(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ制御装置、液体クロマトグラフシステム、液体クロマトグラフ制御方法および液体クロマトグラフ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 30/82 20060101AFI20220105BHJP
G01N 30/32 20060101ALI20220105BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G01N30/82
G01N30/32 A
G01N30/02 Z
(21)【出願番号】P 2020551615
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2018038323
(87)【国際公開番号】W WO2020079732
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 覚
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-52835(JP,A)
【文献】特表2003-519698(JP,A)
【文献】国際公開第2013/011818(WO,A1)
【文献】特開2009-281897(JP,A)
【文献】特開2009-8402(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2581741(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカラムのいずれかおよび移動相を用いて試料の分析を行う
液体クロマトグラフ装置を制御する
液体クロマトグラフ制御装置であって、
各カラムを特定するためのカラム特定情報に対応付けて、
前記カラム特定情報により特定されるカラムを破損することなくカラムに流すことができる流量の上限値以下の値である、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量を登録する流量登録部と、
前記液体クロマトグラフ装置が備える前記複数のカラムのうち分析に用いるカラムを選択するカラム選択部と、
前記カラム選択部により選択されたカラムに対応付けて登録されている移動相の流量を前記流量登録部の登録内容から取得する流量取得部と、
前記カラム選択部により選択されたカラムと、前記流量取得部により取得された移動相の流量とを用いて、移動相が前記選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように前記
液体クロマトグラフ装置を制御する分析制御部とを備える、
液体クロマトグラフ制御装置。
【請求項2】
使用者の操作に基づいて、前記カラム特定情報に対応する移動相の流量が入力される流量入力部をさらに備え、
前記流量登録部は、前記カラム特定情報に対応付けて、前記流量入力部により入力された移動相の流量を登録する、請求項1記載の
液体クロマトグラフ制御装置。
【請求項3】
前記カラム特定情報は、カラムの名称または識別情報である、請求項1または2記載の
液体クロマトグラフ制御装置。
【請求項4】
前記カラム特定情報は、カラム充填剤の粒子径、カラムの内径およびカラムの長さの少なくとも1つを含むカラムパラメータである、請求項1または2記載の
液体クロマトグラフ制御装置。
【請求項5】
分析に用いる移動相を自動的に順次選択する移動相選択部と、
評価部とをさらに備え、
前記カラム選択部は、分析に用いるカラムとして前記複数のカラムを自動的に順次選択するように構成され、
前記分析制御部は、前記移動相選択部により選択された移動相が、前記カラム選択部により選択された前記複数のカラムに、前記流量取得部により取得された移動相の流量を用いて、順次供給されつつ分析が行われるように前記
液体クロマトグラフ装置を制御し、
前記評価部は、前記分析制御部により実行された分析の結果を評価する、請求項2または3記載の
液体クロマトグラフ制御装置。
【請求項6】
液体クロマトグラフ装置と、
請求項1または2記載の
液体クロマトグラフ制御装置とを備え、
前記
液体クロマトグラフ装置は、
複数のカラムと、
前記複数のカラムのうちいずれかのカラムに移動相を供給する移動相供給部と、
前記カラムに試料を供給する試料供給部と、
前記カラムを通過した試料を検出する検出器とを含む、
液体クロマトグラフシステム。
【請求項7】
複数のカラムのいずれかおよび移動相を用いて試料の分析を行う
液体クロマトグラフ装置を制御する
液体クロマトグラフ制御方法であって、
各カラムを特定するためのカラム特定情報に対応付けて、
