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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】支援装置および支援方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
G05B23/02 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2016224814
(22)【出願日】2016-11-18
(65)【公開番号】P2018081610
(43)【公開日】2018-05-24
【審査請求日】2019-09-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大塚 賢司
(72)【発明者】
【氏名】田原 鉄也
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-003206(JP,A)
【文献】特開2013-250929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の設定条件があるモデル作成の作業によって作成された、制御対象の複数のモデルを記憶したモデル記憶部と、
前記モデルを評価するための複数の評価項目を記憶する評価項目記憶部と、
前記モデル記憶部に記憶されている前記複数のモデルの各々について、前記評価項目記憶部に記憶されている前記複数の評価項目の各々に該当する特徴量を算出するように構成された特徴量算出部と、
前記特徴量算出部により算出された前記特徴量に応じて前記モデル記憶部に記憶されている前記複数のモデルを複数のグループに分類するように構成された分類部と、
前記分類部により分類された前記複数のモデルを前記複数のグループ毎に表示部に表示させるように構成された表示制御部と
を備え、
操作指示を受け付ける操作受付部を更に備え、
前記表示制御部は、前記複数のグループを識別する識別情報を前記表示部に表示し、前記表示部に表示されている前記識別情報のうち前記操作受付部を介して選択された識別情報によって識別されるグループに分類されたモデルを前記表示部に表示し、
前記複数のグループの各グループに分類されたモデルの特徴を代表する代表画像を作成するように構成された代表画面作成部を備え、
前記表示制御部は、前記代表画面作成部が作成した代表画面を前記グループを識別する識別情報として前記表示部に表示する
ことを特徴とする支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の支援装置において、
前記表示制御部は、前記識別情報を、前記特徴量算出部が算出した複数の前記特徴量のうち任意の2つの特徴量によって表される2次元表面上の領域として前記表示部に表示する
ことを特徴とする支援装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の支援装置において、
前記代表画面作成部は、複数の前記グループに分類された各モデルのステップ応答を各々計算して各時刻の平均値からなる波形を代表画像として作成する
ことを特徴とする支援装置。
【請求項4】
複数の設定条件があるモデル作成の作業によって作成された、制御対象の複数のモデルをモデル記憶部に記憶するモデル記憶ステップと、
前記モデル記憶部に記憶されている前記複数のモデルの各々について、評価項目記憶部に記憶されている前記モデルを評価するための複数の評価項目の各々に該当する特徴量を算出する特徴量算出ステップと、
前記特徴量算出ステップで算出された前記特徴量に応じて前記モデル記憶部に記憶されている前記複数のモデルを複数のグループに分類する分類ステップと、
前記分類ステップで分類された前記複数のモデルを前記複数のグループ毎に表示部に表示させる表示制御ステップと
を備え、
操作指示を受け付ける操作受付ステップを更に備え、
前記表示制御ステップでは、前記複数のグループを識別する識別情報を前記表示部に表示し、前記表示部に表示されている前記識別情報のうち前記操作受付ステップで選択された識別情報によって識別されるグループに分類されたモデルを前記表示部に表示し、
前記複数のグループの各グループに分類されたモデルの特徴を代表する代表画像を作成する代表画面作成ステップを備え、
前記表示制御ステップでは、前記代表画面作成ステップで作成した代表画面を前記グループを識別する識別情報として前記表示部に表示する
ことを特徴とする支援方法。
【請求項5】
請求項4記載の支援方法において、
前記表示制御ステップでは、前記識別情報を、前記特徴量算出ステップで算出した複数の前記特徴量のうち任意の2つの特徴量によって表される2次元表面上の領域として前記表示部に表示する
ことを特徴とする支援方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の支援方法において、
