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特許6993040複合エネルギー吸収層、介在層構造及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】複合エネルギー吸収層、介在層構造及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/18 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
B60R19/18 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021157867
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】202110504028.9
(32)【優先日】2021-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519295166
【氏名又は名称】▲広▼州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】項 新梅
(72)【発明者】
【氏名】張 紹林
(72)【発明者】
【氏名】崔 文天
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-83756(JP,A)
【文献】特開平10-169687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合エネルギー吸収層であって、上から下へ順に設けられる複数層のエネルギー吸収芯層を含み、
各前記エネルギー吸収芯層は、いずれも、仕切りして設けられる複数のエネルギー吸収キャビティを含み、各前記エネルギー吸収芯層の中部に位置する複数の前記エネルギー吸収キャビティがいずれも密封して設けられ、各前記エネルギー吸収芯層のエッジに位置する複数の前記エネルギー吸収キャビティにいずれも開口を有し、
各前記エネルギー吸収キャビティの上部の夾角を第1二面角とし、複数層の前記エネルギー吸収芯層の第1二面角が上から下へ順に減少する、ことを特徴とする複合エネルギー吸収層。
【請求項2】
各前記エネルギー吸収キャビティは、いずれも横形四角柱状であり、
前記横形四角柱状エネルギー吸収キャビティの4つの側面は、順に第1面板、第2面板、第3面板及び第4面板であり、前記第1面板及び前記第2面板が上部に位置し、前記第3面板及び前記第4面板が下部に位置し、前記第1面板と前記第2面板との間の夾角が前記第1二面角である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合エネルギー吸収層。
【請求項3】
中部に位置するエネルギー吸収キャビティを第1エネルギー吸収キャビティとし、前記第1エネルギー吸収キャビティに隣接し且つ前記第1エネルギー吸収キャビティの左上方に位置するエネルギー吸収キャビティを第2エネルギー吸収キャビティとし、前記第1エネルギー吸収キャビティに隣接し且つ前記第1エネルギー吸収キャビティの右上方に位置するエネルギー吸収キャビティを第3エネルギー吸収キャビティとし、前記第1エネルギー吸収キャビティに隣接し且つ前記第1エネルギー吸収キャビティの右下方に位置するエネルギー吸収キャビティを第4エネルギー吸収キャビティとし、前記第1エネルギー吸収キャビティに隣接し且つ前記第1エネルギー吸収キャビティの左下方に位置するエネルギー吸収キャビティを第5エネルギー吸収キャビティとし、
前記第1エネルギー吸収キャビティの第1面板と前記第2エネルギー吸収キャビティの第3面板が重なって設けられ、前記第1エネルギー吸収キャビティの第2面板と前記第3エネルギー吸収キャビティの第4面板が重なって設けられ、前記第1エネルギー吸収キャビティの第3面板と前記第4エネルギー吸収キャビティの第1面板が重なって設けられ、前記第1エネルギー吸収キャビティの第4面板と前記第5エネルギー吸収キャビティの第2面板が重なって設けられる、ことを特徴とする請求項2に記載の複合エネルギー吸収層。
