(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】フェノール樹脂発泡体積層板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20220128BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20220128BHJP
B29C 39/38 20060101ALI20220128BHJP
B29C 39/16 20060101ALI20220128BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220128BHJP
B29C 44/24 20060101ALI20220128BHJP
B29C 44/28 20060101ALI20220128BHJP
B29K 61/04 20060101ALN20220128BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20220128BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/42 101
B29C39/38
B29C39/16
B29C44/00 A
B29C44/24
B29C44/28
B29K61:04
B29L9:00
B29K105:04
(21)【出願番号】P 2017221421
(22)【出願日】2017-11-17
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】浜島 雅人
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013376(JP,A)
【文献】特開2009-255332(JP,A)
【文献】特開2009-090554(JP,A)
【文献】特開2017-171945(JP,A)
【文献】特開2015-157937(JP,A)
【文献】特開2016-216737(JP,A)
【文献】特開2016-101750(JP,A)
【文献】特開2009-262475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00-43/00
C08J 9/00- 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が20kg/m
3以上70kg/m
3以下、独立気泡率が80%以上であるフェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に面材が配されたフェノール樹脂発泡体積層板であって、前記フェノール樹脂発泡体が、ハイドロフルオロオレフィンより選択される少なくとも1種を発泡剤として含有し、前記発泡剤の沸点平均値Xが0℃以上であり、前記面材のフラジール通気度が51cm
3/cm
2・sec以上500cm
3/cm
2・sec以下であり、前記面材への樹脂しみ出し面積率が
30%以下であり、かつ前記面材の付着強度が200g以上2000g以下であ
り、前記フェノール樹脂発泡体積層板のホルムアルデヒドの放散速度が、10μg/m
2
・h以下であることを特徴とする、フェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項2】
前記ハイドロフルオロオレフィンが、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項3】
前記発泡剤がさらに炭化水素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項4】
前記炭化水素がプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、及びシクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項5】
前記発泡剤が、さらに塩素化炭化水素を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項6】
前記塩素化炭化水素がイソプロピルクロリドであることを特徴とする、請求項5に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項7】
前記面材が、合成繊維不織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、クラフト紙、金属フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項8】
前記面材が、ホルムアルデヒド捕捉剤と無機フィラーの少なくとも一方を含有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項9】
110℃の雰囲気に14日間放置条件前後の23℃における熱伝導率の変化量が、4.0mW/mK以下であることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項10】
ボード状材料、シート状材料、フィルム状材料より選ばれる少なくとも1種と、請求項1~
9のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板とを接合してなることを特徴とする断熱複合パネル。
【請求項11】
請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体積層板を製造する方法であって、
フェノール樹脂と、ハイドロフルオロオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する発泡剤と、界面活性剤と、硬化触媒と、を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、走行する面材上に吐出し、少なくとも二枚の面材間で発泡及び硬化させるフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法であって、当該製造方法は少なくとも予成型工程と、該予成型工程後に行う加熱工程を含み、前記予成型工程の長さは前記加熱工程の長さに対して5%以上50%以下であり、前記予成型
工程における雰囲気温度が30℃以上70℃以下であり、前記フェノール樹脂の40℃における粘度が4000mPa・s以上100000mPa・s以下であり、前記面材のフラジール通気度が51cm
3/cm
2・sec以上500cm
3/cm
2・sec以下であることを特徴とする、フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【請求項12】
前記加熱工程の雰囲気温度が60℃以上99℃以下であり、前記加熱工程におけるスラット型ダブルコンベアのスラット板に掛ける圧力が100kgf/m
2以上、2000kgf/m
2以下である、請求項
11に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【請求項13】
前記発泡剤の沸点平均値Xが0℃以上50℃以下である、請求項
11又は請求項
