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特許6993083環境適合性洗浄剤を使用するウイルス不活性化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】環境適合性洗浄剤を使用するウイルス不活性化方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20220128BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220128BHJP
   C07K 1/14 20060101ALN20220128BHJP
   C07K 1/22 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
A61K38/00
A61K38/43
A61K39/00 A
A61K39/395 B
C07K1/14
C07K1/22
【請求項の数】 53
(21)【出願番号】P 2016530926
(86)(22)【出願日】2014-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-01-19
(86)【国際出願番号】 US2014065391
(87)【国際公開番号】W WO2015073633
(87)【国際公開日】2015-05-21
【審査請求日】2017-11-13
【審判番号】
【審判請求日】2019-11-18
(31)【優先権主張番号】61/937,284
(32)【優先日】2014-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/905,075
(32)【優先日】2013-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー, スーザン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, チー
(72)【発明者】
【氏名】ノーリング, レノーア
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/208982(US,A1)
【文献】国際公開第1998/53860(WO,A1)
【文献】特表2012-523851(JP,A)
【文献】特表2005-502589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K39/395
A61K38/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のエンベロープウイルスを不活性化する方法であって、前記供給流を洗浄剤にさらす工程を含み、該洗浄剤が環境適合性であり、前記供給流が回収細胞培養流体、捕捉プール又は回収生成物プールを含み、該環境適合性洗浄剤が、デシルポリグルコシド(CAS68515-73-1)、2-エチルヘキサノール EO-PO 非イオン性界面活性剤(CAS64366-70-7、又はデシル/ウンデシルグルコシド(CAS132778-08-6)である、方法。
【請求項2】
トリトンX-100を使用する方法又は洗浄剤なしの方法と比べて、前記治療用ポリペプチドの生成物品質を維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療用ポリペプチドの生成物品質が、前記生成物供給流中の全ポリペプチドの5%以下の生成物変異体の変化しか生じさせない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生成物変異体が、前記生成物供給流中の全ポリペプチドの5%を越えては増加しない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記生成物変異体が、サイズ変異体、電荷変異体、酸化変異体、脱アミド変異体、糖化変異体又はグリカンプロファイルが変化した変異体である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記生成物変異体が酸性及び/又は塩基性生成物変異体である、請求項3から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記供給流を前記洗浄剤にさらす工程が、ポリペプチドの断片化を約5%を越えて増加させない、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記供給流を前記洗浄剤にさらす工程が、前記供給流中の凝集を約5%を越えて増加させない、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記供給流を前記洗浄剤にさらす工程が、製造プロセスにおけるポリペプチドの収率を約5%を越えて低減させない、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記洗浄剤が約0.01%から約10%の最終濃度になるまで前記供給流に添加される、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記洗浄剤が約0.3%から約1%の最終濃度になるまで前記供給流に添加される、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記供給流が少なくとも約1分から少なくとも約48時間の間、前記洗浄剤にさらされる、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記供給流が少なくとも約15分から少なくとも約3時間の間、前記洗浄剤にさらされる、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記供給流が少なくとも約1時間の間、前記洗浄剤にさらされる、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記供給流が約4℃から約30℃の前記洗浄剤にさらされる、請求項1から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記供給流が約15℃から約20℃の前記洗浄剤にさらされる、請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記洗浄剤が非イオン性洗浄剤又は双性イオン洗浄剤である、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記洗浄剤が、約12から約15の親水性・親油性バランス(HLB)を有する、請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記洗浄剤がオクチルフェノールを含んでいないか又は生成しない、請求項1から18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
洗浄剤が過酸化物を含んでいないか又は生成しない、請求項1から19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記洗浄剤を含む前記供給流が低濁度である、請求項1から20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記供給流への前記洗浄剤の添加が前記供給流の濁度を増加させない、請求項1から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
廃棄の際、前記洗浄剤の使用から生じる受水体中の前記洗浄剤の予測環境濃度(PEC)が、前記洗浄剤の予測無影響濃度(PNEC)未満である、請求項1から22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記PECが前記PNECより低い、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記洗浄剤が一又は複数の界面活性剤を含む、請求項1から24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記洗浄剤が一又は複数の界面活性剤、保存料、及びキレート剤を含む、請求項1から25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記洗浄剤が、回収細胞培養流体に添加される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記捕捉プール又は前記回収生成物プールが、アフィニティークロマトグラフィープールである、請求項1から27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記捕捉プール又は前記回収生成物プールが、プロテインAプール、プロテインGプール又はプロテインLプールである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記捕捉プール又は前記回収生成物プールが、混合モードクロマトグラフィープールである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記捕捉プールがCaptoAdhereプールである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記洗浄剤が消泡剤と組み合わせて使用される、請求項1から31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記消泡剤がシメチコンである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ウイルスが、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、肝炎ウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、又はトガウイルスである、請求項1から33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記供給流中の前記洗浄剤のウイルス対数減少値(LRV)が約1よりも大きい、請求項1から34の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記LRVが約4よりも大きい、請求項1から35の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記LRVが感染性試験に基づいて計算される、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記感染性試験がプラークアッセイ又はTCID50アッセイである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記洗浄剤の添加後に前記供給流を濾過する工程を更に含む、請求項1から38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記供給流が、前記洗浄剤の添加の少なくとも約15分から少なくとも約48時間後に濾過される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記供給流が、前記洗浄剤の添加の少なくとも約1時間から少なくとも約3時間後に濾過される、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
前記供給流が、前記洗浄剤の添加の約1時間後に濾過される、請求項39から41の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記濾過する工程において使用するフィルターが限外濾過膜又はデプスフィルターである、請求項39から42の何れか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記供給流が、前記洗浄剤の添加後にクロマトグラフィーに供される、請求項1から43の何れか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記クロマトグラフィーが、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、又は混合モードクロマトグラフィーの一又は複数である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記アフィニティークロマトグラフィーがプロテインAクロマトグラフィー、プロテインGクロマトグラフィー又はプロテインLクロマトグラフィーである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記イオン交換クロマトグラフィーがアニオン交換クロマトグラフィー又はカチオン交換クロマトグラフィーである、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記混合モードクロマトグラフィーがCaptoAdhereクロマトグラフィーである、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記治療用ポリペプチドが、抗体、イムノアドヘシン、酵素、増殖因子、受容体、ホルモン、調節因子、サイトカイン、Fc融合ポリペプチド、抗原、又は結合剤である、請求項1から48の何れか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、又は抗体断片である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記治療用ポリペプチドが哺乳動物細胞中で産生される、請求項1から50の何れか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記哺乳動物細胞株が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、マウスハイブリドーマ細胞、又はマウス骨髄腫細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のエンベロープウイルスを不活性化するためのキットであって、洗浄剤を含み、前記供給流が回収細胞培養流体、捕捉プール又は回収生成物プールを含み、該洗浄剤が環境適合性であり、デシルポリグルコシド(CAS68515-73-1)、2-エチルヘキサノール EO-PO 非イオン性界面活性剤(CAS64366-70-7、又はデシル/ウンデシルグルコシド(CAS132778-08-6)であり、該生成物供給流が該環境適合性洗浄剤にさらされる、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
この出願は、その内容の全体が出典明示によりここに援用される2013年11月15日出願の合衆国仮特許出願第61/905075号と2014年2月7日出願の合衆国仮特許出願第61/937284号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は洗浄剤を使用するウイルス不活性化方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
薬学的活性物質の生物工学的生産には様々な目的のために補助的物質が必要とされる。生産細胞を溶解し、合成産物を精製のため遊離させ、またウイルス又は細菌汚染からの保護として、洗浄剤が合成段階の最後に使用される。所望される生成物の精製後に生成物精製に使用された増殖培地及びバッファーが不活性化され、廃水に流される。そのような放出物は洗浄剤に対する環境リスクアセスメント(ERA)によって推定される環境への懸念を生じさせうる。
【0004】
薬学的活性物質の生物工学的生産におけるウイルス不活性化のための現在のプロトコルは、しばしばトリトンX-100の使用に依存している。トリトンX-100の分解産物は、エストロゲン様作用が証明されたエコトキシン(ecotoxin)であるオクチルフェノールである。オクチルフェノール排出の定められた限界は0.01から0.1ppbである。而して、生物工学プロセスにおけるトリトン-Xの使用には、廃棄物流からオクチルフェノールを除去するために複雑で費用が嵩む手段の使用が必要とされうる。必要とされているものは.生物製剤の生産に使用するための環境適合性洗浄剤である。
【0005】
特許出願と刊行物を含むここで引用された全ての文献はその全体が出典明示により援用される。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法であって、前記供給流に洗浄剤を加える工程を含み、該洗浄剤が環境適合性である方法を提供する。該方法は、トリトンX-100を使用する方法又は洗浄剤なしの方法と比べて、治療用ポリペプチドの生成物品質を維持する。
【0007】
幾つかの実施態様では、治療用ポリペプチドの生成物品質は、生成物供給流中の全ポリペプチドの僅か5%の生成物変異体の変化しか生じさせない。幾つかの実施態様では、生成物変異体は、生成物供給流中の全ポリペプチドの5%を越えては増加しない。幾つかの実施態様では、生成物変異体は、サイズ変異体、電荷変異体、酸化変異体、脱アミド変異体、糖化変異体又はグリカンプロファイルが変化した変異体である。幾つかの実施態様では、生成物変異体は酸性及び/又は塩基性生成物変異体である。幾つかの実施態様では、前記供給流に洗浄剤を加える工程は、ポリペプチドの断片化を約5%を越えて増加させない。幾つかの実施態様では、前記供給流に洗浄剤を加える工程は、前記供給流中の凝集を約5%を越えて増加させない。幾つかの実施態様では、前記供給流に洗浄剤を加える工程は、製造プロセスにおけるポリペプチドの収率を約5%を越えて低減させない。
【0008】
本発明は、治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法であって、前記供給流に洗浄剤を加える工程を含み、該洗浄剤が約0.01%から約10%の最終濃度になるまで前記供給流に添加される方法を提供する。幾つかの実施態様では、洗浄剤は約0.3%から約1%の最終濃度になるまで前記供給流に添加される。幾つかの実施態様では、前記供給流は少なくとも約1分から少なくとも約48時間の間、洗浄剤にさらされる。他の実施態様では、前記供給流は少なくとも約15分から少なくとも約3時間の間、洗浄剤にさらされる。更に他の実施態様では、前記供給流は少なくとも約1時間の間、洗浄剤にさらされる。本発明の幾つかの実施態様では、前記供給流は約4℃から約30℃の洗浄剤にさらされる。他の実施態様では、前記供給流は約15℃から約20℃の洗浄剤にさらされる。
【0009】
本発明の幾つかの実施態様では、洗浄剤は非イオン性洗浄剤又は双性イオン洗浄剤である。幾つかの実施態様では、洗浄剤は、約12から約15の親水性・親油性バランス(HLB)を有する。
【0010】
本発明の幾つかの実施態様では、洗浄剤はオクチルフェノールを含んでいないか又は生成しない。幾つかの実施態様では、洗浄剤は過酸化物を含んでいないか又は生成しない。
【0011】
本発明の幾つかの実施態様では、洗浄剤を含む前記供給流は低濁度である。幾つかの実施態様では、前記供給流への洗浄剤の添加は前記供給流の濁度を増加させない。
【0012】
本発明の幾つかの実施態様では、廃棄の際、洗浄剤の使用から生じる受水体中の洗浄剤の予測環境濃度(PEC)は、洗浄剤の予測無影響濃度(PNEC)未満である。更なる実施態様では、PECはPNECより低い。
【0013】