前記代表画面作成ステップでは、複数の前記グループに分類された各モデルのステップ応答を各々計算して各時刻の平均値からなる波形を代表画像として作成する
ことを特徴とする支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス制御で利用される数学モデルを表示することでモデルの作成を支援する支援装置および支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝達関数モデル、状態空間表現モデルなどの数学モデルを用いて制御変数の将来の応答を予測し、予測した応答が参照軌道や目標値に漸近するような操作変数を算出するモデル制御方法がある(特許文献1参照)。このような数学モデルを利用した制御手法を実行するためには、モデルを作成する必要がある。このモデル作成方法にはいくつかあるが、代表的な方法の1つとしてシステム同定と呼ばれる方法がある。システム同定では、モデリング対象の入出力時系列データを統計的に処理し、入出力を再現するようなモデルを、最小2乗法などを用いて構築する。
【0003】
システム同定によるモデル作成では、一般的には、エンジニアがモデルを試行錯誤で複数作成し、作成した複数のモデルから精度が十分かつ利用目的に妥当なものを選択するといった手順を経ることが多い。このため、モデル作成作業を通して多くのモデルが作成される。このように、試行錯誤によって多くのモデルが作成されるのは、モデル作成の作業には多くの設定条件があるからである。
【0004】
設定条件の例としては、学習に使用する入出力データの前処理方法(ノイズ除去やトレンド除去)やモデル構造、推定方法などが挙げられる。また、学習に使う入出力データが長い期間にわたって保存されている場合、学習データの期間選択も設定条件の1つである。このようにモデルを作成するための同定条件は、多くの設定条件の組み合わせから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平05-265514号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Lennart Ljung , "Matlab&Simulink, System Identification Toolbox Getting Started Guide", The MathWorks, Inc. , R2015b, p. 4-15, 2015.
【文献】足立 修一、「システム同定の基礎」、東京電機大学出版局、第1判第1刷、189頁、2009年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、多くのモデルの中から妥当なモデルを選択する作業は、煩雑で非効率である。従来、一般には、作成したモデルのステップ応答をグリッド状に並べて表示し、表示されているいずれかのモデルを選択することが行われている(非特許文献1参照)。しかしながら、このように表示しても、以下に示すように、モデルの選択は効率的とはならない。
【0008】
前述したように同定条件の選択肢は数が多いので、多くの場合、多数のモデルが作成される。これに加え、モデルの対象は変わらないため、作成されたモデルが互いに似ることが多くなる。エンジニアは、互いに似ている多数のモデルの中から評価が最も高いモデルを見つけることになる。しかしながら、似たモデル同士は似た評価になり、評価が最も高いモデルを見つけることは容易ではない。
【0009】
多くのモデルの中から妥当なモデルを選択する作業が煩雑で非効率であるという問題は、モデル作成の試行錯誤を自動化すると更に顕著となる。モデル作成の試行錯誤は、それ自体が煩雑かつ時間がかかる作業である。これを解決するためには、モデル作成の同定条件を選択する作業を自動化し、多くの同定条件を網羅してモデルを作成する方法が考えられる。しかし、自動化でより多くの試行錯誤が可能になるため、候補となるモデルの数が非常に多くなる。当然ながら、作成された多くのモデルの中には、互いに似たモデルも多く含まれるので、これまで述べた問題がより顕著に現れることになる。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、試作した多くのモデルの中より、対象となるモデル制御に最適なモデルがより容易に選択できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る支援装置は、制御対象の複数のモデルを記憶したモデル記憶部と、モデルを評価するための複数の評価項目を記憶する評価項目記憶部と、モデル記憶部に記憶されている複数のモデルの各々について、評価項目記憶部に記憶されている複数の評価項目の各々に該当する特徴量を算出するように構成された特徴量算出部と、特徴量算出部により算出された特徴量に応じてモデル記憶部に記憶されている複数のモデルを複数のグループに分類するように構成された分類部と、分類部により分類された複数のモデルを複数のグループ毎に表示部に表示させるように構成された表示制御部とを備える。
