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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】光学部材
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20220105BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20220105BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220105BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20220105BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02F1/13357
G02F1/1335
G02B7/00 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017221172
(22)【出願日】2017-11-16
(65)【公開番号】P2019090970
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】中村 恒三
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-090578(JP,A)
【文献】特開2009-025774(JP,A)
【文献】特開2003-084137(JP,A)
【文献】特開2009-237290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02B 7/00
G02F 1/13357
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の方向変換機能を有する第1部材と、該第1部材に接着層を介して積層された第2部材と、を有し、
該接着層が空隙部を有し、該接着層と該第1部材および/または第2部材との界面に非接触部が規定されており、
該接着層の空隙部が、該接着層の表面凹凸構造の凹部により規定されており、および、該接着層の厚み方向に貫通した貫通孔を含み、
該接着層と該第1部材および該第2部材とが、平面視した場合の四つの隅部において接触している、
光学部材。
【請求項2】
前記接着層と前記第1部材および前記第2部材とが、平面視した場合の周縁部全体にわたって接触している、請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記接着層を平面視した場合の空隙率が70%~90%である、請求項1または2に記載の光学部材。
【請求項4】
前記第2部材の前記第1部材と反対側に、拡散板をさらに有する、請求項1からのいずれかに記載の光学部材。
【請求項5】
前記拡散板が、前記第2部材から離間して配置されている、請求項に記載の光学部材。
【請求項6】
前記第2部材が、別の接着層を介して積層された2つの光学フィルムの積層体であり、該別の接着層が光拡散性を有する、請求項1からのいずれかに記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材に関する。より詳細には、本発明は、光の方向変換機能を有する第1部材と所定の第2部材とが空隙部を有する接着層を介して積層されている光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置として、液晶表示装置の普及には目覚ましいものがある。液晶表示装置においては、プリズムシート、マイクロレンズアレイ、レンチキュラーレンズまたは回折格子のような光の方向変換機能を有する部材が用いられる場合がある。このような部材は、多くの場合、他の光学部材とは別置きで用いられる。一方、液晶表示装置の小型化・薄型化の要望が高まるにつれて、このような部材と他の光学部材との一体化(具体的には、接着層による貼り合わせ)も要望されている。しかし、光の方向変換機能を有する部材と他の部材とを貼り合わせると、方向変換された光の利用効率が減少し、得られる液晶表示装置の輝度が不十分であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5346066号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、薄型で、かつ、非常に高い輝度を有する液晶表示装置を実現し得る光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光学部材は、光の方向変換機能を有する第1部材と、該第1部材に接着層を介して積層された第2部材と、を有する。該接着層は空隙部を有し、該接着層と該第1部材および/または第2部材との界面に非接触部が規定されており、該接着層と該第1部材および該第2部材とは、平面視した場合の四つの隅部において接触している。
1つの実施形態においては、上記接着層と上記第1部材および上記第2部材とは、平面視した場合の周縁部全体にわたって接触している。
1つの実施形態においては、上記接着層の空隙部は、該接着層の表面凹凸構造の凹部により規定されている。
1つの実施形態においては、上記接着層の空隙部は、該接着層の厚み方向に貫通した貫通孔を含む。
1つの実施形態においては、上記接着層を平面視した場合の空隙率は70%~90%である。
1つの実施形態においては、上記光学部材は、上記第2部材の上記第1部材と反対側に、拡散板をさらに有する。1つの実施形態においては、上記拡散板は、上記第2部材から離間して配置されている。
1つの実施形態においては、上記第2部材は、別の接着層を介して積層された2つの光学フィルムの積層体であり、該別の接着層が光拡散性を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光の方向変換機能を有する第1部材と所定の第2部材とが接着層を介して積層されている光学部材において、接着層に空隙部を設けることにより、空気層を排除したにもかかわらず光を効率的に再帰反射させることができ、したがって、方向変換された光の利用効率を十分に確保し、光の全体の利用効率を向上させることができる。結果として、薄型で、かつ、非常に高い輝度を有する液晶表示装置を実現し得る光学部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態による光学部材を説明する概略断面図である。
図2】本発明の実施形態に用いられ得る接着層の空隙部の平面視形状の例を説明する概略平面図である。
