(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】CMP研磨パッドのための研磨くず除去溝
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220105BHJP
B24B 37/26 20120101ALI20220105BHJP
【FI】
H01L21/304 622F
B24B37/26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017056833
(22)【出願日】2017-03-23
【審査請求日】2020-03-09
(32)【優先日】2016-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】リー・メルボルン・クック
(72)【発明者】
【氏名】ユファ・トン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ソー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ジェームズ・ヘンドロン
(72)【発明者】
【氏名】パトリシア・コネル
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-156876(JP,A)
【文献】特開2007-081322(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0311955(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つを、研磨流体及び研磨パッドと前記半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つとの間の相対運動によって研磨又は平坦化するのに適した研磨パッドであって、
ポリマーマトリックス及び厚さを有する研磨層であって、中心、周縁、前記中心から前記周縁まで延びる半径及び前記中心を包囲し、前記半径と交差する研磨トラックを含む研磨層であり、前記研磨トラックが、前記半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つを研磨又は平坦化するための前記研磨層の作用領域を表す、研磨層と、
前記半径と交差する複数の供給溝(δ)であって、供給溝(δ)が、前記半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つを前記研磨パッド及び前記研磨流体で研磨又は平坦化するためのランドエリアを供給溝(δ)の間に有し、複数の供給溝(δ)が、
幅と深さを掛けて計算される平均供給断面積(δ
a)を有し、平均供給断面積(δ
a)が、各供給溝の合計断面積を供給溝(δ)の総数で割ったものである、複数の供給溝(δ)と、
前記研磨流体が前記複数の供給溝(δ)から少なくとも一つの半径方向排流溝(ρ)に流れることを許すための、前記複数の供給溝(δ)と交差する、前記研磨層中の少なくとも一つの半径方向排流溝(ρ)と、を含み、
前記少なくとも一つの半径方向排流溝(ρ)が
幅と深さを掛けて計算される平均排流断面積(ρ
a)を有し、
前記少なくとも一つの半径方向排流溝の前記平均排流断面積(ρ
a)が、
2*δ
a≦ρ
a≦
6*δ
a
(式中、(n
r)は半径方向溝の数を表し、(n
f)は供給溝の数を表す)
及び
(0.15)n
f*δ
a≦n
r*ρ
a≦(0.35)n
f*δ
a
ここでn
r
は1~16であり、
にしたがって前記平均供給断面積(δ
a)よりも大きく、
前記少なくとも一つの半径方向排流溝(ρ)が前記研磨トラックを通過して延びて、前記研磨パッドの回転中、研磨くずを、前記半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つの下で、前記研磨トラックに通し、前記研磨トラックを越えさせて前記研磨パッドの前記周縁へと除去することを促進する、研磨パッド。
【請求項2】
前記供給溝が同心円弧であ
り、
n
r
は2~12である、
