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  • 特許-金属製品の電鋳による製造方法 図1
  • 特許-金属製品の電鋳による製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】金属製品の電鋳による製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/02 20060101AFI20220105BHJP
   C25D 1/20 20060101ALI20220105BHJP
   C25D 1/10 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C25D1/02
C25D1/20
C25D1/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017098657
(22)【出願日】2017-05-18
(65)【公開番号】P2018193587
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】508145506
【氏名又は名称】株式会社キャステム
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100129229
【弁理士】
【氏名又は名称】村澤 彰
(72)【発明者】
【氏名】戸田 拓夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 真一
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-232388(JP,A)
【文献】特開昭56-072193(JP,A)
【文献】特開平03-090269(JP,A)
【文献】特開2004-090047(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1749439(CN,A)
【文献】特開2000-301289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00-3/66
B22C 5/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対耐熱温度が280℃であるシリコーンゴムで形成されたゴムブロック内にモデルを配置して容器に入れ、120~150℃の温度の熱及び圧力をかけることにより前記ゴムブロックを軟化させて前記モデルを前記ゴムブロック内に埋没させる工程と、
前記軟化させたゴムブロックを冷却してゴム型を作製する工程と、
前記ゴム型を前記容器から取出した後にこのゴム型から前記モデルを取出して前記ゴム型内に前記モデルに相応する形状のキャビティを形成する工程と、
前記ゴム型のキャビティに導電性を有する消失材料を注入して硬化させることにより導電性消失模型を作製する工程と、
前記導電性消失模型を前記ゴム型から取出した後に前記導電性消失模型と電鋳金属を電解槽中の電解液に浸漬する工程と、
前記電解液中の導電性消失模型と電鋳金属との間に電流を流して前記導電性消失模型の表面に電着による金属層を形成する工程と、
表面に前記金属層が形成された導電性消失模型を電解槽から取出し加熱して前記導電性消失模型を消失させることにより前記金属層からなる金属製品を作製する工程と
を含み、
前記モデルは支持部材で支持されて前記容器内部に設置され、前記支持部材は前記モデルとともに前記ゴム型から取り出されて前記ゴム型のキャビティの一部を形成し、前記支持部材が取り出された前記ゴム型の空間が前記導電性を有する消失材料を注入するための湯道となることを特徴とする金属製品の電鋳による製造方法。
【請求項2】
前記液状混合物は、前記液状ゴム100質量%に対して前記液状硬化剤を5~10質量%含む請求項1記載の金属製品の電鋳による製造方法。
【請求項3】
前記導電性消失模型が低融点金属であって、前記低融点金属が、ビスマス、鉛、錫、インジウム、カドミウム、タリウム、ガリウム及びアンチモンからなる群より選ばれた3種以上の合金である請求項記載の金属製品の電鋳による製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空の金属パイプ等の複雑な形状の金属製品を電鋳によって製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ろうを付着して形成されたろう型の表面に導電性被膜を形成し、この導電性被膜が形成されたろう型と電鋳金属を電解液の中に入れて電流を流しろう型の導電性被膜に電鋳金属を電着させてパン焼き型を成形し、更にろう型及び導電性被膜を取外してパン焼き型を取出す、パン焼き型の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このパン焼き型の製造方法では、ろう型及び導電性被膜を熱又は化学反応によって溶融し、電着金属層、即ちパン焼き型を取出す。