12に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂発泡体積層板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂発泡体は、発泡プラスチック系の断熱材の中でも難燃性や気泡中に内包された発泡剤に対するガスバリア性が高いことから、断熱材として種々の分野で採用されている。
【0003】
フェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂、発泡剤、硬化触媒、界面活性剤、及び添加物を含む発泡性フェノール樹脂組成物を少なくとも上下2枚の面材間で発泡、硬化することによって製造される。従来のフェノール樹脂発泡体の発泡剤としては、ブタンやペンタン等の炭化水素や、イソプロピルクロリド等のハロゲン化炭化水素が知られている。
【0004】
近年、省エネルギーや環境に関する意識の高まりや建築物の省エネルギー基準の改正等を背景に、住宅などの建築物の高断熱化への要請や、建築物に使用される断熱材を含めた建材のリサイクルに対する要求が高まっている。
【0005】
このような背景のもと、熱伝導率が低く、地球温暖化係数(GWP)の小さいハロゲン化不飽和炭化水素が発泡剤として好ましく用いられている。しかし、ハロゲン化不飽和炭化水素は、フェノール樹脂に対して高い相溶性を有していることから、フェノール樹脂と混合するとフェノール樹脂の粘度が低下することが知られている。この結果、発泡時に気泡が粗大化したり、破泡しやすくなることから、長期間に渡って断熱性能を維持できないといった課題があった。さらにハロゲン化不飽和炭化水素によるフェノール樹脂の粘度低下により、発泡、硬化工程において発泡性フェノール樹脂組成物が面材より染み出してしまうことから、外観が悪くなるのみならず、リサイクル時にフェノール樹脂発泡体と面材の分離が困難になるといった課題があった。
【0006】
そこで、特許文献1には、特定範囲の目付や扁平形状をなす繊維からなる織布又は不織布を面材や、特定範囲のフラジール通気度を有する面材を使用することにより、面材への染み出しが少ないフェノール樹脂発泡体積層板が提案されている。
【0007】
また、特許文献2には、特定範囲のフラジール通気度を有する面材を用い、さらにフェノール樹脂発泡体の独立気泡率及び密度を特定の範囲内とすることにより、フェノール樹脂発泡体の吸水性を低下させつつ、優れた断熱性能を長期間に亘って保持できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-255332号公報
【文献】特許第5877913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、特定範囲のフラジール通気度を有する織布、不織布の中でも特定の形状を有する繊維に限定されることや、発泡剤として炭化水素を用いていることから、断熱性能が不十分であるといった課題があった。また、特許文献2では、フラジール通気度の低い面材を使用することによって、フェノール樹脂発泡体積層板の吸水率を低減することができたが、発泡性フェノール樹脂組成物が面材の繊維内に入り込みにくくなるため、アンカー効果が効きにくくなることから、面材の付着強度に改善の余地があった。また、フラジール通気度の低い面材を使用した場合には、フェノール樹脂の硬化過程で発生する水分やガスをフェノール樹脂発泡体から排出しにくくなる。このため、気泡内の内圧が上昇して気泡の破泡を誘発してしまうといった問題があった。従って、同面材を用いて優れた物性を有するフェノール樹脂発泡体を得るためには、フェノール樹脂発泡体内の圧力が上昇しないような特定の非常に狭い範囲の製造条件に限定されてしまうといった課題もあった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、優れた断熱性能を長期間に亘って保持可能なフェノール樹脂発泡体を提供することができるフェノール樹脂発泡体積層板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、面材のフラジール通気度に着目し、面材への樹脂しみ出し面積率、面材の付着強度を特定の範囲に調整することにより、リサイクル時に面材とフェノール樹脂発泡体の分離が容易に行うことができ、かつ優れた断熱性能を長期間に亘って保持できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の[1]~[14]を提供する。
[1]密度が20kg/m3以上70kg/m3以下、独立気泡率が80%以上であるフェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に面材が配されたフェノール樹脂発泡体積層板であって、前記フェノール樹脂発泡体が、ハイドロフルオロオレフィンより選択される少なくとも1種を発泡剤として含有し、前記発泡剤の沸点平均値Xが0℃以上であり、前記面材のフラジール通気度が51cm3/cm2・sec以上500cm3/cm2・sec以下であり、前記面材への樹脂しみ出し面積率が50%以下であり、かつ前記面材の付着強度が200g以上2000g以下であることを特徴とする、フェノール樹脂発泡体積層板。
【0013】
[2]前記ハイドロフルオロオレフィンが、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記[1]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0014】
[3]前記発泡剤がさらに炭化水素を含有することを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0015】
[4]前記炭化水素がプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、及びシクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記[3]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0016】
[5]前記発泡剤が、さらに塩素化炭化水素を含有することを特徴とする、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0017】
[6]前記塩素化炭化水素がイソプロピルクロリドであることを特徴とする、前記[5]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0018】
[7]前記面材が、合成繊維不織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、クラフト紙、金属フィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、前記[1]~[6]のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0019】
[8]前記面材が、ホルムアルデヒド捕捉剤と無機フィラーの少なくとも一方を含有することを特徴とする、前記[1]~[7]のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0020】