【請求項4】
一番下層のエネルギー吸収芯層に隣接するエネルギー吸収キャビティをそれぞれ左エネルギー吸収キャビティ及び右エネルギー吸収キャビティとし、前記左エネルギー吸収キャビティの第3面板と前記右エネルギー吸収キャビティの第4面板との間の夾角を第2二面角とし、前記第2二面角が前記最後層のエネルギー吸収芯層の第1二面角より小さい、ことを特徴とする請求項2に記載の複合エネルギー吸収層。
【請求項5】
前記エネルギー吸収芯層は、三層であり、前記第1エネルギー吸収芯層の二面角は、97°以下且つ93°以上であり、前記第2エネルギー吸収芯層の二面角は、84°以下且つ80°以上であり、前記第3エネルギー吸収芯層の二面角は、72°以下且つ68°以上であり、前記第2二面角は、60°以下であり且つ56°以上である、ことを特徴とする請求項4に記載の複合エネルギー吸収層。
【請求項6】
前記第1エネルギー吸収芯層の第1二面角は、95°であり、前記第2エネルギー吸収芯層の第1二面角は、82°であり、前記第3エネルギー吸収芯層の第1二面角は、70°であり、前記第2二面角は、58°である、ことを特徴とする請求項5に記載の複合エネルギー吸収層。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の複合エネルギー吸収層を含む介在層構造であって、
前記複合エネルギー吸収層の上部に上板が粘着して固定され、前記エネルギー吸収複合層の下部に下板が粘着して固定される、ことを特徴とする介在層構造。
【請求項8】
前記複合エネルギー吸収層の三次元デジタルモデルを構築するステップS1と、
前記複合エネルギー吸収層の三次元デジタルモデルに基づいて、複合エネルギー吸収層の実体を3D印刷するステップS2と、
前記複合エネルギー吸収層の上部に上板200を粘着し、前記複合エネルギー吸収層の下部に下板300を粘着するステップS3とを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の介在層構造の製造方法。
【請求項9】
前記上板及び前記下板は、いずれもアルミニウム合金板であり、
前記複合エネルギー吸収層の原料は、ナイロンパウダー粒子であり、3D印刷際の結晶化温度は、146℃であり、芯層密度は、1010kg/mである、ことを特徴とする請求項8に記載の介在層構造の製造方法。
【請求項10】
前記ステップS3の後に前記介在層構造に対して耐衝撃性試験を行う、ことを特徴とする請求項8に記載の介在層構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエネルギー吸収材料の技術分野に関し、特に複合エネルギー吸収層、介在層構造及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力車の台数が増加し、車両の衝撃事故の可能性が増加し続け、人々は自動車の安全保護性能にますます注目を集めている。車両の前端に位置する緩衝エネルギー吸収構造は、車両安全性能試験の結果に大きな影響を与えるため、耐衝撃性に優れたエネルギー吸収材料は、常に研究の重点である。
【0003】
薄肉構造は、エネルギーを効率的に吸収することができるだけでなく、質量が軽く、車両衝撃性能を向上させるとともに、車両の燃料経済性を向上させることができ、従って、薄肉構造は、交通機関の衝撃システムに広く応用されている。