前記カラム特定情報により特定されるカラムを破損することなくカラムに流すことができる流量の上限値以下の値である、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量を登録するステップと、
前記液体クロマトグラフ装置が備える前記複数のカラムのうち分析に用いるカラムを選択するステップと、
選択されたカラムに対応付けて登録されている移動相の流量を登録内容から取得するステップと、
選択されたカラムと、取得された移動相の流量とを用いて、移動相が前記選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように前記
液体クロマトグラフ装置を制御するステップとを含む、
液体クロマトグラフ制御方法。
【請求項8】
複数のカラムのいずれかおよび移動相を用いて試料の分析を行う
液体クロマトグラフ装置を制御する
液体クロマトグラフ制御プログラムであって、
各カラムを特定するためのカラム特定情報に対応付けて、
前記カラム特定情報により特定されるカラムを破損することなくカラムに流すことができる流量の上限値以下の値である、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量を登録する処理と、
前記液体クロマトグラフ装置が備える前記複数のカラムのうち分析に用いるカラムを選択する処理と、
選択されたカラムに対応付けて登録されている移動相の流量を登録内容から取得する処理と、
選択されたカラムと、取得された移動相の流量とを用いて、移動相が前記選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように前記
液体クロマトグラフ装置を制御する処理とを、
処理装置に実行させる、
液体クロマトグラフ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ装置の制御を行う液体クロマトグラフ制御装置、液体クロマトグラフシステム、液体クロマトグラフ制御方法および液体クロマトグラフ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる物質を異なる成分ごとに分離する装置としてクロマトグラフ装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された液体クロマトグラフ装置においては、分析対象の試料がオートサンプラにより分離カラム(以下、単にカラムと呼ぶ。)に導入される。また、溶離液(移動相)が溶離液ポンプによりカラムに供給される。カラムに導入された試料は、化学的性質または組成の違いにより成分ごとに溶離され、検出器により検出される。
【文献】特開2008-224559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
クロマトグラフ装置においては、カラムの充填剤、カラムの寸法、カラムの温度、移動相の種類、移動相のpHおよび移動相の流量等の種々の分析条件の各々を適切に選択する必要がある。したがって、使用者は、種々の分析条件の組み合わせの各々について試料の分析を行い、適切な分析条件の組み合わせを探索する。しかしながら、分析条件によっては、カラムに負荷が加わることによりカラムが破損する可能性がある。
【0004】
本発明の目的は、カラムの破損を防止することが可能な液体クロマトグラフ制御装置、液体クロマトグラフシステム、液体クロマトグラフ制御方法および液体クロマトグラフ制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一局面に従う液体クロマトグラフ制御装置は、複数のカラムのいずれかおよび移動相を用いて試料の分析を行う液体クロマトグラフ装置を制御する液体クロマトグラフ制御装置であって、各カラムを特定するためのカラム特定情報に対応付けて、カラム特定情報により特定されるカラムを破損することなくカラムに流すことができる流量の上限値以下の値である、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量を登録する流量登録部と、液体クロマトグラフ装置が備える複数のカラムのうち分析に用いるカラムを選択するカラム選択部と、カラム選択部により選択されたカラムに対応付けて登録されている移動相の流量を流量登録部の登録内容から取得する流量取得部と、カラム選択部により選択されたカラムと、流量取得部により取得された移動相の流量とを用いて、移動相が選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように液体クロマトグラフ装置を制御する分析制御部とを備える。
【0006】
