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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】塑像芯材
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/10 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
G09B19/10 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017094486
(22)【出願日】2017-05-11
(65)【公開番号】P2018189905
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】392011828
【氏名又は名称】株式会社大和科学教材研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100100376
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100143199
【弁理士】
【氏名又は名称】磯邉 毅
(72)【発明者】
【氏名】松村 成通
【審査官】大隈 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-102306(JP,A)
【文献】特開2010-137288(JP,A)
【文献】特開2002-153363(JP,A)
【文献】特開2002-355447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00~ 9/56
G09B 17/00~19/26
G09B 23/00~29/14
A63H 1/00~37/00
B44B 1/00~11/04
B44C 1/00~ 1/14
B44C 1/18~ 7/08
B44D 2/00~ 7/00
B44F 1/00~99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属芯を使用することなく合成樹脂の一体成形品として、その本体部分が構成され、所定の屈曲変形部分の全部又は一部が変形された完成形状で、粘土や石膏などの付着物を安定的に保持する塑像芯材であって、
前記合成樹脂は、スチレン・ブタジエン共重合樹脂を主要成分としており、
前記屈曲変形部分は、
断面が丸型又は角型の軸芯部と、前記軸芯部から外向きに延設されたフランジ部とが、前記軸芯部の軸方向に連続することで構成されるか、又は、
離散的に配置された円板部又は角板部が、所定の断面形状の軸芯部に連結されて構成されていることを特徴とする塑像芯材。
【請求項2】
全ての屈曲変形部分が変形されていない、塑像芯材の立設姿勢において、
屈曲変形部分は、左右一対に設けられている請求項1に記載の塑像芯材。
【請求項3】
前記屈曲変形部分は、動物の関節位置に対応して設けられている請求項1又は2に記載の塑像芯材。
【請求項4】
前記屈曲変形部分は、断面が丸型又は角型の軸芯部と、前記軸芯部から外向きに延設されたフランジ部とが、前記軸芯部の軸方向に連続して構成され、
その断面が、H型形状、T型形状、十字型形状、又は、円形から十字突起が延びる十字突起形状に形成されている請求項1~3の何れかに記載の塑像芯材。
【請求項5】
軸芯部とフランジ部とが軸芯部の軸方向に連続する屈曲変形部分は、
これを、85°~95°の初期角度θに屈曲させた状態において、0.2[Nm]の荷重に抗する変位角が10°未満である請求項4に記載の塑像芯材。
【請求項6】
前記屈曲変形部分は、離散的に配置された円板部又は角板部が、所定の断面形状の軸芯部に連結されて構成され
前記円板部又は角板部は、軸芯部を所定角度以上に屈曲させると、隣接する円板部又は角板部接触する離間位置に配置されている請求項1~3の何れかに記載の塑像芯材。
【請求項7】
離散的に配置された円板部又は角板部が、所定の断面形状の軸芯部に連結されて構成された屈曲変形部分は、
これを、85°~95°の初期角度θに屈曲させた状態において、0.4[Nm]の荷重に抗する変位角が10°未満である請求項に記載の塑像芯材。
【請求項8】
円板部又は角板部が離間して配置される屈曲変形部分は、その軸芯部は、