ただし、従来の薄肉構造は、一般的に均一な構造であり、薄肉構造の最適な耐力面を衝撃力に正対する方向に設計し、衝撃荷重の作用下で高いエネルギー吸収効果を示すことができるが、荷重が大きく、薄肉構造のエネルギー負荷限界に達すると、均一な薄肉構造は、任意の断面位置でランダムに破壊され、ある断面が破壊された後、破壊されない部分の薄肉構造の最適な耐力面と力の作用方向との間の治具が変化するため、薄肉構造の最適な耐力面が力の作用方向に正対することができず、従って、ある断面が破壊された後、薄肉構造の全体的な耐圧強度が迅速に低下するため、エネルギー吸収効果が大幅に低下してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術課題は、従来の薄肉構造が均一な構造を用い、ある断面が衝撃されて破壊された後、薄肉構造の全体的な耐圧強度が急速に低下し、エネルギー吸収効果が低下してしまうことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術課題を解決するために、本発明は、複合エネルギー吸収層を提供し、複合エネルギー吸収層は、上から下へ順に設けられる複数層のエネルギー吸収芯層を含み、
各前記エネルギー吸収芯層は、いずれも、仕切りして設けられる複数のエネルギー吸収キャビティを含み、各前記エネルギー吸収芯層の中部に位置する複数の前記エネルギー吸収キャビティがいずれも密封して設けられ、各前記エネルギー吸収芯層のエッジに位置する複数の前記エネルギー吸収キャビティにいずれも開口を有し、
各前記エネルギー吸収キャビティの上部の夾角を第1二面角とし、複数層の前記エネルギー吸収芯層の第1二面角が上から下へ順に減少する。
【0006】
好適な技術案としては、各前記エネルギー吸収キャビティは、いずれも横形四角柱状であり、
前記横形四角柱状エネルギー吸収キャビティの4つの側面は、順に第1面板、第2面板、第3面板及び第4面板であり、前記第1面板及び前記第2面板が上部に位置し、前記第3面板及び前記第4面板が下部に位置し、前記第1面板と前記第2面板との間の夾角が前記第1二面角である。
【0007】
好適な技術案としては、中部に位置するエネルギー吸収キャビティを第1エネルギー吸収キャビティとし、前記第1エネルギー吸収キャビティに隣接し且つ前記第1エネルギー吸収キャビティの左上方に位置するエネルギー吸収キャビティを第2エネルギー吸収キャビティとし、前記第1エネルギー吸収キャビティに隣接し且つ前記第1エネルギー吸収キャビティの右上方に位置するエネルギー吸収キャビティを第3エネルギー吸収キャビティとし、前記第1エネルギー吸収キャビティに隣接し且つ前記第1エネルギー吸収キャビティの右下方に位置するエネルギー吸収キャビティを第4エネルギー吸収キャビティとし、前記第1エネルギー吸収キャビティに隣接し且つ前記第1エネルギー吸収キャビティの左下方に位置するエネルギー吸収キャビティを第5エネルギー吸収キャビティとし、
前記第1エネルギー吸収キャビティの第1面板と前記第2エネルギー吸収キャビティの第3面板が重なって設けられ、前記第1エネルギー吸収キャビティの第2面板と前記第3エネルギー吸収キャビティの第4面板が重なって設けられ、前記第1エネルギー吸収キャビティの第3面板と前記第4エネルギー吸収キャビティの第1面板が重なって設けられ、前記第1エネルギー吸収キャビティの第4面板と前記第5エネルギー吸収キャビティの第2面板が重なって設けられる。
【0008】
好適な技術案としては、一番下層のエネルギー吸収芯層に隣接するエネルギー吸収キャビティをそれぞれ左エネルギー吸収キャビティ及び右エネルギー吸収キャビティとし、前記左エネルギー吸収キャビティの第3面板と前記右エネルギー吸収キャビティの第4面板との間の夾角を第2二面角とし、前記第2二面角が前記最後層のエネルギー吸収芯層の第1二面角より小さい。
【0009】
好適な技術案としては、前記エネルギー吸収芯層は、三層であり、前記第1エネルギー吸収芯層の二面角は、97°以下且つ93°以上であり、前記第2エネルギー吸収芯層の二面角は、84°以下且つ80°以上であり、前記第3エネルギー吸収芯層の二面角は、72°以下且つ68°以上であり、前記第2二面角は、60°以下であり且つ56°以上である。
【0010】
好適な技術案としては、前記第1エネルギー吸収芯層の第1二面角は、95°であり、前記第2エネルギー吸収芯層の第1二面角は、82°であり、前記第3エネルギー吸収芯層の第1二面角は、70°であり、前記第2二面角は、58°である。
【0011】
上記の複合エネルギー吸収層を含む介在層構造であって、前記複合エネルギー吸収層の上部に上板が粘着して固定され、前記エネルギー吸収複合層の下部に下板が粘着して固定される。
