(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】皮下組織構造の改善成分のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20220105BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220105BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12Q1/02
G01N33/53 M
(21)【出願番号】P 2015252345
(22)【出願日】2015-12-24
【審査請求日】2018-10-02
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】坂田 綾
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】原田 靖子
【合議体】
【審判長】中島 庸子
【審判官】一宮 里枝
【審判官】上條 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-227628(JP,A)
【文献】特開2014-062048(JP,A)
【文献】特開2006-298802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0161918(US,A1)
【文献】特開2013-174608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/00-3/00
C12N15/00-15/90
A61P17/00-17/18
A61Q1/00-90/00
G01N33/00-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腱細胞における皮膚支帯成分の発現量を指標として、皮下組織構造の改善成分
の候補物質をスクリーニングすることを特徴とする、スクリーニング方法。
【請求項2】
前記皮膚支帯成分が、ミメカン(Mimecan)、アネキシンA2(Annexin A2)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)及びミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項
1に記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記皮下組織構造の改善成分が、抗老化効果を有する成分であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記抗老化効果が、シワ改善、タルミ改善、ハリの低下防止、肌の弾力性の低下防止からなる群から選択される1種以上の効果であることを特徴とする、請求項
3に記載のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮下組織構造の改善成分のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢で顕著となる皮膚のタルミやシワは、皮膚の弾力性低下がその原因の一つと考えられている。従来、皮膚の弾力性を改善する方法として、例えば、皮膚の弾力性保持に重要な役割を果たすコラーゲンやヒアルロン酸等の細胞外マトリックスの産生を促進又は分解を抑制する技術や(特許文献1)、細胞外マトリックスを産生する真皮線維芽細胞の増殖を促進する技術(特許文献2)が知られている。しかしながら、皮膚直下に存在する皮下組織の構造を改善することでタルミやシワを改善する方法についてはこれまで報告がない。
【0003】
本発明者らは、皮下組織に存在する皮膚支帯(Retinacula cutis)と呼ばれる網目状の線維構造に着目し、顔のタルミとの関連性について検討した結果、皮膚支帯が疎になることにより皮膚深部の弾力性が低下し、タルミが引き起こされる可能性を見出している(非特許文献1)。また、額及び目尻において、深いシワ部位直下の皮下組織では皮膚支帯密度が減少していることが知られている(非特許文献2)。非特許文献1や2の記載から、皮膚支帯の密度を高めることができれば、タルミやシワの改善につながることが推定される。しかしながら、これまでは皮膚支帯の構成成分やその産生細胞、皮膚支帯の密度の変化のメカニズムについては知見がなかったし、皮膚支帯の密度の変化の原因を高める成分の探索も行われていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-257101号公報
【文献】特開2008-105983号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Sakata A., et al. :”Breakthrough in improving the skin sagging with focusing on the subcutaneous tissue structure, retinacula cutis”, 23rd IFSCC, Zurich (2015)
【文献】Tsukahara K. et al., Arch Dermatol. (2012), 148, 39-46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規な皮下組織構造の改善成分のスクリーニング方法を提供することを課題とする。本発明は、抗老化に有用な成分、特に、皮膚のタルミ及びシワの改善に有効な成分のスクリーニング方法を提供することを課題とする。また、本発明は、皮膚支帯成分の発現促進剤を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、皮膚支帯の構成成分、及び当該構成成分を産生する細胞種を特定した。さらに、皮膚支帯を構成する特定の成分が加齢で減少することを見出した。そして、加齢で減少する皮膚支帯成分の発現量を指標とすることで皮下組織構造の改善成分をスクリーニングすることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
