(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】紙幣収容装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/13 20190101AFI20220105BHJP
【FI】
G07D11/13
(21)【出願番号】P 2017191702
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000128946
【氏名又は名称】マミヤ・オーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川橋 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊一
(72)【発明者】
【氏名】小畑 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】栗原 優輝
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-079575(JP,A)
【文献】特開平06-223257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣投入口から投入される紙幣を搬送路に沿って搬送する紙幣搬送機構と、
前記搬送路の出口位置を後端部が通過した紙幣を紙幣収容部に収容するための押込み動作を行なう紙幣押込み機構と、
前記紙幣搬送機構及び前記紙幣押込み機構の双方に対して共通に設けられ、正方向動作及び逆方向動作が可能な動力源と、
前記動力源に結合し、前記動力源が正方向動作する際に、前記紙幣押込み機構を動作させることなく前記紙幣投入口から前記出口位置に向かう正方向に紙幣を搬送するように前記紙幣搬送機構を正駆動させ、前記動力源が逆方向動作する際に、前記出口位置から前記紙幣投入口に向かう逆方向に紙幣を搬送するように前記紙幣搬送機構を逆駆動させつつ前記紙幣押込み機構に前記押込み動作をさせる駆動機構と、を備えた紙幣収容装置であって、
前記動力源が逆方向動作する際に、後端部が前記出口位置を通過した紙幣の、前記紙幣搬送機構の逆駆動による、前記出口位置への戻りを阻止する紙幣戻り阻止機構を
備え、
前記紙幣戻り阻止機構は、前記動力源の正方向動作に基づいて正駆動する前記紙幣搬送機構により搬送される紙幣が前記出口位置を通過する際に前記紙幣の移動を妨げない退避位置と前記紙幣の前記出口位置への戻りを阻止するストッパ位置との間で搖動するレバー部材と、前記レバー部材が前記ストッパ位置に維持されるように当該レバー部材に付勢力を与える付勢機構とを有し、
正駆動する前記紙幣搬送機構によって搬送される紙幣が前記出口位置に達する前に、搬送される前記紙幣が、前記ストッパ位置にあった前記レバー部材を前記付勢機構の付勢力に抗して前記退避位置に動かし、前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過した後に、前記レバー部材が前記付勢機構の付勢力によって前記ストッパ位置に戻るようにし、
前記レバー部材が前記退避位置にあるときに第1の状態の検出信号を出力し、前記レバー部材が前記ストッパ位置にあるときに前記第1の状態と異なる第2の状態の検出信号を出力する検出器を有する紙幣収容装置。
【請求項2】
紙幣投入口から投入される紙幣を搬送路に沿って搬送する紙幣搬送機構と、
前記搬送路の出口位置を後端部が通過した紙幣を紙幣収容部に収容するための押込み動作を行なう紙幣押込み機構と、
前記紙幣搬送機構及び前記紙幣押込み機構の双方に対して共通に設けられ、正方向動作及び逆方向動作が可能な動力源と、
前記動力源に結合し、前記動力源が正方向動作する際に、前記紙幣押込み機構を動作させることなく前記紙幣投入口から前記出口位置に向かう正方向に紙幣を搬送するように前記紙幣搬送機構を正駆動させ、前記動力源が逆動作する際に、前記出口位置から前記紙幣投入口に向かう逆方向に紙幣を搬送するように前記紙幣搬送機構を逆駆動させつつ前記紙幣押込み機構に前記押込み動作をさせる駆動機構と、を備えた紙幣収容装置であって、
前記動力源が正方向動作する際に、前記紙幣搬送機構によって搬送される紙幣の後端部が前記出口位置を通過したことを検出する出口検出器と、
前記出口検出器によって前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過したことが検出されたときに、前記動力源を正方向動作から逆方向動作に切り換える動作切換え制御部と、
前記動力源が逆方向動作する際に、後端部が前記出口位置を通過した紙幣の、前記紙幣搬送機構の逆駆動による、前記出口位置への戻りを阻止する紙幣戻り阻止機構とを、有する紙幣収容装置。
【請求項3】
前記動力源の正方向動作に基づいて正駆動する前記紙幣搬送機構により紙幣を停止させることなく前記出口位置を通過させるまで搬送させる動作の開始タイミングから第1の所定時間が経過しても前記出口検出器によって前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過したことが検出されないときに、第2の所定時間だけ逆方向動作を行わせて停止させるという強制動作を前記動力源に行わせる強制動作制御部と、
前記動力源の前記強制動作が終了した後に、前記出口検出器によって前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過したことが検出されたときに、前記動力源を再度逆方向動作させる逆動作復帰制御部と、を有する請求項2記載の紙幣収容装置。
【請求項4】
前記出口検出器は、
第1の位置と第2の位置との間で搖動するレバー部材と、
前記レバー部材が第2の位置に維持されるように当該レバーに付勢力を与える付勢機構と、
前記レバー部材が第1の位置のときに第1の状態の検出信号を出力し、前記レバー部材が前記第2の位置のときに前記第1の状態と異なる第2の状態の検出信号を出力する検出器本体と、を備え、
正駆動する前記紙幣搬送機構によって搬送される紙幣が前記出口位置に達する前に、搬送される紙幣が、前記第2の位置にあった前記レバー部材を前記付勢機構の付勢力に抗して前記第1の位置に動かし、前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過した後に、前記レバー部材が前記付勢機構の付勢力によって前記第2の位置に戻るようにした、請求項2または3記載の紙幣収容装置。
【請求項5】
前記第1の位置は、正方向動作する前記紙幣搬送機構によって搬送される紙幣が前記出口位置を通過する際に前記レバー部材が当該紙幣の移動を妨げない退避位置であって、
