(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】電磁リレー
(51)【国際特許分類】
H01H 50/12 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
H01H50/12 G
(21)【出願番号】P 2017016334
(22)【出願日】2017-01-31
【審査請求日】2019-07-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】秋山 清和
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】栗田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友彦
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】中村 大輔
【審判官】田村 嘉章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0247099(US,A1)
【文献】特開2010-108661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
つば部を有するボビンにコイル線が多重に巻かれることによって形成される電磁コイルと、
固定接点と、
前記固定接点と対向して配置され、前記電磁コイルが発生する電磁力によって、前記固定接点とは離間される第1位置と、前記固定接点に接触する第2位置とのいずれかに移動される可動接点と、
前記電磁コイルから発せられる熱を前記固定接点に伝えるために設けられた熱伝導材と
を備え
、
前記つば部は、切り欠き部を有し、
前記固定接点は、前記切り欠き部と対向配置されており、
前記熱伝導材は、前記切り欠き部と前記固定接点との間に設けられている
電磁リレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁リレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電磁コイルに通電することにより電磁コイルに電磁力を生じさせ、この電磁力によって可動接点を移動させることにより、可動接点を固定接点に接触させたり離間させたりすることができるように構成された、いわゆる電磁リレーがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、電磁リレーにおいて、固定接点が組みつけられており、且つ外部の電気回路に接続されている板材の表面を、当該板材を被覆する樹脂層に形成された露出窓によって、リレー本体が収納される空間に露出させるようにした技術が考案されている。この技術によれば、板材が外部の電気回路用配線を介して放熱されることで固定接点よりも低温になるため、固定接点が結露するよりも早く、板材の露出部分を結露させることで、固定接点の結露を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術のように、板材の露出部分を固定接点よりも先に結露させるというだけでは、固定接点の結露防止には不十分である。例えば、固定接点は、外部の電気回路に接続されているために、リレー本体内の温度よりも温度が大幅に低くなる場合がある。この場合、上記従来技術では、固定接点を含む板材の温度が全体的に大きく低下するため、板材の露出部分が結露するだけでなく、固定接点までもが結露してしまう。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決するため、電磁リレーにおける固定接点の温度低下をより確実に抑制することで、固定接点の結露をより確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の電磁リレーは、電磁コイルと、固定接点と、前記固定接点と対向して配置され、前記電磁コイルが発生する電磁力によって、前記固定接点とは離間される第1位置と、前記固定接点に接触する第2位置とのいずれかに移動される可動接点と、前記電磁コイルから発せられる熱を前記固定接点に伝えるために設けられた熱伝導材とを備える。
【発明の効果】
【0008】
電磁リレーにおける固定接点の温度低下をより確実に抑制することができるため、固定接点の結露をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る電磁リレーの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る電磁リレーの第1変形例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る電磁リレーの第2変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の電磁リレーについて説明する。