請求項1記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルメカニカル研磨パッドのための溝に関する。より具体的には、本発明は、ケミカルメカニカルポリッシング中の欠陥を減らすための溝設計に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路及び他の電子装置の作製においては、導体、半導体及び絶縁材料の複数の層を半導体ウェーハの表面に付着させたり、半導体ウェーハの表面から除去したりする。導体、半導体及び絶縁材料の薄層は、いくつかの付着技術を使用して付着させることができる。最新のウェーハ加工において一般的な付着技術としては、とりわけ、スパッタリングとも知られる物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、プラズマ増強化学蒸着法(PECVD)及び電気化学的めっき法がある。一般的な除去技術としては、とりわけ、湿式及び乾式の等方性及び異方性エッチングがある。
【0003】
材料層が順次に付着され、除去されるにつれ、ウェーハの最上面は非平坦になる。後続の半導体加工(たとえばメタライゼーション)は、ウェーハが平坦面を有することを要するため、ウェーハは平坦化されなければならない。平坦化は、望まれない表面トポグラフィーならびに表面欠陥、たとえば粗面、凝集した材料、結晶格子の損傷、スクラッチ及び汚染された層又は材料を除去するのに有用である。
【0004】
ケミカルメカニカルプラナリゼーション又はケミカルメカニカルポリッシング(CMP)は、半導体ウェーハのような加工物を平坦化又は研磨するために使用される一般的な技術である。従来のCMPにおいては、ウェーハキャリヤ、すなわち研磨ヘッドがキャリヤアセンブリに取り付けられる。その研磨ヘッドがウェーハを保持し、ウェーハを、CMP装置内でテーブル又はプラテン上に取り付けられている研磨パッドの研磨層と接する状態に配置する。キャリヤアセンブリがウェーハと研磨パッドとの間に制御可能な圧を提供する。同時に、研磨媒(たとえばスラリー)が研磨パッド上に小出しされ、ウェーハと研磨層との間の間隙に引き込まれる。研磨パッド及びウェーハは一般に互いに対して回転して基材を研磨する。研磨パッドがウェーハの下で回転するとき、ウェーハは一般に環状の研磨トラック、すなわち研磨領域を掃き出し、その中でウェーハ表面が研磨層と直接対面する。ウェーハ表面は、研磨層及び表面上の研磨媒の化学的かつ機械的作用によって研磨され、平坦化される。
【0005】
Reinhardtらの米国特許第5,578,362号は、パッドにマクロテキスチャを設けるための溝の使用を開示している。特に、多様なパターン、等高線、溝、らせん形、放射状、ドット又は他の形状を開示している。Reinhardtに含まれる具体例は、同心円及びX-Y溝を重ねられた同心円である。同心円状の溝パターンはパッドの縁への直接的な流路を提供しないため、同心円状の溝はもっとも一般的な溝パターンであることがわかった。
【0006】
Linらは、米国特許第6,120,366号において、円形+半径方向の溝の組み合わせを開示している。この例は、24本の半径方向溝を同心円状の溝パターンに加えることを示す。この溝パターンの欠点は、スラリー使用量の実質的増加のせいで、研磨において限られた改善しか提供しないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それにもかかわらず、研磨性能とスラリー使用量とのより良い組み合わせを有するケミカルメカニカル研磨パッドの必要性が絶えずある。さらには、欠陥を減らし、研磨パッド耐用寿命を延ばす溝の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つを、研磨流体及び研磨パッドと半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つとの間の相対運動によって研磨又は平坦化するのに適した研磨パッドであって、ポリマーマトリックス及び厚さを有する研磨層であって、中心、周縁、中心から周縁まで延びる半径及び中心を包囲し、半径と交差する研磨トラック(半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つを研磨又は平坦化するための研磨層の作用領域を表す)を含む研磨層と;半径と交差する複数の供給溝(δ)であって、半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つを研磨パッド及び研磨流体で研磨又は平坦化するためのランドエリアを供給溝(δ)の間に有し、平均供給断面積(δa)(各供給溝の合計断面積を供給溝(δ)の総数で割ったもの)を有する複数の供給溝(δ)と;研磨流体が複数の供給溝(δ)から少なくとも一つの半径方向排流溝(ρ)に流れることを許すための、複数の供給溝(δ)と交差する、研磨層中の少なくとも一つの半径方向排流溝(ρ)とを含み、少なくとも一つの半径方向排流溝(ρ)が平均排流断面積(ρa)を有し、少なくとも一つの半径方向排流溝の平均排流断面積(ρa)が、
