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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】直動軸受およびハウジング付き直動軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
F16C29/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019510269
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2018013696
(87)【国際公開番号】W WO2018181928
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2017070146
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017070147
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018022502
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394000493
【氏名又は名称】ヒーハイスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】福留 弘人
(72)【発明者】
【氏名】尹 海蓮
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-13157(JP,A)
【文献】特開昭59-58226(JP,A)
【文献】特開昭57-33218(JP,A)
【文献】特公昭51-9851(JP,B1)
【文献】特開2009-287645(JP,A)
【文献】特開平11-270558(JP,A)
【文献】特開昭50-26929(JP,A)
【文献】特公昭47-25411(JP,B1)
【文献】特開昭50-65742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側鋼球循環路と内周側鋼球循環路とを含む無限鋼球循環路を複数条備え、該無限鋼球循環路に対面する領域に面状空間を備えた合成樹脂製の外筒部材、各無限鋼球循環路に収容配列された複数の鋼球、そして該面状空間に嵌め込まれた、細長い形状を持ち、その幅方向の断面が全長にわたって弧状である合成樹脂製のプレート、但し、該合成樹脂製のプレートの内周側鋼球循環路の鋼球列に接する位置には、内周側鋼球循環路の鋼球列に沿う方向で細長い形状とされた金属片が備えられている、を含む直動軸受であって、上記の細長い金属片が、内周側鋼球循環路の鋼球列に沿う方向にて内周側が凸状となるように湾曲していること、そして上記外筒部材の外周面の周囲の両端部と該両端部の間の領域に、上記合成樹脂製のプレートを含む外周部材の円周に沿う、互いに同一の直径を持つ環状の突起が外筒部材の軸方向に沿って並列に形成されており、その環状の突起の頂部の外筒部材の軸方向に沿う断面が円弧の形状にあることを特徴とする直動軸受。
【請求項2】
上記の細長い金属片の幅方向の断面が、全体として、外筒部材の内周側に拡がる形状を持つ請求項1に記載の直動軸受。
【請求項3】
上記の細長い金属片の長さ(L)に対する湾曲部の頂部の高さ(H)の比率(H/L)で表される湾曲率が0.001乃至0.05の範囲にある請求項1もしくは2に記載の直動軸受。
【請求項4】
上記外筒部材の内周部の両端部に密着状態で、ただし、該両端部に接合固定されることなく、弾性部材から形成された環状外筒補強部材が装着されている請求項1に記載の直動軸受。
【請求項5】
孔部を備えたハウジング、そして該孔部内に挿入固定された請求項1乃至4の内のいずれかの項に記載の直動軸受を含むハウジング付き直動軸受。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動軸受に関し、特にハウジングに挿入しての使用に適した合成樹脂製の外筒部材を備えた直動軸受に関する。さらに、本発明は、ハウジングに装着された直動軸受にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロッド(軸体)の長さ方向の円滑な往復運動を可能にして案内するリニア軸受とも呼ばれる直動軸受として、外筒、外筒の内側に装着された複数の無限鋼球循環路を備える筒状の鋼球保持器(リテーナ)、そしてリテーナの各無限鋼球循環路に収容された複数の鋼球(ボール)を含む構成の直動軸受が知られており、これまでに様々なサイズのものが様々な用途で多数使用されている。