前記第2の位置は、前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過した後に、前記レバー部材が前記紙幣の前記出口位置への戻りを阻止するストッパ位置である請求項4記載の紙幣収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機、両替機等に適用され、紙幣投入口から投入される紙幣を搬送して紙幣収容部に収容するようにした紙幣収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された紙幣収容装置(紙幣認識装置)が知られている。この紙幣収容装置は、紙幣挿入口から投入される紙幣の正偽を判別し、正しいと判別された紙幣を搬送して紙幣収容部に収容するようにしている。このように紙幣挿入口から投入される紙幣を搬送して紙幣収容部に収容するようにした紙幣収容装置は、紙幣挿入口に投入された紙幣を搬送路に沿って装置本体内部に搬送する紙幣搬送部(紙幣搬送機構)と、搬送された紙幣を紙幣収容ボックス(紙幣収容部)に押し込んで積載収容する押圧手段(紙幣押込み機構)と、正逆回転可能な1つのモータと、そのモータに結合して、前記モータの正回転及び逆回転の双方を前記紙幣搬送部(紙幣搬送機構)に伝達し、前記モータの正回転及び逆回転のうち、例えば、逆回転だけを前記押圧手段(紙幣押込み機構)に伝達する動力伝達手段(駆動機構)と、を備えている。
【0003】
このような紙幣収容装置(紙幣識別装置)では、モータが正回転する場合、押圧手段は動作することなく、紙幣搬送部だけが動作し、紙幣挿入口に投入された紙幣が紙幣搬送部によって装置本体内部に搬送されて搬送路から脱した状態で、モータが逆回転に切り換えられる。すると、搬送路を脱した紙幣は、モータの逆回転により動作する押圧手段によって紙幣収容ボックスに押し込まれる。モータが逆回転する際、紙幣搬送部は、紙幣を紙幣挿入口に向かう逆方向に搬送する動作を行なうものの、紙幣が搬送路から脱しているので、逆方向に搬送されることなく、前述したように押圧手段によって紙幣収容ボックスに押し込まれて、当該紙幣収容ボックス内に積載収容される。
【0004】
このような紙幣識別装置(紙幣収容装置)によれば、紙幣搬送部及び押圧手段のそれぞれに対して別々の動力源(モータ)を備える必要がなく、それらに共通の単一の駆動源を備えるだけでよいので、コスト削減及び装置のコンパクト化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述した従来の紙幣収容装置(紙幣識別装置)では、紙幣を紙幣収容ボックスに積載収容するために押圧手段(紙幣押込み機構)を動作させる際に、逆回転するモータによって紙幣搬送部が紙幣を逆方向(紙幣挿入口に向かう方向)に搬送するように動作する。このため、紙幣の折れ曲がり等によって、紙幣収容ボックスに押し込まれようとする紙幣が搬送路を逆方向に搬送されてしまい、その紙幣を確実に紙幣収容ボックス(紙幣収容部)に収容することができない可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、紙幣を紙幣収容部に確実に収容することのできる紙幣収容装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る紙幣収容装置は、紙幣投入口から投入される紙幣を搬送路に沿って搬送する紙幣搬送機構と、前記搬送路の出口位置を後端部が通過した紙幣を紙幣収容部に収容するための押込み動作を行なう紙幣押込み機構と、前記紙幣搬送機構及び前記紙幣押込み機構の双方に対して共通に設けられ、正方向動作及び逆方向動作が可能な動力源と、前記動力源に結合し、前記動力源が正方向動作する際に、前記紙幣押込み機構を動作させることなく前記紙幣投入口から前記出口位置に向かう正方向に紙幣を搬送するように前記紙幣搬送機構を正駆動させ、前記動力源が逆方向動作する際に、前記出口位置から前記紙幣投入口に向かう逆方向に紙幣を搬送するように前記紙幣搬送機構を逆駆動させつつ前記紙幣押込み機構に前記押込み動作をさせる駆動機構と、を備えた紙幣収容装置であって、前記動力源が逆方向動作する際に、後端部が前記出口位置を通過した紙幣の、前記紙幣搬送機構の逆駆動による、前記出口位置への戻りを阻止する紙幣戻り阻止機構を有する構成となる。
【0009】
このような構成により、動力源を正方向動作させると、紙幣投入口から投入された紙幣は、正駆動する紙幣搬送機構によって搬送路に沿って搬送される。このとき、紙幣押込み機構は動作しない。搬送路に沿って搬送される紙幣の後端部が搬送路の出口位置を通過した後、動力源を逆方向動作させると、搬送路の出口位置を越えている紙幣が紙幣押込み機構の押込み動作によって紙幣収容部に収容される。このとき、紙幣搬送機構は逆駆動するが、その逆駆動する紙幣搬送機構によって、搬送路の出口位置を一旦超えた紙幣が前記出口位置に戻ろうとしても、紙幣戻り阻止機構によって当該出口位置に戻ることが阻止される。
【0010】
本発明に係る紙幣収容装置において、前記紙幣戻り阻止機構は、前記動力源の正方向動作に基づいて正駆動する前記紙幣搬送機構により搬送される紙幣が前記出口位置を通過する際に前記紙幣の移動を妨げない退避位置にあって、前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過した後に、当該紙幣の前記出口位置への戻りを阻止するストッパ位置に動くストッパ機構を有する構成とすることができる。
【0011】
このような構成により、動力源が正方向動作する際、紙幣戻り阻止機構は退避位置にある。この状態では、前記動力源の正方向動作に基づいて正駆動する紙幣搬送機構によって搬送される紙幣は、前記紙幣戻り阻止機構に妨げられることなく、搬送路の出口位置を通過する。前記紙幣の後端部が出口位置を通過した後は、前記紙幣戻り阻止機構はストッパ位置なる。この状態では、動力源の逆方向動作に基づいて逆駆動する紙幣搬送機構によって前記紙幣が前記出口位置に戻ろうとしても、当該紙幣は、ストッパ位置にある紙幣戻り阻止機構によって出口位置に戻ることが阻止される。
【0012】
本発明に係る紙幣収容装置において前記ストッパ機構は、前記紙幣の移動を妨げない前記退避位置と前記紙幣の前記出口位置への戻りを阻止する前記ストッパ位置との間で搖動するレバー部材と、前記レバー部材が前記ストッパ位置に維持されるように当該レバー部材に付勢力を与える付勢機構と、を備え、正駆動する前記紙幣搬送機構によって搬送される紙幣が前記出口位置に達する前に、搬送される前記紙幣が、前記ストッパ位置にあった前記レバー部材を前記付勢機構の付勢力に抗して前記退避位置に動かし、前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過した後に、前記レバー部材が前記付勢機構の付勢力によって前記ストッパ位置に戻るようにした構成とすることができる。
【0013】
このような構成により、動力源が正方向動作する際、正駆動する紙幣搬送機構によって搬送される紙幣が、出口位置に達する前に、ストッパ位置にあったレバー部材を付勢機構の付勢力に抗して退避位置に動かす。そして、正駆動する紙幣搬送機構によって前記紙幣が更に搬送され、当該紙幣の後端部が出口位置を通過した後に、レバー部材が付勢機構の付勢力によって搖動してストッパ位置に戻る。この状態では、動力源の逆方向動作に基づいて逆駆動する紙幣搬送機構によって前記紙幣が前記出口位置に戻ろうとしても、当該紙幣は、ストッパ位置にあるレバー部材によって出口位置に戻ることが阻止される。
