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特許6992949変性液晶ポリマーの製造方法、液晶ポリマー組成物及び液晶ポリマーの融点の変更方法
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  • 特許-変性液晶ポリマーの製造方法、液晶ポリマー組成物及び液晶ポリマーの融点の変更方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】変性液晶ポリマーの製造方法、液晶ポリマー組成物及び液晶ポリマーの融点の変更方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
C08J7/00 301
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019149487
(22)【出願日】2019-08-16
(65)【公開番号】P2020172618
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2019-08-16
(31)【優先権主張番号】62/832,896
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】108113884
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514209308
【氏名又は名称】佳勝科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】李 弘榮
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-320592(JP,A)
【文献】特開平06-055652(JP,A)
【文献】特開平11-291329(JP,A)
【文献】特表2017-538014(JP,A)
【文献】特開2010-000795(JP,A)
【文献】特表2013-502482(JP,A)
【文献】特公昭49-040152(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 71/00-71/04
C08J 3/00-99/00
C08J 7/00-7/18
C08G 63/00-64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の融点を有する液晶ポリマー粉体を提供する工程であって、
該液晶ポリマー粉体の平均粒径範囲が、0.001μm~1000μmである工程と、
前記液晶ポリマー粉体を前記第1の融点以下である第1の温度に加熱し、前記第1の温度に第1の時間で維持する工程と、
前記液晶ポリマー粉体を前記第1の温度から前記第1の温度より低い第2の温度に降温させて、前記第1の融点より高い第2の融点を有する第1の変性液晶ポリマーを形成する工程と、
を含む変性液晶ポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記第1の温度と前記第1の融点との差は、100℃以下である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記液晶ポリマー粉体を前記第1の温度に加熱することは、0.1~10℃/minの速度で行われる請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1の時間は、0.5~6時間である請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記液晶ポリマー粉体を前記第2の温度に降温させることは、0.1~10℃/minの速度で行われる請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第2の温度は、室温以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1の変性液晶ポリマーを前記第1の温度より高い第3の温度に加熱し、前記第3の温度に第2の時間で維持する工程と、
前記第1の変性液晶ポリマーを前記第3の温度から前記第2の温度に降温させて、前記第2の融点より高い第3の融点を有する第2の変性液晶ポリマーを形成する工程と、
を更に含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第3の温度と前記第1の温度との差は、20~50℃である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第2の時間は、0.5~6時間である請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
第1の融点を有する液晶ポリマーを提供する工程であって、
該液晶ポリマーは、液晶ポリマーを研磨して平均粒径範囲が、0.001μm~1000μmである粉体としたものであり、
