(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】免疫疾患の治療のための高効能幹細胞の選別方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20220207BHJP
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A61P 37/00 20060101ALI20220207BHJP
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A61P 17/00 20060101ALI20220207BHJP
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G01N 33/53 20060101ALI20220207BHJP
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C12N 15/09 20060101ALN20220207BHJP
【FI】
C12N5/0775 ZNA
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A61P37/08
A61P1/00
A61P37/00
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A61P29/00 101
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A61K35/36
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C12N1/00 T
C12Q1/6851 Z
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C12Q1/6837 Z
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G01N33/573 A
G01N27/62 V
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2019520694
(86)(22)【出願日】2017-09-26
(86)【国際出願番号】 KR2017010592
(87)【国際公開番号】W WO2018074758
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2019-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2016-0134085
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520367452
【氏名又は名称】シェルンライフ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(72)【発明者】
【氏名】ユ、コン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミョン ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム、デ ソン
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】Eur J Immunol,2008年,Vol.38,p.1745-1755
【文献】Human Vaccin Immunother,2016年,Vol.12,p.85-96
【文献】Clin Exp Immunol,2007年,Vol.149,p.353-363
【文献】Exp Hematol,2008年,Vol.36,p.1545-1555
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/0775
A61P 37/06
A61P 37/08
A61P 1/00
A61P 37/00
A61P 3/10
A61P 17/06
A61P 11/06
A61P 17/00
A61P 15/00
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A61P 1/04
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A61P 27/16
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A61K 35/51
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C12Q 1/6851
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C12Q 1/6837
G01N 33/68
G01N 33/53
G01N 33/573
G01N 27/62
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む、免疫疾患の治療のための高効能間葉系幹細胞の選別方法:
(a)間葉系幹細胞を培養し、IFN-γで処理するステップ;
(b)間葉系幹細胞におけるTRAIL(TNF関連アポトーシス誘導リガンド)の発現レベルを測定するステップ;及び
(c)前記発現レベルがIFN-γの未処理対照群と比較して増加している場合に、免疫疾患の治療のための高効能間葉系幹細胞であると判定するステップ
、
ここで、前記高効能は免疫抑制能であり、前記ステップ(a)のIFN-γは、培地内に1~100IU/mlの濃度で含まれる。
【請求項2】
前記間葉系幹細胞は、臍帯、臍帯血、骨髄、脂肪、筋肉、ホウォートンゼリー、神経、皮膚、羊膜、絨毛膜、脱落膜及び胎盤からなる群より選択されるものに由来することを特徴とする、請求項1に記載の選別方法。
【請求項3】
前記免疫疾患は、移植片対宿主疾患、臓器移植時の拒絶反応、体液性拒絶反応、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患であることを特徴とする、請求項1に記載の選別方法。
【請求項4】
前記自己免疫疾患は、クローン病、紅斑病、アトピー、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アディソン病、第1型糖尿、ルプス、慢性疲労症候群、繊維筋肉痛、甲状腺機能低下症と亢進症、硬皮症、ベーチェット病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、メニエール症候群(Meniere’s syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、白斑症、子宮内膜症、乾癬、全身性硬皮症、喘息又は潰瘍性大腸炎であることを特徴とする、請求項
3に記載の選別方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)のバイオマーカーの発現レベルは、ウエスタンブロッティング、抗体免疫沈降法、ELISA、質量分析法、RT-PCR、競合的RT-PCR(competitive RT-PCR)、リアルタイムRT-PCR(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA:RNase protection assay)、ノーザンブロッティング又はDNAチップを用いて測定することを特徴とする、請求項1に記載の選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉系幹細胞でIFN-γで前処理刺激した後に免疫抑制バイオマーカーのレベルを測定するステップを含む免疫疾患の治療のための高効能間葉系幹細胞の選別方法、その方法によって選別された高効能間葉系幹細胞及びその高効能間葉系幹細胞を用いた免疫疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、悪性及び非悪性の血液疾患、自己免疫疾患及び免疫欠乏の治療のために同種異系造血母幹細胞を移植する方法が広く利用されて来た。しかし、ヒト白血球抗原一致同胞(human leucocyte antigen(HLA)-identical sibling)を移植した後にも免疫疾患中の一つである移植片対宿主病(graft versus-host disease;GVHD)の発病及びこれによる死亡は解決課題として残っている。
【0003】