[9]前記フェノール樹脂発泡体積層板のホルムアルデヒドの放散速度が20μg/m2・h以下であることを特徴とする、前記[1]~[8] のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0021】
[10]110℃の雰囲気に14日間放置条件前後の23℃における熱伝導率の変化量が4.0mW/mK以下であることを特徴とする、前記[1]~[9]のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0022】
[11]ボード状材料、シート状材料、フィルム状材料より選ばれる少なくとも1種と請求項[1]~[10]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板とを接合してなることを特徴とする断熱複合パネル。
【0023】
[12]前記[1]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法であって、
フェノール樹脂と、ハイドロフルオロオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する発泡剤と、界面活性剤と、硬化触媒と、を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、走行する面材上に吐出し、少なくとも二枚の面材間で発泡及び硬化させるフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法であって、当該製造方法は少なくとも予成型工程と、該予成型工程後に行う加熱工程を含み、前記予成型工程の長さは前記加熱工程の長さに対して5%以上50%以下であり、前記予成型行程における雰囲気温度が30℃以上70℃以下であり、前記フェノール樹脂の40℃における粘度が4000mPa・s以上100000mPa・s以下であり、前記面材のフラジール通気度が51cm3/cm2・sec以上500cm3/cm2・sec以下であることを特徴とする、フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【0024】
[13]前記加熱工程の雰囲気温度が60℃以上99℃以下であり、前記加熱工程におけるスラット型ダブルコンベアのスラット板に掛ける圧力がが100kgf/m2以上、2000kgf/m2以下である、前記[12]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【0025】
[14]前記発泡剤の沸点平均値Xが0℃以上50℃以下である、前記[12]又は[13]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明のフェノール樹脂発泡体積層板によれば、優れた断熱性能を長期間に亘って保持可能なフェノール樹脂発泡体を提供することができる。
【0027】
また、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板によれば、面材の付着強度を特定の範囲に調整すると同時に、面材からの発泡性フェノール樹脂組成物の染み出しが少なく、リサイクル時に面材とフェノール樹脂発泡体の分離が容易なフェノール樹脂発泡体積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態のフェノール樹脂発泡体を示す図である。
【
図2】本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板の面材付着強度の測定方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0030】
(フェノール樹脂発泡体積層板)
以下、発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体積層板は、硬化反応によって形成されたフェノール樹脂中に、多数の気泡(セル)が分散した状態で存在するフェノール樹脂発泡体と、当該フェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に設けられた面材とを備える積層体である。
【0031】
なお、フェノール樹脂発泡体積層板の寸法比率は、
図1において示す比率に限られるものではない。
図1に示すように、本実施形態に係るフェノール樹脂発泡体積層板1は、フェノール樹脂発泡体3の主面と面材2の主面とが接触し、フェノール樹脂発泡体3が二枚の面材2によって上下から挟まれた形状をなす。
【0032】
<フェノール樹脂発泡体>
まず、フェノール樹脂発泡体3について説明する。フェノール樹脂発泡体3は、例えば、フェノール樹脂と、発泡剤と、硬化触媒と、界面活性剤とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を、発泡及び硬化させることにより得られる。なお、発泡性フェノール樹脂組成物は、任意に、上記以外の成分を含有していてもよい。
【0033】
そして、本実施形態のフェノール樹脂発泡体3は、密度が20kg/m3以上70kg/m3以下、独立気泡率が80%以上であり、そして、ハイドロフルオロオレフィンより選択される少なくとも1種を発泡剤として含有し、該発泡剤の沸点平均値Xが0℃以上であることを特徴とする。
【0034】
<フェノール樹脂>
本実施形態におけるフェノール樹脂は、例えば、フェノール類とホルムアルデヒド類を原料として、アルカリ触媒により40~100℃の温度範囲で加熱して重合させることによって得られる。また、必要に応じて、フェノール樹脂重合時に尿素等の添加剤を添加してもよい。合成後のフェノール樹脂は、通常過剰の水を含んでいるので、発泡可能な水分量まで脱水される。フェノール樹脂の合成における、フェノール類対アルデヒド類の出発モル比は、1:1から1:4.5の範囲内であることが好ましく、1:1.5から1:2.5の範囲内であることがより好ましい。
【0035】
フェノール樹脂の合成に好ましく使用されるフェノール類としては、フェノール又はフェノール骨格を有する化合物が挙げられる。フェノール骨格を有する化合物の例としては、レゾルシノール、カテコール、o-、m-及びp-クレゾール、キシレノール類、エチルフェノール類、p-tertブチルフェノール等が挙げられる。またフェノール類には、2核フェノール類も含まれる。
【0036】
フェノール樹脂の合成に好ましく使用されるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド以外のアルデヒド化合物が挙げられる。ホルムアルデヒド以外のアルデヒド化合物としては、グリオキサール、アセトアルデヒド、クロラール、フルフラール、ベンズアルデヒド等が挙げられる。アルデヒド類には、添加剤として、尿素、ジシアンジアミドやメラミン等を加えてもよい。なお、これらの添加剤を加える場合、「フェノール樹脂」とは、添加剤が含まれたフェノール樹脂を指す。
【0037】