2*δa≦ρa≦8*δa
(式中、(nr)は半径方向溝の数を表し、(nf)は供給溝の数を表す)
及び
(0.15)nf*δa≦nr*ρa≦(0.35)nf*δa
にしたがって平均供給断面積(δa)よりも大きく、少なくとも一つの半径方向排流溝(ρ)が研磨トラックを通過して延びて、研磨パッドの回転中、研磨くずを、半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つの下で、研磨トラックに通し、研磨トラックを越えさせて研磨パッドの周縁へと除去することを促進する、研磨パッドを提供する。
【0009】
本発明の代替態様は、半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つを、研磨流体及び研磨パッドと半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つとの間の相対運動によって研磨又は平坦化するのに適した研磨パッドであって、ポリマーマトリックス及び厚さを有する研磨層であって、中心、周縁、中心から周縁まで延びる半径及び中心を包囲し、半径と交差する研磨トラック(半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つを研磨又は平坦化するための研磨層の作用領域を表す)を含む研磨層と;半径と交差する複数の供給溝(δ)であって、半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つを研磨パッド及び研磨流体で研磨又は平坦化するためのランドエリアを供給溝(δ)の間に有し、平均供給断面積(δa)(各供給溝の合計断面積を供給溝(δ)の総数で割ったもの)を有する複数の供給溝(δ)と;研磨流体が複数の供給溝(δ)から少なくとも一つの半径方向排流溝(ρ)に流れることを許すための、複数の供給溝(δ)と交差する、研磨層中の少なくとも一つの半径方向排流溝(ρ)とを含み、少なくとも一つの半径方向排流溝(ρ)が平均排流断面積(ρa)を有し、少なくとも一つの半径方向排流溝の平均排流断面積(ρa)が、
2*δa≦ρa≦8*δa
(式中、(nr)は半径方向溝の数を表し、(nf)は供給溝の数を表す)
及び
(0.15)nf*δa≦nr*ρa≦(0.35)nf*δa
(式中、nrは数2~12に等しい)
にしたがって平均供給断面積(δa)よりも大きく、少なくとも一つの半径方向排流溝(ρ)が研磨トラックを通過して延びて、研磨パッドの回転中、研磨くずを、半導体基材、光学基材及び磁性基材の少なくとも一つの下で、研磨トラックに通し、研磨トラックを越えさせて研磨パッドの周縁へと除去することを促進する、研磨パッドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来技術の円形+半径方向溝パターンの略平面図である。
【
図2】本発明の研磨くず除去溝の一部切欠き略平面図である。
【
図2A】周縁ランドエリアを含む本発明の研磨くず除去溝の一部切欠き略平面図である。
【
図3】供給溝及び研磨くず除去溝を通過する流れを示す本発明の研磨くず除去溝の一部切欠き略平面図である。
【
図3A】供給溝及び研磨くず除去溝を通過する流れを示す、周縁ランドエリアを含む本発明の研磨くず除去溝の一部切欠き略平面図である。
【
図4】一つの研磨くず除去溝及びウェーハ基材を有する本発明の研磨くず溝パターンの略平面図である。
【
図5】二つの研磨くず除去溝及びウェーハ基材を有する本発明の研磨くず溝パターンの略平面図である。
【
図6】四つの研磨くず除去溝を有する本発明の研磨くず溝パターンの略平面図である。
【
図6A】四つの研磨くず除去溝を有する、周縁ランドエリアを含む本発明の研磨くず溝パターンの略平面図である。
【
図7】八つの研磨くず除去溝を有する本発明の研磨くず溝パターンの略平面図である。
【
図8】16本の研磨くず除去溝を有する本発明の研磨くず溝パターンの略平面図である。
【
図9】八つのテーパ状研磨くず除去溝を有する本発明の研磨くず溝パターンの略平面図である。
【
図10】使用される排流溝の数の関数としての半径方向排流溝比のプロットである。
【
図11】本発明の研磨パッド溝パターンを含む、時間に対する全欠陥数のプロットである。
【
図12】対照パッド及び本発明の90mil(0.23cm)ラジアルオーバレイサンプルに関する、時間に対する全欠陥数のプロットである。
【