移植片対宿主病は、宿主の抗原提示細胞によって活性化された供与者のT-細胞により誘発され、前記細胞は、ターゲット組織(皮膚、腸及び肝)に移動して標的機関の機能異常を誘発する。移植片対宿主病の1次的標準治療は、高い濃度のステロイドを処方することである。しかし、前記患者の50%は前記1次治療法に反応せず、一旦ステロイド抵抗性が誘発されると、死亡率が増加することが知られているにもかかわらず、ステロイド抵抗性移植片対宿主病に対する2次的治療法がなく、追加的な治療代案が必要な実情である。
【0004】
一方、成長因子、細胞間相互作用及び基質タンパク質を提供する骨髓間質細胞(Marrow stromal cell)は、骨髓の微細環境に存在する共通的前駆細胞に由来し、間葉系幹細胞としても知られている。間葉系幹細胞は、分化できる能力を有し、骨芽細胞、脂肪細胞及び軟骨前駆細胞を含む制限された細胞に分化できる潜在力を有する前駆細胞を生産することができる。間葉系幹細胞は、化学療法又は放射線療法により損傷された骨髓の微細環境で宿主細胞を代替することができ、遺伝子の治療のための手段に用いられ得る。
【0005】
多くの研究によると、間葉系幹細胞が傷部位に移動して損傷された組織の復旧に寄与するだけでなく、免疫調節機能を有していることが報告された。間葉系幹細胞は、T-細胞、B-細胞、ナチュラルキラー細胞(NK cells)及び抗原提示細胞を含む免疫細胞の活性化、増殖及び機能を抑制する。間葉系幹細胞により媒介される免疫抑制は、インターロイキン-10(IL-10)、TGF-β、一酸化窒素、プロスタグランジンE2(PGE2)のような可溶性因子からなり得る。
【0006】
活性化されたT-細胞、NK細胞、NKT細胞及び大食細胞のような多様な類型の細胞から生成される強力な炎症誘発サイトカイン(pro-inflammatory cytokine)であるインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)は、自然免疫及び獲得免疫の反応において重要で且つ複雑な役目を実行し、急性移植片対宿主病において病原性因子として知られている。IFN-γは、細胞分裂を抑制して細胞死滅を促進することで、同種反応性T-細胞を陰性的に調節し、授与者の実質細胞(parenchymal cells)と直接的な相互作用を通じて組織損傷を抑制する。
【0007】
このように、以前のin vitro研究を通じて活性化された間葉系幹細胞でIFN-γの役目が知られているが、間葉系幹細胞の移植を通じたin vivo移植片対宿主病の治療機序に対しては知られていない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、本発明者らは、マイクロアレイ分析を通じて間葉系幹細胞の免疫調節機能と関連したバイオマーカーの発現プロファイルに対してIFN-γが及ぼす影響を分析し、in vitro及びin vivoでimmune conflictsの調節と関連した間葉系幹細胞の作用機序を確認しただけでなく、IFN-γにより刺激された脂肪組織(adipose tissue;AT)、臍帯血(umbilical cord blood;CB)、ホウォートンゼリー(Wharton's jelly;WJ)及び骨髓に由来する間葉系幹細胞が移植片対宿主病のモデルで生存率を増加させることを確認することで、本発明を完成させるに至った。
【0009】
したがって、本発明は、IFN-γを前処理刺激した後に特定の免疫抑制バイオマーカー(IDO/CXCL9、CXCL10、CXCL11、ICAM1、ICAM2、B7-H1、PTGDS、VCAM1、TRAIL)のレベルを測定するステップを含む免疫疾患の治療のための高効能間葉系幹細胞の選別方法及びそれによって選別された高効能間葉系幹細胞を提供することを目的とする。
【0010】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及しなかったまた他の課題は、下の記載から当業者に明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、間葉系幹細胞でIFN-γを前処理刺激した後に免疫抑制バイオマーカーのレベルを測定するステップを含む免疫疾患の治療のための高効能間葉系幹細胞の選別方法を提供する。
【0012】
本発明の一具現例によると、前記方法は、下記のステップを含むことを特徴とする。
【0013】
(a)間葉系幹細胞を培養した後にIFN-γを処理するステップ;
(b)間葉系幹細胞で免疫抑制バイオマーカーの発現レベルを測定するステップ;及び
(c)前記発現レベルがIFN-γの未処理対照群と比較して増加する場合、免疫疾患の治療のための高効能幹細胞であると判定するステップ。
【0014】
本発明の他の具現例によると、前記免疫抑制バイオマーカーは、IDO(indoleamine 2,3-dioxygenase)であることを特徴とする。
【0015】
本発明のまた他の具現例によると、前記免疫抑制バイオマーカーは、CXCL9(C-X-C motif ligand 9)、CXCL10(C-X-C motif ligand 10)、CXCL11(C-X-C motif ligand 11)、ICAM1(Inter Cellular Adhesion Molecule 1)、ICAM2(Inter Cellular Adhesion Molecule 2)、B7-H1(B7-homolog 1)、PTGDS(Prostaglandin D2 synthase)、VCAM1(Vascular Cell Adhesion Molecule 1)及びTRAIL(TNF-Related Apoptosis-Inducing Ligand)からなる群より選択される一つ以上をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
本発明のまた他の具現例によると、前記高効能は、免疫抑制能であることを特徴とする。
【0017】
本発明のまた他の具現例によると、前記間葉系幹細胞は、臍帯、臍帯血、骨髄、脂肪、筋肉、ホウォートンゼリー、神経、皮膚、羊膜、絨毛膜、脱落膜及び胎盤からなる群より選択されるものに由来することを特徴とする。
【0018】
本発明のまた他の具現例によると、前記免疫疾患は、移植片対宿主疾患、臓器移植時の拒絶反応、体液性拒絶反応、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患であることを特徴とする。
【0019】
本発明のまた他の具現例によると、前記自己免疫疾患は、クローン病、紅斑病、アトピー、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アディソン病、第1型糖尿、ルプス、慢性疲労症候群、繊維筋肉痛、甲状腺機能低下症と亢進症、硬皮症、ベーチェット病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、メニエール症候群(Meniere’s syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、白斑症、子宮内膜症、乾癬、全身性硬皮症、喘息又は潰瘍性大腸炎であることを特徴とする。
【0020】
本発明のまた他の具現例によると、前記IDOの発現は、IFN-γで刺激された間葉系幹細胞でJAK/STAT1の信号経路を通じて増加されることを特徴とする。
【0021】
本発明のまた他の具現例によると、前記ステップ(a)のIFN-γは、培地内に1-100IU/mlの濃度で含まれることを特徴とする。
【0022】
本発明のまた他の具現例によると、前記ステップ(b)のバイオマーカーの発現レベルは、ウエスタンブロッティング、抗体免疫沈降法、ELISA、質量分析法、RT-PCR、競合的RT-PCR(competitive RT-PCR)、リアルタイムRT-PCR(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA:RNase protection assay)、ノーザンブロッティング又はDNAチップを用いて測定することを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、前記方法によって選別された免疫疾患の治療のための高効能間葉系幹細胞を提供する。
【0024】
本発明の一具現例によると、前記免疫疾患は、移植片対宿主疾患、臓器移植時の拒絶反応、体液性拒絶反応、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患であることを特徴とする。
【0025】
本発明の他の具現例によると、前記高効能は、免疫抑制能であることを特徴とする。
【0026】
本発明のまた他の具現例によると、前記間葉系幹細胞は、臍帯、臍帯血、骨髄、脂肪、筋肉、ホウォートンゼリー、神経、皮膚、羊膜又は胎盤に由来することを特徴とする。
【0027】