そして本実施形態のフェノール樹脂は、40℃における粘度が4000mPa・s以上100000mPa・s以下であることが好ましく、4000mPa・s以上80000mPa・s以下であることがより好ましく、5000mPa・s以上60000mPa・s以下であることがさらに好ましく、5000mPa・s以上40000mPa・s以下であることが特に好ましく、5000mPa・s以上20000mPa・s以下であることが最も好ましい。
【0038】
フェノール樹脂の40℃における粘度が4000mPa・s以上であると、発泡性フェノール樹脂組成物が発泡、硬化する際に面材から染み出すことを抑制し、設備が汚れることを防止できる。さらには発泡速度が速くなりすぎず、気泡径が過度に大きくなることがなく、かつ高い独立気泡構造を保持できるため、得られるフェノール樹脂発泡体の長期間に亘る優れた断熱性能を確保することができる。さらに、面材2内に染み込んだ発泡性フェノール樹脂組成物が面材2の外に染み出すことがないため、設備を汚さずに、かつ面材2の付着強度が向上する。
【0039】
一方、フェノール樹脂の40℃における粘度が100000mPa・s以下であると、発泡性フェノール樹脂組成物の発泡速度が確保される。したがって、必要な発泡倍率を得るために多くの発泡剤が必要となることもなく、気泡内の発泡剤の圧力上昇に起因する発泡剤の液化が抑制され、特に低温領域での断熱性能の悪化を防ぐことができる。くわえて、フェノール樹脂の40℃における粘度が100000mPa・s以下であると、発泡性フェノール樹脂組成物の成形が容易となる。
【0040】
なお、フェノール樹脂の40℃における粘度は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0041】
<発泡剤>
発泡性フェノール樹脂組成物に含まれる発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィンより選択される少なくとも1種を含有し、使用した発泡剤は、得られるフェノール樹脂発泡体中にも含有される。前記発泡剤はさらに炭化水素及び、又は塩素化炭化水素を含有することができ、使用した発泡剤は得られるフェノール樹脂発泡体中にも含有される。
【0042】
炭化水素は、水素原子と炭素原子のみより構成される化合物であり、例えば、炭素数が3以上6以下の脂肪族炭化水素が挙げられる。炭素数が3以上6以下の脂肪族炭化水素としては、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、ブテン、ブタジエン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ペンテン、ヘキサン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ヘキセン等のアルカン、アルケン、ジエンに相当する直鎖状又は分岐状の炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキセン等の環状の炭化水素、が挙げられる。これらの中でも、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサンが好ましい。これら炭化水素は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。炭化水素の使用量については特に制限はないが、発泡性フェノール樹脂組成物中に、フェノール樹脂100質量部に対して0.1~15質量部の範囲で好ましく使用される。
【0043】
塩素化炭化水素としては、炭素数が2以上5以下の直鎖状又は分岐状のものが好適に用いられる。そして、炭素原子に結合している塩素原子の数は限定されるものではないが、1つ以上4つ以下であることが好ましい。そして、塩素化炭化水素としては、例えばクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリドなどが好ましい。これらの中でもプロピルクロリド、イソプロピルクロリドがより好ましく、イソプロピルクロリドがさらに好ましい。これら塩素化炭化水素は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。塩素化炭化水素の使用量については特に制限はないが、発泡性フェノール樹脂組成物中に、フェノール樹脂100質量部に対して0.1~15質量部の範囲で好ましく使用される。
【0044】
ハイドロフルオロオレフィンとしては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd)等の塩素化ハイドロフルオロオレフィン;1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234ze)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)等の非塩素化ハイドロフルオロオレフィンが好適に用いられる。これらのハイドロフルオロオレフィンは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、シス体、トランス体の異性体を有するものはいずれの異性体でも使用することができる。ハイドロフルオロオレフィンの使用量について特に制限はないが、発泡性フェノール樹脂組成物中に、フェノール樹脂100質量部に対して0.1~25質量部の範囲で好ましく使用される。
【0045】
ここで、発泡剤としては、ハイドロフルオロフィンを単独で使用してもよいし、ハイドロフルオロフィンと他の発泡剤と併用してもよい。ハイドロフルオロフィンと他の発泡剤と併用する態様としては、炭化水素と塩素化炭化水素の少なくとも一方を併用する態様がより好ましい。
【0046】
本実施形態において、上述した発泡剤の沸点平均値Xは、0℃以上であり、0℃以上50℃以下であることが好ましく、0℃以上45℃以下であることがより好ましく、10℃以上45℃以下であることがさらに好ましく、10℃以上35℃以下であることが特に好ましく、15℃以上35℃以下であることがとりわけ好ましく、19℃以上32℃以下であることが最も好ましい。
【0047】
発泡剤の沸点平均値が0℃より低いと、フェノール樹脂発泡体を製造する際に発泡速度が過度に速くなり、気泡の破泡が誘発され独立気泡率が低下する。そして、独立気泡率の低下に伴い、気泡内の発泡剤が空気と置換しやすくなることから長期間に亘り優れた断熱性能を保持できなくなる虞がある。また、発泡速度が過度に速くなることにより、フェノール樹脂の硬化に対して相対的に発泡速度のほうが速くなり、比較的粘度の低い状態でオーブン内で発泡圧が高くなってしまい、面材2より発泡性フェノール樹脂組成物が染み出してしまう。面材2より染み出した発泡性フェノール樹脂組成物は、設備を汚してしまうのみならず、リサイクル時に面材2が分離できる点や、製品の外観を損ね、同染み出し部よりフェノール中に含有される微量なホルムアルデヒドが施工後に放散したしまうため、健康面からも好ましくない。
【0048】