図13】本発明の研磨パッド溝パターンを含むHFエッチング後の欠陥概要のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
独立気泡パッド材料における除去プロセスは、パッド側に凹凸を含む薄い潤滑膜の中で起こる。除去が起こるためには、凹凸が基材表面と直接的又は半直接的に接触しなければならない。これは、液体輸送及び静水圧の軽減を促進するように表面テキスチャを設計し、排流を促進するように溝又は他の種類のマクロテキスチャを組み込むことによって影響される。うまく制御された接触の維持は、プロセス条件、溝間のランドエリア中のテキスチャの維持及び多様な他の変数に対して相対的に敏感である。
【0012】
現在のパッド中の基材接触ゾーン中の局所環境は以下のような特徴を有する。
【0013】
表面積/体積比(S/V)はウェーハ側及びパッド側のいずれでも非常に高く、>200:1などである。これが潤滑膜内の液体輸送を非常に困難にする。特に、研磨中の質量除去速度を考慮すると、潤滑膜は、反応体中で有意に消耗し、反応生成物中で有意に富化される。
【0014】
液体温度は周囲温度よりもずっと高く、深さ及び横方向勾配が大きい。これは、マクロ及びミクロレベルの有意な詳細において内部的に研究されている。研磨プロセスは多大なエネルギーを消費するが、そのすべてが除去を生じさせるわけではない。液体内の接触又は接触に近い摩擦及び粘性摩擦が有意な接触加熱を発生させる。パッドは効率的な断熱材であるため、発生した熱の大部分は液体中に散逸する。したがって、潤滑膜内の、特に凹凸の近くの局所環境は弱熱水性である。温度勾配が、高いS/Vとともに、特にパッド表面のテキスチャ容積内に反応生成物を沈殿させるための駆動力を提供する。反応生成物はかなり大きくありがちであり、時間とともに成長することが予想されるため、これは、微小スクラッチ欠陥を生じさせる主要な機構の一つとなることができる。モノマー可溶性に対する温度効果が非常に顕著であるため、シリカ沈殿が大きな懸念である。
【0015】
基材表面上の点の基準系から、熱及び反応履歴は極端な周期的変動を受ける。この周期的変動に対する有意な寄与が、パッド中の溝の必要性である(ウェーハとの均一な接触に影響するために)。溝中の液体環境はランドエリア中の液体環境とは有意に異なる。有意に冷温であり、反応体が有意に富化され、反応生成物が有意に少ない。したがって、ウェーハ上の各点は、これら二つの非常に異なる環境の間で急速な循環を見る。これは、研磨副生成物を特に接触の後縁でウェーハ表面に再付着させるための駆動力を提供することができる。
【0016】
ウェーハ接触中、ランドエリアへのスラリー輸送は溝を介して起こる。残念ながら、溝は二つの目的:新鮮なスラリーを供給する目的及び使用済みスラリーを除去する目的を果たす。すべての現在のパッド設計において、これが同じ容積中で同時に起こらなければならない。したがって、ランドは、新鮮なスラリーを供給されず、可変性混合物を供給される。可変性混合物が発生する場所は逆混合ゾーンとして知られる。逆混合ゾーンは、溝設計によって減らすことはできるが、なくすことはできない。これが、スクラッチ及び残渣付着の両方をもたらす大きな粒子のもう一つの有意な発生源となる。最大の懸念は、溝中のスラリーが連続的に更新されず、大きな凝集粒子の形成及び成長が連続的に起こることである。新鮮なスラリーの導入と無計画な液体輸送とが同時にあるならば、これらの大きな粒子は、最終的には、ますます大きな数でランド面に打ち寄せて、スクラッチ欠陥の漸増を生じさせる。この効果は、プロセス条件又はコンディショニングのモードにかかわらず、パッドの使用中に一般に認められる。パッド寿命中の欠陥率変化は以下のような三つの領域を有する。(a)新品パッドが導入されたとき(ならし時)の高い初期欠陥率;(b)ならし欠陥率がその使用の分だけ低い定常状態へと低下する領域;及び(c)欠陥率及びウェーハ不均一性が望ましくなく高いレベルまで増大する寿命の終わり状態。上記から、領域(c)を防ぐ、又は遅らせることがパッドの耐用研磨寿命を改善することは明らかである。
【0017】
もっとも一般的に使用される供給溝タイプは円形である。これらの円形溝が半径方向排流溝と交差するとき、それらは円弧を形成する。あるいはまた、供給溝は線分又は正弦波であることもできる。多くの異なる供給溝幅、深さ及びピッチが市販されている。
【0018】
