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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】表示システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20220105BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220105BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B60R11/02 C
B60R16/02 640K
B60K35/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018000948
(22)【出願日】2018-01-09
(65)【公開番号】P2019119357
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】勝山 佳洋
(72)【発明者】
【氏名】立見 亮介
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-171550(JP,A)
【文献】特開2006-205930(JP,A)
【文献】特開2015-210580(JP,A)
【文献】特開2012-093506(JP,A)
【文献】特開2017-009406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B60R 16/02
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの身体に装着され、ユーザの視界に情報を表示するウエアラブル機器と、
前記ユーザの視界の方向を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき、前記ユーザの視界の方向と車両の特定の構造体との位置的関係に基づき前記ウエアラブル機器の表示を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記ユーザの視界内に前記特定の構造体が含まれるとき、前記ユーザの視界内に優先度が高い情報と優先度が低い情報とを表示させ、前記ユーザの視界内に前記特定の構造体が含まれないとき、前記優先度が高い情報を表示させる、表示システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ユーザの視界内に前記特定の構造体が含まれるか否かを算出する、請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記ユーザの視界内に前記特定の構造体が含まれる位置は、ユーザの視界の死角領域である、請求項1または2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ユーザの視界内に前記特定の構造体が含まれるとき、前記ユーザの視界内に第1の情報を表示させ、前記特定の構造体が含まれないとき、前記ユーザの視界内に前記第1の情報を表示させない、請求項1ないし3いずれか1つに記載の表示システム。
【請求項5】
ユーザの身体に装着され、ユーザの視界に情報を表示するウエアラブル機器と、
前記ユーザの視界の方向を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき、前記ユーザの視界の方向と車両の特定の構造体との位置的関係に基づき前記ウエアラブル機器の表示を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記ユーザの視界内に前記特定の構造体が含まれるとき、前記特定の構造体に応じて前記ユーザの視界内に表示させる情報を異ならせる、表示システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記特定の構造体に応じて予め決められた優先度に従い情報を表示させる、請求項に記載の表示システム。
【請求項7】
表示システムはさらに、車両が走行中か否かを検出する検出手段を含み、
前記制御手段は、車両が走行中であるとき、前記ウエアラブル機器により表示される情報の全部または一部を非表示にする、請求項1ないしいずれか1つに記載の表示システム。
【請求項8】
前記制御手段は、車両が停止中のとき、前記非表示にされた情報を表示させる、請求項に記載の表示システム。
【請求項9】