【0012】
上記支援装置において、操作指示を受け付ける操作受付部を更に備え、表示制御部は、複数のグループを識別する識別情報を表示部に表示し、表示部に表示されている識別情報のうち操作受付部を介して選択された識別情報によって識別されるグループに分類されたモデルを表示部に表示するようにしてもよい。
【0013】
上記支援装置において、表示制御部は、識別情報を、特徴量算出部が算出した複数の特徴量のうち任意の2つの特徴量によって表される2次元表面上の領域として表示部に表示するようにしてもよい。
【0014】
上記支援装置において、複数のグループに分類されたモデルを代表する代表画像を作成するように構成された代表画面作成部を備え、表示制御部は、代表画面作成部が作成した代表画面をグループを識別する識別情報として表示部に表示するようにしてもよい。例えば、代表画面作成部は、複数のグループに分類された各モデルのステップ応答を各々計算して各時刻の平均値からなる波形を代表画像として作成する。
【0015】
また、本発明に係る支援方法は、制御対象の複数のモデルをモデル記憶部に記憶するモデル記憶ステップと、モデル記憶部に記憶されている複数のモデルの各々について、評価項目記憶部に記憶されている複数の評価項目の各々に該当する特徴量を算出する特徴量算出ステップと、特徴量算出ステップで算出された特徴量に応じてモデル記憶部に記憶されている複数のモデルを複数のグループに分類する分類ステップと、分類ステップで分類された複数のモデルを複数のグループ毎に表示部に表示させる表示制御ステップとを備える。
【0016】
上記支援方法において、操作指示を受け付ける操作受付ステップを更に備え、表示制御ステップでは、複数のグループを識別する識別情報を表示部に表示し、表示部に表示されている識別情報のうち操作受付ステップで選択された識別情報によって識別されるグループに分類されたモデルを表示部に表示するようにしてもよい。
【0017】
上記支援方法において、表示制御ステップでは、識別情報を、特徴量算出ステップで算出した複数の特徴量のうち任意の2つの特徴量によって表される2次元表面上の領域として表示部に表示するようにしてもよい。
【0018】
上記支援方法において、複数のグループに分類されたモデルを代表する代表画像を作成する代表画面作成ステップを備え、表示制御ステップでは、代表画面作成ステップで作成した代表画面をグループを識別する識別情報として表示部に表示するようにしてもよい。例えば、代表画面作成ステップでは、複数のグループに分類された各モデルのステップ応答を各々計算して各時刻の平均値からなる波形を代表画像として作成する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、モデルの特徴量を算出し、算出された特徴量に応じてモデルを分類して表示するようにしたので、試作した多くのモデルの中より、対象となるモデル制御に最適なモデルがより容易に選択できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施の形態1における支援装置の構成を示す構成図である。
図2図2は、エンジニアが似たモデルを選別する判断材料になっているであろう数値である特徴量のうち、ステップ応答に関連する特徴量を示す特性図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1における支援方法を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施の形態1におけるモデル分類を説明するためのモデルの例を示す説明図である。
図5図5は、図4に示す複数のモデルに対してk平均近傍法でクラスタリングすることでグループに分類した結果を示す説明図である。
図6図6は、分類部104により分類されたモデルを分類されたグループ毎に表示部106に表示した例を示す説明図である。
図7図7は、RMSEの昇順にモデルを整列して表示した状態を説明するための説明図である。
図8図8は、分類部104により分類されたモデルを分類されたグループ毎に表示部106に表示した例を示す説明図である。
図9図9は、分類部104により分類されたモデルを分類されたグループ毎に表示部106に表示した例を示す説明図である。
図10図10は、本発明の実施の形態2における支援装置の構成を示す構成図である。
図11図11は、分類されたモデルを分類されたグループ毎に表示部106に表示した例を示す説明図である。
図12図12は、分類されたモデルを分類されたグループ毎に表示部106に表示した例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0022】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における支援装置の構成を示す構成図である。この支援装置は、モデル記憶部101、評価項目記憶部102、特徴量算出部103、分類部104、表示制御部105、表示部106、操作受付部107を備える。