この液体クロマトグラフ制御装置においては、液体クロマトグラフ装置の各カラムを特定するためのカラム特定情報に対応付けて、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量が登録される。また、分析に用いるカラムが選択される。選択されたカラムに対応付けて登録されている移動相の流量が流量登録部の登録内容から取得される。選択されたカラムと、流量取得部により取得された移動相の流量とを用いて、移動相が選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように液体クロマトグラフ装置が制御される。この場合、選択されたカラムを用いて分析が行われる。選択されたカラムには、過剰な流量の移動相が供給されることが防止される。これにより、カラムの破損を防止することができる。
【0007】
(2)液体クロマトグラフ制御装置は、使用者の操作に基づいて、カラム特定情報に対応する移動相の流量が入力される流量入力部をさらに備え、流量登録部は、カラム特定情報に対応付けて、流量入力部により入力された移動相の流量を登録してもよい。この場合、使用者は、流量入力部を操作することにより、各カラムのカラム特定情報に対応付けて、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量を入力することができる。
【0008】
(3)カラム特定情報は、カラムの名称または識別情報であってもよい。この場合、カラムの名称または識別情報に対応付けて、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量を容易に登録することができる。
【0009】
(4)カラム特定情報は、カラム充填剤の粒子径、カラムの内径およびカラムの長さの少なくとも1つを含むカラムパラメータであってもよい。この場合、カラムパラメータに対応付けて、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量を容易に登録することができる。
【0010】
(5)液体クロマトグラフ制御装置は、分析に用いる移動相を自動的に順次選択する移動相選択部と、評価部とをさらに備え、カラム選択部は、分析に用いるカラムとして複数のカラムを自動的に順次選択するように構成され、分析制御部は、移動相選択部により選択された移動相が、カラム選択部により選択された複数のカラムに、流量取得部により取得された移動相の流量を用いて、順次供給されつつ分析が行われるように液体クロマトグラフ装置を制御し、評価部は、分析制御部により実行された分析の結果を評価してもよい。この場合、各カラムに対応する分析の結果が取得され、当該分析の結果が評価される。これにより、使用者は、試料の分析に最適なカラムを容易に判断することができる。
【0011】
(6)本発明の他の局面に従う液体クロマトグラフシステムは、液体クロマトグラフ装置と、上記液体クロマトグラフ制御装置とを備え、液体クロマトグラフ装置は、複数のカラムと、複数のカラムのうちいずれかのカラムに移動相を供給する移動相供給部と、カラムに試料を供給する試料供給部と、カラムを通過した試料を検出する検出器とを含む。
【0012】
この液体クロマトグラフシステムにおいては、液体クロマトグラフ装置により複数のカラムのうちいずれかのカラムに移動相および試料が供給され、カラムを通過した試料が検出される。液体クロマトグラフ制御装置により、選択されたカラムを用いて分析が行われるように液体クロマトグラフ装置が制御される。選択されたカラムには、過剰な流量の移動相が供給されることが防止される。これにより、カラムの破損を防止することができる。
【0013】
(7)本発明のさらに他の局面に従う液体クロマトグラフ制御方法は、複数のカラムのいずれかおよび移動相を用いて試料の分析を行う液体クロマトグラフ装置を制御する液体クロマトグラフ制御方法であって、各カラムを特定するためのカラム特定情報に対応付けて、カラム特定情報により特定されるカラムを破損することなくカラムに流すことができる流量の上限値以下の値である、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量を登録するステップと、液体クロマトグラフ装置が備える複数のカラムのうち分析に用いるカラムを選択するステップと、選択されたカラムに対応付けて登録されている移動相の流量を登録内容から取得するステップと、選択されたカラムと、取得された移動相の流量とを用いて、移動相が選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように液体クロマトグラフ装置を制御するステップとを含む。
【0014】
この液体クロマトグラフ制御方法によれば、選択されたカラムを用いて分析が行われる。選択されたカラムには、過剰な流量の移動相が供給されることが防止される。これにより、カラムの破損を防止することができる。
【0015】