本発明のまた他の具現例によると、前記間葉系幹細胞は、自家、他家又は同種異系来由であることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、前記高効能間葉系幹細胞を含有する免疫疾患治療用医薬組成物を提供する。
【0029】
また、本発明は、前記高効能間葉系幹細胞を含有する移植片対宿主疾患治療用医薬製剤を提供する。
【0030】
また、本発明は、前記高効能間葉系幹細胞を個体に投与するステップを含む移植片対宿主疾患などの免疫疾患の治療方法を提供する。
【0031】
また、本発明は、前記高効能間葉系幹細胞を用いた移植片対宿主疾患などの免疫疾患の治療用途を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、IFN-γで刺激した後、特定のバイオマーカーの組合せ(IDO/CXCL9、CXCL10、CXCL11、ICAM1、ICAM2、B7-H1、PTGDS、VCAM1、TRAIL)が移植片対宿主病を含む免疫関連疾患において最も優れた免疫抑制能を有する間葉系幹細胞を選別するためのバイオマーカーとして用いられ得ることを提示する。
【0033】
したがって、本発明は、移植片対宿主病、自己免疫疾患を含む多様な免疫疾患の臨床的治療のための免疫反応の調節能力を有する機能的に優れた間葉系幹細胞が得られる有用な方法を提供することで、免疫疾患の治療法で有用に用いられ得る。
【0034】
また、本発明のIFN-γを通じて活性化された間葉系幹細胞を用いた移植片対宿主病の予防及び治療は、同種異系幹細胞の移植のより高い治療的可能性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1a】多様な組織(骨髓BM、脂肪AT、臍帯血CB及びホウォートンゼリーWJ)に由来する間葉系幹細胞の形態を示す結果である。
【
図1b】表面抗原タンパク質(
図1の(b))を示す結果である。
【
図1c】分化誘導後の性状(
図1の(c))を示す結果である。
【
図2】
図2は、多様な組織(BM、AT、CB、WJ)に由来する間葉系幹細胞の免疫抑制特性を確認するために、PHAで活性化させた末梢血液単核細胞(hPBMC)の増殖率を評価した結果である。
【
図3a】多様な組織(BM、AT、CB、WJ)に由来する間葉系幹細胞の免疫抑制特性が細胞間の接触によるか可溶性因子によるかを確認するために、直接接触培養法及びトランスウェル培養法により比較評価した結果である。
【
図3b】多様な組織(BM、AT、CB、WJ)に由来する間葉系幹細胞の免疫抑制特性が細胞間の接触によるか可溶性因子によるかを確認するために、直接接触培養法及びトランスウェル培養法により比較評価した結果である。
【
図3c】多様な組織(BM、AT、CB、WJ)に由来する間葉系幹細胞の免疫抑制特性が細胞間の接触によるか可溶性因子によるかを確認するために、直接接触培養法及びトランスウェル培養法により比較評価した結果である。
【
図3d】多様な組織(BM、AT、CB、WJ)に由来する間葉系幹細胞の免疫抑制特性が細胞間の接触によるか可溶性因子によるかを確認するために、直接接触培養法及びトランスウェル培養法により比較評価した結果である。
【
図4a】in vivoで間葉系幹細胞の免疫抑制機能を確認するために、マウスにhPBMC及び多様な組織(BM、AT、CB、WJ)に由来する間葉系幹細胞をともに1回又は2回注入した後のマウス生存率を示す結果である。
【
図4b】in vivoで間葉系幹細胞の免疫抑制機能を確認するために、マウスにhPBMC及び多様な組織(BM、AT、CB、WJ)に由来する間葉系幹細胞をともに1回又は2回注入した後のマウス生存率を示す結果である。
【
図4c】in vivoで間葉系幹細胞の免疫抑制機能を確認するために、マウスにhPBMC及び多様な組織(BM、AT、CB、WJ)に由来する間葉系幹細胞をともに1回又は2回注入した後のマウス生存率を示す結果である。
【
図4d】in vivoで間葉系幹細胞の免疫抑制機能を確認するために、マウスにhPBMC及び多様な組織(BM、AT、CB、WJ)に由来する間葉系幹細胞をともに1回又は2回注入した後のマウス生存率を示す結果である。
【
図5】
図5は、移植片対宿主病(GVHD)の動物モデルにhPBMCとともに骨髓由来間葉系幹細胞を注入するとき血液内のIFN-γ(炎症性サイトカイン)のレベルが減少されることを示す結果である。
【
図6】
図6は、hPBMCを多様な組織(BM、AT、CB、WJ)由来の間葉系幹細胞とともに培養した後の生存率を評価したもので、このとき、間葉系幹細胞はIFN-γ非刺激群(MSC
PBS)と刺激群(MSC
IFN-γ)間の生存率を比較した結果である。
【
図7a】IFN-γで刺激した間葉系幹細胞が移植片対宿主病を改善させるかを確認するために、No MSC、MSC
PBS、MSC
IFN-γ、MSC
AG490+IFN-γ投与群間のマウス生存率を比較評価した結果である。
【
図7b】IFN-γで刺激した間葉系幹細胞が移植片対宿主病を改善させるかを確認するために、No MSC、MSC
PBS、MSC
IFN-γ、MSC
AG490+IFN-γ投与群間のマウス生存率を比較評価した結果である。
【
図7c】IFN-γで刺激した間葉系幹細胞が移植片対宿主病を改善させるかを確認するために、No MSC、MSC
PBS、MSC
IFN-γ、MSC
AG490+IFN-γ投与群間のマウス生存率を比較評価した結果である。
【
図7d】IFN-γで刺激した間葉系幹細胞が移植片対宿主病を改善させるかを確認するために、No MSC、MSC
PBS、MSC
IFN-γ、MSC
AG490+IFN-γ投与群間のマウス生存率を比較評価した結果である。
【
図8】
図8は、IFN-γで刺激した間葉系幹細胞が移植片対宿主病のマウスモデルでT細胞の増殖抑制を誘導するかを確認するため、No MSC、MSC
PBS、MSC
IFN-γ、MSC
AG490+IFN-γ投与群間のCD45+細胞及びCD45+CD3+細胞の数を比較測定した結果である。
【
図9a】IFN-γで刺激した間葉系幹細胞を移植片対宿主病のマウスモデルに移植した後に組織学的分析を通じて組織への免疫細胞浸透が減少することを確認した結果である。
【
図9b】IFN-γで刺激した間葉系幹細胞を移植片対宿主病のマウスモデルに移植した後に組織学的分析を通じて組織への免疫細胞浸透が減少することを確認した結果である。
【
図10a】IFN-γで刺激した前後の間葉系幹細胞の形態を比較した結果である。
【
図10b】IFN-γで刺激した前後の遺伝子発現プロファイルを比較した結果である。
【
図11】
図11は、IFN-γで刺激した間葉系幹細胞でCXCL9、CXCL10、CCL8及びIDO遺伝子のmRNAの発現レベルが顕著に増加することを確認した結果である。
【
図12】
図12は、多様な組織(BM、AT、CB、WJ)由来の間葉系幹細胞をIFN-γで刺激したとき互いに類似にIDO発現が増加することを確認した結果である。
【
図13】IFN-γを媒介としたIDO発現がJAK/STAT1の信号伝逹経路を通じて誘導されることを確認した結果である。
【
図14】IFN-γを媒介としたIDO発現がJAK/STAT1の信号伝逹経路を通じて誘導されることを確認した結果である。
【
図15】
図15は、STAT1標的のsiRNA処理時にIFN-γの下位の信号伝逹経路が抑制されてhPBMCの増殖抑制効果が遮断されることを示す結果である。
【
図16a】移植片対宿主病のマウスにIFN-γで刺激した間葉系幹細胞を注入した後、間葉系幹細胞の組織内浸透及びIDO発現誘導を確認した免疫組織染色の結果である。
【
図16b】移植片対宿主病のマウスにIFN-γで刺激した間葉系幹細胞を注入した後、間葉系幹細胞の組織内浸透及びIDO発現誘導を確認した免疫組織染色の結果である。
【
図16c】移植片対宿主病のマウスにIFN-γで刺激した間葉系幹細胞を注入した後、間葉系幹細胞の組織内浸透及びIDO発現誘導を確認した免疫組織染色の結果である。
【
図16d】移植片対宿主病のマウスにIFN-γで刺激した間葉系幹細胞を注入した後、間葉系幹細胞の組織内浸透及びIDO発現誘導を確認した免疫組織染色の結果である。
【
図17a】
図17の(a)~
図17の(c)は、間葉系幹細胞の免疫抑制特性と関連したIDOの役目を調べるため、shRNA処理でIDO発現阻害を確認した後(
図17の(a)、
図17の(b))、hPBMCの増殖率変化(
図17の(c))を確認した結果である。
【
図17b】
図17の(a)~
図17の(c)は、間葉系幹細胞の免疫抑制特性と関連したIDOの役目を調べるため、shRNA処理でIDO発現阻害を確認した後(
図17の(a)、
図17の(b))、hPBMCの増殖率変化(
図17の(c))を確認した結果である。
【
図17c】
図17の(a)~
