(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】太陽電池シートの施工構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/18 20180101AFI20220105BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20220105BHJP
【FI】
E04D13/18 ETD
H02S20/23 Z
(21)【出願番号】P 2017060868
(22)【出願日】2017-03-27
【審査請求日】2019-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】早川 明伸
(72)【発明者】
【氏名】浅野 元彦
(72)【発明者】
【氏名】会田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宇野 智仁
(72)【発明者】
【氏名】榑林 哲也
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-140420(JP,A)
【文献】特開2000-080774(JP,A)
【文献】特開平08-064852(JP,A)
【文献】特開平07-045852(JP,A)
【文献】特開平11-026794(JP,A)
【文献】特開2013-172117(JP,A)
【文献】特開2002-146978(JP,A)
【文献】特開2013-181311(JP,A)
【文献】国際公開第2007/032250(WO,A1)
【文献】特開2010-034489(JP,A)
【文献】特開2006-339684(JP,A)
【文献】特開2002-141542(JP,A)
【文献】特開2007-300086(JP,A)
【文献】国際公開第2011/111286(WO,A1)
【文献】特開2011-021468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/18
H02S 20/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部と谷部とが交互に形成されている複数枚の折版屋根材からなる折版屋根上に一定幅と長さを有し且つ柔軟性を有する太陽電池シートを張設してなる太陽電池シートの施工構造であって、各折版屋根材の山部には母屋材上に取付けている屋根材固定用金具の上端に突設したボルトを挿通させている挿通孔が山部の長さ方向に一定間隔毎に穿設されてあり、上記太陽電池シートの長辺側の両端縁部には金属フィルムと軟質の樹脂フィルムとが貼着されていると共にこれらの金属フィルムと樹脂フィルムを貫通して上記ボルトと同一間隔毎に取付孔が穿設されていて、これらの取付孔に上記折版屋根材の山部に穿設している挿通孔から上方に突出した上記ボルトが挿通され、ナットの螺締によって折版屋根上に太陽電池シートが張設、固定されており、互いに隣接する太陽電池シートが互いに対向する端部を重ね合わせられていると共に、上記太陽電池シートに穿設された取付孔同士が重ね合わせられて
おり、上記金属フィルムと上記軟質の樹脂フィルムは、上記太陽電池シートの長辺側の端縁部を全長に亘って被覆できる帯状形状に形成されてあり、上記太陽電池シートの上記端縁部の上面に上記軟質の樹脂フィルムを上側にして積層状態に貼着していることを特徴とする太陽電池シートの施工構造。
【請求項2】
山部と谷部とが交互に形成されている複数枚の折版屋根材からなる折版屋根上に一定幅と長さを有し且つ柔軟性を有する太陽電池シートを張設してなる太陽電池シートの施工構造であって、各折版屋根材の山部には母屋材上に取付けている屋根材固定用金具の上端に突設したボルトを挿通させている挿通孔が山部の長さ方向に一定間隔毎に穿設されてあり、上記太陽電池シートの長辺側の両端縁部には金属フィルムと軟質の樹脂フィルムとが貼着されていると共にこれらの金属フィルムと樹脂フィルムを貫通して上記ボルトと同一間隔毎に取付孔が穿設されていて、これらの取付孔に上記折版屋根材の山部に穿設している挿通孔から上方に突出した上記ボルトが挿通され、ナットの螺締によって折版屋根上に太陽電池シートが張設、固定されており、互いに隣接する太陽電池シートが互いに対向する端部を重ね合わせられていると共に、上記太陽電池シートに穿設された取付孔同士が重ね合わせられており