その断面が、丸型形状、角型形状、H型形状、T型形状、十字型形状、又は、円形から十字突起が延びる十字突起形状に形成されている請求項6又は7に記載の塑像芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小学校の図画工作科の教材として好適な塑像芯材に関し、特に金属線を使用することなく主要部が完成された一体成形品の塑像芯材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の塑像芯材として、所定の強度を有する針金を使用したものが最初に普及した。この塑像芯材では、生徒自身が針金に荒縄などを巻き付けることで、胴体部の膨らみを形成し、その荒縄の上に、粘土や石膏などを付着させていた。
【0003】
その後、荒縄などの巻き付け作業を解消するべく、ブロー成形されたプラスチック芯材(特許文献1)や、インジェクション成形されたプラスチック芯材(特許文献2)が提案された。
【0004】
但し、ブロー成形品だけでは、屈曲変形可能な塑像芯材を完成させることはできないので、ブロー成形された頭部+胸部+腕部+脚部の本体部に、所定強度の針金を貫通させることで塑像芯材を完成させていた。この場合には、頭部と胸部と腕部と脚部の各連結部が屈曲変形箇所となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平02-107174号公報
【文献】実開平03-105872号公報
【文献】特開平08-142596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の構成では、針金を貫通させる手作業が必要な分だけ、製造コストが上がるという問題があった。また、ブロー成形品の連結箇所である、針金の同一箇所を、繰り返し屈曲させることになるので、屈曲箇所が折れてしまうという問題もあった。
【0007】
一方、特許文献2のように、針金を使用しないプラスチック芯材の場合には、ポリプロピレン樹脂の強い姿勢復元力のため、ヒジやヒザや肩などの屈曲部分を、所望の屈曲状態に維持できないという問題があった(特許文献3参照)。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、金属芯を使用しないプラスチック芯材であって、屈曲状態を維持して、使用者の意図する姿勢を維持でき、少なくとも、主要部がインジェクション成形などの一体成形品である塑像芯材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、金属芯を使用することなく合成樹脂の一体成形品として、その本体部分が構成され、所定の屈曲変形部分の全部又は一部が変形された完成形状で、粘土や石膏などの付着物を安定的に保持する塑像芯材であって、前記合成樹脂は、スチレン・ブタジエン共重合樹脂を主要成分としており、前記屈曲変形部分は、断面が丸型又は角型の軸芯部と、前記軸芯部から外向きに延設されたフランジ部とが、前記軸芯部の軸方向に連続することで構成されるか、又は、離散的に配置された円板部又は角板部が、所定の断面形状の軸芯部に連結されて構成されている。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明によれば、金属芯を使用しないプラスチック芯材であって、屈曲状態を維持して、使用者の意図する姿勢を維持できる塑像芯材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る塑像芯材FRを示す斜視図である。
図2】実施例に係る塑像芯材FRの正面図、右側面図、及び背面図である。
図3】塑像芯材FRの使用手順その他を説明する図面である。
図4】軸部材の構成を説明する図面である。
図5】塑像芯材FRの屈曲変形部分の構成を説明する図面である。
図6】肘関節についての耐荷重安定性を説明する図面である。
図7】膝関節についての耐荷重安定性を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例について更に詳細に説明する。先ず、図1は、実施例に係る塑像芯材FRを示す斜視図であり、人体形状の塑像芯材FRについて、正面側斜視図(a)と、背面側斜視図(b)とを示している。また、図2は、塑像芯材FRの正面図(a)、右側面図(b)、及び、背面図(c)であり、図3は、塑像芯材FRの使用手順などを説明する図面である。
【0013】
この塑像芯材FRは、金属線を使用することなく合成樹脂の一体成形品として、インジェクション成形(射出成形)によってヒト形状に構成されている。合成樹脂としては、一種類のスチレン・ブタジエン共重合樹脂、又は複数種類のスチレン・ブタジエン共重合樹脂の所定混合比による混合物が、全体の90重量%以上(残り樹脂添加剤)の組成比で使用される。なお、好適には、スチレン・ブタジエン共重合樹脂の組成比は、材料全体の95重量%以上である。