一方、発泡剤の沸点平均値が50℃より高いと、フェノール樹脂発泡体を製造する際に、後述する面材上に発泡性フェノール樹脂組成物が吐出される際の発泡圧が低くなる傾向がある。さらには、フェノール樹脂発泡体を製造する際に、後述する加熱工程において発泡速度がフェノール樹脂の硬化速度と比較して相対的に遅くなり、例えば複数のビード状に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物を板状に成型することが困難となる場合がある。そのため、平滑な面を有するフェノール樹脂発泡体形成できなくなり、表面にラインの流れ方向と並行な筋状痕が残るといった懸念がある。また、後述する加熱工程において発泡圧が上昇し、発泡性フェノール樹脂組成物が面材に押し付けられる際のフェノール樹脂の硬度が高くなりすぎることから、前記発泡性フェノール樹脂組成物が面材2に適度に染み込まなくなることから面材の付着強度が弱くなってしまう場合がある。
【0049】
なお、本実施形態において発泡剤の沸点平均値Xは式(1)によって求めることができる。
沸点平均値X=a×Ta+b×Tb+c×Tc+… ・・・(1)
ここで、上記式(1)において、対象となる物質(A、B、C、…)の各々の含有率(モル分率)がa,b,c,…であり、沸点(℃)がTa,Tb,Tc,…である。)
【0050】
<硬化触媒>
硬化触媒としては、フェノール樹脂を硬化できる酸性の硬化触媒であればよいが、無水酸硬化触媒が好ましい。無水酸硬化触媒としては、無水リン酸や無水アリールスルホン酸が好ましい。無水アリールスルホン酸としては、トルエンスルホン酸やキシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、置換フェノールスルホン酸、キシレノールスルホン酸、置換キシレノールスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。そして、硬化助剤として、レゾルシノール、クレゾール、サリゲニン(o-メチロールフェノール)、p-メチロールフェノール等を添加してもよい。また、これらの硬化触媒を、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の溶媒で希釈してもよい。これら硬化触媒、硬化助剤、溶媒は、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。そして硬化触媒の使用量については特に制限はないが、発泡性フェノール樹脂組成物中に、フェノール樹脂100質量部に対して3~30質量部の範囲で好ましく使用される。なお、硬化助剤、溶媒の使用量は、硬化触媒の種類及び量に応じて適宜設定し得る。
【0051】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、一般にフェノール樹脂発泡体の製造に使用されるものを使用できるが、中でもノニオン系の界面活性剤が効果的である。例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体であるアルキレンオキサイドや、アルキレンオキサイドとヒマシ油の縮合物、アルキレンオキサイドとノニルフェノール、ドデシルフェノールのようなアルキルフェノールとの縮合物、アルキルエーテル部分の炭素数が14~22のポリオキシエチレンアルキルエーテル、更にはポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系化合物、ポリアルコール類等が好ましい。これらの界面活性剤は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これら界面活性剤のHLBは8~18の範囲であることが好ましい。また、界面活性剤の使用量については特に制限はないが、発泡性フェノール樹脂組成物中に、フェノール樹脂100質量部に対して0.3~10質量部の範囲で好ましく使用される。
【0052】
<フェノール樹脂組成物の発泡及び硬化>
例えば、上記フェノール樹脂、上記発泡剤、上記硬化触媒、及び上記界面活性剤を、上述したような割合で混合することにより発泡性フェノール樹脂組成物を得る。得られた発泡性フェノール樹脂組成物を、例えば「フェノール樹脂発泡体積層板」の項で後述するようにして発泡及び硬化させることにより、フェノール樹脂発泡体3を得ることができる。
【0053】
<フェノール樹脂発泡体の性状>
本実施形態のフェノール樹脂発泡体の密度は、20kg/m3以上70kg/m3以下であることが必要であり、20kg/m3以上50kg/m3以下であることが好ましく、20kg/m3以上40kg/m3以下であることがより好ましく、25kg/m3以上40kg/m3以下であることがさらに好ましく、25kg/m3以上35kg/m3以下であることが特に好ましい。
【0054】
フェノール樹脂発泡体3の密度が20kg/m3よりも低いと、強度が低下しハンドリング時に取り扱いにくくなる。さらに、発泡倍率を高くするために多くの発泡剤が必要となり、気泡内に多量の発泡剤が含有され内圧が高くなる。この気泡内の内圧の上昇により、発泡剤が液化、凝集しやすくなるため特に低温領域での断熱性能が悪化してしまう。また、フェノール樹脂発泡体の密度が70kg/m3よりも高いと、フェノール樹脂発泡体中の樹脂部が熱伝導率に寄与する割合が高くなることでフェノール樹脂発泡体全体の断熱性能が悪化してしまう。
【0055】
なお、フェノール樹脂発泡体3の密度は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0056】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体3の独立気泡率は、低くなるとフェノール樹脂発泡体3の気泡に内包された熱伝導率の低いガスが熱伝導率の比較的高い空気と容易に置換され、断熱性能の長期的な安定性が悪化する。さらに、フェノール樹脂発泡体3の内部より、フェノール樹脂の硬化の際に生成し、シックハウス症候群の原因となりうるホルムアルデヒドが発泡体から周囲の環境に拡散する速度(ホルムアルデヒドの放散速度)が上昇する虞がある。これらの理由により、フェノール樹脂発泡体3の独立気泡率は80%以上であることが必要であり、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、97%以上100%以下であることが特に好ましい。
【0057】
なお、フェノール樹脂発泡体3の独立気泡率は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0058】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体3は、厚みが20mm以上であることが好ましく、25mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがさらに好ましく、40mm以上であることが最も好ましい。
【0059】
フェノール樹脂発泡体3は、厚みが薄いほど表面の平滑性を得るために面材上に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物を強く圧縮して広げる必要があるため、面材からの染み出し量が多くなる。このため、面材とフェノール樹脂発泡体3の接着力が強くなりすぎることから、リサイクル時に面材とフェノール樹脂発泡体3を分離することが困難になるのみならず、ホルムアルデヒドの放散速度が増大するため住環境に悪影響を与えてしまう。さらには面材からの発泡性フェノール樹脂組成物の染み出しによって製造設備を汚してしまうことから、頻繁に掃除を行う必要があるため、生産効率が著しく悪くなるといった懸念がある。こうしたことから、フェノール樹脂発泡体3は、厚みが20mm以上であることが好ましい。
