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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】チャック装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20220105BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B24B41/06 A
H01L21/304 622L
H01L21/304 622H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017088043
(22)【出願日】2017-04-27
(65)【公開番号】P2018183848
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】宇根 篤暢
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄一
(72)【発明者】
【氏名】坂東 翼
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216281(JP,A)
【文献】特開2006-346836(JP,A)
【文献】特開2002-066911(JP,A)
【文献】特開2014-179355(JP,A)
【文献】実開昭62-095862(JP,U)
【文献】実開平01-143347(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0023340(US,A1)
【文献】米国特許第05527209(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークまたはワークに固定された支持体が1000nm以下の水膜によって接合される平坦面を有するチャックと、
前記平坦面に固定された前記ワークまたは前記支持体を前記平坦面から剥離可能となるように前記水膜を加熱して蒸発させ前記水膜による保持力を低下させる加熱装置と、を備え
前記加熱装置は、前記チャックの上方に設けられ、前記水膜にマイクロ波を照射して加熱するマイクロ波発生部を有することを特徴とするチャック装置。
【請求項2】
ワークまたはワークに固定された支持体が1000nm以下の水膜によって接合される平坦面を有するチャックと、
前記平坦面に固定された前記ワークまたは前記支持体を前記平坦面から剥離可能となるように前記水膜を加熱して蒸発させ前記水膜による保持力を低下させる加熱装置と、を備え、
前記チャックは、上面に前記平坦面が形成された赤外線透過性を有する板状体から形成され、
前記加熱装置は、前記チャックの下方に設けられ前記水膜に赤外線を照射して加熱する赤外線ヒータと、前記赤外線ヒータの下方に設けられた反射板と、を有することを特徴とするチャック装置。
【請求項3】
ワークまたはワークに固定された支持体が1000nm以下の水膜によって接合される平坦面を有するチャックと、
前記平坦面に固定された前記ワークまたは前記支持体を前記平坦面から剥離可能となるように前記水膜を加熱して蒸発させ前記水膜による保持力を低下させる加熱装置と、を備え、
前記チャックは、上面に前記平坦面が形成されたセラミックス板または金属板から形成され、
前記加熱装置は、前記チャックの下方に設けられ、前記チャックの下面に接続された発熱部を有することを特徴とするチャック装置。
【請求項4】
前記加熱装置は、前記平坦面の外周側の前記水膜を加熱した後に前記平坦面の中央側に向かって前記水膜を順次加熱することを特徴とする請求項ないし請求項の何れか1項に記載のチャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板等のワークを研削または研磨する際にワークを固定するチャック装置に関し、特に、水膜によってワークを固定するチャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体基板は、その製造プロセスにおいて、電気的特性の向上と高密度化、積層化のために、研削といし等によって研削されて薄層化される。半導体基板の薄層化プロセスでは、半導体基板は、ポーラスチャック上に載置され、真空吸着されて保持される。
【0003】
しかしながら、上記のように、真空吸着によって半導体基板を固定する方法では、ポーラスチャックの気孔により、薄層化された半導体基板の局所厚さにばらつきが生じてしまう。また、ポーラスチャックと半導体基板の間にゴミ等が残留した場合には、半導体基板の割れのリスクや厚さばらつきを助長させる等の問題点があった。
