(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】試料容器保持機構
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20220105BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G01N27/62 F
G01N30/72 C
(21)【出願番号】P 2020517736
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2018018322
(87)【国際公開番号】W WO2019215912
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 真悟
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-040740(JP,A)
【文献】特開2017-142122(JP,A)
【文献】特開2016-065885(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00047840(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 -27/92
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 1/00 - 1/44
G01N 35/00 -37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器を保持するための試料容器保持機構であって、
前記試料容器を鉛直方向に対して傾斜させた状態で吊り下げて保持するフック部材と、
前記フック部材を中心にして前記試料容器が回転したときに、当該試料容器に接触して、当該試料容器の回転を制限するストッパ部材とを備え
、
前記試料容器から漏れた試料が前記ストッパ部材により受けられることを特徴とする試料容器保持機構。
【請求項2】
前記ストッパ部材は、互いに上下に並べて2つ配置されており、
上側の前記ストッパ部材は、当該ストッパ部材に対応する前記試料容器から漏れた試料を受ける第1受け面と、前記第1受け面により受けられた試料を当該第1受け面から離れる方向に導く第1傾斜面と、前記第1傾斜面上を流れる試料を落下させる第1排液口とを有し、
下側の前記ストッパ部材は、当該ストッパ部材に対応する前記試料容器から漏れた試料を受ける第2受け面と、前記第1排液口から落下する試料を受けて前記第2受け面側に導く第2傾斜面と、前記第2受け面上及び前記第2傾斜面上を流れる試料を排液する第2排液口とを有することを特徴とする請求項
1に記載の試料容器保持機構。
【請求項3】
試料容器を保持するための試料容器保持機構であって、
前記試料容器を鉛直方向に対して傾斜させた状態で吊り下げて保持するフック部材と、
前記フック部材を中心にして前記試料容器が回転したときに、当該試料容器に接触して、当該試料容器の回転を制限するストッパ部材とを備え、
前記ストッパ部材には、前記試料容器に接続される配管を固定するための切欠きが形成されていることを特徴とする試料容器保持機構。
【請求項4】
試料容器を保持するための試料容器保持機構であって、
前記試料容器を鉛直方向に対して傾斜させた状態で吊り下げて保持するフック部材と、
前記フック部材を中心にして前記試料容器が回転したときに、当該試料容器に接触して、当該試料容器の回転を制限するストッパ部材とを備え、
前記ストッパ部材には、前記試料容器に対向する位置に、当該試料容器内を視認するための開口が形成されていることを特徴とする試料容器保持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料容器を保持するための試料容器保持機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば質量分析装置の中には、標準試料が収容された試料容器が備えられ、この試料容器内から標準試料を送り出して質量分析を行うことにより、装置パラメータをチューニングすることができるようになっているものがある(例えば、下記特許文献1参照)。試料容器としては、例えば上端に開口部を有する試料ビンが用いられ、試料ビンの開口部は蓋部材により覆われている。
【0003】
通常、試料容器は、鉛直方向に真っ直ぐ延びるように設置される。試料容器の下方にはリークトレイが設けられており、試料容器から試料が漏れたときには、その試料がリークトレイにより受けられる。リークトレイにより試料が受けられた場合には、リークトレイに取り付けられたリークセンサにより試料が検知されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
質量分析装置の中には、上記のような試料容器が複数設けられているものもある。複数の試料容器を質量分析装置内に設置する場合には、スペースの確保及びメンテナンス性の向上などの観点から、各試料容器を鉛直方向に対して傾斜させた状態で設置することが好ましい場合がある。そこで、例えばフック部材で試料容器を吊り下げることにより、試料容器の重力を利用して、試料容器を傾斜させた状態で保持するような構成を採用することが考えられる。
【0006】
