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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】金型監視装置および金型監視方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20220105BHJP
   B29C 45/84 20060101ALI20220105BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/84
B22D17/32 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017203719
(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公開番号】P2019077053
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391025512
【氏名又は名称】ウシオライティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】小森谷 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 英樹
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-321266(JP,A)
【文献】特開2012-135950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形機の金型の型開動作途中状態における成形品の画像を取得する第1の画像取得部と、
前記樹脂成形機の型開動作完了後における前記金型の型面の画像を取得する第2の画像取得部と、
前記型開動作途中状態における前記成形品の基準姿勢に係る基準画像を記憶する第1の記憶部と、
前記樹脂成形機の型開動作完了後における前記金型の型面に係る基準画像を記憶する第2の記憶部と、
前記第1の画像取得部により取得された画像と、前記第1の記憶部に記憶された基準画像とを比較することにより前記型開動作途中状態における異常の発生の有無を判定する第1の判定部と、
前記第2の画像取得部により取得された画像と、前記第2の記憶部に記憶された基準画像とを比較することにより前記型開動作完了後における異常の発生の有無を判定する第2の判定部と、
前記第1の判定部により前記型開動作途中状態における異常が発生していないと判定された場合に、前記樹脂成形機に対して型全開動作の許可指令を出力し、当該許可指令の出力後に、前記第2の判定部による判定を行うように制御する制御部と、を備えることを特徴とする金型監視装置。
【請求項2】
前記第1の画像取得部は、
前記型開動作途中状態において、前記金型を構成する可動型と固定型とに前記成形品が保持された状態の画像を取得することを特徴とする請求項1に記載の金型監視装置。
【請求項3】
前記第1の判定部は、
前記型開動作途中状態における成形品の姿勢が前記基準姿勢に対して許容範囲を超えて傾斜している場合、前記型開動作途中状態における異常が発生していると判定することを特徴とする請求項1または2に記載の金型監視装置。
【請求項4】
前記第1の画像取得部は、
前記型開動作途中状態における複数の異なるタイミングでそれぞれ撮像された前記成形品の画像を取得し、
前記第1の判定部は、
前記第1の画像取得部により取得された複数の画像について、それぞれ前記型開動作途中状態における異常の発生の有無を判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の金型監視装置。
【請求項5】
前記第1の画像取得部と前記第2の画像取得部はそれぞれ、前記樹脂成形機に対して所定の位置に固定され監視カメラにより、前記成形品の画像と前記金型の型面の画像を取得することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の金型監視装置。
【請求項6】
前記第1の判定部により前記型開動作途中状態における異常が発生していると判定された場合、または、前記第2の判定部により前記型開動作完了後における異常が発生していると判定された場合、前記樹脂成形機の運転を停止するよう制御する運転制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の金型監視装置。
【請求項7】
前記樹脂成形機の成形品突出動作完了後における前記金型の型面の画像を取得する第3の画像取得部と、
前記樹脂成形機の成形品突出動作完了後における前記金型の型面に係る基準画像を記憶する第3の記憶部と、
前記第3の画像取得部により取得された画像と、前記第3の記憶部に記憶された基準画像とを比較することにより前記成形品突出動作完了後における異常の有無を判定する第3の判定部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2の判定部により前記型開動作完了後における異常が発生していないと判定された場合に、前記樹脂成形機に対して成形品突出の許可指令を出力し、当該成形品突出の許可指令の出力後に、前記第3の判定部による判定を行うように制御することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の金型監視装置。
【請求項8】
樹脂成形機の金型の型開動作途中状態における成形品の画像を取得する画像取得部と、
前記型開動作途中状態における前記成形品の基準姿勢に係る基準画像を記憶する記憶部と、
前記画像取得部により取得された画像と、前記記憶部に記憶された基準画像とを比較し、両画像の一致度を判定することで前記型開動作途中状態における異常の発生の有無を監視する異常監視部と、を備え、
前記異常監視部は、前記型開動作途中状態における成形品の姿勢が前記基準姿勢に対して許容範囲を超えて傾斜している場合、前記型開動作途中状態において異常が発生していると判定することを特徴とする金型監視装置。
【請求項9】
樹脂成形機の金型の型開動作途中状態における成形品の画像を取得する第1の画像取得工程と、