(8)本発明のさらに他の局面に従う液体クロマトグラフ制御プログラムは、複数のカラムのいずれかおよび移動相を用いて試料の分析を行う液体クロマトグラフ装置を制御する液体クロマトグラフ制御プログラムであって、各カラムを特定するためのカラム特定情報に対応付けて、カラム特定情報により特定されるカラムを破損することなくカラムに流すことができる流量の上限値以下の値である、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量を登録する処理と、液体クロマトグラフ装置が備える複数のカラムのうち分析に用いるカラムを選択する処理と、選択されたカラムに対応付けて登録されている移動相の流量を登録内容から取得する処理と、選択されたカラムと、取得された移動相の流量とを用いて、移動相が選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように液体クロマトグラフ装置を制御する処理とを、処理装置に実行させる。
【0016】
この液体クロマトグラフ制御プログラムによれば、選択されたカラムを用いて分析が行われる。選択されたカラムには、過剰な流量の移動相が供給されることが防止される。これにより、カラムの破損を防止することができる。なお、液体クロマトグラフ制御プログラムは、記憶媒体に記憶された形態で提供することも可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カラムの破損を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は本発明の一実施の形態に係るクロマトグラフシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図2はクロマトグラフ装置の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3はクロマトグラフ制御装置の構成を示す図である。
【
図4】
図4は表示部に表示される入力画面の一例を示す図である。
【
図5】
図5はクロマトグラフ制御プログラムにより行われるクロマトグラフ制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は
図5のクロマトグラフ制御処理におけるメソッドスカウティング処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は
図5のクロマトグラフ制御処理におけるメソッドスカウティング処理のアルゴリズムの他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)クロマトグラフシステムの構成
以下、本発明の実施の形態に係るクロマトグラフ制御装置、クロマトグラフシステム、クロマトグラフ制御方法およびクロマトグラフ制御プログラムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るクロマトグラフシステムの構成を示す図である。
図1に示すように、クロマトグラフシステム300は、処理装置100およびクロマトグラフ装置200を含む。
【0020】
処理装置100は、CPU(中央演算処理装置)110、RAM(ランダムアクセスメモリ)120、ROM(リードオンリメモリ)130、記憶部140、操作部150、表示部160および入出力I/F(インターフェイス)17により構成される。CPU110、RAM120、ROM130、記憶部140、操作部150、表示部160および入出力I/F170はバス180に接続される。CPU110、RAM120およびROM130がクロマトグラフ制御装置10を構成する。
【0021】
RAM120は、CPU110の作業領域として用いられる。ROM130にはシステムプログラムが記憶される。記憶部140は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含む。記憶部140には、クロマトグラフ装置200を制御するためのクロマトグラフ制御プログラムが記憶されている。なお、クロマトグラフ制御プログラムは、記憶部140とは異なる記憶媒体に記憶されていてもよい。CPU110が記憶部140等に記憶されたクロマトグラフ制御プログラムをRAM120上で実行することにより、後述するクロマトグラフ制御処理が行われる。
【0022】
操作部150は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。表示部160は、液晶表示装置等の表示デバイスであり、クロマトグラフ制御装置10によるクロマトグラフ制御処理の実行画面等を表示する。入出力I/F170は、クロマトグラフ装置200に接続される。
【0023】
図2は、クロマトグラフ装置200の構成を示す模式図である。
図2に示すように、本実施の形態においては、クロマトグラフ装置200は液体クロマトグラフ装置であり、移動相供給部210、試料供給部220、カラム恒温槽230および検出器240を備える。