【0003】
このパン焼き型の製造方法では、高価な雄型と雌型を使用せず、短時間で簡単にパン焼き型を製造することができるので、パン焼き型を安価に形成することができる。
【0004】
一方、冷却又は加熱用の流体通路を有する樹脂成形用の金型を電鋳加工法により製造する金型の方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この金型の製造方法では、先ず、成形品と同等な外形を有するマスターモデルの表面に、電鋳加工により内面側電着金属層を形成する。次いで、この内面側電着金属層の表面部に、流体通路となるべき溝を形成した後に、この溝を、溶解、気化、燃焼等の化学的又は物理的な手段により除去可能な消失性材料で埋める。次に、内面側電着金属層の表面に、引続き電鋳加工を施すことにより、溝内が消失性材料で埋まった形態のまま、溝の開口部に蓋をするように外面側電着金属層を形成する。更に、溝内に埋まっている消失性材料を化学的又は物理的な手段で除去させる。また、マスターモデルの表面には、電鋳加工を行う前に予め導電処理が行われる。更に、消失性材料としては、加熱により除去可能なワックスやパラフィンが用いられるが、低融点合金半田、合成樹脂、天然樹脂等を採用することができる。この後、必要に応じて、溝内の消失性材料の表面に導電処理が行われる。
【0005】
このように構成された金型の製造方法では、電着金属層を、内面側電着金属層及び外面側電着金属層の2段階で形成し、そのうち内面側電着金属層に形成した溝に化学的又は物理的な手段で除去可能な消失性材料を埋込むことにより、流体通路を形成したので、表面転写性に優れた樹脂成形用の金型を作製できるとともに、この金型は温度調節性に優れ、この金型を用いた成形品の成形サイクルの短縮化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-279082号公報(請求項2、段落[0010]、[0019]、図5図9
【文献】特開2014-205318号公報(請求項1、段落[0010]、[0016]、[0019]、図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の特許文献1に示されたパン焼き型の製造方法は、ろう型の表面に導電性被膜を形成しなければならず、また導電性被膜を化学反応により溶融させてパン焼き型を取出さなければならず、工数が増大する不具合があった。また、上記従来の特許文献1に示されたパン焼き型の製造方法は、ろう型の導電性被膜を形成した一方向の面からなるパン焼き型しか作製できない問題点もあった。一方、上記従来の特許文献2に示された金型の製造方法では、マスターモデルの表面や溝内の消失性材料の表面に導電処理を行わなければならず、工数が増大する問題点があった。また、上記従来の特許文献2に示された金型の製造方法では、電鋳加工を2回行わなければならず、また流体通路となるべき溝を加工治具及び切削工具等を用いて形成した後に、この溝を消失性材料で埋めなければならず、工数が増大する問題点があった。
【0008】
本発明の第1の目的は、消失材料の表面に導電性被膜の形成や導電処理を行う必要がなく、1回の電鋳加工で金属製品を作製できる、金属製品の電鋳による製造方法を提供することにある。本発明の第2の目的は、複雑な形状の金属製品の全面を作製できる、金属製品の電鋳による製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、図1及び図2に示すように、一対耐熱温度が280℃であるシリコーンゴムで形成されたゴムブロック(図示せず)内にモデル12を配置して容器13に入れ、120~150℃の温度の熱及び圧力をかけることにより前記ゴムブロックを軟化させて前記モデルを前記ゴムブロック内に埋没させる工程と、軟化させたゴムブロックを冷却してゴム型16を作製する工程と、ゴム型16を容器13から取出した後にこのゴム型16からモデル12を取出してゴム型16内にモデル12に相応する形