(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】バッテリケース及びこれを用いた蓄電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20220105BHJP
H01M 50/207 20210101ALI20220105BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H01M50/204 201
H01M50/207
H05K5/02 L
(21)【出願番号】P 2021139752
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2021-08-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】森田 秀世
(72)【発明者】
【氏名】上原 雄司
(72)【発明者】
【氏名】筧 真一朗
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111129378(CN,A)
【文献】特開2002-260606(JP,A)
【文献】米国特許第4409302(US,A)
【文献】特開2013-65419(JP,A)
【文献】特開2014-75916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/00-50/198
H01M 50/60-50/77
H05K 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリモジュールを収容するためのバッテリケースであって、
下部開口部を有する胴体と、
前記下部開口部を閉塞し、水抜き穴を有する底板と、
前記水抜き穴を覆うよう前記底板の内面に固定された平板と、を備え、
前記平板は、前記底板に溜まった水が前記底板と前記平板の間を毛細管現象によって伝わることにより前記水抜き穴から排出可能に構成されていることを特徴とするバッテリケース。
【請求項2】
前記底板は、排出すべき水を溜める凹部を有し、
前記水抜き穴は、前記凹部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリケース。
【請求項3】
前記平板は、外周の高さ位置が一定であることを特徴とする請求項2に記載のバッテリケース。
【請求項4】
前記底板に固定され、前記バッテリモジュールを位置決めする下部固定部材をさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のバッテリケース。
【請求項5】
前記下部固定部材は、前記凹部と重なるよう配置されていることを特徴とする請求項4に記載のバッテリケース。
【請求項6】
前記胴体と前記底板が一体の部材からなることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のバッテリケース。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のバッテリケースと、前記バッテリケースに収容されたバッテリモジュールとを備える蓄電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリケース及びこれを用いた蓄電池システムに関し、特に、結露等によりケース内部に溜まる水を排出可能なバッテリケース及びこれを用いた蓄電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
屋外や自動車など温度変化の大きい環境に設置される蓄電池システムは、結露等によってケース内部に水が溜まることがある。特許文献1には、このような水を外部に排出可能なバッテリケースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたバッテリケースは、排水口を開閉する開閉弁とこれを制御する制御機構を用いていることから、構造が複雑であるという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、簡単な構造によってケース内部に溜まる水を排出可能なバッテリケース及びこれを用いた蓄電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるバッテリケースは、バッテリモジュールを収容するためのバッテリケースであって、下部開口部を有する胴体と、下部開口部を閉塞し、水抜き穴を有する底板と、水抜き穴を覆うよう底板の内面に固定された平板とを備え、平板は、底板に溜まった水が底板と平板の間を毛細管現象によって伝わることにより水抜き穴から排出可能に構成されていることを特徴とする。ここで、胴体と底板は、別部材の組み合わせからなるものであっても構わないし、一体の部材からなるものであっても構わない。また、本発明による蓄電池システムは、上記のバッテリケースと、筐体本体に収容されたバッテリモジュールとを備える。
【0007】
本発明によれば、毛細管現象を利用していることから、開閉弁などを設けることなく簡単な構造によってケース内部に溜まる水を排出することが可能となる。
【0008】
本発明において、底板は排出すべき水を溜める凹部を有し、水抜き穴は凹部に設けられていても構わない。これによれば、排出すべき水が凹部に集まることから、効率よく排水を行うことが可能となる。この場合、平板は外周の高さ位置が一定であっても構わない。これによれば、毛細管現象によって平板の外周から均一に排水することが可能となる。ここで、バッテリケースは、底板に固定され、バッテリモジュールを位置決めする下部固定部材をさらに備えていても構わない。これによれば、底板に溜まった水が毛細管現象によって底板と下部固定部材の間を移動するため、排出すべき水が凹部に集まりやすくなる。ここで、下部固定部材は、凹部と重なるよう配置されていても構わない。これによれば、毛細管現象によって底板と下部固定部材の間を移動する水が凹部に誘導される。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明によれば、簡単な構造によってケース内部に溜まる水を排出可能なバッテリケース及びこれを用いた蓄電池システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるバッテリケース1の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、バッテリケース1から天板20を取り外した状態を示す略透視斜視図である。
【
図3】
図3は、バッテリケース1の部分的な略透視背面図である。
【
図6】
図6は、凹部31と平板70の関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態によるバッテリケース1の外観を示す略斜視図である。
図2は、バッテリケース1から天板20を取り外した状態を示す略透視斜視図である。