表示システムはさらに、前記ウエアラブル機器とは別の電子装置であって、車両の表示面に情報を表示するヘッドアップディスプレイを含み、
前記制御手段は、前記ウエアラブル機器および前記ヘッドアップディスプレイに表示させる情報を制御する、請求項1ないしいずれか1つに記載の表示システム。
【請求項10】
前記特定の構造体は、車両のフロントウィンドウの側部に隣接するピラーである、請求項1に記載の表示システム。
【請求項11】
前記特定の構造体は、車両のフロントウィンドウの上方のルーフ部分である、請求項1に記載の表示システム。
【請求項12】
前記特定の構造体は、車両のフロントウィンドウの下方のダッシュボード部分である、請求項1に記載の表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を表示するウエアラブル機器を含む表示システムに関し、特に、車両の表示面がウエアラブル機器の視界に映るときのウエアラブル機器の表示制御に関する。
【背景技術】
【0002】
グーグル・グラス等の眼鏡型インターネット端末が開発され、この端末をスマートフォンと連携させることで眼鏡に映像を描画することが可能である。特許文献1は、眼鏡型ウエアラブルを装着した状態で車両に乗り込んだ際に、ヘッドアップディスプレイ(HUD)と重複する画像を表示しないようにする表示システムを開示している。また、その時にウエアラブル側に優先して表示させる項目を設定することが可能であり、例えば、経路をウエアラブルで表示させるように設定すれば、ユーザの顔の向きをHUDから外れる方向に動かしても、視界内に経路を表示させ続けることができる。また、特許文献2においても、許可された画像をウエアラブル側に表示させ、車両側の表示装置にはウエアラブルに表示した画像を表示させないように制御する表示システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-210580号公報
【文献】特許第6063854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2では、ウエアラブル機器により表示される情報と、車両側のHUDにより表示される情報とが競合するような場合に、いずれか一方の情報を非表示にしたり、ウエアラブル機器またはHUDの優先表示の設定を可能にしている。
【0005】
しかしながら、ウエアラブル機器またはHUDの情報が常に表示されると、その画像が運転の邪魔になり、危険が生じるケースが想定される。図1(A)は、運転者が前方を視認しているときの表示例、図1(B)は、運転者が左方を視認しているときの表示例である。矩形で示す範囲Pは、眼鏡型ウエアラブル機器のユーザの視界であるが、この範囲Pは、実際には見えるものではない。
【0006】
運転者が前方を視認しているとき、ユーザの視界Pの左端に幾つかのアイコン12(電話の着信等を知らせるアイコン、メールの受信等を知らせるアイコン、前方の信号機の灯色状態を知らせるアイコンなど)が表示される。また、車両には、ヘッドアップディスプレイ(以下、HUD)10が搭載され、HUD10は、車両の前方に情報を投射する。それ故、ユーザは、視界Pの中に、HUD10により表示された情報も見ることができる。運転者が前方を視認している場合には、アイコン12の表示は邪魔にならないが、例えば、図1(B)に示すように、運転者が左方を視認したとき、アイコン12の表示が前方車両と重なり、運転の邪魔になることがある。
【0007】
本発明では、上記従来の課題を解決し、ウエアラブル機器により表示される情報が運転の邪魔になることを抑制する表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表示システムは、ユーザの身体に装着され、ユーザの視界に情報を表示するウエアラブル機器と、前記ユーザの視界の方向を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づき、前記ユーザの視界の方向と車両の特定の構造体との位置的関係に基づき前記ウエアラブル機器の表示を制御する制御手段と、を有する。
【0009】