【0012】
好適な技術案としては、前記上板及び前記下板は、いずれもアルミニウム合金板である。
【0013】
上記の介在層構造の製造方法であって、
前記複合エネルギー吸収層の三次元デジタルモデルを構築するステップS1と、
前記複合エネルギー吸収層の三次元デジタルモデルに基づいて、複合エネルギー吸収層を3D印刷するステップS2と、
前記複合エネルギー吸収層の上部に上板を粘着し、前記複合エネルギー吸収層の下部に下板を粘着するステップS3とを含む。
【0014】
好適な技術案としては、前記上板及び前記下板は、いずれもアルミニウム合金板であり、前記複合エネルギー吸収層の原料は、ナイロンパウダー粒子であり、3D印刷際の結晶化温度は、146℃であり、芯層密度は1010kg/mである。
【0015】
好適な技術案としては、前記ステップS3の後に前記介在層構造に対して耐衝撃性試験を行う。
【発明の効果】
【0016】
従来技術に比べて、本発明の実施例の複合エネルギー吸収層、介在層構造及び製造方法の有益な効果は以下のとおりである。
本発明の複合エネルギー吸収層は、上から下へ順に設けられる複数層のエネルギー吸収芯層を含み、各エネルギー吸収芯層は、いずれも、仕切りして設けられる複数のエネルギー吸収キャビティを含み、各エネルギー吸収芯層の中部に位置する複数の前記エネルギー吸収キャビティがいずれも密封して設けられ、各前記エネルギー吸収芯層のエッジに位置する複数の前記エネルギー吸収キャビティにいずれも開口を有し、各前記エネルギー吸収キャビティの上部の夾角を第1二面角とし、複数層の前記エネルギー吸収芯層の第1二面角が上から下へ順に減少する。各エネルギー吸収芯層の第1二面角は、上から下へ順に減少し、衝撃力がエネルギー吸収芯層に垂直な方向に本発明の複合エネルギー吸収層に作用するとき、二面角が最大の第1エネルギー吸収芯層が先ず破壊され、次に第2エネルギー吸収芯層が破壊され、このように続いて、最後層のエネルギー吸収芯層まで破壊される。破壊されたエネルギー吸収芯層が増加するとともに、第1二面角が減少し、エネルギー吸収芯層が生じたクッション力が徐々に増大し、従って、本実施例の複合エネルギー吸収層は、大きい衝撃力を受けると、段階的に破壊され、破壊されるとき、より多くのエネルギーを吸収でき、エネルギー吸収効果が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例の複合エネルギー吸収層の構造模式図である。
図2】本発明の実施例の複合エネルギー吸収層の第1エネルギー吸収芯層のエネルギー吸収キャビティの構造模式図である。
図3】本発明の実施例の複合エネルギー吸収層の第1エネルギー吸収芯層のエネルギー吸収キャビティの上部面板の構造模式図である。
図4】本発明の実施例の介在層構造の構造模式図である。
図5】本発明の実施例の介在層構造の製造方法で介在層構造に対して耐衝撃性試験を行った結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面及び実施例を組み合わせ、本発明の具体的な実施形態についてさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を説明するためのものであるが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0019】
本発明の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「頂」、「底」などの用語により指示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、本発明の説明及び説明の簡単化のために過ぎず、示される装置又は要素が特定方位を有したり、特定方位で構成又は操作されたりすることを指示又は示唆するものではなく、よって、本発明に対する限定としては理解されないことを理解すべきである。本発明では、「第1」、「第2」などの用語を適用して多様な情報を説明するが、これらの情報は、これらの用語に限定されるべきではない。これらの用語は、同タイプの情報を相互に区別するために用いられることを理解すべきである。例えば、本発明範囲から逸脱せずに、「第1」情報は、「第2」情報と命名されることが可能であり、同様に、「第2」情報も、「第1」情報と命名されることが可能である。