図3】本発明の別の実施形態による光学部材を説明する概略断面図である。
図4】本発明のさらに別の実施形態による光学部材を説明する概略断面図である。
図5】本発明の光学部材の第2部材として用いられ得る反射型偏光子の一例の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.光学部材における第1部材と第2部材の組み合わせ
本発明の実施形態による光学部材は、光の方向変換機能を有する第1部材と、第1部材に接着層を介して積層された第2部材と、を有する。接着層は空隙部を有し、接着層と第1部材および/または第2部材との界面に非接触部が規定されている。空隙部は、光学部材(実質的には、接着層)を平面視した場合の四隅には形成されない。第1部材としては、光の方向変換機能を有する任意の適切な光学部材が挙げられる。これらの具体例としては、プリズムシート、マイクロレンズアレイ、レンチキュラーレンズシート、回折格子、および導光板が挙げられる。第2部材としては、目的に応じて任意の適切な光学フィルム、基材が挙げられる。これらの具体例としては、吸収型偏光子、偏光子保護フィルム、反射型偏光子、位相差フィルム、導電層付基材、波長変換フィルム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。光学フィルム等の組み合わせは、目的に応じて適切に選択され得る。すなわち、第2部材としては、上記の光学フィルムまたは基材単体に加えて、目的に応じた任意の適切な光学積層体が挙げられる。光学積層体の構成の代表例としては、偏光板(偏光子保護フィルム/吸収型偏光子/偏光子保護フィルムの積層体、あるいは、偏光子保護フィルム/吸収型偏光子の積層体)、位相差フィルム付偏光板(偏光板/位相差フィルムの積層体:例えば、円偏光板)、偏光板/反射型偏光子の積層体、偏光板/反射型偏光子/波長変換フィルムの積層体が挙げられる。上記で例示した以外の任意の適切な構成を有する光学積層体(任意の適切な光学フィルム等の組み合わせ)が第2部材として用いられ得ることはいうまでもない。
【0009】
B.光学部材の一例
以下、本発明の実施形態による光学部材の代表例として、第1部材がプリズムシートであり、第2部材が任意の適切な光学フィルムである場合について、図面を参照して説明する。本実施形態の説明を読めば、本発明が第1部材と第2部材の任意の組み合わせについても同様に適用され、かつ、同様の効果が得られることは、当業者に自明である。
【0010】
B-1.全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による光学部材を説明する概略断面図である。光学部材100は、第1部材(プリズムシート)10と第2部材20と接着層30とを有する。プリズムシート10は、代表的には、基材部11とプリズム部12とを有する。プリズム部12は、基材部11と反対側に複数配列された柱状の単位プリズム13により構成されている。本発明の実施形態においては、接着層30は空隙部31を有する。空隙部31が設けられることにより、接着層30と第1部材10および/または第2部材20との界面に非接触部32が規定されている。空隙部31は、代表的には、接着層30の表面凹凸構造の凹部により規定されている。空隙部31は、接着層30の厚み方向に貫通した貫通孔を含んでいてもよく、実質的に貫通孔のみで構成されていてもよい。
【0011】
上記のとおり、本発明の実施形態による光学部材は、プリズムシート10と第2部材20とが一体化されている。このように、プリズムシートを光学部材に組み込んで一体化することにより、プリズムシートと隣接する層との間の空気層を排除することができるので、液晶表示装置の薄型化に寄与することができる。液晶表示装置の薄型化は、デザインの選択幅を広げるので、商業的な価値が大きい。さらに、プリズムシートを一体化することにより、プリズムシートを面光源装置(バックライトユニット、実質的には導光板)に取り付ける際のこすれによるプリズムシートの傷つきを回避できるので、そのような傷に起因する表示の濁りを防止することができ、かつ、機械的強度に優れた液晶表示装置を得ることができる。
【0012】
本発明の実施形態においては、上記のとおり、接着層30は空隙部31を有する。空隙部を形成することにより、以下の利点が得られる。プリズムシートが一体化されて空気層が排除された従来の光学部材では、例えば背面側の光源からの光が入射すると、当該光は再帰反射されず、視認側に光が抜けてしまう。その結果、空気層がある場合(プリズムシートのような第1部材を別置きする場合)に比べて、正面方向に出射される光量が少ない、および、視認側に出射され得ない方向への光が発生することにより光の利用効率が減少する、という問題が生じる場合が多い。特に、プリズムシートをはじめとする光の方向変換機能を有する部材(他の例として、マイクロレンズアレイ、レンチキュラーレンズシート、回折格子、導光板)を一体化すると、方向変換された光の利用効率が減少するので、上記のような問題が顕著となる。一方、接着層に空隙部を形成することにより、空気層が存在する場合と同様に光が効率的に再帰反射される。したがって、正面方向に出射される光量を十分に確保し、かつ、視認側に出射され得ない方向への光の発生を抑制して光の利用効率を向上させることができる。その結果、空気層を排除して顕著な薄型化を実現しつつ、高い輝度を有する液晶表示装置を実現することができる。
【0013】
空隙部は、上記のとおり、光学部材(実質的には、接着層)を平面視した場合の四隅には形成されない。言い換えれば、接着層30と第1部材(図示例ではプリズムシート)10および第2部材20とは、光学部材を平面視した場合の四つの隅部において接触している。このような構成であれば、第1部材(図示例ではプリズムシート)10と第2部材20とを十分な強度で密着させる(一体化する)ことができる。さらに、光の利用効率を高めることができる。より好ましくは、空隙部は、光学部材(実質的には、接着層)を平面視した場合の周縁部には形成されない。言い換えれば、接着層30と第1部材(図示例ではプリズムシート)10および第2部材20とは、光学部材を平面視した場合の周縁部全体にわたって接触している。このような構成であれば、第1部材と第2部材の密着強度および光の利用効率の両方を、より高めることができる。
【0014】