前記樹脂成形機の型開動作完了後における前記金型の型面の画像を取得する第2の画像取得工程と、
前記第1の画像取得工程において取得された像と、予め記憶された前記型開動作途中状態における前記成形品の基準姿勢に係る基準画像とを比較することにより前記型開動作途中状態における異常の発生の有無を判定する第1の判定工程と、
前記第1の判定工程において前記型開動作途中状態における異常が発生していないと判定された場合に、前記樹脂成形機に対して型全開動作の許可指令を出力する制御工程と、
前記制御工程において前記許可指令が出力された後に、前記第2の画像取得部により取得された画像と、前記第2の記憶部に記憶された基準画像とを比較することにより前記型開動作完了後における異常の発生の有無を判定する第2の判定工程と、を含むことを特徴とする金型監視方法。
【請求項10】
樹脂成形機の金型の型開動作途中状態における成形品の画像を取得する取得工程と、
取得された前記画像と、予め記憶された前記型開動作途中状態における前記成形品の基準姿勢に係る基準画像とを比較し、両画像の一致度を判定することで前記型開動作途中状態における異常の発生の有無を監視する監視工程と、を含み、
前記監視工程では、前記型開動作途中状態における成形品の姿勢が前記基準姿勢に対して許容範囲を超えて傾斜している場合、前記型開動作途中状態において異常が発生していると判定することを特徴とする金型監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型監視装置および金型監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂製品を製造するための樹脂成形機、例えば射出成形機においては、型締動作、射出動作、樹脂材料の冷却・固化、型開動作および成形品突出動作よりなる成形サイクルが繰り返し行われる。
例えば特許文献1には、射出成形機によって樹脂製品を製造する工程において、型開動作の完了位置における可動型の型面を撮像し、可動型の型面の状態を監視する金型監視装置が開示されている。当該金型監視装置は、監視カメラによって撮像された型開動作完了後における可動型の型面の監視画像データを、予め記憶された基準画像データと比較する。これにより、金型監視装置は、型開動作を行ったときに成形品が可動型の型面の成形エリアに保持されず、例えば固定型に保持されたり、可動型の型面の成形エリアから脱落して他のエリアに付着したりする動作異常を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4448869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、型開動作完了後における監視動作では、可動型の型面に成形品が保持されているか否かについては適切に判定することができるが、成形品の僅かな欠損や変形を検知することは困難である。そのため、型開動作において成形品の一部が固定型に残留してしまうような動作異常が生じた場合、当該動作異常を適切に検知することができず、そのまま射出成形機の運転を続行してしまうおそれがある。この場合、射出成形機の型締動作において、上記の残留した成形品によって固定型の型面または可動型の型面を損傷してしまうおそれがある。
そこで、本発明は、樹脂成形機における成形処理の過程で生じる異常を適切に検知することができる金型監視装置および金型監視方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る金型監視装置の一態様は、樹脂成形機の金型の型開動作途中状態における成形品の画像を取得する第1の画像取得部と、前記樹脂成形機の型開動作完了後における前記金型の型面の画像を取得する第2の画像取得部と、前記型開動作途中状態における前記成形品の基準姿勢に係る基準画像を記憶する第1の記憶部と、前記樹脂成形機の型開動作完了後における前記金型の型面に係る基準画像を記憶する第2の記憶部と、前記第1の画像取得部により取得された画像と、前記第1の記憶部に記憶された基準画像とを比較することにより前記型開動作途中状態における異常の発生の有無を判定する第1の判定部と、前記第2の画像取得部により取得された画像と、前記第2の記憶部に記憶された基準画像とを比較することにより前記型開動作完了後における異常の発生の有無を判定する第2の判定部と、前記第1の判定部により前記型開動作途中状態における異常が発生していないと判定された場合に、前記樹脂成形機に対して型全開動作の許可指令を出力し、当該許可指令の出力後に、前記第2の判定部による判定を行うように制御する制御部と、を備える
【0006】
このように、金型監視装置は、型開動作途中状態における成形品の状態を監視するので、型開動作によって欠損や変形等の不具合に至る成形品を適切に判別することができる。型開動作によって成形品の欠損が生じた場合、その欠損した部分が金型に残留する場合がある。金型監視装置は、樹脂成形機における成形処理の過程で生じる上記のような動作異常を適切に検知することができる。また、金型監視装置は、樹脂成形機が型開動作を行ったときに、成形品が可動型の型面の成形エリアに保持されず、例えば固定型に保持されたり、可動型の型面の成形エリアから脱落して他のエリアに付着したりする動作異常を適切に検知することができる。
【0007】
また、上記の金型監視装置において、前記第1の画像取得部は、前記型開動作途中状態において、前記金型を構成する可動型と固定型とに前記成形品が保持された状態の画像を取得してもよい。この場合、型開動作の過程で生じる動作異常を適切に検知することができる。
【0008】
また、上記の金型監視装置において、前記第1の判定部は、前記第1の画像取得部により取得された画像に基づいて、前記型開動作途中状態における成形品の姿勢が基準姿勢に対して許容範囲を超えて傾斜しているか否かを監視するようにしてもよい。
型開動作途中状態における成形品の姿勢が基準姿勢に対して許容範囲を超えて傾斜している場合、型開動作によって成形品に欠損や変形等の不具合が生じやすい。型開動作途中状態における成形品の姿勢を監視することで、型開動作によって欠損や変形等の不具合に至る成形品を適切に判別することができる。
【0009】