【0023】
モデル記憶部101は、制御対象の複数のモデルを記憶している。評価項目記憶部102は、モデルを評価するための複数の評価項目を記憶している。特徴量算出部103は、モデル記憶部101に記憶されている複数のモデルの各々について、評価項目記憶部102に記憶されている複数の評価項目の各々に該当する特徴量を算出するように構成されている。
【0024】
特徴量とは、エンジニアが似たモデルを選別する判断材料になっているであろう数値である。特徴量の評価項目は、対象となるモデル制御に最適なモデルの選択に際して適宜に設定すればよい。以下の表1に評価項目の例を示す。表1に示した評価項目のうち、ステップ応答に関連して算出される特徴量を図2に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
上述した評価項目に対する特徴量を算出することにより、例えば、以下の表2に示す各評価項目に対する各数値(特徴量)がモデル毎に得られる。
【0027】
【表2】
【0028】
分類部104は、特徴量算出部103により算出された特徴量に応じてモデル記憶部101に記憶されている複数のモデルを複数のグループに分類するように構成されている。表示制御部105は、複数のグループを分類部104により分類されたグループ毎に表示部106に表示させるように構成されている。表示制御部105は、モデルのステップ応答を、分類されたグループ毎に表示部106に表示させる。ステップ応答は、プロセス制御では良く用いられている。なお、モデルのインパルス応答、モデルのボーデ線図などを表示してもよい。また、複数のモデル表示形態の種類からどれか1つを選択して表示するようにしても良い。なお、操作受付部107は、操作指示を受け付けるように構成されている。
【0029】
次に、実施の形態1における支援装置の動作例(支援方法)について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0030】
まず、ステップS101で、対象となるモデル制御に用いるためにエンジニアが試行錯誤で試作した複数のモデルを、モデル記憶部101に記憶する。次に、ステップS102で、特徴量算出部103が、モデル記憶部101に記憶されている複数のモデルの各々について、評価項目記憶部102に記憶されている複数の評価項目の各々に該当する複数の特徴量を算出する。例えば、上記表2に示すように、各評価項目に対し、特徴量算出部103が、モデル毎に特徴量を算出する。
【0031】
上述した特徴量の算出が、モデル記憶部101に記憶されている全てのモデルについて実施されると(ステップ103のy)、ステップS104で、分類部104が、特徴量算出部103により算出された複数の特徴量に応じてモデル記憶部101に記憶されている複数のモデルを複数のグループに分類する。
【0032】
例えば、特徴量から構成されるベクトルをk平均近傍法でクラスタリングすることで、複数のモデルを分類すればよい。1例として、図4に示す複数のモデルに対し、k平均近傍法でクラスタリングすることでグループに分類する。直流ゲイン、正規化オーバーシュート量、正規化アンダーシュート量、立ち上がり時間、整定時間、みなしむだ時間の各評価項目に対して算出された6つの特徴量から構成されるベクトルをk平均近傍法でクラスタリングする。横軸直流ゲイン、縦軸立ち上がり時間の座標軸に、算出された特徴量をプロットすると図5に示すように、3つのグループへ分かれる。
【0033】
なお、上述したグループ分けにおける特徴量の選択はこれらに限らず、例示した特徴量より少なくても多くてもよいし、全く異なる組み合わせでもよい。また、クラスタリングの手法もk平均近傍法以外の公知の方法(階層クラスタリングなど)を選択してもよい。
【0034】
次に、ステップS105で、表示制御部105が、分類部104により分類されたモデルを分類されたグループ毎に表示部106に表示させる。例えば、図6に示すように、属するグループ毎にモデルをまとめて表示し、また、各グループが区別できるように、グループの表示領域における背景の色や模様などを各々異なる状態とし、グループ間の境界を明確に視認できるようにする。図6では、3つのグループが表示されている状態を示している。
【0035】
このように表示することで、例えばあるグループの最初のモデルがエンジニアが持つ先見情報と大きく異なる場合に、グループ毎スキップして次のグループに進むことができ、モデルを評価して選択する作業の効率が改善され、モデル選択に対して大きな支援となる。なお、グループを区別するための表示方法は、背景の色やパターンを変更する、グラフの線や文字の色を変更するなど、様々な手法が利用可能である。
【0036】