、上記金属フィルムは上記太陽電池シートの長辺側の端縁部を全長に亘って被覆できる帯状形状に形成されている一方、上記軟質の樹脂フィルムは透光性であって、上記太陽電池シートと同大、同形の長方形状に形成されてあり、上記金属フィルムを上記太陽電池シートの上記端縁部の上面に貼着していると共に、上記樹脂フィルムを上記太陽電池シートの上面全面に貼着していることを特徴とする太陽電池シートの施工構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折版屋根材によって屋根葺きしてなる折版屋根上に太陽電池シートを施工してなる構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建物の折版屋根上に設置されて電気エネルギーを得る太陽光発電装置としては、例えば、特許文献1に記載されているように、一定幅と一定長さを有する複数の太陽電池パネルを折版屋根上に、隣接する太陽電池パネルの対向側端部が所定の折版屋根材上で一定間隔を存して対向するように載置し、これらの対向側端面を上記折版屋根材の中央部上に取り付けている断面U字状の連結具の両側立ち上がり突片にそれぞれ突き合わせ状に接合させてこの連結具により対向端部を固定してなる構造が知られている。
【0003】
しかしながら、このような太陽光発電装置では、施工に際して太陽電池パネルの取扱い等が煩雑で、施工に手間と労力を要し、施工費用も高くなるといった問題点がある。このため、近年、厚さが薄く、軽量で可撓性を有する太陽電池シートを使用し、この太陽電池シートを建物の屋根上に施工することが行われている。
【0004】
太陽電池シートを折版屋根または波形屋根上に施工するには、上記太陽電池パネルの施工方法を採用することが困難であるため、例えば、特許文献2に記載されているように、波形屋根の上面に接着剤を介して太陽電池シートを貼着したり、或いは、上面が平坦面で下面が波形屋根と同一形状の波形面に形成してなる一定厚みの発泡スチロール製板を上記波形屋根上に重ね合わせ、波形屋根の波形上面に接した波形下面を接着剤によって接着したのち、この発泡スチロール製板の平坦な上面に太陽電池シートを貼着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-40429号公報
【文献】特開2014-5591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載の太陽電池シートの施工構造によれば、波形屋根の上面や発泡スチロール製板の平坦な上面に対する接着剤の塗布作業が必要となって太陽電池シートの施工に著しい手間と労力を要するばかりでなく、貼着時に、太陽電池シートに皺やズレが発生して鮮度のよい施工が困難となるといった問題点がある。さらに、波形屋根の屋根材と太陽電池シートとの線膨脹係数の相違や接着剤の劣化等によって太陽電池シートが屋根材から剥離する虞れがある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、施工が容易で且つ精度よく行え、長期に亘って安定的に配設しておくことができると共に、既存の建物の折版屋根上に対しても容易に施工することができる太陽電池シートの施工構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の太陽電池シートの施工構造は、請求項1に記載したように、山部と谷部とが交互に形成されている複数枚の折版屋根材からなる折版屋根上に一定幅と長さを有する太陽電池シートを張設してなる太陽電池シートの施工構造であって、各折版屋根材の山部には母屋材上に取付けている屋根材固定用金具の上端に突設したボルトを挿通させている挿通孔が山部の長さ方向に一定間隔毎に穿設されてあり、上記太陽電池シートの長辺側の両端縁部には金属フィルムと軟質の樹脂フィルムとが貼着されていると共にこれらの金属フィルムと樹脂フィルムを貫通して上記ボルトと同一間隔毎に取付孔が穿設されていて、これらの取付孔に上記折版屋根材の山部に穿設している挿通孔から上方に突出した上記ボルトが挿通され、ナットの螺締によって折版屋根上に太陽電池シートが張設、固定されていることを特徴とする。
【0009】