ある実施態様では、前記制御手段は、前記ユーザの視界内に前記特定の構造体が含まれるか否かを算出する。ある実施態様では、前記ユーザの視界内に前記特定の構造体が含まれる位置は、ユーザの視界の死角領域である。ある実施態様では、前記制御手段は、前記ユーザの視界内に前記特定の構造体が含まれるとき、前記ユーザの視界内に第1の情報を表示させ、前記特定の構造体が含まれないとき、前記ユーザの視界内に前記第1の情報を非表示にさせる。ある実施態様では、前記制御手段は、前記ユーザの視界内に前記特定の構造体が含まれるとき、前記ユーザの視界内に優先度が高い情報と優先度が低い情報とを表示させ、前記ユーザの視界内に前記特定の構造体が含まれないとき、前記優先度が高い情報を表示させる。ある実施態様では、前記制御手段は、前記ユーザの視界内に前記特定の構造体が含まれるとき、前記特定の構造体に応じて前記ユーザの視界内に表示させる情報を異ならせる。ある実施態様では、前記制御手段は、前記特定の構造体に応じて予め決められた優先度に従い情報を表示させる。ある実施態様では、表示システムはさらに、車両が走行中か否かを検出する検出手段を含み、前記制御手段は、車両が走行中であるとき、前記ウエアラブル機器により表示される情報の全部または一部を非表示にする。ある実施態様では、前記制御手段は、車両が停止中のとき、前記非表示にされた情報を表示させる。ある実施態様では、表示システムはさらに、前記ウエアラブル機器とは別の電子装置であって、車両の表示面に情報を表示するヘッドアップディスプレイを含み、前記制御手段は、前記ウエアラブル機器および前記ヘッドアップディスプレイに表示させる情報を制御する。
【0010】
さらに本発明の表示システムは、ユーザの身体に装着され、ユーザの視界に情報を表示するウエアラブル機器と、車両が走行中か否かを検出する検出手段と、車両が停止中であるとき、前記ウエアラブル機器に第1の情報を表示させ、車両が走行中であるとき、前記ウエアラブル機器により前記第1の情報を非表示にする、制御手段と、を有する。
【0011】
ある実施態様では、前記特定の構造体は、車両のフロントウィンドウの側部に隣接するピラー、車両のフロントウィンドウの上方のルーフ部分、または車両のフロントウィンドウの下方のダッシュボード部分である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザの視界と車両の特定の構造体との位置関係に基づきウエアラブル機器の表示を制御するようにしたので、ユーザにとって運転の邪魔になり得る情報を選択的に非表示にすることができる。また、優先度の高い情報を表示させ、優先度の低い情報を非表示にすることで、重要な情報を提示しつつ、運転への障害を減らすことができる。さらに、車両が走行中か否かによってウエアラブル機器の表示を制御するようにしたので、運転中に邪魔になるような情報を非表示させ、停止中に多くの情報を表示させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来の表示システムの課題を説明する図である。
図2】本発明の実施例に係る表示システムの全体構成を示す図である。
図3】本発明の実施例に係る車載装置の内部構成を示す図である。
図4】本発明の第1の実施例に係る表示制御プログラムの機能的な構成を示す図である。
図5】視線方向と死角領域との関係を規定したテーブルである。
図6】本発明の第1の実施例に係る表示システムの動作を説明するフローチャートである。
図7】本発明の第1の実施例による表示例を示す図である。
図8】本発明の第2の実施例に係る表示制御プログラムの機能的な構成を示す図である。
図9】本発明の第2の実施例に係る表示システムの動作を説明するフローチャートである。
図10】本発明の第2の実施例による表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明に係る表示システムは、ウエアラブルタイプの眼鏡、マウントヘッドディスプレイなどのウエアラブル機器と、当該ウエアラブル機器の表示を制御する電子装置とを含む。電子装置は、例えば、自動車等の移動体上に固定的に搭載された車載装置、あるいは車両に持ち込み可能なポータブル端末、ラップトップタイプのコンピュータ、スマートフォンであることができる。さらに表示システムは、HUDを含むことができ、ウエアラブル機器およびHUDにより表示される情報が競合しないように表示を制御する機能を備えている。
【実施例
【0015】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。図2は、本発明の実施例に係る表示システムの全体構成を示す図である。本実施例の表示システム100は、HUD110、ウエアラブル機器120および車載装置200を含んで構成される。HUD110は、車載装置200から提供された画像データに基づき、車両のフロントガラス上に画像を投射し、運転者は、自身の視線方向に投射された画像の虚像を見ることができる。投射される画像は、例えば、ナビゲーションに関する案内情報、車両の速度などの運転支援情報である。
【0016】