また、上記の金型監視装置において、前記第1の画像取得部は、前記型開動作途中状態における複数の異なるタイミングでそれぞれ撮像された前記成形品の画像を取得し、前記第1の判定部は、前記第1の画像取得部により取得された複数の画像について、それぞれ前記型開動作途中状態における異常の発生の有無を判定するようにしてもよい。
このように、型開動作途中状態において複数回の監視を行うことで、型開動作の過程で生じる動作異常をより適切に検知することができる。
【0010】
さらに、上記の金型監視装置において前記第1の画像取得部と前記第2の画像取得部はそれぞれ、前記樹脂成形機に対して所定の位置に固定され監視カメラにより、前記成形品の画像と前記金型の型面の画像を取得してもよい。
この場合、例えば樹脂成形機の上方に固定された監視カメラによって撮像された画像を用いて、型開動作途中状態や型開動作完了後における異常の発生の有無を適切に監視することができる。らに、固定の監視カメラを用いることで、監視カメラを移動させるための機構や構造体が不要となる。
【0011】
また、上記の金型監視装置は、前記第1の判定部により前記型開動作途中状態における異常が発生していると判定された場合、または、前記第2の判定部により前記型開動作完了後における異常が発生していると判定された場合、前記樹脂成形機の運転を停止するよう制御する運転制御部をさらに備えていてもよい。
この場合、樹脂成形機における成形処理の過程で生じる動作異常によって、成形品が射出成形機の成形エリア等に意図せず残留してしまった場合、そのまま樹脂成形機の運転が続行されることを防止することができる。したがって、樹脂成形機において型締動作が行われた際に、残留した成形品によって金型等が損傷してしまうことを防止することができる。
【0013】
また、上記の金型監視装置は、前記樹脂成形機の成形品突出動作完了後における前記金型の型面の画像を取得する第3の画像取得部と、前記樹脂成形機の成形品突出動作完了後における前記金型の型面に係る基準画像を記憶する第3の記憶部と、前記第3の画像取得部により取得された画像と、前記第3の記憶部に記憶された基準画像とを比較することにより前記成形品突出動作完了後における異常の有無を判定する第3の判定部をさらに備え、 前記制御部は、前記第2の判定部により前記型開動作完了後における異常が発生していないと判定された場合に、前記樹脂成形機に対して成形品突出の許可指令を出力し、当該成形品突出の許可指令の出力後に、前記第3の判定部による判定を行うように制御してもよい。
この場合、金型監視装置は、樹脂成形機が成形品突出動作を行ったときに、成形品が可動型の型面から離型せずに当該可動型の型面に保持されたままとなる動作異常を適切に検知することができる。
【0014】
さらに、本発明に係る金型監視方法の一態様は、樹脂成形機の金型の型開動作途中状態における成形品の画像を取得する第1の画像取得工程と、前記樹脂成形機の型開動作完了後における前記金型の型面の画像を取得する第2の画像取得工程と、前記第1の画像取得工程において取得された像と、予め記憶された前記型開動作途中状態における前記成形品の基準姿勢に係る基準画像とを比較することにより前記型開動作途中状態における異常の発生の有無を判定する第1の判定工程と、前記第1の判定工程において前記型開動作途中状態における異常が発生していないと判定された場合に、前記樹脂成形機に対して型全開動作の許可指令を出力する制御工程と、前記制御工程において前記許可指令が出力された後に、前記第2の画像取得部により取得された画像と、前記第2の記憶部に記憶された基準画像とを比較することにより前記型開動作完了後における異常の発生の有無を判定する第2の判定工程と、を含む。
また、本発明に係る金型監視装置の一態様は、樹脂成形機の金型の型開動作途中状態における成形品の画像を取得する画像取得部と、前記型開動作途中状態における前記成形品の基準姿勢に係る基準画像を記憶する記憶部と、前記画像取得部により取得された画像と、前記記憶部に記憶された基準画像とを比較し、両画像の一致度を判定することで前記型開動作途中状態における異常の発生の有無を監視する異常監視部と、を備え、前記異常監視部は、前記型開動作途中状態における成形品の姿勢が前記基準姿勢に対して許容範囲を超えて傾斜している場合、前記型開動作途中状態において異常が発生していると判定する。
また、本発明に係る金型監視方法の一態様は、樹脂成形機の金型の型開動作途中状態における成形品の画像を取得する取得工程と、取得された前記画像と、予め記憶された前記型開動作途中状態における前記成形品の基準姿勢に係る基準画像とを比較し、両画像の一致度を判定することで前記型開動作途中状態における異常の発生の有無を監視する監視工程と、を含み、前記監視工程では、前記型開動作途中状態における成形品の姿勢が前記基準姿勢に対して許容範囲を超えて傾斜している場合、前記型開動作途中状態において異常が発生していると判定する。
これにより、樹脂成形機における成形処理の過程で生じる異常を適切に検知することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、型開動作途中状態における成形品の状態を監視するので、型開動作完了後の監視では検知できないような樹脂成形機における成形処理の過程で生じる異常を適切に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態における金型監視装置の構成例を示す図である。
図2】金型の型締状態を示す図である。
図3】金型の型開動作を示す図である。
図4】成形品突出動作を示す図である。
図5】成形品の取出状態を示す図である。
図6】金型監視装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7】監視動作の流れを説明する図である。
図8】金型監視装置の監視動作を説明するためのフローチャートである。
図9】1次監視動作を説明する図である。
図10】金型監視装置における信号の入出力を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態における金型監視装置100の構成を、射出成形機200の構成と共に示す説明図である。