図17の(c)は、間葉系幹細胞の免疫抑制特性と関連したIDOの役目を調べるため、shRNA処理でIDO発現阻害を確認した後(
図17の(a)、
図17の(b))、hPBMCの増殖率変化(
図17の(c))を確認した結果である。
【
図18】
図18は、IDOの発現が減少された間葉系幹細胞にIFN-γを処理するか処理しない状態で移植片対宿主病のマウスに投与した後の生存率を比較評価した結果である。
【
図19】
図19は、IDOの発現が減少された間葉系幹細胞にIFN-γを処理するか処理しない状態で移植片対宿主病のマウスに投与した後、小腸及び皮膚組織でIDOダウン調節された間葉系幹細胞の存在を示す免疫組織染色の結果である。
【
図20】
図20は、IDOを過発現する間葉系幹細胞の免疫抑制能をin vitroで確認した結果である。
【
図21】
図21は、IDOを過発現する間葉系幹細胞の免疫抑制能をin vivoで確認した結果である。
【
図22】
図22は、IDOを過発現する間葉系幹細胞を移植片対宿主病のマウスに投与した後、小腸及び皮膚組織でIDOが上向き調節された間葉系幹細胞の存在を示す免疫組織染色の結果である。
【
図23】
図23は、IFN-γにより刺激された間葉系幹細胞とTLR3が活性化された(poly I:C刺激)間葉系幹細胞との免疫抑制の活性を比較した結果である。
【
図24a】
図24の(a)及び
図24の(b)は、IFN-γにより刺激された間葉系幹細胞において、JAK/STAT1の経路を通じてIDO発現が誘導される一方、TLR3活性化は誘導されないことを示す結果である。
【
図24b】
図24の(a)及び
図24の(b)は、IFN-γにより刺激された間葉系幹細胞において、JAK/STAT1の経路を通じてIDO発現が誘導される一方、TLR3活性化は誘導されないことを示す結果である。
【
図25】
図25は、間葉系幹細胞で機能遺伝子(CXCL9、CXCL10、IL-6、IL-8)の発現に及ぶ影響に対して、IFN-γの刺激時とTLR3の活性化(poly I:C刺激)時とを比較評価したRT-PCR結果である。
【
図26】
図26は、間葉系幹細胞で機能遺伝子(IDO、CXCL9、CXCL10、CXCL11、ICAM1、ICAM2、B7-H1、PTGDS、VCAM1及びTRAIL)の発現に及ぶ影響に対して、IFN-γ刺激、TNF-α刺激及びTLR3活性化(poly I:C刺激)時を比較評価したRT-PCR結果である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明者らは、以前の研究を通じて、活性化されたT-細胞が制御性T-細胞よりさらに高いレベルのIFN-γを発現し、前記IFN-γの発現レベルは、T-細胞を間葉系幹細胞と共同培養したときに顕著に減少することを報告することで、IFN-γの自家分泌-近距離分泌循環(autocrine-paracrine loop)を提示したことがある。したがって、本発明では、IFN-γを通じた間葉系幹細胞の刺激が細胞の免疫抑制特性を向上させる結果を示すと予想し、IFN-γで刺激された間葉系幹細胞で多様な遺伝子の発現レベルが免疫抑制能と関連があるか確認するために、遺伝子発現プロファイルを分析した。
【0037】
その結果、IFN-γで刺激された間葉系幹細胞で多様な免疫反応を起こす白血球の募集に重要な役目をするCXCL9、CXCL10、CCL8及びIDOを含む512個の遺伝子の発現が増加したことを確認した。このようなケモカインと区別され、IDOは、より直接的に間葉系幹細胞の免疫抑制能に関与する傾向を示し、このような活性と綿密に連関されている。IDOは、IFN-γで刺激された間葉系幹細胞で発現が非常に増加し、IDOの発現を阻害させると、T-細胞の抗原媒介増殖が抑制された。
【0038】
また、本発明では、IFN-γがヒト骨髓以外にも臍帯血、脂肪組織及びホウォートンゼリーなど多様な組織由来の間葉系幹細胞でもIDOの発現を誘導し得ることを確認した。特に、このようなIDOの発現は、IFN-γで刺激された間葉系幹細胞でJAK/STAT1の信号伝逹経路を通じて増加し、IDOを発現する間葉系幹細胞は、免疫抑制能を示すことを明らかにした。IDOの免疫抑制活性は、T-細胞の増殖に必須なアミノ酸であるトリプトファンの分解を通じて媒介されるので、IDO及びトリプトファンの欠乏は多くの免疫関連疾患において重要な点と認識される。
【0039】
また、本発明では、共焦点顕微鏡イメージを通じてIFN-γで刺激された間葉系幹細胞を注入した移植片対宿主病のマウスモデルでIDOが発現されることを観察した。間葉系幹細胞の増進された免疫抑制活性は、IFN-γの前処理と非常に関連があり、これは、またIDOの発現が誘導されたからであると予想される。
【0040】
また、本発明では、移植片対宿主病のマウスモデルで、PBS(対照群)を処理した間葉系幹細胞を注入した群に比べてIFN-γで刺激した間葉系幹細胞を注入した群が一層向上された生存率を示すことを確認した。したがって、移植片対宿主病の細胞治療療法で有用に用いられると期待される。
【0041】
また、本発明では、TLR信号伝逹に反応してIDOの発現を増加させるのに関与する信号伝逹経路を確認した結果、ヒト間葉系幹細胞でTLR3の刺激がIFN-β及び/又はIDOの発現をほとんど誘導しなかった。これは、TLR信号伝逹がヒト間葉系幹細胞の免疫抑制機能において主要な経路ではないことを意味する。
【0042】
また、IFN-γの刺激は、全ての間葉系幹細胞でIDOの発現を顕著に誘導することが観察されたので、直接的なIFN-γの刺激が免疫関連疾患の治療のための間葉系幹細胞の機能を改善するのに重要な手段であることが分かる。
【0043】
さて、本発明は、間葉系幹細胞でIFN-γの前処理刺激後の免疫抑制バイオマーカーのレベルを測定するステップを含む免疫疾患の治療のための高効能間葉系幹細胞の選別方法を提供する。
【0044】
本発明の選別方法は、(a)間葉系幹細胞を培養した後にIFN-γを処理するステップ;(b)間葉系幹細胞で免疫抑制バイオマーカーの発現レベルを測定するステップ;及び(c)前記発現レベルがIFN-γの未処理対照群と比較して増加する場合、免疫疾患の治療のための高効能幹細胞であると判定するステップを含むことができる。
【0045】
本発明で、前記免疫抑制バイオマーカーに制限はないが、例えば、IDO(indoleamine 2,3-dioxygenase)であることが好ましく、より好ましくは、前記IODマーカーに、CXCL9(C-X-C motif ligand 9)、CXCL10(C-X-C motif ligand 10)、CXCL11(C-X-C motif ligand 11)、ICAM1(Inter Cellular Adhesion Molecule 1)、ICAM2(Inter Cellular Adhesion Molecule 2)、B7-H1(B7-homolog 1)、PTGDS(Prostaglandin D2 synthase)、VCAM1(Vascular Cell Adhesion Molecule 1)及びTRAIL(TNF-Related Apoptosis-Inducing Ligand)からなる群より選択される一つ以上をさらに含むことが好ましい。
【0046】
本発明で「高効能」とは、間葉系幹細胞の免疫反応抑制能力に優れて免疫関連疾患の治療に効果的な効能を有することを意味する。
【0047】
本発明で「間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell、MSC)」は、骨、軟骨、脂肪、筋肉細胞を含む多様な中胚葉細胞又は神経細胞のような外胚葉細胞にも分化する能力を有する多分化能幹細胞(multipotent stem cell)である。前記間葉系幹細胞は、好ましくは、臍帯、臍帯血、骨髄、脂肪、筋肉、神経、皮膚、羊膜、絨毛膜、脱落膜及び胎盤で構成された群から選択されるものに由来し得る。また、前記間葉系幹細胞は、ヒト、胎児又はヒトを除いた哺乳動物に由来し得る。前記ヒトを除いた哺乳動物は、より好ましくは、イヌ科動物、ネコ科動物、サル科動物、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ラット、マウス又はギニアピッグなどであってもよく、その由来を制限しない。
【0048】
本発明で「免疫疾患」は、免疫調節の異常により発生する疾患であれば、制限がないが、例えば、移植片対宿主疾患、臓器移植時の拒絶反応、体液性拒絶反応、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患であってもよい。
【0049】