【0024】
移動相供給部210は、2つの送液部211,212および混合部213を含む。また、移動相供給部210には、複数(
図2の例では8個)の薬液ボトルB1~B8が設けられる。薬液ボトルB1~B4には、それぞれ異なる水溶液が薬液として貯留される。薬液ボトルB5~B8には、それぞれ異なる有機溶媒が薬液として貯留される。
【0025】
送液部211,212は、例えば送液ポンプである。送液部211は、薬液ボトルB1~B4のうち、図示しない切替バルブにより選択された、いずれか1個以上の薬液ボトルに貯留された薬液を圧送する。送液部212は、薬液ボトルB5~B8のうち、図示しない切替バルブにより選択された、いずれか1個以上の薬液ボトルに貯留された薬液を圧送する。なお、送液部211と薬液ボトルB1~B4との間、および送液部212と薬液ボトルB5~B8との間の各々には、図示しない脱気装置が介挿される。
【0026】
混合部213は、例えばグラジエントミキサである。混合部213は、送液部211により圧送された薬液と送液部212により圧送された薬液とを任意の割合で混合することにより種々の移動相を生成し、生成された移動相を供給する。試料供給部220は、例えばインジェクタである。試料供給部220は、分析対象の試料を移動相供給部210により供給された移動相とともに、後述するカラム231~233のうち、図示しない切替バルブにより選択された、いずれかのカラムに選択的に導入する。
【0027】
カラム恒温槽230の内部は所定の一定温度に調整される。カラム恒温槽230は、複数(本例では3個)のカラム231,232,233を収容する。各カラム231~233は、導入された試料を化学的性質または組成の違いにより成分ごとに分離する。検出器240は、各カラム231~233により分離された試料の成分を検出する。
【0028】
クロマトグラフ制御装置10は、カラム231~233と移動相との組み合わせを変更しつつ試料の分析が行われるようにクロマトグラフ装置200を制御する。これにより、所望の試料を適切に分析するための分析条件の組み合わせを探索することができる。このような分析条件の組み合わせの探索は、メソッドスカウティングと呼ばれる。以下、クロマトグラフ制御装置10の構成について説明する。
【0029】
(2)クロマトグラフ制御装置の構成
図3は、クロマトグラフ制御装置10の構成を示す図である。
図3に示すように、クロマトグラフ制御装置10は、機能部として、流量入力部1、流量登録部2、カラム選択部3、流量取得部4、移動相選択部5、分析制御部6、置換制御部7、結果取得部8および評価部9を含む。
図1のCPU110が記憶部140等に記憶されたクロマトグラフ制御プログラムを実行することにより、クロマトグラフ制御装置10の機能部が実現される。クロマトグラフ制御装置10の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0030】
流量入力部1は、カラム特定情報に対応付けて、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量が入力される入力画面を表示部160に表示させる。また、流量入力部1には、カラム特定情報に対応する移動相の流量が操作部150から入力される。カラム特定情報は、
図2のカラム231~233を特定するための情報であり、例えば、名称、識別情報、ブランド、固定相、耐圧およびカラムパラメータの少なくとも1つを含む。また、カラムパラメータは、カラム充填剤の粒子径、カラムの内径およびカラムの長さの少なくとも1つを含む。
【0031】
図4は、表示部160に表示される入力画面の一例を示す図である。
図4に示すように、入力画面161は、複数の情報入力部162および情報入力部163を含む。各情報入力部162,163は、文字列を入力するための欄またはプルダウンメニューである。使用者は、操作部150を用いていずれかの情報入力部162を操作することにより、各カラム231~233についてのカラム特定情報を入力することができる。また、使用者は、同じ入力画面161において、操作部150を用いて情報入力部163を操作することにより、カラム特定情報に対応付けて移動相の流量を入力することができる。移動相の流量として、カラム特定情報により特定されるカラムを破損することなく、カラムに流すことができる流量の上限値以下の値が入力される。
【0032】
流量登録部2は、流量入力部1により入力された移動相の流量をカラム特定情報に対応付けて、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量としてデータベースに登録する。カラム選択部3は、操作部150からの指示に基づいて、カラム231~233のうちいずれかのカラムを選択する。使用者は、操作部150を操作することにより、カラム231~233のうち所望のカラムを指示することができる。また、カラム選択部3は、後述するメソッドスカウティング処理時には、分析に用いるカラムとして複数のカラム231~233を自動的に順次選択する。