前記課題を解決する本発明は、細胞における皮膚支帯成分の発現量を指標として、皮下組織構造の改善成分をスクリーニングすることを特徴とする、スクリーニング方法である。
特に、本発明は、抗老化効果を有する成分、特にタルミ改善成分及びシワ改善成分をスクリーニングするのに有用である。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記細胞は、線維芽細胞及び腱細胞から選ばれる少なくとも1種である。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記細胞は、皮膚支帯に存在する細胞である。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記皮膚支帯成分として、加齢で減少する、ミメカン(Mimecan)、アネキシンA2(Annexin A2)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)及びミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)から選ばれる少なくとも1種を選択する。
これらの何れかの皮膚支帯成分の発現量を指標とすることで、効率よく皮下組織構造の改善成分をスクリーニングすることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、皮膚支帯を密にするという、新たな作用機序に基づく皮下組織構造の改善に有効な成分を探索することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1>スクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法は、細胞における皮膚支帯成分の発現量を指標として、皮下組織構造の改善成分をスクリーニングすることを特徴とする。ここで、スクリーニングとは、皮下組織構造の改善成分又はその候補を探索することを含む。
【0014】
皮下組織構造の改善成分としては、抗老化効果を有する成分、特にシワ改善、タルミ改善、ハリの低下防止、肌の弾力性の低下防止効果を有する成分を挙げることができる。ここで、タルミとは、皮膚および皮下組織の弾力性の低下によって生ずる肌の変形をさす。
【0015】
本発明のスクリーニング方法において用いる細胞としては、線維芽細胞及び腱細胞から選ばれる少なくとも1種が好ましい。本発明者らは、皮膚支帯中に細胞が存在していることを見出し、これらの細胞が線維芽細胞及び腱細胞の両者を含むことを見出している。そのため、これらの少なくとも1種の細胞を用いることが、皮膚支帯成分の発現量の測定に効率的である。また、これらの両者を用いることも好ましい。
【0016】
皮膚支帯成分としては、以下から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
ミメカン(Mimecan)、アネキシンA2(Annexin A2)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)、ミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)、6型コラーゲン(Collagen type 6)、1型コラーゲン(Collagen type 1)、アネキシンA5(Annexin A5)、デコリン(Decorin)、ルミカン(Lumican)、プロラルギン(Prolargin)。
中でも、ミメカン(Mimecan)、アネキシンA2(Annexin A2)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)、及びミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)、は、加齢に伴い減少する成分であることから、これらの成分から選ばれる少なくとも1種の発現量を指標とすることが、皮下組織構造の改善成分のスクリーニングの観点から好ましい。
【0017】
本発明のスクリーニング方法は、細胞の培養系に被験物質を添加し、細胞における皮膚支帯成分の発現量を測定することを含む。具体的には、被験物質を添加して培養した細胞における皮膚支帯成分の発現量が、被験物質を添加しないで培養した細胞における皮膚支帯成分の発現量と比較して統計的に有意に大きい場合に、前記被験物質は皮下組織構造の改善成分の候補として判定することが可能である。具体的には、被験物質を添加しないで培養した細胞における皮膚支帯成分の発現量の1倍より大きい場合に、皮下組織構造の改善成分の候補として選択することが可能である。
【0018】
皮膚支帯成分の発現量は、mRNA測定、免疫組織学化学的解析等の常法により測定することができる。
例えば、前記皮膚支帯成分をコードする遺伝子の発現量は、当該遺伝子の配列に特異的に結合する配列を有するDNA断片をプライマーとして用いてPCRを行い、定量的な検出を行う。なお、前記皮膚支帯成分をコードする遺伝子配列は、公開されているので、当業者は適宜プライマーを設計することが可能である。
また、前記各皮膚支帯成分の抗体についても市販品が存在するので、これを用いて、細胞における発現量を測定することができる。
【0019】
本発明のスクリーニング方法が対象とする被験物質は、純物質、動植物由来の抽出物、又はそれらの混合物等のいずれであってもよい。