空隙部の平面視形状としては、任意の適切な形状が採用され得る。具体例としては、円形、楕円形、正三角形、二等辺三角形、不等辺三角形、正方形、長方形、ひし形、台形、不等辺四角形、多角形(例えば、五角形、六角形、七角形、八角形)、星形、鱗型、不定形が挙げられる。これらの形状を組み合わせて用いてもよい。空隙部は、平面視した場合に、例えば図2(a)~図2(c)に示すように規則的に配置されてもよく、例えば図2(d)~図2(f)に示すように不規則に配置されてもよい。空隙部の配置(平面視)は、接着層の両方の面(第1部材側の面および第2部材側の面)で同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、空隙部が貫通孔のみで構成される場合には、空隙部の配置(平面視)は、接着層の両方の面で同一となる。
【0015】
接着層を平面視した場合の空隙率は、好ましくは70%~90%であり、より好ましくは73%~87%であり、さらに好ましくは75%~85%である。空隙率がこのような範囲であれば、第1部材と第2部材の密着強度および光の利用効率の両方を高めることができる。さらに、上記の空隙部の形成位置との相乗的な効果が得られ得る。なお、本明細書において「接着層を平面視した場合の空隙率」とは、接着層の両方の面の空隙率の平均を意味する。
【0016】
接着層30は、所定の空隙部31を有する限り、任意の適切な接着剤または粘着剤で構成され得る。接着層は、好ましくは粘着剤で構成され得る。粘着剤は適度な厚みを有するので、光の利用効率を向上させ得る空隙部の形成が容易だからである。
【0017】
図3は、本発明の別の実施形態による光学部材を説明する概略断面図である。図示例の光学部材101は、第2部材20の第1部材と反対側に拡散板40をさらに有する。拡散板を設けることにより、接着層の空隙部を目立たなくすることができ、外観に優れた光学部材を得ることができる。好ましくは、拡散板40は、第2部材20から離間して配置されている。拡散板を離間して配置することにより、外観にさらに優れた光学部材を得ることができる。離間距離は、例えば1mm以上であり、好ましくは1mm~10mmであり、より好ましくは2mm~5mmである。離間距離は、例えばスペーサーにより調整することができる。
【0018】
図4は、本発明のさらに別の実施形態による光学部材を説明する概略断面図である。図示例の光学部材102においては、第2部材20は、別の接着層25を介して積層された2つの光学フィルム21、22の積層体である。本実施形態においては、別の接着層25は、好ましくは光拡散性を有する。このような構成であれば、図3のような拡散板を用いることなく、接着層30の空隙部を目立たなくすることができ、外観に優れた光学部材を得ることができる。図4の実施形態は、図3の実施形態と択一的な実施形態である。好ましくは、別の接着層25は、光拡散粘着剤で構成され得る。なお、別の接着層が光拡散性を有さない場合には、好ましくは図3のような拡散板が第2部材の第1部材と反対側に用いられ得る。
【0019】
図1図4を参照して説明した実施形態においては、プリズムシート10のプリズム部12は接着層30と反対側に配置されているが、プリズム部12は接着層30側に配置されてもよい。
【0020】
以下、本実施形態の光学部材を構成する第1部材(代表例としてのプリズムシート)、接着層および第2部材の詳細について説明する。
【0021】
B-2.プリズムシート
上記のとおり、プリズムシート10は、代表的には、基材部11とプリズム部12とを有する。プリズムシート10は、本発明の光学部材が液晶表示装置のバックライト側に配置された場合に、バックライトユニットから出射された光を、プリズム部12内部での全反射等によって、液晶表示装置の略法線方向に最大強度を有する光として偏光板に導く。基材部11は、目的およびプリズムシートの構成に応じて省略されてもよい。例えば、プリズムシートの基材部側に隣接する層が支持部材として機能し得る場合には、基材部11は省略され得る。
【0022】
B-2-1.プリズム部
プリズムシート10(実質的には、プリズム部12)は、代表的には、基材部11と反対側に凸となる柱状の単位プリズム13が複数配列されて構成されている。好ましくは、単位プリズム13は柱状であり、その長手方向(稜線方向)は、液晶表示装置において偏光板の透過軸に対して略直交方向または略平行方向となるよう構成される。図示例では、プリズムシートは、単位プリズムが接着層と反対側になるよう配置されているが、単位プリズムが接着層側となるように配置されてもよい。
【0023】
単位プリズム13の形状は、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な構成が採用され得る。単位プリズム13は、その配列方向に平行かつ厚み方向に平行な断面において、その断面形状が、三角形状であってもよく、その他の形状(例えば、三角形の一方または両方の斜面が傾斜角の異なる複数の平坦面を有する形状)であってもよい。三角形状としては、単位プリズムの頂点を通りシート面に直交する直線に対して非対称である形状(例えば、不等辺三角形)であってもよく、当該直線に対して対称である形状(例えば、二等辺三角形)であってもよい。さらに、単位プリズムの頂点は、面取りされた曲面状となっていてもよく、先端が平坦面となるようにカットされて断面台形状となっていてもよい。単位プリズム13の詳細な形状は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、単位プリズム13として、特開平11-84111号公報に記載の構成が採用され得る。
【0024】
単位プリズム13の高さは、すべての単位プリズムが同一であってもよく、異なる高さを有していてもよい。単位プリズムが異なる高さを有する場合、1つの実施形態においては、単位プリズムは2つの高さを有する。例えば、高さが高い単位プリズムと低い単位プリズムとが交互に配置されてもよく、高さが高い(または低い)単位プリズムが3つおき、4つおき、5つおき等に配置されてもよく、目的に応じて不規則的に配置されてもよく、まったくランダムに配置されてもよい。別の実施形態においては、単位プリズムは3つ以上の高さを有する。
【0025】
B-2-2.基材部
プリズムシート10に基材部11を設ける場合には、単一の材料を押出し成型等することにより基材部11とプリズム部12とを一体的に形成してもよく、基材部用フィルム上にプリズム部を賦形してもよい。基材部の厚みは、好ましくは25μm~150μmである。このような厚みであれば、取扱い性および強度が優れ得る。
【0026】
基材部11を構成する材料としては、目的およびプリズムシートの構成に応じて任意の適切な材料を採用することができる。基材部用フィルム上にプリズム部を賦形する場合には、基材部用フィルムの具体例としては、三酢酸セルロース(TAC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂により形成されたフィルムが挙げられる。当該フィルムは好ましくは未延伸フィルムである。