このとき、自己免疫疾患は、その種類に制限はないが、クローン病、紅斑病、アトピー、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アディソン病、第1型糖尿、ルプス、慢性疲労症候群、繊維筋肉痛、甲状腺機能低下症と亢進症、硬皮症、ベーチェット病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、メニエール症候群(Meniere’s syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、白斑症、子宮内膜症、乾癬、全身性硬皮症、喘息又は潰瘍性大腸炎であってもよい。
【0050】
このとき、アレルギー性疾患は、その種類に制限はないが、過敏症(anaphylaxis)、アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis)、喘息(asthma)、アレルギー性結膜炎(allergic conjunctivitis)、アレルギー性皮膚炎(allergic dermatitis)、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、接触性皮膚炎、蕁麻疹、掻痒症、昆虫アレルギー、食品アレルギー又は薬品アレルギーであってもよい。
【0051】
本発明で、IFN-γで刺激された間葉系幹細胞は、JAK/STAT1信号経路を通じてIDOの発現が増加され、このとき、JAK/STAT1信号経路は、造血系又は免疫系で主要な情報交換分子であるサイトカインの主な情報交換経路である。STAT1(signal transducer and activator of transcription 1)は、JAK(Janus kinase/Just another kinase)によってチロシンリン酸化された後、二量体を形成して核に移動することで、遺伝子の発現を調節する転写因子(TF)として機能するため、IDOはSTAT1のターゲット遺伝子になる。
【0052】
本発明の選別方法において、間葉系幹細胞の培養液に処理されるIFN-γの濃度に制限はないが、例えば、1-100IU/mlの濃度、好ましくは、1-10IU/mlの濃度、より好ましくは、1IU/mlの濃度で含まれ得る。
【0053】
本発明の選別方法において、バイオマーカーの発現レベルを測定する方法に制限はないが、例えば、タンパク質の発現に対しては、ウエスタンブロッティング、抗体免疫沈降法、ELISA、質量分析法を用いて測定し、mRNAの発現に対しては、RT-PCR、競合的RT-PCR(competitive RT-PCR)、リアルタイムRT-PCR(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA:RNase protection assay)、ノーザンブロッティング又はDNAチップを用いて測定し得る。
【0054】
また、本発明は、上記方法によって選別された免疫疾患の治療のための高効能間葉系幹細胞を提供し、前記間葉系幹細胞の由来に制限はないが、例えば、自家、他家又は同種異系由来であってもよい。
【0055】
また、本発明は、前記高効能間葉系細胞を含有する免疫疾患の治療用薬学組成物/薬学製剤を提供する。
【0056】
本発明で「医薬組成物」は、既存の治療活性成分、その他補助剤、薬剤学的に許容可能な担体などの成分をさらに含み得る。前記薬剤学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール及びエタノールなどを含む。
【0057】
前記組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口剤型、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して用いられてもよい。
【0058】
本発明で「投与量」は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与回数、投与方法、排泄率及び疾患の程度などによってその範囲が多様に調節され得ることは当業者に明白である。
【0059】
本発明で「個体」とは、疾病の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒト又は非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ及びウシなどの哺乳類を意味する。
【0060】
本発明で「薬学的有効量」は、投与される疾患の種類及び程度、患者の年齢及び性別、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、同時に用いられる薬物を含む要素及びその他医学分野によく知られた要素によって決定され、前記要素を全て考慮して副作用なしに最大効果が得られる量であって、当業者により容易に決定され得る。
【0061】
本発明の組成物は、目的組織に到逹できる限り、「投与方法」には制限がない。例えば、経口投与、動脈注射、静脈注射、経皮注射、鼻腔内投与、経気管支投与又は筋肉内投与などが含まれる。一日投与量は、約0.0001~100mg/kgであり、好ましくは、0.001~10mg/kgであり、一日一回~数回に分けて投与することが好ましい。
【0062】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、実施例よって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
実施例1:実験方法
1-1.ヒト組織由来の間葉系幹細胞の分離及び培養
本実験は、サムスン医療院の研究審査委員会(Institutional Review Board;IRB)の承認(IRB No.2011-10-134)を受け、全てのサンプルは、事前同意を得て収集した。骨髄由来の間葉系幹細胞(BM-MSCs)、臍帯血由来の間葉系幹細胞(CB-MSCs)、脂肪組織由来の間葉系幹細胞(AT-MSCs)及びホウォートンゼリー由来の間葉系幹細胞(WJ-MSCs)は、従来知られている方法で分離した。分離された細胞は、10%のFBS(fetal bovine serum、Invitrogen-Gibco)及び100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen-Gibco)が含まれているDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium、Invitrogen-Gibco、Rockville、MD)培地を用いて2×103cells/cm2の密度でシーディングして、37℃及び5%のCO2条件下で培養した。
【0064】
1-2.T-細胞の増殖:BrdU incorporation assay
間葉系幹細胞を10%のFBSが添加されているhigh-glucose DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium、Invitrogen-Gibco、Rockville、MD)培地を用いて96-ウェルプレートに1.25×104cells/mlの密度でシーディングした。24時間後、前記細胞の増殖を抑制させるために10μg/mlのmitomycin-C(Sigma-Aldrich、St. Louis、MO)を添加し、追加的に37℃で2時間の間さらに培養した後、培養培地で5回洗浄した。次に、密度勾配遠心分離を通じて1×105個のヒト末梢血液単球細胞(human peripheral blood-derived mononuclear cells;hPBMCs)を分離し、各ウェルに添加した後、T-細胞の増殖を促進させるために1μg/mLのPHA(phytohemagglutinin、Sigma-Aldrich)を処理した。PHA処理によって活性化されたヒト末梢血液単球細胞をBrdU(5-bromo-2-deoxyuridine)を添加する前に3~4日間それぞれ異なる条件の間葉系幹細胞とともに培養した。T-細胞の増殖率は、BrdUを処理し、18時間後にRoche Applied Science(Penzberg、Germany)を用いて評価した。
【0065】
1-3.移植片対宿主病(GVHD)の動物モデル
8~9週齢のNOD/SCID免疫欠乏マウス(Jackson Laboratories、Bar Harbor、ME)に300cGyの全身照射法を実施し、24時間後にヒト末梢血液単球細胞を静脈投与した。より具体的に、各マウスに2×107個のヒト末梢血液単球細胞を1×106個の間葉系幹細胞とともに投与した。このとき、間葉系幹細胞は、IFN-γで刺激させるか刺激させないものを用いた。その後、同じ個数の間葉系幹細胞を投与7日目に反復投与した。
【0066】
1-4.JAK及びSTAT1の活性抑制