動植物由来の抽出物は、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとし、植物由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等が挙げられる。
抽出操作は、植物部位の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位を使用することできるが、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示することができる。具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却し後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
【0020】
<2>皮膚支帯成分の発現促進剤
本発明の皮膚支帯成分の発現促進剤は、本発明のスクリーニング法によって探索された成分のうち、医薬部外品、化粧料及び食品に使用することが可能な成分からなる。具体例としては、以下の植物抽出物を例示できる。
ニンジンエキス、シソエキス、ドクダミエキス、センブリエキス、イザヨイバラエキス、オウレンエキス、キウイエキス、アロエエキス、クワエキス、ダマスクバラ花水
複数のタンパク質の発現促進作用が確認された成分を含有させる態様、また、異なるタンパク質の発現促進作用を有する2種以上の成分を組み合わせて含有させる態様も好ましく挙げられる。
【0021】
本発明の皮膚支帯成分の発現促進剤は、製剤化に用いられる任意の成分と適宜組み合わせて、外用剤又は経口剤の形態とすることが好ましい。外用剤としては、例えば、化粧料、医薬部外品、皮膚外用医薬等の形態が挙げられる。また、それらの剤形は特に制限されない。中でも、皮膚支帯成分の発現を促進させるという用途との関係から、継続的に使用可能な化粧料の形態が好ましく、中でも、化粧水、美容液、乳液、クリーム、ジェル、サンケア品等の形態が好ましい。
また、経口剤としては、錠剤、顆粒剤、ドリンク剤等の剤形を有するサプリメントの形態が好ましい。
【0022】
外用剤における皮膚支帯成分の発現促進剤の含有量(抽出物の場合は乾燥質量)は、通常、0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。上記範囲とすることで、好適にシワ改善、タルミ改善、ハリの低下防止、肌の弾力性の低下防止効果を奏する。
また、皮膚支帯成分の発現促進剤の種類は、1種類のみでなく2種類以上であってもよい。
【0023】
また、経口剤の場合には、剤形に応じて、1回あたりの摂取量が抽出物の乾燥質量として、通常、0.1mg以上、好ましくは1mg以上、より好ましくは10mg以上であり、通常2000mg以下、好ましくは1000mg以下、より好ましくは500mg以下である。
【0024】
皮膚支帯は、皮膚の形状維持において重要な役割を果たしている。また、皮膚支帯の疎密は、年齢および皮膚のタルミ程度と相関関係を有することを本発明者らは見出している。
従って、本発明の皮膚支帯成分の発現促進剤は、皮下組織構造の改善剤として使用することができる。
特に、本発明の皮膚支帯成分の発現促進剤は、抗老化剤として有用であり、特にシワ改善、タルミ改善、ハリの低下防止、肌の弾力性の低下防止剤としての使用が好ましく、より好ましくは皮膚のタルミ改善剤として使用することが有用である。
【0025】
皮膚支帯成分の発現促進剤を化粧料に用いる場合、通常化粧料に使用される成分を広く配合することが可能であり、また、その剤形や用途についても、何ら限定されない。以下、化粧料に適用される場合、化粧料中に含有させることができる他の成分について説明する。
【0026】
化粧料においては、前述したスクリーニング方法により有効成分として探索された皮膚支帯成分の発現促進剤に加え、美白成分、他のシワ改善成分、抗炎症成分等を配合することができる。
美白成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、アスコルビン酸グルコシド、3-О-エチルアスコルビン酸、トラネキサム酸、アルブチン、1-トリフェニルメチルピペリジン、1-トリフェニルメチルピロリジン、2-(トリフェニルメチルオキシ)エタノール、2-(トリフェニルメチルアミノ)エタノール、2-(トリフェニルメチルオキシ)エチルアミン、トリフェニルメチルアミン、トリフェニルメタノール、トリフェニルメタン及びアミノジフェニルメタン、N-(o-トルオイル)システイン酸、N-(m-トルオイル)システイン酸、N-(p-トルイル)システイン酸、N-(p-メトキシベンゾイル)システイン酸等が挙げられる。更にその他の美白成分として、N-ベンゾイル-セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン、N-(p-エチルベンゾイル)セリン、N-(p-メトキシベンゾイル)セリン、N-(p-フルオロベンゾイル)セリン、N-(p-トリフルオロメチルベンゾイル)セリン、N-(2-ナフトイル)セリン、N-(4-フェニルベンゾイル)セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン メチルエステル、N-(p-メチルベンゾイル)セリン エチルエステル、N-(2-ナフトイル)セリン メチルエステル、N-ベンゾイル-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-アセチルセリン、N-(2-ナフトイル)-O-メチルセリン等があげられる。