ウエアラブル機器120は、例えば、眼鏡型の端末であり、運転者の頭部に装着される。ウエアラブル機器120は、車載装置200との間で無線通信を行う機能を備え(例えば、ブルートゥース通信や無線LANなど)、車載装置200から提供された画像データに基づき、ユーザの視界であるレンズ端部に画像を表示する。表示される画像は、例えば、電話の着信等を知らせるアイコン、メールの受信等を知らせるアイコン、前方の信号機の灯色状態等を知らせるアイコンなどである。
【0017】
1つの好ましい態様では、車載装置200は、HUD110およびウエアラブル機器120が接続されたとき、両者が同一の情報を表示しないように両者の表示を制御する。例えば、HUD110にナビゲーションに関する情報を表示させる場合には、ウエアラブル機器120には、それ以外の情報を表示させる。その際、情報毎に優先度を設定し、つまり、優先度の高い端末側に情報を表示させるようにしてもよい。
【0018】
図3に、本実施例による車載装置200の内部構成を示す。同図に示すように、車載装置200は、車内空間を撮像する撮像カメラ210、自車位置を算出し、自車位置周辺の道路案内等を行うナビゲーション部130、オーディオデータやビデオデータの再生を行うマルチメディア再生部230、外部インターフェース240、速度情報、パーキングブレーキ情報などの車両情報を取得する車両情報取得部250、表示部260、音声出力部270、記憶部280、および制御部290を含んで構成される。但し、この構成は一例であり、車載装置100はさらに他の機能を包含するものであってもよい。
【0019】
撮像カメラ210は、例えば、ステアリングの裏側から運転者の顔を撮像し、撮像した画像データを制御部290へ提供する。制御部290は、この画像データを解析し、運転者の視線方向を検出する。
【0020】
外部インターフェース240は、有線または無線により外部機器との接続を可能にし、図2に示すHUD110を接続したり、あるいは、無線通信手段を介してウエアラブル機器120を接続する。記憶部280は、制御部190が実行するソフトウエアや、車載装置200にとって必要なデータ、ナビゲーション部220にとって必要な地図データ等を記憶することができる。制御部290は、車載装置200の各部を制御する。好ましい態様では、制御部290は、ROM、RAMなどを含むマイクロコントローラ等から構成され、ROMまたはRAMは、各部を制御するためのプログラムを格納する。本実施例では、制御部290は、HUD110およぶウエアラブル機器120の表示を制御するための表示制御プログラムを実行する。
【0021】
図4に、本実施例の表示制御プログラム300の機能的な構成を示す。表示制御プログラム300は、情報調停部310、視線方向検出部320、重複判定部330および表示制御部340を含む。
【0022】
情報調停部310は、HUD110およびウエアラブル機器120とが接続されているとき、どの情報をどちらの機器に表示させるかを調停する。例えば、ナビゲーション部220が実行されているとき、次の交差点案内矢印をHUD110またはウエアラブル機器120のいずれかに表示させ、あるいは車両情報取得部250から取得された自車の速度をHUD110またはウエアラブル機器120のいずれかに表示させる。
【0023】
視線方向検出部320は、撮像カメラ210から提供された画像データに基づき運転者の視線方向を検出する。すなわち、運転者の視線が車両のフロントウィンドウ上のどの方向に向けられているが検出され、これによりウエアラブル機器のユーザの視界Pの方向が特定される。
【0024】
重複判定部330は、ウエアラブル機器120のユーザの視界内に、車両の特定の構造体が含まれるか否かを判定する。ウエアラブル機器120のユーザ視界は、例えば、図1に示す矩形の範囲Pであり、これは、眼鏡のレンズに応じた形状である。重複判定部330は、視線方向検出部320により検出された運転者の視線方向に基づき、ユーザの視界Pの方向を決定し、かつフロントウィンドウ近傍のXZ平面上における視界Pの2次元座標を算出する。例えば、ユーザの視界Pが矩形状であれば、その矩形の対角線の交点が運転者の検出された視線方向に対応付けられ、そのときのXZ平面における視界Pの座標(例えば、4つのコーナーの座標)が算出される。
【0025】