状のキャビティ16aを形成する工程と、ゴム型16のキャビティ16aに導電性を有する消失材料18を注入して硬化させることにより導電性消失模型19を作製する工程と、導電性消失模型19をゴム型16から取出した後に導電性消失模型19と電鋳金属板21を電解槽22中の電解液23に浸漬する工程と、電解液23中の導電性消失模型19と電鋳金属板21との間に電流を流して導電性消失模型19の表面に電着による金属層26を形成する工程と、表面に金属層26が形成された導電性消失模型19を電解槽22から取出し加熱して導電性消失模型19を消失させることにより金属層26からなる金属製品11を作製する工程とを含み、モデル12は支持部材17で支持されて容器13内部に設置され、支持部材17はモデル12とともにゴム型16から取り出されてゴム型16のキャビティ16aの一部を形成し、支持部材17が取り出されたゴム型16の空間が導電性を有する消失材料18を注入するための湯道16bとなることを特徴とするむ金属製品の電鋳による製造方法である。
【0010】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記液状混合物は、前記液状ゴム100質量%に対して前記液状硬化剤を5~10質量%含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の第の観点は、第の観点に基づく発明であって、前記導電性消失模型が低融点金属であって、低融点金属が、ビスマス、鉛、錫、インジウム、カドミウム、タリウム、ガリウム及びアンチモンからなる群より選ばれた3種以上の合金であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の観点の金属製品の電鋳による製造方法では、ゴム型のキャビティに導電性を有する消失材料を注入して硬化させることにより導電性消失模型を作製するので、この導電性消失模型と電鋳金属板との間に電解液中で電流を流すと、導電性消失模型の表面に電着による金属層からなる金属製品を作製できる。この結果、消失材料の表面に導電性被膜の形成や導電処理を行う必要がなく、1回の電鋳加工で金属製品を作製できる。また、ろう型の導電性被膜を形成した一方向の面からなるパン焼き型しか作製できない従来のパン焼き型の製造方法と比較して、本発明では、異形状のパイプ等の複雑な形状の金属製品の全面を作製できる。
【0013】
本発明の第の観点の金属製品の電鋳による製造方法では、導電性消失模型をゴム型の融点より低い融点の低融点金属により形成したので、ゴム型が溶融することなく、ゴム型のキャビティに導電性を有する消失材料を注入して硬化させることにより導電性消失模型を作製することができる。また、電鋳により表面に金属層が形成された導電性消失模型を、導電性消失模型の融点以上であって金属層の融点以下の温度で加熱することにより、導電性消失模型が消失して、金属層からなる金属製品を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明実施形態の金属製品の電鋳による製造手順を示す前半の工程図である。
図2】その金属製品の電鋳による製造手順を示す後半の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図2(c)に示すように、金属製品11は、この実施の形態では、中心線が二次元的ではなく三次元的に複雑に湾曲する金属パイプである。この金属製品11は、銅、ニッケル、金、銀等の電鋳可能な金属により形成される。この金属製品11を電鋳により製造するには、先ず、内部にモデル12(図1(a))を設置した容器13に液状ゴム及び液状硬化剤の液状混合物14を流込んでモデル12を埋没させた後に、容器13内の液状混合物14を硬化させてゴム型16を作製する(図1(b))。このモデル12は、金属製品11である金属パイプの内面形状に相当する形状を外面形状とする複雑に湾曲する円柱状に形成されているため、3Dプリンタを用いて、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリ乳酸樹脂(PLA樹脂)、アクリル樹脂等の材料により作製される。また、図1(b)中の符号17は、容器13内でモデル12を支持する支持部材である。また、この支持部材17をモデル12とともにゴム型16から取出したときに形成される空間は、後述の導電性を有する消失材料18をキャビティ16aに流込むための湯道になる。なお、モデルの形状は、複雑に湾曲する柱状の他に、一般的な樹脂若しくは金属の射出成型法では成形できない形状等であってもよい。また、モデルが比較的簡単な形状であれば、モデルを3Dプリンタを用いずに機械加工等により作製してもよい。
