(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】丸太材の穿孔機
(51)【国際特許分類】
B27G 3/00 20060101AFI20220128BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20220128BHJP
B27C 3/02 20060101ALI20220128BHJP
B23B 47/34 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
B27G3/00 L
B23Q11/00 K
B27C3/02
B23B47/34 Z
(21)【出願番号】P 2017238483
(22)【出願日】2017-12-13
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】515055719
【氏名又は名称】岡田 悦雄
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悦雄
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-103715(JP,A)
【文献】実開昭58-075611(JP,U)
【文献】実開昭60-080806(JP,U)
【文献】特開平07-171803(JP,A)
【文献】米国特許第05421680(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27G 3/00
B23Q 11/00
B27C 3/02
B23B 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプと下部レ-ルを有した架台と、ドリルビットを有したドリル装置と、下部レ-ルに沿って移動する車輪を有しドリル装置に接続されたドリル装置移動機構(下)と、ドリル装置より上側に設けた下部レ-ルと並行な上部レ-ルと、上部レ-ルに沿って移動する車輪を有しドリル装置に接続されたドリル装置移動機構(上)から構成され、上部レ-ルに穿孔くず払い落とし機構を接続し
、穿孔くず払い落とし機構の払い落とし部は、棒形状又は帯形状のものを多数集めて構成したものであり、ドリル装置の移動方向を前後方向とすると、前後方向にたなびくように、かつ左右方向にも広がってたなびくように、ドリルビットより柔らかい材質のものとしたことを特徴とする丸太材の穿孔機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は丸太材を穿孔する(孔をあける)ための穿孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
ドリルビットを組み込んだドリル装置等の穿孔工具を使用して丸太材を穿孔するための穿孔機には様々なものがある。
例えば、予め丸太材の周側面に墨付けした上芯、横芯、下芯の墨付け線を基準にして丸太材の材芯と並行又は直角の方向に正確に穿孔するために、フレーム形状の脚部にメジャーと位置決め部材を設けたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような穿孔機や公知の穿孔機を用いて、長い距離、例えば3m程度を穿孔する場合、ドリルビットを丸太材の穿孔面に対して挿入と引き抜きを繰り返すことで行っているが、繰り返すうちに発生した穿孔くず(いわゆる切りくず)がドリルビットの螺旋溝に付着するようになる。
このため、穿孔を途中でやめて穿孔くずを取り除く、またはドリルビットの交換により対応しているので、穿孔の完了に時間を要している。
よって、ドリルビットへの穿孔くずの付着を防止できる穿孔機を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の丸太材の穿孔機は以下の手段を有する。
クランプと下部レールを有した架台と、ドリルビットを有したドリル装置と、下部レールに沿って移動する車輪を有しドリル装置に接続されたドリル装置移動機構(下)と、ドリル装置より上側に設けた下部レールと並行な上部レールと、上部レールに沿って移動する車輪を有しドリル装置に接続されたドリル装置移動機構(上)から構成され、上部レールに穿孔くず払い落とし機構を接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の丸太材の穿孔機によれば、穿孔くず払い落とし機構により、ドリルビットが丸太材から引き抜かれた際に穿孔くずが払い落とされる。