【0027】
単一材料で基材部11とプリズム部12とを一体形成する場合、当該材料として、基材部用フィルム上にプリズム部を賦形する場合のプリズム部形成用材料と同様の材料を用いることができる。プリズム部形成用材料としては、例えば、エポキシアクリレート系やウレタンアクリレート系の反応性樹脂(例えば、電離放射線硬化性樹脂)が挙げられる。一体構成のプリズムシートを形成する場合には、PC、PET等のポリエステル樹脂、PMMA、MS等のアクリル系樹脂、環状ポリオレフィン等の光透過性の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0028】
基材部11は、好ましくは、実質的に光学的に等方性を有する。本明細書において「実質的に光学的に等方性を有する」とは、位相差値が液晶表示装置の光学特性に実質的に影響を与えない程度に小さいことをいう。例えば、基材部の面内位相差Reは、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは10nm以下である。なお、面内位相差Reは、23℃における波長590nmの光で測定した面内の位相差値である。面内位相差Reは、Re=(nx-ny)×dで表される。ここで、nxは光学部材の面内において屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、nyは当該面内で遅相軸に垂直な方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、dは光学部材の厚み(nm)である。
【0029】
さらに、基材部11の光弾性係数は、好ましくは-10×10-12/N~10×10-12/Nであり、より好ましくは-5×10-12/N~5×10-12/Nであり、さらに好ましくは-3×10-12/N~3×10-12/Nである。
【0030】
B-3.接着層
接着層30は、任意の適切な接着剤または粘着剤で構成され得る。このような接着剤または粘着剤を構成する材料の代表例としては、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。必要に応じて、硬化剤が併用され得る。好ましくは、アクリル系樹脂である。入手が容易で、かつ、共重合成分の種類および配合量等を調整することにより、所望の特性を実現し得るからである。より好ましくは、アクリル系樹脂を含む粘着剤である。アクリル系樹脂を構成するモノマー成分(共重合成分)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1-20)アルキルエステル類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-トなどの多環式(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリレート;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド等のN-アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。上記以外に、環状エーテル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体も用いられ得る。具体例としては、(メタ)アクリルアミド基の窒素原子が複素環を形成している複素環含有(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられ、例えば、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのモノマーの種類、数、共重合比を調整することにより、所望の特性を実現することができる。
【0031】
接着層が接着剤で構成される場合、その厚みは、好ましくは0.01μm~2μmである。接着層が粘着剤で構成される場合、その厚みは、好ましくは3μm~200μmである。
【0032】
空隙部31については、上記のB-1項で説明したとおりである。空隙部は、任意の適切な方法により形成され得る。具体例としては、機械的打ち抜き(例えば、パンチング、彫刻刃打抜き、プロッター、ウォータージェット)または接着層の所定部分の除去(例えば、レーザー加工または化学的溶解)が挙げられる。
【0033】
機械的打ち抜きは、任意の適切な様式により行われ得る。例えば、複数の打ち抜き刃を所定のパターンで配置したパンチング装置を用いて行ってもよく、XYプロッターのような装置を用いて打ち抜き刃を移動させて行ってもよい。
【0034】
レーザー加工は任意の適切な様式により行われる。レーザーとしては、任意の適切なレーザーを採用し得る。具体例としては、COレーザー、エキシマレーザー等の気体レーザー;YAGレーザー等の固体レーザー;半導体レーザーが挙げられる。レーザー光の照射条件(出力条件、移動速度、回数)は、接着層(実質的には、接着剤または粘着剤)の形成材料、接着層の厚み、空隙部の平面視形状、平面視した場合の空隙率等に応じて任意の適切な条件を採用し得る。
【0035】
B-4.第1部材の変形例
B-1項からB-3項まで、第1部材がプリズムシートである場合の実施形態を説明してきたが、上記のとおり、光の方向変換機能を有する任意の第1部材についても本発明が同様に適用され、かつ、同様の効果が得られることは、当業者に自明である。第1部材の変形例の具体例としては、上記のとおり、マイクロレンズアレイ、レンチキュラーレンズシート、回折格子、および導光板が挙げられる。
【0036】
C.第2部材
上記のとおり、第2部材は、目的に応じて任意の適切な光学フィルム、基材であり得、具体例としては吸収型偏光子、偏光子保護フィルム、反射型偏光子、位相差フィルム、導電層付基材、波長変換フィルムおよびそれらの組み合わせが挙げられる。以下、代表例として、吸収型偏光子、偏光子保護フィルム、反射型偏光子、波長変換フィルム、偏光板と反射型偏光子との積層体について説明するが、これら以外の光学フィルム、基材、それらの組み合わせ(光学積層体)についても本発明が同様に適用され、かつ、同様の効果が得られることは、当業者に自明である。
【0037】
C-1.吸収型偏光子
吸収型偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0038】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0039】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0040】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0041】