【0014】
このように、本実施例では、スチレン・ブタジエン共重合樹脂を使用するので、分散されたポリブタジエン部分によって、適度なゴム弾性が発揮され、且つ、折り曲げを繰り返しても破断しない適度な耐久性(ヒンジ特性)が発揮される。例えば、先行文献3のようにポリプロピレン樹脂を使用した場合には、その姿勢復元力の強さのため、所望の屈曲状態に維持できず、且つ、その強度ゆえの脆さのためにヒンジ特性に劣るが、その欠点がスチレン・ブタジエン共重合樹脂を使用することで解消された。
【0015】
図1に示す通り、実施例の塑像芯材FRは、頭部1と、胸部2と、臀部3とで構成された本体部BDYに、腕部4と、脚部5の周辺骨格部が、左右対称位置に連設されて構成されている。また、頭部1と胸部2とは、ネック部6を通して接続され、胸部2と臀部3とは、背骨7を経由して接続されている。
【0016】
このような骨格形状の塑像芯材FRが、小学校の図画工作科の教材として活用される場合には、各児童が、各部を適宜に屈曲させて所望の姿勢に変形した塑像芯材FRを、図3(a)に示す装着基盤BSに固定する(図3(b)参照)。次に、塑像芯材FRの全体に、粘土や石膏などの付着物を装着させ(図3(c)参照)、最後に付着物を適宜に着色することで完成状態となる。
【0017】
かかる使用態様に関連して、腕部4と脚部5の先端には、装着基盤BSの挿入穴HOに対応した装着部8,9が各一対ずつ形成されている。図1図2に示す通り、装着部8,9は、突出部PRと円盤フランジ部DSKとで構成されており、突出部PRを、挿入穴HO(図3(a))の限界位置まで差し込むと、円盤フランジ部DKSが、装着基盤BSの平坦面に当接されて挿入姿勢が安定化される。
【0018】
但し、全4箇所の装着部8,9を、全て活用する必要はなく、例えば、片足立ちしたい場合には、装着部9,9の一方が挿入穴HOに差し込まれ(図3(b)参照)、両足立ちしたい場合には、適宜に開脚した状態で、一対の装着部9,9が挿入穴HOに差し込まれる。同様に、両手倒立や片手倒立の姿勢をとりたい場合には、装着部8,8の一方又は双方が使用される。
【0019】
図1(a)に示す通り、頭部1は、前方側に膨らんだ前頭部1aと、前頭部1aから後方側に延びる複数枚の楕円板1bとで、全体として、卵状の輪郭を形成している。
【0020】
一方、胸部2は、前方側に延びる左右複数枚の略1/4円板2aと、後方側に延びる左右の矩形板2bとで、前方に隆起する胸の輪郭を形成している。
【0021】
臀部3は、本体板3aを中心として、前方側にわずかに突出する円弧フランジ3bと、後方側にやや大きく突出する左右一対の山型フランジ3c,3dと、山型フランジ3c,3dの上部位置において後方側に突出する峰フランジ3eと、を有して構成されている。そして、やや大きく突出する山型フランジ3c,3dと、それより小さく突出する峰フランジ3eとで、後方側に膨らむ臀部の輪郭を形成している。
【0022】
また、臀部3には、図2(c)に示すように、複数の貫通穴INが設けられており、図3(d)に示す補助部材AUXの先端突起Tipを受け入れることで、図3(e)に示すような浮遊姿勢が実現できるようになっている。
【0023】
また、本実施例では、胸部2と臀部3とを接続する屈曲形状の連結ラインLNが左右対称に設けられている。連結ラインLNは、胸部2に接続された上方部LNaと、臀部3に接続された下方部LNbと、上部LNaと下方部LNbとを接続する円弧部LNcと、で構成されている。
【0024】
そして、臀部3に対して胸部2を左右方向に変位させた場合、つまり、背骨7を左右方向に曲げた場合には、左右の連絡ラインLN,LNが、適宜に収縮変形することで、自由な変形姿勢を実現可能にしている(図3(f)参照)。
【0025】
次に、腕部4は、上腕41と前腕42に大別され、肩関節4aを経由して胸部2に連結されている。また、上腕41と前腕42は、肘関節4bによって連結されている。
【0026】
一方、脚部5は、大腿51と、下腿52とに大別され、股関節5aを経由して、臀部3に連結されている。また、太腿51と下腿52は、膝関節5bによって連結されている。
【0027】
上記の構成において、典型的な屈曲変形部分(以下、典型屈曲部という)は、ネック部6と、背骨7と、肩関節4aと、肘関節4bと、股関節5aと、膝関節5bとである。そこで、本実施例では、これらの典型屈曲部については、屈曲変形が容易で、且つ、屈曲姿勢における安定性(耐荷重安定性)に優れた構成を採っている。