【0014】
本発明に係る紙幣収容装置において、前記レバー部材が前記退避位置にあるときに第1の状態の検出信号を出力し、前記レバー部材が前記ストッパ位置にあるときに前記第1の状態と異なる第2の状態の検出信号を出力する検出器を有する構成とすることができる。
【0015】
このような構成によれば、動力源が正方向動作する際、正駆動する紙幣搬送機構によって搬送される紙幣が、出口位置に達する前に、ストッパ位置にあったレバー部材を付勢機構の付勢力に抗して退避位置に動かす。すると、検出器からの検出信号は第2の状態から第1の状態に変化する。また、正駆動する紙幣搬送機構によって前記紙幣が更に搬送され、当該紙幣の後端部が出口位置を通過した後に、レバー部材が付勢機構の付勢力によって搖動してストッパ位置に戻る。すると、検出器からの検出信号は、第1の状態から第2の状態に変化する。検出器からの検出信号が第1の状態から変化して第2の状態にあるということは、紙幣の後端部が出口位置を通過したことを表している。従って、紙幣戻り阻止機構としてのストッパ機構のレバー部材を紙幣の後端部が出口位置を通過したことを検出する出口検出器に利用することができる。
【0016】
本発明に係る紙幣収容装置は、紙幣投入口から投入される紙幣を搬送路に沿って搬送する紙幣搬送機構と、前記搬送路の出口位置を後端部が通過した紙幣を紙幣収容部に収容するための押込み動作を行なう紙幣押込み機構と、前記紙幣搬送機構及び前記紙幣押込み機構の双方に対して共通に設けられ、正方向動作及び逆方向動作が可能な動力源と、前記動力源に結合し、前記動力源が正方向動作する際に、前記紙幣押込み機構を動作させることなく前記紙幣投入口から前記出口位置に向かう正方向に紙幣を搬送するように前記紙幣搬送機構を正駆動させ、前記動力源が逆動作する際に、前記出口位置から前記紙幣投入口に向かう逆方向に紙幣を搬送するように前記紙幣搬送機構を逆駆動させつつ前記紙幣押込み機構に前記押込み動作をさせる駆動機構と、を備えた紙幣収容装置であって、前記動力源が正方向動作する際に、前記紙幣搬送機構によって搬送される紙幣の後端部が前記出口位置を通過したことを検出する出口検出器と、前記出口検出器によって前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過したことが検出されたときに、前記動力源を正方向動作から逆方向動作に切り換える動作切換え制御部と、前記動力源が逆方向動作する際に、後端部が前記出口位置を通過した紙幣の、前記紙幣搬送機構の逆駆動による、前記出口位置への戻りを阻止する紙幣戻り阻止機構とを、有する構成となる。
【0017】
このような構成により、動力源を正方向動作させると、紙幣投入口から投入された紙幣は、正駆動する紙幣搬送機構によって搬送路に沿って搬送される。このとき紙幣押込み機構は動作しない。搬送路に沿って搬送される紙幣の後端部が搬送路の出口位置を通過したことを出口検出器が検出したときには、動力源が正方向動作から逆方向動作に切り換えられる。すると、搬送路の出口位置を越えている紙幣が、動力源の逆方向動作による紙幣押込み機構の押込み動作によって紙幣収容部に収容される。このとき、紙幣搬送機構は動力源の逆方向動作によって逆駆動するが、その逆駆動する紙幣搬送機構によって、搬送路の出口位置を一旦超えた紙幣が前記出口位置に戻ろうとしても、紙幣戻り阻止機構によって当該出口位置に戻ることが阻止される。
【0018】
本発明に係る紙幣搬送装置において、前記動力源の正方向動作に基づいて正駆動する前記紙幣搬送機構により紙幣を停止させることなく前記出口位置を通過させるまで搬送させる動作の開始タイミングから第1の所定時間が経過しても前記出口検出器によって前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過したことが検出されないときに、第2の所定時間だけ逆方向動作を行わせて停止させるという強制動作を前記動力源に行わせる強制動作制御部と、前記動力源の前記強制動作が終了した後に、前記出口検出器によって前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過したことが検出されたときに、前記動力源を再度逆方向動作させる逆動作復帰制御部と、を有する構成とすることができる。
【0019】
このような構成により、動力源の正方向動作に基づいて正駆動する紙幣搬送機構により紙幣が停止することなく出口位置を通過するまで搬送される動作が開始されたら、通常、そのまま紙幣は出口位置まで搬送されて、出口検出器によってその紙幣の後端部が出口位置を通過したことが検出される。しかし、その紙幣が停止することなく出口位置を通過するまで搬送される動作の開始タイミングから第1の所定時間が経過しても出口検出器によって前記紙幣の後端部が出口位置を通過したことが検出されないときには、動力源に、第2の所定時間だけ逆方向動作を行わせて停止させるという強制動作を行わせる。この強制動作によって、第2の所定時間だけ、紙幣搬送機構が逆駆動しながら、紙幣押込み機構が押込み動作を行なう。このとき、紙幣が、何らかの原因でその後端部が出口位置を通過できないものの、紙幣押込み機構の押込み動作によって紙幣収容部に押し込まれることが可能な状況であるならば、前記出口位置を通過しきれていない紙幣を、紙幣押込み機構の押込み動作によって前記出口位置を通過させることができる可能性がある。そして、前記強制動作が終了した後に、出口検出器によって前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過したことが検出されれば、動力源が再度逆方向動作する。動力源の再度の逆方向動作により、紙幣搬送機構が逆駆動しつつ、紙幣押込み機構の押込み動作によって前記紙幣が紙幣収容部に収容される。
【0020】
本発明に係る紙幣収容装置において、前記出口検出器は、第1の位置と第2の位置との間で搖動するレバー部材と、前記レバー部材が第2の位置に維持されるように当該レバーに付勢力を与える付勢機構と、前記レバー部材が第1の位置のときに第1の状態の検出信号を出力し、前記レバー部材が前記第2の位置のときに前記第1の状態と異なる第2の状態の検出信号を出力する検出器本体と、を備え、正駆動する前記紙幣搬送機構によって搬送される紙幣が前記出口位置に達する前に、搬送される紙幣が、前記第2の位置にあった前記レバー部材を前記付勢機構の付勢力に抗して前記第1の位置に動かし、前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過した後に、前記レバー部材が前記付勢機構の付勢力によって前記第2の位置に戻るようにした、構成とすることができる。
【0021】