本発明の幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤はアルキルグルコシドを含む。更なる実施態様では、アルキルグルコシドはデシルグルコシドである。他の実施態様では、環境適合性洗浄剤はアルコールエトキシレートである。更に他の実施態様では、環境適合性洗浄剤はアルキルポリエチレングリコールエーテルである。幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤は、CAS9005-64-5、CAS9005-65-6、CAS126-43-8、CAS68515-73-1、CAS58846-77-8、CAS59122-55-3、CAS110615-47-9、CAS29836-26-8、CAS64366-70-7、CAS68937-66-6、CAS69227-22-1、CAS25322-68-3、CAS27252-75-1、CAS4292-10-8、CAS132778-08-6、CAS110615-47-9、CAS68515-73-1、又はCAS68439-46-3のCAS登録番号を有している。
【0014】
幾つかの実施態様では、洗浄剤は一又は複数の界面活性剤を含む。更なる実施態様では、洗浄剤は一又は複数の界面活性剤、保存料、及びキレート剤を含む。
【0015】
幾つかの態様では、本発明は、治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法であって、前記供給流に環境適合性洗浄剤を加える工程を含み、前記供給流は回収細胞培養流体を含む方法を提供する。幾つかの実施態様では、洗浄剤は、回収細胞培養流体に添加される。他の実施態様では、前記供給流は捕捉プール又は回収生成物プールを含む。更なる実施態様では、捕捉プール又は回収生成物プールは、アフィニティークロマトグラフィープールである。また更なる実施態様では、捕捉プール又は回収生成物プールは、プロテインAプール、プロテインGプール又はプロテインLプールである。他の実施態様では、捕捉プール又は回収生成物プールは、混合モードクロマトグラフィープールである。更なる実施態様では、捕捉プールはCaptoAdhereプールである。
【0016】
本発明の幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤は消泡剤と組み合わせて使用される。幾つかの実施態様では、消泡剤はシメチコンである。
【0017】
幾つかの実施態様では、本発明は、治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法であって、前記供給流に環境適合性洗浄剤を加える工程を含み、ウイルスがエンベロープウイルスである方法を提供する。幾つかの実施態様では、ウイルスは、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、肝炎ウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、又はトガウイルスである。幾つかの実施態様では、前記供給流中の洗浄剤のウイルス対数減少値(LRV)は約1よりも大きい。更なる実施態様では、ウイルスLRVは約4よりも大きい。幾つかの実施態様では、LRVは感染性試験に基づいて計算される。更なる実施態様では、感染性試験はプラークアッセイ又はTCID50アッセイである。
【0018】
本発明の幾つかの実施態様では、本方法は、洗浄剤の添加後に前記供給流を濾過する工程を更に含む。幾つかの実施態様では、前記供給流は、洗浄剤の添加後、少なくとも約15分から少なくとも約48時間、濾過される。更なる実施態様では、前記供給流は、洗浄剤の添加後、少なくとも約1時間から少なくとも約3時間、濾過される。他の実施態様では、前記供給流は、洗浄剤の添加の約1時間後に濾過される。幾つかの実施態様では、フィルターは限外濾過膜又はデプスフィルターである。
【0019】
本発明の幾つかの実施態様では、前記供給流は、洗浄剤の添加後にクロマトグラフィーに供される。幾つかの実施態様では、クロマトグラフィーは、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、又は混合モードクロマトグラフィーの一又は複数である。幾つかの実施態様では、アフィニティークロマトグラフィーは、プロテインAクロマトグラフィー、プロテインGクロマトグラフィー又はプロテインLクロマトグラフィーである。他の実施態様では、イオン交換クロマトグラフィーはアニオン交換クロマトグラフィー又はカチオン交換クロマトグラフィーである。他の実施態様では、混合モードクロマトグラフィーはCaptoAdhereクロマトグラフィーである。
【0020】
幾つかの態様では、本発明は、治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法であって、前記供給流に環境適合性洗浄剤を加える工程を含み、治療用ポリペプチドが、抗体、イムノアドヘシン、酵素、増殖因子、受容体、ホルモン、調節因子、サイトカイン、Fc融合ポリペプチド、抗原、又は結合剤である方法を提供する。更なる実施態様では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、又は抗体断片である。幾つかの実施態様では、治療用ポリペプチドは哺乳動物細胞中で産生される。幾つかの実施態様では、哺乳動物細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、マウスハイブリドーマ細胞、又はマウス骨髄腫細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は様々な混合方法を使用する洗浄剤なしのMAb1 HCCFコントロールの洗浄剤混合濁度分析を示す;混合なし(菱形)、撹拌子(矩形)及びオーバーヘッド撹拌機(三角)。
【0022】
図2図2は1%ポリソルベート20(左上)、0.3%TnBPを含む1%ポリソルベート20(右上)、1%ポリソルベート80(左下)及び0.3%TnBPを含む1%ポリソルベート80(右下)で処理されたMAb1 HCCFコントロールの洗浄剤混合濁度分析を示す。混合なし(菱形)、撹拌子(矩形)及びオーバーヘッド撹拌機(三角)、重い撹拌子(HCCFコントロール-混合なし)。
【0023】
図3図3は1%SafeCare(左上)、1%Ecosurf EH9(右上)、0.1Mカプリル酸(左下)及び1%デシルポリグルコシド(右下)で処理されたMAb1 HCCFコントロールの洗浄剤混合濁度分析を示す。混合なし(菱形)、撹拌子(矩形)及びオーバーヘッド撹拌機(三角)、重い撹拌子(HCCFコントロール-混合なし)。
【0024】
図4図4は雰囲気温度で一晩洗浄剤と共にインキュベーションしMAbSelect SureプロテインAで精製した後のMAb3のペプチドマッピングを示す。
【0025】
図5図5は40℃で59日までの様々な時点の間、保持された10%トリトンCG-110安定性試料のNMRスペクトルを示す。
【0026】
図6図6は40℃で59日までの様々な時点の間、保持された10%Ecosurf EH-9原液安定性試料のNMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(詳細な説明)
本発明は、環境適合性(環境に優しい)洗浄剤を使用する、治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供する。環境適合性洗浄剤の使用は、治療用ポリペプチドの生成物品質に悪影響を及ぼさない。例えば、環境適合性洗浄剤の使用は、生成物変異体、例えば限定されないが、生成物断片及び凝集体を含むサイズ変異体、酸性及び塩基性変異体を含む電荷変異体、脱アミド変異体、及び糖化変異体の増加をもたらさない。幾つかの態様では、環境適合性洗浄剤の使用は、プロセス不純物、例えばCHOP、核酸、浸出プロテインA、生成物変異体、エンドトキシン、ウイルス汚染、細胞培養培地成分等々の排出能に悪影響を及ぼさない。
【0028】
I.一般的技術
ここに記載され又は参照される技術及び手順は、当業者により一般によく理解され、例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3版 (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel等編, (2003));シリーズMethods in Enzymology(Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames及びG.R. Taylor編(1995)), Harlow 及び Lane編(1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney編 (1987));Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait編 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis編, 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney) 編, 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J.P. Mather 及び P.E. Roberts, 1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths及びD.G. Newell編, 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir 及び C.C. Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller 及び M.P. Calos編, 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis等編, 1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan等編, 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C.A. Janeway 及び P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: A Practical Approach (D. Catty編, IRL Press, 1988-1989);Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd 及び C. Dean編, Oxford University Press, 2000);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow及びD. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti及びJ. D. Capra編, Harwood Academic Publishers, 1995);及びCancer: Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita等編, J.B. Lippincott Company, 1993)に記載されている広く利用されている方法のような一般的な方法を使用して一般に用いられる。
【0029】
II.定義
「洗浄剤」なる用語は、長鎖脂肪族塩基又は酸の塩、あるいは糖などの親水性部分を含み得、親水性性質と疎水性性質の双方を有する薬剤を指す。親水性と疎水性の性質を有するので、洗浄剤は特定の効果を及ぼしうる。ここで使用される場合、洗浄剤は、ウイルスエンベロープを破壊してウイルスを不活性化させる能力を有している。幾つかの例では、洗浄剤は、界面活性剤と一又は複数の他の薬剤、例えばキレート剤及び保存料を含有する組成物であってもよい。
【0030】
「界面活性剤(surfactant)」又は「界面活性薬剤(surface active agent)」は、疎水性基と親水性基の双方を含み、よって有機溶媒と水性溶媒の双方に半可溶性である化合物、有機化合物、典型的には(しかし必ずしもではない)有機化合物である。界面活性剤は非イオン性、カチオン性又はアニオン性でありうる。
【0031】
ここで使用される場合、「環境適合性」物質は、環境に対して最小の有害な影響を生じさせる物質である。例えば、環境適合性物質は本質的には動物及び/又は植物生命に対して非毒性であろう。
【0032】
「予測環境濃度」又は「PEC」は、環境中の受水体中に排出される廃棄材料中のある物質の予測濃度である。例えば、治療用タンパク質の調製におけるウイルス不活性化に対して使用される洗浄剤の予測環境濃度は、環境中に放出される廃棄物流中の洗浄剤の濃度である。
【0033】
「予測無影響濃度」又は「PNEC」は、有害な影響を伴わないで、環境、例えば受水淡水及び/又は海水の生物相へ、放出しても安全である廃棄材料中のある物質の予測濃度である。
【0034】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」なる用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを意味するためにここでは交換可能に使用される。ポリマーは直鎖状又は分岐状であり得、改変されたアミノ酸を含み得、非アミノ酸が介在されうる。該用語はまた天然に修飾されているか、又は介入により、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作又は修飾、例えば標識成分とのコンジュゲーションなどにより修飾されているアミノ酸ポリマーをも包含する。またその定義に含まれるものは、例えば、(例えば非天然アミノ酸等を含む)アミノ酸の一又は複数のアナログ、並びに当該技術分野で知られている他の修飾を含むポリペプチドである。ここで使用される「ポリペプチド」及び「タンパク質」なる用語は、特に抗体を包含する。
【0035】
「単離されたポリペプチド」とは、それが発現された細胞又は細胞培養物から回収されたポリペプチドを意味する。
【0036】
ここで使用される「ポリペプチド電荷変異体」は、ポリペプチドの電荷が変化させられるようにその天然の状態から修飾されているポリペプチドを意味する。幾つかの例では、電荷変異体は親ポリペプチドより酸性である;つまり、親ポリペプチドより低いpIを有する。他の例では、電荷変異体は親ポリペプチドより塩基性である;つまり、親ポリペプチドより高いpIを有する。そのような修飾は操作され得、あるいは酸化、脱アミド、リジン残基のC末端プロセシング、N末端ピログルタミン酸生成、及び糖化のような自然のプロセスの結果でありうる。幾つかの例では、ポリペプチド電荷変異体は、タンパク質に結合したグリカンが、例えばシアル酸又はその誘導体の添加により、糖タンパク質の電荷が親糖タンパク質と比べて変化するように修飾されている糖タンパク質である。ここで使用される「抗体電荷変異体」とは、抗体又はその断片の電荷が変化させられるように抗体又はその断片がその天然状態から修飾されている抗体又はその断片である。
【0037】
ここで交換可能に使用される「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらのアナログ、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、もしくは合成反応によりポリマー中に取り込み可能な任意の基質でありうる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらのアナログを含みうる。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの構築の前又は後になされうる。
【0038】
「単離された核酸」は、その通常の状況から分離され又はその外側の天然には生じない、組換え又は天然に生じる配列を意味しこれを包含する。
【0039】
「精製された」ポリペプチドとは、それがその天然の環境中に存在するよりも、及び/又は研究室の条件下で最初に製造され及び/又は合成され及び/又は増幅されたときよりも純粋な形態で存在するように、ポリペプチドの純度が増加させられていることを意味する。純度は相対的な用語であり、必ずしも絶対的な純度を意味しない。
【0040】
「生成物供給流」あるいは「供給流」は、対象の治療用ポリペプチドを含み、様々な不純物もまた含みうるプロセス精製法のために提供される物質又は溶液である。非限定的な例は、例えば、一又は複数の精製プロセス工程の後の、対象の治療用ポリペプチドを含んでいる回収細胞培養流体(HCCF)、又は回収されたプールを含みうる。
【0041】
「抗体(antibody又はantibodies)」なる用語は、最も広義に使用され、特に、例えば単一モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、及び中和抗体を含む)、多エピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、イムノアドヘシン、及びそれらが所望の生物学的又は免疫学的活性を示す限り抗体の断片を特にカバーする。「免疫グロブリン」(Ig)なる用語はここでの抗体と交換可能に使用される。
【0042】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般には、その抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')2、及びFv断片;単鎖抗体分子;ダイアボディ;線状抗体;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。
【0043】
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる天然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対してのものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対してのものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体で汚染されないで合成されうる点で有利である。「モノクローナル」との修飾語句は、抗体を何か特定の方法で生産することを必要としていると解されるべきではない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって調製され得、あるいは組換えDNA法を使用して細菌、真核動物又は植物細胞において作製されうる(例えば米国特許第4816567号を参照)。「モノクローナル抗体」はまた例えばClackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載された技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0044】
ここでのモノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同性があり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体、あるいは他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同である「キメラ」抗体、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りこのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。ここで対象のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、類人猿等)から由来する可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「プリマタイズ(primatized)」抗体を含む。
【0045】
「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含むキメラ抗体である非ヒト(例えば齧歯類)抗体の型である。大部分では、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域由来の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域由来の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含みうる。これらの改変は、抗体の性能を更に洗練させるためになされる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含むであろう。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0046】
「不純物」は所望されるポリペプチド産物とは異なる物質を意味する。不純物には、限定されないが、宿主細胞物質、例えばCHOP;浸出プロテインA;核酸;所望されるポリペプチドの変異体、サイズ変異体、断片、凝集体又は誘導体;他のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス汚染物;細胞培地成分等々が含まれる。
【0047】
「限外濾過」は、静水圧が液体を半透膜に押し付ける膜濾過の一形態である。懸濁固形物と高分子量の溶質が保持される一方、水と低分子量溶質が膜を通過する。幾つかの例では、限外濾過膜は1から100nmの範囲の細孔径を有している。「限外濾過膜」及び「限外濾過フィルター」なる用語は交換可能に使用されうる。
【0048】
「ウイルス保持フィルター」、「ウイルスフィルター」、「ウイルス膜」、又は「ウイルス保持膜」は、ウイルス粒子を含んでいる水溶液からのウイルスのサイズベースの除去に対して使用される限外濾過フィルター/膜の一タイプである。特に、ウイルス保持膜は、所望のポリペプチド産物の通過をなお可能にしながら、ウイルスを保持するのに十分な細孔径を有している。
【0049】
ここで使用される場合、「ファウリング(fouling)」なる用語は、プロセス装置の表面上での望まれない物質の蓄積と形成を意味する。ファウリングは、化学、溶解、腐食及び生物学的過程がまた生じる、複合の非定常の運動量、物質及び熱移動問題として特徴付けることができる。ファウリングは、沈殿、つまりリン酸カルシウム沈殿による場合がある。
【0050】
ここで使用される場合、「外来性作用因子」はウイルス及び(滅菌グレードフィルターを通過可能な細菌を含む)細菌を包含する。「感染病原体」は外来性作用因子の一タイプである。
【0051】
ここに記載される発明の態様及び実施態様は、態様及び実施態様を「含む」、「からなる」、「から本質的になる」を含む。
【0052】
ここで使用される場合、明らかな別の記載がない限り、「a」、「an」等の使用は一又は複数を意味する。
【0053】
ここでの値又はパラメータについての「約」という記載は、その値又はパラメータ自体に関する実施態様を含む(また記述する)。例えば、「約X」との記載は「X」の記載を含む。数値範囲は、その範囲を定める数を包含する。
【0054】
III.本発明の方法
本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供する。環境適合性洗浄剤の使用は、供給流中のウイルス汚染を効果的に不活性化しながら、治療用ポリペプチドの生成物品質に悪影響を及ぼさない。例えば、環境適合性洗浄剤の使用は、生成物変異体、例えば限定されないが、生成物断片及び凝集体を含むサイズ変異体、酸性及び塩基性変異体を含む電荷変異体、脱アミド変異体、及び糖化変異体の増加をもたらさない。
【0055】
典型的には、治療用ポリペプチドの製造プロセスは、宿主細胞中でのポリペプチドの発現を含む。幾つかの例では、宿主細胞は溶解されてポリペプチドを放出する。他の例では、ポリペプチドは培地中に分泌される。所望のポリペプチドを含む回収細胞培養流体が清澄化され、一又は複数のクロマトグラフィーに供せられて、所望のポリペプチドが不純物から精製されうる。クロマトグラフィーは、所望される産物がクロマトグラフィーを通って流れ、不純物がクロマトグラフィーによって保持されるフロースルークロマトグラフィー、及び/又は所望の産物がクロマトグラフィーによって保持され、不純物がクロマトグラフィーを通って流れる結合溶出クロマトグラフィーを含みうる。プロセスのある点において、供給流が濾過されてウイルスが除去されうる。供給流は、所望のポリペプチドに濃縮し、所望のポリペプチドを薬学的製剤に製剤化するために限外濾過及び/又はダイアフィルトレーション工程を受けうる。本発明の環境適合性洗浄剤を使用するウイルス不活性化方法は、製造プロセス中の任意の工程で実施されうる。本発明の幾つかの実施態様では、ウイルスは、HCCFに環境適合性洗浄剤を加えることによって不活性化される。本発明の他の方法では、ウイルスは、捕捉プール又は回収生成物プールに環境適合性洗浄剤を加えることによって不活性化される。捕捉プール及び/又は回収生成物プールは、クロマトグラフィー、遠心分離、濾過等々のような、生成物の精製の分離工程における所望の生成物を含む供給流の分配である。本発明の他の方法では、ウイルスは、供給流をウイルス濾過工程に供する前に生成物供給流に環境適合性洗浄剤を供することによって不活性化される。本発明の他の方法では、ウイルスは、供給流をウイルス濾過工程に供した後に生成物供給流に環境適合性洗浄剤を供することによって不活性化される。
【0056】
本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、ウイルス汚染が効果的に不活性化されながら、治療用ポリペプチドの生成物品質がプロセス中において維持される。本発明の幾つかの実施態様では、供給流中のウイルスを不活性化させるための環境適合性洗浄剤を用いた治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける供給流の処理が、製造プロセスにおける生成物供給流中の全タンパク質の内の生成物変異体の量を、例えば洗浄剤なしの又はトリトンX-100を用いた製造プロセスと比べて、増加させない。幾つかの実施態様では、生成物変異体は、サイズ変異体、電荷変異体、酸化変異体、脱アミド変異体、糖化変異体又はグリカンプロファイルが変化した変異体の何れか一又は複数である。本発明の幾つかの実施態様では、生成物変異体はサイズ変異体である。サイズ変異体は、例えば生成物の分解の結果として、生成物が所望される生成物よりも小さい変異体を含む。他の例では、サイズ変異体は、例えば所望される生成物の凝集の結果として、所望される生成物よりも大きい。幾つかの実施態様では、生成物凝集は、供給流中での二以上の生成物ポリペプチドの凝集である。幾つかの実施態様では、生成物凝集は、供給流中での他のポリペプチドとの生成物ポリペプチドの凝集である。当業者はサイズ変異体の生成を直ぐに測定することができる。例えば、供給流中での生成物ポリペプチドのサイズ変異体の存在は、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、又はポリペプチドのサイズが直ぐに決定される他の方法によって、決定されうる。本発明の幾つかの実施態様では、供給流中のウイルスを不活性化させるための環境適合性洗浄剤を用いた治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける供給流の処理は、例えば洗浄剤なしの又はトリトンX-100を用いた製造プロセスと比べて、生成物供給流中の全タンパク質の内の生成物サイズ変異体の約5%を越える変化を生じる。幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤は、環境適合性洗浄剤を用いない、例えば洗浄剤なし又はトリトンX-100の、製造プロセスと比較して、生成物供給流中の全タンパク質の内の生成物サイズ変異体のおよそ10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%の何れか未満の増加を生じる。
【0057】
本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、ウイルス汚染が効果的に不活性化されながら、治療用ポリペプチドの生成物品質がプロセス中において維持される。本発明の幾つかの実施態様では、供給流中のウイルスを不活性化させるための環境適合性洗浄剤を用いた治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける供給流の処理が、製造プロセスにおける生成物変異体の量を、例えば洗浄剤なしの又はトリトンX-100を用いた製造プロセスと比べて、増加させない。幾つかの実施態様では、変異体は荷電変異体である。ポリペプチドの荷電変異体は、ポリペプチドの酸性変異体と親ポリペプチドの塩基性変異体を含みうる。酸性変異体、すなわち親ポリペプチドのpIよりも少ないpIを持つ変異体の例には、限定されないが、一又は複数のグルタミン及び/又はアスパラギン残基が脱アミドされているポリペプチドが含まれる。塩基性ポリペプチド変異体、すなわち親ポリペプチドのpIよりも大きいpIを持つ変異体の例には、限定されないが、アスパラギン酸残基がスクシンイミド部分への修飾を受けている変異体が含まれる。電荷変異体についてポリペプチドを分析する方法は当該分野で知られており、例えばpH媒介イオン交換クロマトグラフィー又は電荷不均一性のための等電点電気泳動(例えばicIEF)による。幾つかの例では、生成物治療用ポリペプチドは、治療用ポリペプチドの電荷変異体の分析前で洗浄剤の添加後に一又は複数のクロマトグラフィーに供される。例えば、抗体は、洗浄剤処理の後で電荷変異体分析(例えばpH媒介イオン交換クロマトグラフィー)の前にプロテインAクロマトグラフィーのようなアフィニティクロマトグラフィーに供せられうる。本発明の幾つかの実施態様では、供給流中のウイルスを不活性化させるための環境適合性洗浄剤を用いた治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける供給流の処理が、例えば洗浄剤なしの又はトリトンX-100を用いた製造プロセスと比べて、生成物供給流中の全タンパク質の内の生成物変異体の約5%を越える変化を生じる。幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤は、環境適合性洗浄剤を用いない、例えば洗浄剤なし又はトリトンX-100の、製造プロセスと比較して、生成物供給流中の全タンパク質の内の生成物変異体のおよそ10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%の何れか未満の増加を生じる。
【0058】
本発明の幾つかの実施態様では、変異体は脱アミド変異体である。上で検討されたように、脱アミド変異体は、一又は複数のグルタミン及び/又はアスパラギン残基が脱アミドされているポリペプチドを含む。幾つかの実施態様では、生成物ポリペプチドの脱アミドはポリペプチドの電荷の変化を生じさせる。脱アミド変異体についてポリペプチドを分析する方法は当該分野で知られており、例えばpH媒介イオン交換クロマトグラフィー又は等電点電気泳動による。幾つかの例では、生成物治療用ポリペプチドは、治療用ポリペプチドの脱アミド変異体の分析前で洗浄剤の添加後に一又は複数のクロマトグラフィーに供される。例えば、抗体は、洗浄剤処理の後で脱アミド変異体分析(例えばpH媒介イオン交換クロマトグラフィー又は等電点電気泳動)の前にプロテインAクロマトグラフィーのようなアフィニティクロマトグラフィーに供せられうる。本発明の幾つかの実施態様では、供給流中のウイルスを不活性化させるための環境適合性洗浄剤を用いた治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける供給流の処理が、例えば洗浄剤なしの又はトリトンX-100を用いた製造プロセスと比べて、生成物供給流中の全タンパク質の内の生成物脱アミド変異体の約5%を越える変化を生じる。幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤は、環境適合性洗浄剤を用いない、例えば洗浄剤なし又はトリトンX-100の、製造プロセスと比較して、生成物供給流中の全タンパク質の内の生成物脱アミド変異体のおよそ10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%の何れか未満の増加を生じる。
【0059】
本発明の幾つかの実施態様では、変異体は酸化変異体である。酸化変異体は、一又は複数の酸素反応性アミノ酸残基、例えばメチオニン、システイン及びチロシンが酸化されているポリペプチドを含む。幾つかの実施態様では、生成物ポリペプチドの酸化はポリペプチドの電荷の変化を生じさせる。酸化された変異体についてポリペプチドを分析する方法は当該分野で知られている。例えば、与えられたポリペプチドの酸化のレベルはLC-質量分析によって決定されうる。幾つかの例では、生成物治療用ポリペプチドは、治療用ポリペプチドの酸化変異体の分析前で洗浄剤の添加後に一又は複数のクロマトグラフィーに供される。例えば、抗体は、洗浄剤処理の後で酸化変異体分析の前にプロテインAクロマトグラフィーのようなアフィニティクロマトグラフィーに供せられうる。本発明の幾つかの実施態様では、供給流中のウイルスを不活性化させるための環境適合性洗浄剤を用いた治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける供給流の処理は、例えば洗浄剤なしの又はトリトンX-100を用いた製造プロセスと比べて、生成物供給流中の全タンパク質の内の生成物酸化変異体の約5%を越える変化を生じる。幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤は、環境適合性洗浄剤を用いない、例えば洗浄剤なし又はトリトンX-100の、製造プロセスと比較して、生成物供給流中の全タンパク質の内の生成物酸化変異体のおよそ10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%の何れか未満の増加を生じる。
【0060】
本発明の幾つかの実施態様では、供給流中のウイルスを不活性化させるための環境適合性洗浄剤を用いた治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける供給流の処理が、例えば洗浄剤なしの又はトリトンX-100を用いた製造プロセスと比べて、治療用ポリペプチド生成物の糖化を変化させない。糖化は、様々なタイプの共有結合付加体の形成、例えばグルコースリッチ培養培地での製造中あるいは還元糖が製剤中に存在しているならば貯蔵中においてグルコース又はラクトースがリジン残基の第一級アミンと反応しうる糖化により、酸性変異体を生成させる機構である(Lyubarskay Y等, (2006) Anal Biochem.348:24-39; Huang L等, (2005) Anal Chem. 77:1432-1439)。糖化物質の特徴付けは、ペプチドマッピング解析、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)及びタンデム質量分析(MS/MS)シーケンシング技術によって実施されうる。幾つかの例では、生成物治療用ポリペプチドは、糖化物質の特徴付け前で洗浄剤の添加後に一又は複数のクロマトグラフィーに供される。例えば、糖化抗体は、洗浄剤処理の後で糖化分析(例えばLC-MS又はMS/MS)の前にプロテインAクロマトグラフィーのようなアフィニティクロマトグラフィーに供せられうる。幾つかの実施態様では、治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスの不活性化のための環境適合性洗浄剤の使用は、治療用ポリペプチドの糖化を変化させない。幾つかの実施態様では、親ポリペプチドの糖化は、トリトンX-100を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスと比較して、又は洗浄剤を使用しない治療用ポリペプチドの製造プロセスと比較して、約5%を越えて変わらない。幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤は、環境適合性洗浄剤を用いない、例えば洗浄剤なし又はトリトンX-100の、製造プロセスと比較して、生成物糖化のおよそ10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%の何れか未満の変化を生じる。
【0061】
本発明の幾つかの実施態様では、供給流中のウイルスを不活性化させるための環境適合性洗浄剤を用いた治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける供給流の処理が、例えば洗浄剤なしの又はトリトンX-100を用いた製造プロセスと比べて、治療用ポリペプチド生成物の糖化パターンに変化を生じさせない。本発明の幾つかの実施態様では、生成物変異体は糖化変異体である。糖化は、一又は複数の単糖単位がポリペプチドに結合している頻繁に観察される翻訳後修飾である。グリカンの3つの主要なタイプはN結合、O結合及びグリコシルホスファチジルイノシトールである。グリコシル化治療用ポリペプチドの例は、単一の保存されたN結合グリコシル化部位がFc鎖のAsn-297に見出されるモノクローナル抗体を含む。この部位におけるグリカン構造は補体活性化及び受容体親和性においてある役割を担っている。本発明の幾つかの実施態様では、治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスの不活性化のための環境適合性洗浄剤の使用は治療用ポリペプチドの糖化パターンを変えない。例えば、抗体のようなポリペプチドのグリコシル化パターンを決定する方法は当該分野で知られている;例えばワールドワイドウェブchem.agilent.com/Library/applications/5990-9774EN.pdf.を参照のこと。幾つかの例では、生成物治療用ポリペプチドは、治療用ポリペプチドの糖化パターンの特徴付け前で洗浄剤の添加後に一又は複数のクロマトグラフィーに供される。例えば、糖化抗体は、洗浄剤処理の後で糖化分析(例えばLC-MS又はMS/MS)の前にプロテインAクロマトグラフィーのようなアフィニティクロマトグラフィーに供せられうる。幾つかの実施態様では、治療用ポリペプチド(例えば抗体)の糖化は、トリトンX-100を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスと比較して、又は洗浄剤を使用しない治療用ポリペプチドの製造プロセスと比較して、約5%を越えて変わらない。幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤は、環境適合性洗浄剤を用いない、例えば洗浄剤なし又はトリトンX-100の、製造プロセスと比較して、生成物糖化パターンのおよそ10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%の何れか未満の変化を生じる。