【0016】
上記液状ゴムとしては、シリコーンゴム等が挙げられる。液状ゴムとしてシリコーンゴムを用いる場合には、液状ゴムを硬化させる液状硬化剤が添加される。この液状硬化剤はシリコーンゴム100質量%に対して5~10質量%添加される。ここで、液状硬化剤の添加量をシリコーンゴム100質量%に対して5~10質量%の範囲内に限定したのは、5質量%未満では、硬化スピードが遅いか或いは硬化せず、10質量%を超えると、硬化したゴム型16が裂け易くなるからである。また、硬化したゴム型の耐熱温度は-40~150℃である。
【0017】
なお、この実施の形態では、内部にモデルを設置した容器に液状ゴム及び液状硬化剤の液状混合物を流込んでゴム型を作製したが、複数のゴムブロック内にモデルを配置して、ホットプレス機と呼ばれる熱加硫装置にかけることによりゴムブロックを軟化させ、モデルをゴムブロック内に埋没させた後、ゴムブロックを冷却してゴム型を作製してもよい。この場合、ゴムブロックは、焼きゴムと呼ばれるシリコーンゴム等で形成され、耐熱温度(最高使用温度)は280℃である。また、加硫温度は120~150℃であることが好ましい。例えば、約120℃でゴム型厚1mmに対して1分間の比率で加硫時間が設定される。これにより、ゴムブロックが溶融することなく軟化して、モデルを損傷することなくゴムブロック内に埋没させることができる。更に、上記複数のゴムブロックは一対のゴムブロックであることが好ましい。
【0018】
次いで、ゴム型16を容器13から取出した後に、このゴム型16からモデル12を取出してゴム型16内にモデル12に相応する形状のキャビティ16aを形成する(図1(c))。ゴム型16からモデル12を取出すとき、モデル12とともに支持部材17も取出す。これによりゴム型16内には、モデル12に相応する形状のキャビティ16aと、支持部材17に相応する形状の湯道16bとが形成される。ここで、ゴム型16からモデル12を取出す方法としては、次の2つの方法がある。
(1) 第1の方法は、ゴム型16を複数のゴム片に切って、ゴム型16からモデル12及び支持部材17を取出す方法である。この方法では、上記複数のゴム片を組合せてゴム型16を復元すると、複数のゴム片同士が互いに密着して、ゴム型16のキャビティ16a内面にパーティングラインが殆ど現れず、モデル12の外面をゴム型16のキャビティ16a内面に忠実に転写できる。
(2) 第2の方法は、ゴム型16を弾性変形させることにより、モデル12及び支持部材17をこの支持部材17の底面側から取出す方法である。この方法では、ゴム型16を損傷させずにモデル12をゴム型16から取出すことができ、ゴム型16のキャビティ16a内面にパーティングラインが現れず、モデル12の外面をゴム型16のキャビティ16a内面に忠実に転写できる。
【0019】
そして、ゴム型16のキャビティ16aに導電性を有する消失材料18を注入して硬化させることにより導電性消失模型19を作製する(図1(d))。ゴム型16のキャビティ16aに導電性を有する消失材料18を注入するために、ゴム型16を上下反転させる。これにより導電性を有する消失材料18の注入口である湯口16cがゴム型16の上面に位置する。また、ゴム型16を複数のゴム片に切った場合には、復元したゴム型16がバラバラにならないように、ゴム型16を容器13に再び入れるか、或いはゴム型16の外周面を治具(図示せず)で固定することが好ましい。また、上記導電性消失模型19は、ゴム型16の耐熱温度より低い融点-19~98℃の低融点金属により形成されることが好ましい。具体的には、低融点金属は、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、錫(Sn)、インジウム(In)、カドミウム(Cd)、タリウム(Tl)、ガリウム(Ga)及びアンチモン(Sb)からなる群より選ばれた3種以上の合金であることが好ましい。更に具体的には、低融点金属としては、ローズ(Rose's)合金、セロセーフ(CerroSAFE)、ウッド(Wood's)合金、フィールド(Field)合金、セロロー(Cerrolow)136、セロロー(Cerrolow)117、Bi-Pb-Sn-In-Cd-Tl合金、ガリンスタン(Galinstan)等が挙げられる。これらの合金の低融点金属の含有割合(質量%)と融点は次の通りである。