ところで、上述した実施の形態1のようにグループに分類することなく、所定の基準で評価した結果によりモデルを整列させて表示することで、対象となるモデル制御に最適なモデルを選択する方法も考えられる。従来、複数のモデルから1つの評価基準にしたがってモデルを選択する技術がある(非特許文献2参照)。
【0037】
以下、モデルの評価について説明する。モデルの誤差は、例えば対象の出力とモデル出力との間の2乗平均誤差(RMSE:Root Mean Square Error)で評価する。これは、実際に対象で測定された出力と、その時に対象に与えられた入力信号と同じ信号をモデルに入力した時に計算された出力との誤差を評価したものであり、以下の計算式が用いられる。
【0038】
【数1】
【0039】
なお、モデルの誤差に関する評価指標はRMSE以外にも、周波数重み付きの2乗平均誤差、FPE(Final Prediction Error)、AIC(Akaike Information Criterion)などがあるが、この問題は評価指標の種類に関係無く起こりうる。
【0040】
ここで、モデル作成を試行錯誤した結果、図7に示すような複数のモデル候補が得られて表示されたものとする。図7では、RMSEの昇順にモデルが整列されている。一番左の列の一番上がRMSEが最も小さく、2番目にRMSEが小さいのはその下のモデルである。以降、ステップ応答に付記した数字がRMSEの小さい順位である。複数のモデルをRMSEの昇順に整列すれば、モデルは誤差の小さい順に並ぶ。
【0041】
しかしエンジニアは、RMSEのみではなく、複数の選択基準を総合してモデルを選択することが多い。例えば、対象の立ち上がり時間がいくつくらいであるかという知見があれば、モデルの応答が知見に近いことも選択基準になる。この場合、RMSEが少し悪くても(例えば1%大きくても)立ち上がり時間が自分の持っている知見により近いといった理由で、RMSEが最も良いモデルとは別のモデルを選択することがある。このため、図7のようにRMSE順に並べて表示しても、立ち上がり時間という基準があるので、複数のモデルを1つずつ見るという煩雑な作業が大幅に改善されるわけではない。なお、エンジニアの評価ポイントとなりうる知見としては、対象の応答がなめらかである、対象の直流ゲインの大体の値がわかっている、などが他にも想定される。
【0042】
上述したモデルの選択支援に対し、実施の形態1によれば、まず、エンジニアが似たモデルを選別する判断材料になっているであろう複数の特徴量を、試作したモデルの各々について求める。次に、求めた特徴量をもとに分類してグループとし、グループ毎に表示するようにした。この結果、複数の選択基準を総合してモデルを選択することがより容易になり、対象となるモデル制御に最適なモデルがより容易に選択できるようになる。
【0043】
また、図8の(a)に示す選択表示で、複数のグループを識別するためのグループ名(識別情報)を表示部106に表示してもよい。このように、表示部106の選択表示に表示されている識別情報のうち、操作受付部107を介したグループ名の選択操作(操作受付ステップ)に応じて、(b)に示すモデル表示で、選択されたグループ名(によって識別されるグループに分類されたモデルを表示部106に表示するようにしてもよい。
【0044】
図8に示す例では、識別情報としてグループ名を用いている。このように表示することで、グループ単位で評価ができ、モデルの取捨選択ができる。この結果、1つ1つモデルを見るよりもモデル選択の作業効率が改善され、モデル選択に対して大きな支援となる。また、表示されるモデル数が抑制されるので、モデル数が多い場合により大きな効果が得られる。
【0045】
また、選択表示において、図8の(a)に示した状態に代えて、図9に示すように、グループを識別するための識別情報として、特徴量算出部103が算出した複数の特徴量のうち任意の2つの特徴量によって表される座標(2次元表面)上にプロットすることで分類されたグループを区別可能とした矩形(領域)を配置して示すことで、選択対象のグループを表示してもよい。図9では、横軸直流ゲイン、縦軸立ち上がり時間の座標軸に、グループを区別可能に矩形で表示した場合を例示している。
【0046】
この選択表示の中で、例えば、操作受付部107としてマウスなどの入力装置を用いて所望のグループを選択すると、選択されたグループに属するモデルが別画面(不図示)で表示される。各座標における特徴量は、変更可能とされている。エンジニアは、グループ単位でモデルの特徴量を評価し、自分が持つ先見情報と照らし合わせることができる。このため、1つずつモデルを見ていくよりも作業効率が改善する。また、各グループの特徴量の位置関係を見ながらグループを選択できることも、作業の効率化に効果がある。
【0047】
この他、グループとそのグループに属するモデルをツリー状に配置して表示する、表形式で1グループを1行に対応させて表示するなど、グループ毎に表示する様々な方法が利用できる。