【0020】
本発明の好適な実施例の複合エネルギー吸収層であって、上から下へ順に設けられる複数層のエネルギー吸収芯層を含み、各エネルギー吸収芯層は、いずれも、仕切りして設けられる複数のエネルギー吸収キャビティを含み、各エネルギー吸収芯層の中部に位置する複数のエネルギー吸収キャビティがいずれも密封して設けられ、各エネルギー吸収芯層のエッジに位置する複数のエネルギー吸収キャビティにいずれも開口を有し、各エネルギー吸収キャビティの上部の夾角を第1二面角とし、複数層のエネルギー吸収芯層の第1二面角は、上から下へ順に減少する。
【0021】
エネルギー吸収芯層の層数及びエネルギー吸収芯層の厚さは、使用際の強度ニーズに応じて合理的に選択され、図1に示すように、三層のエネルギー吸収芯層が設けられることを例として、本発明の複合エネルギー吸収芯層について説明する。第1エネルギー吸収芯層1は、複数のエネルギー吸収キャビティ11を含み、エネルギー吸収キャビティ11の中部が中空構造であり、エネルギー吸収キャビティ11の上部夾角が第1エネルギー吸収芯層の第1二面角115であり、第2エネルギー吸収芯層2のエネルギー吸収キャビティ21の上部夾角が第2エネルギー吸収芯層の第1二面角215であり、第3エネルギー吸収芯層のエネルギー吸収キャビティ31の上部夾角が第3エネルギー吸収芯層の第1二面角315であり、第2エネルギー吸収芯層の第1二面角215が第1エネルギー吸収芯層の第1二面角115より小さく、第3エネルギー吸収芯層の第1二面角315が第2エネルギー吸収芯層の第1二面角215より小さい。
【0022】
衝撃力がエネルギー吸収芯層に垂直な方向に沿って本実施例の複合エネルギー吸収層に作用するとき、先ず第1二面角が最大の第1エネルギー吸収芯層が破壊され、そして、第2エネルギー吸収芯層が破壊され、このように続いて、最後層のエネルギー吸収芯層まで破壊される。また、破壊されたエネルギー吸収芯層が増加するとともに、エネルギー吸収芯層が生じたクッション力が徐々に増大し、従って、本実施例の複合エネルギー吸収層は、構造がコンパクトであり、大きい衝撃力を受けると、段階的に破壊され、破壊されるとき、より多くのエネルギーを吸収でき、エネルギー吸収効果がより高い。
【0023】
好適には、エネルギー吸収芯層が十分な圧縮空間を有するとともに、高い圧縮強度を有することを保証するために、第1エネルギー吸収芯層の第1二面角15は、100°以下であり且つ90°以上であり、一番下端のエネルギー吸収芯層の第1二面角は、50°以上である。
【0024】
各エネルギー吸収芯層のエネルギー吸収キャビティは、いずれも横形四角柱状であり、横形四角柱状エネルギー吸収キャビティの4つの側面は、順に第1面板、第2面板、第3面板及び第4面板であり、第1面板及び第2面板は、上部に位置し、第3面板及び第4面板が下部に位置し、第1面板及び第2面板との間の夾角は、第1二面角である。
【0025】
図1に示すように、第1エネルギー吸収キャビティ11を例として、エネルギー吸収キャビティの構造について説明する。第1エネルギー吸収芯層のエネルギー吸収キャビティ11は、横に配置される四角柱状であり、四角柱状エネルギー吸収キャビティの4つの側面は、順に第1面板111、第2面板112、第3面板113及び第4面板114であり、そのうち、第1面板111及び第2面板112は、四角柱の上部に位置し、第1面板111及び第2面板112との間の夾角は、第1エネルギー吸収芯層の第1二面角115である。
【0026】