しかしながら、上記のような構成を採用した場合には、フック部材を中心にして試料容器を回転させる方向に外力が加わった場合に、試料容器から蓋部材が外れてしまい、試料容器内の試料が飛び出してしまうおそれがある。このようなフック部材を中心とする試料容器の回転は、試料容器内の試料の飛散に限らず、他の各種問題を引き起こす原因にもなり得る。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、フック部材を中心とする試料容器の回転を制限することができる試料容器保持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る試料容器保持機構は、試料容器を保持するための試料容器保持機構であって、フック部材と、ストッパ部材とを備える。前記フック部材は、前記試料容器を鉛直方向に対して傾斜させた状態で吊り下げて保持する。前記ストッパ部材は、前記フック部材を中心にして前記試料容器が回転したときに、当該試料容器の回転を制限する。
【0009】
このような構成によれば、フック部材を中心とする試料容器の回転をストッパ部材により制限することができる。これにより、フック部材を中心にして試料容器を回転させる方向に外力が加わった場合に、試料容器から蓋部材が外れたりすることがないため、試料容器内の試料が飛び出してしまうのを防止することができる。
【0010】
(2)前記試料容器から漏れた試料が前記ストッパ部材により受けられてもよい。
【0011】
このような構成によれば、ストッパ部材を利用して、試料容器から漏れた試料を受けることができる。したがって、試料容器から試料が漏れた場合でも、漏れた試料により周囲が汚染されるのを防止することができる。
【0012】
(3)前記ストッパ部材は、互いに上下に並べて2つ配置されていてもよい。この場合、上側の前記ストッパ部材は、当該ストッパ部材に対応する前記試料容器から漏れた試料を受ける第1受け面と、前記第1受け面により受けられた試料を当該第1受け面から離れる方向に導く第1傾斜面と、前記第1傾斜面上を流れる試料を落下させる第1排液口とを有していてもよい。また、下側の前記ストッパ部材は、当該ストッパ部材に対応する前記試料容器から漏れた試料を受ける第2受け面と、前記第1排液口から落下する試料を受けて前記第2受け面側に導く第2傾斜面と、前記第2受け面上及び前記第2傾斜面上を流れる試料を排液する第2排液口とを有していてもよい。
【0013】
このような構成によれば、互いに上下に並べて2つ配置されたストッパ部材により、それぞれのストッパ部材に対応する試料容器の回転を制限することができるとともに、それぞれのストッパ部材に対応する試料容器から漏れた試料を受けることができる。各ストッパ部材で受けられた試料は、いずれも最終的には第2排液口へと導かれて排液されるため、漏れた試料により周囲が汚染されるのを防止することができる。
【0014】
特に、上側のストッパ部材の第1受け面により受けられた試料は、第1傾斜面を通って第1排液口から落下し、下側のストッパ部材の第2傾斜面を介して第2排液口へと導かれる。そのため、上側の試料容器から漏れた試料により下側の試料容器が汚染されるのを効果的に防止することができる。
【0015】
(4)前記ストッパ部材には、前記試料容器に接続される配管を固定するための切欠きが形成されていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、試料容器に接続される配管が、ストッパ部材に形成された切欠きに固定されるため、試料容器から漏れた試料が配管を伝って意図しない場所に流れるのを防止することができる。また、ストッパ部材を利用して配管を固定することにより、配管を固定するための部材を別途設ける必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0017】
(5)前記ストッパ部材には、前記試料容器に対向する位置に、当該試料容器内を視認するための開口が形成されていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、ストッパ部材に形成された開口を介して試料容器内を視認することにより、試料容器内の試料の残量を容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フック部材を中心とする試料容器の回転をストッパ部材により制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る試料容器保持機構が備えられた液体クロマトグラフ質量分析装置の構成を示した概略図である。
【
図2】フック部材について説明するための斜視図である。
【
図3】フック部材について説明するための側面図である。
【
図4】ストッパ部材について説明するための斜視図であって、試料容器が保持された状態を示している。
【
図5】ストッパ部材について説明するための斜視図であって、ストッパ部材の構成のみを示している。
【
図6】ストッパ部材について説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.液体クロマトグラフ質量分析装置の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る試料容器保持機構が備えられた液体クロマトグラフ質量分析装置1の構成を示した概略図である。液体クロマトグラフ質量分析装置1は、試料中の成分を分離する液体クロマトグラフ(LC)2と、液体クロマトグラフ2により分離された試料成分に対して質量分析を行う質量分析部(MS)3とを組み合わせた装置である。