前記液晶ポリマー粉体を前記第1の融点以下である第1の温度に加熱し、前記第1の温度に0.5~6時間で維持する工程と、
前記液晶ポリマー粉体を前記第1の温度から前記第1の温度より低い第2の温度に降温させて、前記液晶ポリマー粉体が前記第1の融点より高い第2の融点を有するようにする工程と、
を含む液晶ポリマーの融点の変更方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、変性液晶ポリマーの製造方法、液晶ポリマー組成物及び液晶ポリマーの融点の変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路板は、電子製品に不可欠な素子であり、消費者向け電子製品の需要が増大するにつれて、プリント回路板の需要も日々に増大する。しかしながら、一般的な液晶ポリマーからなる積層板は、回路基板プロセスにおける高温プレスの要件を満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
更には、積層板に一般的に用いられる液晶ポリマーフィルムは、液晶ポリマー粒子を熱融着によって押出成形、インフレーション成形又はブロー成形することで形成される。その後のプレスプロセスにおいて、プロセス温度が融点に近いため、一般的な液晶ポリマーの融点は比較的に単一であり、プロセス中にほとんどの液晶ポリマーが溶融するので、プレス後の積層板の厚さが大きく変化し、積層板完成品の実際の厚さを正確に制御することは困難である。従って、上記の問題を改善することのできる技術的解決策が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、第1の融点を有する液晶ポリマーを提供する工程と、液晶ポリマーを第1の融点以下である第1の温度に加熱し、第1の温度に第1の時間で維持する工程と、液晶ポリマーを第1の温度から第1の温度より低い第2の温度に降温させて、第1の融点より高い第2の融点を有する第1の変性液晶ポリマーを形成する工程と、を含む変性液晶ポリマーの製造方法を提供する。
【0005】
本発明の1つ又は複数の実施形態によると、第1の温度と第1の融点との差は、100℃以下である。
【0006】
本発明の1つ又は複数の実施形態によると、液晶ポリマーを第1の温度に加熱することは、0.1~10℃/minの速度で行われる。
【0007】
本発明の1つ又は複数の実施形態によると、第1の時間は、0.5~6時間である。
【0008】
本発明の1つ又は複数の実施形態によると、液晶ポリマーを第2の温度に降温させることは、0.1~10℃/minの速度で行われる。
【0009】
本発明の1つ又は複数の実施形態によると、第2の温度は、室温以上である。
【0010】
本発明の1つ又は複数の実施形態によると、変性液晶ポリマーの製造方法は、第1の変性液晶ポリマーを第1の温度より高い第3の温度に加熱し、第3の温度に第2の時間で維持する工程と、第1の変性液晶ポリマーを第3の温度から第2の温度に降温させて、第2の融点より高い第3の融点を有する第2の変性液晶ポリマーを形成する工程と、を更に含む。
【0011】
本発明の1つ又は複数の実施形態によると、第3の温度と第1の温度との差は、20~50℃である。
【0012】
本発明の1つ又は複数の実施形態によると、第2の時間は、0.5~6時間である。
【0013】
本発明の別の態様は、前記製造方法で製造される液晶ポリマー組成物を提供する。
【0014】
本発明の別の態様は、第1の融点を有する液晶ポリマーを提供する工程と、液晶ポリマーを第1の融点以下である第1の温度に加熱し、第1の温度に0.5~6時間で維持する工程と、液晶ポリマーを第1の温度から第1の温度より低い第2の温度に降温させて、液晶ポリマーが第1の融点より高い第2の融点を有するようにする工程と、を含む液晶ポリマーの融点の変更方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
下記添付図面に合わせた詳細な説明は、本発明の上記及びその他の目的、特徴、メリット及び実施形態をより分かりやすくするためのものである。
図1】本発明のいくつかの実施例による変性液晶ポリマーの製造方法100のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の記述をより詳細化し充実させるためには、添付図面及び以下に記載される様々な実施形態を参照してよい。
【0017】
内容に特に明記されていない限り、本明細書で使用される単数の用語は、複数の指示対象を含む。「一実施形態」のような特定の指示を参照することで、本開示の実施形態の少なくとも1つにおいて、特定の特徴、構造、又は特性が示されるので、「一実施形態において」のような用語が特別な指示として現われる場合、同じ実施形態を参照する必要はなく、更に、1つ又は複数の実施形態では、これら特定の特徴、構造又は特性を状況に応じて適宜組み合わせてよい。
【0018】