このような構成によれば、動力源が正方向動作する際、正駆動する紙幣搬送機構によって搬送される紙幣が、出口位置に達する前に、第2位置にあったレバー部材を付勢機構の付勢力に抗して第1位置に動かす。すると、検出器本体からの検出信号は第2の状態から第1の状態に変化する。また、正駆動する紙幣搬送機構によって前記紙幣が更に搬送され、当該紙幣の後端部が出口位置を通過した後、レバー部材が付勢機構の付勢力によって搖動して第1位置から第2位置に戻る。すると、検出器本体からの検出信号は、第1の状態から第2の状態に変化する。検出器本体からの検出信号が第1の状態から変化して第2の状態にあるということは、紙幣の後端部が出口位置を通過したことを表している。即ち、検出器本体からの検出信号が第1の状態から変化して第2の状態になったことにより、紙幣の後端部が出口位置を通過したことを検出することができる。
【0022】
本発明に係る紙幣収容装置において、前記第1の位置は、正方向動作する前記紙幣搬送機構によって搬送される紙幣が前記出口位置を通過する際に前記レバー部材が当該紙幣の移動を妨げない退避位置であって、前記第2の位置は、前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過した後に、前記レバー部材が前記紙幣の前記出口位置への戻りを阻止するストッパ位置である構成とすることができる。
【0023】
このような構成により、動力源が正方向動作する際、正駆動する紙幣搬送機構によって搬送される紙幣が、出口位置に達する前に、ストッパ位置にあったレバー部材を付勢機構の付勢力に抗して退避位置に動かす。すると、検出器本体からの検出信号が第2の状態から第1の状態に変化する。そして、正駆動する紙幣搬送機構によって前記紙幣が更に搬送され、当該紙幣の後端部が出口位置を通過した後に、レバー部材が付勢機構の付勢力によって搖動してストッパ位置に戻る。すると、検出器本体からの検出信号が第1の状態から変化して第2の状態に変化する。これにより、前記紙幣の後端部が前記出口位置を通過したことを検出することができるとともに、動力源の逆方向動作に基づいて逆駆動する紙幣搬送機構によって前記紙幣が前記出口位置に戻ろうとしても、当該紙幣は、ストッパ位置にある出口検出器のレバー部材によって出口位置に戻ることが阻止される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る紙幣収容装置によれば、動力源が正方向動作から逆方向動作に切り換えられて、後端部が出口位置を一旦超えた紙幣が前記動力源の逆方向動作に基づいて逆駆動する紙幣搬送機構によって出口位置の方向に戻されようとしても、紙幣戻り阻止機構によって前記紙幣の出口位置への戻りが阻止されるので、後端部が出口位置を通過した紙幣を確実に紙幣収容部に収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る紙幣収容装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、紙幣収容装置の上カバーを開いた状態を示す外観斜視図である。
【
図3】
図3は、紙幣収容装置の後カバーを開いた状態を示す外観斜視図である。
【
図4】
図4は、紙幣収容装置の内部(その1)を示す側面図である。
【
図5】
図5は、紙幣収容装置の内部(その2)を示す側面図である。
【
図6A】
図6Aは、搬送ベルト(紙幣搬送機構)によって搬送される紙幣BLの状態(その1)を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、搬送ベルト(紙幣搬送機構)によって搬送される紙幣BLの状態(その2)を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、搬送ベルト(紙幣搬送機構)によって搬送される紙幣BLの状態(その3)を示す図である。
【
図6D】
図6Dは、搬送ベルト(紙幣搬送機構)によって搬送される紙幣BLの状態(その4)を示す図である。
【
図6E】
図6Eは、搬送ベルト(紙幣搬送機構)によって搬送される紙幣BLの状態(その5)を示す図である。
【
図6F】
図6Fは、搬送ベルト(紙幣搬送機構)によって搬送される紙幣BLの状態(その6)を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、搬送される紙幣BLの先端部分が出口位置Poutを通過する際の出口センサのレバー部材の状態を拡大して示す図である(
図6Eに対応)。
【
図7B】
図7Bは、搬送される紙幣BLの後端部分が出口位置Poutを通過した後の出口センサのレバー部材の状態を拡大して示す図である(
図6Fに対応)。
【
図8】
図8は、紙幣収容装置における制御系を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、紙幣収容装置における紙幣の取込み制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10A】
図10Aは、紙幣収容装置において紙幣を収容するためのスタック制御の処理の流れ(その1)を示すフローチャートである。
【
図10B】
図10Bは、紙幣収容装置において紙幣を収容するためのスタック制御の処理の流れ(その2)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0027】
本発明の実施の一形態に係る紙幣収容装置は、
図1~
図5に示すように構成される。なお、
図1は、紙幣収容装置の外観を示す斜視図であり、
図2は、紙幣収容装置の上カバーを開いた状態を示す外観斜視図であり、
図3は、紙幣収容装置の後カバーを開いた状態の外観斜視図であり、
図4及び
図5のそれぞれは、紙幣収容装置の内部を示す側面図である。
【0028】
紙幣収容装置100は、装置本体110、上カバー部120及び後カバー部130を有している。上カバー部120は、装置本体110の後端上部のヒンジを軸に開閉自在に設けられており(
図2参照)、後カバー部130は、装置本体110の後端下部のヒンジを軸に開閉自在に設けられている(
図3参照)。装置本体110内には、紙幣を重ねて収容するための紙幣収容部40が形成されており、紙幣収容部40内には、底部から上方に延びるスプリング42に支持された支持プレート41が設けられている。紙幣収容部40の上方に、紙幣搬送機構10、紙幣押込み機構30、正回転(正方向動作)及び逆回転(逆方向動作)が可能なモータ50及びモータ50に機械的に結合した駆動機構51が配置されている。モータ50は、紙幣搬送機構10及び紙幣押込み機構30の双方に共通な動力源である。
【0029】
紙幣搬送機構10は、大径の駆動プーリ11と小径の従動プーリ12との間に搬送ベルト13が巻き掛けられ、駆動プーリ11の回転により搬送ベルト13が循環移動するようになっている(
図4、
図5参照)。駆動プーリ11、従動プーリ12及び搬送ベルト13は2組設けられており、それぞれの組が、装置本体110の長手方向に延びる対向する2つの縁部分の一方に沿うように設けられている。そして、各搬送ベルト13の上側部分が、
図2に示すように、装置本体110の上面から露出している(
図2では、一方の搬送ベルト13しか表れていない)。
【0030】