(1) ローズ(Rose's)合金……Bi:Pb:Sn=50:25:25、融点:98℃。
(2) セロセーフ(CerroSAFE)……Bi:Pb:Sn:Cd=42.5:37.7:11.3:8.5、融点:74℃。
(3)ウッド(Wood's)合金……Bi:Pb:Sn:Cd=50:26.7:13.3:10、融点:70℃。
(4) フィールド(Field)合金……Bi:Sn:In=32.5:16.5:51、融点:62℃。
(5) セロロー(Cerrolow)136……Bi:Pb:Sn:In=49:18:12:21、融点:58℃。
(6) セロロー(Cerrolow)117……Bi:Pb:Sn:In:Cd=44.7:22.6:8.3:19.1:5.3、融点:47.2℃。
(7) Bi-Pb-Sn-In-Cd-Tl合金……Bi:Pb:Sn:In:Cd:Tl=40.3:22.2:10.7:17.7:8.1:1.1、融点:41.5℃。
(8) ガリンスタン(Galinstan)……Bi:Sn:In:Ga:Sb=1.5未満:9.5~10.5:21~22:68~69:1.5未満、融点:-19℃。
ここで、導電性消失模型19を形成する低融点金属の好ましい融点を-19~98℃の範囲内に限定したのは、-19℃未満の低融点金属は存在せず、98℃を超えると導電性消失模型19が溶融する前にゴム型16が溶融してしまうからである。即ち、上記温度範囲の低融点金属を用いると、ゴム型16が溶融することなく、ゴム型16のキャビティ16aに導電性を有する消失材料18を注入して硬化させることにより、導電性消失模型19を作製できる。なお、上記(1)~(8)の低融点合金のうち(3)~(8)の低融点合金は共晶である。
【0020】
次に、導電性消失模型19をゴム型16から取出した後に(図1(e)及び図1(f))、導電性消失模型19と電鋳金属板21を電解槽22中の電解液23に浸漬する(図2(a))。ここで、ゴム型16から取出した導電性消失模型19には、湯道16c内で固化した模型用スプルー24が導電性消失模型19と一体的に成形されるため(図1(e))、この模型用スプルー24を切り落とすことにより導電性消失模型19が作製される(図1(f))。また、電解液23に浸漬する電鋳金属板21の金属の種類は、導電性消失模型19の表面に電着される銅、ニッケル、金、銀等の電鋳金属である。電解液23は電鋳金属の種類により適宜選択される。例えば、電鋳金属が銅である場合は、酸性硫酸銅浴を用いることが好ましく、電鋳金属がニッケルである場合は、スルファミン酸ニッケル浴を用いることが好ましい。そして、電解液23中の導電性消失模型19と電鋳金属板21との間に電流を流して導電性消失模型19の表面に電着による金属層26を形成する(図2(a))。具体的には、直流電源27のプラス極に電鋳金属板21を接続し、直流電源27のマイナス極に導電性消失模型19を接続した状態で、電鋳金蔵板21及び導電性消失模型19間に2~5Vの直流電圧を印加する。これにより電鋳金属板21(陽極)の表面で電鋳金属のイオン化(溶解)が発生し、導電性消失模型19(陰極)の表面に電鋳金属の還元による析出(電着)が発生して、導電性消失模型19の表面に金属層26が形成される。
【0021】
更に、表面に金属層26が形成された導電性消失模型19を電解槽22から取出し(図2(b))、加熱して導電性消失模型19を消失させることにより金属層26からなる金属製品11を作製する(図2(c))。ここで、表面に金属層26が形成された導電性消失模型19を加熱する前に、この導電性消失模型19の上面及び下面に電着された金属層26を切り落とす(図2(b))。この状態で、表面に金属層26が形成された導電性消失模型19を所定の温度、即ち導電性消失模型19の融点以上であって金属層26の融点以下の温度(例えば、100℃)に加熱すると、金属層26が溶融することなく、導電性消失模型19が溶融して筒状の金属層26内から流れ落ちるので、中空の金属製品11が完成する。この結果、消失材料の表面に導電性被膜の形成や導電処理を行う必要がなく、1回の電鋳加工で金属製品11を作製できる。
【0022】
このように製造された中空の金属製品11は、電鋳(電気分解による電着)により形成されるため、モデル12の複雑な形状も精巧に再現できる。
【符号の説明】
【0023】
11 金属製品
12 モデル
13 容器
14 液状ゴム及び液状硬化剤の液状混合物
16 ゴム型
16a キャビティ
18 導電性を有する消失材料
19 導電性消失模型
21 電鋳金属板
22 電解槽
23 電解液
26 金属層
図1
図2