【0028】
典型屈曲部のうち、先ず、ネック部6は、この箇所が特段の荷重を受けないことを考慮して、軸芯が、図4(a)に示す円柱形状としている。具体的には、直径2.0~4.0mm程度の丸棒であって、直径:長さ=1:3~1:9程度の寸法に形成することで、任意角度の屈曲変形が容易化されている。但し、何ら、円形断面に限定されず、楕円断面や、三角形(図4(b))などの多角形断面を有する棒材であっても良い。
【0029】
また、本実施例では、背骨7は、胸部2や臀部3より幅狭に形成されており、具体的には、図4(e)に示すような断面十字状に形成されている。すなわち、典型屈曲部たる背骨7は、断面が丸型又は角型の軸芯部と、軸芯部から外向き4方向に延設されたフランジ部とで構成されている。
【0030】
なお、図4(e)では、90°間隔の4方向の突出高さが、全て同一に作図されているが、突出高さを適宜に増減することで、屈曲容易性を調整することができる。例えば、幅方向を大きく広げると、上腕4や前腕5の構成となり、容易には変形しない屈強な骨格を実現することできる。
【0031】
なお、背骨7の構成は、何ら、断面十字状である必要はなく、例えば、図4(c)に示すような断面H字状や、図4(d)に示すような断面T字状であっても良い。断面H字状の典型屈折部は、角型の軸芯部と、角型の軸芯部の両端から、軸芯部に直交して双方向に延設されたフランジ部とで構成されている。
【0032】
また、断面T字状の典型屈折部は、角型の軸芯部と、角型の軸芯部の中央から軸芯部に直交して一方向に延設されたフランジ部とで構成されている。
【0033】
典型屈曲部の断面形状が、断面H字状や断面T字状の場合、紙面と同一平面での屈曲より、紙面と直交方向への屈曲が容易となり、このような構成を採用した場合には、図2の左右方向への屈曲姿勢より、前屈姿勢の方が容易な背骨7を実現することができる。
【0034】
また、低学年の児童でも容易に屈曲できるよう、図4(a)の円柱形状と、図4(e)の十字形状との中間的な形状を採ることもできる。図4(f)は、このような形状を例示したものであり、十字状の突出片(フランジ部)の中心に、円柱芯(軸芯部)を設けた形状を示している。
【0035】
図4(f)の構成は、その屈曲容易性において、図4(a)の構成と図4(e)の間に位置し、また、屈曲姿勢における安定性(耐荷重安定性)が、図4(a)の構成より優れている。そこで、本実施例では、肘関節4bについては、図4(f)に示す、断面が十字突起形状の棒材を使用している。具体的には円柱芯の直径は、2.0~4.0mm程度であって、突出片の突出高さは、円柱芯の半径程度、肘関節部の長さは、円柱芯の直径の5倍~10倍程度の寸法に設定されている。
【0036】
ところで、断面が十字突起形状の棒材(図4(f))の場合、屈曲変形が容易である反面、不適切な変形操作が繰り返されると、その変曲点が破断するおそれがある。例えば、変曲点に爪を立てて、直角又はそれ以上の屈曲変形がされると、蘇生可能な湾曲変形を超えた破壊変形となり、素材にストレスを残してしまうことになる。
【0037】
そこで、児童が繰り返し屈曲変形すると思われる肩関節4a、股関節5a、及び、膝関節5bについては、上記した破壊変形を回避する構成が採られている。具体的には、図5に示す通りであり、軸部材AXの周りにリング状のフランジCRを設け、このようなリング状フランジCRを所定間隔で配置している。
【0038】
リング状フランジCR,CRの離間距離は、破壊変形を防止するための距離であり、無理に折り曲げようとすると隣接するリング状フランジCR,CRが当接することで、それ以上の折り曲げを防止している(図5(g)参照)。
【0039】
ここで、軸部材AXの断面形状は、特に限定されず、図4(a)~図4(f)の断面とすることができる。また、リング状フランジの個数も特に限定されないが、両端のリング状フランジを含めて3~10個程度が適当である。また、リング状フランジCRの直径は、8mm~12mm程度であるのが好ましく、軸部材AXの最大径(H型、T型、十字型、十字突起型の最大幅)は、リング状フランジCRの直径の40%~80%であるのが望ましい。
【0040】
以上の通り、本実施例では、スチレン・ブタジエン共重合樹脂90重量%以上による一体成形品とすると共に、典型屈曲部(6,7,4a,4b,5a,5b)に、図4又は図5に示す構成を採用することで、屈曲変形が容易で、且つ、屈曲姿勢における優れた安定性(耐荷重安定性)を実現している。
【0041】
図6図7は、肘関節4bと、膝関節5bについて、耐荷重安定性を確認した実験結果を示している。なお、供試サンプルを変えて、同種の実験を繰り返したが、その代表一例だけを図示している。