【0048】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について図10を用いて説明する。図10は、本発明の実施の形態2における支援装置の構成を示す構成図である。この支援装置は、モデル記憶部101、評価項目記憶部102、特徴量算出部103、分類部104、表示制御部205、表示部106、操作受付部107、代表画面作成部208を備える。モデル記憶部101、評価項目記憶部102、特徴量算出部103、分類部104、表示部106、操作受付部107は、前述した実施の形態1と同様である。
【0049】
代表画面作成部208は、分類部104が分類した各グループに分類されたモデルの特徴を代表する画像(代表画像)を作成する。例えば、グループに含まれる各モデルのステップ応答を各々計算し、各時刻の平均値からなる波形を代表画像として作成する。表示制御部205は、図11の(a)に示す選択表示で、グループ名ともに代表画面作成部208が作成した代表画像をグループを識別する識別情報として表示部106に表示する。
【0050】
このように、表示部106の選択表示に表示されている識別情報のうち、操作受付部107を介したグループ名の選択操作(操作受付ステップ)に応じ、(b)に示すモデル表示で選択されたグループに属するモデルを表示部106に表示する。グループに属するモデルの表示の制御については、実施の形態1と同様である。
【0051】
また、選択表示において、図11の(a)に示した状態に代えて、図12に示すように、代表画像を識別情報として2つの特徴量の座標上へプロットすることで、選択対象のグループを表示してもよい。図1では、横軸直流ゲイン、縦軸立ち上がり時間の座標軸に、グループの代表画像を表示した場合を例示している。
【0052】
この選択表示の中で、例えば、操作受付部107としてマウスなどの入力装置を用いて所望のグループの代表画像を選択すると、選択されたグループに属するモデルが別画面(不図示)で表示される。各座標における特徴量は、変更可能とされている。
【0053】
実施の形態2によれば、代表画像を表示するようにしたので、各グループに含まれるモデルの特徴がひと目で判別可能となり、モデル選択の作業効率がより向上する。
【0054】
また、平均値の計算においては、重み付きにしてもよい。単に平均値を用いる場合、例えば、RMSEの悪いモデルに平均値が引っ張られ、代表形状がグループ内のモデルの平均的な姿から離れることが予想されるからである。このような場合には、RMSEが小さいほど大きな重みを個別のステップ応答へかけるように正規化して平均の波形を計算し、代表画像とすればよい。
【0055】
また、代表画面作成部208は、精度に関する評価指標が最も小さい、または大きいモデルをグループの中より選択し、グループに属するモデルの特徴を示す代表画像として作成してもよい。
【0056】
また、代表画面作成部208は、最もなめらかな応答を持つモデルをグループの中より選択し、グループに属するモデルの特徴を示す代表画像として作成してもよい。
【0057】
また、代表画面作成部208は、ステップ応答やシミュレーション結果をハイパスフィルタに通し、フィルタの出力信号の絶対値の総和が最も小さなモデルをグループの中より選択し、グループに属するモデルの特徴を示す代表画像として作成してもよい。
【0058】
また、代表画面作成部208は、最小の次数を持つモデルをグループの中より選択し、グループに属するモデルの特徴を示す代表画像として作成してもよい。
【0059】
また、代表画面作成部208は、グループの中で最も単純な構造を持ったモデルを選択し、グループに属するモデルの特徴を示す代表画像として作成してもよい。
【0060】
以上に説明したように、本発明によれば、モデルの特徴量を算出し、算出された特徴量に応じてモデルを分類して表示するようにしたので、試作した多くのモデルの中より、対象となるモデル制御に最適なモデルがより容易に選択できるようになる。
【0061】
なお、支援装置は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)と主記憶装置と外部記憶装置とネットワーク接続装置となどを備えたコンピュータ機器であり、主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作することで、上述した各機能が実現される。また、各機能は、複数のコンピュータ機器に分散させるようにしてもよい。
【0062】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0063】
101…モデル記憶部、102…評価項目記憶部、10…特徴量算出部、10…分類部、10…表示制御部、10…表示部、107…操作受付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12