【0033】
流量取得部4は、カラム選択部3により選択されたカラムに対応付けて登録されている移動相の流量を流量登録部2の登録内容(データベース)から取得する。移動相選択部5は、操作部150からの指示に基づいて、分析に用いる移動相を選択する。使用者は、操作部150を操作することにより、分析に用いる移動相として、薬液ボトルB1~B4に貯留された薬液と、薬液ボトルB5~B8に貯留された薬液とを混合することにより生成可能な液体のいずれかを指示することができる。また、移動相選択部5は、後述するメソッドスカウティング処理時には、分析に用いる移動相として複数の移動相を自動的に順次選択する。
【0034】
分析制御部6は、カラム選択部3により選択されたカラムと、流量取得部4により取得された移動相の流量と、移動相選択部5により選択された移動相とを用いて試料の分析が行われるようにクロマトグラフ装置200を制御する。具体的には、選択された移動相が、取得された流量で選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるようにクロマトグラフ装置200が制御される。
【0035】
分析制御部6により分析に用いられる移動相が変更された直後には、カラム231~233を含むクロマトグラフ装置200の流路内に変更前の移動相が残存する。そのため、移動相の変更後、次の分析が直ちに行われると、当該移動相についての正確な分析結果を得ることができない。そこで、置換制御部7は、分析に用いられる移動相が変更された場合、流路内に残存する変更前の移動相が変更後の移動相により置換されるようにクロマトグラフ装置200を制御する。分析制御部6による変更後の移動相についての次の分析は、置換制御部7の動作後に行われる。
【0036】
結果取得部8は、クロマトグラフ装置200による試料の成分の検出結果を取得し、取得された検出結果を処理することにより、各成分の保持時間と検出強度との関係を示すクロマトグラムを生成する。評価部9は、結果取得部8により生成されたクロマトグラムが示す成分の分離度に基づいて当該クロマトグラムの良否を評価する。また、評価部9は、クロマトグラムの評価結果と当該クロマトグラムが生成されたときの分析条件の組み合わせとを対応付けて表示部160に表示させる。
【0037】
使用者は、表示部160に表示された評価結果を視認することにより、最適な分析条件の組み合わせを認識することができる。なお、表示部160には、生成された全部のクロマトグラムの評価結果が表示されてもよいし、一定以上の良好度を有するクロマトグラムの評価結果のみが表示されてもよいし、最も高い良好度を有するクロマトグラムの評価結果のみが表示されてもよい。全部のクロマトグラムの評価結果が表示される場合には、一定以上の良好度を有するクロマトグラムの評価結果が識別可能に表示されてもよいし、良好度が大きい順にクロマトグラムの評価結果が表示されてもよい。
【0038】
(3)クロマトグラフ制御処理
図5は、クロマトグラフ制御プログラムにより行われるクロマトグラフ制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。まず、流量入力部1は、入力画面161を表示部160に表示させ(ステップS1)、移動相の流量が入力されたか否かを判定する(ステップS2)。使用者は、入力画面161において操作部150を操作することによりいずれかのカラム特定情報に対応付けて移動相の流量を入力することができる。
【0039】
移動相の流量が入力されない場合、流量入力部1は、移動相の流量が入力されるまで待機する。移動相の流量が入力された場合、流量登録部2は、カラム特定情報に対応付けて、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量をデータベースに登録する(ステップS3)。
【0040】
次に、流量入力部1は、入力の終了が指示されたか否かを判定する(ステップS4)。使用者は、操作部150を操作することにより、入力の終了を指示することができる。入力の終了が指示されない場合、流量入力部1はステップS1に戻る。使用者が全部のカラム特定情報に対応する移動相の流量を入力し、入力の終了を指示するまでステップS1~S3が繰り返される。
【0041】
入力の終了が指示された場合、後述する
図6または
図7のメソッドスカウティング処理が実行される(ステップS5)。使用者は、操作部150を操作することにより、
図6または