射出成形機200は、樹脂製の成形品を製造する樹脂成形機である。射出成形機200は、金型10を備える。金型10は、互いに雌雄の関係にある固定型11と可動型12とにより構成されている。また、射出成形機200は、樹脂材料を溶融して射出する射出部20と、金型10の型開および型締を行う金型駆動部30と、を備える。射出部20および金型駆動部30は、制御部40により駆動制御される。
【0018】
射出部20は、外周面に不図示のヒータが設けられた円筒状のシリンダー21と、当該シリンダー21の先端(図1における左端)に固定されたノズル22と、を備える。シリンダー21の後端部分には、当該シリンダー21内に樹脂材料を供給するための供給口(図示省略)が形成されている。そして、シリンダー21の外周面における上記供給口が位置する箇所には、樹脂材料が投入されるホッパ23が配置されている。また、シリンダー21内には、樹脂材料を混練するスクリュー(図示省略)が当該シリンダー21の軸方向に沿って前進後退可能に配置されている。そして、当該スクリューの基端部は、スクリュー駆動機構24に取り付けられている。
【0019】
射出部20は、シリンダー21内のスクリューを回転させながら後退させることにより、ホッパ23に投入された樹脂材料を溶融しながらシリンダー21の後端から前端に向かって供給し、溶融された樹脂材料をシリンダー21の前端部の内部に充填する。この状態で、射出部20は、シリンダー21内のスクリューを前進させる。これにより、シリンダー21の前端部の内部に充填された溶融状態の樹脂材料は、ノズル22から射出される。
【0020】
金型駆動部30は、固定型11が固定される固定プラテン31と、可動型12が固定される可動プラテン32と、を備える。固定プラテン31と可動プラテン32とは、水平方向に互いに対向するよう配置されている。
固定プラテン31と可動プラテン32との間には、可動プラテン32を水平方向にガイドするための複数のタイバー33が設けられている。また、可動プラテン32は、型締め機構34に接続されている。
【0021】
金型駆動部30は、型締め機構34によって、可動型12が固定された可動プラテン32を、タイバー33に沿って固定プラテン31に接近させる方向に移動させる(前進させる)ことにより、型締動作を行う。また、金型駆動部30は、型締め機構34によって、可動型12が固定された可動プラテン32を、タイバー33に沿って固定プラテン31から離間させる方向に移動させる(後退させる)ことにより、型開動作を行う。
【0022】
射出成形機200は、自動運転、半自動運転および手動運転の各運転モードを切り替え可能に構成されていてもよい。自動運転においては、射出成形機200は、型締動作、射出動作、樹脂材料の冷却・固化、型開動作および成形品突出動作よりなる成形サイクルを繰り返し実行する。
具体的には、射出成形機200は、金型駆動部30によって可動プラテン32を前進させることにより型締動作を行う。これにより、図2に示すように、可動型12の型面が固定型11の型面に圧接され、その結果、金型10内に成形空間が形成される。この図2に示す型締状態において、射出成形機200は、射出部20による射出動作を行う。これにより、溶融した樹脂材料が金型10内部の成形空間に充填される。金型10内に射出注入された樹脂材料は、一定時間冷却されることで固化する。樹脂材料が固化した後、射出成形機200は、金型駆動部30によって可動プラテン32を後退させることにより型開動作を行う。このとき、正常状態では、図3に示すように、成形品60は、可動型12の型面における成形エリア(上記成形空間を形成するエリア)に保持される。
【0023】
次に射出成形機200は、型開動作が完了した図4に示す型開限状態において、図5に示す突出しピン35を可動型12の型面から突出させる成形品突出動作を行う。これにより、成形品60は、図4に示すように可動型12の型面から突出される。この成形品60は、自動落下、もしくはロボット等の取り出し機による取り出しにより、図5に示すように可動型12から離型する。
成形品60が取り出された後、射出成形機200は、突出しピン35を可動型12の型面から突出されない元の位置に戻し、金型駆動部30によって可動プラテン32を前進させることにより再び型締動作を行う。
【0024】
図1に戻って、金型監視装置100は、射出成形機200における金型10の型面の状態や、金型10における成形エリアに保持された成形品60の状態を監視する。
金型監視装置100は、可動型12の型面や成形エリアを撮像する監視カメラ110と、監視カメラ110によって撮像された画像に基づいて、成形に係る異常発生の有無を監視し、射出成形機200の運転を制御する監視制御部120と、を備える。
監視カメラ110は、射出成形機200の上方、より具体的には固定型11の上方に固定されている。監視カメラ110は、時系列上連続して撮像された複数の画像(映像)を撮像可能に構成されている。ここで、監視カメラ110の設置位置、撮像方向および撮像画角は、監視対象である可動型12の型面および成形エリアが撮像可能となるように予め設定されている。
【0025】
図6は、金型監視装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
この図6に示すように、監視制御部120は、中央制御部121と、ROM122と、RAM123と、画像取得部124と、画像データ処理部125と、記憶部126と、表示部127と、操作部128と、を備える。
中央制御部121は、監視制御部120における動作を統括的に制御するCPUであり、バスを介して、監視制御部120の各構成部を制御する。ROM122は、中央制御部121が処理を実行するために必要な制御プログラム等を記憶する不揮発性メモリである。RAM123は、中央制御部121の主メモリ、ワークエリア等として機能する。すなわち、中央制御部121は、処理の実行に際してROM122から必要なプログラム等をRAM123にロードし、当該プログラム等を実行することで各種の機能動作を実現する。
【0026】
画像取得部124は、監視カメラ110から画像を取得する。画像データ処理部125は、画像取得部124により取得された画像を処理し、処理後の画像を記憶部126に記憶するとともに表示部127に表示する。また、画像データ処理部125は、画像取得部124により取得された画像に基づいて、成形に係る異常発生の有無を監視する監視動作を行う異常監視部としても機能する。