このように構成した太陽電池シートの施工構造において、請求項2に係る発明は、太陽電池シートは折版屋根の山部の長さ方向に対して直交する方向に長い長方形状に形成されてあり、長さ方向に隣接する取付孔の間隔を折版屋根材の隣接する山部の挿通孔から突出したボルトの間隔と同一間隔に設定していると共に、幅方向に隣接する取付孔の間隔を折版屋根材の山部の長さ方向に隣接した挿通孔から突出しているボルトの間隔と同一間隔に設定していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、金属フィルムと軟質の樹脂フィルムは、太陽電池シートの長辺側の端縁部を全長に亘って被覆できる帯状形状に形成されてあり、軟質の樹脂フィルムを太陽電池シートの上面側に、金属フィルムを太陽電池シートの下面側に貼着していることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、金属フィルムは太陽電池シートの長辺側の端縁部を全長に亘って被覆できる帯状形状に形成されている一方、軟質の樹脂フィルムは透光性であって、太陽電池シートと同大、同形の長方形状に形成されてあり、この樹脂フィルムを太陽電池シートの上面全面に貼着している一方、上記金属フィルムを太陽電池シートの上記長辺側の端縁部の下面に貼着していることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、金属フィルムと透光性を有する軟質の樹脂フィルムは、太陽電池シートと同大、同形の長方形状に形成されてあり、軟質の樹脂フィルムを太陽電池シートの上面全面に、金属フィルムを太陽電池シートの下面全面に貼着していることを特徴とする。
【0013】
一方、請求項6に係る発明は、金属フィルムと軟質の樹脂フィルムは、太陽電池シートの長辺側の端縁部を全長に亘って被覆できる帯状形状に形成されてあり、太陽電池シートの上記端縁部の上面に軟質の樹脂フィルムを上側にして積層状態に貼着していることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、金属フィルムは太陽電池シートの長辺側の端縁部を全長に亘って被覆できる帯状形状に形成されている一方、軟質の樹脂フィルムは透光性であって、太陽電池シートと同大、同形の長方形状に形成されてあり、金属フィルムを太陽電池シートの上記端縁部の上面に貼着していると共に、樹脂フィルムを太陽電池シートの上面全面に貼着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、折版屋根上に一定幅と長さを有する太陽電池シートを張設してなる太陽電池シートの施工構造であって、長方形状の太陽電池シートの長辺側の両端縁部には、折版屋根材の山部にこの山部の長さ方向に一定間隔毎に穿設しているボルト挿通孔に挿通した折版屋根固定用金具上のボルトと同一間隔毎に取付孔を設けているので、既設の折版屋根であっても、折版屋根材の山部から上方に突出している上記ボルトに太陽電池シートの両側端部に穿設している取付孔を嵌め込んでナットを螺締することにより簡単に施工することができ、折版屋根上に太陽電池シートを全面的に張設した太陽電池シートの施工構造を提供することができる。
【0016】
さらに、上記太陽電池シートにはその長辺側の両端縁部に金属フィルムと軟質の樹脂フィルムとが貼着されて補強されていると共に、上記両端縁部を折版屋根材の山部上に密着させた状態でボルト・ナットにより固定しているので、風圧等に対する強度が大きくなり、強風等によって太陽電池シートに作用する引張力を上記金属フィルムと樹脂フィルムとによって吸収させ、太陽電池シートに破損等が生じるのを防止することができる。
【0017】
また、太陽電池シートは折版屋根上にその受光面を平坦にした状態で張設されているので美観に優れていると共に、上記金属フィルムによって太陽電池シートにおける少なくとも長辺側の両端縁部を保形しておくことができ、折版屋根上への太陽電池シートの施工が円滑に且つ精度よく行うことができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、上記太陽電池シートは、その長辺縁部において長さ方向に隣接する取付孔の間隔を上記折版屋根材の隣接する山部の挿通孔から突出したボルトの間隔と同一間隔に設定していると共に、幅方向に隣接する取付孔の間隔を折版屋根材の山部の長さ方向に隣接した挿通孔から突出しているボルトの間隔と同一間隔に設定しているので、太陽電池シートは太陽電池部の両面及び周囲が透明な樹脂フィルムからなる封止部材によって囲まれた構造を有しているが、その太陽電池部が設けられていない長辺側