偏光子の厚みは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは3μm~22μmであり、さらに好ましくは3μm~15μmであり、特に好ましくは3μm~12μmである。
【0042】
C-2.偏光子保護フィルム
偏光子保護フィルムは、任意の適切な材料で構成され得る。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。偏光子保護フィルムの厚みは、好ましくは20μm~100μmである。
【0043】
C-3.反射型偏光子
反射型偏光子は、特定の偏光状態(偏光方向)の偏光を透過し、それ以外の偏光状態の光を反射する機能を有する。反射型偏光子は、直線偏光分離型であってもよく、円偏光分離型であってもよい。以下、一例として、直線偏光分離型の反射型偏光子について説明する。なお、円偏光分離型の反射型偏光子としては、例えば、コレステリック液晶を固定化したフィルムとλ/4板との積層体が挙げられる。
【0044】
図5は、反射型偏光子の一例の概略斜視図である。反射型偏光子は、複屈折性を有する層Aと複屈折性を実質的に有さない層Bとが交互に積層された多層積層体である。例えば、このような多層積層体の層の総数は、50~1000であり得る。図示例では、A層のx軸方向の屈折率nxがy軸方向の屈折率nyより大きく、B層のx軸方向の屈折率nxとy軸方向の屈折率nyとは実質的に同一である。したがって、A層とB層との屈折率差は、x軸方向において大きく、y軸方向においては実質的にゼロである。その結果、x軸方向が反射軸となり、y軸方向が透過軸となる。A層とB層とのx軸方向における屈折率差は、好ましくは0.2~0.3である。なお、x軸方向は、反射型偏光子の製造方法における反射型偏光子の延伸方向に対応する。
【0045】
上記A層は、好ましくは、延伸により複屈折性を発現する材料で構成される。このような材料の代表例としては、ナフタレンジカルボン酸ポリエステル(例えば、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。ポリエチレンナフタレートが好ましい。上記B層は、好ましくは、延伸しても複屈折性を実質的に発現しない材料で構成される。このような材料の代表例としては、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステルが挙げられる。
【0046】
反射型偏光子は、A層とB層との界面において、第1の偏光方向を有する光(例えば、p波)を透過し、第1の偏光方向とは直交する第2の偏光方向を有する光(例えば、s波)を反射する。反射した光は、A層とB層との界面において、一部が第1の偏光方向を有する光として透過し、一部が第2の偏光方向を有する光として反射する。反射型偏光子の内部において、このような反射および透過が多数繰り返されることにより、光の利用効率を高めることができる。
【0047】
1つの実施形態においては、反射型偏光子は、図5に示すように、偏光板と反対側の最外層として反射層Rを含んでいてもよい。反射層Rを設けることにより、最終的に利用されずに反射型偏光子の最外部に戻ってきた光をさらに利用することができるので、光の利用効率をさらに高めることができる。反射層Rは、代表的には、ポリエステル樹脂層の多層構造により反射機能を発現する。
【0048】
反射型偏光子は、代表的には、共押出と横延伸とを組み合わせて作製され得る。共押出は、任意の適切な方式で行われ得る。例えば、フィードブロック方式であってもよく、マルチマニホールド方式であってもよい。例えば、フィードブロック中でA層を構成する材料とB層を構成する材料とを押出し、次いで、マルチプライヤーを用いて多層化する。なお、このような多層化装置は当業者に公知である。次いで、得られた長尺状の多層積層体を代表的には搬送方向に直交する方向(TD)に延伸する。A層を構成する材料(例えば、ポリエチレンナフタレート)は、当該横延伸により延伸方向においてのみ屈折率が増大し、結果として複屈折性を発現する。B層を構成する材料(例えば、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステル)は、当該横延伸によってもいずれの方向にも屈折率は増大しない。結果として、延伸方向(TD)に反射軸を有し、搬送方向(MD)に透過軸を有する反射型偏光子が得られ得る(TDが図5のx軸方向に対応し、MDがy軸方向に対応する)。なお、延伸操作は、任意の適切な装置を用いて行われ得る。
【0049】
反射型偏光子としては、例えば、特表平9-507308号公報に記載のものが使用され得る。
【0050】
C-4.波長変換フィルム
波長変換フィルムは、代表的には、マトリックスと該マトリックス中に分散された波長変換材料とを含む。
【0051】
C-4-1.マトリックス
マトリックスを構成する材料(以下、マトリックス材料とも称する)としては、任意の適切な材料を用いることができる。このような材料としては、樹脂、有機酸化物、無機酸化物が挙げられる。マトリックス材料は、好ましくは、低い酸素透過性および透湿性を有し、高い光安定性および化学的安定性を有し、所定の屈折率を有し、優れた透明性を有し、および/または、波長変換材料に対して優れた分散性を有する。マトリックスは、実用的には、樹脂フィルムまたは粘着剤で構成され得る。
【0052】
C-4-1-1.樹脂フィルム
マトリックスが樹脂フィルムである場合、樹脂フィルムを構成する樹脂としては、任意の適切な樹脂を用いることができる。具体的には、樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよく、活性エネルギー線硬化性樹脂であってもよい。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、電子線硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、可視光線硬化型樹脂が挙げられる。