なお、2つの駆動プーリ11は、同期して回転するので、2つの搬送ベルト13は同じように循環移動する。よって、以後、駆動プーリ11、従動プーリ12及びそれらに巻き掛けられて循環移動する搬送ベルト13の1組について説明する。
【0031】
上カバー部120には、紙幣搬送機構10に含まれる従動ローラ14、15が、上カバー部120の底面からその一部が突出するように、設けられている。従動ローラ14は、装置本体110内の従動プーリ12に搬送ベルト13を挟んで対向するように配置され、また、従動ローラ15は、装置本体110内の駆動プーリ11に搬送ベルト13を挟んで対向するように配置されている。また、後カバー部130内には、紙幣搬送機構10に含まれる出口ローラ16(従動ローラ)が、後カバー部130の内側面からその一部が突出するように(
図3参照)、設けられている。出口ローラ16は、装置本体110内の駆動プーリ11への搬送ベルト13の掛かりが外れる直前の所定位置(以下、この位置を出口位置Poutという)に対向するように配置されている(後述する
図7A及び
図7Bも参照)。
【0032】
上カバー部120を装置本体110に対して閉じた状態(
図1、
図4及び
図5参照)で、上カバー部120の底面と装置本体110の上面との間に紙幣BLが移動可能な隙間が形成される。上カバー部120を装置本体110に対して閉じることにより、上カバー部120の前端部で前記隙間が外部に開放して形成される紙幣投入口101から延びる前記隙間部分及びそれに続く搬送ベルト13の駆動プーリ11への巻き掛け部分から前記出口位置Poutに至る経路が搬送路CVとして形成される。なお、装置本体110の前端部には、紙幣BLを紙幣投入口101に導くための導入トレイ102が設けられている。
【0033】
上述したような紙幣搬送機構10では、導入トレイ102を通して紙幣投入口101から投入される紙幣BLは、循環移動する搬送ベルト13によって、搬送ベルト13と各従動ローラ14、15に挟まれつつ、搬送路CV内を出口位置Poutに向かって搬送される。そして、その紙幣BLは、その後端部が出口位置Poutの出口ローラ16を通過するまで搬送される。
【0034】
紙幣押込み機構30は、特許文献1に記載されるものと基本的に同様の構成となっている。紙幣収容部40の上方に断面がコ字状に形成されたガイド部材31が設けられており、紙幣押込み機構30は、そのガイド部材31を通過して上下動可能な押しプレート32及び押しプレート32を上下動させるリンク機構33を備えている。リンク機構33は、特許文献1に記載されるリンク装置と基本的に同様の構成であり、2つのクロスするフレームの動きによってそれら2つのフレームの先端部に係合する押しプレート32を上下動させる構造となっている。
【0035】
上述した紙幣押込み機構30では、
図5に示すように、リンク機構33の動きによって押しプレート32が下方に移動することにより、搬送路CV(出口位置Pout)から排出されてガイド部材31上に案内された紙幣BLが押しプレート32によって押され、その紙幣BLが押しプレート32と支持プレート41とによって挟まれた状態で、紙幣収容部40に押し込まれる。その後、リンク機構33の逆の動きによって押しプレート32が上方に移動することにより、紙幣BLが支持プレート41上に積み重ねられた状態で紙幣収容部40に収容される。
【0036】
装置本体110内には、紙幣押込み機構30に関連してスタックセンサ25が設けられている。このスタックセンサ25は、押しプレート32が
図4に示す初期位置にあるときに、OFF信号を出力し、押しプレート32が下降して支持プレート41上に積み上げられた状態の紙幣を押し込んだとき(
図5参照)にON信号を出力する。
【0037】
なお、リンク機構33によって押しプレート32が下方に移動し、その後、リンク機構33によって押しプレート32が上昇する一連の動作を、紙幣BLを紙幣収容部40に収容するための押込み動作という。この紙幣押込み動作は、紙幣押込み機構30の構造により異なるが、紙幣BLを紙幣収容部40に収容するための動作であれば特に限定されない。
【0038】
上カバー部120内には、搬送路CVに沿うように配列された、入口センサ21、識別センサ22、及び通過センサ23が設けられている。入口センサ21は、搬送路CVの紙幣投入口101の直後の位置に設けられており、レバー部材21aと検出器21bとによって構成されている。レバー部材21aの一部分は、上カバー部120の底面から搬送路CV内に突出しており(
図2、
図4及び
図5参照)、このレバー部材21aは、搬送路CV内を搬送される紙幣BLによって跳ね上げられる。レバー部材21aが跳ね上げられた状態で、検出器21bは、紙幣BLが通過していることを表す検出信号(ON)を出力する。
【0039】
入口センサ21から搬送方向下流側に所定距離だけ離れた位置に配置される識別センサ22は、上カバー部120側に設けられた発光素子22aと装置本体110側に設けられた受光素子22bとによって構成されている(
図2、
図4及び
図5参照)。発光素子22aと受光素子22bは、搬送路CVを挟んで対向して配置されており、発光素子22aの発光面は上カバー部120の底面から露出し、受光素子22bの受光面は装置本体110の上面から露出している。そして、発光素子22aからの光を受光する受光素子22bから出力される検出信号に基づいて紙幣BLの正偽を判別することができる。
【0040】
なお、実際には、識別センサ22(発光素子22a及び受光素子22bの組)は、
図2に示すように、紙幣BLの搬送方向を横切る方向に複数(例えば、3つ)配置されている。複数の識別センサ22(受光素子22b)からの検出信号に基づいて、投入された紙幣BLの正偽をより的確に判定することができる。
【0041】
識別センサ22から搬送方向下流側に所定距離だけ離れた位置に配置される通過センサ23は、入口センサ21と同様に、レバー部材23aと検出器23bとによって構成されている。レバー部材23aの一部分は、上カバー部120の底部から搬送路CV内に突出しており(
図2、
図4及び
図5参照)、このレバー部材23aは、搬送路CV内を搬送される紙幣BLによって跳ね上げられる。レバー部材23aが跳ね上げられた状態で、検出器23bは、紙幣BLが通過していることを表す検出信号(ON)を出力する。
【0042】
上述した紙幣搬送機構10及び紙幣押込み機構30の双方に共通な動力源であるモータ50に機械的に結合した駆動機構51は、その詳細については図示されてはいないが、特許文献1のものと基本的に同じである。即ち、駆動機構51は、モータ50の正回転及び逆回転の双方の動力を紙幣搬送機構10に伝達させるとともに、一方向クラッチによって、モータ50の正回転の動力を紙幣押込み機構30に伝達させることなく、モータ50の逆回転の動力だけを紙幣押込み機構30に伝達させる。従って、駆動機構51は、モータ50が正回転(正方向動作)する際に、紙幣押込み機構30を動作させることなく、紙幣投入口101から出口位置Poutに向かう正方向に紙幣BLを搬送するように搬送ベルト13の駆動プーリ11を正回転させて、搬送ベルト13を正循環移動させる(紙幣搬送機構10の正駆動)。また、駆動機構51は、モータ50が逆回転(逆方向動作)する際に、出口位置Poutから紙幣投入口101に向かう逆方向に紙幣BLを搬送するように搬送ベルト13の駆動プーリ11を逆回転させて、搬送ベルト13を逆循環移動(紙幣搬送機構10の逆駆動)させつつ、モータ50の動力を紙幣押込み機構30に伝達させて、紙幣押込み機構30に前述した押込み動作(リンク機構33による押しプレート32の上下往復動)をさせる。
