一対のビード部5を形成している。
【0028】
図2に示すように、第1基体8Aと第2基体8Bとの境界面Kは、タイヤ軸方向線に対して傾斜しているのが、第1基体8Aと第2基体8Bとの結合強度を高める上で好ましい。特には、タイヤ骨格部材2の外面と境界面Kとの交点Poは、タイヤ骨格部材2の内面と境界面Kとの交点Piよりも、タイヤ半径方向の内側に位置するのが好ましい。これにより、第2基体8Bの外面の露出面積が減じるため、タイヤ変形に伴うクラック等の損傷を抑制するのに役立つ。
【0029】
交点Poの、ビードベースラインBLからのタイヤ半径方向の高さhbは、リムフランジ高さhfの1.0~3.0倍の範囲であるのが好ましい。1.0倍を下回ると、操縦安定性を充分に高めることが難しくなる。逆に、3.0倍を超えるとクラック等の損傷の抑制効果が減じる他、乗り心地性能に不利を招く。リムフランジ高さhfとは、リムフランジRfの頂部のビードベースラインBLからのタイヤ半径方向の高さとして定義される。
【0030】
本例では、前記第2基体8B内には、リムRとの嵌合力を高めるために、円環状のビードコア10が配される。ビードコア10として、テープビード構造及びシングルワインド構造が適宜採用しうる。テープビード構造では、互いに平行に引き揃えたビードワイヤの配列体がゴムや熱可塑性樹脂でトッピングされた帯状体を、半径方向内側から外側に渦巻状に巻回され、これによりビードコア10が形成される。シングルワインド構造では、1本のビードワイヤが、螺旋状かつ多列多段に連続巻きされ、これによりビードコア10が形成される。ビードワイヤとしては、スチールコードが好適に採用されるが、有機繊維コードも採用されうる。なお、タイヤのカテゴリなどに応じて、ビードコア10を排除することもできる。
【0031】
図1に示すように、トレッド補強要素4は、アンダートレッド部7のタイヤ半径方向外面上に配される。またトレッド補強要素4のタイヤ半径方向外側にトレッド接地要素3が配される。
【0032】
トレッド接地要素3は、路面と接地する部位であり、タイヤ半径方向外面が前記タイヤ接地面1Sをなす。タイヤ接地面1Sには、ウエット性能を高めるためのトレッド溝9が、種々のパターン模様で形成される。
【0033】
トレッド接地要素3は、加硫ゴム又は熱可塑性樹脂から形成することができる。しかし、マテリアルリサイクル性を高めるとの観点から、トレッド接地要素3を熱可塑性樹脂で形成するのが好ましい。
【0034】
トレッド接地要素3に熱可塑性樹脂を使用する場合、トレッド接地要素3を、第2、第3の熱可塑性樹脂M2、M3のそれぞれの引張弾性率E2、E3よりも小な引張弾性率E1を有する第1の熱可塑性樹脂M1で構成するのが、路面への追従性を高め、グリップを向上させるという観点から好ましい。
【0035】
引張弾性率E2、E3は30~200MPaの範囲が好ましく、30MPaを下回るとタイヤ骨格部材2自体の剛性が不充分となり、操縦安定性を確保するのが難しくなる。逆に200MPaを越えると、タイヤの縦剛性が過大となって乗り心地性能の低下を招く。なお操縦安定性と乗り心地性能とを両立させるという観点から、E2<E3であるのがさらに好ましい。引張弾性率は、JIS K7161の「プラスチック-引張特性の求め方」に記載の試験方法に準拠して測定した値である。
【0036】
図3に示すように、トレッド補強要素4は、熱可塑性樹脂からなり、本例では、第1ないし第3の熱可塑性樹脂M1~M3とは異なる第4の熱可塑性樹脂M4からなる樹脂補強層15として形成される。
【0037】
第4の熱可塑性樹脂M4の引張弾性率E4は、前記引張弾性率E1~E3よりも大である。トレッド補強要素4では、タガ効果によってアンダートレッド部7を拘束し、タイヤの接地形状の安定化を図る。そのために、第4の熱可塑性樹脂M4の引張弾性率E4は、1000MPa以上、さらには2000MPa以上であるのが好ましい。また、損傷抑制の観点から第4の熱可塑性樹M4の引張強度は、200MPa以上であるのも好ましい。
【0038】
なおトレッド補強要素4によるタガ効果を高めるために、第4の熱可塑性樹脂M4内に繊維状のフィラーを含むことが好ましく、またフィラーを、タイヤ周方向に配向させるのがさらに好ましい。
【0039】
好適なフィラーとして、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノクリスタル(CNC)等を挙げることができ、これらを単独で、或いは組み合わせて採用しうる。
【0040】
このような第4の熱可塑性樹脂M4を用いた場合にも、スチールコード等の補強コードでトレッド補強要素を形成する場合に比して、タイヤの接地形状の安定性が減じ、走行性能に悪影響を与える傾向を招く。
【0041】
そのために、トレッド補強要素4を、タイヤ接地面1S寄りに配置している。具体的には、図3に示すように、トレッド補強要素4を横切ってタイヤ赤道Cと平行に延びる任意の基準線X上において、下記の要件を満たす。
【0042】
即ち、基準線X上において、タイヤ内腔面1Hからトレッド補強要素4の厚さ中心点4Pまでのタイヤ半径方向の距離L1が、タイヤ内腔面1Hからタイヤ接地面1Sまでのタイヤ半径方向の距離L0の50~95%の範囲である。