【0060】
前記ホルムアルデヒドの放散速度は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。そして、ホルムアルデヒドの放散速度は、上述したフェノール樹脂発泡体3の独立気泡率に加え、フェノール樹脂発泡体積層板の面材のフラジール通気度、発泡性フェノール樹脂組成物の染み出し面積率によっても影響を受け、好ましくは20μg/m2・h以下であり、より好ましくは10μg/m2・h以下、特に好ましくは7μg/m2・h以下、最も好ましくは5μg/m2・h以下である。
【0061】
本実施形態のフェノール樹脂発泡体3において、長期間使用時の断熱性能劣化に対応した110℃の雰囲気に14日間放置条件前後の23℃における熱伝導率の変化量は、4.0mW/m・k以下であることが好ましく、3.0mW/m・k未満であることがより好ましく、2.0mW/m・k未満であることがさらに好ましく、1.5mW/m・k未満であることが特に好ましい。この値が低いほど、フェノール樹脂発泡体3が長期間に亘り断熱性能を保持できていること示す。
【0062】
なお、上記の長時間使用に対応した加速試験後の熱伝導率は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0063】
次に、上述したフェノール樹脂発泡体3の少なくとも上下面に配される面材2について説明する。フェノール樹脂発泡体3の上面に配される面材(上面材)2と、下面に配される面材(下面材)2は、同一ものを使用しても異なるものを使用してもよいが、製造時におけるフェノール樹脂発泡体積層板1のそりを防止するため、通常、同一のものを使用する。
【0064】
そして、本実施形態の面材2は、生産時の面材破断を防止すべく、可撓性を有する面材であることが好ましい。可撓性を有する面材としては、合成繊維不織布、合成繊維織布、ガラス繊維紙、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、クラフト紙などの紙類、金属フィルムが挙げられる。これらの中でも、合成繊維不織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、クラフト紙、金属フィルムが好ましい。これらの面材には、必要に応じて孔が開けられていてもよい。また、これら面材は1種類を単独で用いてもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよい。金属フィルム又は金属フィルムと前述のその他の面材を組み合わせた面材は、フェノール樹脂発泡体中より水やガスを排出するために事前に又は製造中にオンラインに孔を設けてもよい。
【0065】
そして、面材2は、難燃剤、ホルムアルデヒド捕捉剤、無機フィラーなどを含有していてもよく、ホルムアルデヒド捕捉剤及び/又は無機フィラーを含有することが好ましい。上記難燃剤、ホルムアルデヒド補足剤、無機フィラーは予め面材の繊維中に混入、又は面材上に塗工されていてもよいし、フェノール樹脂発泡体積層板1の状態で上下のいずれか又は両面の面材2に塗工してもよい。
【0066】
難燃剤としては、例えばテトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテル等の臭素化合物;芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等のリン又はリン化合物;三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を用いることができる。なお、難燃剤は1種類を単独で用いてもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
これらの難燃剤は、面材2の繊維中に練りこまれていてもよく、また、アクリル、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、エポキシ、不飽和ポリエステル等のバインダーに添加した状態で面材2に塗布されていてもよい。そして難燃剤は、フッ素樹脂系、シリコーン樹脂系、ワックスエマルジョン系、パラフィン系、アクリル樹脂パラフィンワックス併用系などの撥水剤やアスファルト系防水処理剤に添加し、表面の撥水及び防水処理剤として使用されていてもよい。これらの撥水剤や防水処理剤は、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記難燃剤を添加した面材2に塗布してもよい。
【0068】
ホルムアルデヒド捕捉剤としては、例えば分子内にアミノ基を有する化合物、分子内にアミド基を有する化合物、分子内にイミド基を有する化合物、分子内にイミノ基を有する化合物、分子内にヒドラジド基を有する化合物、分子内にアジン基を有する化合物、分子内にアゾール基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、入手し易さや価格等から分子内にアミノ基を有する化合物、分子内にアミド基を有する化合物、分子内にイミド基を有する化合物、分子内にイミノ基を有する化合物、分子内にヒドラジド基を有する化合物が好ましい。
【0069】
分子内にアミノ基を有する化合物としては、二重結合を有するアミン重合体及び誘導体、二重結合を有するアミン共重合体及び誘導体、ポリアミン及び誘導体、アルギニンなどのアミノ酸類、グアニジン及びグアニジン誘導体、メラミン誘導体などが挙げられる。
【0070】
分子内にアミド基を有する化合物としては、二重結合を有するアミド重合体及び誘導体、二重結合を有するアミド共重合体及び誘導体、尿素及び尿素誘導体、ジシアノジアミド及びジシアノジアミド誘導体、セミカルバジド及びセミカルバジド誘導体、バルビツル酸、などが挙げられる。
【0071】
分子内にイミド基を有する化合物としては、二重結合を有するイミド化合物の重合体及び誘導体、二重結合を有するイミド化合物の共重合体及び誘導体、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドなどがある。
【0072】
分子内にイミノ基を有する化合物としては、二重結合を有するイミン化合物の重合体及び誘導体、二重結合を有するイミン化合物の共重合体及び誘導体、イミダゾール及びイミダゾール誘導体、ピラゾール及びピラゾール誘導体、テトラゾール及びテトラゾール誘導体などが挙げられる。
【0073】
分子内にヒドラジド基を有する化合物としては、ヒドラジン塩化合物、アルキルヒドラジン、フェニルヒドラジン、フェニルヒドラジン誘導体などが挙げられる。ヒドラジド基を有する化合物としてはサリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドなどのカルボン酸ヒドラジドが挙げられる。
【0074】
なお、ホルムアルデヒド捕捉剤は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせ用いてもよい。
【0075】