【0011】
(電磁リレー100の構成)
図1は、実施形態に係る電磁リレー100の構成を示す図である。
図1に示すように、電磁リレー100は、基本的な構成要素として、ボビン101、電磁コイル102、コア103、ヨーク104、端子ホルダ105、固定接点106、支柱107、可動接点108、板バネ109、固定接点側端子110、及び可動接点側端子111を備えている。
【0012】
図1に示す電磁リレー100は、電磁コイル102に通電することにより電磁コイル102に電磁力を生じさせ、この電磁力によって可動接点108を移動させることにより、可動接点108を固定接点106に接触させたり離間させたりすることができるように構成されている。この電磁リレー100は、例えば、自動車などの車両において、各種電装系(例えば、ヘッドライト、ワイパモータ等)のオン及びオフの制御に用いられる。なお、以降の説明では、便宜上、図中Z軸正方向側を上、Z軸負方向側を下と説明するが、普遍的な上下関係を表すものではない。
【0013】
ボビン101は、樹脂製(「絶縁性素材」の一例)の部材である。ボビン101は、柱状の軸部101Aと、軸部101Aの上端に形成されたつば部101Bと、軸部101Aの下端に形成されたつば部101Cとを備えて構成されている。つば部101B,101Cは、軸部101Aの端面よりも大きな面積を有する、平板状の部材である。
【0014】
電磁コイル102は、ボビン101の軸部101Aに対してコイル線が多重に巻かれることにより、軸部101Aの周囲に形成されている。コイル線としては、例えば、銅線等が用いられる。
【0015】
コア103は、高透磁率の磁性体が用いられた棒状の部材である。コア103は、ボビン101の軸部101Aが有する中空構造の内部に設けられている。コア103は、主に電磁コイル102の磁束密度を高めるために設けられている。
【0016】
ヨーク104は、ボビン101の周囲(上方及び側方)を取り囲む容器状且つ金属製(鉄製又は鋼製)の部材である。ヨーク104は、主に電磁コイル102の電磁力による吸着力を高めるために設けられている。
【0017】
ボビン101の下方には、ヨーク104に取り囲まれた空間の下側を閉塞するように、板状の端子ホルダ105が配置されている。ヨーク104に取り囲まれた空間内において、ボビン101と端子ホルダ105との間の空間には、いずれも金属製の、固定接点106、支柱107、可動接点108、及び板バネ109が配置されている。固定接点106及び可動接点108は、固定接点106を上側(ボビン101側)に、可動接点108を下側(端子ホルダ105側)にして、互いに対向して設けられている。
【0018】
固定接点106は、ボビン101の下側において、少なくとも一部が、ボビン101(つば部101C)の底面と重なるように配置されている。固定接点106は、端子ホルダ105の上面に立設された支柱107によって、その上側から支持されている。支柱107は、概ね逆L字状をなしている。具体的には、支柱107は、端子ホルダ105の上面から上方向に延びる第1の部分107Aと、第1の部分の先端から折れ曲がって、ボビン101と端子ホルダ105との間の空間内を概ね左方向(図中X軸負方向)に延びる第2の部分107Bとを有している。固定接点106は、第2の部分107Bの下面に設けられている。なお、ボビン101のつば部101Cは、支柱107との接触を回避するために下側の一部が切り欠かれている切欠部101Caを有している。
【0019】
可動接点108は、板ばね109によって、その下側が支持されている。板ばね109は、概ねL字状をなしている、薄板状の部材である。具体的には、板ばね109は、ヨーク104の左側面に固定され、当該固定位置から下方向に延びる第1の部分109Aと、第1の部分109Aの下端から折れ曲がって、ボビン101と端子ホルダ105との間の空間内を概ね右方向(図中X正方向)に延びる第2の部分109Bとを有している。第2の部分109Bは、その中間位置に設けられた軸部109Cを支点として、上下方向に開閉動作するいわゆる可動切片である。可動接点108は、第2の部分109Bの先端部分の上面に設けられている。
【0020】