【0022】
図示しないが、液体クロマトグラフ2では、貯留槽に貯留されている移動相が一定流量でカラムに向けて送られる。そして、その移動相に試料(未知試料)が注入され、カラムにおいて、移動相に含まれる試料成分が時間的に分離される。分離された試料成分は、配管4及び流路切替装置5を介して、質量分析部3に導入される。質量分析部3では、導入された試料成分がイオン化され、このイオンが質量電荷比(m/z)に応じて分離される。そして、検出器(図示せず)において、その分離されたイオンが検出されて、質量分析が行われる。
【0023】
質量分析部3には、液体クロマトグラフ2からの未知試料だけでなく、標準試料を導入することもできる。標準試料は、試料容器6内に収容されている。試料容器6内の上部空間(標準試料の上方の空間)には、ガス供給管7を介して加圧ガスが供給される。これにより、試料容器6内が加圧され、試料容器6内の標準試料が試料供給管8及び流路切替装置5を介して、質量分析部3に導入される。ガス供給管7は、例えばフッ素樹脂により形成されている。一方、試料供給管8は、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)により形成されている。
【0024】
流路切替装置5は、質量分析部3に連通させる流路を切り替えるための装置である。この流路切替装置5を用いて流路を切り替えることにより、試料容器6から質量分析部3に標準試料を導入する状態(
図1に実線で示す状態)、又は、液体クロマトグラフ2から質量分析部3に未知試料を導入する状態(
図1に破線で示す状態)のいずれかに切り替えることができる。
【0025】
2.試料容器保持機構の構成
(1)フック部材の周辺の構成
図2は、フック部材9について説明するための斜視図である。
図3は、フック部材9について説明するための側面図である。フック部材9は、試料容器6を保持するための試料容器保持機構に含まれている。
【0026】
試料容器6は、容器本体61及び蓋部材62を備えている。容器本体61は、その上面に開口(上面開口)を有する中空状の部材であり、上面開口から容器本体61内に標準試料が供給される。容器本体61の上面開口は、例えば樹脂製の蓋部材62により閉塞される。蓋部材62は、容器本体61に対してねじ込み式又は嵌め込み式で着脱可能となっている。
【0027】
蓋部材62の上面には、ガス供給管7が接続されるガス用接続部71、及び、試料供給管8が接続される試料用接続部81が設けられている。また、蓋部材62の上面には、フック部材9に対して着脱可能な係止部63が設けられている。係止部63は、金属製の板状部材からなり、その一部に形成された開口部631にフック部材9が挿入される。開口部631は、容器本体61の中心軸線に対して偏心した位置に形成されている。
【0028】
フック部材9は、屈曲又は湾曲した形状からなる金属製の板状部材であり、その先端部が斜め上方に向かって延びている。試料容器6は、フック部材9が係止部63の開口部631に挿入されることにより、フック部材9に吊り下げられた状態で保持される。この状態では、試料容器6の重力により、試料容器6が鉛直方向に対して傾斜した状態で保持される。具体的には、フック部材9から前方に離れるほど容器本体61の上面開口の位置が低くなるように、試料容器6が傾斜した状態となる。
【0029】
ガス用接続部71及び試料用接続部81は、係止部63の開口部631に対して、前方に向かって一直線上に並べて配置されている。試料用接続部81は、ガス用接続部71よりも開口部631から離れた位置に設けられることにより、ガス用接続部71よりも低い位置に配置される。したがって、仮に試料用接続部81に対する試料供給管8の接続に不具合があり、試料用接続部81から外部に標準試料が漏れた場合には、蓋部材62の前方側から標準試料が下方に落下することとなる。
【0030】
フック部材9は、前後方向に対して直交する水平方向である横方向(
図2参照)に沿って、スライド可能に保持されている。また、フック部材9の近傍には、フック部材9から係止部63が外れないようにロックするためのロック機構91が設けられている。この例では、ロック機構91は、水平方向に延びるように固定された板状部材により構成されている。
【0031】
フック部材9は、横方向にスライドされることにより、ロック機構91から離間したロック解除位置(
図2参照)と、ロック機構91に近接したロック位置(
図3参照)との間で移動可能となっている。
図2に示すロック解除位置では、フック部材9の先端部がロック機構91に対向していないため、フック部材9に対して係止部63を自由に着脱することができる。一方、
図3に示すロック位置では、フック部材9の先端部がロック機構91に対向するため、フック部材9から係止部63を取り外すことができないロック状態となる。
【0032】
(2)ストッパ部材の構成
図4は、ストッパ部材10について説明するための斜視図であって、試料容器6が保持された状態を示している。
図5は、ストッパ部材10について説明するための斜視図であって、ストッパ部材10の構成のみを示している。