図3は、バッテリケース1の部分的な略透視背面図である。
【0013】
図1~
図3に示すように、本実施形態によるバッテリケース1は、筒状体10、天板20及び底板30からなる筐体本体2と、筐体本体2に固定された配線管カバー40とを備える。筒状体10と底板30は一体の部材であっても構わないが、本実施形態では筒状体10と底板30が別部材によって構成されている。これら各部材10,20,30,40は、いずれも金属材料からなる。バッテリケース1内には、バッテリモジュールB1,B2や制御ボックスHが収容され、これにより蓄電池システムが構成される。バッテリケース1は、固定金具6を介して土台7に固定される。さらに、バッテリケース1には、制御ボックスHに接続される配線管8が設けられている。配線管8は、配線管カバー40によって覆われる。
【0014】
筒状体10は、一枚の金属板、例えば先塗装材が筒状に折り曲げ加工された構成を有している。このように、一枚の金属板が折り曲げ加工されてなる筒状体10を用いれば、高い防水性を得ることが可能となる。特に、筒状体10の材料として先塗装材を使用すれば、大幅なコストダウンが図ることができる。筒状体10の上部開口部は天板20によって閉塞され、筒状体10の下部開口部は底板30によって閉塞される。但し、本発明において筒状体10を一枚の金属板によって構成することは必須でなく、複数の部材が組み合わされたものであっても構わない。つまり、胴体状であればその構造については特に限定されない。
【0015】
【0016】
図4に示すように、底板30にはバッテリモジュールB1,B2を位置決めする下部固定部材61,62が固定されている。下部固定部材61,62は、一枚の金属板が折り曲げ加工された構成を有している。一対の下部固定部材61,62のX方向における間隔は、筐体本体2に収容されるバッテリモジュールB1,B2のX方向における長さとほぼ同じか僅かに広く設計されており、これにより一対の下部固定部材61,62は、バッテリモジュールB1,B2のX方向における位置決め機構として機能する。
【0017】
図4の拡大図である
図5に示すように、底板30には凹部31が設けられている。凹部31の底部には、底板30を貫通する水抜き穴32が設けられており、水抜き穴32は平板70によって内面側から覆われている。凹部31は、上部から滴下する水を溜める役割を果たす。また、下部固定部材61は、凹部31と重なるように配置されている。
【0018】
上部から滴下する水や、筒状体10の内壁を伝って流れ落ちる水のうち、凹部31に直接入り込む水は僅かであり、大部分は底板30の平坦面に溜まる。しかしながら、底板30には、凹部31と重なる位置に下部固定部材61が固定されていることから、底板30に溜まった水は毛細管現象によって底板30と下部固定部材61の間を移動し、凹部31へと導かれる。このように、凹部31と重なる位置に下部固定部材61を設けることにより、排出すべき水が凹部31に集まりやすくなる。また、凹部31には浮き63が設けられており、バッテリケース1の内部に溜まった水が凹部31を超えて溢れている場合、浮き63によってこれが検出され、バッテリモジュールB1,B2及び制御ボックスHの動作が停止する。
【0019】
図6は、凹部31と平板70の関係を説明するための模式図である。
【0020】
図6に示すように、平板70は、水抜き穴32を覆うよう、溶接された固定部33によって凹部31の平坦な内面に固定される。底板30の内面と平板70は、隙間なく完全に密着しているのではなく、毛細管現象による水分が移動できるよう構成されている。したがって、固定部33は水抜き穴32の全周を囲んではならず、
図6に示すように部分的に設けられる。このように、底板30と平板70の固定を溶接によって行えば、底板30と平板70を密着させる力は働かず、これにより毛細管現象による水分の移動が可能となる。また。固定部33が溶接によるものである必要はなく、ネジやリベットなどを用いても構わないが、この場合は、毛細管現象による水分の移動が可能なよう、底板30と平板70の締め付けを強固に行うべきではない。
【0021】
かかる構成により、下部固定部材61に沿って凹部31に流れ込んだ水60が平板70の外周に達すると、底板30の内面と平板70の間を毛細管現象によって水60が移動し、水抜き穴32から外部に排出される。毛細管現象を利用しているため水抜き速度は速くないものの、結露などによって発生した水分を排出するには十分な機能を有している。
【0022】
ここで、水抜き穴32の径φ1は5mm以上、例えば7mm程度とすることが好ましい。これは、水抜き穴32の径φ1が5mm未満であると、毛細管現象によって水抜き穴32に達した水が水滴となって滴下しにくいからである。また、平板70の径φ2は、底板30と重なる部分の径方向における距離が10mm程度となるよう設計すれば良い。水抜き穴32や平板70の形状については特に限定されず、
図6に示すように円形であっても構わないし、四角形など他の形状であっても構わない。いずれの場合も、平板70の外周の高さ位置を一定とすることにより、平板70の外周から毛細管現象によって均一に排水することが可能となる。
【0023】
また、水抜き穴32及び平板70を用いた排水機構は、底板30の凹部31だけでなく、別の場所に配置することも可能である。例えば、
図4に示す例では、下部固定部材62に近い底板30の角部近傍に同様の排水機構を設けることにより、凹部31に到達しにくい水をここから排水可能に構成している。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によるバッテリケース1は、底板30に設けられた水抜き穴32と、水抜き穴32を覆う平板70とを備え、底板30に溜まった水を毛細管現象によって底板30の内面と平板70の間を移動させて排水していることから、簡単な構造でバッテリケース1の内部の水を排水することが可能となる。
【0025】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0026】
1 バッテリケース
2 筐体本体
6 固定金具
7 土台
8 配線管
10 筒状体
20 天板
30 底板
31 凹部
32 水抜き穴
33 固定部
40 配線管カバー
60 水
61,62 下部固定部材
63 浮き
70 平板
B1,B2 バッテリモジュール
H 制御ボックス
【要約】
【課題】簡単な構造によってバッテリケースの内部に溜まる水を排出する。
【解決手段】バッテリケース1は、筒状体10と、筒状体10の下部開口部を閉塞し、水抜き穴32を有する底板30と、水抜き穴32を覆うよう底板30の内面に固定された平板70とを備える。平板70は、底板30に溜まった水が底板30と平板70の間を毛細管現象によって伝わることにより水抜き穴32から排出可能に構成されている。このように、毛細管現象を利用していることから、開閉弁などを設けることなく簡単な構造によってケース内部に溜まる水を排出することが可能となる。
【選択図】
図6