樹脂の具体例としては、エポキシ、(メタ)アクリレート(例えば、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート)、ノルボルネン、ポリエチレン、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ尿素、ポリウレタン、アミノシリコーン(AMS)、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリフェニルアルキルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリジアルキルシロキサン、シルセスキオキサン、フッ化シリコーン、ビニルおよび水素化物置換シリコーン、スチレン系ポリマー(例えば、ポリスチレン、アミノポリスチレン(APS)、ポリ(アクリルニトリルエチレンスチレン)(AES))、二官能性モノマーと架橋したポリマー(例えば、ジビニルベンゼン)、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、セルロース系ポリマー(例えば、トリアセチルセルロース)、塩化ビニル系ポリマー、アミド系ポリマー、イミド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコーン系ポリマー、アクリルウレタン系ポリマーが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、組み合わせて(例えば、ブレンド、共重合)用いてもよい。これらの樹脂は膜を形成後に延伸、加熱、加圧といった処理を施してもよい。好ましくは、熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂であり、より好ましくは熱硬化性樹脂である。本発明の光学部材をロールトゥロールにより製造する場合に、好適に適用することができるからである。
【0053】
C-4-1-2.粘着剤
マトリックスが粘着剤である場合、粘着剤としては、任意の適切な粘着剤を用いることができる。粘着剤は、好ましくは、透明性および光学的等方性を有する。粘着剤の具体例としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、セルロース系粘着剤が挙げられる。好ましくは、ゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤である。
【0054】
C-4-2.波長変換材料
波長変換材料は、波長変換フィルムの波長変換特性を制御し得る。波長変換材料は、例えば量子ドットであってもよく蛍光体であってもよい。
【0055】
波長変換フィルムにおける波長変換材料の含有量(2種以上を用いる場合には合計の含有量)は、マトリックス材料(代表的には、樹脂または粘着剤固形分)100重量部に対して、好ましくは0.01重量部~50重量部、より好ましくは0.01重量部~30重量部である。波長変換材料の含有量がこのような範囲であれば、RGBすべての色相バランスに優れた液晶表示装置を実現することができる。
【0056】
C-4-2-1.量子ドット
量子ドットの発光中心波長は、量子ドットの材料および/または組成、粒子サイズ、形状等により調整することができる。
【0057】
量子ドットは、任意の適切な材料で構成され得る。量子ドットは、好ましくは無機材料、より好ましくは無機導体材料または無機半導体材料で構成され得る。半導体材料としては、例えば、II-VI族、III-V族、IV-VI族、およびIV族の半導体が挙げられる。具体例としては、Si、Ge、Sn、Se、Te、B、C(ダイアモンドを含む)、P、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdSeZn、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、BeS、BeSe、BeTe、MgS、MgSe、GeS、GeSe、GeTe、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbS、PbSe、PbTe、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Si、Ge、Al、(Al、Ga、In)(S、Se、Te)、AlCOが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。量子ドットは、p型ドーパントまたはn型ドーパントを含んでいてもよい。また、量子ドットはコアシェル構造を有していてもよい。当該コアシェル構造においては、シェルの周囲に目的に応じて任意の適切な機能層(単一層または複数層)が形成されていてもよく、シェル表面に表面処理および/または化学修飾がなされていてもよい。
【0058】
量子ドットの形状としては、目的に応じて任意の適切な形状が採用され得る。具体例としては、真球状、燐片状、板状、楕円球状、不定形が挙げられる。
【0059】
量子ドットのサイズは、所望の発光波長に応じて任意の適切なサイズが採用され得る。量子ドットのサイズは、好ましくは1nm~10nmであり、より好ましくは2nm~8nmである。量子ドットのサイズがこのような範囲であれば、緑色および赤色のそれぞれがシャープな発光を示し、高演色性を実現することができる。例えば、緑色光は量子ドットのサイズが7nm程度で発光し得、赤色光は3nm程度で発光し得る。なお、量子ドットのサイズは、量子ドットが例えば真球状である場合には平均粒径であり、それ以外の形状である場合には当該形状における最小軸に沿った寸法である。
【0060】
量子ドットの詳細は、例えば、特開2012-169271号公報、特開2015-102857号公報、特開2015-65158号公報、特表2013-544018号公報、特表2010-533976号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。量子ドットは、市販品を用いてもよい。
【0061】
C-4-2-2.蛍光体
蛍光体としては、目的に応じて所望の色の光を発光し得る任意の適切な蛍光体を用いることができる。具体例としては、赤色蛍光体、緑色蛍光体が挙げられる。
【0062】
赤色蛍光体としては、例えば、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体が挙げられる。複合フッ化物蛍光体とは、少なくとも一つの配位中心(例えば、後述のM)を含有し、配位子として作用するフッ化物イオンに囲まれ、必要に応じて対イオン(例えば、後述のA)により電荷を補償される配位化合物をいう。その具体例としては、A[MF]:Mn4+、A[MF]:Mn4+、Zn[MF]:Mn4+、A[In]:Mn4+、A[M´F]:Mn4+、E[M´F]:Mn4+、A[ZrF]:Mn4+、Ba0.65Zr0.352.70:Mn4+が挙げられる。ここで、Aは、Li、Na、K、Rb、Cs、NHまたはその組み合わせである。Mは、Al、Ga、Inまたはその組み合わせである。M´は、Ge、Si、Sn、Ti、Zrまたはその組み合わせである。Eは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znまたはその組み合わせである。配位中心における配位数が6である複合フッ化物蛍光体が好ましい。このような赤色蛍光体の詳細は、例えば特開2015-84327号公報に記載されている。当該公報の記載は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0063】