【0043】
後カバー部130内には、搬送路CVの出口位置Poutと所定の位置関係をもって配置されるように出口センサ24(出口検出器)が設けられている。この出口センサ24は、モータ50が正回転する際に、紙幣搬送機構10(搬送ベルト13)によって正方向に搬送される紙幣BLの後端部が出口位置Pout(出口ローラ16)を通過したこと(紙幣BLが搬送路CVを脱したこと)を検出するために用いられる。出口センサ24は、
図4及び
図5とともに、後述する
図7A及び
図7Bに拡大して示すように、レバー部材24a、トーションスプリング24b(付勢機構)及び検出器本体24cを有している。レバー部材24aは、搬送される紙幣BLの出口位置Poutの通過を妨げない退避位置(第1の位置:
図7A参照)と、出口位置Poutを通過した紙幣BLの出口位置Poutへの戻りを阻止するストッパ位置(第2の位置:
図7B参照)との間で、所定の軸を中心にして搖動可能である。トーションスプリング24b(付勢機構)は、レバー部材24aの揺動軸に装着され、レバー部材24aがストッパ位置(第2の位置:
図7B参照)に維持されるようにレバー部材24bに付勢力を与えている。
【0044】
レバー部材24aは、モータ50の正回転に基づいて正循環移動する搬送ベルト13よって正方向に搬送される紙幣BLが出口位置Poutに達する前に、その搬送される紙幣BLによって、トーションスプリング24bの付勢力に抗して、ストッパ位置(
図7B参照)から退避位置(
図7A参照)に搖動させられる。そして、その紙幣BLの後端部が出口位置Poutを通過した後に、レバー部材24aと搬送される紙幣BLとの係りが外れて、トーションスプリング24bの付勢力によってレバー部材24aは退避位置(
図7A参照)からストッパ位置(
図7B参照)に戻る。
【0045】
検出器本体24cは、レバー部材24aが前記退避位置(第1の位置:
図7A参照)にあるときに、そのレバー部材24aの影響により、第1の状態(ON)の検出信号を出力し、レバー部材24aがストッパ位置(第2の位置:
図7B参照)にあるときに、そのレバー部材24aに影響されずに、前記第1の状態と異なる第2の状態(OFF)の検出信号を出力する。検出器本体24cからの検出信号の状態(第1の状態または第2の状態)に基づいて、正方向に搬送される紙幣BLの後端部が出口位置Pout(出口ローラ16)を通過したか否かを判定することができる。
【0046】
出口センサ24のレバー部材24a及びトーションスプリング24b(付勢機構)は、モータ50の正回転により後端部が出口位置Poutを通過した紙幣BLが、モータ50の逆回転に基づいて逆循環移動する搬送ベルト13(紙幣搬送機構10)によって出口位置Poutに戻ることを阻止する紙幣戻り機構(ストッパ機構)としても機能する。
【0047】
上述した紙幣収容装置100では、次のようにして紙幣BLが紙幣収容部40に収容される。
【0048】
紙幣投入口101から紙幣BLが投入され、
図6Aに示すように、入口センサ21によって紙幣BLが検出されると(ON信号の出力)と、モータ50が正回転を開始する。正回転するモータ50に結合する駆動機構51により、紙幣搬送機構10の駆動プーリ11が正回転し、それによって、搬送ベルト13が正循環移動する。この正循環移動する搬送ベルト13により、紙幣投入口101に投入された紙幣BLが出口位置Poutに向けた正方向に搬送される。このとき、駆動機構51に含まれる一方向クラッチによって、モータ50の正回転の動力は紙幣押込み機構30には伝達されず、紙幣押込み機構30は動作しない。
【0049】
正循環移動する搬送ベルト13により搬送される紙幣BLは、
図6B、
図6C及び
図6Dに示すように、識別センサ22の位置を通過する。この際、識別センサ22(受光素子22b)からの検出信号に基づいて紙幣BLの正偽が判定され、正規のものであると判定された紙幣BLは、更に、正循環移動する搬送ベルト13によって出口位置Poutに向けて搬送される。そして、
図6D及び
図6Eに示すように、紙幣BLが通過センサ23の位置を通過する際に、通過センサ23からの検出信号に基づいて、搬送される紙幣BLの確認がなされつつ、更に、紙幣BLが搬送される。
【0050】
搬送される紙幣BLは、出口位置Pout(出口ローラ16)に近づく過程で、出口センサ24のレバー部材24aを、トーションスプリング24bの付勢力に抗してストッパ位置から徐々に搖動させ、出口位置Poutに達する前に、退避位置にする。そして、搬送される紙幣BLは、
図6Eに示すとともに
図7Aに拡大して示すように、レバー部材24aを退避位置に維持させたまま、出口位置Pout(出口ローラ16)を通過していく。
【0051】
上述したように搬送される紙幣BLが出口位置Poutを通過することによりレバー部材24aが退避位置(
図7A参照)にある状態では、検出器本体24cは、そのレバー部材24aの影響により、ON信号(第1の状態の検出信号)を出力する。検出器本体24cからのON信号により、紙幣BLが出口位置Poutを通過していることを確認することができる。
【0052】
更に、紙幣BLが搬送されて、
図6Fに示すとともに
図7Bに拡大して示すように、紙幣BLの後端部が出口位置Poutを通過すると、レバー部材24aと紙幣BLとの係りが外れて、トーションスプリング24bの付勢力によって、退避位置にあったレバー部材24aは、ストッパ位置に搖動して戻る。このようにレバー部材24aが退避位置(
図7A参照)からストッパ位置(
図7B参照)に戻ると、検出器本体24cは、レバー部材24aに影響されなくなり、OFF信号(第2の状態の検出信号)を出力する。検出器本体24cからのOFF信号により、紙幣BLの後端部が出口位置Pout(出口ローラ16)を通過したことを確認することができる。
【0053】
出口センサ24の検出器本体24cの検出信号がONからOFFに変化したことにより、紙幣BLの後端部が出口位置Pout(出口ローラ16)を通過したことが確認されると、モータ50が逆回転に切り換えられる。逆回転するモータ50に結合する駆動機構51により、モータ50の動力が紙幣搬送機構10及び紙幣押込み機構30の双方に伝達される。それにより、紙幣搬送機構10の駆動プーリ11が逆回転して搬送ベルト13が逆循環移動するとともに、紙幣押込み機構30が押込み動作を行なう。紙幣押込み機構30の押込み動作により、出口位置Poutを通過してガイド部材31により案内された紙幣BL(