従来技術の溝は一般に、流体力学的応答を制御することによって率均一性及びパッド寿命を改善するように経験的に開発されたものである。これは一般に、特に円形設計の場合、相対的に細い溝を生じさせる。もっとも広く用いられている円形溝は、以下のような溝規格:幅0.020インチ×深さ0.030インチ×ピッチ0.120インチ(幅0.050cm×深さ0.076cm×ピッチ0.305cm)に合わせて製造された1010溝である。これらの寸法の溝を接続したものでさえ、小さい断面積のせいで、液体を輸送するのに効率的な輸送手段ではない。さらなる問題が、露出したパッド表面の粗さである。IC1000のような独立気泡多孔性ポリマーは一般に、約50ミクロンの表面粗さを有する。>50:1の表面積/液体積比を有する1010溝の場合、側壁テキスチャに含まれる液体量の割合が非常に高い(約11%)。これは、側壁における流れの停滞を招く。これが廃棄物凝集の原因であり、この廃棄物は、パッド表面に再び導入されるならば、時間とともに、大きな損傷性の点スクラッチ源へと成長する。溝の外への指向性の流れはないため、少なくとも一つの排流溝の付加によって溝からスラリーを効率的に除去する手段の付加が、大きな粒子の凝集又は成長を防ぎ、ひいてはスクラッチを減らす。改善された溝排流は早速に有益な効果を発揮すると予想されるが、最大の利益は、寿命の終わり効果が出現する前の実用寿命の増大である。
【0019】
図1を参照すると、研磨パッド10は、円形溝12と半径方向溝16との組み合わせを含む。平坦な、一般には多孔性のランドエリア14が円形溝12及び半径方向溝16を分けている。研磨中、円形溝12が半径方向溝16と組み合わさって、研磨スラリー又は研磨溶液をランドエリア14に分配して、基材、たとえば半導体基材、光学基材又は磁性基材の少なくとも一つと相互作用させる。円形溝12及び半径方向溝16は均一な断面を有する。これらの溝パターンに伴う問題は、時間とともに、研磨くずが溝12及び16中に集まり、その後、定期的にランドエリア14に移動し、そこで欠陥、たとえば基材のスクラッチ欠陥を付与するということである。
【0020】
図2を参照すると、研磨パッド200は、すべて半径方向排流溝216に流れ込むことができる供給溝202A、204A、206A、208A及び202B、204B、206B、208Bを含む。この実施形態において、半径方向排流溝216は、供給溝の深さに等しい深さ「D」を有する。研磨中、供給溝202A、204A、206A、208A及び202B、204B、206B、208Bならびに半径方向排流溝216は、研磨スラリー又は溶液をランドエリア214上に分配する。矢印が、研磨パッド200の周壁234に達し、それを通り過ぎる研磨スラリー又は溶液の流れを示す。右回り研磨中、供給溝202A、204A、206A及び208Aからの流れは、供給溝202B、204B、206B及び208Bからの流れよりも大きい。左回り研磨中、供給溝202B、204B、206B及び208Bからの流れは供給溝202A、204A、206A及び208Aからの流れよりも大きい。この任意選択の実施形態は、すべての研磨くずが邪魔されずに半径方向排流溝216を通って研磨パッド200から出ることを許す。
【0021】
図2Aを参照すると、研磨パッド200は、すべて半径方向排流溝216に流れ込むことができる供給溝202A、204A、206A及び202B、204B、206Bを含む。この実施形態において、半径方向排流溝216は、供給溝の深さ又は側壁232の高さに等しい深さ「D」を有する。研磨中、供給溝202A、204A、206A及び202B、204B、206Bならびに半径方向排流溝216は、研磨スラリー又は溶液をランドエリア214上に分配する。排流溝216から、研磨スラリー又は溶液は周縁溝210A及び210Bを通って流れる。そして、研磨スラリー又は溶液は、周縁溝210A及び210Bから出て周縁ランドエリア220を乗り越え、周壁222を通り過ぎる。矢印が、周縁溝210A及び210Bに達し、周縁ランドエリア220を乗り越え、研磨パッド200の周壁222を通り過ぎる研磨スラリー又は溶液の流れを示す。右回り研磨中、供給溝202A、204A及び206Aからの流れは供給溝202B、204B及び206Bからの流れよりも大きい。左回り研磨中、供給溝202B、204B及び206Bからの流れは供給溝202A、204A及び206Aからの流れよりも大きい。この任意選択の実施形態は、研磨スラリー又は溶液の排出を遅らせ、いくつかの研磨組み合わせの場合、研磨効率を高めることができる。
【0022】
図3を参照すると、研磨パッド300は、すべて半径方向排流溝316に流れ込むことができる供給溝302A、304A、306A、308A及び302B、304B、306B、308Bを含む。この実施形態において、半径方向排流溝316は、供給溝302A、304A、306A、308A及び302B、304B、306B、308Bの深さD