図6は、ストッパ部材10について説明するための概略断面図である。ストッパ部材10は、フック部材9とともに、試料容器6を保持するための試料容器保持機構に含まれている。
【0033】
本実施形態では、互いに上下に並べて配置された2つのストッパ部材10(第1ストッパ部材11及び第2ストッパ部材12)が設けられている。各ストッパ部材11,12は、フック部材9を中心にして試料容器6が回転したときに、試料容器6に接触して、その試料容器6の回転を制限するためのものである。
【0034】
上側のストッパ部材10(第1ストッパ部材11)は、上段に設置される2つの試料容器6に対向するように配置されている。これらの2つの試料容器6は、例えば同一形状からなり、それぞれ別のフック部材9により吊り下げられた状態で保持される。
【0035】
下側のストッパ部材10(第2ストッパ部材12)は、下段に設置される2つの試料容器6に対向するように配置されている。これらの2つの試料容器6は、例えば異なる形状からなり、それぞれ別のフック部材9により吊り下げられた状態で保持される。
【0036】
第1ストッパ部材11は、金属製の板状部材を屈曲又は湾曲することにより形成されている。第1ストッパ部材11は、底面部111、前面部112及び背面部113などを有している。これらの底面部111、前面部112及び背面部113は、互いに連続するように一体的に形成されている。
【0037】
底面部111は、後側に向かって徐々に低くなるように、水平方向に対して若干傾斜している。前面部112は、底面部111の前端辺から斜め上方に延びており、その先端が試料容器6よりも前方に位置している。背面部113は、底面部111の後端辺から鉛直上方に延びている。
【0038】
背面部113には、前方に向かって突出する複数のスペーサ114が取り付けられている(
図6参照)。各スペーサ114の先端は、フック部材9に吊り下げられた試料容器6の容器本体61に後方から接触している。これにより、試料容器6の下部が、試料容器6の重力に抗して前方に押し出され、試料容器6が一定の傾斜角度で保持される。
【0039】
上記のような第1ストッパ部材11によれば、試料容器6の試料用接続部81などから標準試料が漏れた場合に、その漏れた標準試料を第1ストッパ部材11の前面部112で受けることができる。すなわち、第1ストッパ部材11の前面部112の上面(試料容器6側の面)は、第1ストッパ部材11に対応する試料容器6から漏れた標準試料を受ける第1受け面112Aを構成している。
【0040】
第1受け面112Aにより受けられた標準試料は、第1受け面112Aに沿って後方へと流れ、底面部111の上面に沿って、さらに後方へと流れる。底面部111の上面は、第1受け面112Aにより受けられた標準試料を第1受け面112Aから離れる方向に導く第1傾斜面111Aを構成している。
【0041】
底面部111における後端側には、横方向に延びるスリット状の第1排液口111Bが形成されている。第1排液口111Bは、底面部111における横方向の一端から他端まで延びるように形成されている。第1傾斜面111A上を後方へと流れる標準試料は、第1排液口111Bから下方に落下する。
【0042】
第2ストッパ部材12は、金属製の板状部材を屈曲又は湾曲することにより形成されている。第2ストッパ部材12は、底面部121、前面部122及び背面部123などを有している。これらの底面部121、前面部122及び背面部123は、互いに連続するように一体的に形成されている。
【0043】
底面部121は、前側に向かって徐々に低くなるように、水平方向に対して若干傾斜している。前面部122は、底面部121の前端辺から斜め上方に延びている。背面部123は、底面部121の後端辺から鉛直上方に延びている。背面部123には、第1ストッパ部材11と同様に、試料容器6を前方に押し出すためのスペーサ(図示せず)が取り付けられている。なお、本実施形態では、前面部122の一部が前方に向かって斜めに折り曲げられることにより、比較的大きな試料容器6を受け入れるための折曲片122Cが構成されている。
【0044】
第2ストッパ部材12の前面部122の上面(試料容器6側の面)は、第2ストッパ部材11に対応する試料容器6(
図6では図示せず)から漏れた標準試料を受ける第2受け面122Aを構成している。第2受け面122Aにより受けられた標準試料は、第2受け面122A上を後方へと流れ、底面部121と前面部122の結合部に形成された第2排液口122Bから下方に排液される。
【0045】
また、第1ストッパ部材11の第1排液口111Bから落下した標準試料は、第2ストッパ部材12の底面部121の上面により受けられ、当該上面に沿って前方へと流れる。底面部121の上面は、第1排液口111Bから落下する標準試料を受けて第2受け面122A側に導く第2傾斜面121Aを構成している。第2傾斜面121A上を前方へと流れる標準試料は、第2排液口122Bから下方に排液される。
【0046】
第2排液口122Bの下方には、リークトレイ13が設けられている(
図4参照)。したがって、第1ストッパ部材11の第1受け面112Aや第2ストッパ部材12の第2受け面122Aで受けられた標準試料は、第2排液口122Bを介して全てリークトレイ13に排液される。なお、本実施形態では、折曲片122Cに対向する比較的大きな試料容器6から漏れた標準試料は、リークトレイ13上に直接落下するようになっている。