【0004】
そこで、本願発明者らは、特許文献1に開示されているように、テンプレート基板チャックと半導体基板とを水膜で貼り合わせて半導体基板を研削する方法を提案している。同文献の研削方法では、スピンコートで水膜を形成し、テンプレート基板チャックと半導体基板とを1000nm以下の厚さの水膜によって貼り合わせて積層体を形成する。その後、積層体を回転速度2000min-1で回転させて水膜の厚みを減らす。そして、積層体の半導体基板の裏面を研削加工した後、積層体に純水を供給して、半導体基板をテンプレート基板チャック面から分離させる。なお、同文献には、純水の供給方法について詳しく記載されていない。
【0005】
また例えば、特許文献2には、半導体基板、誘電体基板、ガラス基板等のウエハ2枚を貼り合わせて固定してウエハを研磨する方法が開示されている。同文献の研磨方法では、2枚のウエハを水槽内で平行にして接触させ、さらに押し付けて貼り合わせ面の余分な水分を排除して両ウエハを水の表面張力で強固に接合する。その後、貼り合わされたウエハを水槽から取り出し、両面研磨装置のキャリア内に挿入した後、貼り合わされたウエハの表裏面を研磨する。そして、研磨終了後、貼り合わされたウエハを水槽内に投入して表面張力を低下させて、2枚のウエハを平行にずらして分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-216281号公報
【文献】特開平6-762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された従来技術のように、水膜によって半導体基板等の基板をテンプレート基板チャック若しくはガラス基板等と接合する方法では、接合された基板の剥離が容易ではないという問題点があった。具体的には、水膜によって固定された基板は、約30kPa以上の拘束力でチャックに接合されているため、そのままの状態では基板を取り外すことができない。そこで、例えば、特許文献2に開示された従来技術のように、基板をチャックから分離するための水槽等が必要となる。しかし、研削装置内に水槽等を設けることは困難であった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水膜で接合されたワークを容易に分離することができる分離装置を備えたチャック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のチャック装置は、ワークまたはワークに固定された支持体が1000nm以下の水膜によって接合される平坦面を有するチャックと、前記平坦面に固定された前記ワークまたは前記支持体を前記平坦面から剥離可能となるように前記水膜を加熱して蒸発させ前記水膜による保持力を低下させる加熱装置と、を備え、前記加熱装置は、前記チャックの上方に設けられ、前記水膜にマイクロ波を照射して加熱するマイクロ波発生部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチャック装置によれば、ワークまたはワークに固定された支持体が1000nm以下の水膜によって接合される平坦面を有するチャックと、平坦面に固定されたワークまたは支持体を平坦面から剥離可能となるように水膜による保持力を低下させる分離装置と、を備える。これにより、平坦面に接合されたワークに過大な負荷を掛けることなくワークを剥離することができ、ワークの割れ等を防止することができる。
【0011】
また、本発明のチャック装置によれば、分離装置は、水膜を加熱して蒸発させる加熱装置であっても良い。これにより、水膜を加熱して除去して水膜による保持力を低下させ、外部からワークに過大な力を加えることなくワークを分離することができる。
【0012】
また、本発明のチャック装置によれば、加熱装置は、水膜にマイクロ波を照射するマイクロ波発生部を有しても良い。これにより、水膜のみを好適に加熱して蒸発させることができる。
【0013】
また、本発明のチャック装置によれば、チャックは、上面に平坦面が形成された赤外線透過性を有する板状体から形成され、加熱装置は、チャックの下方に設けられ水膜に赤外線を照射する赤外線ヒータと、赤外線ヒータの下方に設けられた反射板と、を有しても良い。これにより、赤外線によって水膜を加熱して除去することができる。また、ワークの下面側に形成された水膜に赤外線を直接照射することができ、ワークが赤外線によって加熱されて高温になることを抑制できる。また、反射板が設けられることにより、赤外線ヒータから水膜の反対方向に照射される赤外線を反射板で反射させて水膜に照射することができる。これにより、少ないエネルギーで効率的に水膜を加熱することができる。
【0014】