本発明は、変性液晶ポリマーの製造方法を提供する。図1を参照されたい。図1は、本発明のいくつかの実施例による変性液晶ポリマーの製造方法100のフロー図である。
【0019】
工程110において、液晶ポリマーを提供する。いくつかの実施例において、液晶ポリマーは、第1の融点を有する。液晶ポリマーが緻密に配列されている直鎖のポリマー構造を有し、形成される製品が良好な機械的性質を有するので、配向処理によって高い強度又は高い耐熱性という特性を発揮することができ、耐熱性電子材料及び高性能エンジニアリングプラスチック基板に適用されることができる。いくつかの実施例において、第1の融点は、200℃~400℃、例えば250℃、270℃、280℃、290℃、300℃又は350℃であってよい。
【0020】
液晶ポリマーが分子レベルのバリアを形成するように容易に配列されるので、低吸水性及び高ガスバリア性の効果は優れている。液晶ポリマーによるフィルムは、一般的なポリイミド(polyimide;PI)フィルム材料より低い吸水率、誘電率、熱膨張率(coefficient of thermal expansion;CTE)、及び優れた寸法安定性、ガスバリア性、熱伝導性を有する。特に、流れ方向での線熱膨張係数は極めて小さく、普通のプラスチックより一桁(order)低く、金属の熱膨張係数に近い。液晶ポリマーは、リサイクル・再利用可能である材料特性を有し、且つ例えばエポキシ樹脂(epoxy resin)の裏付けのような接着剤を使用せずに、直接金属層に熱接着することができるため、よりコストの優位性がある。
【0021】
いくつかの実施例において、液晶ポリマーは、粉体(powder)であってよい。ある実施例において、液晶ポリマーを研磨するように粉末に研磨してよいが、これに限定されない。ある実施形態において、粉体の平均粒径範囲は、1nm(ナノメートル)~1000μm(ミクロン)にあってよく、例えば5nm、10nm、15nm、20nm、30nm、50nm、70nm、90nm、100nm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm又は900μmであってよい。
【0022】
別の実施例において、液晶ポリマーは、サーモトロピック(thermotropic)液晶ポリマー樹脂である。また、サーモトロピック液晶ポリマー樹脂は、分子量によって液晶ポリマー(polymer)樹脂と液晶オリゴマー(oligomer)樹脂に分けられることができる。いくつかの実施形態において、液晶ポリマー樹脂及び/又は液晶オリゴマー樹脂によって研磨して、液晶ポリマー粉体を形成することができる。
【0023】
サーモトロピック液晶ポリマー樹脂は、下記の3つのタイプを含む。1.第1のタイプの液晶ポリマー樹脂は高耐熱タイプであり、その液晶状態転移(LC transition)温度が約330℃より高い。第1のタイプの液晶ポリマー樹脂は、高い引張強度及び弾性率を有し、化学的耐食性がよく、高温性能を必要とする用途に適しているが、その加工性能がわずかに劣っている。2.第2のタイプの液晶ポリマー樹脂は、中耐熱タイプであり、その液晶状態転移温度が約280℃~約320℃である。第2のタイプの液晶ポリマー樹脂は、化学的耐食性及び加水分解安定性を有し、電気性及び難燃性に優れ、強いバリア性を有し、総合性能が良い。3.第3のタイプの液晶ポリマー樹脂は、低耐熱タイプであり、その液晶状態転移温度が約240℃より低い。第3のタイプの液晶ポリマー樹脂は、わずかに耐熱性が劣るが、加工性が良好であり、価格は安い。
【0024】
一実施例において、高耐熱タイプの液晶ポリマー樹脂は、p-ヒドロキシ安息香酸(p-hydroxybenzoic acid;HBA)、テレフタル酸(terephthalic Acid;TA)及び4,4’-ジオキシジフェノール(4、4’-dioxydiphenol;DODP)からなる液晶ポリマー樹脂を含む。例として、市販の名称Xydar(登録商標)の液晶ポリマー樹脂は、下記の繰り返し単位の構造を有する。
【化1】
【0025】
別の実施例において、中耐熱タイプの液晶ポリマー樹脂は、p-ヒドロキシ安息香酸(p-hydroxybenzoic acid;HBA)及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(6-hydroxy-2-naphthoic acid;HNA)からなる液晶ポリマー樹脂を含む。例として、市販の名称Vectra(登録商標)の液晶ポリマー樹脂は、以下のような繰り返し単位の構造を有する。
【化2】
【0026】
また1つの実施例において、低耐熱タイプの液晶ポリマー樹脂は、ポリテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)及びp-ヒドロキシ安息香酸(p-hydroxybenzoic acid;HBA)からなる液晶ポリマー樹脂を含む。例として、市販の名称X7G(登録商標)の液晶ポリマー樹脂は、以下のような繰り返し単位の構造を有する。
【化3】
【0027】