さらに、本実施例では、図2図3に示すように、第1エネルギー吸収キャビティ11は、前エネルギー吸収キャビティ11a及び後エネルギー吸収キャビティ11bを含み、前エネルギー吸収キャビティ11a及び後エネルギー吸収キャビティ11bは、いずれも四角柱状であり、前エネルギー吸収キャビティ11aの側稜が前後方向に沿って斜めに設けられ、後エネルギー吸収キャビティ11bの各側稜がそれぞれ対応する前エネルギー吸収キャビティ11aの各側稜と前後に対向して設けられ、前エネルギー吸収キャビティ11aの第1面板111aの後端が後エネルギー吸収キャビティ11bの第1面板111bの前端に密封接続され、前エネルギー吸収キャビティ11aの第2面板112aの後端が後エネルギー吸収キャビティ11bの第2面板112bの前端に密封接続され、前エネルギー吸収キャビティ11aの第3面板の後端が後エネルギー吸収キャビティ11bの第3面板の前端に密封接続され、前エネルギー吸収キャビティ11aの第4面板の後端が後エネルギー吸収キャビティ11bの第4面板の前端に密封接続され、好適には、前エネルギー吸収キャビティ11a及び後エネルギー吸収キャビティ11bが前後に対称的に設けられ、さらに、前エネルギー吸収キャビティ11aの第1面板と後エネルギー吸収キャビティ11bの第1面板との間の二面角が90°であり、前エネルギー吸収キャビティ11aの第4面板と後エネルギー吸収キャビティ11bの第4面板との間の二面角が90°である。
【0027】
前エネルギー吸収キャビティ11a及び後エネルギー吸収キャビティ11bは、所定の傾斜角をなすように設けられ、所定の傾斜角をなすように設けられるエネルギー吸収キャビティの各面板が交差して設けられることで、異なる方向での作用力を受けるときのエネルギー吸収芯層の安定性を向上させ、エネルギー吸収芯層のエネルギー吸収効果をさらに向上させることができる。
【0028】
本実施例では、上下隣接するエネルギー吸収芯層の間の接続方式は、複数種あり、例えば、第1エネルギー吸収芯層1の下部に平坦板が接続され、平坦板の下方に第2エネルギー吸収芯層2が接続される。各エネルギー吸収キャビティの接続関係の説明の便利上のために、図1に示すように、中部に位置するエネルギー吸収芯層のエネルギー吸収キャビティを第1エネルギー吸収キャビティaとし、第1エネルギー吸収キャビティaに隣接し且つ第1エネルギー吸収キャビティaの左上方に位置するエネルギー吸収キャビティを第2エネルギー吸収キャビティbとし、第1エネルギー吸収キャビティaに隣接し且つ第1エネルギー吸収キャビティaの右上方に位置するエネルギー吸収キャビティを第3エネルギー吸収キャビティcとし、第1エネルギー吸収キャビティaに隣接し且つ第1エネルギー吸収キャビティaの右下方に位置するエネルギー吸収キャビティを第4エネルギー吸収キャビティdとし、第1エネルギー吸収キャビティaに隣接し且つ第1エネルギー吸収キャビティaの左下方に位置するエネルギー吸収キャビティを第5エネルギー吸収キャビティeとし、
第1エネルギー吸収キャビティaの第1面板と第2エネルギー吸収キャビティbの第3面板が重なって設けられ、第1エネルギー吸収キャビティaの第2面板と第3エネルギー吸収キャビティcの第4面板が重なって設けられ、第1エネルギー吸収キャビティaの第3面板と第4エネルギー吸収キャビティdの第1面板が重なって設けられ、第1エネルギー吸収キャビティaの第4面板と第5エネルギー吸収キャビティeの第2面板が重なって設けられ、エネルギー吸収キャビティ内がハニカム状であり、それによって、各エネルギー吸収芯層間の強固な接続を確保でき、また、材料を節約し、車両の軽量化の設計要求を満たす。
【0029】
図1に示すように、本実施例では、エネルギー吸収芯層は、三層であり、第3エネルギー吸収芯層に隣接するエネルギー吸収キャビティをそれぞれ左エネルギー吸収キャビティf及び右エネルギー吸収キャビティgとし、左エネルギー吸収キャビティfの第3面板と右エネルギー吸収キャビティgの第4面板との間の夾角を第3エネルギー吸収芯層の第2二面角36とし、第3エネルギー吸収芯層第2二面角36が第3エネルギー吸収芯層の第1二面角より小さい。
【0030】