【0003】
従来の直動軸受の多くは、上述のように、外筒と、その内側に装着される円筒状のリテーナとを含んでおり、そのリテーナにはボールが、リテーナの内周側と外周側のそれぞれに僅かに突出した状態で収容保持されている。直動軸受により案内されるロッドは、リテーナの内周側に挿入され、摺動可能に支持される。そして、リテーナに収容保持されているボールは、ロッドの長尺方向への摺動により、あるいは一体化した外筒とリテーナのロッドに沿った摺動により、リテーナの内側にて外筒の内周面に加圧状態で接触しながら回転する。従って、外筒は高い耐久性が必要であるため、外筒は金属材料から形成されるのが従来は一般的であった。
【0004】
しかしながら、近年、直動軸受については、高い耐久性と共に軽量化も求められるようになり、金属材料製の外筒に代えて、合成樹脂材料の成形により製造した合成樹脂製の外筒もまた用いられつつある。ただし、合成樹脂製の外筒では、無限鋼球循環路の外周側循環路に接する位置に当該循環路に収容されているボールにより外筒の当該位置の周囲の領域に向けて加わる圧力に対する強度(抵抗力)が不足するため、その位置の周囲の領域には、補強用として金属片をはめ込んだ構成とされることが一般的である。そして、そのような構成の直動軸受は、軽量で耐久性が高いと云う利点があるため、実際に使用されることが多くなっている。そして、このような構成の合成樹脂製の外筒を用いた直動軸受は、特に孔部を備えたハウジングに挿入固定された形態で利用されることが多い。
【0005】
特許文献1(特開平11-311247号公報)には、外筒が収納されたハウジングとその外筒に挿入される軸とから成り、軸に対して外筒付きハウジングが直線摺動するように構成された軸受部材として、ハウジングが金属そして外筒が合成樹脂でそれぞれ形成され、外筒に金属製の調心プレートが付設された構成の軸受部材が、従来より知られている旨の記載がある。そして、特許文献1には、外筒が収納される合成樹脂製のハウジングとその外筒に挿入される軸とからなり、軸に対して外筒とハウジングとが一体となって直線摺動するように構成された軸受部材であって、外筒には負荷部と無負荷部とで形成されるボール無限循環路が形成され、このボール無限循環路には保持器によりボールが配設され、外筒に調心プレートが設けられ、そしてハウジングには、調心プレートに当接する位置に耐摩耗性部材が設けられている構成の軸受部材の発明が開示されている。ただし、特許文献1には、上記調心プレートが外筒の補強材としての機能を持つことの記載はなく、また、当該発明の外筒の形成材料に関する記載は見られない。
【0006】
特許文献2(特開2001-116043号公報)には、機械部品などの孔部に嵌入する際に圧入力および変形量を低減することができ、嵌入を容易かつ確実に行うことができるボールブッシュとして、ロッドが挿入される円筒体の内周壁にロッドの外面が接する複数のボールが転動可能に配設され、円筒体の外周壁の両端部がテーパー状に形成されるとともに、円筒体の外周壁において、その両端部を除く全部または部分に凹部が形成されてなる直動軸受(ボールブッシュ)が開示されている。ただし、円筒体の内周壁に複数のボールを転動可能に保持する手段に関する記載は無い。
【0007】
特許文献3(特開平7-269570号公報)には、合成樹脂製の外筒と、無限鋼球循環路を備えたリテーナ(ボール保持器)とを含み、そのリテーナには金属製のボールがリテーナの内周側と外周側のそれぞれに僅かに突出した状態で収容保持されている直動軸受(ボールスプライン)が記載されている。なお、この外筒の無限鋼球循環路に対面する位置には、金属材料製のボール支承プレートが備えられる旨の記載もある。
【0008】