画像データ処理部125は、監視動作の結果を中央制御部121に出力し、中央制御部121は、画像データ処理部125から入力された監視動作の結果に基づいて射出成形機200の運転を制御する。つまり、中央制御部121は、画像データ処理部125による監視動作により異常が有ると判定された場合、射出成形機200の運転を停止するよう制御する運転制御部としても機能する。
操作部128は、金型監視装置100に対するオペレータの操作を入力する。
【0027】
本実施形態では、金型監視装置100は、射出成形機200において金型10が型開動作を開始してから、成形品60を取り出して型締動作を開始するまでの間に、3回の監視動作を行う。
具体的には、金型監視装置100は、図7に示すように、金型10が型開動作を開始してから型開限状態となるまでの間の状態(型開動作途中状態)において、金型10の成形エリアに保持された成形品の状態を監視する1次監視動作を行う。また、金型監視装置100は、型開動作完了後の型開限状態において、可動型12の型面を監視する2次監視動作を行う。さらに、金型監視装置100は、成形品突出動作を行って成形品の取り出しが完了した状態において、可動型12の型面を監視する3次監視動作を行う。
各監視動作においては、金型監視装置100は、監視カメラ110によって撮像された監視画像と、予め記憶された基準画像とを比較し、両画像の一致度に基づいて異常発生の有無を判定する。上記基準画像は、例えば、図6の記憶部126に予め記憶される。
【0028】
以下、金型監視装置100が実行する監視動作について具体的に説明する。
図8は、金型監視装置100が実行する監視動作を説明するためのフローチャートである。
まずS1において、金型監視装置100は、1次監視トリガー信号を入力したか否かを判定する。ここで、1次監視トリガー信号は、射出成形機200において型開動作が開始されたことを示す型開開始信号であり、射出成形機200から入力される。このS1では、金型監視装置100は、1次監視トリガー信号を入力するまで待機し、1次監視トリガー信号を入力すると、S2に移行する。
【0029】
S2では、金型監視装置100は、監視カメラ110によって撮像された画像を、1次監視画像データとして取得する。ここで、1次監視画像データは、型開動作途中状態において金型10の型面における成形エリアを撮像した監視画像のデータである。具体的には、1次監視画像データは、型開動作途中状態において、射出成形機200の可動型12と固定型11とに成形品60が保持された状態の画像データである。
金型監視装置100は、例えば、1次監視トリガー信号(型開開始信号)が入力されてから予めタイマーに設定された監視時間T1が経過するまでの間、監視カメラ110によって撮像された複数の画像を、1次監視画像データとして取得することができる。なお、1次監視画像データの数は、任意に設定することができる。例えば、金型監視装置100は、1次監視トリガー信号(型開開始信号)が入力されてから所定時間が経過した後に監視カメラ110によって撮像された1枚の画像を、1次監視画像データとして取得してもよい。
【0030】
S3では、金型監視装置100は、S2において取得された1次監視画像データに基づいて、1次監視動作を行う。1次監視動作では、金型監視装置100は、S2において取得された1次監視画像データと、図6の記憶部126に記憶された1次基準画像データとを比較する。
ここで、1次基準画像データは、射出成形機200の型開動作途中状態における正常な状態の成形エリア内の成形品60を撮像することによって得られた画像データである。この1次基準画像データは、型開動作途中状態において、互いに離間した固定型11と可動型12とに保持された成形品60を撮像することによって得られた画像である。1次基準画像データは、射出成形機200が事前に実行した成形処理のうち、良品が成形された成形処理の型開動作途中状態において撮像された成形品の画像とすることができる。
【0031】
1次基準画像データには、監視カメラ110からの画像を構成する複数の画素(例えば640ピクセル×480ピクセル)の各々についての位置データおよび輝度データが含まれている。この輝度データは、各画素の輝度を、例えば0~255の整数による相対値で示したものである。
1次監視動作では、金型監視装置100は、1次監視画像データにおける輝度データの各々と1次基準画像データにおける輝度データの各々との差のすべてが、予め設定された許容範囲内にあるか否かを判定する。そして、金型監視装置100は、上記の差のすべてが許容範囲内にある場合、1次監視画像データと1次基準画像データとが一致すると判定する。一方、金型監視装置100は、上記の差の少なくとも1つが許容範囲外にある場合、1次監視画像データと1次基準画像データとが相違すると判定する。
【0032】
例えば、図9に示すように、型開動作途中状態における成形品60の姿勢が、破線で示す基準姿勢61に対して傾斜しており、その傾斜量が許容範囲を超えている場合、金型監視装置100は、1次監視画像データと1次基準画像データとが相違すると判定することができる。
上記のように、型開動作途中状態において成形品60の姿勢が基準姿勢61に対して許容範囲を超えて傾斜している場合、型開動作中に成形品60の先端部分が固定型11から離れず、成形品60の一部が固定型11に残留するといった動作異常が生じてしまう。そして、このような動作異常が生じた状態で射出成形機200の運転が継続され、射出成形機200が型締動作を行うと、残留した成形品60の一部によって固定型11の型面や可動型12の型面が損傷するおそれがある。金型監視装置100は、型開動作途中状態における1次監視動作により、上記のような動作異常の発生有無を適切に監視することができる。
【0033】
図8に戻って、金型監視装置100は、S4において、1次監視動作の結果を判定し、異常なしである場合には射出成形機200の運転を続行すると判定してS5に移行し、異常ありと判定した場合にはS16に移行する。