車両の特定の構造体は、予め決定されるものであり、運転者の視線がある方向に向けられたとき、運転者の視認方向を邪魔することがないような領域になり得る構造体である。例えば、図5(A)に示すように、運転者の視線がある方向に向けられとき、ユーザの視界Pに左端部に存在する車両のピラーのような構造体Q1、図5(B)に示すように、運転者の視線がある方向に向けられたとき、ユーザの視界Pの上端部に存在する車両のルーフ部のような構造体Q2、図5(C)に示すように、運転者の視線がある方向に向けられたとき、ユーザの視界Pの下端部に存在するダッシュボードのような構造体Q3である。視界P内に構造体Q1、Q2、Q3が映されたとき、構造体Q1、Q2、Q3は、視界の遮蔽物かあるいは視認が相対的に重要でない、いわゆる死角領域である。
【0026】
重複判定部330は、ユーザの視界Pの座標内に、構造体Q1、Q2、Q3が含まれるか否かを判定する。構造体Q1、Q2、Q3の位置は既知であるため、視線方向が検出されれば、その視界P内に構造体Q1、Q2、Q3が位置的に含まれるか否かを算出することができる。ここで留意すべきは、視界P内の構造体Q1、Q2、Q3が含まれる領域は、ウエアラブル機器120により情報が表示される領域でもある。例えば、図5(A)の場合、視界Pの左端部に構造体Q1が重複するが、この左端部には、ウエアラブル機器120が情報を表示する領域である。また、図5(B)の場合、視界Pの上端部に構造体Q2が重複するが、この上端部は、ウエアラブル機器120が情報を表示する領域である。
【0027】
重複判定部330は、特定の構造体と視界Pとの位置関係を演算により算出する以外にも、例えば、図5(D)に示すように、車両の車両の構造体と、当該特定の構造体が視界P内に含まれるときの視線方向との関係を規定したテーブルを用意しておき、当該テーブルを参照して視界Pと特定の構造体との重複関係を判定するようにしてもよい。
【0028】
表示制御部340は、重複判定部330の判定結果に基づき、ウエアラブル機器120の表示を制御する。具体的には、特定の構造体と視界Pとが重複すると判定された場合、表示制御部340は、ウエアラブル機器120に視界P内に情報を表示させ、重複しないと判定された場合、ウエアラブル機器120に視界P内に当該情報を表示させない。また、別の実施態様では、表示制御部340は、重複すると判定された場合、ウエアラブル機器120に視界P内に優先度の高い情報および優先度の低い情報を表示させ、重複しないと判定された場合、視界P内に優先度の低い情報のみを表示させる。
【0029】
次に、本実施例の表示システムの動作を図6のフローを参照して説明する。先ず、制御部290は、ウエアラブル機器120が外部I/F240を介して接続されたか否かを判定する(S100)。ウエアラブル機器120が接続されたと判定されると、情報調停部310は、HUD110とウエアラブル機器120との間で表示される情報を調停する(S102)。次に、視線方向検出部320によって運転者の視線方向が検出され(S104)、つまり、ユーザの視界Pの方向が検出される。
【0030】
次に、重複判定部330は、検出された視界P内に特定の構造体が位置的に重複するか否かを判定する(S106)。表示制御部340は、重複すると判定された場合には、ウエアラブル機器120に優先度の高/低の全ての情報を表示させ(S108)、重複しないと判定された場合には、優先度の低い情報のみを表示させる(S110)。
【0031】
図7(A)は、運転者の視線が左側に向けられ、その結果、視界Pの左端部に車両のピラーの構造体Q1が重複しないときの表示例である。この場合には、視界P内には、運転者の死角領域は存在しないため、言い換えれば、視界Pの全体は、運転者にとって視認しなければならない領域であるため、視界Pへの情報を非表示にするか、あるいは運転上の重要な情報のみを最小限で表示することが望ましい。それ故、ウエアラブル機器120は、前方の信号機の灯色に関する重要な情報Jのみを表示する。
【0032】
図7(B)は、運転者の視線が前方に向けられ、その結果、視界Pの左端部に車両のピラーの構造体Q1が重複するときの表示例である。この場合には、視界Pの構造体Q1の領域は、運転者の視認が遮断される死角領域であるため、ここには、重要な情報Jに加えて、その他のアイコン情報Kも同時に表示される。
【0033】
このように本実施例によれば、死角領域になり得る特定の構造体が視界Pに含まれるか否かを判定し、その判定結果に応じて情報の表示または非表示を選択的に行うようにしたので、運転者にとって視認を要する領域に邪魔な情報が常時表示されるのを防止することができる。
【0034】
変形例として、表示制御部340は、特定の構造体に応じて、ウエアラブル機器120が表示する情報を異ならせるようにしてもよい。例えば、図5(A)に示すように、構造体Q1が視界Pに重複するとき、第1の情報を表示させ、図5(B)に示すように、構造体Q2が視界Pに重複するとき、第2の情報を表示させ、図5(C)に示すように、構造体Q3が視界Pに重複するとき、第3の情報を表示させる。