【0043】
このように構成することで、アンダートレッド部7の厚さが高まり、かつこのアンダートレッド部7を、タイヤ接地面1Sに近い位置で拘束する。これにより、タイヤの接地形状の安定性を確保でき、走行性能、特には操縦安定性を高く維持することが可能になる。なお距離L1が距離L0の50%を下回ると、接地形状の安定性の確保の効果が充分発揮されなくなる。逆に95%を越えると、トレッド溝9の形成、及び摩耗寿命の確保が難しくなる。このような観点から、距離L1の下限は、距離L0の55%以上が好ましく、また上限は70%以下が好ましい。
【0044】
なお比L1/L0の値は、タイヤ赤道Cからタイヤ軸方向外側に向かって、しだいに増加するのも好ましい。
【0045】
本願において、「熱可塑性樹脂」には、熱可塑性エラストマーが含まれる。「熱可塑性樹脂」とは、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になる高分子化合物を意味する。「熱可塑性エラストマー」は、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有するという特徴を有する。
【0046】
走行時に必要とされる弾性、製造時の成形性等を考慮すると、タイヤ骨格部材2及びトレッド接地要素3には、熱可塑性エラストマーが好適に使用され、トレッド補強要素4には、ゴム状弾性を有さない熱可塑性樹脂が好適に使用される。
【0047】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを挙げることができ、これらを単独で或いは組み合わせて採用しうる。
【0048】
次に、実施形態のタイヤ1の製造方法の一例を示す。図4(a)~(c)に概念的に示すように、本例の製造方法は、
・アンダートレッド部7とトレッド補強要素4とトレッド接地要素3とを一体化した第1タイヤベース1Aを形成する工程S1と、
・サイドウォール部6とビード部5とビードコア10とを一体化した一対の第2タイヤベース1Bを形成する工程S2と、
・第1タイヤベース1Aと第2タイヤベース1Bとを接合してタイヤ1を形成する工程S3とを含む。
【0049】
工程S1では、キャビティ内に、第1の熱可塑性樹脂M1と、第2の熱可塑性樹脂M2と、第4の熱可塑性樹脂M4とを射出する複合成形を行うことで、第1タイヤベース1Aを形成する。
【0050】
工程S2では、予めビードコア10を形成した後、このビードコア10がセットされたキャビティ内に、第2の熱可塑性樹脂M2と、第3の熱可塑性樹脂M3とを射出する複合成形を行うことで、第2タイヤベース1Bを形成する。
【0051】
工程S3では、第1タイヤベース1Aと第2タイヤベース1Bとを、熱融着または、接着剤を用いて接合させる。接着剤としては、例えば、東亜合成株式会社製のアロンアルファEXTRA2000(登録商標)やヘンケルジャパン株式会社製のロックタイト401J(登録商標)等が好適に用いうる。
【0052】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例
【0053】
本発明の効果を確認するために、図1に示す構造を有する乗用車用のタイヤ(195/65R15)が、表1の仕様に基づいて試作した場合の接地幅、及び生産性の見積もりを行った。
【0054】
比較例1は、トレッド補強要素が、スチールコードを螺旋状に巻回したコード補強層である以外は、実施例と実質的に同構成である。比較例及び実施例は、内圧空気充填前において、タイヤ断面の輪郭形状は、互いに同一である。また実施例には、トレッド補強要素内にガラス繊維からなるフィーラが配合されている。
【0055】
<接地幅>
有限要素法によるシミュレーションにより、タイヤを正規リム(15×6JJ)、正規内圧(230kPa)、正規荷重(3.43kN)の条件にて、路面に垂直に接地させた時の、接地面のタイヤ軸方向の幅(接地幅)を計算した。結果を、比較例1を10とする指数で表記した。数値が大きいほど、接地形状の安定性に優れている。
【0056】
<生産性>
タイヤの生産性が、比較例1を10とする指数で表記された。数値が大きいほど生産性に優れている。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に使用された熱可塑性樹脂を、表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表1に示すように実施例は、接地形状の安定性を確保しながら、生産効率を向上させうることが確認できる。なおトレッド補強要素が熱可塑性樹脂で形成されることにより、マテリアルリサイクル性の向上にも貢献しうる。
【符号の説明】
【0061】
1 空気入りタイヤ
1H タイヤ内腔面
1S タイヤ接地面
2 タイヤ骨格部材
3 トレッド接地要素
4 トレッド補強要素
4P 中心点
5 ビード部
6 サイドウォール部
7 アンダートレッド部
C タイヤ赤道
X 基準線
図1
図2
図3
図4