IFN-γ受容体の細胞内ドメインに該当するJAK(Janus kinase)の活性抑制は、100ng/mLの抗-IFN-γ抗体(BD Biosciences)又は1μMのAG490(Calbiochem、San Diego、CA)で処理して実施し、STAT1(signal transducer and activator of transcription 1)の発現抑制は、STAT1遺伝子をターゲティングするsiRNA(Santa Cruz Biotechnology)を用い、siRNA-Lipofectamine 2000(Invitrogen-Gibco)複合体を37℃で12時間細胞に処理して実施した。
【0067】
1-5.免疫ブロッティング
間葉系幹細胞を冷たいPBSで洗い、300μLの冷たいRIPA buffer(50mM Tris-HCl、pH7.5、containing 1% Triton X-100、150mM NaCl、0.1% sodium dodecyl sulfate(SDS)、1% sodium deoxycholate及びa protease inhibitor cocktail(Thermo Fisher Scientific、Rockford、IL))で溶解させた。その後、細胞の溶解物を4℃、3,000gで15分間遠心分離して上澄み液を集め、bicinchoninic acid protein assay kit(Thermo Fisher Scientific)を用いてタンパク質の定量分析を行った。
【0068】
次に、電気泳動のためにタンパク質(50μg)をsample buffer(60mM Tris-HCl、pH6.8、containing 14.4mM β-mercaptoethanol、25% glycerol、2% SDS及び0.1% bromophenol blue)に溶かし、5分間沸かした後、4-12%のSDS reducing gelにローディングしてタンパク質がサイズ別に分離されるようにした。前記分離されたタンパク質に対してtrans-blot system(Invitrogen-Gibco)を用いてトランスファー過程を行うことで、タンパク質がPVDF(polyvinylidene difluoride)メンブレン(GE Healthcare、Buckinghamshire、UK)に移されるようにした。以後、メンブレンブロットに5%のnon-fat dry milk(BD Biosciences)が含まれたTBS(Tris-buffered saline)(10mM Tris-HCl、pH7.5、supplemented with 150mM NaCl)を処理し、1時間の間室温で反応させてブロッキング過程を実行し、TBSで3回洗浄した後、3%のnon-fat dry milkが含まれたTBST(TBS supplemented with 0.01% Tween 20)に1次抗体を希釈して処理し、4℃で一晩中反応させた。翌日、メンブレンブロットをTBSTで3回洗浄し、3%のnon-fat dry milkが含まれたTBSTに希釈した2次抗体を処理した後、室温で1時間の間反応させた。その後、さらにTBSTでメンブレンブロットを洗浄した後、enhanced chemiluminescence detection system(GE Healthcare)を用いて観察しようとするタンパク質の発現量を分析した。
【0069】
このとき、phospho-JAK2(#3771)、STAT1(#9172)、phospho-STAT1(#9171)、β-actin(#4967)に特異的な抗体は、Cell Signaling Technology(Danvers、MA)から購入し、IDO(sc-25808)、IRF-1(sc-13041)に特異的な抗体は、Santa Cruz Biotechnologyから購入した。
【0070】
1-6.遺伝的変異が誘導された間葉系幹細胞の製作
IDO発現を阻害するために、human IDO shRNA(short hairpin RNA)レンチウイルスパーティクル及びIDO発現誘導レンチウイルスパーティクルをそれぞれSanta Cruz Biotechnology(sc-45939-V)(Santa Cruz、CA)及びGenTarget Inc.(LVP302)(San Diego、CA)から購入した。まず、骨髓由来幹細胞にIDO発現阻害用レンチウイルスパーティクルをトランスフェクションするために、前記細胞に10%のFBSが添加されているLG-DMEMを用いて製造した5μg/mLのポリブレン(polybrene、Santa Cruz Biotechnology)を前処理した後、MOI(multiplicity of infection)10でレンチウイルスベクターを処理した。
【0071】
以後、細胞を37℃、5%のCO2の条件下で24時間の間培養し、PBS(phosphate-buffered saline;Biowest、Nuaille、France)で2回洗浄した後さらに培地を添加した。レンチウイルスベクターが導入された間葉系幹細胞は、導入後、1日目に5μg/mLのピューロマイシン(puromycin、Sigma-Aldrich)が含まれている間葉系幹細胞の培地で7日間培養して選別し、ウエスタンブロッティングを通じて確認した。一方、骨髓由来の間葉系幹細胞にIDO発現誘導レンチウイルスパーティクルをトランスフェクションするために、細胞に10%のFBSが添加されたLG-DMEMを用いて前記レンチウイルスパーティクルをMOI 10で処理し、37℃、5%のCO2の条件下で72時間の間培養した後、PBSで2回洗浄し、さらに培養培地を添加した。
【0072】
次に、上記と同じ方法で、レンチウイルスベクターが導入された間葉系幹細胞に対して導入後1日目に5μg/mLのピューロマイシン(puromycin、Sigma-Aldrich)が含まれている間葉系幹細胞の培地で7日間培養して間葉系幹細胞を選別し、RFP(red fluorescent protein)を用いた蛍光観察及びウエスタンブロッティングを通じて確認した。
【0073】
1-7.免疫細胞化学染色法及び免疫組織化学染色法
間葉系幹細胞に固定溶液である4%のホルムアルデヒドを処理し、光を遮断させた状態の室温で30分間反応させた後、PBSで3回洗った。細胞の内部に発現するタンパク質を検出するために、細胞に0.25%のTriton X-100を処理し、光を遮断させた状態の室温で5分間反応させて細胞透過性を高めた。その後、さらに細胞を3回洗い、5%のFBSブロッキング溶液を処理して室温で1時間反応させた後、さらに細胞を洗い、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz、CA)から購入したIDO特異的抗体を処理(1:100)した後、やはり室温で1時間反応させた。次に、細胞をさらに3回洗い、Alexa Fluor(登録商標) 488が付着されているgoat anti-mouse IgG(Invitrogen-Gibco)2次抗体を処理して室温で1時間反応させ、以後、Carl Zeiss LSM 700 confocal microscope system(Jena、Germany)を用いて細胞イメージを得た。
【0074】
間葉系幹細胞をトリプシンで処理し、1μMのCM-DiI CellTracker(Invitrogen-Gibco)を用いて37℃で5分間培養した後、追加で4℃で15分間培養した。次に、標識された間葉系幹細胞1×106個をPBSで洗ってhPBMCとともにマウスに静脈投与し、7日目にさらに同じ数の細胞を投与した。以後、マウスを犠牲にして小腸を分離し、frozen sectioning技術を用いて切断した後、組織を2回洗い、5%のFBSブロッキング溶液を添加して室温で1時間の間細胞と反応させた。もう一度、上記のような方法で組織を洗い、IDO(1:100)に対する1次抗体を処理し、室温で1時間の間細胞と反応させた後、Carl Zeiss LSM 700 confocal microscopy systemを用いて組織から蛍光イメージを得た。これを通じて、核(青色;Vector Laboratories、Burlingame、CA)、IDO(緑色)及びCM-DiI-labeled MSCs(赤色)を検出した。共焦点顕微鏡イメージは、LSM 700 Zenソフトウェアを用いて分析した。
【0075】
1-8.RT-PCRの分析
間葉系幹細胞を200IU/mLのIFN-γ及び/又は100μg/mLのpoly I:C(Invitrogen-Gibco)が存在するか存在しない条件で24時間の間培養した後、QIAGEN RNeasy Mini Kit(QIAGEN、Valencia、CA)を用いて総RNAを抽出し、前記RNAに対して、PrimeScriptTM1st strand cDNA synthesis kit(TaKaRa Shuzo、Shiga、Japan)を用いて総RT-PCR(semi-quantitative reverse transcription-polymerase chain reaction)を実行してcDNAを合成した。