図7B参照)が、紙幣収容部40に、支持プレート41上に積み重なるようにして、収容される。
【0054】
ところで、上述したように、紙幣BLの後端部が出口位置Pout(出口ローラ16)を通過した後に、紙幣押込み機構30を動作させるためにモータ50を逆回転させると、搬送ベルト13が逆循環移動する。この逆循環移動する搬送ベルト13によって、後端部が出口位置Poutを一旦通過した紙幣BLが出口位置Poutに戻される場合がある。このように、紙幣BLが出口位置Poutに戻されようとしても、紙幣戻り阻止機構(ストッパ機構)として機能する出口センサ24のレバー部材24aがストッパ位置にあるので、戻りかけた紙幣BLの後端部がレバー部材24aに突きあたり(
図7B参照)、紙幣BLが出口位置Poutに戻って、出口ローラ16に巻き込まれることが阻止される。よって、紙幣詰まりが発生することなく、紙幣BLを紙幣押込み機構30の押込み動作によって確実に紙幣収容部40に収容することができる。
【0055】
上述した紙幣収容装置100の制御系では、
図8に示すように、入力センサ21、識別センサ22、通過センサ23、出口センサ24及びスタックセンサ25からの検出信号に基づいて処理ユニット60が、紙幣搬送機構10及び紙幣押込み機構30の双方に共通の動力源となるモータ50の正逆回転及び停止の制御を行なう。処理ユニット60は、紙幣収容装置100に、紙幣投入口101に投入された紙幣BLを紙幣収容部40に収容する動作(
図5、
図6A~
図6F、
図7A及び
図7B参照)をさせるため、
図9、
図10A及び
図10Bに示す手順に従って処理を行なう。
【0056】
図9、
図10A及び
図10Bに示す手順に従った処理の前に、処理ユニット60は、紙幣投入口101に投入された紙幣BLの正偽を判定するための処理を行なう。
【0057】
まず、処理ユニット60は、入力センサ21から紙幣BLについての検出信号(ON)が入力されると(
図6A参照)、モータ50を正回転させる。これにより、紙幣投入口101に投入された紙幣BLは、正循環移動する搬送ベルト13によって出口位置Poutに向けて(正方向)搬送される。そして、紙幣BLが識別センサ22の位置を通過している間(
図6B,
図6C参照)、処理ユニット60は、識別センサ22(受光素子22b)からの検出信号を取込む。そして、紙幣BLの後端部が識別センサ22の位置を通過した後(
図6D参照)、処理ユニット60は、モータ50を一旦停止させて、取り込んだ検出信号(検出情報)に基づいて紙幣BLの正偽を判定する。紙幣BLが偽であると判定すると、処理ユニット60は、モータ50を逆回転させ、その紙幣BLを紙幣投入口101から排出させる。このとき、出口位置Poutを通過して残っている紙幣BLが無い状態で、モータ50の逆回転により紙幣押込み機構30が押込み動作(空動作)を行なう。
【0058】
紙幣BLが正規のものであると判定すると、処理ユニット60は、
図9示す手順に従って取込み制御に係る処理を行なう。
【0059】
図9において、処理ユニット60は、内部タイマTに第1の所定時間α1を設定し(S11)、内部タイマTをスタートさせ(S12)、モータ50を正回転させる(S13)。第1の所定時間α1は、この時点(この位置:
図6D参照)から、紙幣BLが停止することなく出口位置Poutを通過するのに十分な時間、例えば、3秒程度に設定される。モータ50の正回転が再開されると、前述したように、紙幣BLは、通過センサ23の位置を通過しつつ出口位置Poutに向けて搬送される。その過程で、処理ユニット60は、α1に設定された内部タイマTがタイムアップしていないことを確認しつつ(S14でNO)、通過センサ23からの検出信号がOFFであるか否かを判定する(S15)。
【0060】
紙幣BLが通過センサ23の位置を通過している間(
図6D、
図6E参照)、処理ユニット60は、同様の処理(S14、S15)を行ない、紙幣BLの後端部が通過センサ23の位置を通過したことを通過センサ23からの検出信号がOFFになったことに基づいて検出する(S15でYES)と、更に、出口センサ24(検出器本体24c)からの検出信号がOFFであるか否かを判定する(S16)。この場合、
図6Eに示すように、紙幣BLの後端部が通過センサ23の位置を通過する前に、紙幣BLの先端部が出口位置Poutに達するので、通過センサ23からの検出信号がOFFになった(S15でYES)後では、出口センサ24からの検出信号がONになっている。このため、処理ユニット60は、出口センサ24の検出信号がOFFではない、即ち、紙幣BLが出口位置Poutを通過していないと、判定する(S16でNO)。以後、処理ユニット60は、内部タイマTがタイムアップしていないこと(S14でNO)、通過センサ23からの検出信号がOFFであること(S15でYES)、及び出口センサ24からの検出信号がOFFではないこと(S16でNO)を繰返し確認する。
【0061】
その過程で、紙幣BLは出口位置Poutを通過しながら正方向に搬送され続ける。そして、紙幣BLの後端部が出口位置Poutを通過して、出口センサ24からの検出信号がOFFになると(S16でYES)、処理ユニット60は、モータ50を停止させる(S17)。この時点で、紙幣BLは、
図6F及び
図7Bに示すように、後端部が出口位置Poutを通過して、紙幣収容部40に収容可能な状態になっている。
【0062】
処理ユニット60は、モータ50を停止させると(S17)、
図10A及び
図10Bに示す手順に従って紙幣スタック制御に係る処理を行なう。
【0063】
図10Aにおいて、処理ユニット60は、押込みフラグをONに設定し(S21)、モータ50を逆回転させる(S22:動作切換え制御部)。これにより、前述したように紙幣押込み機構30が押込み動作を開始する。その後、処理ユニット60は、出口センサ24からの検出信号がONではないことを確認した(S23でNO)後、押込みフラグがONに設定されていることを確認しつつ(S24でYES)、スタックセンサ25からの検出信号がONであるか否か、即ち、押込み機構30の押しプレート32が下降してガイド部材31に案内された紙幣BLを押し込んだ状態であるか否かを判定する(S25)。処理ユニット60は、以後、同様の確認(S24、S25)を繰返し行う。そして、紙幣押込み機構30の押しプレート32が下降して支持プレート41上に積上げられた状態の紙幣を押し込んで、スタックセンサ25からの検出信号がONになると(S25でYES)、処理ユニット60は、押込みフラグをOFFに書き換え(S26)、押込みフラグがOFFであること(S24でNO),スタックセンサ25がOFFでないこと(S27でNO)を繰返し確認する。この状態で、紙幣押込み機構30の押しプレート32は上昇動作を行っており、押しプレート32が規定の初期位置(
図4参照)に達すると、スタックセンサ25からの検出信号がOFFになる。処理ユニット60は、このスタックセンサ25からの検出信号がOFFになったことを確認すると(S27でYES)、モータ50を停止させ(S28)、次の紙幣BLの投入の待ち状態になる。
【0064】