よって、ドリルビットへの穿孔くずの付着を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の丸太材の穿孔機を示した図であり、(a)は平面図、(b)は右側面図である。
【
図2】本発明の丸太材の穿孔機を示した図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図6】本発明の丸太材の穿孔機に丸太材を固定した状態を示した図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図7】本発明の丸太材の穿孔機が丸太材を穿孔している状態を示した右側面図である。
【
図8】本発明の丸太材の穿孔機がドリルビットに付着した穿孔くずを払い落としている状態を示した右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の丸太材の穿孔機の実施の形態を
図1~8に基づいて説明する。
本記載は本発明の例であり、本記載が本発明を限定するものではない。
【0009】
最初に丸太材の穿孔機1の構成を
図1~5に基づいて説明する。
これらの図では丸太材100を仮想線(2点鎖線)で示している。
図2(a)、(b)及び
図3~5では直近で見える構成のみを記載し、すべての構成は記載していない。
【0010】
図1(a)、(b)に示すように、丸太材の穿孔機1は、架台2と、ドリル装置10と、ドリル装置移動機構(下)11と、上部レール5と、ドリル装置移動機構(上)12と穿孔くず払い落とし機構20から構成される。
【0011】
ドリル装置10は先端側(前側)にドリルビット10Aを有しており、ドリルビット10Aを駆動(回転)させて丸太材100を穿孔する。
【0012】
図1(a)、(b)に示すように、架台2は前後方向(移動方向)に長い略平板形状であり、下側に脚7を有し、上側に2本の下部レール4を前後方向に平行に有する。
【0013】
ドリル装置10が下部レール4に沿って前後方向に移動するように、ドリル装置移動機構(下)11を設ける。ドリル装置移動機構(下)11はフレーム11Aと車輪11Bを有し、フレーム11Aがドリル装置10の下側に接続される。
車輪11Bが下部レール4上を回転することで、ドリル装置10が下部レール4に沿って前後方向に移動する。
【0014】
下部レール4は1本でも3本以上でも良いが、2本が好適である。
下部レール4の1本に対して車輪11Bを前後方向に2個有する。車輪11Bは1個でも3個以上でも良いが、2個が好適である。
【0015】
ドリル装置10より上側に、上部レール5を前後方向に下部レール4と平行に設ける。
図1(a)に示すように、2本の下部レール4と上部レール5の左右方向の位置関係は、2本の下部レール4の間に上部レール5がくるように設ける。上部レール5は2本の下部レール4の左右方向の中間に設けるのが好適である。
【0016】
ドリル装置10が上部レール5に沿って前後方向に移動するように、ドリル装置移動機構(上)12を設ける。ドリル装置移動機構(上)12はフレーム12Aと車輪12Bを有し、フレーム12Aがドリル装置10の上側に接続される。
車輪12Bが上部レール5上を回転することで、ドリル装置10が上部レール5に沿って前後方向に移動する。
【0017】
丸太材100及び上部レール5を固定するために、丸太材固定フレーム3及び上部レール固定フレーム6を設ける。
【0018】
図1(a)、(b)及び
図2(a)に示すように、丸太材固定フレーム3は正面視(前側視)において開口部を有したフレーム形状であり、フレームの内周左側及び内周右側に接続された左右一対のクランプ3Aを有する。各クランプ3Aは正面視において、丸太材100の外周の少なくとも2点に接するように、左側のものは略<字形状、右側のものは略>字形状とする。丸太材100の外周に接する側を略円弧形状とすれば、丸太材100の外周に多く接するので好適である。
各クランプ3Aは図に記載していないが左右方向に伸縮可能な構造とし、ネジを切った形状とするのが好適である。
各クランプ3Aはフレームの内周上側にも部材で接続し、丸太材100の外周に強固に接するようにする。
このようにして、丸太材100の前側を丸太材固定フレーム3(前側)により固定する。
【0019】
図1(a)、(b)及び