緑色蛍光体としては、例えば、β型Si結晶構造を有するサイアロンの固溶体を主成分として含む化合物が挙げられる。好ましくは、このようなサイアロン結晶中に含まれる酸素量を特定量(例えば、0.8質量%)以下とするような処理が行われる。このような処理を行うことにより、ピーク幅が狭い、シャープな光を発光する緑色蛍光体が得られ得る。このような緑色蛍光体の詳細は、例えば特開2013-28814号公報に記載されている。当該公報の記載は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0064】
波長変換フィルムは、単一層であってもよく、積層構造を有していてもよい。波長変換フィルムが積層構造を有する場合には、それぞれの層は、代表的には異なる発光特性を有する波長変換材料を含み得る。
【0065】
波長変換フィルムの厚み(積層構造を有する場合には、その総厚み)は、好ましくは1μm~500μmであり、より好ましくは100μm~400μmである。波長変換フィルムの厚みがこのような範囲であれば、変換効率および耐久性に優れ得る。波長変換フィルムが積層構造を有する場合の各層の厚みは、好ましくは1μm~300μmであり、より好ましくは10μm~250μmである。
【0066】
波長変換フィルムの厚み50μm換算の水蒸気透過率(透湿度)は、好ましくは100g/m・day以下であり、より好ましくは80g/m・day以下である。水蒸気透過率は、40℃、90%RHの雰囲気下において、JIS K7129に準拠した測定法によって測定され得る。
【0067】
C-4-3.バリア機能
マトリックスが樹脂フィルムまたは粘着剤のいずれの場合であっても、波長変換フィルムは、好ましくは、酸素および/または水蒸気に対してバリア機能を有する。本明細書において「バリア機能を有する」とは、波長変換フィルムに侵入する酸素および/または水蒸気の透過量を制御して波長変換材料をこれらから実質的に遮断することを意味する。波長変換フィルムは、波長変換材料自体に例えばコアシェル型、テトラポッド型のような立体的構造を付与することによりバリア機能を発現し得る。また、波長変換フィルムは、マトリックス材料を適切に選択することによりバリア機能を発現し得る。
【0068】
C-4-4.その他
波長変換フィルムは、目的に応じて任意の適切な添加材をさらに含んでいてもよい。添加材としては、例えば、光拡散材料、光に異方性を付与する材料、光を偏光化する材料が挙げられる。光拡散材料の具体例としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン系樹脂、またはこれらの共重合系樹脂で構成される微粒子が挙げられる。光に異方性を付与する材料および/または光を偏光化する材料の具体例としては、長軸と短軸で複屈折が異なる楕円球状微粒子、コアシェル型微粒子、積層型微粒子が挙げられる。添加剤の種類、数、配合量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0069】
波長変換フィルムは、例えば、マトリックス材料と波長変換材料と必要に応じて添加材とを含む液状組成物を塗布することにより形成され得る。例えばマトリックス材料が樹脂である場合には、波長変換フィルムは、マトリックス材料と波長変換材料と必要に応じて添加材、溶媒および重合開始剤とを含む液状組成物を任意の適切な支持体に塗布し、次いで乾燥および/または硬化させることにより形成され得る。溶媒および重合開始剤は、使用するマトリックス材料(樹脂)の種類に応じて適切に設定され得る。塗布方法としては、任意の適切な塗布方法を用いることができる。具体例としては、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法が挙げられる。硬化条件は、使用するマトリックス材料(樹脂)の種類および組成物の組成等に応じて適切に設定され得る。なお、波長変換材料をマトリックス材料に添加する際には、粒子の状態で添加してもよく、溶媒に分散した分散液の状態で添加してもよい。波長変換フィルムは、バリア層上に形成されてもよい。
【0070】
支持体に形成された波長変換フィルムは、光学部材の他の構成要素(例えば、位相差フィルム、導電層付基材)に転写され得る。
【0071】
C-5.偏光板と反射型偏光子との積層体
第2部材は、上記のとおり、任意の光学積層体(例えば、任意の光学フィルム同士の積層体、任意の光学フィルムと任意の基材との積層体)であり得る。このような実施形態においては、光学フィルム同士、あるいは、光学フィルムと基材とは、図4に示すように別の接着層25を介して積層され得る。上記のとおり、別の接着層25は、好ましくは光拡散粘着剤で構成され得る。1つの実施形態においては、第2部材は、偏光板と反射型偏光子とが別の接着層を介して積層された光学積層体である。偏光板は、吸収型偏光子と、吸収型偏光子の片側または両側に偏光子保護フィルムと、を有する積層体である。吸収型偏光子、偏光子保護フィルム、および反射型偏光子については、それぞれ、C-1項、C-2項およびC-3項で説明したとおりである。以下、光拡散粘着剤について簡単に説明する。
【0072】
光拡散粘着剤は、粘着剤と当該粘着剤中に分散した光拡散性微粒子とを含む。粘着剤としては、任意の適切なものを用いることができる。具体例としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられ、好ましくは、アクリル系粘着剤である。アクリル系粘着剤を用いることにより、耐熱性および透明性に優れた光拡散層が得られ得る。粘着剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