また、本発明の液晶ポリマーは、可溶性液晶ポリマーであってもよい。いくつかの実施例において、可溶性液晶ポリマーは、下記の液晶ポリマー及び芳香族ポリマーを含む。この芳香族ポリマーは、芳香族ポリエステル(aromatic polyester)、芳香族ポリアミド(aromatic polyamide)、ポリフェニレンテレフタルアミド(polyphenylene terephthalamide;PPTA)、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)(poly(p-phenylene-2,6-benzobisoxazole;PBO)及びp-ヒドロキシ安息香酸及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の共重合体(poly(p-hydroxybenzoic acid-co-2-hydroxy-6-naphthoic acid))の1つ又は多種類から選ばれる。
【0028】
いくつかの実施例において、可溶性液晶ポリマーにおける液晶ポリマーは、下記のような繰り返し単位を有する。
【化4】
Arは1,4-フェニレン(1,4-phenylene)、1,3-フェニレン(1,3-phenylene)、2,6-ナフタレン(2,6-naphthalene)又は4,4’-ビフェニル(4,4’-biphenylene)であってよく、Yは、O又はNHであってよく、ZはC=Oであってよく、Xはアミノ(amino)、カルボキサミド(carboxamido)、イミド(imido又はimino)、アミジノ(amidino)、アミノカルボニルアミノ(aminocarbonylamino)、アミノチオカルボニル(aminothiocarbonyl)、アミノカルボニルオキシ(aminocarbonyloxy)、アミノスルホニル(aminosulfonyl)、アミノスルホニルオキシ(aminosulfonyloxy)、アミノスルホニルアミノ(aminosulfonylamino)、カルボキシルエステル(carboxyl ester)、(カルボキシルエステル)アミノ((carboxyl ester)amino)、(アルコキシカルボニル)オキシ((alkoxycarbonyl)oxy)、アルコキシカルボニル(alkoxycarbonyl)、ヒドロキシアミノ(hydroxyamino)、アルコキシアミノ(alkoxyamino)、シアノト(cyanato)、イソシアナト(isocyanato)又はその組合せであってよいが、それらに限定されない。
【0029】
工程120において、液晶ポリマーを第1の温度に加熱し、第1の温度に第1の時間で維持する。第1の温度は液晶ポリマーの第1の融点以下である。いくつかの実施例において、第1の温度と第1の融点との差は、100℃以下であり、例えば80℃、60℃、40℃又は20℃である。
【0030】
いくつかの実施例において、液晶ポリマーを第1の温度に加熱することは、0.1~10℃/min、例えば0.5℃/min、1℃/min、2℃/min、5℃/min、8℃/min、9℃/min又は9.5℃/minのような速度で行われる。加熱速度が遅すぎると、例えば0.1℃/minよりも小さくなると、プロセス時間全体が長過ぎ、プロセスコストが増加する。加熱速度が速すぎると、例えば10℃/minよりも大きくなると、液晶ポリマーは、不均一に加熱され、その結果、液晶ポリマーの構造が予想通りに変化しない。
【0031】
ある実施例において、第1の時間は、例えば1時間、2時間、3時間、4時間又は5時間のように、0.5~6時間である。
【0032】
工程130において、液晶ポリマーを第1の温度より低い第2の温度に降温させて、第1の変性液晶ポリマーを形成する。この第1の変性液晶ポリマーは、元の液晶ポリマーの第1の融点より高い第2の融点を有する。
【0033】
いくつかの実施例において、第2の温度は、室温以上であり、例えば30℃、40℃、50℃又は60℃である。いくつかの実施例において、第2の温度は100℃より低い。
【0034】
工程120及び工程130の処理により、第1の変性液晶ポリマーは、元の液晶ポリマーより高い融点を有する。液晶ポリマーを第1の温度に加熱すると、構造を部分的に再編成することができるため、液晶ポリマーが第2の温度に降温する場合、液晶ポリマーの結晶配列、大きさ及び形状が変化するので、液晶ポリマーの融点が変わる。
【0035】
注意すべきなのは、ある実施例において、一部の液晶ポリマーの構造だけは再編成される。従って、上記工程により処理された後で、液晶ポリマー組成物を形成する。液晶ポリマー組成物は、元の液晶ポリマー及び第1の変性液晶ポリマーを含む。液晶ポリマー組成物は、元の液晶ポリマーより広い融点範囲を有する。例として、原始液晶ポリマーの融点が280℃であると、上記工程により処理された液晶ポリマー組成物の融点は、280℃~300℃にある。
【0036】