図2(b)に示すように、上部レール固定フレーム6は背面視(後側視)において開口部を有したフレーム形状であり、フレームの内周上側に接続された固定部材6Aを有する。
固定部材6Aは2つのブラケットと、これらのブラケットを接続するパイプから構成され、上側のブラケットがフレームの内周上側に接続され、下側のブラケットに上部レール5が接続される。
【0020】
図1(a)、(b)及び
図3に示すように、丸太材100の後側を固定する丸太材固定フレーム3は、
図2(a)に示した丸太材100の前側を固定する丸太材固定フレーム3に、上部レール5を固定する構造が付加されている。具体的には、
図2(b)に示した上部レール固定フレーム6の固定部材6Aがフレームの内周上側に接続される。
このようにして、丸太材100の後側及び上部レール5を丸太材固定フレーム3(後側)及び上部レール固定フレーム6により固定する。
【0021】
以上のようにして、丸太材固定フレーム3(前側及び後側)と上部レール固定フレーム6により、丸太材100及び上部レール5を固定する。
【0022】
上部レール5を更に強固に固定するために、
図1(a)、(b)に示すように、上部レール固定フレーム6を、丸太材固定フレーム3(前側)と丸太材固定フレーム3(後側)の間に追加してもよい。
図4は追加した上部レール固定フレーム6を正面視した図であり、構造は
図2(b)と同じであるため詳細な説明は割愛する。
【0023】
同様に、
図1(a)、(b)に記載していないが、丸太材100を更に強固に固定するために、丸太材固定フレーム3(前側)と丸太材固定フレーム3(後側)の間に、丸太材固定フレーム3を追加してもよい。上部レール5の固定を行わない場合は固定部材6Aが付加されない丸太材固定フレーム3(前側)と同じものを、上部レール5の固定を行う場合は固定部材6Aが付加された丸太材固定フレーム3(後側)と同じものを追加する。
【0024】
ドリルビット10Aを駆動しドリル装置10を前方向に移動(挿入)させ、固定した丸太材100を穿孔する。
ドリル装置10を後方向に移動(引き抜き)させた際に、穿孔くず21がドリルビット10Aの螺旋溝に付着することがある。
ドリルビット10Aへの穿孔くず21の付着を防止するために、上部レール5に穿孔くず払い落とし機構20を接続する。
【0025】
図1(a)、(b)及び
図5に示すように、穿孔くず払い落とし機構20は払い落とし部20Aと固定部材20Bから構成される。
【0026】
払い落とし部20Aは、上部レール5から架台2に向かって垂下した形状であり、少なくともドリルビット10Aの高さまで垂下する。
ドリルビット10Aが前後方向に移動して払い落とし部20Aに接触して通過する際に、その抵抗により穿孔くず21がドリルビット10Aから払い落とされるようにする。
【0027】
ドリルビット10Aが螺旋溝を有していることから、払い落とし部20Aはドリルビット10Aの外周面を覆うようにし、ドリルビット10Aが接触して通過する際に多くの穿孔くず21が払い落とされるようにする。そのため、1つの部材ではなく、左右方向の幅や径が小さい棒形状や帯形状のものを多数集めて構成する。
【0028】
払い落とし部20Aはドリルビット10Aとの接触抵抗を利用することから、接触時間を長くしたほうが多くの穿孔くず21が払い落とされるので、前後方向にたなびくように、かつ左右方向にも広がってたなびくように、ドリルビット10Aより柔らかい材質のものとする。
【0029】
これらをふまえて、払い落とし部20Aは小枝を多数集めたものや樹脂製の吹き流しが好適である。
【0030】
払い落とし部20Aは固定部材20Bにより上部レール5に接続する。固定部材20Bは払い落とし部20Aを上部レール5に接続できればどのような形状、材質でも良いが、上部レール5への着脱を簡単にするために紐(ロープ)が好適である。
図1(a)、(b)、5、6(b)、7及び8は、払い落とし部20Aを固定した紐(ロープ)が団子状(球形状)になった状態を示している。
【0031】
固定部材20Bを上部レール5に接続する位置は丸太材100より後側であれば良いが、ドリル装置10を後方向に移動させた際にすぐ穿孔くず21が払い落とされるので、丸太材100の近傍が好適である。
更に穿孔くず21を払い落とすために、穿孔くず払い落とし機構20を複数接続しても良い。
【0032】
次に丸太材の穿孔機1による穿孔を
図6~8に基づいて説明する。
【0033】
図6(a)、(b)に示すように、丸太材100をクランプ3Aで固定する。