光拡散性微粒子としては、任意の適切なものを用いることができる。具体例としては、無機微粒子、高分子微粒子などが挙げられる。光拡散性微粒子は、好ましくは高分子微粒子である。高分子微粒子の材質としては、例えば、シリコーン樹脂、メタアクリル系樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル)、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、粘着剤に対する優れた分散性および粘着剤との適切な屈折率差を有するので、拡散性能に優れた光拡散層が得られ得る。好ましくは、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸メチルである。光拡散性微粒子の形状は、例えば、真球状、扁平状、不定形状であり得る。光拡散性微粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。光拡散性微粒子の体積平均粒子径は、好ましくは1μm~10μmであり、より好ましくは1.5μm~6μmである。体積平均粒子径を上記範囲にすることにより、優れた光拡散性能を有する光拡散粘着剤を得ることができる。体積平均粒子径は、例えば、超遠心式自動粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0074】
光拡散粘着剤の詳細は、例えば、特開2017-68250号公報に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【実施例
【0075】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
【0076】
<実施例1>
(プリズムシート)
市販のノート型PC(SONY社製、商品名「VAIO Type S」)を分解し、バックライト側に含まれるプリズムシートを取り出した。プリズム部と逆側に設けられている拡散層を酢酸エチルで除去し、本実施例のプリズムシートとした。
【0077】
(光源)
上記のノート型PCから取り出したバックライトを光源として用いた。
【0078】
(反射型偏光子)
SHARP社製40型TV(製品名:AQUOS、品番:LC40-Z5)を分解し、バックライト部材から反射型偏光子を取り出した。この反射型偏光子の両面に設けられている拡散層を除去し、本実施例の反射型偏光子とした。
【0079】
(拡散板)
上記の40型TVから取り出した拡散板を用いた。
【0080】
(空隙部を有する接着層)
アクリル系粘着剤(シート状、厚み23μm)を用意した。レーザー加工機(GCC社製、製品名「LaserPro Spirit」、COレーザー)を用いて、この粘着剤シートに図2(e)に示すような平面視六角形の貫通孔を不規則に形成した。孔を平面視した場合のサイズは最大径15mmであり、平面視した場合の空隙率は85%であった。粘着剤シートの四隅を含む周縁部には、貫通孔を形成しなかった。このようにして貫通孔を形成した粘着剤シートを本実施例の接着層とした。
【0081】
(光学部材の作製)
上記の反射型偏光子を、アクリル系粘着剤を介して偏光板(日東電工社製、商品名「SEG1425」)に貼り合わせた。次いで、上記のプリズムシートを、上記の接着層を介して偏光板/反射型偏光子の積層体の反射型偏光子側に貼り合わせた。このとき、プリズム部が反射型偏光子の反対側となるようにして、プリズムシートを積層体に貼り合わせ、偏光板/反射型偏光子/接着層/プリズムシートの構成を有する積層体を得た。得られた積層体の偏光板側の表面を、アクリル系粘着剤を介してガラス板(厚み0.7mm)に貼り合わせ、ガラス板/偏光板/接着層/プリズムシートの構成を有する積層体を得た。得られた積層体のガラス板上に拡散板を載置し、光学部材を得た。得られた光学部材を、プリズムシートが光源側となるようにして光源の上に載置し、下記(1)および(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0082】
<実施例2>
拡散板を光学部材から3mm離間して配置したこと以外は実施例1と同様にして光学部材を得た。得られた光学部材を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0083】
<実施例3>
拡散板を配置しなかったこと以外は実施例1と同様にして光学部材を得た。得られた光学部材を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0084】
<比較例1>
貫通孔を形成しないアクリル系粘着剤シートを接着層として用いたこと以外は実施例1と同様にして光学部材を得た。得られた光学部材を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0085】
(1)外観
実施例および比較例で得られた光学部材を正面方向および斜め45°方向から目視により確認し、下記の基準で評価した。
◎:貫通孔の模様は全く認められなかった
○:貫通孔の模様はほとんど認められなかった
△:貫通孔の模様が若干認められたが、実用上問題ない程度であった
×:貫通孔の模様が実用上問題となるほど顕著に認められた
(2)拡散照度
実施例および比較例で得られた光学部材の上方に所定の間隔をあけてコノスコープ(AUTRONIC MELCHERS株式会社製)を設置し、全方位において1°おきに輝度Lを測定することにより、光拡散照度(単位:Lx)を算出した。比較例1の光学部材の結果を基準(基準値:100)として、当該基準値に対する比として拡散照度を求めた。
【0086】
【表1】
【0087】
<評価>
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、薄型で、かつ、比較例に比べて顕著に高輝度の光学部材を実現することができる。さらに、実施例1~3を比較すると明らかなように、拡散板を配置することにより外観が改善され、拡散板を離間して配置することにより外観がさらに改善されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の光学部材は、液晶表示装置に好適に用いられ得る。このような光学部材を用いた液晶表示装置は、携帯情報端末(PDA),携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯ゲーム機などの携帯機器、パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機などのOA機器、ビデオカメラ,液晶テレビ,電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター,カーナビゲーションシステム用モニター,カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター,医療用モニターなどの介護・医療機器などの各種用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
10 第1部材(プリズムシート)
20 第2部材
30 接着層
100 光学部材
101 光学部材
102 光学部材
図1
図2
図3
図4
図5