S5では、金型監視装置100は、射出成形機200に対して、可動型12を型開限状態としてもよいことを示す型全開動作許可指令を出力する。これにより、射出成形機200は、型開動作を続行する。
【0034】
S6では、金型監視装置100は、2次監視トリガー信号を入力したか否かを判定する。ここで、2次監視トリガー信号は、射出成形機200において型開動作が完了し、可動型12が型開限位置に到達したことを示す型開限信号であり、射出成形機200から入力される。このS6では、金型監視装置100は、2次監視トリガー信号を入力するまで待機し、2次監視トリガー信号を入力すると、S7に移行する。
【0035】
S7では、金型監視装置100は、監視カメラ110によって撮像された画像を、2次監視画像データとして取得する。ここで、2次監視画像データは、型開限状態において可動型12の型面を撮像した監視画像のデータである。
金型監視装置100は、例えば、2次監視トリガー信号(型開限信号)が入力されてから予めタイマーに設定された待機時間T2が経過した後に監視カメラ110によって撮像された画像を、2次監視画像データとして取得することができる。なお、金型監視装置100は、2次監視トリガー信号(型開限信号)が入力された後の所定期間に監視カメラ110によって撮像された複数の画像を、2次監視画像データとして取得してもよい。
【0036】
S8では、金型監視装置100は、S7において取得された2次監視画像データに基づいて、2次監視動作を行う。2次監視動作では、金型監視装置100は、S7において取得された2次監視画像データと、図6の記憶部126に記憶された2次基準画像データとを比較する。
ここで、2次基準画像データは、射出成形機200の型開動作完了後における正常な状態の可動型12の型面を撮像することによって得られた画像データである。この2次基準画像データは、型開動作完了後に、成形品60が保持された可動型12の型面を撮像することによって得られた画像データである。2次基準画像データは、射出成形機200が事前に実行した成形処理のうち、良品が成形された成形処理の型開動作完了後において撮像された可動型12の型面の画像とすることができる。
【0037】
2次基準画像データには、監視カメラ110からの画像を構成する複数の画素(例えば640ピクセル×480ピクセル)の各々についての位置データおよび輝度データが含まれている。この輝度データは、各画素の輝度を、例えば0~255の整数による相対値で示したものである。
2次監視動作では、金型監視装置100は、2次監視画像データにおける輝度データの各々と2次基準画像データにおける輝度データの各々との差のすべてが、予め設定された許容範囲内にあるか否かを判定する。そして、金型監視装置100は、上記の差のすべてが許容範囲内にある場合、2次監視画像データと2次基準画像データとが一致すると判定する。一方、金型監視装置100は、上記の差の少なくとも1つが許容範囲外にある場合、2次監視画像データと2次基準画像データとが相違すると判定する。
【0038】
例えば、型開限状態において成形品60が可動型12の型面の成形エリアに保持されていない場合、金型監視装置100は、2次監視画像データと2次基準画像データとが相違すると判定することができる。
上記のように、型開限状態において成形品60が可動型12の型面の成形エリアに保持されていない場合、成形品60は、固定型11に保持されていたり、可動型12の型面の成形エリアから脱落して他のエリアに付着したりしているといった動作異常が生じていると考えられる。そして、このような動作異常が生じた状態で射出成形機200の運転が継続され、射出成形機200が型締動作を行うと、残留した成形品60によって固定型11の型面や可動型12の型面が損傷するおそれがある。金型監視装置100は、型開限状態における2次監視動作により、上記のような動作異常の発生有無を適切に監視することができる。
【0039】
S9では、金型監視装置100は、2次監視動作の結果を判定し、異常なしである場合には射出成形機200の運転を続行すると判定してS10に移行し、異常ありと判定した場合にはS16に移行する。
S10では、金型監視装置100は、射出成形機200に対して、成形品突出動作を開始してもよいことを示す成形品突出許可指令を出力する。これにより、射出成形機200は、成形品突出動作を開始する。
【0040】
S11では、金型監視装置100は、3次監視トリガー信号を入力したか否かを判定する。ここで、3次監視トリガー信号は、射出成形機200において成形品突出動作が完了したことを示すエジェクト完了信号であり、射出成形機200から入力される。このS11では、金型監視装置100は、3次監視トリガー信号を入力するまで待機し、3次監視トリガー信号を入力すると、S12に移行する。
【0041】
S12では、金型監視装置100は、監視カメラ110によって撮像された画像を、3次監視画像データとして取得する。ここで、3次監視画像データは、成形品突出動作が完了した状態において可動型12の型面を撮像した監視画像のデータである。
金型監視装置100は、例えば、3次監視トリガー信号(エジェクト完了信号)が入力されてから予めタイマーに設定された待機時間T3が経過した後に監視カメラ110によって撮像された画像を、3次監視画像データとして取得することができる。なお、金型監視装置100は、3次監視トリガー信号(エジェクト完了信号)が入力された後の所定期間に監視カメラ110によって撮像された複数の画像を、3次監視画像データとして取得してもよい。
【0042】
S13では、金型監視装置100は、S12において取得された3次監視画像データに基づいて、3次監視動作を行う。3次監視動作では、金型監視装置100は、S12において取得された3次監視画像データと、図6の記憶部126に記憶された3次基準画像データとを比較する。
ここで、3次基準画像データは、射出成形機200の成形品突出動作完了後における正常な状態の可動型12の型面を撮像することによって得られた画像データである。この3次基準画像データは、成形品突出動作完了後に、成形品60が離型された状態の可動型12の型面を撮像することによって得られた画像データである。3次基準画像データは、射出成形機200が事前に実行した成形処理のうち、良品が成形された成形処理の成形品突出動作完了後において撮像された可動型12の型面の画像とすることができる。