面材2は、当該面材2を介して発泡体に吸水又は発泡体から排出される水のpHの調整をするために、無機フィラーを含有していてもよい。無機フィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;酸化カルシウム、酸化マグネシウム,酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;亜鉛末等の金属粉などが挙げられる。
【0076】
これらの無機フィラーは面材2の繊維中に練りこまれていてもよく、また、アクリル、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、エポキシ、不飽和ポリエステル等のバインダーに添加した状態で面材2に塗布されていてもよい。
【0077】
なお、無機フィラーは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせ用いてもよい。
【0078】
そして、本実施形態の面材のフラジール通気度は、51cm3/cm2・sec以上500cm3/cm2・sec以下である必要があり、70cm3/cm2・sec以上400cm3/cm2・sec以下であることが好ましく、70cm3/cm2・sec以上300cm3/cm2・sec以下であることがより好ましく、150cm3/cm2・sec以上250cm3/cm2・sec以下であることがとりわけ好ましく、150cm3/cm2・sec以上210cm3/cm2・sec以下であることが特に好ましい。
【0079】
面材のフラジール通気度が51cm3/cm2・secより低いと、発泡性フェノール樹脂組成物の発泡硬化過程において、発泡性フェノール樹脂組成物が面材2の空隙に入りにくくなることから、アンカー効果による面材付着強度の向上が発揮でない。この結果、施工時のハンドリング時や施工後に面材2がフェノール樹脂発泡体積層板1からはがれやすくなるため好ましくない。また、面材2のフラジール通気度が極端に低いと発泡性フェノール樹脂組成物が発泡、硬化する過程で生成する又は予め含有する水分をフェノール樹脂発泡体外に放出することが困難となる。この結果、内部の発泡圧が過度に高くなり気泡の破泡が誘発され、独立気泡率の低い粗悪なフェノール樹脂発泡体が得られることとなる。
【0080】
一方、面材のフラジール通気度が500cm3/cm2・secを超えると面材上に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物が発泡、硬化する過程において面材2から染み出してしまい、製造設備を汚してしまう。また、発泡性フェノール樹脂組成物が多く面材2に染み込むことによって面材2の付着強度が強くなりすぎてしまい、フェノール樹脂発泡体積層板1をリサイクル際に、フェノール樹脂発泡体3と面材2の分離が困難となる虞がある。さらに、急激な発泡が起こり易くなるため、フェノール樹脂発泡体3の独立気泡率が低下し、長期間にわたる断熱性能断熱性能が悪化する恐れがある。
【0081】
なお、面材2のフラジール通気度は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0082】
<フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法>
上述した本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板1を製造する方法としては、例えば、フェノール樹脂と、硬化触媒と、発泡剤と、界面活性剤と、を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、少なくとも二枚の面材間で発泡及び硬化させる製造方法であって、当該製造方法は少なくとも予成型行程、加熱工程とを含む。予成型行程は、雰囲気温度が30℃以上70℃以下で行い、前記加熱工程は、雰囲気温度が60℃以上99℃以下で行い、かつ前記フェノール樹脂の40℃における粘度が、4000mPa・s以上100000mPa・s以下であることが好ましい。
【0083】
ここで、40℃における粘度が、4000mPa・s以上100000mPa・s以下であるフェノール樹脂を使用することが好ましい理由は、上記<フェノール樹脂発泡体>の項で上述した通りである。
【0084】
なお、本実施形態のフェノール樹脂発泡体3を得るための発泡性フェノール樹脂組成物の発泡及び硬化方法は、上述の方法に限定されない。
【0085】
上記発泡性フェノール樹脂組成物を二枚の面材2間に配置する方法は特に限定されないが、発泡性フェノール樹脂組成物を、走行する下面材2上に連続的に吐出し、さらに発泡性フェノール樹脂組成物の、下面材2と接触する面とは反対側の面(上面)をもう1方の面材(上面材)2で被覆する方法が挙げられる。
【0086】
そして、上述した予成型行程と加熱工程における加熱方法は、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡・硬化可能であれば特に限定されないが、オーブン内での加熱が好ましい。
【0087】
<予成型行程>
予成型行程では、上下面材間に連続吐出された発泡性フェノール樹脂組成物を面材2上から単数又は複数のドクターブレードやローラーにより押さえつけることによって、加熱工程に進む前に部分的にボード状に成型することができる。前記押さえつけが不足すると、発泡性フェノール樹脂組成物の平滑性が不十分になり、次の加熱工程において発泡や反応が不均一に進むため、物性が不均一な粗悪な発泡体となってしまうため好ましくない。また、反応がそれほど進行していない粘度の低い発泡性フェノール樹脂組成物と面材2とが十分密着しないことから、面材付着強度が不足する懸念がある。
【0088】
一方、前記押さえつけが強すぎると、粘度の低い発泡性フェノール樹脂組成物が面材2より染み出してしまい、設備を汚してしまう。また、面材付着強度が強くなりすぎることからフェノール樹脂発泡体3のリサイクル時に発泡体3と面材2との分離が困難となるため好ましくない。
【0089】
予成型行程の長さは、加熱工程の長さに対して5%以上50%以下であり、7%以上45%以下であることが好ましく、10%以上40%以下がさらに好ましく、10%以上35%以下がより好ましく、10%以上30%以下がとりわけ好ましく、10%以上25%以下が最も好ましい。
【0090】
予成型行程の長さが加熱工程の長さに対して5%未満の場合には、予成型行程での発泡性フェノール樹脂組成物の硬化が十分進まず、加熱工程で粘度の低い発泡性フェノール樹脂組成物が急激に発泡してしまう。そのため、気泡の破泡を誘発してしまうのみならず、面材より粘度の低い発泡性フェノール樹脂組成物が多く染み出してしまい、ホルムアルデヒドの放散速度が多く、かつ面材付着強度が強すぎてリサイクル時に面材がはがせなくなってしまう等の問題が生じてしまう。
【0091】
一方、予成型行程の長さが加熱工程の長さに対して50%以上だと、逆に発泡性フェノール樹脂組成物の粘度が高くなりすぎることから、加熱工程で必要な発泡倍率が得られないのみならず、予成型する際の粘度が高すぎるため面材付着強度が弱く、平滑性が悪い粗悪な発泡体となってしまうため好ましくない。
【0092】
予成型行程における雰囲気温度は30℃以上70℃以下であり、30℃以上60℃以下が好ましく、30℃以上50℃以下がより好ましく、30℃以上40℃以下が最も好ましい。