特許文献4(実開平6-20922号公報)には、外筒とその内側に配設されるリテーナと、そのリテーナにより保持されるボール、そして外筒の外表面に遊動可能に嵌めこまれたボールを外側から支承するボール支承プレートを含む直動摺動用ベアリング(すなわち、直動軸受)であって、外筒の両端面にシールリングとこのシールリングを保持するためのサイドリングとが外筒に固着された状態で付設されていて、シールリングが外筒端面とサイドリングとの間において遊動可能に配置されている構成の直動軸受が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、特許文献1には、外筒が合成樹脂で形成され、そして外筒に金属製の調心プレートが付設された構成の直動軸受をハウジングに収容して用いることが知られている旨の記載がある。また、特許文献1には、外筒の内周側に無限鋼球循環路が形成されたリテーナにロッドを摺動可能に保持するためのボールを収容することを示唆する記載がある。そして、特許文献2には、ハウジングの孔部に嵌入する際に圧入力および変形が少ない直動軸受として、外筒の円筒体の外周壁の両端部がテーパー状に形成されるとともに、円筒体の外周壁において、その両端部を除く全部または部分に凹部が形成されてなる直動軸受(ボールブッシュ)が開示されている。
【0010】
本発明の発明者は、これまでに説明したような従来から知られている直動軸受の構造を参考にして、ハウジングの孔部に挿入固定する態様での使用に特に適した、軽量でかつ製造が容易な直動軸受の開発を目的として研究を重ねた結果、外周側鋼球循環路と内周側鋼球循環路とを含む無限鋼球循環路を複数条備え、その無限鋼球循環路に対面する領域に面状空間を備えた合成樹脂製の外筒部材、各無限鋼球循環路に収容配列された複数の鋼球、そして上記面状空間に嵌め込まれた弧状断面を持つ合成樹脂製のプレート、但し、合成樹脂製のプレートの内周側鋼球循環路の鋼球列に接する位置には、内周側鋼球循環路の鋼球列に沿う方向にて細長い形状とされた金属片が備えられている、を含む新規な構成の直動軸受が、その目的を満たすことを見出した。なお、本明細書で云う「内周側鋼球循環路」とは、その循環路に収容される鋼球列が、直動軸受に挿入される軸体(ロッド)の表面に接触し、かつ合成樹脂製のプレートの金属片と接触する循環路を意味する。
【0011】
すなわち、上記の新規な構成の直動軸受は、従来の直動軸受で使用されていた外筒とリテーナとを一体の構造体(本明細書では、この一体の構造体を外筒部材と云う)として合成樹脂の成形により製造し、この外筒部材の外周部に金属片(もしくは金属プレート)を装着した構成を基本構成とした直動軸受である。
【0012】
本発明の発明者は、上記の新規な構成の直動軸受の実用性を確認するために、この直動軸受をハウジングの孔部に挿入固定した状態とし、その直動軸受の内周部にロッド(軸体)を装着してロッドの往復運動を繰り返し行うことにより、その直動軸受としての実用性能と耐久性を詳しく検討した。そして、その検討の結果として、上記の新規な構成の直動軸受は、ロッドの円滑な繰り返しの往復運動の支承具としては満足できる性能を示すものの、長期間あるいは長時間の繰り返しの往復運動を行わせると、ハウジングの孔部から抜け落ち易くなるというトラブルの発生が見られることがあることが判明した。
【0013】
本発明の発明者は、上記の新規な構成の直動軸受のハウジングの孔部からの抜け落ちというトラブルの発生の原因の究明のためにさらに研究を行った結果、上記のトラブルは、合成樹脂から成形した外筒部材、すなわち、外筒とリテーナとを一体とした合成樹脂製の成形体が、ロッドの直動軸受の内周部での繰り返しの往復運動による熱の発生により変形することが原因となって起きることが確認できた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発明者は、上記の新規な構成の直動軸受のハウジングの孔部からの抜け落ち(脱落)というトラブルの発生の原因の確認結果に基づき、その解決を新たな目的として研究を続けた。そしてその研究の結果、上記の新規な構成の直動軸受において、上記の細長い金属片を、内周鋼球循環路の鋼球列に沿う方向で内周側に凸状を形成するように湾曲させることにより、上記のトラブルの発生が有効に抑制されることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
従って、本発明は下記構成の直動軸受にある。
【0016】
外周側鋼球循環路と内周側鋼球循環路とを含む無限鋼球循環路を複数条備え、該無限鋼球循環路が対面する領域に面状空間を備えた合成樹脂製の外筒部材、各無限鋼球循環路に収容配列された複数の鋼球、そして該面状空間に嵌め込まれた弧状断面を持つ合成樹脂製のプレート、但し、該合成樹脂製のプレートの内周側鋼球循環路の鋼球列に接する位置には、内周側鋼球循環路の鋼球列に沿う方向で細長い形状とされた金属片が備えられている、を含む直動軸受であって、上記の細長い金属片が、内周側鋼球循環路の鋼球列に沿う方向にて内周側が凸状となるように湾曲していることを特徴とする直動軸受。
【0017】