1よりも大きい深さ「D」を有する。特に、排流溝316は、供給溝302A、304A、306A、308A及び302B、304B、306B、308Bの深さD
1の下にさらなる深さD
2だけ延びている。側壁332の高さは深さD
1+深さD
2に等しい。研磨中、供給溝302A、304A、306A、308A及び302B、304B、306B、308Bならびに半径方向排流溝316は、研磨スラリー又は溶液をランドエリア314上に分配する。矢印が、研磨パッド300の周壁334に達し、それを通り過ぎる研磨スラリー又は溶液の流れを示す。右回り研磨中、供給溝302A、304A及び308Aからの流れは供給溝302B、304B、306B及び308Bからの流れよりも大きい。左回り研磨中、供給溝302B、304B、306B及び308Bからの流れは供給溝302A、304A及び308Aからの流れよりも大きい。この任意選択の実施形態は、すべての研磨くずが邪魔されずに半径方向排流溝316を通って研磨パッド300から出ることを許す。
【0023】
図3Aを参照すると、研磨パッド300は、すべて半径方向排流溝316に流れ込むことができる供給溝302A、304A、306A及び302B、304B、306Bを含む。この実施形態において、半径方向排流溝316は、供給溝302A、304A、306A、308A及び302B、304B、306B、308Bの深さD
1よりも大きい深さ「D」を有する。特に、排流溝316は、供給溝302A、304A、306A、308A及び302B、304B、306B、308Bの深さD
1の下にさらなる深さD
2だけ延びている。この設計は、周縁ランドエリア320を乗り越えて研磨パッド300の周壁322に達する高密度研磨くずの流れを促進する。研磨中、供給溝302A、304A、306A及び302B、304B、306Bならびに半径方向排流溝316は、研磨スラリー又は溶液をランドエリア314上に分配する。排流溝316から、研磨スラリー又は溶液は周縁溝310A及び310Bを通って流れる。そして、研磨スラリー又は溶液は、周縁溝310A及び310Bから出て周縁ランドエリア320を乗り越え、周壁322を通り過ぎる。矢印が、周縁溝310A及び310Bに達し、周縁ランドエリア320を乗り越え、研磨パッド300の周壁322を通り過ぎる研磨スラリー又は溶液の流れを示す。右回り研磨中、供給溝302A、304A及び306Aからの流れは供給溝302B、304B及び306Bからの流れよりも大きい。左回り研磨中、供給溝302B、304B及び306Bからの流れは供給溝302A、304A及び306Aからの流れよりも大きい。この任意選択の実施形態は、研磨スラリー又は溶液の排出を遅らせ、いくつかの研磨組み合わせの場合、研磨効率を高めることができる。
【0024】
図4を参照すると、研磨パッド400は中心401及び周縁405を有し、半径rが中心401から周縁405まで延びている。この実施形態においては、ウェーハ440が、平行な線で印されたウェーハトラックの周りかつ一つの半径方向排流溝416の上で、研磨パッド400に対して動く。
図4は、複数の供給溝412及びランドエリア414を覆うウェーハを示す。半径方向排流溝416は、ウェーハトラックの中及びウェーハトラックの外のすべての供給溝から流れを抜く。
【0025】
図5を参照すると、研磨パッド500は、平行な線で印されたウェーハトラックの周りかつ180°離れた二つの半径方向排流溝516A及び516Bの上で、研磨パッド500に対して動くウェーハ540を示す。
図5は、複数の供給溝512及びランドエリア514を覆うウェーハを示す。特に、半径方向排流溝516は、研磨トラックを通過して延びて、研磨パッド500の回転中、研磨くずを、ウェーハの下で、研磨トラックに通し、研磨トラックを越えさせて研磨パッド500の周縁505へと除去することを促進する。半径方向排流溝516A及び516Bは、ウェーハトラックの中及びウェーハトラックの外のすべての供給溝から流れを抜く。
【0026】
図6を参照すると、研磨パッド600は、90°離れた四つの半径方向排流溝616A~616Bを示す。あるいはまた、半径方向排流溝及び供給溝の間隔は均等でなくてもよい。動作中、研磨スラリー又は溶液は、ランドエリア614を乗り越え、半径方向排流溝616A~616Dを通って周縁605に向かって外向きに流れる。半径方向排流溝616A~616Dは、ウェーハトラック(図示せず)の中及びウェーハトラックの外のすべての供給溝612から流れを抜く。
【0027】
