(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
B65D 1/42 20060101AFI20220105BHJP
B65D 43/02 20060101ALI20220105BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B65D1/42
B65D43/02
B65D1/26
(21)【出願番号】P 2017122738
(22)【出願日】2017-06-23
【審査請求日】2020-05-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年3月21日 シーピー化成株式会社が、株式会社タイヨー ビッグハウス茂原店及び東金店に包装用容器を卸した
(73)【特許権者】
【識別番号】390041058
【氏名又は名称】シーピー化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 忠
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-141270(JP,A)
【文献】実開昭50-143904(JP,U)
【文献】登録実用新案第3021137(JP,U)
【文献】特開2013-095503(JP,A)
【文献】実開昭55-036170(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/42
B65D 43/02
B65D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シートから成形され、容器本体又は蓋体となる樹脂成形品であって、
該蓋体となる場合は、天面部と、該天面部の外縁から下方に向かう周壁面部と、該周壁面部の下端から外方に張り出すフランジ部と、該周壁面部の面上に上下方向に延びる筋状凹部又は筋状凸部と、該筋状凹部又は該筋状凸部の下方側の該フランジ部
と該周壁面部
とで形成される角部に、該周壁面部よりも外側に膨らませ、下部側を該筋状凹部又は該筋状凸部よりも幅広とした突出部と、を備え、
該容器本体となる場合は、底面部と、該底面部の外縁から上方に向かう周壁面部と、該周壁面部の上端から外方に張り出すフランジ部と、該周壁面部の面上に上下方向に延びる筋状凹部又は筋状凸部と、該筋状凹部又は該筋状凸部の上方側の該フランジ部
と該周壁面部
とで形成される角部に、該周壁面部よりも外側に膨らませ、上部側を該筋状凹部又は該筋状凸部よりも幅広とした突出部と、を備え
、
該突出部は、側面視において、該蓋体となる場合は、上方から下方に向かい拡開する形状とし、該容器本体となる場合は、下方から上方に向かい拡開する形状とした、
樹脂成形品。
【請求項2】
前記筋状凹部又は前記筋状凸部は、断面V字状に形成してある請求項
1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記突出部は、
前記蓋体又は前記容器本体の前記周壁面部
の鉛直方向の長さに対して1/4以下
の鉛直方向の長さとした請求項
1又は2に記載の樹脂成形品。
【請求項4】
前記突出部は、前記周壁面部とフランジ部とで形成される角部に、三角錐状に膨らませて形成してある請求項1~
3のいずれかに記載の樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂シートから成形され、主に食品などを収容する容器本体又は蓋体となる樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、弁当、サラダ、惣菜、フルーツなどが薄肉の樹脂シートから成形された容器本体及び蓋からなる包装用容器に封入されて小売店などの店頭で販売されていることが見かけられる。
このような包装用容器は、複数段に段積みされて店頭に陳列されることが多く、段積みに耐え得る強度を必要とするものである。
【0003】
例えば、
図6に示すように、少なくとも対向する両端縁部に凸条101が形成されている天板部102と天板部102から下方に向けて連接する側壁部103とを備えた蓋体104であって、側壁部103であって少なくとも天板部102に形成した凸条101に連接している領域には上端部と下端部との長さが異なる略台形状の第1のリブ凹部105が複数設けられており、凸条101の第1のリブ凹部105の上端部に連続する部位には第2のリブ凹部106が凸条101の頂部に亘って形成されており、凸条101は第2のリブ凹部106によって部分的に分断されていることを特徴とする蓋体104が開発されており、より薄手の合成樹脂シートを用いて成形した場合であっても、少なくとも端縁部では従来のものと同等の荷重に対する耐性(剛性)を持つことができ、かつ側壁部での透視性も確保することのできるようにしてある(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、