端子ホルダ105の下面には、固定接点側端子110及び可動接点側端子111が、それぞれ下方向に向かって立設されている。固定接点側端子110及び可動接点側端子111は、金属製且つ板状の部材である。固定接点側端子110及び可動接点側端子111は、それぞれ、制御対象の電装系の配線に接続される。固定接点側端子110は、支柱107を介して、固定接点106に電気的に接続されている。可動接点側端子111は、板ばね109を介して、可動接点108に電気的に接続されている。
【0021】
このように構成された電磁リレー100は、外部の駆動回路(図示省略)から電磁コイル102に通電することにより電磁コイル102による電磁力が発生すると、この電磁力によって、板ばね109の第2の部分109Bが、電磁コイル102に近づく方向(図中上方向)へと閉じ動作する。これにより、第2の部分109Bの先端に配置されている可動接点108が、固定接点106に接触する第2位置に移動した状態(すなわち、オン状態)となり、可動接点108に繋がる可動接点側端子111と、固定接点106に繋がる固定接点側端子110との間が導通状態となる。
【0022】
一方、電磁コイル102への通電を停止して電磁コイル102による電磁力が消滅すると、板ばね109の第2の部分109Bが、電磁コイル102から離れる方向(図中下方向)へと開き動作する。これにより、第2の部分109Bの先端に配置されている可動接点108が、固定接点106とは離間される第1位置に移動した状態(すなわち、オフ状態)となり、可動接点108に繋がる可動接点側端子111と、固定接点106に繋がる固定接点側端子110との間が非導通状態となる。
【0023】
(熱伝導材120)
ここで、
図1に示すように、本実施形態の電磁リレー100は、ボビン101(切欠部101Ca)と、支柱107(第2の部分107B)との間の隙間内に、電磁コイル102から発せられる熱を固定接点106へ伝えるための熱伝導材120がさらに設けられている。
図1の例では、ボビン101と支柱107との間の隙間内に、熱伝導材120として、熱伝導ペーストが充填されている。熱伝導材120は、ボビン101(切欠部101Ca)の底面と、支柱107(第2の部分107B)の上面との双方に面接触している。これにより、ボビン101と支柱107とが、熱伝導材120を介して互いに物理的に接続した状態となっている。
【0024】
これにより、本実施形態の電磁リレー100は、電磁コイル102に通電したときに電磁コイル102から発せられる熱が、ボビン101、熱伝導材120、及び支柱107を介して、固定接点106に伝わるようになっている。すなわち、電磁リレー100は、電磁コイル102から発せられた熱を利用して、固定接点106を積極的に温めることができる構成となっている。
【0025】
また、本実施形態の電磁リレー100は、電磁コイル102に通電したときに電磁コイル102から発せられる熱が、ヨーク104及び板ばね109を介して、可動接点108にも伝わるようになっている。すなわち、電磁リレー100は、電磁コイル102から発せられた熱を利用して、可動接点108を積極的に温めることができる構成にもなっている。
【0026】
したがって、本実施形態の電磁リレー100によれば、固定接点106及び可動接点108の双方の温度低下をより確実に抑制でき、固定接点106及び可動接点108の双方の結露をより確実に防止することができる。
【0027】
図1の例では、熱伝導材120として、絶縁性素材、且つ、シリコンフリーの熱伝導ペーストを用いているが、熱伝導材120の材質及び形状は、これに限らない。例えば、熱伝導材120として、ボビン101と支柱107との間に、シート状の部材を配置するようにしてもよい。
【0028】
また、
図1の例では、電磁コイル102と固定接点106との間が、樹脂製のボビン101によって絶縁されている。このため、熱伝導材120には、絶縁性素材のみならず、導電性素材(例えば、金属等)を用いることもできる。
【0029】
(電磁リレー100の第1変形例)
図2は、実施形態に係る電磁リレー100の第1変形例を示す図である。
図2に示す電磁リレー100Aは、熱伝導材120の代わりに熱伝導材120Aを備える点で、
図1に示す電磁リレー100と異なる。
【0030】
図2の例において、熱伝導材120Aは、ボビン101(つば部101C)の一部としての外観をなすように、ボビン101(つば部101C)の切り欠かれた部分を補充する樹脂製の部材である。熱伝導材120Aは、その左側面がボビン101(つば部101C)に面接触しており、その底面が支柱107(第2の部分107B)の上面に面接触している。これにより、ボビン101と支柱107とが、熱伝導材120Aを介して互いに物理的に接続した状態となっている。
【0031】