【0076】
前記PCRで用いたプライマー配列は、下記に示した通りである。
IDO forward:5'-GCGCTGTTGGAAATAGCTTC-3'
IDO reverse:5'-CAGGACGTCAAAGCACTGAA-3'(234 bp)
IFN-γ forward:5'-TTGGCTTTTCAGCTCTGCATC-3'
IFN-γ reverse:5'-GGAGACAATTTGGCTCTGCATT-3'(201 bp)
GAPDH forward:5'-TCAACGGATTTGGTCGTATTGGG-3'
GAPDH reverse:5'-TGATTTTGGAGGGATCTCGC-3'(234 bp)
【0077】
1-9.統計分析
全ての実験結果は、平均±標準偏差で示し、各実験条件間の差は、t-test又は分散分析を用いて分析した。P-valueが0.05未満である場合に統計的有意性があると判断した。
【0078】
2.実験結果
2-1.ヒト組織由来の間葉系幹細胞の特性分析
骨髓、臍帯血及びホウォートンゼリーから分離したヒト間葉系幹細胞を観察した結果、線維芽細胞の形態であることを確認した。一方、脂肪組織由来の間葉系幹細胞は、小さくて紡錘模様であることを観察した(
図1の(a))
【0079】
また、細胞分析を通じて表面に発現している抗原タンパク質を確認した結果、前記細胞は、全てCD73、CD90、CD105及びCD166を発現する一方、造血母細胞系統のマーカーであるCD14、CD34、CD45及びHLA-DRは発現しないことを確認した(
図1の(b))。
【0080】
また、間葉系幹細胞を骨形成、脂肪細胞形成及び軟骨形成の誘導培地で14~21日間培養した結果、それぞれアルカリホスファターゼ活性、中性脂肪液胞の蓄積及び軟骨細胞基質の蓄積を観察し、全ての間葉系幹細胞は、前記各培地で培養して分化を誘導したとき、その起源に関係なく骨、脂肪及び軟骨細胞の類似形態を示すことを確認した(
図1の(c))。
【0081】
2-2.in vitro及びin vivoモデルで間葉系幹細胞の免疫抑制特性の確認
混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction;MLR)を通じてnaive間葉系幹細胞の免疫調節特性を評価した。
【0082】
まず、PHAを処理して活性化させた末梢血液単球細胞を骨髓、脂肪組織、臍帯血又はホウォートゼリー由来の間葉系幹細胞上で培養した結果、T-細胞の活性が顕著に減少した。このような結果から、共同培養時に間葉系幹細胞の数に依存的であることを確認した(
図2)。また、他の組織に由来した間葉系幹細胞の免疫調節特性には、著しい差が現われなかった。このような結果は、脂肪組織、臍帯血及びホウォートンゼリー由来の間葉系幹細胞が骨髓誘導の間葉系幹細胞のようにT-細胞の増殖を抑制するのに効果的であることを意味する。
【0083】
次に、間葉系幹細胞によるT-細胞の増殖抑制が前記間葉系幹細胞により直接的に媒介されるのか可溶性因子によるのかを確認するために、トランスウェルシステムを用いて末梢血液単球細胞をトランスウェル挿入体内の間葉系幹細胞と共同培養した。
【0084】
その結果、
図3に示したように、各組織に由来する間葉系幹細胞は、細胞の接触がない条件でもPHA刺激に反応するhCD3+CD8+ T-細胞の増殖を抑制した。これは、直接的な細胞間接触がある条件で現われた増殖抑制レベルよりは少し減少された程度であった。前記結果は、細胞間の直接的な接触だけではなく可溶性因子も間葉系幹細胞の免疫調節効果に寄与することを意味する。
【0085】
また、in vivoで間葉系幹細胞の免疫抑制機能を確認するために、各マウスに末梢血液単球細胞及び各組織由来の間葉系幹細胞を一緒に注入した結果、
図4に示したように、細胞を注入した後8週目に、ヒト末梢血液単球細胞を単独で注入するか前記細胞と間葉系幹細胞を一緒に1回注入したマウスは死んだ一方、間葉系幹細胞を2回注入したマウスの場合には、20%程度が生存した。
【0086】
また、免疫抑制に対する可溶性因子の役目を確認するために、間葉系幹細胞が存在するか存在しない条件で培養したmitogen-activated T-細胞の培養上澄み液を分析した。その結果、末梢血液単球細胞が活性化されたとき、多様なサイトカイン、ケモカイン及び成長因子の分泌が増加した。一方で、間葉系幹細胞が存在する場合には、その起源に関係なくIFN-γ及びTNF-αのような炎症性サイトカインの量が減少した。
【0087】
また、前記in vitro結果と類似に、移植片対宿主病の動物モデルに末梢血液単球細胞を骨髓由来の間葉系幹細胞とともに注入した場合にも、血液内のIFN-γのレベルが顕著に減少することを確認した(
図5)。
【0088】
2-3.IFN-γ刺激による間葉系幹細胞の免疫抑制特性向上の確認
末梢血液単球細胞は、間葉系幹細胞とともに培養したとき増殖が抑制され、IFN-γで刺激した間葉系幹細胞と共同培養した場合には、増殖が一層抑制されたことを確認した(
図6)。
【0089】
したがって、このようなIFN-γで刺激した間葉系幹細胞が移植片対宿主病を改善させ得るかを確認するために、ヒト末梢血液単球細胞を注入したマウスに7日間隔でIFN-γで刺激した間葉系幹細胞を2回注入した。その後、末梢血液単球細胞のみを単独で注入したグループ、末梢血液単球細胞と間葉系幹細胞を一緒に注入したグループ、末梢血液単球細胞とIFN-γで刺激した間葉系幹細胞を一緒に注入したグループ又はJAK抑制剤であるAG490を前処理して末梢血液単球細胞とIFN-γで刺激した間葉系幹細胞を一緒に注入したグループにおけるマウス生存率を比較した。
【0090】
その結果、
図7に示したように、末梢血液単球細胞を単独で注入したマウスに比べてIFN-γで刺激した間葉系幹細胞を一緒に注入したマウスの生存率が改善されたことを確認した。また、このような生存率の向上結果は、末梢血液単球細胞とIFN-γを処理しない間葉系幹細胞を一緒に注入した場合に比べて一層高く現われた。一方、JAK抑制剤を前処理した場合には、IFN-γで刺激した間葉系幹細胞による移植片対宿主病マウスの生存率向上を減少させることを確認した。
【0091】
また、IFN-γで刺激した間葉系幹細胞が移植片対宿主病のマウスモデルでT細胞の増殖抑制を誘導するかを確認するために、前記各マウスグループの血液をフローサイトメトリー法を通じて確認した結果、
図8に示したように、末梢血液単球細胞と間葉系幹細胞を一緒に注入した場合には、CD45+及びCD45+CD3+細胞の数が減少したが、IFN-γで刺激した間葉系幹細胞を一緒に注入した場合には、減少程度が一層高く現われた。
【0092】
また、組織学的分析結果、
図9に示したように、IFN-γで刺激した間葉系幹細胞を一緒に注入したとき、移植片対宿主病マウスの臨床的症状及び皮膚及び小腸で免疫細胞の浸透が効果的に減少したことを確認した。このような結果は、IFN-γ刺激が間葉系幹細胞の免疫抑制特性を向上させることを意味する。
【0093】
次に、間葉系幹細胞の遺伝子発現にIFN-γが及ぼす影響を確認するために、IFN-γの刺激前後の間葉系幹細胞の遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、骨髓由来の間葉系幹細胞は、IFN-γで刺激したとき、形態変化には著しい差がなかったが、(
図10の(a))、遺伝子発現プロファイルには多くの差があることを確認した(
図10の(b))。
【0094】
実際に、IFN-γで刺激した間葉系幹細胞で512個の遺伝子の発現が増加し、下記表1に示したように、前記遺伝子のうち4個の遺伝子は間葉系幹細胞の免疫抑制機能に関連していることが分かった。
【0095】
【0096】
また、qRT-PCRを実施した結果、
図11に示したように、IFN-γで刺激した間葉系幹細胞でCXCL9(C-X-C motif)、CXCL10、CCL8(C-C motif)及びIDO遺伝子のmRNA発現レベルが顕著に増加することを確認した。
【0097】
2-4.JAK/STAT1信号伝逹経路を通じたIFN-γ媒介IDO発現誘導の確認
前記結果を通じて骨髓由来の間葉系幹細胞をIFN-γで刺激したとき、IDO発現が増加することを確認した。このような結果は、他の組織由来の間葉系幹細胞でも同一に現われることを確認した(
図12)。
【0098】
IFN-γ信号伝逹は、JAK/STAT1経路を通じて起き、STAT1は、リン酸化されて核に移動して転写を媒介する。したがって、免疫ブロッティング分析結果、
図13に示したように、IFN-γで刺激しない間葉系幹細胞と比較してIFN-γで刺激した細胞でSTAT1の活性化(STAT1リン酸化)を確認した。