【0062】
本発明の幾つかの実施態様では、供給流中のウイルスを不活性化させるための環境適合性洗浄剤を用いた治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける供給流の処理が、製造プロセス中の生成物収率を低減させない。例えば、環境適合性洗浄剤を用いた供給流の処理が、ウイルス不活性化のためにトリトンX-100を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセス又は洗浄剤を使用しない治療用ポリペプチドの製造プロセスと比較して、製造プロセス中における治療用ポリペプチドの生成物収率を低減させない。幾つかの実施態様では、治療用ポリペプチド(例えば抗体)の生成物収率は、トリトンX-100を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスと比較して、又は洗浄剤を使用しない治療用ポリペプチドの製造プロセスと比較して、約5%を越えて低減されない。幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤は、環境適合性洗浄剤を用いない、例えば洗浄剤なし又はトリトンX-100の、製造プロセスと比較して、生成物収率のおよそ10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%の何れか未満の低減を生じる。
【0063】
本発明の幾つかの実施態様では、供給流中のウイルスを不活性化させるための環境適合性洗浄剤を用いた治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける供給流の処理が、製造プロセス中のプロセス不純物の排出能(クリアランス)を変化させない。例えば、環境適合性洗浄剤を用いた供給流の処理が、ウイルス不活性化のためにトリトンX-100を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセス又は洗浄剤を使用しない治療用ポリペプチドの製造プロセスと比較して、製造プロセス中における不純物の排出能を変化させない。幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤の使用は、クロマトグラフィー工程、濾過工程、濃縮工程等々のような製造プロセス中の特定の工程におけるプロセス不純物の排出能を変化させない。幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤の使用は治療用ポリペプチドの製造プロセスにおけるプロセス不純物全体の排出能を変化させない。プロセス不純物には、CHOP、核酸、浸出プロテインA、所望されるポリペプチド以外のポリペプチド、エンドトキシン、ウイルス汚染物、細胞培地成分、及び所望のポリペプチドの変異体、断片、凝集体又は誘導体が含まれる。
【0064】
幾つかの実施態様では、本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、洗浄剤は供給流に約0.01%から約10%の最終濃度まで添加される。幾つかの実施態様では、洗浄剤は供給流に約0.3%から約1%の最終濃度まで添加される。幾つかの実施態様では、洗浄剤は供給流に約0.3%の最終濃度まで添加される。幾つかの実施態様では、洗浄剤は供給流に約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、03%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%より多い最終濃度まで添加される。幾つかの実施態様では、治療用ポリペプチドの生成物品質が維持される。幾つかの実施態様では、ウイルス汚染物が環境適合性洗浄剤によって効果的に不活性化される。
【0065】
幾つかの実施態様では、本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、供給流は約1分から約48時間の間、洗浄剤にさらされる。幾つかの実施態様では、供給流は約15分から約3時間の間、洗浄剤にさらされる。幾つかの実施態様では、洗浄剤は約0.3%から約1%の最終濃度まで供給流に添加される。幾つかの実施態様では、供給流は約1時間の間、洗浄剤にさらされる。幾つかの実施態様では、供給流は、約1分、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、又は48時間の何れかを越える間、洗浄剤にさらされる。幾つかの実施態様では、供給流は、約1分と5分、5分と15分、15分と30分、30分と45分、45分と1時間、1時間と2時間、2時間と3時間、3時間と4時間、4時間と5時間、5時間と6時間、6時間と9時間、9時間と12時間、12時間と16時間、16時間と20時間、20時間と24時間、24時間と30時間、30時間と36時間、36時間と42時間、又は42時間と48時間の何れかの間、洗浄剤にさらされる。幾つかの実施態様では、治療用ポリペプチドの生成物品質が維持される。幾つかの実施態様では、ウイルス汚染物が環境適合性洗浄剤によって効果的に不活性化される。
【0066】
幾つかの実施態様では、本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、供給流は約4℃から約30℃で洗浄剤にさらされる。幾つかの実施態様では、供給流は約10℃から約25℃で洗浄剤にさらされる。幾つかの実施態様では、供給流は、約15℃から約20℃で洗浄剤にさらされる。幾つかの実施態様では、供給流は、約20℃で洗浄剤にさらされる。幾つかの実施態様では、供給流はおよそ雰囲気温度で洗浄剤にさらされる。幾つかの実施態様では、供給流は、約4℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、又は30℃で洗浄剤にさらされる。幾つかの実施態様では、治療用ポリペプチドの生成物品質が維持される。幾つかの実施態様では、ウイルス汚染物が環境適合性洗浄剤によって効果的に不活性化される。
【0067】
幾つかの実施態様では、本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、環境適合性洗浄剤を含む供給流は低濁度のものである。幾つかの実施態様では、本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、洗浄剤の添加は、例えば洗浄剤なしの製造プロセス又はトリトンX-100がウイルスを不活性化させるために使用される製造プロセスと比較して、供給流の濁度に影響を及ぼさない。供給流の濁度を決定する方法は、当該分野において知られており、例えば、1-cm路長キュベットを備えたHP分光計を使用する。濁度は340-360nmの平均吸光度として計算される。幾つかの実施態様では、供給流の濁度は、トリトンX-100を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスと比較して、又は洗浄剤を使用しない治療用ポリペプチドの製造プロセスと比較して約5%を越えて増加されない。幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤は、環境適合性洗浄剤なし、例えば洗浄剤なし又はトリトンX-100の製造プロセスと比較して供給流の濁度の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.1%未満の増加を生じる。
【0068】
幾つかの実施態様では、本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、供給流は回収細胞培養流体である。幾つかの実施態様では、供給流は捕捉プール又は回収生成物プールを含む。幾つかの実施態様では、アフィニティクロマトグラフィープールである。幾つかの実施態様では、捕捉プール又は回収生成物プールはプロテインAプール、プロテインGプール又はプロテインLプールである。幾つかの実施態様では、捕捉プール又は回収生成物プールは混合モードクロマトグラフィープールである。幾つかの実施態様では、捕捉プールはCaptoAdhereプールである。
【0069】
幾つかの実施態様では、本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、供給流が環境適合性洗浄剤の添加後に濾過される。幾つかの実施態様では、供給流は洗浄剤の添加の少なくとも約15分から少なくとも約48時間後に濾過される。幾つかの実施態様では、供給流は洗浄剤の添加の少なくとも約1時間から少なくとも約3時間後に濾過される。幾つかの実施態様では、供給流は洗浄剤の添加の約1時間後に濾過される。幾つかの実施態様では、供給流は洗浄剤の添加の約15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間,又は48時間の何れか後に濾過される。幾つかの実施態様では、フィルターは、限外濾過膜又はデプスフィルターである。
【0070】
幾つかの実施態様では、本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、供給流は、洗浄剤の添加後にクロマトグラフィーに供される。幾つかの実施態様では、クロマトグラフィーは、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、カチオン交換及び/又はアニオン交換)、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、又は混合モードクロマトグラフィーの一又は複数である。アフィニティクロマトグラフィー材料の例は、限定されないが、プロテインA又はプロテインGで誘導体化されたクロマトグラフィー材料を含む。アフィニティクロマトグラフィー材料の例は、限定されないが、Prosep-VA、Prosep-VAウルトラ・プラス、プロテインAセファロースファストフロー、TyopearlプロテインA、MAbSelect、MAbSelect SuRe及びMAbSelect SuRe LXを含む。上記の幾つかの実施態様では、アフィニティクロマトグラフィー材料はアフィニティクロマトグラフィーカラムである。上記の幾つかの実施態様では、アフィニティクロマトグラフィー材料はアフィニティクロマトグラフィー膜である。アニオン交換クロマトグラフィー材料の例は、限定されないが、Poros HQ50、Poros PI50、Poros D、Mustang Q、QセファロースFF、及びDEAEセファロースを含む。カチオン交換材料の例は、限定されないが、Mustang S、Sartobind S、SO3モノリス、SセラミックハイパーD、Poros XS、Poros HS50、Poros HS20、SPSFF、SP-セファロースXL(SPXL)、CMセファロースファストフロー、Capto S、Fractogel Se HiCap、Fractogel SO3、又はFractogel COOを含む。HICクロマトグラフィー材料の例は、限定されないが、Toyopearlヘキシル650、Toyopearブチル650、Toyopearlフェニル650、Toyopearlエーテル650、Source、Resource、セファロースHi-Trap、オクチルセファロース、フェニルセファロースを含む。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー材料の例は、限定されないが、HA Ultrogel、及びCHTヒドロキシアパタイトを含む。混合モードクロマトグラフィー材料の例は、限定されないが、Capto Adhere、QMA、MEP Hypercel、HEA Hypercel、PPA Hypercel、Capto MMCを含む。
【0071】
環境適合性洗浄剤
本発明は、環境適合性(環境に優しい)洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供する。環境適合性洗浄剤の使用は、治療用ポリペプチドの生成物品質に悪影響を与えない。幾つかの実施態様では、洗浄剤は非イオン性洗浄剤又は双性イオン洗浄剤である。
【0072】
幾つかの実施態様では、洗浄剤は、約12から約15の親水性・親油性バランス(HLB)を有する。幾つかの実施態様では、HLBは、約12から約14、約12から約13、約13から約14、約14から約15、約12、約13、約14、又は約15の何れか一つである。
【0073】
幾つかの実施態様では、本発明は、消泡剤と組み合わせて環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供する。消泡剤は当該分野で知られている。幾つかの実施態様では、消泡剤はシメチコンである。
【0074】
本発明の幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤はアルキルグルコシドである。更なる実施態様では、アルキルグルコシドはデシルグルコシドである。他の実施態様では、環境適合性洗浄剤はアルコールエトキシレートである。更に他の実施態様では、環境適合性洗浄剤はアルキルポリエチレングリコールエーテルである。
【0075】
幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、環境適合性洗浄剤は、ツイーン20(CAS9005-64-5のCAS登録番号)、ツイーン80(CAS登録番号9005-65-6)、TBP(CAS登録番号126-43-8)、デシルポリグルコシド(CAS登録番号68515-73-1)、デシルβ-Dグルコピラノシド(CAS登録番号58846-77-8)、n-デシルβ-Dグルコピラノシド(CAS登録番号59122-55-3)、ラウリルグルコシド(CAS登録番号110615-47-9)、n-オクチルβ-Dグルコピラノシド(CAS登録番号29836-26-8)、EcoSurf EH-6(CAS登録番号64366-70-7)、EcoSurf EH-9(CAS登録番号64366-70-7)、EcoSurf SA-7又はEcoSurf SA-9(CAS登録番号68937-66-6,CAS登録番号69227-22-1,CAS登録番号25322-68-3)、Natsurf265(CAS登録番号27252-75-1)、Lubrizol(CAS登録番号4292-10-8)、APG325N(CAS登録番号132778-08-6)、Mackol DG(CAS登録番号110615-47-9)、トリトンCG110(CAS登録番号68515-73-1)、又はTomodol900(CAS登録番号68439-46-3)である。
【0076】
洗浄剤が本発明の製造プロセスの条件下で環境適合性であるかどうかを決定する方法は当該分野で知られている。例えば、経済協力開発機構は化学品安全性の試験のためのガイドラインを提供している。これらのガイドラインは、例えばワールドワイドウェブoecd.org/chemicalsafety/testing/oecdguidelinesforthetestingofchemicals.htmに見出すことができる。これらガイドラインの例を以下に概説する。
【0077】
オオミジンコ(ダフニア・マグナ)繁殖試験-OECD211
該試験の第一目的は、オオミジンコの繁殖量に対する化学品の影響を評価することである。この目的のため、試験開始時に24時間未満の齢の雌ミジンコ(親動物)が、ある範囲の濃度で水に加えられた試験物質に曝される。試験期間は21日である。試験の終わりに、生産された生存子孫の総数が評価される。親動物の繁殖量は、他の形(例えば、第一日目の子孫から1日1動物当たりに生産される生存子孫の数)で表すことができるが、これらは、試験の終わりに生産された生存子孫の総数に加えて報告されるべきである。他のOECD無脊椎動物繁殖試験ガイドラインと比較して半止水式試験の特定の設計のため、各個々の親動物によって生産された生存子孫の数を数えることも可能である。これは、他のOECD無脊椎動物繁殖試験とは異なり、親動物が試験期間中に偶然に及び/又は不注意に死亡したならば、その子孫の生産をデータ評価から除外することができるようにする。よって、親の死亡率が暴露された複製において生じるならば、死亡率が濃度-応答パターンに従うかどうか、例えば正の傾きを持つ応答対試験物質濃度の有意な回帰があるかどうかが考慮されるべきである(コクラン・アーミテッジ傾向検定のような統計検定をこのために使用することができる)。死亡率が濃度-応答パターンに従わないならば、親の死亡率を持つ複製は試験結果の解析から除外されるべきである。死亡率が濃度-応答パターンに従うならば、親の死亡率が試験物質の作用として割り当てられるべきであり、複製は解析から除外されるべきではない。親動物が試験中に死んだならば、つまり取り扱いミス又は事故で偶然に、あるいは試験物質の作用に関係しない原因不明の出来事のため不注意に死に又は雄になったならば、複製は解析から除外される。繁殖量に対する試験物質の毒性作用は、それぞれ繁殖量にx%の減少を生じさせるであろう濃度を推定する非線形回帰によってデータを適切なモデルにフィットさせることによってECxとして、又は代わりにNOEC/LOEC値(OECD 2006, Environmental Health and Safety Publications, Series on Testing and Assessment Number 54. OECD, Paris)として表される。試験濃度は好ましくは使用された作用濃度の最低値をブラケット化すべきであり(例えばEC10)、これはこの値が外挿ではなく内挿によって計算されていることを意味する。
【0078】
淡水藻類及び藍藻類生長阻害試験-OECD201
この試験の目的は、淡水微細藻類及び/又は藍藻類の生長に対する物質の影響を決定することである。対数増殖期試験生物が通常は72時間の期間にわたって試験物質にさらされる。比較的短い試験期間にもかかわらず、数世代にわたる影響を評価することができる。
【0079】
システム応答は様々な濃度の試験物質に暴露された一連の藻類培養物(試験単位)における生長の減少である。応答は、同型の暴露されていないコントロール培養物の平均生長と比較された暴露濃度の関数として評価される。毒性作用に対するシステム応答の完全な発現(最適感度)のために、比生長速度の減少を測定するのに十分な期間、栄養十分の条件と連続光の下で非制限的な対数増殖が培養物に許容される。
【0080】
生長と生長阻害が時間の関数として藻類生物量の測定結果から定量される。藻類生物量は体積当たりの乾燥重量、例えばmg藻類/リットル試験液として定義される。しかしながら、乾燥重量は測定が難しく、よってサロゲートパラメーターが使用される。これらのサロゲートのうち、細胞数がほとんどの場合使用される。他のサロゲートパラメーターは、細胞溶液、蛍光、光学密度等々を含む。測定されたサロゲートパラメーターと生物量の間の換算係数は知られているはずである。
【0081】
試験エンドポイントは、暴露期間中の生物量の対数増加(平均比生長速度)として表される生長の阻害である。一連の試験液において記録された平均比生長速度から、生長速度の特定のx%阻害(例えば50%)をもたらす濃度が決定され、E(例えば、E50)と表される。
【0082】