図7に示すように、天板部200と天板部200の外周縁から下方へ向けて連接する側壁部201と側壁部201の下端に連接するフランジ部202とを備えた透明な合成樹脂シートを熱成形して得られる蓋体203であって、側壁部201は、側壁部201の下端から上端に亘って同じ深さとされた凹陥部204と凹陥部204の下端面を基盤とし凹陥部204の底面から外側に突出する縦方向の補強リブ205とからなる補強構造を適数だけ備えており、側壁部201における補強構造が形成された場所以外の壁面は平坦面とされていることを特徴とする蓋体203が開発されており、きわめて肉薄の合成樹脂シートを熱成形して得られる蓋体であっても、所要の圧縮強度を確保することができ、かつ視認性が阻害されることのないようにしてある(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-30887号公報
【文献】特開2014-141270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記蓋体104,203のように、合成樹脂シートから成形された包装用容器の蓋体において、強度を確保するために様々な開発がなされている。
上記蓋体104は側壁部103に第1のリブ凹部105を設け、上記蓋体203は側壁部201に凹陥部204及び補強リブ205を設けて強度を高めたものであるが、
図6又は
図7に示すように、側壁部103,201に凹凸があるため、側面からの視認性が妨げられ、特に包装用容器を数段に積み上げた状態では天板部102,200が覆われるため、視認性が妨げられ、収容物が見にくくなるものであった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、合成樹脂シートから成形され、段積みに耐え得る強度を確保でき、さらには、視認性を妨げることがない、容器本体又は蓋体となる樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態の樹脂成形品は、合成樹脂シートから成形され、容器本体又は蓋体となる樹脂成形品であって、蓋体となる場合は、天面部と、天面部の外縁から下方に向かう周壁面部と、周壁面部の下端から外方に張り出すフランジ部と、周壁面部の面上に上下方向に延びる筋状凹部又は筋状凸部と、筋状凹部又は筋状凸部の下方側のフランジ部と周壁面部とで形成される角部に、周壁面部よりも外側に膨らませ、下部側を筋状凹部又は筋状凸部よりも幅広とした突出部と、を備え、容器本体となる場合は、底面部と、底面部の外縁から上方に向かう周壁面部と、周壁面部の上端から外方に張り出すフランジ部と、周壁面部の面上に上下方向に延びる筋状凹部又は筋状凸部と、筋状凹部又は筋状凸部の上方側のフランジ部と周壁面部とで形成される角部に、周壁面部よりも外側に膨らませ、上部側を筋状凹部又は筋状凸部よりも幅広とした突出部と、を備え、突出部は、側面視において、蓋体となる場合は、上方から下方に向かい拡開する形状とし、容器本体となる場合は、下方から上方に向かい拡開する形状としたことを特徴とする。
【0009】
上記形態の樹脂成形品は、周壁面部の面上に上下方向に延びる筋状凹部又は筋状凸部を設け、筋状凹部又は筋状凸部の下方側のフランジ部近傍に突出部を設けることにより、筋状凹部又は筋状凸部と突出部とが一体的に機能して樹脂成形品の強度を高めることができ、特に上下方向の荷重に対する強度を確保することができる。また、筋状凹部又は筋状凸部は筋状(細幅)に形成してあるため、樹脂成形品を透明な合成樹脂シートから成形した場合、視界を遮りにくく、視認性を確保できる。
【0010】
上記形態の樹脂成形品は、突出部は、前記蓋体となる場合は、上方から下方に向かい拡開する形状とし、前記容器本体となる場合は、下方から上方に向かい拡開する形状とすることができ、筋状凹部又は筋状凸部は、断面V字状に形成することができる。さらには、突出部は、前記蓋体又は前記容器本体の周壁面部の鉛直方向の長さに対して1/4以下の鉛直方向の長さとすることができ、具体的には、周壁面部とフランジ部とで形成される角部に三角錐状に膨らませて形成することが好ましい。
【0011】
このようにすることにより、樹脂成形品の強度がより一層高まり、段積みしても変形することのない容器本体や蓋体にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の樹脂成形品の一実施形態としての蓋体の斜視図である。