第1エネルギー吸収芯層1の第1二面角は、97°以下且つ93°以上であり、第2エネルギー吸収芯層2の第1二面角は、84°以下且つ80°以上であり、第3エネルギー吸収芯層3の第1二面角は、72°以下且つ68°以上であり、第3エネルギー吸収芯層の3第2二面角36は、60°以下且つ56°以上である。
【0031】
好適には、第1エネルギー吸収芯層1の第1二面角15は、95°であり、第2エネルギー吸収芯層2の第1二面角25は、82°であり、第3エネルギー吸収芯層3の第1二面角35は、70°であり、第3エネルギー吸収芯層3の第2二面角36は、58°である。
【0032】
各エネルギー吸収芯層の二面角が95°~58°であり、衝撃を受けると、エネルギー吸収芯層が大きい崩壊・収縮空間を有することができ、エネルギー吸収芯層が十分な強度を有することを保証し、従って、単位体積内のエネルギー吸収複合層がより多くのエネルギーを吸収でき、自動車の軽量化の要求を満たすことができ、単位体積で吸収できるエネルギーが増加することによって、車両の構造設計の選択性が多くなる。
【0033】
介在層構造の実施例であって、図4に示すように、上記のエネルギー吸収複合層100、複合エネルギー吸収層100の上部に固定して粘着される上板200、及び複合エネルギー吸収層100の下部に固定して粘着される下板300を含み、そのうち、上板200及び下板300は、いずれもアルミニウム合金であり、各エネルギー吸収芯層のエネルギー吸収キャビティの肉厚がいずれも1CMであり、複合エネルギー吸収層が用いる材料は、ナイロンであり、ナイロン材料は、弾性が高く、エネルギー吸収効果に優れる。
【0034】
介在層構造の製造方法の好適な実施例であって、本実施例では、複合エネルギー吸収層に対して3D印刷で加工成形を行うステップは、複合エネルギー吸収層の三次元デジタルモデルを構築し、本実施例では、SolidWorksソフトウェアを用いてエネルギー吸収芯層構造を構築するステップS1と、複合エネルギー吸収層の三次元デジタルモデルに基づいて、複合エネルギー吸収層を3D印刷し、溶融堆積成形技術を用い、加工基板を固定し、粉末を敷いた後、設定された加工プロセスパラメータに基づいてエネルギー吸収芯層を印刷するステップS2と、複合エネルギー吸収層の上部に上板200を粘着し、複合エネルギー吸収層の下部に下板300を粘着し、エポキシ樹脂を配置し、印刷されたエネルギー吸収芯層を上下面板の接触面に十分に接着させ、エポキシが完全に硬化した後、製造済みの介在層構造を取得するステップS3とを含む。複合エネルギー吸収芯層の原料は、ナイロンパウダー粒子であり、3D印刷際の結晶化温度は、146℃であり、芯層密度は、1010kg/mであり、ステップS3の後に介在層構造に対して耐衝撃性試験を行う。
【0035】
図5は、介在層構造検体の、衝撃荷重作用での力-変位曲線図であり、図3から分かるように、持続的な衝撃力により、検体が圧縮され続け、4つの衝撃力ピークは、連続して発生し、この4つの衝撃力ピークは、それぞれ第1エネルギー吸収芯層11の第1面板及び第2面板、第2エネルギー吸収層12の第1面板及び第2面板、第3エネルギー吸収芯層13の第1面板及び第2面板、第3エネルギー吸収芯層13の第3面板及び第4面板が衝撃されて破壊されたときのエネルギー吸収過程を表し、試験で得られた力-変位曲線は、変形の9つの段階を表す。第1段階において、第1エネルギー吸収芯層11の第1面板及び第2面板が線形弾性変形するため、力が変位とともに徐々に増加し、第2段階において、第1エネルギー吸収芯層11の第1面板及び第2面板が湾曲・陥没し始め、それらの変位範囲が大きいため、介在層構造検体がこの段階において大きく変形し、ほとんどのエネルギーを吸収し、第3段階において、第2エネルギー吸収芯層12の第1面板及び第2面板が線形弾性変形し、力が変位とともに徐々に増加し、第4段階において、第2エネルギー吸収芯層12の第1面板及び第2面板が湾曲・陥没し始め、検体がほとんどのエネルギーを吸収し、第5段階において、第3エネルギー吸収芯層13の第1面板及び第2面板が線形弾性変形し、第6段階において、第3エネルギー吸収芯層13の第1面板及び第2面板が湾曲・陥没し始め、第7段階において、第3エネルギー吸収芯層13の第3面板及び第4面板が線形弾性変形し、第8段階において、第3エネルギー吸収芯層13の第3面板及び第4面板が湾曲・陥没し始め、第9段階において、各エネルギー吸収芯層のエネルギー吸収キャビティが全て陥没しており、エネルギー吸収を続けることが困難であるため、圧力が急激に上昇してしまう。