このガイドラインにおいて使用された更なる応答変数は収量であり、これは、幾つかの国で特定の規制上の要件を満たすために必要とされる場合がある。それは、暴露期間の終わりの生物量マイナス暴露期間の開始時の生物量として定義される。一連の試験液において記録された収量から、収量の特定のx%阻害(例えば、50%)をもたらす濃度が計算され、EyCx(例えば、EyC50)と表される。
【0083】
また、最小観察作用濃度(LOEC)と無観察作用濃度(NOEC)が統計的に決定されうる。
【0084】
ミジンコ急性遊泳阻害試験-OECD202
試験開始時に24時間未満の齢の幼ミジンコを、48時間の期間、ある範囲の濃度の試験物質に暴露する。遊泳阻害(固定化)を24時間目と48時間目に記録し、コントロール値と比較する。48時間目のEC50を計算するために結果を分析する。24時間目におけるEC50の決定は任意である。
【0085】
魚類急性毒性試験-OECD203
魚類を好ましくは96時間の間、試験物質に暴露する。死亡数を24、48、72及び96時間で記録する。
【0086】
活性汚泥呼吸阻害試験(炭素及びアンモニウム酸化)-OECD209
合成汚水が給餌された活性汚泥の試料の呼吸数を、3時間の接触時間後に、酸素電極を含む封入セルで測定する。現実的な暴露シナリオを考慮して、より長い接触時間が適している場合もある。試験物質が、例えば加水分解を介して非生物的に、急速に分解するか、あるいは揮発性であり、濃度を十分に維持できない場合、更に短い暴露時間、例えば30分を使用することができる。活性汚泥の各バッチの感受性は暴露の日に適切な参照物質を用いてチェックされるべきである。該試験は、典型的には、試験物質のEC(例えばEC50)及び/又は無影響濃度(NOEC)を決定するために使用される。
【0087】
有機炭素を酸化する微生物による酸素摂取の阻害は、第一期硝化菌によるアンモニウムの亜硝酸への酸化の特異的阻害剤であるN-アリルチオ尿素の非存在下及び存在下での酸素の摂取速度を測定することによって、アンモニウムを酸化する微生物によるものとは別個に表されうる。この場合、酸素摂取の速度の阻害パーセントは、試験物質の存在下での酸素摂取の速度を、特異的阻害剤N-アリルチオ尿素の存在下と非存在下の両方で、試験物質を含まない対応のコントロールの平均酸素摂取速度と比較することによって計算される。
【0088】
非生物的プロセスから生じる任意の酸素摂取は、活性汚泥を除き、試験物質、合成汚水培地及び水の混合物中の割合を決定することによって、検出されうる。
【0089】
易生分解性-OECD301
無機培地中の試験物質の溶液又は懸濁液を暗所又は散光中、好気的条件下で接種し、インキュベートする。接種による試験溶液中のDOCの量は、被験物質による有機炭素の量と比較して可能な限り低く保たれるべきである。化学物質の存在下での細胞の内在性活性は内在性コントロールのそれと正確には一致しないが、接種を伴うが試験物質を伴わない並行したブランクを実行することにより、接種の内因性活性が考慮に入れられる。参照化合物は、手順の操作を確認するために並行して実施される。
【0090】
一般は、分解後にDOC、CO生産及び酸素摂取量のようなパラメーターの決定が続き、生分解の始まりと終わりの特定を可能にするのに十分に頻繁な間隔で、測定がなされる。自動呼吸計を用いると、測定が連続的である。DOCがしばしば別のパラメータに加えて測定されるが、これは、通常、試験の開始時と終了時にのみなされる。特定の化学分析をまた使用して、試験物質の一次分解を評価し、生成された任意の中間物質の濃度を決定することもできる。
【0091】
通常、試験は28日間続く。しかしながら、試験は、28日より前に、すなわち、生分解曲線が少なくとも3回の測定に対してプラトーに達すると直ぐに、終了される場合もある。生分解が開始されたが、28日目までにはプラトーに到達していないことを曲線が示している場合、試験はまた28日を超えて延長される場合があるが、そのような場合、化学物質は易生分解性として分類されないであろう。
【0092】
幾つかの実施態様では、本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、洗浄剤は過酸化物を含まないか又は生成しない。洗浄剤の過酸化物量を決定する方法は当該分野で知られている。例えば、EMDミリポア比色過酸化物試験を使用して、ある洗浄剤の過酸化物レベルを決定することができる。本発明の幾つかの実施態様では、そのある洗浄剤は、洗浄剤中の過酸化物のレベルが約0.5ppm、0.4ppm、0.3ppm、0.2ppm、又は0.1ppmの何れかより少ないならば、過酸化物を含んでいない。
【0093】
幾つかの実施態様では、本発明は、環境適合性洗浄剤を使用する治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法を提供し、洗浄剤はオクチルフェノールを含まないか又は生成しない。オクチルフェノールはトリトンX-100の分解産物でありうる。本発明の幾つかの実施態様では、廃水系に排出されるべき供給流は、0.1μg/L、0.09μg/L、0.08μg/L、0.07μg/L、0.06μg/L、0.05μg/L、0.04μg/L、0.03μg/L、0.02μg/L、及び0.01μg/Lの何れかより少ない濃度でオクチルフェノールを含む。当業者であれば、廃水系に対する洗浄剤の環境影響が、廃水が淡水中に排出されるか海水中に排出されるかで異なりうることを認識しているであろう。例えば、幾つかの実施態様では、廃水系に排出される供給流は、淡水への排出では約0.1μg/L未満で海水への排出では約0.01μg/L未満の濃度でオクチルフェノールを含有する。
【0094】
本発明の幾つかの実施態様では、治療用ポリペプチドの製造プロセスに続く廃棄物流中の洗浄剤の予測環境濃度(PEC)は、環境の受水体中に排出される廃棄材料中の洗浄剤の予測濃度である。本発明の幾つかの実施態様では、予測無影響濃度(PNEC)は、有害な影響を伴わないで、環境、例えば受水淡水及び/又は海水の生物相へ、放出しても安全である廃棄材料中の洗浄剤の予測濃度である。本発明の幾つかの実施態様では、PECはPNECよりも小さい。本発明の幾つかの実施態様では、PECは、PNECより約0.5倍、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、又は100倍の何れか一つ分、大きい。
【0095】
本発明の幾つかの実施態様では、環境適合性洗浄剤は界面活性剤と一又は複数の更なる成分を含有する。幾つかの実施態様では、洗浄剤は界面活性剤と一又は複数のキレート剤及び/又は保存料(防腐剤)を含有する。幾つかの実施態様では、キレート剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0096】
ウイルスの不活性化
本発明は、供給流に環境適合性洗浄剤を加えることを含む生成物供給流中のウイルスの不活性化方法を提供する。該ウイルスはここに詳細に記載される任意のウイルス(例えば、エンベロープウイルス)であり得、供給流はここに詳細に記載される任意の供給流、例えば回収細胞培養流体(HCCF)、捕捉プール、又は回収生成物プールでありうる。供給流中の不活性化されるウイルスは、生成物(例えば、ポリペプチド、細胞、組織)の製造に工業的に関連する任意のウイルスでありうる。工業的に関連するウイルスは、当業者に知られている。工業的に関連するウイルスの非限定的な例には、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、肝炎ウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、又はトガウイルスが含まれる。
本発明の任意の変形例では、ウイルスは、アデノウイルス、アフリカ豚熱病ラインウイルス、アレナウイルス、アルテリウイルス、アストロウイルス、バキュロウイルス、バドナウイルス、バルナウイルス(barnavirus)、ビルナウイルス、ブロモウイルス、ブンヤウイルス、カリシウイルス、カピロウイルス、カルラウイルス、カリモウィルス、サーコウイルス、クロステロウイルス、コモウイルス、コロナウイルス、コトリコウイルス(cotricovirus)、シストウイルス、デルタウイルス、ダイアンソウイルス、エナモウイルス(enamovirus)、フィロウイルス、フラビウイルス、フロウイルス、フセロウイルス、ジェミニウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ホルデイウイルス(hordeivirus)、ヒポウイルス(hypovirus)、イデアオウイルス(ideaovirus)、イノウイルス、イリドウイルス、レビウイルス、リポスリックスウイルス(lipothrixvirus)、ルテオウイルス、マクロモウイルス、マラフィボウイルス(marafivovirus)、ミクロウイルス、マイオウイルス、ネクロウイルス(necrovirus)、ノダウイルス、オルソミクソウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、パーティティウイルス(partitivirus)、パルボウイルス、フィコドナウイルス、ピコルナウイルス、プラマウイルス(plamavirus)、ポドウイルス、ポリドナウイルス、ポテックスウイルス、ポティウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、リジディオウイルス、セクェウイルス(sequevirus)、シホウイルス(siphovirus)、ソベモウイルス、テクティウイルス、テヌイウイルス、テトラウイルス、トバマウイルス(tobamavirus)、トブラウイルス、トガウイルス、トンブスウイルス、トティウイルス、トリコウイルス、ティモウイルス、及びウンブラウイルスからなる群から選択される。変形態様では、本発明は、供給流に環境適合性洗浄剤を加えることを含む供給流中のサブウイルス体(subviral agent)を不活性化する方法を提供する。幾つかの態様では、サブウイルス体は、ウイロイド又はサテライトである。他の変形態様では、本発明は、供給流に環境適合性洗浄剤を加えることを含む供給流中のウイルス様物質を不活性化する方法を提供する
【0097】
供給流中のウイルスの不活性化は当該分野で知られている方法を使用して測定することができる。本発明の幾つかの実施態様では、ウイルス不活性化は対数減少値(LRV)で表される。LRVは、
LRV=log10×(洗浄剤での処理後の供給流中の総ウイルス/洗浄剤での処理前の供給流中の総ウイルス)
として計算された。
【0098】
本発明の幾つかの実施態様では、供給流中の環境適合性洗浄剤のLRVは約1より大きい。本発明の幾つかの実施態様では、供給流中の環境適合性洗浄剤のLRVは約4より大きい。本発明の幾つかの実施態様では、供給流中の環境適合性洗浄剤のLRVは約1、2、3、4、5、6の何れか一よりも大きい。本発明の幾つかの実施態様では、供給流中の環境適合性洗浄剤のLRVは、1と2、1と3、1と4、1と5、1と6、2と3、2と4、2と5、3と4、3と5、3と6、4と5、4と6、あるいは5と6の何れか一の間である。
【0099】
ウイルス活性を測定する方法は当該分野において知られている。例には、限定されないが、TCID50アッセイ(つまり、播種された細胞培養物の50%に病理学的変化を生じる組織培養感染量中央値の決定)及びプラークアッセイが含まれる。他の既知の方法には、例えば、細胞増殖形質転換を生じさせる能力を持つ非プラーク形成ウイルスの生物活性の力価を決定するために使用することができる形質転換アッセイ;又は単層の感染細胞内のウイルス抗原を検出するために抗体染色法の使用に依存する蛍光フォーカスアッセイ;あるいは(プラークアッセイの代替として)単層細胞を感染させないウイルスを含む多くのウイルスの力価を決定するために使用することができるエンドポイント希釈アッセイ;あるいは逆転写酵素又はウイルスプロテアーゼのようなウイルスコード化酵素が測定されるウイルス酵素アッセイが含まれうる。
【0100】
発明のポリペプチド
ここで詳細に説明された製造プロセス及び方法によって製造され、ここで提供される組成物中に存在するポリペプチドは、該ポリペプチドを生産するために使用される宿主細胞に対して同属であり得、又は好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣細胞によって産生されるヒトタンパク質、又は哺乳動物細胞によって産生される酵母ポリペプチドのような、利用されている宿主細胞に対して外因性であり得、これはそれらが異種性、つまり外来性であることを意味する。幾つかの実施態様では、哺乳動物細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、マウスハイブリドーマ細胞、又はマウス骨髄腫細胞である。一変形態様では、ポリペプチドは、宿主細胞によって培地中に直接分泌される哺乳動物ポリペプチド(例えば抗体)である。他の変形態様では、ポリペプチドは、そのポリペプチドをコードする単離核酸を含む細胞の溶解によって培地中に放出される。
【0101】
宿主細胞中で発現できる任意のポリペプチドを本開示に従って産生させることができ、提供される組成物中に存在させうる。ポリペプチドは、宿主細胞に内在性である遺伝子から、又は遺伝子工学によって宿主細胞中に導入されている遺伝子から発現されうる。ポリペプチドは、天然に生じるものであり得、又は別には人の手によって操作され又は選択された配列を有している場合がある。操作されたポリペプチドは、天然に個々に生じる他のポリペプチドセグメントから構築され得、又は天然には生じない一又は複数のセグメントを含みうる。
【0102】
本発明に従って望ましく発現されうるポリペプチドは、しばしば、興味深い生物学的又は化学的活性に基づいて選択されるであろう。例えば、本発明は、任意の薬学的又は商業的に関連ある酵素、受容体、抗体、ホルモン、調節因子、抗原、結合剤、サイトカイン、Fc融合ポリペプチド、抗原、イムノアドヘシン等々を発現させるために用いることができる。
【0103】
様々なポリペプチドが、ここで提供された方法に従って産生され得、ここで提供された組成物中に存在しうる。細菌性ポリペプチドの例は、例えばアルカリホスファターゼ及びβ-ラクタマーゼを含む。哺乳動物ポリペプチドの例は、分子、例えばレニン、ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、フォン・ヴィルブランド因子等の凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;ウロキナーゼ又はヒト尿もしくは組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)等のプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;ヘモポイエチン増殖因子;腫瘍壊死因子-α及びβ;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;レラキシンA鎖;レラキシンB鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β-ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;デオキシリボヌクレアーゼ;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモン又は増殖因子の受容体;インテグリン;プロテインA又はD;リウマチ因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)等の神経栄養因子、又はNGF-β等の神経増殖因子;血小板由来増殖因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の線維芽細胞増殖因子;表皮増殖因子(EGF);TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4又はTGF-β5を含む、TGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子-I及びII(IGF-I及びIGF-II);デス(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、及びCD19等のCDタンパク質;エリスロポイエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えばM-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えばIL-1からIL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩解促進因子;例えばAIDSエンベロープの一部等のウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;抗体;及び上に列挙したポリペプチドの何れかの断片を含む。
【0104】
原料は、一実施態様では抗体である、少なくとも一つのタンパク質を含むであろう。基本的な4鎖抗体ユニットは、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体の糖タンパク質である(IgM抗体は、基本的なヘテロ四量体ユニットとそれに付随するJ鎖と称される付加的なポリペプチドの5つからなり、よって10の抗原結合部位を含む一方、分泌されたIgA抗体は、重合して、J鎖と共に基本的4鎖ユニットの2-5を含む多価集合体を形成することができる)。IgGの場合、4鎖ユニットは一般に約150000ダルトンである。それぞれのL鎖は一つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に結合するが、2つのH鎖はH鎖アイソタイプに応じて一又は複数のジスルフィド結合により互いに結合する。それぞれのH及びL鎖はまた規則的な間隔を持った鎖内ジスルフィド結合を持つ。それぞれのH鎖は、α及びγ鎖の各々に対しては3つの定常ドメイン(CH)が、μ及びεアイソタイプに対しては4つのCHドメインが続く可変ドメイン(VH)をN末端に有する。それぞれのL鎖は、その他端に定常ドメインが続く可変ドメイン(VL)をN末端に有する。VLはVHと整列し、CLは重鎖の第一定常ドメイン(CH1)と整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。VHとVLは共同して対になって、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性に対しては、例えばBasic and Clinical Immunology, 8版, Daniel P. Stites, Abba I. Terr及びTristram G. Parslow(編), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, 71頁及び6章を参照のこと。
【0105】
任意の脊椎動物種由来のL鎖には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。その重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンには異なったクラス又はアイソタイプを割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという免疫グロブリンの5つの主要なクラスがあり、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる重鎖を有する。γ及びαクラスは、CH配列及び機能における比較的小さな差異に基づいてサブクラスに更に分割され、例えば、ヒトは次のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を発現する。