また、本発明のチャック装置によれば、チャックは、上面に平坦面が形成されたセラミックス板または金属板から形成され、加熱装置は、チャックの下面に接続された発熱部を有しても良い。これにより、発熱部によってチャックが加熱されて、加熱されたチャックによって水膜が加熱される。そのため、チャックの上面に形成された水膜のみを効率的に加熱することができ、ワークが加熱されることを抑制できる。また、特に、チャックが熱伝導性に優れるセラミックス板または金属板から形成されることにより、水膜を短時間で蒸発させることができる。
【0015】
また、本発明のチャック装置によれば、加熱装置は、平坦面の外周側の水膜を加熱した後に平坦面の中央側に向かって水膜を順次加熱しても良い。これにより、ワークの外周側の水膜が蒸発して除去された後に、ワークの中央側の水膜が順次蒸発して除去される。そのため、ワークの外周側が水膜で封止された状態で中央側の水膜が蒸発してワークに過大な力が加わることを防ぐことができ、これによりワークのひずみや破損等を防止できる。
【0016】
また、本発明のチャック装置によれば、平坦面には溝または細孔が形成されており、分離装置は、溝または細孔から平坦面に水または空気を供給しても良い。これにより、水膜の保持力を低下させて、ワークを分離することができる。具体的には、平坦面に水が供給されることにより、水膜が厚くなり、水膜の表面張力による保持力が低下する。また、例えば、平坦面に空気が供給されることにより、空気によって水膜が除去されて保持力が低下する。また、平坦面に溝または細孔が形成されていることにより、ワークとチャックとの間に水または空気を効率的に供給することができ、ワークを分離する工程の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るチャック装置のチャックに(A)半導体基板、(B)積層体、(C)サポート基板、が固定されている状態を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るチャック装置の断面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係るチャック装置の断面図である。
図4】本発明の更に他の実施形態に係るチャック装置の断面図である。
図5】本発明の更に他の実施形態に係るチャック装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るチャック装置を図面に基づき詳細に説明する。
図1(A)ないし(C)は、本発明の実施形態に係るチャック装置1のチャック10に、ワーク40が固定されている状態を示しており、図1(A)は、ワーク40として半導体基板42が固定されている例を示す図である。
【0019】
チャック装置1は、ワーク40を水膜Wによって固定する装置であり、例えば、ワーク40となる半導体基板42やサポート基板43等を研削する研削装置等に設けられている。図1(A)に示すように、チャック装置1のチャック10の上面には、ワーク40となる半導体基板42が水膜Wによって接合される平坦面が形成されている。
【0020】
水膜Wは、例えば、1000nm以下の厚さに形成される。具体的には、チャック10の平坦面に水が供給された後、チャック10が回転することにより薄い水膜Wが形成される。そして、水膜Wの上に半導体基板42が載置され、チャック10が回転することにより、水膜Wの過剰な水分が除去されて1000nm以下の水膜Wが形成される。これにより、水膜Wの表面張力によって、半導体基板42をチャック10の平坦面に固定することができる。
【0021】
半導体基板42は、例えば、直径300mmのシリコン基板等であり、半導体基板42の表面には回路等が形成されている。半導体基板42は、水膜Wによってチャック10に接合された状態で、チャック10に対して反対側となる面である上面が図示しない研削といし等によって研削または研磨される。これにより、半導体基板42は、厚さ10~20μmに形成される。このように、半導体基板42は、水膜Wによってチャック10に固定されて研削されることにより、高平坦で且つ薄く形成される。
【0022】
図1(B)は、チャック10に、積層体41が固定されている例を示す図である。図1(B)に示すように、チャック10の上面には、ワーク40と支持体からなる積層体41が固定されても良い。積層体41は、ワーク40としての半導体基板42と、ワーク40を固定する支持体としてのサポート基板43と、を有し、半導体基板42とサポート基板43は、例えば、シリコン樹脂等によって貼り合わされている。積層体41は、サポート基板43の半導体基板42に対して反対側となる面が水膜Wによってチャック10に接合されている。即ち、半導体基板42は、サポート基板43を介してチャック10の上面に固定されている。