【0035】
さらに、特定の構造体の形状またはサイズに応じて情報を表示させるようにしてもよい。例えば、図5(A)に示すように、構造体Q1がピラーのように縦長の形状である場合には、第1の情報を縦長の形状に沿うように表示させ、図5(B)、(C)に示すように構造体Q2、Q3が横長の形状である場合には、第2の情報、第3の情報を横長の形状に沿うように表示させる。例えば、第1、第2、第3の情報が、それぞれ複数のアイコンである場合には、複数のアイコンは、構造体の形状に沿うように配置される。さらに複数のアイコンを表示する場合には、中央のアイコンにユーザの視線が集中し易くなるので、言い換えれば、中央のアイコンが認識され易くなるので、中央には、優先度が高いアイコンを配置し、両側には、優先度の低いアイコンを配置するようにしてもよい。
【0036】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図8は、第2の実施例による表示制御プログラム300Aの機能的な構成を示す図である。表示制御プログラム300Aは、第1の実施例の構成に加えて、車両状態判定部350を有する。車両状態判定部350は、車両情報取得部250から取得された速度パルスまたはブレーキ情報に基づき車両が走行中か停止中かを判定する。表示制御部340は、車両が走行中か停車中かの条件を加味して、ウエアラブル機器120の表示を制御する。
【0037】
図9に第2の実施例による表示システムの動作フローを示す。図6に示すフローにおいて、ステップS200、S210が新たに追加されている。すなわち、重複判定部330により構造体が重複しないと判定されたとき、車両が停車中か否かが判定される(S200)。特定の構造体が車両のピラーである場合、運転者が前方を視認していれば、ピラーが視界Pに重複するが、運転者の視線が移動すれば、ピラーが視界Pに重複しない。ここで、視線の移動は、走行中と停止中では原因が異なることが想定される。走行中の視線の移動は、周囲の状況確認またはよそ見であり、停止中の視線の移動は、よそ見である。
【0038】
表示制御部340は、停止中であると判定された場合には、ウエアラブル機器120に優先度の高い情報を表示させるか(S110)、あるいは優先度の高い情報および低い情報の全てを常時表示させ(S108)、走行中であると判定された場合には、ウエアラブル機器120への情報を非表示にする(S210)。
【0039】
図10(A)は、視界P内にピラーQ1が含まれないときの走行中の表示例であり、図10(B)は、視界P内にピラーQ1が含まれないときの停止中の表示例である。走行中の場合には、全ての情報が非表示になり、停止中の場合には、全ての情報J、Kが常時表示される。
【0040】
このように本実施例によれば、視線が移動され、かつ走行中には、運転者が周囲の状況を確認していると推測し、ウエアラブル機器の情報が表示されないようにしたので、ウエアラブル機器により表示される情報に邪魔されることなく運転者の状況確認が容易になる。
【0041】
なお、上記した第2の実施例は、特定の構造体と視界Pとの重複判定を行うものであるが、第2の実施例は、この重複判定を含まないものであってもよい。つまり、車両が走行中か否かを判定し、走行中であれば、ウエアラブル機器が全ての情報を非表示にし、停止中であれば、ウエアラブル機器が全ての情報を表示するようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施例では、ユーザの視界Pの方向を検出するために、撮像カメラによって運転者の視線方向を検出するようにしたが、これは一例であり、他の方法を用いまたは組み合わせるようにしてもよい。例えば、ウエアラブル機器が角速度センサまたは加速度センサを含み、このセンサにより自身の方向を検出する機能を備えている場合には、重複判定部330は、ウエアラブル機器からの視界Pの方向を表す情報を利用することができる。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
100:表示システム 110:HUD
120:ウエアラブル機器 200:車載装置
210:撮像カメラ 220:ナビゲーション部
230:マルチメディア再生部 240:外部I/F
250:車両情報取得部 260:表示部
270:音声出力部 280:記憶部
290:制御部
P:ユーザの視界
Q1、Q2、Q3:特定の構造体
J、K:アイコン(情報)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10