【0106】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、直ぐに結晶化する能力を反映して命名された残留「Fc」断片を産生する。Fab断片は、L鎖全体と、H鎖の可変領域ドメイン(VH)、及び一つの重鎖の第一定常ドメイン(CH1)からなる。各Fab断片は抗原結合性に関して一価である、すなわち単一の抗原-結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab’)2断片が生じ、これは異なった抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fab断片にほぼ対応し、抗原を尚も架橋させることができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に数個の更なる残基を有する点でFab断片と相違する。Fab’-SHは、ここでは定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を持つFab’を意味する。F(ab’)2抗体断片は、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的カップリングもまた知られている。
【0107】
Fc断片はジスルフィドにより一緒に保持されている双方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域中の配列により決定され、その領域は、所定のタイプの細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によって認識される部分でもある。
【0108】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接に非共有結合した一の重鎖と一の軽鎖の可変領域の二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
【0109】
「sFv」又は「scFv」とも略称される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖内に結合したVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはsFVが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994);Antibody Engineering, 2版(C. Borrebaeck編, Oxford University Press, 1995を参照のこと。
【0110】
「ダイアボディ」なる用語は、Vドメインの鎖内対形成ではなく鎖間対形成が達成され、その結果二価の断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片が生じるように、VHとVLドメインとの間に短いリンカー(約5~10残基)を持つsFv断片(前の段落を参照)を構築することにより調製された小さい抗体断片を意味する。二重特異性ダイアボディは2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体であり、2つの抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖に存在する。ダイアボディは、例えば、欧州特許出願公開第404097号;国際公開93/11161号;Hollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により十分に記載されている。
【0111】
非ヒト(例えば齧歯類)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。多くの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRが、ヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも一又は典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525(1986);Riechmann等, Nature 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596(1992).Abs等を参照のこと。
【0112】
ポリペプチドの産生方法
細胞
提供された本方法及び組成物は、動物、酵母又は昆虫細胞を含む、ここに記載の培地中でのポリペプチド(例えば抗体)の増殖及び/又は生産に好適な任意の細胞を用いうる。一態様では、本方法及び組成物の細胞は、細胞培養とポリペプチドの発現に適した任意の哺乳動物細胞又は細胞型である。ここで提供された方法(例えば細胞培養培地中のウイルスを不活性化させる方法)及び組成物は、よって、動物細胞を含む任意の適切な細胞タイプを用いることができる。一態様では、本方法及び組成物は哺乳動物細胞を用いる。本方法及び組成物はまたハイブリドーマ細胞を用いうる。一変形態様では、哺乳動物細胞は、抗体、抗体断片(リガンド結合断片を含む)、及びキメラ抗体のような所望のポリペプチドをコードする外因性単離核酸で形質転換されている非ハイブリドーマ哺乳動物細胞である。一変形態様では、本方法及び組成物は、ヒト網膜芽細胞(PER.C6 (CruCell, Leiden, The Netherlands));SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7,ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK,ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76,ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA,ATCC CCL2);イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL3A,ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2,HB8065);マウス乳腺腫瘍(MMT060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(Hep G2)からなる群から選択される哺乳動物細胞を用いる。特定の変形態様では、本方法及び組成物はCHO細胞を用いる。特定の変形態様では、CHO細胞株の培養とCHO細胞株からのポリペプチド(例えば抗体)の発現が用いられる。ポリペプチド(例えば抗体)は、そのポリペプチドが単離され及び/又は精製されうるここに開示の培地中に分泌され得、あるいはそのポリペプチドは、そのポリペプチドをコードする単離核酸を含む細胞の溶解によりここに開示された培地中に放出されうる。
【0113】
組換え脊髄動物細胞培養における興味あるポリペプチドの合成に適合させるのに適した方法、ベクター、及び宿主細胞は、例えばGething等, Nature, 293:620-625 (1981); Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979); Levinson等;EP117060;及びEP117058に記載されている。ポリペプチドの哺乳動物細胞培養発現のための特に有用なプラスミドはpRK5(EP公開公報番号307247)又はpSVI6B(1991年6月13日公開のPCT公開番号WO91/08291)である。
【0114】
宿主細胞は、発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適するように修飾された栄養培地で培養される。哺乳動物細胞の場合、Graham及びvan der Erb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈殿法か、又はHawley-Nelson, Focus 15:73 (1193)のリポフェクタミンTM(Gibco BRL)法が好ましい。哺乳動物細胞宿主系形質転換の一般的な態様は、Axelの1983年8月16日発行の米国特許第4399216号に記載されている。哺乳動物細胞を形質転換するための様々な技術については、Keown等, Methods in Enzymology (1989), Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)、及びMansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0115】
本方法及び組成物は、細胞培養中でモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの使用も包含する。モノクローナル抗体は、免疫化された動物から免疫細胞(典型的には脾臓細胞又はリンパ節組織からのリンパ球)を回収し、常套的な形、例えば骨髄腫細胞との融合又はエプスタイン-バー(EB)ウィルス形質転換により、細胞を不死化し、所望の抗体を発現するクローンをスクリーニングすることにより、調製される。Kohler及びMilstein, Eur. J. Immunol., 6:511 (1976)によって元々は記載され、Hammerling等, In:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, Elsevier, N.Y., pp. 563-681 (1981)によっても記載されているハイブリドーマ技術が、多くの特異的抗原に対して高レベルのモノクローナル抗体を分泌するハイブリッド細胞株を産生させるために広く適用されている。
【0116】
ポリペプチド
組成物(例えば細胞)及びここで詳細に説明された方法によって生産され、ここで提供された組成物中に存在するポリペプチドは、宿主細胞に対して同属であり得、又は好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣細胞によって産生されるヒトタンパク質、又は哺乳動物細胞によって産生される酵母ポリペプチドのような、利用されている宿主細胞に対して外因性であり得、これはそれらが異種性、つまり外来性であることを意味する。一変形態様では、ポリペプチドは、宿主細胞によって培地中に直接分泌される哺乳動物ポリペプチド(例えば抗体)である。他の変形態様では、ポリペプチドは、そのポリペプチドをコードする単離核酸を含む細胞の溶解によって培地中に放出される。
【0117】
一変形態様では、ポリペプチドは、鎖長がより高レベルの三次及び/又は四次構造をつくるのに十分であるアミノ酸の配列である。一態様では、ポリペプチドは少なくとも約5-20kD、あるいは少なくとも約15-20kD、好ましくは少なくとも約20kDの分子量を有するであろう。
【0118】
宿主細胞中で発現できる任意のポリペプチドを本開示に従って産生させることができ、提供される組成物中に存在させうる。ポリペプチドは、宿主細胞に内在性である遺伝子から、又は遺伝子工学によって宿主細胞中に導入されている遺伝子から発現されうる。ポリペプチドは、天然に生じるものであり得、又は別には人の手によって操作され又は選択された配列を有している場合がある。操作されたポリペプチドは、天然に個々に生じる他のポリペプチドセグメントから構築され得、又は天然には生じない一又は複数のセグメントを含みうる。
【0119】
本発明に従って望ましく発現されうるポリペプチドは、しばしば、興味深い生物学的又は化学的活性に基づいて選択されるであろう。本発明のポリペプチドの例は上述した。
【0120】
例えば、本発明は、任意の薬学的又は商業的に関連ある酵素、受容体、抗体、ホルモン、調節因子、抗原、結合剤等々を発現させるために用いることができる。
【0121】
細胞増殖及びポリペプチド産生
一般に、細胞は、細胞増殖、維持及び/又はポリペプチド産生の何れかを促進する一又は複数の条件下でここに記載の細胞培養培地の何れかと組み合わされる(接触させられる)。細胞を増殖させポリペプチドを産生させる方法は、細胞と細胞培養培地を収容する培養容器(バイオリアクター)を用いる。培養容器は、ガラス、プラスチック又は金属を含む、細胞培養に適した任意の材料から構成されうる。典型的には、培養容器は、少なくとも1リットルであり、10、100、250、500、1000、2500、5000、8000、10000リットル以上でありうる。培養プロセス中において調節されうる培養条件には、限定されないが、pHと温度が含まれる。
【0122】
細胞培養は一般に細胞培養物の生存、増殖及び生存率(維持)に貢献する条件下で初期増殖期において維持される。精確な条件は、細胞型、細胞が由来している生物、及び発現されるポリペプチドの性質と特性に依存して変わるであろう。
【0123】
初期増殖期における細胞培養の温度は、細胞培養物が生存して残る温度範囲に主に基づいて選択されるであろう。例えば、初期増殖期の間、CHO細胞は37℃で良好に増殖する。一般に、殆どの哺乳動物細胞は約25℃から42℃の範囲内で良好に増殖する。好ましくは、哺乳動物細胞は、約35℃から40℃の範囲内で良好に増殖する。当業者であれば、細胞の必要性及び生産の要求に依存して、細胞を増殖させる適切な温度又は温度群を選択することができるであろう。
【0124】
本発明の一実施態様では、初期増殖期の温度は、単一の一定温度に維持される。他の実施態様では、初期増殖期の温度は、ある範囲の温度内に維持される。例えば、温度は初期増殖期中に一定に増加し又は減少しうる。あるいは、温度は、初期増殖期中の様々な時に離散量で増加し又は減少しうる。当業者であれば、単一又は複数の温度が使用されるべきか、温度が一定に又は離散量で調整されるべきかどうかを決定することができるであろう。
【0125】
細胞は、初期増殖期中、より長い間又はより短い間、増殖させられうる。一変形態様では、細胞は、細胞が乱されない増殖が許容されれば最終的に達する最大生細胞密度の与えられたパーセントである精細胞密度を達成するのに十分な時間の間、増殖させられる。例えば、細胞は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は99パーセントの最大生細胞密度の所望の生細胞密度を達成するのに十分な期間の間、増殖されうる。
【0126】
他の実施態様では、細胞は、定まった期間の間、増殖が許容される。例えば、細胞培養の開始濃度、細胞が増殖させられる温度、及び細胞の固有の増殖速度に応じて、細胞は0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上の日数の間、増殖されうる。ある場合には、細胞は1ヶ月又はそれ以上、増殖が許容されうる。
【0127】
細胞培養液は、細胞に対する酸素添加及び栄養分の分散を増加させるために初期培養期中に撹拌され又は振盪されうる。本発明によれば、当業者は、限定されないがpH、温度、酸素添加等々を含む初期増殖期中のある内部条件を制御し又は調節することが有益でありうることを理解するであろう。例えば、pHは適切な量の酸又は塩基を供給することによって制御することができ、酸素添加は当該分野でよく知られている散布装置を用いて制御することができる。
【0128】
最初の培養工程は、シードトレインをつくり出すための、バッチ細胞培養条件が組換え細胞の増殖を高めるために改変されている増殖期である。増殖期は一般に、細胞が一般に迅速に分裂し、例えば増える指数増殖の期間を意味する。この期の間、細胞は、所定の期間、通常は1から4日、例えば1、2、3、又は4日、細胞増殖が最適である条件下で培養される。宿主細胞に対する増殖サイクルの決定は、当業者に知られている方法によって特定の宿主細胞に対して決定されうる。
【0129】
増殖期では、基本培地と細胞はバッチで培養容器に供給されうる。一態様の培地は、約5%未満又は1%未満又は0.1%未満の血清及び他の動物由来タンパク質を含む。しかしながら、所望されるならば、血清及び動物由来タンパク質を使用することができる。特定の変形態様では、基本培地はウイルスを不活性化させるHTST処理中においてpH約5.0からpH約6.9のpHを有する。一態様では、基本培地のpHは、細胞培養のポリペプチド生産期の前にウイルスを不活性化させるHTST処理中においてpH約5.0からpH約6.9の間に下げられる。更なる態様では、ついで、培地のpHは、細胞培養のポリペプチド生産期のためにpH約6.9からpH約7.2の間にされる。更なる態様では、ついで、培地のpHは、細胞培養のポリペプチド生産期のためにHTST処理後にpH約6.9からpH約7.2の間にされる。他の特定の変形態様では、基本培地は、ウイルスを不活性化させるHTST処理中においてホスフェートとカルシウムの全量を約10mM未満に制限することを含む。一態様では、培地中のホスフェートとカルシウムの全量は、細胞培養のポリペプチド生産期の前にウイルスを不活性化させるHTST処理中において約10mM未満に制限される。更なる態様では、培地中のホスフェートとカルシウムの全量は、ついで、細胞培養のポリペプチド生産期中にポリペプチド生産に十分なレベルまで上げられる。他の変形態様では、基本培地は、ウイルスを不活性化させるHTST処理中においてpH約5.0からpH約6.9のpHと約10mM未満のホスフェートとカルシウムの全量を有している。一態様では、基本培地のpHは、細胞培養のポリペプチド生産期の前にウイルスを不活性化させるHTST処理中においてpH約5.0からpH約6.9の間に下げられ、約10mM未満のホスフェートとカルシウムの全量を含む。更なる態様では、培地のpHは、ついで、細胞培養のポリペプチド生産期中に、pH約6.9からpH約7.2の間にされ、培地中のホスフェートとカルシウムの全量はポリペプチド生産に十分なレベルまで上げられる。前記態様の何れかにおいて、基本培地は合成培地(化学的に明らかな培地)である。前記態様の何れかにおいて、基本培地は化学的に明らかではない培地である。欧州特許EP307247又は米国特許第6180401号において特定された範囲の一又は二倍のアミノ酸、ビタミン、微量元素及び他の培地成分を使用することができ、これら文献はその全体が出典明示によりここに援用される。
【0130】
あるいは、市販培地、例えばハムF10(Sigma)、基礎培地([MEM], Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ変法イーグル培地([DMEM], Sigma)が動物細胞の培養に適しており、これにここに詳細に記載される合成培地成分を(例えば、提供されたキットを使用して)補充してもよい。また、その全ての開示の全体が出典明示によりここに援用されるHam及びWallace, Meth. Enz., 58:44 (1979)、Barnes及びSato, Anal. Biochem., 102:255 (1980)、米国特許第4767704号;第4657866号;第4927762号;又は第4560655号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;米国特許再発行第30985号;又は米国特許第5122469号に記載された培地の何れかを宿主細胞の培地として使用することができ、そのそれぞれにここに詳細に記載された合成培地を(例えば、提供されたキットを使用して)補充してもよい。
【0131】