図7のいずれのメソッドスカウティング処理を実行するかを選択することができる。メソッドスカウティング処理は、カラム231~233と移動相との組み合わせを変更しつつ試料の分析を行い、各組み合わせについてのクロマトグラムを評価する処理である。ステップS5のメソッドスカウティング処理が実行された後、評価部9は、メソッドスカウティング処理における評価結果を表示部160に表示させる(ステップS6)。
【0042】
その後、カラム選択部3は、操作部150からの指示に基づいてカラム231~233のうちいずれかのカラムを選択する(ステップS7)。使用者は、表示部160に表示された表示結果を視認することにより、最適なカラムを認識し、操作部150を操作することにより当該カラムを指示することができる。流量取得部4は、ステップS7で選択されたカラムのカラム特定情報に対応付けてステップS3で登録された移動相の流量をデータベースから取得する(ステップS8)。
【0043】
また、移動相選択部5は、操作部150からの指示に基づいて複数の移動相のうちいずれかの移動相を選択する(ステップS9)。使用者は、表示部160に表示された表示結果を視認することにより、最適な移動相を認識し、操作部150を操作することにより当該移動相を指示することができる。なお、ステップS6,S7とステップS8とは、いずれが先に実行されてもよい。
【0044】
続いて、分析制御部6は、分析対象の試料の分析が行われるようにクロマトグラフ装置200を制御する(ステップS10)。当該分析においては、ステップS9で選択された移動相が、ステップS7で選択されたカラムに、ステップS8で取得された流量で供給される。その後、分析制御部6は、クロマトグラフ制御処理を終了する。
【0045】
図6は、
図5のクロマトグラフ制御処理におけるメソッドスカウティング処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図6のメソッドスカウティング処理においては、まず、移動相選択部5は、分析に用いる移動相を選択する(ステップS11)。分析に用いる移動相は、薬液ボトルB1~B4に貯留された薬液と、薬液ボトルB5~B8に貯留された薬液とを混合することにより生成可能な液体のいずれかである。また、カラム選択部3は、分析に用いるカラムを選択する(ステップS12)。分析に用いるカラムは、カラム231~233のいずれかである。
【0046】
次に、流量取得部4は、ステップS12または後述するステップS18で選択されたカラムのカラム特定情報に対応付けてステップS3で登録された移動相の流量をデータベースから取得する(ステップS13)。その後、分析制御部6は、分析対象の試料の分析が行われるようにクロマトグラフ装置200を制御する(ステップS14)。当該分析においては、ステップS11で選択された移動相が、ステップS12またはステップS18で選択されたカラムに、ステップS13で取得された流量で供給される。
【0047】
結果取得部8は、ステップS14で行われたクロマトグラフ装置200による試料の成分の検出結果を取得し、取得された検出結果を処理することにより、クロマトグラムを取得する(ステップS15)。評価部9は、ステップS15で取得されたクロマトグラムの良否を評価する(ステップS16)。
【0048】
続いて、カラム選択部3は、全部のカラム231~233が選択されたか否かを判定する(ステップS17)。全部のカラム231~233が選択されていない場合、カラム選択部3は、分析に用いるカラムとして他のカラムを選択し(ステップS18)、ステップS13に戻る。全部のカラム231~233が選択されるまでステップS13~S18が繰り返される。
【0049】
ステップS17で全部のカラム231~233が選択された場合、移動相選択部5は、全部の移動相が選択されたか否かを判定する(ステップS19)。全部の移動相が選択されていない場合、移動相選択部5は、分析に用いる移動相として他の移動相を選択する(ステップS20)。この場合、分析に用いる移動相が変更される。
【0050】
ここで、置換制御部7は、クロマトグラフ装置200の流路内に残存する変更前の移動相が変更後の移動相により置換されるようにクロマトグラフ装置200を制御する(ステップS21)。移動相の置換は、変更後の移動相が所定の時間または所定の容量だけ流路に供給されることにより行われる。このときに各カラムに供給される移動相の流量は、ステップS13で取得された流量である。その後、置換制御部7は、ステップS12に戻る。全部の移動相が選択されるまでステップS12~S21が繰り返される。ステップS19で全部の移動相が選択された場合、移動相選択部5はメソッドスカウティング処理を終了する。
【0051】
図7は、
図5のクロマトグラフ制御処理におけるメソッドスカウティング処理のアルゴリズムの他の例を示すフローチャートである。
図7のメソッドスカウティング処理においては、まず、カラム選択部3は、分析に用いるカラムを選択する(ステップS21)。