【0042】
先ず、肘関節4bの確認実験では、肘関節4bの中央部分を約90°屈曲させた状態で、上腕部41をバイス(万力)で固定し、屈曲点から50mmの点に荷重を加えて、耐荷重安定性を確認した。なお、何れの供試サンプルも同一構成の肘関節4bであり、その断面が十字突起形状(図4(f))であって、円柱芯の直径が2.5mm程度、突出片の突出高さが0.75mm程度である。
【0043】
このような構成の肘関節4bにおいて、図6に示す典型実験では、荷重ゼロ(計測皿などプラスチック部品の総重量3.8g)の状態で、屈曲角度が約90°であり、その後、荷重を徐々に増加させると、荷重35gの状態で、屈曲角度が約95°となった。
【0044】
荷重位置は、屈曲点から50mmであるので、モーメントは、(35+3.8)/1000*50/100*9.8=0.19[Nm]であり0.19[Nm]の荷重に抗する変位角が5°(=95°-90°)となる耐荷重安定性が確認された。
【0045】
図6と同様の実験を繰り返したが、ほぼ同等の耐荷重安定性が確認されており、85°~95°の初期角度θに設定した肘関節4bは、0.2[Nm]の荷重に抗する変位角が10°未満であると確認された。なお、初期角度θ=88°~92°の場合には、0.2[Nm]の荷重に抗する変位角が8°未満となる。
【0046】
一方、膝関節5bの確認実験では、膝関節5bの中央部分を約90°屈曲させた状態で、大腿部51をバイスで固定し、屈曲点から80mmの点に荷重を加えて、耐荷重安定性を確認した。
【0047】
なお、何れの供試サンプルも同一構成の膝関節5bであり、軸部材AXの断面が十字突起形状(図4(f))であって、円柱芯の直径が2.5mm程度、突出片の突出高さが1.2mm程度である。また、リング状フランジCRの直径が10mm程度であるので、軸部材AXの最大径は、リング状フランジCRの直径の50%程度である。
【0048】
このような構成の膝関節5bにおいて、図7に示す実験では、荷重ゼロ(計測皿などプラスチック部品の総重量3.8g)の状態で、屈曲角度が約94°であり、その後、荷重を徐々に増加させると、荷重50gの状態で、屈曲角度が約101°となった。
【0049】
荷重位置は、屈曲点から80mmであるので、モーメントは、(50+3.8)/1000*80/100*9.8=0.42[Nm]であり、0.42Nmの荷重に抗する変位角が7°(=101°-94°)となる耐荷重安定性が確認された。
【0050】
図7と同様の実験を繰り返したが、ほぼ同等の耐荷重安定性が確認されており、85°~95°の初期角度θに設定した膝関節5bは、0.40[Nm]の荷重に抗する変位角が10°未満であることが確認された。なお、初期角度θが狭いほど(θ<90°)、耐荷重安定性に優れ、初期角度θ=88°~92°の場合には、0.4[Nm]の荷重に抗する変位角が7°未満となる。
【0051】
上記した何れの性能も、紙粘土などの付着物を保持する耐荷重性能としては十分であり、児童が意図する屈曲姿勢を正確に維持することができる。
【0052】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、具体的な記載内容は、特に本発明を限定するものではない。例えば、実施例では、一の成形品として合成樹脂製の本体部分たる塑像芯材を完成させているが、本体部分に加えて、金属などの追加部材を必要とする塑像芯材であっても良い。具体的には、例えば、手に貫通穴を設けることで、金属棒を保持させる構造をとっても良いのは勿論である。
【0053】
また、完全一体品ではなく、本体部BDY(本体部分)と、周辺骨格部とを別々に一体成形し、一体成形品を組み立てて塑像芯材を完成させても良い。なお、便宜上、塑像との用語を用いているが、実在する動物や植物の骨格や芯の形状を構成するものに限定されず、アニメや童話などの登場人物や、単なる抽象形状であっても良いのは勿論である。
【0054】
以上、実施例について、詳細に説明したが、具体的な記載内容は、何ら本発明を限定するものではなく、適宜に変更可能である。例えば、図4では、リング状フランジとして、円板CRを例示したが、楕円板だけでなく、多角形状の角板であってもよいのは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
FR 塑像芯材
4b,5a,5b,7 屈曲変形部分
CR 円板部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7