【0023】
サポート基板43は、例えば、ガラス、金属、セラミック、合成樹脂等から形成される高剛性の板状体である。半導体基板42にサポート基板43が貼り合わされることにより、半導体基板42の研削や薄く研削された後の半導体基板42の搬送等を容易にすることができる。
【0024】
なお、例えば、積層体41のシリコン樹脂は、半導体基板42の表面に塗布された後に表面が研削されても良い。シリコン樹脂の表面が研削された後にサポート基板43が貼り合わされることにより、研削といし等によって研削または研磨された後の半導体基板42の厚みをそろえることができる。
【0025】
図1(C)は、チャック10に、ワーク40としてサポート基板43が固定されている例を示す図である。図1(C)に示すように、チャック10の上面には、水膜Wによってワーク40としてのサポート基板43が固定されても良い。サポート基板43の上面は、図1(A)に示す半導体基板42と同様に、図示しない研削といし等によって研削または研磨される。このように、図1(B)に示す半導体基板42を支持するために用いられるサポート基板43をチャック10に固定して研削しても良い。これにより、サポート基板43の主面を平坦に形成することができる。
【0026】
上記のように、ワーク40またはワーク40を支持する支持体が水膜Wによって接合されることにより、研削加工後のワーク40の厚さばらつきを200nm以下にできる。また、ワーク40は、水膜Wによって固定されるため、チャック10と接触しない。これにより、チャック10と接触することによるワーク40の傷つきを防止することができる。
【0027】
図2は、チャック装置1の断面図である。なお、以下の実施形態では、ワーク40としての半導体基板42がチャック10の上面に直接固定される例を示すが、図1(B)に示すように、ワーク40は、サポート基板43を介してチャック10に固定されても良い。図2に示すように、チャック装置1は、上面にワーク40が固定されるチャック10と、ワーク40をチャック10から取り外すための分離装置としての加熱装置21と、を有する。
【0028】
チャック10は、例えば、アルミナセラミックス等によって略円板状に形成されている。チャック10の下部には、チャック10を支持する回転軸11が接続されている。回転軸11は、空気軸受等の軸受12によって回動自在に支持されている。また、回転軸11には、図示しないモータ等が接続され、該モータ等が駆動することにより、回転軸11と共にチャック10が回転する。
【0029】
また、チャック10の上面に形成された平坦面は鏡面状に仕上げられており、平坦面の外周近傍には、ワーク40を位置決めするための複数の位置決めピン13が設けられている。位置決めピン13により、ワーク40をチャック10の略中央に支持することができる。
【0030】
加熱装置21は、チャック10の上方、即ちワーク40の上方、に設けられており、マイクロ波発生部22と、ケース部23と、を有する。ケース部23は、例えば、鋼板等からなる略有底円筒状の形態をなし、開口が下方を向くよう上下逆に設けられる。ケース部23の上方には、マイクロ波を発生するマイクロ波発生部22が設けられている。
【0031】
マイクロ波発生部22で発生したマイクロ波は、水膜Wに照射される。このとき、一部のマイクロ波は、ケース部23の内面やチャック10等によって反射して、水膜Wに到達する。これにより、マイクロ波によって水膜Wを加熱して蒸発させて、水膜Wを除去することができ、チャック10から薄化されたワーク40を容易に分離することができる。例えば、直径300mmの半導体基板42を分離する場合、マイクロ波発生部22として2.45GHzの発振器を採用し、200Wの電力によって水膜Wにマイクロ波を照射することにより、約180秒で半導体基板42を分離することができる。
【0032】
また、マイクロ波発生部22は、図示しない制御装置に接続され、制御される。制御装置は、水膜Wを加熱する際に、チャック10の平坦面の外周側のマイクロ波発生部22からマイクロ波を発生させた後、チャック10の平坦面の中央側のマイクロ波発生部22からマイクロ波を発生させる制御を行う。即ち、加熱装置21は、チャック10の平坦面の外周側の水膜Wを加熱した後に、チャック10の平坦面の中央側に向かって水膜Wを順次加熱する。これにより、ワーク40の外周側の水膜Wが蒸発して除去された後に、ワーク40の中央側の水膜Wが順次蒸発して除去される。そのため、ワーク40の外周側が水膜Wで封止された状態で中央側の水膜Wが蒸発してワーク40に過大な力が加わることを防ぐことができ、これにより、ワーク40のひずみや破損、割れ等を防止できる。
【0033】