ここで提供される任意の培地にはまた必要に応じてホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は上皮増殖因子)、イオン(例えば、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、及びホスフェート)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物として定義)、微量金属(例えば鉄及び銅)、及びグルコース又は等価なエネルギー源が補充されうる。任意の他の必要な栄養補助剤を、当業者に知られているであろう適切な濃度でまた含めてもよい。
【0132】
その増殖の特定の時点で、細胞は生産期の培養開始時に培地に接種するための接種材料を形成しうる。あるいは、生産期は増殖期と連続的でありうる。細胞増殖期には一般にポリペプチド生産期が続く。
【0133】
ポリペプチド生産期中、細胞培養物は、(増殖期と比較して)細胞培養物の生存と生存率を促し、所望されるポリペプチドの発現に適した第二セットの培養条件下に維持されうる。例えば、続く生産期中に、CHO細胞は25℃から35℃の範囲内で組換えポリペプチド及びタンパク質をよく発現する。複数の離散温度シフトを用いて、細胞密度又は生存率を増加させ、あるいは組換えポリペプチド又はタンパク質の発現を増加させることができる。ここで使用される場合、「ポリペプチド生産期」又は「タンパク質発現期」なる用語は、細胞培養がバイオ医薬品(例えばポリペプチド)をつくり出す細胞培養期を意味しうる。
【0134】
細胞は、所望細胞密度又は生産力価に達するまで、続く生産期に維持されうる。一実施態様では、細胞は、組換えポリペプチドに対する力価が最大に達するまで、続く生産期に維持される。他の実施態様では、培養物はこの時点の前に収集されうる。例えば、細胞は、最大生細胞密度の1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は99パーセントの生細胞密度を達成するのに十分な時間の期間、維持されうる。場合によっては、生細胞密度が最大に達することを可能にし、ついで培養物を収集する前に生細胞密度があるレベルまで減少するのを許容することが望ましい場合がある。
【0135】
ある場合には、続くポリペプチド生産期中の細胞培養物に、枯渇し又は細胞によって代謝された栄養分又は他の培地成分を補充するのが有益であり又は必要である場合がある。例えば、細胞培養のモニタリング中に枯渇したことが観察された栄養分又は他の培地成分を細胞培養物に補填するのが有利であるかもしれない。ある態様では、一又は複数の枯渇成分は、続く生産期前にカルシウム、ホスフェート、鉄、及び銅を含む。幾つかの態様では、補充培地成分はカルシウム、ホスフェート、鉄、及び銅を含む。あるいは又は加えて、続くポリペプチド生産期前に細胞培養物に補填することが有益であり又は必要である場合がある。幾つかの態様では、続く生産期の前に、細胞培養物にカルシウム、ホスフェート、鉄、及び銅を含む一又は複数の培地成分が補填される。非限定的な例として、細胞培養物にホルモン及び/又は他の増殖因子、特定のイオン(例えば、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、及びホスフェート)、バッファー、ビタミン、ヌクレオシド又はヌクレオチド、微量元素(非常に低い最終濃度で通常は存在する無機化合物)、微量金属(例えば鉄及び銅)、アミノ酸、脂質、又はグルコース又は他のエネルギー源を補填することが有益であり又は必要である場合がある。ここで使用される場合、「供給培地」又は「生産培地」なる用語は、細胞培養のポリペプチド生産期中に使用される細胞培養培地を意味する。
【0136】
IV.例示的実施態様
1. 治療用ポリペプチドの製造プロセスにおける生成物供給流中のウイルスを不活性化する方法において、前記供給流に洗浄剤を加える工程を含み、該洗浄剤が環境適合性である、方法。
【0137】
2. トリトンX-100を使用する方法又は洗浄剤なしの方法と比べて、前記治療用ポリペプチドの生成物品質を維持する、実施態様1に記載の方法。
【0138】
3. 前記治療用ポリペプチドの生成物品質が、生成物供給流中の全ポリペプチドの僅か5%の生成物変異体の変化しか生じさせない、実施態様2に記載の方法。
【0139】
4. 生成物変異体が、生成物供給流中の全ポリペプチドの5%を越えては増加しない、実施態様3に記載の方法。
【0140】
5. 生成物変異体が、サイズ変異体、電荷変異体、酸化変異体、脱アミド変異体、糖化変異体又はグリカンプロファイルが変化した変異体である、実施態様3又は4に記載の方法。
【0141】
6. 生成物変異体が酸性及び/又は塩基性生成物変異体である、実施態様3から5の何れか一項に記載の方法。
【0142】
7. 前記供給流に洗浄剤を加える工程が、ポリペプチドの断片化を約5%を越えて増加させない、実施態様1から6の何れか一項に記載の方法。これは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定することができる。
【0143】
8. 前記供給流に洗浄剤を加える工程が、前記供給流中の凝集を約5%を越えて増加させない、実施態様1から7の何れか一項に記載の方法。これはSECによって測定することができる。
【0144】
9. 前記供給流に洗浄剤を加える工程が、製造プロセスにおけるポリペプチドの収率を約5%を越えて低減させない、実施態様1から8の何れか一項に記載の方法。これはSECによって測定することができる。
【0145】
10. 洗浄剤が約0.01%から約10%の最終濃度になるまで前記供給流に添加される、実施態様1から9の何れか一項に記載の方法。
【0146】
11. 洗浄剤が約0.3%から約1%の最終濃度になるまで前記供給流に添加される、実施態様1から10の何れか一項に記載の方法。
【0147】
12. 前記供給流が少なくとも約1分から少なくとも約48時間の間、洗浄剤にさらされる、実施態様1から11の何れか一項に記載の方法。
【0148】
13. 前記供給流が少なくとも約15分から少なくとも約3時間の間、洗浄剤にさらされる、実施態様1から12の何れか一項に記載の方法。
【0149】
14. 前記供給流が少なくとも約1時間の間、洗浄剤にさらされる、実施態様1から13の何れか一項に記載の方法。
【0150】
15. 前記供給流が約4℃から約30℃の洗浄剤にさらされる、実施態様1から14の何れか一項に記載の方法。
【0151】
16. 前記供給流が約15℃から約20℃の洗浄剤にさらされる、実施態様1から15の何れか一項に記載の方法。
【0152】
17. 洗浄剤が非イオン性洗浄剤又は双性イオン洗浄剤である、実施態様1から16の何れか一項に記載の方法。
【0153】
18. 洗浄剤が、約12から約15の親水性・親油性バランス(HLB)を有する、実施態様1から17の何れか一項に記載の方法。
【0154】
19. 洗浄剤がオクチルフェノールを含んでいないか又は生成しない、実施態様1から18の何れか一項に記載の方法。
【0155】
20. 洗浄剤が過酸化物を含んでいないか又は生成しない、実施態様1から19の何れか一項に記載の方法。
【0156】
21. 洗浄剤を含む前記供給流が低濁度である、実施態様1から20の何れか一項に記載の方法。これは、340-360nmの平均吸光度によって測定することができる。
【0157】
22. 前記供給流への洗浄剤の添加が前記供給流の濁度を増加させない、実施態様1から21の何れか一項に記載の方法。これは、340-360nmの平均吸光度によって測定することができる。
【0158】
23. 廃棄の際、洗浄剤の使用から生じる受水体中の洗浄剤の予測環境濃度(PEC)が、洗浄剤の予測無影響濃度(PNEC)未満である、実施態様1から22の何れか一項に記載の方法。
【0159】
24. PECがPNECより低い、実施態様23に記載の方法。
【0160】
25. 環境適合性洗浄剤がアルキルグルコシドを含む、実施態様1から24の何れか一項に記載の方法。
【0161】
26. アルキルグルコシドがデシルグルコシドである、実施態様25に記載の方法。
【0162】
27. 環境適合性洗浄剤がアルコールエトキシレートである、実施態様1から24の何れか一項に記載の方法。
【0163】
28. 環境適合性洗浄剤がアルキルポリエチレングリコールエーテルである、実施態様1から24の何れか一項に記載の方法。
【0164】
29. 環境適合性洗浄剤が、CAS9005-64-5、CAS9005-65-6、CAS126-43-8、68515-73-1、CAS58846-77-8、CAS59122-55-3、CAS110615-47-9、CAS29836-26-8、CAS64366-70-7、CAS68937-66-6、CAS69227-22-1、CAS25322-68-3、CAS27252-75-1、CAS4292-10-8、CAS132778-08-6、CAS110615-47-9、CAS68515-73-1、又はCAS68439-46-3のCAS登録番号を有している、実施態様1から24の何れか一項に記載の方法。
【0165】
30. 洗浄剤が一又は複数の界面活性剤を含む、実施態様1から29の何れか一項に記載の方法。
【0166】
31. 洗浄剤が一又は複数の界面活性剤、保存料、及びキレート剤を含む、実施態様1から30の何れか一項に記載の方法。
【0167】
32. 前記供給流が回収細胞培養流体を含む、実施態様1から31の何れか一項に記載の方法。
【0168】
33. 洗浄剤が、回収細胞培養流体に添加される、実施態様32に記載の方法。
【0169】
34. 前記供給流が捕捉プール又は回収生成物プールを含む、実施態様1から33の何れか一項に記載の方法。
【0170】
35. 捕捉プール又は回収生成物プールが、アフィニティークロマトグラフィープールである、実施態様34に記載の方法。
【0171】
36. 捕捉プール又は回収生成物プールが、プロテインAプール、プロテインGプール又はプロテインLプールである、実施態様34又は35に記載の方法。
【0172】
37. 捕捉プール又は回収生成物プールが、混合モードクロマトグラフィープールである、実施態様34に記載の方法。
【0173】
38. 捕捉プールがCaptoAdhereプールである、実施態様34又は37に記載の方法。
【0174】
39. 洗浄剤が消泡剤と組み合わせて使用される、実施態様1から38の何れか一項に記載の方法。
【0175】
40. 消泡剤がシメチコンである、実施態様39に記載の方法。
【0176】
41. ウイルスがエンベロープウイルスである、実施態様1から40の何れか一項に記載の方法。
【0177】
42. ウイルスが、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、肝炎ウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、又はトガウイルスである、実施態様1から41の何れか一項に記載の方法。
【0178】
43. 前記供給流中の洗浄剤のウイルス対数減少値(LRV)が約1よりも大きい、実施態様1から42の何れか一項に記載の方法。
【0179】
44. ウイルスLRVが約4よりも大きい、実施態様1から43の何れか一項に記載の方法。
【0180】
45. LRVが感染性試験に基づいて計算される、実施態様43又は44に記載の方法。
【0181】
46. 感染性試験がプラークアッセイ又はTCID50アッセイである、実施態様45に記載の方法。
【0182】
47. 洗浄剤の添加後に前記供給流を濾過する工程を更に含む、実施態様1から46の何れか一項に記載の方法。
【0183】
48. 前記供給流が、洗浄剤の添加後、少なくとも約15分から少なくとも約48時間、濾過される、実施態様47に記載の方法。
【0184】
49. 前記供給流が、洗浄剤の添加後、少なくとも約1時間から少なくとも約3時間、濾過される、実施態様47又は48に記載の方法。
【0185】
50. 前記供給流が、洗浄剤の添加の約1時間後に濾過される、実施態様47から49の何れか一項に記載の方法。
【0186】
51. フィルターが限外濾過膜又はデプスフィルターである、実施態様47から50の何れか一項に記載の方法。
【0187】
52. 前記供給流が、洗浄剤の添加後にクロマトグラフィーに供される、実施態様1から51の何れか一項に記載の方法。
【0188】
53. クロマトグラフィーが、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、又は混合モードクロマトグラフィーの一又は複数である、実施態様52に記載の方法。
【0189】
54. アフィニティークロマトグラフィーがプロテインAクロマトグラフィー、プロテインGクロマトグラフィー又はプロテインLクロマトグラフィーである、実施態様53に記載の方法。
【0190】
55. イオン交換クロマトグラフィーがアニオン交換クロマトグラフィー又はカチオン交換クロマトグラフィーである、実施態様53に記載の方法。
【0191】
56. 混合モードクロマトグラフィーがCaptoAdhereクロマトグラフィーである、実施態様53に記載の方法。
【0192】
57. 治療用ポリペプチドが、抗体、イムノアドヘシン、酵素、増殖因子、受容体、ホルモン、調節因子、サイトカイン、Fc融合ポリペプチド、抗原、又は結合剤である、実施態様1から56の何れか一項に記載の方法。
【0193】
57. 抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、又は抗体断片である、実施態様56に記載の方法。
【0194】
58. 治療用ポリペプチドが哺乳動物細胞中で産生される、実施態様1から57の何れか一項に記載の方法。
【0195】
59. 哺乳動物細胞株が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、マウスハイブリドーマ細胞、又はマウス骨髄腫細胞である、実施態様58に記載の方法。
【0196】
この明細書に開示された各特徴は、同一、均等、又は類似の目的を果たす代替の特徴に置き換えることができる。よって、別のことが明示的に述べられていない限り、開示された各特徴は均等又は類似の特徴の上位概念の一例に過ぎない。
【0197】
ここに開示された全ての文献は、あらゆる目的のためにその全体が出典明示によりここに援用される。
【実施例
【0198】
次の実施例は、本発明を例証するために提供されるもので、本発明を限定するためではない。
【0199】
実施例1:洗浄剤の評価
治療用ポリペプチドを精製し、エンベロープウイルスのような不定の作用物質を不活性化するプロセスにおいてトリトンX-100を置換するために多くの洗浄剤をスクリーニングした。代替洗浄剤のための基準は、限定されないが、洗浄剤の非イオン性又は双性イオン性、廃棄可能性、強いウイルス不活性化、コスト、安全性/OSHA、溶解性、粘性、約12-15の親水性/親油性バランス、材料入手可能性と供給源、プロセスと生成物品質に対する影響、及び≧24ヶ月の原料の安定性の何れか一つを含んでいた。洗浄剤の例が表1に示される。
【0200】
洗浄剤を評価するために、数回のスクリーニングを使用した。
【0201】
1回目: 雰囲気温度で3時間、1%(v/v)までの最終濃度まで候補洗浄剤をモノクローナル抗体(MAbs)の水溶液に加えた。3種のポリペプチド溶液をこれらの研究で使用した。MAb1 HCCFはMAb1の製造において得られた回収細胞培養流体であり; Mab3 HCCFはMAb3の製造において得られた回収細胞培養流体であり;MAb3 MSSはMAb3の調製のプロテインAクロマトグラフィー後の調整されたプール画分であった。洗浄剤を、混合、濁度、生成物収率、及び生成物品質に対するその影響について評価した。
【0202】
混合研究: 試験した洗浄剤は、1%ポリソルベート20±TnBP、1%ポリソルベート80±TnBP、1%SafeCare1000、1%Ecosurf EH-9、1%Ecosurf EH-6、1%Ecosurf EH-3、1%Ecosurf SA9、1%Ecosurf SA7、0.1Mカプリレート、0.5%又は1%ポリグルコシド、及び1%トリトンX-100であった。結果は、洗浄剤を添加しなかったコントロールと比較した。
【0203】
濁度試料を、0時間、1時間、2時間、3時間、濾過後、濾過1時間後、及び一晩保持後の設定時点で採取した。最終の混合時間の後に0.2μmフィルターを通して溶液を濾過した。
【0204】
試料を、PhyTipプロテインAでの精製と続くサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、電荷不均一性に対する画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)、及びグリカン含量に対するキャピラリー電気泳動によって分析した。サイズ排除クロマトグラフィーは低分子量種(例えば、分解産物)と高分子量種(例えば、凝集物)の存在を明らかにする。iCIEFは電荷変異体(例えば、酸性電荷変異体と塩基性電荷変異体)を明らかにする。キャピラリー電気泳動はグリカン構造を明らかにする。チャイニーズハムスター卵巣細胞タンパク質(CHOP)レベルを、社内の多品種ELISAを使用して試験した。Mab1又はMab3濃度を、プロテインA HPLCアッセイを使用し、調整プロテインAプールに対して280nmでの吸光度を使用してHCCFにおいて測定した。
【0205】
図1は、様々な混合法を使用する洗浄剤を伴わないMAb1 HCCFコントロールの洗浄剤混合濁度分析を示す。未処理の混合HCCFの濁度は、混合、濾過、及び一晩のインキュベーション中において変化しないままであった低レベルの濁度を有していた。1%ポリソルベート20(左上)、0.3%TnBPを伴う1%ポリソルベート20(右上)、1%ポリソルベート80(左下)及び0.3%TnBPを伴う1%ポリソルベート80(右下)で処理されたMAb1 HCCFの洗浄剤混合濁度分析が図2に示される。ポリソルベート20±TNBP又はポリソルベート80±TNBPで処理されたHCCFに対しては、濁度が増加し、濾過後に改質した。1%SafeCare(左上)、1%Ecosurf EH-9(右上)、0.1Mカプリレート(左下)及び1%ポリグルコシド(右下)で処理されたMAb1 HCCFの洗浄剤混合濁度分析は図3に示される。SafeCare又はカプリレートの添加と混合で濁度が増加したが、濁度は濾過及び一晩のインキュベーション後に改質しなかった。Ecosurf EH-9又はポリグルコシド試験条件では、濁度の増加は観察されなかった。
【0206】
MAb1 HCCFの生成物品質に対する洗浄剤混合の結果を表2に示す。高分子量種の増加はTnBPを伴うポリソルベート20及びポリソルベート80で見られた。収率喪失及びCHOP還元はカプリレートで見られた。グリカン又はCHOPへの変化は他の洗浄剤では見られなかった(データは示さず)。
【0207】
MAb3 HCCF及びMAb3 MSSプールの濁度に対する3時間の洗浄剤暴露の結果を表3に示す。有意な濁度は、Ecosurf EH-3及びカプリレート条件に対して観察され、TnBPを伴うポリソルベート20又は80及びSafeCareでは少ない濁度であった。
【0208】
表4は、MAb3 HCCF及び調整プロテインAプールを使用する洗浄剤スクリーニングに対するCHOP及びDNA結果を示す。カプリレートに対するHCCF及びProAプールにおいて沈殿し、40%の生成物収率損失が生じたCHOP及びDNAを除いて影響は観察されなかった。他の試験した洗浄剤では収率損失は確認されなかった(データは示さず).