上記構成の本発明の直動軸受は、孔部を備えたハウジングの孔部に挿入固定して使用する直動軸受として特に有用である。
【0018】
従って、本発明は、孔部を備えたハウジング及び該孔部に挿入固定された上記の直動軸受を含むハウジング付き直動軸受にもある。
【0019】
以下に、本発明の直動軸受の好ましい態様を記載する。
(1)細長い金属片が外筒の内周側に拡がる弧状の断面を持つ金属片である。
(2)細長い金属片の長さ(L)に対する湾曲部の頂部の高さ(H)の比率(H/L)で表される湾曲率が0.001乃至0.05の範囲にある。
(3)外筒部材の外周面に、長さ方向に沿って互いに平行に並ぶ、少なくとも三列の互いに同一の直径を持つ円周に沿って環状に形成されている突起を備える。
(4)上記外筒部材の内周部の両端部に密着状態で、ただし、該両端部に接合固定されることなく、弾性部材から形成された環状外筒補強部材が装着されている。
【0020】
なお、上記(3)の「外筒部材の外周面に、長さ方向に沿って互いに平行に並ぶ、少なくとも三列の互いに同一の直径を持つ円周に沿って環状に形成されている突起を備える」との構成は、前記の「内周側鋼球循環路の鋼球列に沿う方向にて内周側が凸状となるように湾曲している細長い金属片の装着」との態様と併用しなくとも、本発明の効果である「直動軸受のハウジングの孔部からの脱落(抜け落ち)のトラブルの発生の防止」のために有効である。
【0021】
また、上記(4)の「上記外筒部材の内周部の両端部に密着状態で、ただし、該両端部に接合固定されることなく、弾性部材から形成された環状外筒補強部材が装着されている」との構成も、前記の「内周側鋼球循環路の鋼球列に沿う方向にて内周側が凸状となるように湾曲している細長い金属片の装着」との態様と併用しなくとも、本発明の効果である「直動軸受のハウジングの孔部からの脱落(抜け落ち)のトラブルの発生の防止」のために有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の直動軸受は、外筒とリテーナとを共に合成樹脂を材料として、かつ一体物とした外筒部材を主構成部材として用いているため、製造が容易で、かつ軽量であり、またハウジングの孔部への円滑な挿入固定が容易となる。また、外筒部材に装着される金属片付き合成樹脂プレートの細長い金属片の両端部及び/又はその両端部に接する合成樹脂プレートの部位が、僅かではあるが外筒部材の外周部を越えて突き出るため、直動軸受を孔部を有するハウジングの孔部に挿入して固定し、軸体(ロット)を直動軸受に挿入した場合、突き出た金属片の端部あるいはその端部に接している合成樹脂製プレートの部位がハウジングの孔部の内面に接触するようになり、ハウジングの孔部内での直動軸受の固定の安定性が向上する。従って、本発明の直動軸受は、ハウジングの孔部に挿入固定した形態にて、そのリテーナの内周部にロッドを挿入して長期間あるいは長時間にわたって摺動させても、直動軸受のハウジングの孔部からの脱落(抜け落ち)のトラブルが発生しにくいとの利点が生じる。
また、本発明の直動軸受を用いることにより、直動軸受に挿入された軸体(ロッド)の安定な(即ち、「ぶれ」や「がたつき」の少ない)直動が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に従う直動軸受の構成の例を示す斜視図である。
図2図1の直動軸受を、その外筒部材に装着された金属片付き合成樹脂プレートの一枚を外した状態で示す斜視図である。
図3図1の直動軸受の断面図(軸方向に沿って切断した断面図)である。
図4図1の直動軸受を構成する外筒部材の斜視図である。
図5】本発明の直動軸受で用いる金属片付き合成樹脂プレートに備えられている細長い金属片の湾曲状態を誇張した形で示した図である。
図6】本発明の直動軸受で用いる金属片付き合成樹脂プレートに備えられている細長い金属片の斜視図、平面図、側面図、そして正面図である。
図7図1の直動軸受の正面図(外筒の表面状態を拡大して示す正面図)である。
図8】それぞれ、図1の直動軸受の外筒の正面図(a)、側面図(左右同形)(b)、平面図(c)、背面図(d)、そして底面図(e)である。
図9図1の直動軸受の構成を示す分解図である。
図10図9に示した直動軸受の環状外筒補強部材の形状を示す正面図、側面図、そして部分断面図である。
図11図9に示した直動軸受の環状シール部材の形状を示す正面図、側面図、そして部分断面図である。
図12】本発明の直動軸受がハウジングの孔部に挿入固定された状態での構成の一例を示す斜視図である。