これらの美白成分は、既に市販されているものもあれば、合成により入手することもできる。例えば、3-О-エチルアスコルビン酸は、特開平8-134055号公報に記載の公知の方法で合成することが出来る。市販品(日本精化製「VCエチル」)もあるので、これらを入手して使用することが可能である。1-トリフェニルメチルピペリジン、1-トリフェニルメチルピロリジン、2-(トリフェニルメチルオキシ)エタノール、2-(トリフェニルメチルアミノ)エタノール、2-(トリフェニルメチルオキシ)エチルアミン、トリフェニルメチルアミン、トリフェニルメタノール、トリフェニルメタン、アミノジフェニルメタンは特許文献WO2010―074052号パンフレットに、N-(o-トルオイル)システイン酸、N-(m-トルオイル)システイン酸、N-(p-トルイル)システイン酸、N-(p-メトキシベンゾイル)システイン酸、N-(4-フェニルベンゾイル)システイン酸、N-(p-トルオイル)ホモシステイン酸、はWO2011-058730号パンフレットに、N-ベンゾイル-セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン、N-(p-エチルベンゾイル)セリン、N-(p-メトキシベンゾイル)セリン、N-(p-フルオロベンゾイル)セリン、N-(p-トリフルオロメチルベンゾイル)セリン、N-(2-ナフトイル)セリン、N-(4-フェニルベンゾイル)セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン メチルエステル、N-(p-メチルベンゾイル)セリン エチルエステル、N-(2-ナフトイル)セリン メチルエステル、N-ベンゾイル-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-アセチルセリン、N-(2-ナフトイル)-O-メチルセリン等はWO2011/074643号パンフレットに、それぞれその合成方法が公開されているので、該開示に従い合成することができる。
化粧料における美白成分の含有量は、通常0.0001~30質量%であり、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0027】
シワ改善成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、皮膚支帯の発現促進とは異なるメカニズムでシワ改善効果を有する成分を用いることが、各成分の作用効果を存分に生かす観点から好ましい。例えば、ビタミンA又はその誘導体としてレチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールが挙げられる。また、ウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステルが挙げられる。化粧料における皮膚支帯の発現促進剤の他のシワ改善成分の含有量は、通常0.0001~30質量%であり、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0028】
抗炎症成分としては、クラリノン、グラブリジン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、パントテニルアルコール等が挙げられ、好ましくは、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、並びに、グリチルレチン酸及びその塩が好ましく挙げられる。
化粧料中における抗炎症成分の含有量は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0029】
また、一般的に医薬品、化粧料、食品等に用いられている動植物由来の抽出物を用いることが好ましい。例えば、アケビエキス、アスナロエキス、アスパラガスエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アーモンドエキス、アルニカエキス、アロニアエキス、アンズエキス、イチョウエキス、インドキノエキス、ウイキョウエキス、ウドエキス、エゾウコギエキス、エンメイソウエキス、オウバクエキス、オタネニンジンエキス、オドリコソウエキス、オレンジエキス、カキョクエキス、カッコンエキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カンゾウエキス、キウイエキス、キューカンバーエキス、グアバエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、黒米エキス、クロレラエキス、クワエキス、ケイケットウエキス、ゲットウヨウエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、コメエキス、コメ発酵エキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コケモモエキス、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンシャエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、スギナエキス、ステビアエキス、ステビア発酵物、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ソウハクヒエキス、ダイオウエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、タンポポエキス、茶エキス、チョウジエキス、チンピエキス、甜茶エキス、トウガラシエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、バーチエキス、ハマメリスエキス、ヒキオコシエキス、ヒノキエキス、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブドウエキス、ブドウ種子エキス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、マツエキス、ミズバショウエキス、メリッサエキス、モズクエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユズエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、緑茶エキス、リンゴエキス、ルイボス茶エキス、レイシエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンギョウエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス、ワレモコウエキス等のエキスが好ましいものとして挙げられる。