の端縁部に取付孔が穿設された構造となり、太陽電池部を損傷させたりすることなく、折版屋根上に太陽電池シートを簡単且つ正確に張設することができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、上記金属フィルムと軟質の樹脂フィルムは、太陽電池シートの長辺側の端縁部を全長に亘って被覆できる帯状形状に形成されてあり、軟質の樹脂フィルムを太陽電池シートの上面側に貼着しているので、太陽電池シートの端縁部に穿設している取付孔を折版屋根材の山部から上方に突出したボルトに嵌め込んで、ナットにより螺締した際に、ナットの座面となる樹脂フィルム部分がナットの締付けによって弾性的に圧縮して所定の張設位置に太陽電池シートを強固に固定することができる。
【0020】
さらに、太陽電池シートの端縁部における下面側に金属フィルムを貼着しているので、この金属フィルムを介して折版屋根材の山部上に太陽電池シートの端縁部下面を馴染みよく支持させることができると共に、太陽電池シートに歪みや皺等を生じさせることなく精度のよい太陽電池シートの施工を可能にすることができる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、太陽電池シートの上面全面に透光性を有する軟質樹脂フィルムを貼着しているので、太陽電池シートの上面をこの透光性を有する軟質樹脂フィルムによって保護して長期の使用に供することができる折版屋根上への太陽電池シート施工構造を提供することができる。
【0022】
また、請求項5に係る発明によれば、金属フィルムと軟質の樹脂フィルムは、太陽電池シートと同大、同形の長方形状に形成されてあり、軟質の樹脂フィルムを太陽電池シートの上面全面に、金属フィルムを太陽電池シートの下面全面に貼着しているので、太陽電池シートの上下面をこれらの樹脂フィルムと金属フィルムとによって全面的に保護しておくことができると共に風圧等による太陽電池シートの伸びを抑制して長期に亘り安定した電力供給を行うことができる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、金属フィルムと軟質の樹脂フィルムは、太陽電池シートの長辺側端縁部を全長に亘って被覆できる帯状形状に形成されてあり、太陽電池シートの上記端縁部の上面に軟質の樹脂フィルムを上側にして積層状態に貼着しているので、上記同様にこれらの金属フィルムと軟質の樹脂フィルムとによって風圧等による太陽電池シートの破損等の発生を抑制し、且つ、容易に精度のよく施工できる太陽電池シートの施工構造を提供することができる。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、金属フィルムは太陽電池シートの長辺側の端縁部を全長に亘って被覆できる帯状形状に形成されている一方、軟質の樹脂フィルムは透光性であって、太陽電池シートと同大、同形の長方形状に形成されてあり、金属フィルムを太陽電池シートの上記両端縁部の上面に貼着していると共に、樹脂フィルムを太陽電池シートの上面全面に貼着しているので、上記のように金属フィルムによる太陽電池シートの保形によって精度のよい施工を可能にすると共に、樹脂フィルムによって太陽電池シートの上面全面を保護してなる太陽電池シートの施工構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】折版屋根上への太陽電池シートの施工構造を示す簡略平面図。
【
図3】太陽電池シートの一部を切除した簡略拡大縦断側面図。
【
図4】太陽電池シートを張設した折版屋根材の縦断正面図。
【
図6】太陽電池シートの第一変形例を示す一部を切除した簡略拡大縦断側面図。
【
図7】太陽電池シートの第二変形例を示す一部を切除した簡略拡大縦断側面図。
【
図8】太陽電池シートの第三変形例を示す一部を切除した簡略拡大縦断側面図。
【
図9】太陽電池シートの第四変形例を示す一部を切除した簡略拡大縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の具体的な実施例を図面について説明すると、折版屋根上への太陽電池シートの施工構造は、
図1~
図5に示すように、山部1aと谷部1bとが交互に形成されている複数枚の折版屋根材1からなる折版屋根上に、一定幅と一定長さを有する長方形状の太陽電池シート2が複数枚、折版屋根材1の長さ方向及び幅方向に並列状態で張設されてなる構造を有している。