【0036】
上記試験結果分かるように、衝撃力がエネルギー吸収芯層に垂直な方向に本実施例の介在層構造に作用するとき、第1二面角が最大の第1エネルギー吸収芯層の上部が先ず破壊され、次に第2エネルギー吸収芯層の上部が破壊され、次に第3エネルギー吸収芯層の上部が破壊され、第3エネルギー吸収芯層の下部が破壊され、また、破壊されたエネルギー吸収芯層が増加するとともに、エネルギー吸収芯層が生じたクッション力が徐々に増大し、従って、本実施例の複合エネルギー吸収層は、大きい衝撃力を受けると、段階的に破壊される。ある断面がランダムに破壊された後、薄肉構造全体の圧縮強度が急速に低下する状況がなく、よって、本実施例の介在層構造は、構造がコンパクトであり、構造設置が合理的であり、破壊されると、単位体積のエネルギー吸収層がより多くのエネルギーを吸収でき、エネルギー吸収効果に優れる。
【0037】
なお、以上は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、指摘すべきことは、当業者にとって、本発明の技術原理から逸脱することなく、さらにいくつかの改善や置換を行うことができ、これらの改善や置換も本発明の保護範囲と見なすべきである。
【符号の説明】
【0038】
100 複合エネルギー吸収層
1 第1エネルギー吸収芯層
11 第1エネルギー吸収芯層のエネルギー吸収キャビティ
11a 第1エネルギー吸収芯層の前エネルギー吸収キャビティ
11b 第1エネルギー吸収芯層の後エネルギー吸収キャビティ
111 第1エネルギー吸収芯層の第1面板
111a 前エネルギー吸収キャビティの第1面板
111b 後エネルギー吸収キャビティの第1面板
112 第1エネルギー吸収芯層の第2面板
112a 前エネルギー吸収キャビティの第2面板
112b 後エネルギー吸収キャビティの第2面板
113 第1エネルギー吸収芯層の第3面板
114 第1エネルギー吸収芯層の第4面板
115 第1エネルギー吸収芯層の第1二面角
2 第2エネルギー吸収芯層
21 第2エネルギー吸収芯層のエネルギー吸収キャビティ
215 第2エネルギー吸収芯層の第1二面角
3 第3エネルギー吸収芯層
31 第3エネルギー吸収芯層のエネルギー吸収キャビティ
315 第3エネルギー吸収芯層の第1二面角
36 第3エネルギー吸収芯層の第2二面角
a 第1エネルギー吸収キャビティ
b 第2エネルギー吸収キャビティ
c 第3エネルギー吸収キャビティ
d 第4エネルギー吸収キャビティ
e 第5エネルギー吸収キャビティ
f 左エネルギー吸収キャビティ
g 右エネルギー吸収キャビティ
200 介在層構造上板
300 介在層構造下板
【要約】      (修正有)
【課題】大きい衝撃力を受けると、段階的に破壊され、破壊されるとき、より多くのエネルギーを吸収でき、エネルギー吸収効果が高くなる複合エネルギー吸収構造を提供する。
【解決手段】複合エネルギー吸収層は、上から下へ順に設けられる複数層のエネルギー吸収芯層1を含み、各エネルギー吸収芯層1は、いずれも、仕切りして設けられる複数のエネルギー吸収キャビティを含み、各エネルギー吸収芯層の中部に位置する複数の前記エネルギー吸収キャビティがいずれも密封して設けられ、各前記エネルギー吸収芯層のエッジに位置する複数の前記エネルギー吸収キャビティにいずれも開口を有し、各前記エネルギー吸収キャビティの上部の夾角を第1二面角115とし、複数層の前記エネルギー吸収芯層1の第1二面角115は、上から下へ順に減少し、各エネルギー吸収芯層の第1二面角115が上から下へ順に減少する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5