化粧料中における前記任意の動植物由来抽出物の含有量(乾燥質量)は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、0.3~3質量%がより好ましい。
食品中における前記任意の動植物抽出物の含有量(乾燥質量)は、通常0.01~80質量%であり、0.1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
【0030】
また、化粧料には、前述した有効成分以外に通常化粧料で使用される任意成分としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等のポリオール、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類が挙げられる。
【実施例】
【0031】
<試験例1>真皮由来線維芽細胞を用いたスクリーニング
ヒト正常真皮線維芽細胞を、10% FBS/DEME培地で24穴プレートに2.0×104個/ウェルとなるように播種し、37℃、5%、CO2環境下で24時間培養した。
播種24時間後、被験物質として、種々の植物抽出エキスを添加した(最終濃度0.5質量%)。
24時間後、培地を除きPBSで洗浄し、FastLane Cell RT-PCR Kit(QIAGEN社製)を用いてmRNAを回収し、QuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN社製)でcDNAを合成した。
QuantiTect Primer Assay(QIAGEN社製)を用いて定量的RT-PCRを行い、加齢で減少する皮膚支帯構成タンパク質であるミメカン(Mimecan)、アネキシンA2(Annexin A2)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)、ミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)をコードする遺伝子のmRNA量を測定した。
前述のmRNA発現量は、β-actinを内在性コントロールとして比較CT法により算出し、被験物質非添加のヒト正常真皮線維芽細胞における目的のmRNA発現量を「1」とした場合の相対値として結果を表1に示した。
【0032】
表1より、キウイエキスを添加することによって、Biglycan遺伝子の発現が促進されることが明らかとなった。また、アロエエキス、クワエキスをそれぞれ添加することによって、Microfibrillar-associated protein 4(MFAP4)遺伝子の発現が促進されることが明らかとなった。また、ダマスクバラ花水を添加することによって、Vinculin遺伝子の発現が促進されることが明らかとなった。以上の抽出物は、皮下組織構造の改善成分の候補物質と判定することができる。
【0033】
【0034】
<試験例2>腱細胞を用いたスクリーニング
ヒト腱由来腱細胞を、専用培地でコラーゲンIコート24穴プレートに2.0×104個/ウェルとなるように播種し、37℃、5%、CO2環境下で24時間培養した。
播種24時間後、被験物質として、種々の植物抽出エキスを添加した(最終濃度0.5質量%)。
24時間後、培地を除きPBSで洗浄し、FastLane Cell RT-PCR Kit(QIAGEN社製)を用いてmRNAを回収し、QuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN社製)でcDNAを合成した。
QuantiTect Primer Assay(QIAGEN社製)を用いて定量的RT-PCRを行い、加齢で減少する皮膚支帯構成タンパク質であるミメカン(Mimecan)、アネキシンA2(Annexin A2)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)、ミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)をコードする遺伝子のmRNA量を測定した。
前述のmRNA発現量は、β-actinを内在性コントロールとして比較CT法により算出し、被験物質非添加のヒト腱由来細胞における目的のmRNA発現量を「1」とした場合の相対値として、結果を表2に示した。
【0035】
表2より、ニンジンエキス、シソエキスをそれぞれ添加することによって、Biglycan遺伝子の発現が促進されることが明らかとなった。また、ドクダミエキスを添加することによって、Microfibrillar-associated protein 4(MFAP4)遺伝子の発現が促進されることが明らかとなった。また、センブリエキス、イザヨイバラエキスをそれぞれ添加することによって、Vinculin遺伝子の発現が促進されることが明らかとなった。また、オウレンエキスを添加することによって、Mimecan遺伝子の発現が促進されることが明らかとなった。以上の抽出物は、皮下組織構造の改善成分の候補物質と判定することができる。
【0036】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、化粧料やサプリメントの処方設計に応用できる。