いくつかの実施例において、液晶ポリマーを第2の温度に降温させることは、例えば0.5℃/min、1℃/min、2℃/min、5℃/min、8℃/min、9℃/min又は9.5℃/minのように、0.1~10℃/minの速度で行われる。例えば0.1℃/minよりも小さく、降温速度が遅すぎると、全体プロセス時間が長過ぎ、プロセスコストが増加する。例えば10℃/minよりも大きく、降温速度が速すぎると、液晶ポリマーは、不均一に加熱され、その結果、液晶ポリマーの構造が予想通りに変化しない。
【0037】
また、いくつかの実施例において、工程130の後で引き続き工程140を実行する。工程140において、第1の変性液晶ポリマーを第3の温度に加熱し、第3の温度に第2の時間で維持する。第3の温度は上記の第1の温度より高い。第3の温度と第1の温度との差は、例えば30℃又は40℃のように、20℃~50℃であってよい。いくつかの実施例において、第1の温度は250℃であり、第3の温度は270℃である。ある実施例において、第2の時間は、例えば1時間、2時間、3時間、4時間又は5時間のように、0.5~6時間であってよい。第2の時間は、第1の時間と同じ又は異なってよい。
【0038】
工程150において、第1の変性液晶ポリマーを第2の温度に降温させて、第2の変性液晶ポリマーを形成する。この第2の変性液晶ポリマーが第3の融点を有し、第3の融点が第1の変性液晶ポリマーの第2の融点より高い。いくつかの実施例において、一部の液晶ポリマーだけの構造は再編成される。従って、上記のように、上記工程で処理された後で、液晶ポリマー組成物を形成し、この液晶ポリマー組成物が元より広い融点範囲を有する。例として、原始液晶ポリマーの融点が280℃であり、工程120及び工程130で処理された液晶ポリマー組成物の融点が280℃~300℃の間にあり、工程120、工程130、工程140及び工程150で処理された液晶ポリマー組成物の融点が280℃~320℃の間にある。
【0039】
いくつかの実施例において、重複して工程140~150を複数回実行することができ、例えば液晶ポリマーを加温し一段の時間(例えば工程140)を維持してから、また液晶ポリマーを降温(例えば工程150)させて、液晶ポリマー組成物を形成する。注意すべきなのは、毎回の液晶ポリマー加温の温度の何れも前回の加温の温度20℃~50℃より高い。重複して実行する回数が多いほど、液晶ポリマー組成物の融点範囲は広くなる。ある実施例において、重複して工程140~150を1回~10回実行して、液晶ポリマー組成物の融点範囲を必要に満たすようにする。例として、まず液晶ポリマーを250℃に加熱して、また60℃に降温させ、更に270℃に加熱してから、60℃に降温させて、更に290℃に加熱し、最後に60℃に降温させる。
【0040】
本発明は、上記の製造方法で製造される液晶ポリマーも提供する。
【0041】
本発明は、更に、第1の融点を有する液晶ポリマーを提供する工程と、液晶ポリマーを第1の融点以下である第1の温度に加熱し、第1の温度に0.5~6時間で維持する工程と、液晶ポリマーを第1の温度から第1の温度より低い第2の温度に降温させて、液晶ポリマーが第1の融点より高い第2の融点を有するようにする工程と、を含む液晶ポリマーの融点の変更方法を提供する。
【0042】
上記処理された液晶ポリマーは、広い融点範囲を有してよい。詳しく言えば、液晶ポリマーは、上記の融点範囲内にある複数の融点を有してよい。
【0043】
ニーズに応じて、本発明の液晶ポリマー組成物の融点範囲を調整することができる。本発明の液晶ポリマー組成物は漸進式の融点を有し、後の積層板に用いられるプロセスにおいて、高いプロセス温度に耐えられる。例として、後の接着ラミネーションプロセスの場合、プロセス温度が融点に近い可能性があるので、一般的に積層板に用いられる液晶ポリマーの融点は単一であり、プロセスにおける大部分の液晶ポリマーが溶融するため、積層後の厚さが50μmから約25μmに変改する可能性がある。本発明の液晶ポリマー組成物が広い融点範囲を有する(高い融点の液晶ポリマーを有する)、後の接着ラミネーションプロセスの場合、プロセス温度が融点に近くても、高い融点の液晶ポリマーを有するので、一部の液晶ポリマー組成物だけが溶融し、積層後の厚さが50μmから約45μmに変改し。これにより、本発明の液晶ポリマー組成物は、確実に積層板の厚さを正確に制御することができるので、プロセス誤差がより小さくなり、プロセスの設計空間がより大きくなることが判明される。
【0044】
本開示は、ある実施形態を詳細に記載したが、他の実施形態も可能である。従って、添付の請求項の精神や範囲は、本明細書に記載の実施形態に限定されるべきではない。
【0045】
本開示内容を実施形態によって以上のように開示したが、これは本開示内容を限定するものではなく、当業者であれば、本開示内容の精神と範囲から逸脱しない限り、各種の変更及び修飾することができるため、本開示内容の保護範囲は、下記特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0046】
100:製造方法
110、120、130、140、150:工程
図1