図13図12の直動軸受がハウジングの孔部に挿入固定された状態での構成の断面図である。ただし、ハウジング内の直動軸受は、外筒の挿入固定状態を明らかにするため、外筒の側面図として表示してある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の直動軸受及びハウジング付き直動軸受を添付図面を参照しながら詳しく説明する。
【0025】
図1は、本発明に従う直動軸受1の構成の例を示す斜視図であり、図2は、図1に示した直動軸受1の外筒部材2に装着されている金属片付き合成樹脂プレート3の一枚を外した状態で示す斜視図であり、図3は、図1の直動軸受1の断面図(軸方向に沿って切断した断面を示す断面図)である。そして、図4は、図1の直動軸受を構成する枠体として機能する外筒部材2の斜視図である。
【0026】
図1乃至図4に示されているように、本発明の直動軸受1は、外周側鋼球循環路と内周側鋼球循環路とを含む無限鋼球循環路4を複数条備え、無限鋼球循環路4のそれぞれに対面する各領域に面状空間5を持つ合成樹脂製の外筒部材2を備える。すなわち、この外筒部材2は、従来の直動軸受の構成部材として一般的な外筒とリテーナとを兼ねるように、合成樹脂の成形、好ましくは一体成形、により製造した構造体である。
【0027】
各々の無限鋼球循環路4には複数個の鋼球(ボール)6が充填配置されている。外筒部材2に設けられている各面状空間5には、金属片付き合成樹脂プレート3が装着されている。金属片付き合成樹脂プレート3の金属片3aは、内周側鋼球循環路の鋼球(ボール)6が、直動軸受1に挿入された軸体(ロッド、ただし図示なし)に加圧状態で接触しながら回転移動する部位を覆う領域に装着されている。外筒部材2及び金属片付き合成樹脂プレート3の合成樹脂プレート部の形成には、従来より合成樹脂製の直動軸受の外筒や筒状鋼球保持器の材料として利用されているポリアセタール樹脂などエンジニアリングプラスチックと呼ばれる高い機械的強度を持つ合成樹脂が利用される。
【0028】
本発明の直動軸受は、前述のように、外周側鋼球循環路と内周側鋼球循環路とを含む無限鋼球循環路を複数条備え、該無限鋼球循環路に対面する領域に面状空間を備えた合成樹脂製の外筒部材、各無限鋼球循環路に収容配列された複数の鋼球、そして該面状空間に嵌め込まれた弧状断面を持つ合成樹脂製のプレートを含む直動軸受であって、該合成樹脂製のプレートの内周側鋼球循環路の鋼球列に接する位置に、内周側鋼球循環路の鋼球列に沿う方向で細長い形状とされた金属片3aが備えられていて、その細長い金属片3aが、内周側鋼球循環路の鋼球列に沿う方向で内周側に凸状を形成するように湾曲していることを特徴とする。
【0029】
図5は、本発明の直動軸受における主たる特徴点である、内周側鋼球循環路の鋼球列に沿う方向にて内周側が凸状となるように湾曲している細長い金属片3aの湾曲の状態を誇張的に示す概念図である。図5において、細長い金属片3aの湾曲の大きさ(細長い金属片3aの長さ(L)に対する湾曲部の頂部の高さ(H)の比率(H/L)で表される湾曲率)は、0.001乃至0.05の範囲にあることが好ましく、特に0.001乃至0.01の範囲にあることが好ましい。なお、前述のように、孔部を有するハウジングの孔部に本発明の直動軸受を挿入し、且つ、軸体(ロッド)を該直動軸受に挿入した際に、内周側に湾曲している金属片3aが、その湾曲頂部にて内周側鋼球循環路の鋼球列に接触し、その両端部、及び/又はその両端部に接する合成樹脂製プレートの部位が、僅かではあるが外筒部材の外周部を越えて外側に突き出るため、その突き出た金属片3aの端部、及び/又はそれらの端部に接している合成樹脂製プレートの部位がハウジングの孔部の内面に接触するようになり、ハウジングの孔部内での直動軸受の固定の安定性が向上する。また、金属片3aが湾曲しているため軸体(ロッド)を挿入した際に、湾曲した金属片にばね作用が生じ、金属片と接触している鋼球を通じて軸体に予圧を与えることになる。このため、直動軸受に挿入した軸体(ロッド)を保持する作用が発生し、軸体(ロッド)の安定な(すなわち、「ぶれ」や「がたつき」の少ない)直動を実現する。
【0030】
図6は、本発明の直動軸受で用いる金属片付き合成樹脂プレートに備えられている細長い金属片3aの斜視図(左上)、平面図(右上)、側面図(左下)、そして正面図(右下)である。この金属片3aは、前述のように、内周側鋼球循環路の鋼球列に沿う方向で内周側に凸状を形成するように湾曲している(図5参照)が、その湾曲の程度は非常に小さいため、目視では確認しがたいかも知れない。なお、金属片3aは、斜視図と側面図に示したように、細長い金属片が外筒の内周側(鋼球(ボール)に接する側)に拡がる弧状の幅方向の断面を持つことが好ましい。