なお、マイクロ波発生部22から発生するマイクロ波の波長は、水がマイクロ波を効率よく吸収することができる周波数、具体的にはおよそ1GHzから20GHz、に設定されることが好ましい。これにより、水膜Wのみを効率良く加熱して蒸発させることができる。
【0034】
チャック10の内部には、冷却水配管31が設けられている。冷却水配管31には、配管32を介して図示しない冷却水ポンプが接続されている。冷却水ポンプが稼働することにより、冷却水配管31内に冷却水が供給され、マイクロ波によって加熱されたチャック10が冷却される。
【0035】
図3は、本発明の他の実施形態に係るチャック装置101の断面図である。なお、既に説明した実施形態と同一若しくは同様の作用、効果を奏する構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
図3に示すように、チャック110は、例えば、赤外線透過性を有する石英等によって形成されている。チャック110の下方には、分離装置となる加熱装置121が設けられている。加熱装置121は、赤外線ヒータ122と、反射板123と、を有する。
【0037】
赤外線ヒータ122は、例えば、ハロゲンランプ等であり、チャック110の下面側に設けられている。例えば、赤外線ヒータ122として、0.7~2.5μmの波長領域を有するハロゲンランプを用いて、水膜Wの50mm下方から500Wの電力で赤外線を照射することにより、約240秒でワーク40をチャック110から剥離することができる。
【0038】
赤外線ヒータ122は、複数に分割されており、例えば、ワーク40の外周近傍を加熱する第1の加熱部122aと、ワーク40の中央近傍を加熱する第2の加熱部122bと、を有する。第1の加熱部122aは、略環状で、チャック110の外周側に形成されている。また、第2の加熱部122bは、略円板状で、チャック110の中央近傍、即ち第1の加熱部122aの内側、に形成されている。また、赤外線ヒータ122には、内側に配線等が設けられる配管124が接続されており、赤外線ヒータ122は、例えば、図示しない制御装置等に接続されている。
【0039】
また、反射板123は、例えば、鋼板等によって形成され、チャック110の側面及び赤外線ヒータ122の下部を覆うように設けられている。また、反射板123の上面は、例えば、ニッケルメッキやニッケルクロムメッキ等によって鏡面状に仕上げられている。
【0040】
赤外線ヒータ122から発せられた赤外線は、直接または反射板123によって反射されて、水膜Wに照射される。赤外線ヒータ122は、チャック110の下方に設けられているため、赤外線は、水膜Wに直接的に照射される。これにより、ワーク40に照射される赤外線を減らすことができる。よって、ワーク40が加熱されて高温になることを抑制しつつ、水膜Wを効率的に加熱して蒸発させることができる。
【0041】
また、赤外線ヒータ122によって水膜Wを除去する場合、図示しない制御装置は、第1の加熱部122aから赤外線を照射して水膜Wを加熱した後に、第2の加熱部122bから赤外線を照射して水膜Wを加熱する制御を行う。これにより、チャック10の平坦面の外周側の水膜Wが加熱されて蒸発した後に、平坦面の中央側の水膜Wが加熱されて蒸発する。これにより、ワーク40の外周側から蒸発した水膜Wを排除しつつ、水膜Wを加熱することができる。
【0042】
図4は、本発明の更に他の実施形態に係るチャック装置201の断面図である。図4に示すように、チャック210は、熱伝導性及び耐熱性に優れる素材によって形成されることが好ましく、例えば、炭化ケイ素等のセラミックス板や金属板等によって形成されている。チャック210の内部には、冷却水配管31が設けられており、チャック210の下方には、分離装置となる加熱装置221が設けられている。
【0043】
加熱装置221は、例えば、抵抗加熱式の電熱ヒータ等によって形成される発熱部222を有する。発熱部222は、チャック210の下面に接続されており、発熱部222が発熱することにより、チャック210が加熱され、加熱されたチャック210によって水膜Wが加熱されて蒸発する。これにより、チャック210と接触する水膜Wを効率的に加熱することができ、チャック210によってワーク40が加熱されることを防止できる。また、チャック210が熱伝導に優れるセラミックス板や金属板等によって形成されることにより、短時間でチャック210を高温にすることができ、水膜Wを短時間で効率良く加熱して蒸発させることができる。
【0044】
加熱装置221の発熱部222は、複数に分割されており、例えば、図示しない制御装置によって制御されて、チャック210の上面の外周側の水膜Wを加熱した後に、チャック210の上面の中央側に向かって水膜Wを順次加熱する。これにより、蒸気の圧力によるワーク40のひずみや破損等を防止できる。また、発熱部222によってチャック210が加熱された後、冷却水配管31内に冷却水が供給されることにより、チャック210が冷却される。