【
図3】
図1の蓋体の一部断面を含む部分拡大斜視図である。
【
図4】
図1の蓋体の変形例を示した一部断面を含む部分拡大斜視図である。
【
図5】
図1の蓋体を用いた包装用容器の陳列例を示す図である。
【
図7】従来の蓋体の他の公知例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の樹脂成形品の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
本発明の一実施形態の樹脂成形品は、
図1又は
図2に示すように、蓋体1としてあり、蓋体1は、天面部2と、周壁面部3と、筋状凹部4と、突出部5と、フランジ部6とを備える。
以下、蓋体1について説明するが、本発明の樹脂成形品は、容器本体とすることもできる。この場合、蓋体1を上下反転させた構成になり、蓋体1の天面部2が底面部に対応する。
【0015】
蓋体1は、
図1に示すように、シルクハット状、つまりやや高さのある円筒状としてあり、特に限定するものではないが、弁当容器、惣菜、サラダ、フルーツ等を包装する容器など食品を収容する容器に用いるのが好ましい。蓋体1の形状は、特に限定するものではなく、例えば、角筒状や長円乃至楕円筒状などにしてもよい。また、蓋体1を円筒状とした場合、天板部2の直径に対して0.5~2、特に0.8~1.5の高さにするのが好ましい。
【0016】
蓋体1は、例えば、シート厚0.1mm~3mm、好ましくは0.2mm~2mmの合成樹脂シートを熱成形して製造することができる。
【0017】
合成樹脂シートとしては、特に限定するものではないが、発泡樹脂シート、非発泡樹脂シートのいずれでもよく、例えば、ポリエチレン系樹脂シートやポリプロピレン系樹脂シートなどのポリオレフィン系樹脂シート、ポリスチレン系樹脂シート、ポリエチレンテレフタレート系樹脂シートや耐熱性を付与した変性ポリエチレンテレフタレート系樹脂シートなどのポリエステル系樹脂シートなどの熱可塑性樹脂シートを挙げることができる。なかでも、電子レンジの加熱に耐え得るもの、例えば、耐熱性ポリスチレン系樹脂シート、ポリプロピレン系樹脂シート、耐熱性を付与した変性ポリエチレンテレフタレート系樹脂シートが好ましい。
また、合成樹脂シートとして積層シートを用いることもでき、積層シートとしては、例えば、合成樹脂シートにフィルムを熱ラミネートした積層シート、共押出法による積層シート、押出ラミネート法による積層シートなどを挙げることができる。
【0018】
熱成形としては、例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、熱板成形などを挙げることができる。
【0019】
蓋体1は、透明、半透明、黒色や白色などの有色のいずれでもよいが、内部が視認できるように、透明乃至半透明にすることが好ましい。
【0020】
天面部2は、
図1に示すように、平面視円形状の水平面状に形成してある。これに限定されるものではなく、例えば、平面視楕円乃至長円状、平面視矩形状、平面視六角形状や平面視八角形状などの平面視多角形状などでもよい。また、天面部2は、水平面状ではなく、段積みする際に邪魔にならない程度の凹凸を設けてもよい。
【0021】
周壁面部3は、
図1又は
図2に示すように、天面部2の縁部から下方に向かいやや拡開するように傾斜させた傾斜面としてある。周壁面部3は、これに限定されるものではなく、垂直状の垂直面としてもよく、また上方にやや突出或いは下方にやや凹む湾曲状の曲面に形成してもよい。
周壁面部3の下端部には、外方に水平状に一定幅で張り出すフランジ部6が形成してある。
【0022】
筋状凹部4は、周壁面部3に上下方向に延びるように細幅の凹溝状に形成してあり、天面部2からフランジ部6まで直線状に形成してある。また、筋状凹部4は、周方向に略等間隔で12ヶ所に形成してある。これに限定されるものではなく、蓋体1の大きさや強度の必要性により、例えば、4ヶ所~20ヶ所に形成することが好ましい。
筋状凹部4は、本実施形態では、断面V字状に形成してあるが、これに限定されるものではなく、
図4(A)に示すように断面角状の筋状凹部4aや
図4(B)に示すように断面半円乃至U字状の筋状凹部4bにしてもよい。また、筋状凹部4は、
図4(C)に示すように、周壁面部3から外方に突出する突条の筋状凸部4cにしてもよい。筋状凸部4cは断面V字状であるが、これに限定されるものではなく、断面角状や断面半円乃至U字状などにすることもできる。
【0023】