【0209】
表5はMAb3:HCCF又は調整ProAプールでの洗浄剤スクリーニングにおけるSECの結果を示す。洗浄剤での処理は雰囲気温度で3時間であった。カプリル酸処理HCCFが0.8%へのHMWSの減少を生じたことを除いて、HMW又はLMW種における有意な変化は観察されなかった。
【0210】
表6はMAb3 HCCF又は調整ProAプールでの洗浄剤スクリーニングにおけるiCIEFの結果を示す。洗浄剤での処理は雰囲気温度で3時間であった。Ecosurf SA-9処理ProAプールに対する酸性ピークの減少、主ピークの増加を除いて、電荷変異体における差は認められなかった。これは試料の取り扱いに起因しているかもしれず、この洗浄剤条件を、MAb3を用いた次の実験で再試験したが、電荷プロファイルには変化が認められなかった。
【0211】
沈殿と収率損失のため、カプリレート及びEcoSurf EH-3を更なるスクリーニングから除外した。
【0212】
2回目: 雰囲気温度で一晩、1%(v/v)の最終濃度まで候補洗浄剤をモノクローナル抗体(MAbs)の水溶液に加えた。クロマトグラフィー性能、工程収率、及びMAb3に対する生成物品質の影響へのその効果について洗浄剤を評価した。生成物品質を、サイズ変異体(HMW及びLMW)を測定するためにSEC HPLCを、電荷変異体を測定するためにIEC(カルボキシペプチダーゼ処理を伴う)を使用して、試験した。糖化は、Zhang等(Analytical Chem. 2008, 80: 2379-2390)に記載されているようにボロネートアフィニティクロマトグラフィーを使用して測定した。トリプシンペプチドマッピングをまた用いて、酸化又は脱アミドのようなタンパク質に対する他の変化を解明した。工程不純物の排出能は多品種CHOP ELISA、浸出プロテインA(LpA)ELISA、及びDNA定量のためのTaqMan PCRアッセイを使用して測定した。
【0213】
表7は、洗浄剤で一晩処理した後、MabSelect SuReプロテインAクロマトグラフィーを使用する精製が続く、MAb3 HCCFを使用する洗浄剤評価を示す。MabSelect SuReでの非定型的クロマトグラム及び低工程収率が、Ecosurf SA7処理試料で観察された。CHOP又はDNA排出能への有意な影響は観察されなかった。洗浄剤処理HCCF中のDNAのレベルは不定であり、これはDNAアッセイにおける試料中の洗浄剤の幾分かの干渉を示しているかも知れない。これは、最終の洗浄剤候補を用いて更に調査されるであろう。浸出プロテインAのレベルは試験された洗浄剤条件のそれぞれについて同等であった。試験された洗浄剤の何れに対しても糖化プロファイルへの変化は確認されなかった。
【0214】
図4は、雰囲気温度での一晩の洗浄剤とのインキュベーションとMabSelectSuReでの精製に続くMAb3中和プロテインAプールのペプチドマッピングを示す。生成物品質の差は、トリプシンペプチドマッピングによって評価して、何れの洗浄剤に対しても見られなかった。
【0215】
表8は、候補洗浄剤への一晩の暴露後のMAb3 HCCFのSEC及びIEC分析の結果を示す。IEC試料は分析前にカルボキシペプチダーゼB(CpB)で処理した。試験された洗浄剤の何れに対しても生成物品質への影響は見られなかった。
【0216】
非定型的クロマトグラムと低収率のため、Ecosurf SA-7を更なるスクリーニングから除外した。ポリグルコシドはアルキルグルコシドの混合物であり、更なる研究では個々のアルキルグルコシドに置き換えた。
【0217】
3回目: 雰囲気温度で一晩、1%(v/v)の最終濃度まで候補洗浄剤をモノクローナル抗体(MAbs)の水溶液に加えた。ポリペプチド溶液をこれらの研究において使用した。MAb1 HCCF、MAb1 MSS、Mab3、及びMAb2 HCCF。洗浄剤は、濁度、生成物品質の影響及びプロテインAクロマトグラフィー後の洗浄剤排出能に対するその効果について評価した。
【0218】
MAb1、MAb2、及びMAb3 HCCFを雰囲気温度で一晩、1%(v/v)洗浄剤と共にインキュベートした。ついで、MAb1を、MabSelect SuReクロマトグラフィーを使用して精製した。洗浄剤排出能試験のために、プールした画分をSEC、iCIEF、及びNMRによって分析した。濁度、MabSelect SuREでの収率、及び調整プロテインAプールの生成物品質に対する結果を表9に示す。1%ポリソルベート+0.3%TnBPで処理されたHCCFは高濁度とMabSelect SuReプロテインAクロマトグラフィーでの低収率を有していた。この条件はまた多量のHMW生成を生じた。Lutensol XP90処理試料は、コントロールと比較して、およそ4%高いレベルの酸性変異体を有していた。
【0219】
プロテインAクロマトグラフィー中の洗浄剤排出能を、中和プロテインAプールのNMRによって評価し、表10に示す。全ての洗浄剤がプロテインAクロマトグラフィー中、透明ないしは非常に低レベルであった。
【0220】
同様の分析を、MAb3 HCCF(表11)とMAb2 HCCF(表12)を使用し、PhyTipプロテインA精製と続くSEC-HPLC、iCIEF及びグリカン用のCEで実施した。
【0221】
コントロールに対して、試験した洗浄剤の何れに対しても、MAb3では、濁度又は生成物品質の有意な変化は見られなかった。グリカン分布の変化は観察されなかった(データは示さず)。
【0222】
コントロールに対して、試験した洗浄剤の何れに対しても、MAb2では、濁度又は生成物品質の有意な変化は見られなかった。僅かに高い割合の酸性種がLutensol XP90及びTergitol L64で見られた。グリカン分布の変化は観察されなかった(データは示さず)。
【0223】
この回の試験から、濁度とMAb1に対する生成物品質の影響のため、ポリソルベート80+TnBPを除外した。
【0224】
20℃でのMAb1 HCCF中のウイルス不活性化(xMuLV)について、洗浄剤をまた評価した。洗浄剤を0.3%の最終濃度まで、MAb1 HCCFに加えた。洗浄剤含有材料に5%v/vでXMuLVを混ぜた。試料を20℃で30分から6時間、インキュベートし、モデルレトロウイルスである異種指向性マウス白血病ウイルス(XMuLV)の存在についてアッセイした。XMuLVの存在は、PG-4指示細胞を利用するTCID50アッセイによって決定した。ウイルス不活性化の結果はLRV(対数減少値)で表し、表13に示す。
【0225】
xMuLV不活性化はポリソルベート80、ポリソルベート20又はTnBP単独ではあまり効果的ではなかった。沈殿がカプリレート試料では確認された。
【0226】
溶媒あるなしのポリソルベート80を、室温でrProtein1 CaptoAdhereプールを使用する更に下流のプールでウイルス不活性化(XMuLV)について評価した。XMuLV不活性化の結果を表14に示す。効果的なXMuLV不活性化はポリソルベート80単独で1時間で得られた。完全なウイルス不活性化は溶媒を伴うポリソルベート80で5分以内に観察された。
【0227】
候補洗浄剤によるMAb2 HCCF中のXMuLV不活性化を表15に示す。完全で効果的なウイルス不活性化が、0.5%及び1%濃度の全ての試験洗浄剤に対して20℃で1時間で達成された。
【0228】
0.3%及び0.5%の濃度と12℃のより低い温度での候補洗浄剤によるMAb2 HCCF及びrProtein1 HCCF中でのXMuLV不活性化を表16に示す。効果的ではなかったTergitol L64を除いて、0.3%及び0.5%濃度で全ての試験洗浄剤に対して12℃、1時間で効果的なウイルス不活性化が達成された。よって、Tergitol L64は更なる考慮から除外した。
【0229】
様々な濃度のトリトンCG-110を用いたrProtein2 HCCF中のXMuLV不活性化を表17に示す。濃度依存性ウイルス不活性化が観察された。0.05%のトリトンCG-110濃度では、不活性化は効果的ではなく、1未満のLRVが得られた。
【0230】
実施例2 発泡緩和のためのシメチコンの使用:ウイルス活性化の影響
トリトンCG110に対する発泡問題を緩和するためのシメチコンの使用を、ウイルス不活性化に対する影響について評価した。
【0231】
洗浄剤(0.3%)を、消泡剤のシメチコンと共に又はシメチコンなしで0.1%の最終濃度までrProtein3 HCCFに加えた。試料をウイルス不活性化(xMuLV)について評価した。結果を表18に示す。トリトンCG110によるxMuLVの不活性化に対して0.1%シメチコンによる影響はなかった。
【0232】
他のエンベロープウイルスを不活性化させる洗浄剤の能力をまた評価した。洗浄剤を0.3%の最終濃度までrProtein1 HCCFに加えた。洗浄剤含有材料に5%v/vで各ウイルスを別個に混ぜた。試料を12℃で1及び/又は3時間、インキュベートし、XMuLV、仮性狂犬病ウイルス(PRV)又はウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)の存在についてアッセイした。ウイルスの存在を、細胞ベースの感染性試験を使用して決定した。XMuLVは、PG-4指示細胞を利用するTCID50アッセイによって決定した。PRVとBVDVの存在は、それぞれCV-1及びBT指示細胞を利用するプラークアッセイによって決定した。結果を表19に示す。APG325NとトリトンCG110は3種全てのウイルスに対して効果的な不活性化をもたらした。
【0233】
エンベロープウイルスを不活性化させるトリトンCG110及びEcosurf EH-9の能力をトリトンX-100の能力と比較した。トリトンCG110、トリトンX-100又はEcosurf EH-9を、0.3%の最終濃度でrProtein2 HCCFに加えた。洗浄剤含有材料に5%v/vでPRVとBVDVを別個に混ぜた。試料を20℃で30分及び1時間、インキュベートし、プラークアッセイを使用して仮性狂犬病ウイルス(PRV)又はウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)の存在についてアッセイした。ウイルスの対数減少値を決定した。結果を表20に示す。
【0234】
Ecosurf EH-9とトリトンCG110は、トリトンX-100に匹敵する効果的な不活性化をもたらした。
【0235】
実施例3 更なる分子を用いたスクリーニング
シメチコンあるなしでの洗浄剤を、生成物品質について更にスクリーニングした。次の条件を試験した。
1. コントロールHCCF(洗浄剤なし)
2. HCCF+0.1%シメチコン
3. HCCF+Ecosurf EH9
4. HCCF+0.7%トリトンCG110
5. HCCF+0.7%トリトンCG110+0.1%シメチコン。
【0236】
試料を雰囲気温度で15時間インキュベートし、ついで2-8℃で保存した。試料を、PhytipプロテインA精製に続いてSEC、iCIEF、及びグリカン分析によって、生成物品質から分析した。HCCFは、HCCF MAb4、MAb5、MAb6、MAb7、MAb3、MAb8、及びMAb9を含んでいた。結果を表21-26に示す。
【0237】
Mab4 HCCFの洗浄剤±シメチコン処理の結果を表21に示す。試験した条件のそれぞれについて、生成物品質への影響は確認されなかった。グリカンへの変化は観察されなかった(データは示さず)。
【0238】
Mab5 HCCFの洗浄剤±シメチコン処理の結果を表22に示す。試験した条件のそれぞれについて、生成物品質への影響は確認されなかった。グリカンへの変化は観察されなかった(データは示さず)。
【0239】
Mab6 HCCFの洗浄剤±シメチコン処理の結果を表23に示す。試験した条件のそれぞれについて、生成物品質への影響は確認されなかった。グリカンへの変化は観察されなかった(データは示さず)。
【0240】
Mab7 HCCFの洗浄剤±シメチコン処理の結果を表24に示す。試験した条件のそれぞれについて、生成物品質への有意な影響は確認されなかった。僅かに高い%酸性及び低い%塩基性変異体がトリトンCG-110処理試料において観察された。グリカンへの変化は観察されなかった(データは示さず)。
【0241】
Mab8 HCCFの洗浄剤シメチコン処理の結果を表25に示す。試験した条件のそれぞれについて、生成物品質への影響は確認されなかった。グリカンへの変化は観察されなかった(データは示さず)。
【0242】
Mab9 HCCFの洗浄剤シメチコン処理の結果を表26に示す。試験した条件のそれぞれについて、生成物品質への影響は確認されなかった。グリカンへの変化は観察されなかった(データは示さず)。
【0243】
実施例4 散布研究
検討中の4種の洗浄剤を、発泡と発泡緩和に対するシメチコンの効果について評価した。
【0244】
評価した洗浄剤は、APG325、トリトンCG110、Ecosurf EH9及びLutensol XP90を含んでいた。2リットル発酵槽において洗浄剤(0.5%)をHCCFに加えた。溶液を50RPMの速度で混合した。発酵槽に10立方センチメートル毎分(SSCM)の速度で屋内の空気を散布し又は散布しなかった。消泡剤1%シメチコンを2mL/L培養物で加えた。
【0245】
Ecosurf EH9はより少ない発泡を示し、アルキルグルコシド洗浄剤よりも小さい泡を有していた。消泡剤の添加は全ての泡を除去し、更なる泡は72時間を越えて再生成しなかった。
【0246】
トリトンCG110は大きな空気の気泡を示した。消泡剤の添加は泡を減少させたがそれを完全には除去しなかった。更なる泡は72時間を越えて生成しなかった。
【0247】
APG325Nは、容器から出て発泡した大きな空気の気泡の迅速な生成を示した。消泡剤の添加は泡に最小の効果しかなく、消泡剤の添加後に更なる泡が生じた。これに対して、散布されなかったHCCFへのAPG325Nの添加はほとんど又は全く泡を生じなかった。
【0248】
実施例5 二種の洗浄剤の安定性
Ecosurf EH9の不安定性をNMR解析によって確認した。Ecosurf EH9の10%原液を室温と40℃で保持し、0、7、15、及び36日目にNMRによって分析した。結果を表17に示す。分解と芳香族の生成が検出された。分解と芳香族の生成が検出された。
【0249】
Ecosurf EH-9の不安定性をNMR解析によって確認した。Ecosurf EH-9とトリトンCG-110の10%原液を室温と40℃で保持し、0、7、15、及び30、及び59日目にNMRによって分析した。Ecosurf EH-9分解産物の定量の結果を表27に示す。Ecosurf EH-9に対して分解と芳香族の生成が検出された。図5及び6は、それぞれトリトンCG-110とEcosurf EH-9の安定性試料に対するNMRスペクトルを示す。トリトンCG-110は安定で、59日までほとんど変化がなかった。これに対して、Ecosurf EH-9溶液の貯蔵中における分解産物の生成は可視化できる。
【0250】
また、Ecosurf EH9とトリトンCG110を、8週間の過程にわたって洗浄剤の10%(v/v)水性原液中の過酸化物の生成について分析した。EMD Millipore比色過酸化物試験1.10001.0001試験を使用した。ppmでの結果を表28に示す。原料と原液を雰囲気温度で保存し、フォイルで覆って光から保護した。Ecosurf EH9原料は開放されており、およそ8ヶ月早く再シールされた。Ecosurf EH9原料及び10%原液において過酸化物が検出された。8週間にわたってトリトンCG110の原液には検出可能な過酸化物(<0.5ppm)は検出されなかった。
【0251】
実施例6 洗浄剤のEHS評価
21の異なった候補材料を環境保健安全についてレビューした。各材料を、その基本的な物理的及び毒性学的特性を決定するために研究した。このEHS情報は製造メーカー及び政府の文献から取得され、表29に編集された。
【0252】
候補材料の5種を更なる生態毒性研究のために選択した:
EcosurfEH-9
トリトンCG-110
Tomadol
APG325
LutensolXP-90
【0253】
生態毒性研究の目的は、候補材料が水生生物に対して有意な危険をもたらさないであろう最も高い濃度を各候補材料に対して樹立することである。この濃度は予測無影響濃度(PNEC)と称され、候補材料に対する特定のPNECを導くために使用される方法は欧州連合のTechnical Guidance Document for Risk Assessment,2003(TGD)に詳細に記載されている。
【0254】
PNECを導くために、5種の候補材料の各々を、活性汚泥呼吸阻害(OECD209)、藻類生長阻害(OECD201)、ミジンコ急性遊泳阻害(OECD202)、ミジンコ慢性繁殖(OECD211)及び魚類急性毒性アッセイ(OECD203)を決定するための経済協力開発機構(OECD)試験法を使用して評価した。
【0255】
これらの研究は、プロセス廃水を受水する廃水処理プラントに対するPNEC、つまりPNECSTPと受水体に対するPNEC、つまりPNECRWの双方を得た。
【0256】
製造場所での候補材料の使用は、下水処理場に対する予測環境濃度(PECSTP)と称される廃水処理プラントと、受水に対する予測環境濃度(PECRW)と称される受水体の双方における候補材料の濃度を生じる。廃水処理プラントは廃水から候補材料の一部、つまりOECDの易生分解性試験(OECD301F)を使用する試験によって候補材料のそれぞれについて計算された量をまた除去する。
【0257】
5種の候補材料に対するPNECとのPECのこの比較は有用な環境適合性プロファイルを提供する。候補材料は、そのPECがそのPNECより低ければ、環境適合性であると考えられた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6