上述したように処理ユニット60が、取り込み制御に係る処理(
図9参照)及びスタック制御に係る処理(
図10A)を行なうことにより、紙幣投入口101に投入されて正規のものであると判定された紙幣BLは、紙幣収容部40に収容される。
【0065】
図9に示す取込み制御に係る処理の過程で、内部タイマTがタイムアップしても(S14でYES)、通過センサ23からの検出信号がOFFであることが確認できない場合、即ち、第1の所定時間α1(例えば、3秒)が経過しても、通過センサ23の検出信号がON状態に維持されている場合(S15でNO,S14でYES、S18でNO)、処理ユニット60は、モータ50を停止させ(S19)、搬送路CV中で紙幣BLが詰まったもの(紙幣ジャム)として、所定の紙幣ジャム処理を実行する。
【0066】
また、
図9に示す取込み制御に係る処理の過程で、内部タイマTがタイムアップした(S14でYES)時点で、通過センサ23からの検出信号がOFF状態であること、即ち、紙幣BLが通過センサ23の位置を通過したことは確認できた(S15でYES、S18でYES)ものの、出口センサ24からの検出信号がOFFであること、即ち、紙幣BLの後端部が出口位置Poutを通過したことが確認できない(S16でNO)場合、処理ユニット60は、モータ50を停止させて(S17)、正常時と同様に、
図10Aに示す紙幣スタック制御に係る処理に移行する。この場合、出口センサ24からの検出信号がONになっているので、紙幣BLは出口位置Poutを通過中の状態で詰まっている、例えば、紙幣BLが出口センサ24のレバー部材24aに引っ掛かっている、と想定される。
【0067】
図10Aにおいて、処理ユニット60は、前述したのと同様に、押込みフラグをONにして(S21)、モータ50を逆回転させる(S22:強制動作制御部)。これにより、紙幣搬送機構10の搬送ベルト13は逆循環移動を開始するとともに、紙幣押込み機構30が押込み動作を開始する。この時点で、出口センサ24からの検出信号がONであるので(S23でYES)、処理ユニット60は、
図10Bに示す処理に移行して、逆回転を開始したモータ50の回転(逆回転)に同期して発生するパルスが、例えば、モータ50に装着されたエンコーダから出力されるパルスが規定数に達したか否かを判定する(S29)。この規定数は、パルスの周期を考慮して、紙幣押込み機構30を僅かに動作させる時間(第2の所定時間)に対応する。処理ユニット60は、モータ50の回転に同期して発生するパルスが規定数に達したと判定すると(S29でYES)、モータ50を停止させる(S30:強制動作制御部)。これにより、紙幣押込み機構30の押込み動作が停止する。
【0068】
その後、処理ユニット60は、内部タイマTに所定時間T2(例えば、100m秒)を設定し(S31)、そのタイマTをスタートさせて(S32)、タイマTがタイムアップするか否かを判定する(S33)。モータ50の停止から所定時間α2が経過して、タイマTがタイムアップしたと判定すると(S33でYES)、処理ユニット60は、出口センサ24からの検出信号がONであるか否かを判定する(S34)。ここで、出口センサ24からの検出信号がONでなければ(OFFであれば)(S34でNO)、処理ユニット60は、紙幣BLの後端部が出口位置Poutを通過したとして、
図10Aに示す処理に戻り、モータ50を再度逆回転させる(S22:逆動作復帰制御部)。以後、処理ユニット60は、正常時の紙幣スタック制御に係る処理(S23~S28)と同様の処理を行なう。その結果、紙幣押込み機構30が押込み動作を行って、紙幣BLが紙幣収容部40に収容される。
【0069】
なお、モータ50を僅かに逆回転させても、出口センサ24からの検出信号がON状態を維持していた場合(S34でYES)、例えば、出口センサ24が異常、あるいは、紙幣BLが出口センサ24のレバー部材24aに引っ掛かったままであるとして、処理ユニット60は、所定の異常処理を行なう。
【0070】
上述したような処理ユニット60による取込み制御に係る処理(
図9参照)及び紙幣スタック制御に係る処理(
図10A、
図10B参照)によれば、紙幣投入口101に投入された紙幣BLを適切に紙幣収容部40に収容できるように、1つのモータ50を共通の駆動源とする紙幣搬送機構10及び紙幣押込み機構30の動作を制御することができる。
【0071】
また、特に、紙幣BLを停止させることなく出口位置Poutを通過させるまで搬送させる動作の開始タイミング(例えば、紙幣BLの正偽の認識後に再開される紙幣BLの搬送動作の開始タイミング)から第1の所定時間α1(例えば、3秒)が経過しても、出口センサ24が紙幣BLの通過中を検出している状態(ON)であって、紙幣BLの後端部が出口位置Poutを通過したこと(OFF)が検出されない場合、僅かな時間、紙幣押込み機構30に押込み動作行わせるようにしている。このため、紙幣BLが出口位置Poutで引っ掛かっていること等を強制的に解消することができ、紙幣収容装置100の稼働率を向上させることができる。
【0072】
更に、出口センサ24は、モータ50の逆回転の際に、後端部が出口位置Poutを通過した紙幣BLの、搬送ベルト13の逆循環移動による、出口位置Poutへの戻りを阻止する紙幣戻り阻止機構(ストッパ機構)の機能も有しているので、装置の部品点数を低減させることができる。
【0073】
例えば、出口センサ24のレバー部材24aとトーションスプリング24bとで構成される紙幣戻り阻止機構(ストッパ機構)を出口センサ24とは別に設けるようにしてもよい。また、複数の紙幣戻り阻止機構(ストッパ機構)を設けることもできる。
【0074】
出口センサ24は、レバー部材24a、トーションスプリング24b及び検出器本体24cを備えた構造に限られず、他の構造、例えば、光学的に出口位置Poutを通過する紙幣BLを検出するものであってもよい。
【0075】
なお、本発明は、前述した実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から除外するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る紙幣収容装置は、紙幣を紙幣収容部に確実に収容することのできるという効果を有し、自動販売機、両替機等に適用され、紙幣投入口から投入される紙幣を搬送して紙幣収容部に収容するようにした紙幣収容装置として有用である。
【符号の説明】
【0077】
10 紙幣搬送機構
11 駆動プーリ
12 従動プーリ
13 搬送ベルト
21 入口センサ
22 識別センサ
23 通過センサ
24 出口センサ
24a レバー部材
24b トーションスプリング
24c 検出器本体
25 スタックセンサ
30 紙幣押込み機構
31 ガイド部材
32 押しプレート
33 リンク機構
40 紙幣収容部
41 支持プレート
42 スプリング
50 モータ
51 駆動機構
60 処理ユニット
100 紙幣収容装置
101 紙幣投入口
102 導入トレイ
110 装置本体
120 上カバー部
130 後カバー部