【0045】
例えば、チャック210を炭化ケイ素によって形成し、発熱部222として1kWの電熱ヒータを採用し、1kWの電力を供給してチャック210を加熱することにより、約300秒でワーク40を分離することができる。この時のチャック210の温度は、約250℃に達する。ワーク40を分離した後、冷却水配管31内に、約1分間冷却水を供給することにより、チャック210の温度を常温にすることができる。
【0046】
図5は、本発明の更に他の実施形態に係るチャック装置301の断面図である。図5に示すように、チャック310の上面には、複数の溝333が形成されている。溝333の幅は、研削されるワーク40の厚さのおよそ10分の1以下に形成されることが好ましい。例えば、ワーク40の厚さが約10μmの場合、溝333の幅は約1μm以下が良い。
【0047】
また、溝333には、配管334が接続されており、配管334には、分離装置となる、例えばポンプ等の流体供給装置335が接続される。流体供給装置335が稼働することにより、配管334を介して溝333に水または空気が供給される。これにより、ワーク40とチャック310との間に効率良く水または空気を供給することができる。
【0048】
例えば、流体供給装置335によって溝333に空気が供給されることにより、水膜Wは、供給された空気によって押されて、ワーク40とチャック310の間から外部に排出される。これにより、ワーク40とチャック310を接合している水膜Wを除去してワーク40を容易に取り外すことができる。
【0049】
また、例えば、溝333に水が供給されることにより、水膜Wは厚くなる。これにより、水膜Wの表面張力による吸着力が弱まり、水膜Wの保持力が低下し、ワーク40を容易に取り外すことができる。
【0050】
また、ワーク40を分離する際に、チャック310の外周近傍の溝333からチャック310の中央側の溝333に順次、水または空気が供給されても良い。これにより、ワーク40の外周近傍に水または空気の排出口を確保しつつ、水または空気を供給することができ、水膜Wを好適に除去することができる。なお、水または空気が、溝333によって、チャック310の上面全体に略同時に供給される構成でも良い。
【0051】
また、ワーク40を分離する際だけでなく、チャック310の平坦面に水膜Wを形成する際に、流体供給装置335によって溝333に水が供給されても良い。これにより、チャック310の平坦面全体に効率良く水を供給することができる。
【0052】
また、溝333の代わりに、チャック310の平坦面に複数の細孔を設け、該細孔から水または空気を噴出しても良い。これによっても、水膜Wによって接合されたワーク40を容易に剥離することができる。
【0053】
具体的には、チャック310の上面に直径約0.5mmの複数の細孔を形成し、該細孔からチャック310の上面に水を約0.05L/分で噴出することにより、約1秒でワーク40を分離することができる。また、該細孔から約0.05L/分で空気を供給することにより、1秒以下でワーク40を分離することができる。
【0054】
上記のように、本発明は、ワーク40を分離するための水槽等を設ける必要がない。また、チャック装置1によれば、研削されて高平坦で且つ薄層化されたワーク40に、過大な力を加えずに、ワーク40をチャック装置1が設けられた研削装置等内で分離することができる。これにより、チャック装置1は、高精度で超薄化された半導体基板や三次元化された半導体基板等のあらゆる基板を固定する装置として用いることができる。チャック装置1によれば、高集積化された半導体基板の極薄化かつ高均一化により、高速化と、半導体基板の高歩留り化が達成できるとともに、三次元化された半導体基板の多層化を実現できる。また、チャック装置1は、基板以外のワーク40を固定する装置として用いられても良い。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、101、201、301 チャック装置
10、110、210、310 チャック
11 回転軸
12 軸受
13 位置決めピン
21 加熱装置
22 マイクロ波発生部
23 ケース部
31 冷却水配管
32 配管
40 ワーク
41 積層体
42 半導体基板
43 サポート基板
121 加熱装置
122 赤外線ヒータ
122a 第1の加熱部
122b 第2の加熱部
123 反射板
124 配管
221 加熱装置
222 発熱部
333 溝
334 配管
335 流体供給装置
図1
図2
図3
図4
図5