図6のメソッドスカウティング処理と同様に、分析に用いるカラムは、カラム231~233のいずれかである。流量取得部4は、ステップS31または後述するステップS41で選択されたカラムのカラム特定情報に対応付けてステップS3で登録された移動相の流量をデータベースから取得する(ステップS22)。
【0052】
また、移動相選択部5は、分析に用いる移動相を選択する(ステップS33)。
図6のメソッドスカウティング処理と同様に、分析に用いる移動相は、薬液ボトルB1~B4に貯留された薬液と、薬液ボトルB5~B8に貯留された薬液とを混合することにより生成可能な液体のいずれかである。
【0053】
次に、分析制御部6は、分析対象の試料の分析が行われるようにクロマトグラフ装置200を制御する(ステップS34)。当該分析においては、ステップS33で選択された移動相が、ステップS31またはステップS41で選択されたカラムに、ステップS32で取得された流量で供給される。結果取得部8は、ステップS34で行われたクロマトグラフ装置200による試料の成分の検出結果を取得し、取得された検出結果を処理することにより、クロマトグラムを取得する(ステップS35)。評価部9は、ステップS35で取得されたクロマトグラムの良否を評価する(ステップS36)。
【0054】
続いて、移動相選択部5は、全部の移動相が選択されたか否かを判定する(ステップS37)。全部の移動相が選択されていない場合、移動相選択部5は、分析に用いる移動相として他の移動相を選択する(ステップS38)。この場合、分析に用いる移動相が変更される。ここで、置換制御部7は、クロマトグラフ装置200の流路内に残存する変更前の移動相が変更後の移動相により置換されるようにクロマトグラフ装置200を制御し(ステップS39)、ステップS34に戻る。全部の移動相が選択されるまでステップS34~S39が繰り返される。
【0055】
ステップS37で全部の移動相が選択された場合、カラム選択部3は、全部のカラム231~233が選択されたか否かを判定する(ステップS40)。全部のカラム231~233が選択されていない場合、カラム選択部3は、分析に用いるカラムとして他のカラムを選択し(ステップS41)、ステップS32に戻る。全部のカラム231~233が選択されるまでステップS32~S41が繰り返される。全部のカラム231~233が選択された場合、カラム選択部3はメソッドスカウティング処理を終了する。
【0056】
(4)効果
本実施の形態に係るクロマトグラフシステム300は、クロマトグラフ制御装置10およびクロマトグラフ装置200を備える。クロマトグラフ装置200においては、移動相供給部210により移動相がカラム231~233のいずれかに供給され、試料供給部220により試料が同カラム231~233に供給される。当該カラム231~233を通過した試料が検出器240により検出される。
【0057】
クロマトグラフ制御装置10においては、各カラム231~233を特定するためのカラム特定情報に対応付けて、当該カラム231~233を用いて分析する際の移動相の流量が流量登録部2によりデータベースに登録される。また、分析に用いるカラムがカラム選択部3により選択される。選択されたカラムに対応付けて登録されている移動相の流量が流量取得部4によりデータベースから取得される。カラム選択部3により選択されたカラムと、流量取得部4により取得された移動相の流量とを用いて、移動相が選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように分析制御部6によりクロマトグラフ装置200が制御される。
【0058】
この場合、選択されたカラムを用いて分析が行われる。選択されたカラムには、過剰な流量の移動相が供給されることが防止される。これにより、カラム231~233の破損を防止することができる。
【0059】
また、カラムの名称、識別情報、カラム充填剤の粒子径、カラムの内径およびカラムの長さ等の情報のうち、少なくとも1つ情報を各カラムを特定するためのカラム特定情報として用いることができる。これにより、当該カラムを用いて分析する際の移動相の流量を容易に登録することができる。
【0060】
(5)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、クロマトグラフ制御装置10は評価部9を含むが、本発明はこれに限定されない。使用者がクロマトグラムを目視することによりクロマトグラムの良否を判断する場合には、クロマトグラフ制御装置10は評価部9を含まなくてもよい。この場合、
図5のステップS6、
図6のステップS16および
図7のステップS36は省略される。
【0061】
(b)上記実施の形態において、クロマトグラフ装置200は液体クロマトグラフ装置であるが、本発明はこれに限定されない。クロマトグラフ装置200は、超臨界クロマトグラフ装置等の他のクロマトグラフ装置であってもよい。