【0043】
3次基準画像データには、監視カメラ110からの画像を構成する複数の画素(例えば640ピクセル×480ピクセル)の各々についての位置データおよび輝度データが含まれている。この輝度データは、各画素の輝度を、例えば0~255の整数による相対値で示したものである。
3次監視動作では、金型監視装置100は、3次監視画像データにおける輝度データの各々と3次基準画像データにおける輝度データの各々との差のすべてが、予め設定された許容範囲内にあるか否かを判定する。そして、金型監視装置100は、上記の差のすべてが許容範囲内にある場合、3次監視画像データと3次基準画像データとが一致すると判定する。一方、金型監視装置100は、上記の差の少なくとも1つが許容範囲外にある場合、3次監視画像データと3次基準画像データとが相違すると判定する。
【0044】
例えば、成形品突出動作が完了した状態において、成形品60が可動型12の型面の成形エリアに保持されたままである場合、金型監視装置100は、3次監視画像データと3次基準画像データとが相違すると判定することができる。
上記のように、成形品突出動作が完了した状態において、成形品60が可動型12の型面の成形エリアに保持されたままである場合、成形品60が可動型12の型面から離型されないといった動作異常が生じていると考えられる。そして、このような動作異常が生じた状態で射出成形機200の運転が継続され、射出成形機200が型締動作を行うと、残留した成形品60によって固定型11の型面や可動型12の型面が損傷するおそれがある。金型監視装置100は、成形品突出動作が完了した状態における3次監視動作により、上記のような動作異常の発生有無を適切に監視することができる。
【0045】
S14では、金型監視装置100は、3次監視動作の結果を判定し、異常なしである場合には射出成形機200の運転を続行すると判定してS15に移行し、異常ありと判定した場合にはS16に移行する。
S15では、金型監視装置100は、射出成形機200に対して、型締動作を開始してもよいことを示す型締動作許可指令を出力する。これにより、射出成形機200は、型締動作を開始する。
【0046】
S16では、金型監視装置100は、射出成形機200に対して、1次監視動作、2次監視動作および3次監視動作のいずれかにおいて異常が検知されたことを示す異常発生信号を出力することで、射出成形機200の運転停止を指示する。次にS17では、金型監視装置100は、不図示の警報器等を作動し、オペレータに対して射出成形機200における動作異常が発生していることを報知する。
【0047】
図10は、金型監視装置100における信号の入出力を示すタイムチャートである。図10において、(a)~(c)は、金型監視装置100の入力信号、(d)~(g)は、金型監視装置100の出力信号である。
金型監視装置100は、射出成形機200から型開開始信号を入力すると(1次監視トリガー信号ON)、タイマーを作動し、所定の監視時間T1が経過するまでの間、1次監視動作を実行する。そして、金型監視装置100は、この1次監視動作において正常である、すなわち、型開動作途中状態における成形品60の姿勢が基準姿勢と一致していると判定すると、射出成形機200に対して型全開動作許可指令を出力する(型全開許可ON)。
【0048】
その後、射出成形機200において金型10が型開限状態となり、金型監視装置100が、射出成形機200から型開限信号を入力すると(2次監視トリガー信号ON)、金型監視装置100は、タイマーを作動し、所定の待機時間T2が経過した後に2次監視動作を実行する。そして、金型監視装置100は、この2次監視動作において正常である、すなわち、型開限状態における可動型12の型面の状態が基準状態と一致していると判定すると、射出成形機200に対して成形品突出許可指令を出力する(成形品突出許可ON)。
【0049】
その後、射出成形機200において成形品突出動作が実行され、金型監視装置100が、射出成形機200からエジェクト完了信号を入力すると(3次監視トリガー信号ON)、金型監視装置100は、タイマーを作動し、所定の待機時間T3が経過した後に3次監視動作を実行する。そして、金型監視装置100は、この3次監視動作において正常である、すなわち、成形品突出動作が完了した状態における可動型12の型面の状態が基準状態と一致していると判定すると、射出成形機200に対して型締動作許可指令を出力する(型締許可ON)。
【0050】
このとき、金型監視装置100は、射出成形機200からの入力信号(1次監視トリガー信号、2次監視トリガー信号および3次監視トリガー信号)の入力状態をリセットするとともに、射出成形機200への出力信号(成形品突出許可指令および型全開動作許可指令)の出力状態をそれぞれリセットする(各信号OFF)。
射出成形機200は、金型監視装置100から型締動作許可指令を受けると、型締動作、射出動作、樹脂材料の冷却・固化の順に実行する。そして、樹脂材料が固化すると、射出成形機200は、型開開始信号を金型監視装置100へ出力して型開動作を開始する。金型監視装置100は、射出成形機200から型開開始信号を入力すると、上述したように、タイマーを作動し、所定の待機時間T1が経過するまでの間、1次監視動作を実行する。
【0051】
このとき、図9に示すように、型開動作途中状態における成形品60の姿勢が、破線で示す基準姿勢61に対して傾斜している場合、金型監視装置100は、この1次監視動作において異常が発生していると判定する。すると、金型監視装置100は、射出成形機200に対して異常発生信号を出力し(異常発生ON)、異常発生信号を受けた射出成形機200は、運転を停止する。
【0052】
以上のように、本実施形態における金型監視装置100は、樹脂成形機200の金型10の型開動作途中状態における成形品60の画像(1次監視画像データ)を監視カメラ110から取得し、取得された画像に基づいて、型開動作途中状態における異常の発生の有無を監視する1次監視動作を行う。具体的には、金型監視装置100は、型開動作途中状態における成形品60の基準姿勢に係る基準画像(1次基準画像データ)を記憶する記憶部126を備え、1次監視画像データと1次基準画像データとを比較し、両画像の一致度を判定することで、型開動作途中状態における異常の発生の有無を監視する。