図6Aを参照すると、研磨パッド600は、90°離れた四つの半径方向排流溝616A~616Bを示す。あるいはまた、半径方向排流溝及び供給溝の間隔は均等でなくてもよい。動作中、研磨スラリー又は溶液は、ランドエリア614を乗り越え、半径方向排流溝616A~616Dを通って周縁605に向かって外向きに流れる。研磨スラリー又は溶液は、周縁605に達する前に、周縁溝610に流れ込み、周縁溝610から周縁ランドエリア620を乗り越えて流れる。半径方向排流溝616A~616Dは、ウェーハトラック(図示せず)の中及びウェーハトラックの外のすべての供給溝612から流れを抜く。
【0028】
図7を参照すると、研磨パッド700は、45°離れた八つの半径方向排流溝716A~716Hを示す。あるいはまた、半径方向排流溝及び供給溝の間隔は均等でなくてもよい。動作中、研磨スラリー又は溶液は、ランドエリア714を乗り越え、半径方向排流溝716A~716Hを通って周縁705に向かって外向きに流れる。半径方向排流溝716A~716Hは、ウェーハトラック(図示せず)の中及びウェーハトラックの外のすべての供給溝712から流れを抜く。
【0029】
図8を参照すると、研磨パッド800は、22.5°離れた16本の半径方向排流溝916A~916Pを示す。あるいはまた、半径方向排流溝及び供給溝の間隔は均等でなくてもよい。動作中、研磨スラリー又は溶液は、ランドエリア814を乗り越え、半径方向排流溝816A~816Pを通って周縁805に向かって外向きに流れる。半径方向排流溝816A~816Pは、ウェーハトラック(図示せず)の中及びウェーハトラックの外のすべての供給溝812から流れを抜く。
【0030】
図9を参照すると、研磨パッド900は、45°離れた八つのテーパ状の半径方向排流溝916A~916Hを示す。あるいはまた、半径方向排流溝及び供給溝の間隔は均等でなくてもよい。動作中、研磨スラリー又は溶液は、ランドエリア914を乗り越え、テーパ状の半径方向排流溝916A~916Hを通って周縁905に向かって外向きに流れる。テーパ状の半径方向排流溝916A~916Hはすべて、中心901よりも周縁905に向かって大きい幅を有する。このテーパが、半径方向排流溝が増量した流体及び研磨くずの負担を受け入れることを可能にする。幅の代わりに、周縁に向かって深さを増大させて流量を増すこともできる。しかし、大部分の状況の場合、研磨スラリー又は溶液がパッドの周縁に向かって流れるとき、排流溝を通過する流量の増大を受け入れるには、遠心力の増大で十分である。
【0031】
本発明に関し、供給溝(δ)は平均供給断面積(δa)を有し、平均供給断面積(δa)は、各供給溝の合計断面積を供給溝(δ)の総数で割ったものである。半径方向排流溝(ρ)は平均排流断面積(ρa)を有し、半径方向排流溝の平均排流断面積(ρa)は、次式にしたがって、平均供給断面積(δa)の少なくとも2倍かつ供給断面積(δa)の8倍未満の大きさである。
2*δa≦ρa≦8*δa
式中、(nr)は半径方向溝の数を表し、(nf)は供給溝の数を表し、次式にしたがって、半径方向排流溝の各側からの合計を表す。
(0.15)nf*δa≦nr*ρa≦(0.35)nf*δa
一般に、nr*は1~16である。もっとも好都合には、nrは2~12である。
【実施例1】
【0032】
半径方向排流溝の数が増える(1、2、4、8及び16本)一連の研磨パッドが、一定の供給溝面積での排流能力増大を生じさせた。研磨パッドは次のような溝寸法を有するものであった。
【0033】
一つの円形供給溝の断面積:0.039cm2
【0034】
排流溝によって二分される供給溝の数:80
【0035】
一つの排流溝に供給する供給溝の合計断面積:=0.0039*80*2=0.624cm2
注:本明細書において使用される供給溝計算は、スラリーが供給溝と排流溝との間の各一つの交点の両側から流れるものと仮定する。たとえば、80本の円形供給溝は一つの排流溝とで160の溝交点を形成する。
一つの排流溝の断面積:0.01741932cm2
【0036】
一つの排流溝が適用された場合の供給溝断面積に対する半径方向排流溝断面積の比:0.03
【0037】
この実施例においては、一連の供給溝から効果的に流れを抜くのに一つの排流溝では不十分であった。しかし、複数の供給溝の付加により、排流効率を許容可能なレベルまで容易に高めることができる。
図10は、溝の数とともに改善された排流能力が高まることをグラフで示す。
【0038】