【0027】
折版屋根は、上面に屋根材固定用金具としてのタイトフレーム3を取付けている母屋材4を屋根の棟、軒方向(以下、前後方向とする)に一定間隔毎に並設し、並列した複数のタイトフレーム3、3、3・・間上に、折版屋根材1を、その長さ方向をタイトフレーム3の長さ方向に直交するように向けて掛け渡し、タイトフレーム3に支持された下面をボルト5aとナット5bとにより固定する作業を屋根全体に亘って行うことにより形成されている。なお、左右に隣接する折版屋根材1、1同士は、その対向する山部1a、1aを重ね合わせた状態にして上記ボルト・ナット5a、5bにより固定されている。
【0028】
上記タイトフレーム3は、折版屋根材1の山部1aと谷部1bとの下面をそれぞれ支持する山部3aと谷部3bとが左右方向に連続的に形成されてあり、その山部3aの頂面に上記ボルト5aを突設している一方、折版屋根材1の山部1aには隣接するタイトフレーム3、3における前後方向に対向するボルト5a、5aの間隔と同一間隔毎にボルト挿通孔6、6、・・・が長さ方向に複数個、穿設されている。
【0029】
この折版屋根材1のボルト挿通孔6、6・・・を上記並列したタイトフレーム3、3・・・のボルト5a、5a、・・に合わせて各ボルト5aに対応するボルト挿通孔6を被せるように嵌め込み、ボルト挿通孔6から突出したボルト5aに座金10を介してナット6bを螺締することにより、上記のように折版屋根材1が取り付けられている。
【0030】
折版屋根上に施工される上記太陽電池シート2は、折版屋根材1の山部1aの長さ方向に対して直交する方向、即ち、左右方向に長い横長長方形状に形成されあり、折版屋根の前後方向に向けている前後長辺縁部の端面間の幅は、折版屋根材1の山部1aに設けている前後に隣接するボルト挿通孔6、6間の幅よりも僅かに広幅にして長辺側の両端縁部によってこれらのボルト挿通孔6、6をそれぞれ被覆できる幅寸法に形成されている。また、この太陽電池シート2の長さは上記折版屋根材1の複数列の山部1aを被覆することができる長さに形成されている。
【0031】
太陽電池シート2は、太陽電池素子を含む太陽電池部2aの表裏両面及び周囲が透明な(投光性を有する)樹脂フィルムからなる封止部材2bによって囲まれた構造を有する。即ち、太陽電池シート2は、一対の透明な樹脂フィルムからなる封止部材2b間に太陽電池素子を含む太陽電池部2aが封止されて構成されている。太陽電池部2aが存在しない前後の長辺側の端縁部の上面には
図2、
図3に示すように、一定幅を有する帯状形状の軟質の樹脂フィルム7(例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエステル系樹脂フィルムなど)が全長に亘って貼着されてあり、上記前後の端縁部の下面には樹脂フィルム7と同大、同形の帯状のアルミ箔などの金属フィルム8が全長に亘って貼着されている。
【0032】
さらに、これらの樹脂フィルム7と太陽電池シート2と金属フィルム8とを貫通してこれらの樹脂フィルム7と金属フィルム8を貼着している太陽電池シート2の上記前後の両端縁部には、上記タイトフレーム3の左右に隣接する山部3a、3a上に突設したボルト5a、5a間の間隔と同一間隔毎に取付孔9、9・・・が長さ方向に複数個、穿設されている。
【0033】
このように構成している太陽電池シート2は、柔軟性を有しているので折版屋根上への施工前には巻き取られてあり、施工時には折版屋根上で展開し、その長さ方向を左右方向に向けて複数列の折版屋根材1、1・・・の山部1aにおける太陽電池シート2の幅に対向する長さ部分の頂面上に被せるように敷設し、折版屋根材1の山部1aに穿設している前後に隣接するボルト挿通孔6、6から上方に突出したボルト5a、5aに、これらのボルト5a、5aに対応して太陽電池シート2の前後両側端縁部に穿設している上記取付孔9、9を嵌め込み、取付孔9から突出したボルト5aに座金10を介してナット5bを螺締することにより、折版屋根材1上に太陽電池シート2が張設状態に施工されている。
【0034】
なお、折版屋根上に太陽電池シート2を施工するに先立って折版屋根材1のボルト挿通孔6から突出した上記ボルト5aに螺合しているナット5bを座金10と共に取り外しておく。折版屋根材1上への太陽電池シート2の張設施工は、折版屋根における軒側から行われ、太陽電池シート2を軒に沿って互いに対向する左右端部を重ね合わせた状態で施工したのち、棟側に向かって順次、太陽電池シート2の取付施工を行う。