【0053】
射出成形機200の型開動作完了後における金型10(可動型12)の型面の状態を監視する2次監視動作は、可動型12の型面に成形品60がきちんと保持されているか否かを監視するものであり、成形品60の僅かな欠損や変形を検知することは困難である。本実施形態では、金型監視装置100は、2次監視動作の前に、型開動作途中状態における成形品60の状態を監視する1次監視動作を実行するので、型開動作によって欠損や変形等の不具合に至る成形品60を適切に判別することができる。
【0054】
ここで、型開動作途中状態における成形品60の画像は、金型10を構成する可動型12と固定型11とに成形品60が保持された状態の画像である。金型監視装置100は、当該画像に基づいて、型開動作途中状態における成形品60の姿勢が基準姿勢61に対して許容範囲を超えて傾斜しているか否かを監視する。
したがって、金型監視装置100は、型開動作によって成形品60の一部が固定型11に取られてしまう現象を型開動作の途中で事前に予測し、異常ありと判定することができる。また、金型監視装置100は、可動型12と固定型11とに保持された状態での成形品60の傾きを判定するので、高精度に異常を検知することができる。
【0055】
さらに、監視カメラ110は、図1に示すように、射出成形機200の上方で、かつ固定型11に近い位置に固定されている。そのため、監視カメラ110から型開動作途中における成形品60までの距離は、監視カメラ100から型開動作完了後における可動型12の型面までの距離よりも短い。つまり、金型監視装置100は、2次監視動作よりも監視対象に近い位置で1次監視動作を行うことができる。したがって、金型監視装置100は、成形品60の僅かな傾きであっても適切に検知することが可能である。
また、監視カメラ110は固定カメラであるため、監視カメラ110を移動させるための機構や構造体等は不要である。したがって、装置の大型化や複雑化を回避することができる。
【0056】
そして、金型監視装置100は、1次監視動作によって異常ありと判定された場合、射出成形機200の運転を停止するよう制御する。これにより、金型監視装置100は、成形エリアに成形品60の一部が残留したまま射出成形機200の運転が続行され、型締動作が行われてしまうことを防止することができる。したがって、射出成形機200において型締動作が行われた際に、残留した成形品60によって金型10等が損傷してしまうことを適切に防止することができる。
【0057】
また、金型監視装置100は、1次監視動作において、型開動作途中状態における複数の異なるタイミングでそれぞれ撮像された成形品60の画像を取得し、取得された複数の画像について、それぞれ異常の発生の有無を監視する。具体的には、金型監視装置100は、射出成形機200において型開動作が開始されてから所定の監視時間T1が経過するまでの間、監視カメラ100から成形品60の画像を連続して取得し、取得された複数の画像について、それぞれ異常の発生の有無を監視する。
このように、金型監視装置100は、型開動作途中状態において複数回の監視を行うことで、型開動作の過程で生じる動作異常をより高精度に検知することができる。
【0058】
また、金型監視装置100は、射出成形機200の型開動作完了後における金型10(可動型12)の型面の画像を取得し、取得された画像に基づいて、型開動作完了後における異常の発生の有無を監視する2次監視動作を行ってもよい。さらに、金型監視装置100は、射出成形機200の成形品突出動作完了後における金型10(可動型12)の型面の画像を取得し、取得された画像に基づいて、成形品突出動作完了後における異常の発生の有無を監視する3次監視動作を行ってもよい。
【0059】
このように、金型監視装置100は、射出成形機200において金型10が型開動作を開始してから、成形品60を取り出して型締動作を開始するまでの間に、3回の監視動作を行ってもよい。これにより、射出成形機200における成形処理の過程で生じるさまざまな異常を適切に検知することができる。また、金型監視装置100は、共通の監視カメラ110によって撮像された監視画像を用いて3回の監視動作を行うことができる。したがって、3回の監視動作にそれぞれ対応した検出機構を設ける必要がない。そのため、部品点数を削減し、装置の大型化や複雑化を回避することができる。
【0060】
(変形例)
上記実施形態においては、金型監視装置100が、各監視動作において異常ありと判定した場合、射出成形機200に対して異常発生信号を出力し、射出成形機200の運転を停止する場合について説明した。しかしながら、各監視動作において異常ありと判定された場合の動作は、上記に限定されるものではない。例えば、金型監視装置100は、監視動作において異常ありと判定し、射出成形機200を停止するとともに当該異常をオペレータに対して報知した後、オペレータによる再監視指令を入力可能に構成されていてもよい。金型監視装置100は、再監視指令が入力された場合、異常ありと判定した監視動作を再度実行することができる。
【0061】
また、上記実施形態においては、金型監視装置100が監視カメラ110を備える場合について説明したが、監視カメラ110は金型監視装置100に含まれなくてもよい。つまり、金型監視装置100は、監視カメラ110が撮像した画像を取得する手段を備えていればよい。
【0062】
さらに、上記実施形態においては、射出成形機200が横型成形機である場合について説明したが、射出成形機200は竪型成形機であってもよい。また、金型監視装置100が監視する樹脂成形機は、射出成形機に限定されるものではなく、例えばインサート成形機であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…金型、11…固定型、12…可動型、60…成形品、100…金型監視装置、110…監視カメラ、120…監視制御部、121…中央制御部、124…画像取得部、125…画像データ処理部、126…記憶部、200…射出成形機
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10