これにより、第1変形例の電磁リレー100Aは、電磁コイル102に通電したときに電磁コイル102から発せられた熱が、ボビン101、熱伝導材120A、及び支柱107を介して、固定接点106に伝わるようになっている。すなわち、電磁リレー100Aは、電磁コイル102から発せられた熱を利用して、固定接点106を積極的に温めることができる構成となっている。したがって、電磁リレー100Aによれば、固定接点106の温度低下をより確実に抑制でき、固定接点106の結露をより確実に防止することができる。
【0032】
なお、熱伝導材120Aは、ボビン101と一体的に形成されたものであってもよく、ボビン101とは別体的に形成されたものであって、ボビン101に接着剤等によって接着されたものであってもよい。また、熱伝導材120Aは、支柱107(第2の部分107B)の上面に単に面接触しているだけであってもよく、支柱107(第2の部分107B)の上面に接着剤等によって接着されてもよい。
【0033】
(電磁リレー100の第2変形例)
図3は、実施形態に係る電磁リレー100の第2変形例を示す図である。
図3に示す電磁リレー100Bは、熱伝導材120の代わりに熱伝導材120Bを備える点で、
図1に示す電磁リレー100と異なる。
【0034】
図3の例において、熱伝導材120Bは、電磁コイル102の右側方に立設されている、金属製且つ壁状の部材である。熱伝導材120Bは、コイルから発せられた輻射熱を受熱する受熱板として機能する。熱伝導材120Bの下端は、左方向に向かって折れ曲がって、ボビン101(切欠部101Ca)と支柱107(第2の部分107B)との間の隙間内に入り込んでおり、この折れ曲がっている部分の底面が、支柱107(第2の部分107B)の上面に面接触している。
【0035】
これにより、第1変形例の電磁リレー100Bは、電磁コイル102に通電したときに電磁コイル102から発せられた輻射熱が、熱伝導材120B及び支柱107を介して、固定接点106に伝わるようになっている。すなわち、電磁リレー100Bは、電磁コイル102から発せられた熱を利用して、固定接点106を積極的に温めることができる構成となっている。したがって、電磁リレー100Bによれば、固定接点106の温度低下をより確実に抑制でき、固定接点106の結露をより確実に防止することができる。
【0036】
なお、熱伝導材120Bは、電磁コイル102に接触していない。このため、熱伝導材120Bとして、絶縁性素材(例えば、樹脂等)を用いてもよく、導電性素材(例えば、金属等)を用いてもよい。後者の場合であっても、電磁コイル102の電流が、固定接点106に流れてしまうことはない。
【0037】
また、熱伝導材120Bは、電磁コイル102の一部を取り囲むように構成されていてもよく、電磁コイル102全体を取り囲むように構成されていてもよい。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0039】
例えば、「熱伝導材」は、本実施形態で説明した構成に限らず、少なくとも、電磁コイルから発せられる熱を、熱伝導または輻射によって固定接点に伝えることが可能な構成であれば、如何なる構成であってもよい。
【0040】
また、「熱伝導材」は、ボビンに接触したものに限らず、その他の構成部品(例えば、電磁コイル、コア、ヨーク等。但し、電磁コイルから発せられる熱が伝わる構成部品)に接触したものであってもよい。
【0041】
また、「熱伝導材」は、電磁コイルから発せられる熱を熱伝導によって固定接点に伝えることが可能な構成(例えば、
図1,2の構成)と、電磁コイルから発せられる熱を輻射によって固定接点に伝えることが可能な構成(例えば、
図3の構成)とが組み合わされたものであってもよい。
【0042】
また、本実施形態では、本発明をヒンジ型の電磁リレーに適用した例を説明したが、本発明は、他の型式(例えば、プランジャ型)の電磁リレーにも適用可能である。
【0043】
また、本発明は、車両の電装系の制御用の電磁リレーに限らず、例えば、車両以外の交通手段(例えば、飛行機、鉄道、船舶等)の電装系の制御用、又は、車両以外の電気機器(例えば、家庭用又は業務用の電気機器等)の制御用の電磁リレーとしても適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
100,100A,100B 電磁リレー
101 ボビン
101A 軸部
101B,101C つば部
102 電磁コイル
103 コア
104 ヨーク
105 端子ホルダ
106 固定接点
107 支柱
108 可動接点
109 板バネ
110 固定接点側端子
111 可動接点側端子
120,120A,120B 熱伝導材