【0047】
第1ストッパ部材11の前面部112には、切欠き115が形成されている。切欠き115は、前面部112の端縁に形成された窪みであり、例えば端縁からL字状又はJ字状に延びている。切欠き115は、試料容器6に接続される配管を固定するための固定部を構成している。すなわち、試料容器6に接続されるガス供給管7又は試料供給管8などの配管は、切欠き115内を通るように引っ掛けられることにより、第1ストッパ部材11に近接した状態で固定される。
【0048】
この例では、前面部112に2つの切欠き115が形成されているが、切欠き115は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、前面部112に限らず、第1ストッパ部材11の他の位置に切欠き115が形成されていてもよい。切欠き115は、第1ストッパ部材11に限らず、第2ストッパ部材12に形成されていてもよい。
【0049】
また、第1ストッパ部材11の前面部112には、開口116が形成されている。開口116は、試料容器6に対向する位置に形成されている。したがって、第1ストッパ部材11の前方側から開口116を介して、第1ストッパ部材11の後方に位置する試料容器6内を視認することができる。
【0050】
この例では、前面部112に1つの開口116が形成されているが、開口116は、2つ以上であってもよい。また、前面部112に限らず、第1ストッパ部材11の他の位置に開口116が形成されていてもよい。開口116は、第1ストッパ部材11に限らず、第2ストッパ部材12に形成されていてもよい。
【0051】
3.作用効果
(1)本実施形態では、フック部材9を中心とする試料容器6の回転をストッパ部材10(第1ストッパ部材11及び第2ストッパ部材12)により制限することができる。これにより、フック部材9を中心にして試料容器6を回転させる方向に外力が加わった場合に、試料容器6から蓋部材62が外れたりすることがないため、試料容器6内の標準試料が飛び出してしまうのを防止することができる。
【0052】
(2)また、本実施形態では、ストッパ部材10(第1受け面112A及び第2受け面122A)を利用して、試料容器6から漏れた標準試料を受けることができる。したがって、試料容器6から標準試料が漏れた場合でも、漏れた標準試料により周囲が汚染されるのを防止することができる。
【0053】
(3)本実施形態では、互いに上下に並べて2つ配置されたストッパ部材10(第1ストッパ部材11及び第2ストッパ部材12)により、それぞれのストッパ部材10に対応する試料容器6の回転を制限することができるとともに、それぞれのストッパ部材10に対応する試料容器6から漏れた標準試料を受けることができる。各ストッパ部材10で受けられた標準試料は、いずれも最終的には第2排液口122Bへと導かれて排液されるため、漏れた標準試料により周囲が汚染されるのを防止することができる。
【0054】
特に、上側のストッパ部材10(第1ストッパ部材11)の第1受け面112Aにより受けられた標準試料は、第1傾斜面111Aを通って第1排液口111Bから落下し、下側のストッパ部材10(第2ストッパ部材12)の第2傾斜面121Aを介して第2排液口122Bへと導かれる。そのため、上側の試料容器6から漏れた標準試料により下側の試料容器6が汚染されるのを効果的に防止することができる。
【0055】
(4)本実施形態では、試料容器6に接続される配管(ガス供給管7又は試料供給管8など)が、ストッパ部材10に形成された切欠き115に固定されるため、試料容器6から漏れた標準試料が配管を伝って意図しない場所に流れるのを防止することができる。また、ストッパ部材10を利用して配管を固定することにより、配管を固定するための部材を別途設ける必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0056】
(5)また、本実施形態では、ストッパ部材10に形成された開口116を介して試料容器6内を視認することにより、試料容器6内の標準試料の残量を容易に確認することができる。
【0057】
4.変形例
試料容器6は、標準試料を収容する容器に限らず、未知試料などの他の任意の試料を収容する容器であってもよい。
【0058】
ストッパ部材10は、第1ストッパ部材11及び第2ストッパ部材12の2つが設けられた構成に限らず、1つ又は3つ以上のストッパ部材10が設けられた構成であってもよい。また、ストッパ部材10の形状は、上記実施形態のような形状に限られるものではなく、試料容器6の回転を制限することができるような形状であれば、他の任意の形状を採用することができる。
【符号の説明】
【0059】
6 試料容器
7 ガス供給管
8 試料供給管
9 フック部材
10 ストッパ部材
11 第1ストッパ部材
12 第2ストッパ部材
61 容器本体
62 蓋部材
63 係止部
71 ガス用接続部
81 試料用接続部
111 底面部
111A 第1傾斜面
111B 第1排液口
112 前面部
112A 第1受け面
113 背面部
114 スペーサ
115 切欠き
116 開口
121 底面部
121A 第2傾斜面
122 前面部
122A 第2受け面
122B 第2排液口
123 背面部