筋状凹部4は、蓋体1の大きさによるが、例えば、天面部2の外周長に対して5%~25%を占める範囲、特に10%~20%を占める範囲に設けるのが好ましい。各筋状凹部4の幅は、例えば、周壁面部3面上において2mm~10mm、特に3mm~7mm程度が好ましい。筋状凹部4は、本実施形態では、上下に渡り略同一幅で形成してあるが、上方に向かい拡がるあるいは窄まる形状としてもよい。
筋状凹部4の深さは、蓋体1の大きさによるが、例えば、0.5mm~7mm、特に2mm~5mm程度が好ましい。筋状凹部4は、本実施形態では、上下に渡り略同一深さで形成してあるが、上方に向かい浅くあるいは深くなる形状としてもよい。
【0024】
突出部5は、筋状凹部4の下方付近のフランジ部6近傍に設けてあり、本実施形態では、周壁面部3及びフランジ部6の角部を、側面視において、上方から下方に向かい拡開する形状、具体的には三角錐状に外方に膨出させて形成し、上端が筋状凹部4内に納まり、下端が筋状凹部4よりも幅広になるようにしてある。筋状凹部4の底部41と突出部5の頂部51は、側面視において、直線状に連ねてある。
突出部5は、本実施形態では、筋状凹部4に対して一つおきに設けてあるが、各筋状凹部4に設けてもよい。また、突出部5の上端は、筋状凹部4内に納まるように、筋状凹部4よりも幅狭或いは同幅にするのが好ましい。
【0025】
突出部5の周壁面部3に沿う高さは、特に限定するものではないが、フランジ部6から天面部2までの周壁面部3に沿う高さに対して1/4以下の高さが好ましく、1/6以下の高さが特に好ましい。このようにすることにより、蓋体1を透明にした場合、周壁面部3の視認性を高めることができる。
突出部5の側面視における最大幅は、蓋体1の大きさによるが、例えば、5mm~15mm、特に8mm~12mmが好ましく、突出部5の突出幅は、蓋体1の大きさによるが、例えば、周壁面部3の表面から最大で2mm~10mm、特に3mm~7mmが好ましい。
【0026】
突出部5は、本実施形態では三角錐状に形成してあるが、これに限定されるものではなく、側面視において、上方から下方に向かい拡開する形状としてあればよく、例えば、
図4(A)に示すように、台形状の突出部5aや
図4(B)に示すように滴形状の突出部5bにすることもできる。
【0027】
フランジ部6の外縁には、垂下乃至傾斜するスカート部7が形成してあり、フランジ部6の面上には蓋体1の内方に突出した係合部71が設けてあり、これにより容器本体(図示せず)に外嵌合できるようにしてある。
本実施形態では、蓋体1を外嵌合構造にしてあるが、内嵌合構造や内外嵌合構造などにすることもできる。内嵌合構造や内外嵌合構造は、密閉性が高く、汁分などを容器外に漏出しにくくできるため、フランジ部にまで汁分などが到達せず、指先などを汚しにくくすることができる。
【0028】
フランジ部6及びスカート部7には、断面角状に膨出させ、蓋体1内外方向に通じる通気部8が適宜間隔で形成してあり、換気できるようにしてある。スカート部7の外縁には、外方に水平状に張り出し、その先端を上方に向けた第二フランジ部9が形成してある。
【0029】
蓋体1は、周壁面部3の面上に上下方向に延びる筋状凹部4を設け、筋状凹部4の下方側のフランジ部6近傍に突出部5を設けることにより、筋状凹部4と突出部5とが一体的に機能して蓋体1の強度を高めることができ、特に上下方向の荷重に対する強度を確保することができる。これは、筋状凹部4に集中した荷重を突出部5が分散させるためであると思料する。
このため、蓋体1を備えた包装用容器を平積みにしても蓋体1が潰れることを防ぐことができる。筋状凹部4によって強度が向上するため、成形する合成樹脂シートを薄肉化でき、プラスチック原料の使用量を抑え、コストの低減化、省資源化を図ることもできる。
【0030】
また、筋状凹部4は細幅に形成してあるため、蓋体1を透明な合成樹脂シートから成形した場合、視界を遮りにくく、視認性を確保できる。
例えば、
図5(A)に示すように、蓋体1を閉蓋した包装用容器を階段状の棚に陳列し、矢印Xに示す側方から視認した場合、筋状凹部4が邪魔にならず、内部の収容物が視認しやすい。また、
図5(B)に示すように、蓋体1を閉蓋した包装用容器を複数段に段積みして陳列し、矢印Yに示す側方から視認した場合、筋状凹部4が邪魔にならず、内部の収容物が視認しやすい
上記したとおり成形する合成樹脂シートを薄肉化できるため、この点からも透明性を向上させることができる。
【0031】
上記実施形態の構成態様は、本発明を限定するものとして挙げたものではなく、技術目的を共通にするかぎり変更は可能であり、本発明はそのような変更を含むものである。
【符号の説明】
【0032】
1蓋体
2天面部
3周壁面部
4,4a,4b筋状凹部(4c筋状凸部)
41底部
5a~5c突出部
51頂部
6フランジ部
7スカート部
71係合部
8通気部
9第二フランジ部