【0035】
こうして、長辺側の両端縁部の上下面に軟質の樹脂フィルム7と金属フィルム8をそれぞれ貼着してあり、且つ、その両端縁部に長さ方向に一定間隔毎に取付孔9を設けてなる一定幅を有する横長長方形状の太陽電池シート2が複数枚、折版屋根を構成している複数列の折版屋根材1の山部1a上に前後、左右方向に並設した状態にしてボルト・ナット5a、5bによって固定された施工構造を得ることができる。
【0036】
そして、折版屋根上への上記太陽電池シート2の施工構造によれば、既設の折版屋根であっても、折版屋根材1の山部1aに穿設しているボルト挿通孔6から上方に突出しているタイトフレーム3上のボルト5aに太陽電池シート2の両側端部に穿設している取付孔9を嵌め込んでナット5bを螺締することにより簡単に施工することができる。
【0037】
さらに、上記太陽電池シート2にはその長辺側の両端縁部における上下面には軟質の樹脂フィルム7と金属フィルム8とがそれぞれ貼着されているので、ボルト5aに座金10を介してナット5bを螺締した際に、軟質の樹脂フィルム7が弾性的に圧縮変形して強固な取付けが可能となると共に、これらの樹脂フィルム7と金属フィルム8とによって折版屋根材1の山部1a上へのボルト・ナット5a、5bによる取付部が補強され、風圧等に対する強度が大きくなって長期に亘る使用が可能になるばかりでなく、皺や歪み等の発生が抑制されて受光面を全面に亘って平坦面に保持し、安定した受光と共に外観的にも優れた太陽電池シートの施工構造を提供することができる。
【0038】
以上の実施例においては、帯状の軟質樹脂フィルム7と金属フィルム8とを太陽電池シート2の長辺側の両端縁部における上下面にそれぞれ貼着しているが、太陽電池シート2に対するこのような軟質の樹脂フィルムと金属フィルムとの貼着構造としては、次に例示するような構造を採用してもよい。
【0039】
図6はこれらのフィルム貼着構造の第一変形例を示すもので、太陽電池シート2の上面全面に、この太陽電池シート2と同大、同形の長方形状の透明性を有する軟質樹脂フィルム7Aが貼着されてあり、太陽電池シート2の長辺側の端縁部における下面は帯状に形成されている一定幅を有する金属フィルム8Aが貼着されている。
【0040】
図7は第二変形例を示すもので、金属フィルム8Bと透光性を有する軟質の樹脂フィルム7Bとは、太陽電池シート2と同大、同形の長方形状に形成されてあり、透光性を有する軟質の樹脂フィルム7Bを太陽電池シート2の上面全面に、金属フィルム8Bを太陽電池シート2の下面全面に貼着している。このように、太陽電池シート2の上面全面を透光性を有する軟質の樹脂フィルム7Bによって被覆して太陽電池シート2を長期に亘り保護しておくことができると共に、金属フィルム8Bによって太陽電池シート2が保形され、一層、精度のよい且つ安定した太陽電池シート2の施工が可能となる。
【0041】
図8は第三変形例を示すもので、軟質の樹脂フィルム7Cと金属フィルム8Cとは、太陽電池シート2の前後の長辺縁部を全長に亘って被覆することができる一定幅を有する帯状形状に形成されてあり、太陽電池シート2における上記前後両側の側縁部の上面に軟質の樹脂フィルム7Cを上側にして積層状態に貼着している。
【0042】
図9は第四変形例を示すもので、金属フィルム8Dは太陽電池シート2の前後長辺側の端縁部を全長に亘って被覆できる帯状形状に形成されている一方、軟質の樹脂フィルム7Dは透光性であって、太陽電池シート2と同大、同形の長方形状に形成されてあり、金属フィルム8Dを太陽電池シート2の前後の両端縁部の上面に全長に亘って貼着していると共に、軟質の樹脂フィルム7Dをその長辺側の端縁部を上記金属フィルム8D上に重ねた状態にして太陽電池シート2の上面全面に貼着してなるものである。
【0043】
なお、太陽電池シート2に対する軟質の樹脂フィルム7と金属フィルム8との貼着構造としては、上記変形例の構造に限らず、折版屋根材1の山部1a上にボルト・ナット5a、5bによって固定される部分にこれらの樹脂フィルム7と金属フィルム8とが設けられている構造であれば本発明を満足させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 折版屋根材
1a 山部
1b 谷部
2 太陽電池シート
3 タイトフレーム
5a、5b ボルト・ナット
6 ボルト挿通孔
7 軟質樹脂フィルム
8 金属フィルム
9 取付孔