図6(a)に示すように、丸太材100の穿孔面100Aには墨付け線(左右方向)101及び墨付け線(上下方向)102が罫書きされている。
なお図面は作成していないが、
図6(a)と同様に丸太材100の背面側(後側)の穿孔面100Aにも墨付け線(左右方向)101及び墨付け線(上下方向)102が罫書きされている。
【0034】
丸太材100を架台2に載せてクランプ3Aで固定する前に、以下の手順で墨付け線(左右方向)101及び墨付け線(上下方向)102を罫書く。
1.穿孔面100Aの芯(年輪の中心)に印をつけ、この印を基準として水準器を用いて墨付け線(左右方向)101を罫書く。
2.墨付け線(左右方向)101を基準として差し金を用いて墨付け線(上下方向)102を罫書く。
なお丸太材100をクランプ3Aで固定してから1.、2.の手順で罫書きしても良い。
【0035】
図6(b)に示すように丸太材100の上面には墨付け線(前後方向)103が罫書きされている。以下の手順で墨付け線(前後方向)103を罫書く。
1.正面側(前側)及び背面側(後側)の穿孔面100Aの外周上で墨付け線(上下方向)102と交差する位置に図示しないピンを打ち込む。ピンは針や釘であっても良い。
2.丸太材100の上面に墨つぼを用いて2本のピンを結んだ線を罫書く。この線が墨付け線(前後方向)103となる。
【0036】
図7に示すように、墨付け線(前後方向)103をガイド(目印)として、これに沿ってドリル装置10を前方向に移動(挿入)させ丸太材100を穿孔する。ドリル装置10の前方向の移動(挿入)と後方向の移動(引き抜き)を繰り返して、背面側(後側)の穿孔面100Aから正面側(前側)の穿孔面100Aに向かって芯(年輪の中心)に沿って貫通させる。
【0037】
貫通は、背面側(後側)の穿孔面100Aから正面側(前側)の穿孔面100Aに向かって行う以外の方法でもよい。
背面側(後側)の穿孔面100Aから丸太材100の前後方向の中間あたりまで穿孔した後に、ドリル装置10を正面側(前側)の穿孔面100Aより前に移動させて、正面側(前側)の穿孔面100Aから背面側(後側)の穿孔面100Aに向かって穿孔し、先の穿孔と接続させてもよい。
この場合、ドリル装置10を更に設け、背面側(後側)の穿孔面100Aと正面側(前側)の穿孔面100Aのそれぞれから同時に穿孔すれば早く貫通できる。
【0038】
なお芯(年輪の中心)は穿孔面100Aの左右方向の中心と一致していないことがある。この場合、架台2に設けた図示しない左右方向の移動機構により丸太材100を左右方向に移動させて、芯(年輪の中心)とドリル装置10の左右方向の位置を一致させてから穿孔する。
【0039】
また丸太材100は左右方向に曲がっていることがある。この場合、墨付け線(前後方向)103に沿っても、丸太材100の前後方向のすべてにわたって芯(年輪の中心)に沿った穿孔はできない。
そのため丸太材100の上面に左右方向の曲がっている場所を示す印をつけ、左右方向の曲がり点を結んだ線を順次罫書く。このようにして墨付け線(前後方向)103を複数罫書く。
【0040】
1本の墨付け線(前後方向)103に沿って左右方向の曲がっている場所まで穿孔したら、次のガイド(目印)となる墨付け線(前後方向)103に沿って穿孔できるように、丸太材100の左右方向の角度を変えて固定してから穿孔する。このようにして順次穿孔する。
【0041】
ドリル装置10を引き抜きさせた際に、穿孔くず21がドリルビット10Aの螺旋溝に付着しても、
図8に示すように、ドリルビット10Aが穿孔くず払い落とし機構20の払い落とし部20Aに接触して通過する際に、その抵抗により穿孔くず21がドリルビット10Aから払い落とされる。
【0042】
ドリルビット10Aは、ドリル装置10を引き抜きさせた際だけでなくドリル装置10を挿入させた際も払い落とし部20Aに接触して通過するので、穿孔くず21が確実に払い落とされる。
【符号の説明】
【0043】
1 丸太材の穿孔機
2 架台
3 丸太材固定フレーム
3A クランプ
4 下部レール
5 上部レール
6 上部レール固定フレーム
6A 固定部材
7 脚
10 ドリル装置
10A ドリルビット
11 ドリル装置移動機構(下)
11A フレーム
11B 車輪
12 ドリル装置移動機構(上)
12A フレーム
12B 車輪
20 穿孔くず払い落とし機構
20A 払い落とし部
20B 固定部材
21 穿孔くず
100 丸太材
100A 穿孔面
101 墨付け線(左右方向)
102 墨付け線(上下方向)
103 墨付け線(前後方向)