【0099】
また、JAK/STAT1経路とIDO発現間の相関関係を確認するために、JAK抑制剤(AG490)を処理するかSTAT1を標的するsiRNAを処理した後、免疫ブロッティングを実施した結果、
図14に示したように、JAK抑制剤又はSTAT1標的siRNAを処理した場合、IDOが少量発現するか発現しないことを確認した。これは、IFN-γによるIDOの発現増加がJAK/STAT1経路を通じて起きることを意味する。
【0100】
MLR結果は、間葉系幹細胞が末梢血液単球細胞の増殖を抑制することを示したが、このような効果は、抗IFN-γの抗体処理によって現われないことを確認した。これはT-細胞を含む活性化された免疫細胞により分泌されるIFN-γがIDO発現を通じて間葉系幹細胞の免疫調節特性において非常に重要な役目をすることを示す。また、このような結果は、STAT1標的siRNA処理を通じてIFN-γの下位信号伝逹経路が抑制されることを通じて確認できる(
図15)。
【0101】
結論的に、間葉系幹細胞でIFN-γ/JAK/STAT1経路を通じたIDOの発現誘導は、間葉系幹細胞の免疫抑制機能に非常に重要であることが分かる。
【0102】
また、IDO mRNAの発現は、間葉系幹細胞にIFN-γを少なくとも4時間の間処理したときに増加した。1IU/mLのIFN-γを24時間の間処理した場合には、IDO mRNAの発現が少なくとも1日間維持され、IDOタンパク質レベルは、少なくとも7日間維持されることを確認した。また、同一の間葉系幹細胞に1IU/mLのIFN-γを再処理したとき、IDO mRNAがさらに発現され、そのタンパク質レベルは一層増加することを確認した。
【0103】
2-5.ヒト間葉系幹細胞の免疫抑制特性でIDOの役目糾明
移植片対宿主病のマウスに注入された間葉系幹細胞が前記マウスの組織に存在するかを評価するために、CM-DiI染色された間葉系幹細胞を注入し、共焦点顕微鏡で観察した。
【0104】
その結果、
図16に示したように、前記間葉系幹細胞が組織内に浸透することを観察し、IFN-γが処理された間葉系幹細胞を注入したとき、間葉系幹細胞でIDOの発現が誘導されることを確認した。一方、前記間葉系幹細胞を注入する前にJAK抑制剤であるAG490を処理したときには、組織で間葉系幹細胞の浸透が減少し、IDOの発現も減少した。
【0105】
前記結果を土台に、間葉系幹細胞の免疫抑制特性においてIDOの役目を確認するために、IDO発現を阻害するshRNAを処理した。
【0106】
その結果、
図17に示したように、IDOを標的するshRNAによりIFN-γで刺激した間葉系幹細胞でIDOの発現レベルが顕著に抑制されたことを確認し(
図17の(a)、(b))、また、末梢血液単球細胞をPBS又はIFN-γを処理した間葉系幹細胞とともに共同培養したとき、PHAにより誘導される末梢血液単球細胞の増殖が顕著に復旧され、このとき、ID標的shRNAによりIDOの発現が抑制されることを確認した(
図17の(c))。
【0107】
これに加えて、IDOの発現が減少された間葉系幹細胞にIFN-γを処理するか処理しない状態で、移植片対宿主病のマウスに7日間隔で2回静脈投与した結果、
図18に示したように、末梢血液単球細胞のみを単独で注入したグループと、末梢血液単球細胞をIDOの発現が減少された間葉系幹細胞とともに注入したグループで有意な生存率の差はなかった。
【0108】
このような生存結果に応じて、免疫蛍光イメージ結果、
図19に示したように、移植片対宿主病のマウスから得た小腸及び皮膚組織では、IDOダウン調節された間葉系幹細胞内にIDOがほとんど発見されなかった。
【0109】
次に、IDO及びRFPを発現するレンチウイルスベクターを導入してIDOを安定的に発現する間葉系幹細胞を製作した後、これらIDOを過発現する間葉系幹細胞の免疫抑制能をin vitro及in vivoモデルで確認した。
【0110】
その結果、
図20に示したように、末梢血液単球細胞をIDO過発現の間葉系幹細胞と共同培養したとき、PHAにより誘導された末梢血液単球細胞の増殖が顕著に抑制された。このような結果は、IFN-γで刺激した間葉系幹細胞と共同培養した場合の結果と類似していた。
【0111】
さらに、移植片対宿主病のマウスでIDO過発現の間葉系幹細胞グループの生存率もIFN-γが処理された間葉系幹細胞と共同培養したグループのマウス生存率程度向上されたことを確認した(
図21)。
【0112】
このような生存率結果に応じて、免疫蛍光イメージ結果、
図22に示したように、移植片対宿主病マウスの小腸及び皮膚組織でIDO過発現の間葉系幹細胞内にIDOが発現されることを確認した。
【0113】
結論的に、前記結果は、IFN-γを処理した間葉系幹細胞が移植片対宿主病が誘導された組織に帰巣し得、IDO発現誘導を通じて免疫抑制機能を示し得ることを示す。
【0114】
2-6.IFN-γ刺激によるIDO発現の誘導及びTLR3活性化の非誘導
従来、間葉系幹細胞でこれらの免疫抑制能のためにTLR3(Toll-likerreceptor 3)がIDOの発現を誘導すると報告されたことがあるので、本実施例では、IFN-γにより刺激された間葉系幹細胞とTLR3が活性化された間葉系幹細胞との間の免疫抑制の活性を比較した。
【0115】
その結果、
図23に示したように、末梢血液単球細胞をpoly I:Cを処理してTLR3を活性化させた間葉系幹細胞と共同培養したとき、前記末梢血液単球細胞の増殖はほとんど抑制されない一方、IFN-γで刺激した骨髓、脂肪組織、臍帯血及びホウォートンゼリー由来の間葉系幹細胞と共同培養した場合には、前記末梢血液単球細胞の増殖が顕著に抑制されることを確認した。
【0116】
このとき、ヒト間葉系幹細胞でIFN-γ刺激又はTLR3活性化によるIFN-γ発現誘導は観察されなかった。これは、ex vivo IFN-γ刺激がヒト間葉系幹細胞の免疫抑制特性を増進させるための適切な手段であることを意味する。
【0117】
また、骨髓由来の間葉系幹細胞をIFN-γで刺激したとき、IDO発現が誘導された一方、poly I:Cを処理してTLR3を活性化させた間葉系幹細胞の場合には、IDO発現が多少増加した。このような結果は、脂肪組織、臍帯血及びホウォートンゼリーのような多様な組織に由来する間葉系幹細胞でも同一に現われた(
図24)。
【0118】
また、
図25に示したように、TLR3を活性化させた全ての骨髓由来の間葉系幹細胞で他の機能と関連されたCXCL10、IL-6及びIL-8のような遺伝子は高く発現される一方、STAT1の活性化(STAT1 リン酸化)は観察されなかった。
【0119】
前記結果によると、IFN-γ刺激がJAK/STAT1経路を通じて間葉系幹細胞で(免疫抑制能のために)IDOの発現を誘導する一方、TLR3の活性化はIDOの発現を誘導しないことが分かる。
【0120】
2-7.IDOバイオマーカー以外の残りの候補マーカー(CXCL9、CXCL10、ICAM2、B7-H1、PTGDS、CXCL11、VCAM1、ICAM1、TRAIL)
脂肪組織来由の間葉系幹細胞(AT-MSC)で機能遺伝子(IDO、CXCL9、CXCL10、CXCL11、ICAM1、ICAM2、B7-H1、PTGDS、VCAM1及びTRAIL)発現に及ぼす影響を、IFN-γ刺激、TNF-α刺激及びTLR3活性化(poly I:C刺激)によって比較評価するためにRT-PCRを実施した。
【0121】
その結果、
図26に示したように、IFN-γ刺激特異的にIDO、CXCL9、CXCL10、CXCL11、ICAM1、ICAM2、B7-H1、PTGDS、VCAM1及びTRAILの発現が誘導されることが分かった。
【0122】
このような結果は、間葉系幹細胞にIFN-γで前処理刺激した後に免疫疾患の治療のための高効能間葉系を選別するにおいて、IDO、CXCL9、CXCL10、CXCL11、ICAM1、ICAM2、B7-H1、PTGDS、VCAM1及びTRAILが免疫抑制バイオマーカーとして有効であることを意味する。
【0123】
上述した本発明の説明は例示のためのもので、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更しなくても他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できる。したがって、以上で記述した実施例は、全て面で例示的なものであり、限定的ではないことで理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、移植片対宿主病、自己免疫疾患を含む多様な免疫疾患の臨床的治療のための免疫反応の調節能力を有する機能的に優れた間葉系幹細胞が得られる有用な方法を提供することで、免疫疾患の治療法で有用に用いられ得る。