0.15未満の相対排流面積比は効果がない。パッドの上面への新鮮なスラリーの過剰な送り出しのせいで、半径方向溝の数は、スラリー送り出し速度を含むいくつかの変数に依存する。排流能力が高すぎるならば、これは、溝の中で利用可能なスラリーを不十分にしてしまい、結果的にパッドの乾燥を生じさせるおそれがある。これが、スクラッチ欠陥のような欠陥の有害な発生源である。本発明の排流溝は欠陥を減らす。同様に、低すぎる排流比は、十分な研磨副生成物を除去せず、欠陥を減らさない。高すぎる排流比は、流体力学に影響を及ぼし(ウェーハ不均一性の増大によって示される)、排流溝が用いられない場合よりも欠陥を増加させた。
【実施例2】
【0039】
最適範囲を評価するために、以下の実験を実施した。五つの異なる半径方向溝を一連の独立気泡ポリウレタン研磨パッドに適用した。これらのパッドは、幅20mil、深さ30mil及びピッチ120mil(0.051cm×0.076cm×ピッチ0.305cm)の円形溝を有するものであった。呼称ならびに半径方向溝の寸法及び数を表1に示す。
【0040】
【0041】
【0042】
研磨条件は以下のように要約される。
MDC Mirra、K1505-50μmコロイダルスラリー
Saesol AK45(8031cl)ダイアモンドディスク、パッドならし30分7psi(48kPa)、全インサイチュー条件7psi(48kPa)
プロセス:パッドダウンフォース3psi(20.7kPa)
プラテン速度93rpm
キャリヤ速度87rpm
スラリー流量200ml/m
11、37、63、89、115、141、167及び193のウェーハカウントで研磨されたウェーハをモニタ。
KLA-TencorからのSurfscan SP1アナライザを用いて欠陥カウントを実施。
【0043】
各パッドをならし運用して始動効果を排除し、200個のウェーハを研磨して速度及び欠陥率安定性を評価した。パッド間の速度に大きな差はなかった。しかし、
図11及び12に示すように、欠陥率に有意な差があった。幅90mil(0.229cm)/8半径方向溝及び幅120mil(0.305cm)/8半径方向溝のパッドサンプルが、低く安定した欠陥レベルを示した。対照を含む他すべては、試験の期間とともに変化し、研磨時間の増大とともに増大する、より高い欠陥レベルを示した。これは、対照パッドの挙動を90mil(0.229cm)溝パッドと比較した
図11で特に明らかである。
【0044】
排流溝の数の倍増(供給溝に対する排流溝の面積比が0.225から0.45に増大)は、対照と比べてさえ、全体欠陥率を有意に増大させた。これは、排流効率比にとって決定的な範囲があるという暗示と考えられる。この決定的な範囲は、供給溝のサイズ及び数ならびに半径方向排流溝のサイズとともに変化することができる。
【0045】
また、HFエッチング後の欠陥データを調べて、全欠陥率をスクラッチ密度と比較した。HFエッチングは、粒子を除去するのに効果的であり、スクラッチに対する感度を高めた。理由は、HFが、クラックそのもの(デコレーション)の周囲のひずみ領域の除去によってスクラッチ深さを拡大するからである。
図13に示すように、90mil(0.229cm)/8及び120mil(0.305cm)/8パッドの場合でも同じ低く安定な欠陥応答が認められたが、60mil(0.152cm)/8パッド応答がさらに近似し、そのパッドサンプル中の全欠陥の大きな割合が、大きな損傷性の凝集塊ではなく、小さな粒状物であることを示した。これは、排流効率比には下限もあるという指示である。これらの結果に基づくと、供給溝に対する半径方向排流溝の面積比の決定的範囲0.2~0.3がもっとも好都合である。
【0046】
上記から、排流効率式を使用して、広く多様な供給溝寸法及びピッチの場合に欠陥率の低下を達成するために必要な排流溝の寸法及び数を決定することができることが明らかになる。いくつかの現実的な制限が課されることがある。たとえば、一つの排流溝しか用いないことは、回転の偏心のせいで、おそらく望ましくない。また、排流溝は半径方向溝又はその変形に限定されるべきであると結論づけられる。この理由は、a)一つの回転対称を有し、b)テキスチャ由来のナノトポグラフィー(望ましくない)に最小限しか寄与しないからである。また、溝寸法に関して、半径とともに幅が広がるように半径方向排流溝を設計し、パッドの周縁で計算される上記排流効率比の範囲に制限を加えることによって輸送をさらに規制することが望ましいかもしれない。
【0047】
本発明は、低い欠陥レベルを維持する長期的ケミカルメカニカルプラナリゼーション用途のための多孔性研磨パッドを形成するのに効果的である。加えて、これらのパッドは、研磨速度、大域的均一性を改善し、研磨振動を減らすことができる。