【0031】
本発明の直動軸受は、図7に見られるように、合成樹脂製の外筒の外周面に外筒の長さ方向に沿って互いに平行に形成された少なくとも三列の同一の直径を持つ環状突起7が形成されていることが好ましい。同一の直径を持つ環状突起の直径とは、外筒の中心軸を対称軸として計測される、環状突起の頂部間の距離を意味する。なお、同一の直径とは実質的に同一とみることができる直径であって、例えば、10%以内の差であれば、同一とみなすことができる。また、少なくとも三列の環状突起のそれぞれは、少なくとも外筒の外周面の両端部そして中央部のそれぞれに形成されていることが好ましい。あるいは、環状突起が、少なくとも外筒の外周面の両端部そしてそれらの両端部の間に略均一の間隔を介して、四列以上形成されていることも好ましい。そして、各環状突起の頂部の断面が円弧の形状にあることが好ましい。環状突起7は、外筒部材2の外周面のみならず、図7に示すように、金属片付きプレートの樹脂部分の外周面にも設けられていることが好ましい。
【0032】
図1に示した本発明の直動軸受の正面図(a)、側面図(左右同形)(b)、平面図(c)、背面図(d)、そして底面図(e)を図8に示す。
【0033】
本発明の直動軸受の外筒部材の内周部の両端部には、図3図9に示すように、直動軸受内部へのゴミや粉塵の侵入を防ぐための環状シール部材8が装着されていることが好ましい。この環状シール部材8は、ゴム材料あるいは合成樹脂材料により形成されることが好ましい。
【0034】
さらに、図3図9に示すように、本発明の直動軸受の外筒部材2の内周部の両端部には、弾性材料から形成される環状外筒補強部材9が装着されていることが好ましい。環状外筒補強部材9は、その外周面が外筒部材2の内周面に密着状態となるように、かつ外筒部材2を外周側に押し拡げるような緊張状態にて外筒部材2の内面側の両端部に装着される。ただし、環状外筒補強部材9は外筒部材2に接合固定はされていない。環状外筒補強部材9を外筒2に接合固定すると、環状外筒補強部材9による外筒部材2の外周側への押し拡げ効果が期待できないためである。そして、環状外筒補強部材9は、図3図9に示されているように、環状シール材料の外側に装着することが好ましい。
【0035】
図10図11はそれぞれ、環状外筒補強部材9と環状シール部材8の形状を正面図(左上図)、側面図(右上図)、そして部分断面図(左下図)として示す。
【0036】
環状外筒補強部材9は、鋼鉄、ステンレススチール、真鍮などの金属材料から形成されていることが好ましいが、耐熱性が、外筒を構成する合成樹脂よりも高いことを条件として、合成樹脂製であってもよい。この場合の耐熱性とは、熱軟化温度と言い換えることもできる。そのような合成樹脂材料の例としては、外筒部材をポリアセタール樹脂で構成した場合を想定すると、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(一般に、PEEK材と呼ばれている)を挙げることができる。あるいは、FRP(繊維強化プラスチック)を用いることもできる。環状外筒補強部材9は、全周に亙って連続する環状材料であることが好ましいが、環状外筒補強部材9の外筒2の内周面への装着の容易さを考慮して、一部を不連続とした環状部材(いわゆるCリング)の形状とすることもできる。
【0037】
図12図13に、本発明の直動軸受が、内部で貫通する孔部10を有するハウジング11の孔部10に装着固定された状態を示す。ただし、ハウジング内の直動軸受は、図13では、外筒の挿入固定状態を明らかするために、外筒の側面図として表示してある。
【0038】
なお、本発明の直動軸受は前述の金属片付き合成樹脂プレートの金属片の所定の湾曲構造に加えて、上記の外筒部材の外周面に複数の環状突起が形成された構成を持つと、それらの環状突起の頂部とハウジングの孔部の内周面との摩擦力による直動軸受の脱落防止(抜け止め)作用が向上する。そして、さらに上記の環状外筒補強部材を付設した場合には、その環状外筒補強部材が外筒部材に与える外周側への押し拡げ力により、さらに直動軸受の脱落防止(抜け止め)効果が向上するという追加的な効果も発生する。
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図13