【0093】
<加熱工程>
加熱工程では、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡させ、発泡圧によって所定の厚み、形状に成形するとともに予成型行程よりさらにフェノール樹脂の硬化を進行させる。
【0094】
加熱工程における雰囲気温度(オーブン内温度)は60℃以上99℃以下であり、60℃以上95℃以下であることがより好ましく、65℃以上90℃以下であることがさらに好ましく、70℃以上90℃以下であることが特に好ましく、70℃以上85℃以下であることが最も好ましい。
【0095】
加熱工程における雰囲気温度が60℃より低いと、フェノール樹脂の硬化反応が充分に進まなくなるため、フェノール樹脂発泡体3が未硬化となり収縮等の不具合が生じてしまう虞がある。また、発泡圧が十分高くならないことから面材の付着強度が不足する懸念がある。加熱工程における雰囲気温度が99℃より高いと、発泡性フェノール樹脂組成物の面材2と接する表面近傍の温度が高くなりすぎてしまう。この結果、当該表面近傍の気泡が破泡して独立気泡率が低い粗悪なフェノール樹脂発泡体3が得られる虞がある。また、発泡圧が高くなりすぎることから面材2から発泡性フェノール樹脂組成物が染み出してしまうため、好ましくない。
【0096】
また、加熱工程において、発泡剤の沸点平均値Xが、第1の加熱工程の雰囲気温度未満であることが必要となる。発泡剤の沸点平均値Xが第1の加熱工程の雰囲気温度以上であると、発泡剤による発泡が充分に行われないからである。
【0097】
加熱工程にオーブン(以下、「オーブン」という。)を用いる場合、オーブンは無端スチールベルト型ダブルコンベア又はスラット型ダブルコンベアを有してもよいがスラット型ダブルコンベアが好ましく用いられる。これらを用いて、オーブン内で、予成型行程で部分硬化した発泡体の発泡圧を制御しながら板状に成形しながら硬化させ、より硬化が進行した発泡体を得ることができる。前記無端スチールベルト型ダブルコンベア又はスラット型ダブルコンベアはオーブン全域又は、部分的に配置されていてもよい。また、オーブン内は全域に亘って均一な温度でなくてよく、複数の温度ゾーンを有していてもよい。
【0098】
この際、発泡体に掛かるスラット板からの押圧力は100kgf/m2~2000kgf/m2、好ましくは200kgf/m2~1500kgf/m2、より好ましくは200kgf/m2~1000kgf/m2、さらに好ましくは200kgf/m2~800kgf/m2、最も好ましくは300kgf/m2~800kgf/m2である。
【0099】
発泡体に掛かるスラット板からの押圧力が100kgf/m2未満では、発泡性フェノール樹脂組成物が面材に対し十分に染み込まず、優れた面材2の接着強度を得ることができない。また、十分な押圧力が得られないことから、予成型行程で部分的にボード状に成型された発泡性フェノール樹脂組成物を十分に成型できず、平滑性が不十分になってしまうため好ましくない。一方、2000kgf/m2超では、面材を通しての発泡性フェノール樹脂組成物の滲み出しが多くなるため好ましくない。
【0100】
前記染み出し量は後述する面材2への染み出し面積率によって測定され50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、とりわけ好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下である。
【0101】
染み出し面積率が50%超では、面材2の付着強度が高くなりすぎるため、後述する面材手はがし性が悪くなるためリサイクル時に面材2とフェノール樹脂発泡体3との分離ができなくなるため好ましくない。一方、面材2の表面にフェノール樹脂発泡体3が多量に存在する状態であることから、同フェノール樹脂発泡体より多量のホルムアルデヒドが放散するため、住環境に悪影響を及ぼすためこのような観点からも好ましくない。
【0102】
<後硬化工程>
加熱工程より出たフェノール樹脂発泡体積層板1は、所定の寸法に切断された後、後硬化工程でさらに加熱され、硬化及び乾燥を進めることができる。後硬化工程おける雰囲気温度は60℃以上110以下が好ましい。60℃より低いと十分に硬化反応が進まず、110℃より高いとフェノール樹脂発泡体内の圧力が高くなりすぎることから、変形や気泡の破泡を誘発してしまうため好ましくない。
【0103】
<断熱複合パネル>
フェノール樹脂発泡体積層板1は、これを単体で使用する他、外部部材と接合させて様々な用途に用いられている。外部部材の例としては、ボード状材料及びシート状・フィルム状材料及びその組み合わせがある。ボード状材料としては、普通合板、構造用合板、パーティクルボード、OSB、などの木質系ボード、及び、木毛セメント板、木片セメント板、石膏ボード、フレキシブルボード、ミディアムデンシティファイバーボード、ケイ酸カルシウム板、ケイ酸マグネシウム板、火山性ガラス質複層板などが好適である。また、シート状・フィルム状材料としては、ポリエステル不織布、ポリプロピレン不織布、無機質充填ガラス繊維不織布、ガラス繊維不織布、紙、炭酸カルシウム紙、ポリエチレン加工紙、ポリエチレンフィルム、プラスチック系防湿フィルム、アスファルト防水紙、アルミニウム箔(孔あり・孔なし)などが好適である。
【実施例】
【0104】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。フェノール樹脂、フェノール樹脂発泡体、面材について、以下の項目について測定及び評価を行った。
【0105】
<フェノール樹脂発泡体の密度>
得られたフェノール樹脂発泡体積層板から切り出した20cm角のボードを試料とし、この試料から面材を取り除いた後、JIS K 7222に従い質量と見かけ容積を測定して求めた。
【0106】
<フェノール樹脂発泡体の独立気泡率>
ASTM D 2856-94(1998)Aを参考に、以下の方法で測定した。
実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板中のフェノール樹脂発泡体3の厚み方向中央部から、約25mm角の立方体試片を切り出した。厚みが薄く25mmの均質な厚みの試片が得られない場合は、切り出した約25mm角の立方体試片表面を約1mmずつスライスし、均質な厚みを有する試片を用いた。
【0107】
<フェノール樹脂発泡体の平均気泡径>
JIS-K-6402記載の方法を参考に、以下の方法でフェノール樹脂発泡体の平均気泡径を測定した。
フェノール樹脂発泡体の厚み方向におけるほぼ中央を表裏面に平行に切削し、切削断面を50倍に拡大した写真を撮影した。得られた写真の任意の位置に9cmの長さ(実際の発泡体断面における1,800μmに相当する)の直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数の平均値を求めた。平均気泡径は横切った気泡の数の平均値で1,800μmを除すことで算出される値である。
【0108】
各辺の長さをノギスにより測定し、見かけ体積(V1:cm3)を算出すると共に試片の質量(W:有効数字4桁,g)を測定した。引き続き、エアーピクノメーター(東京サイエンス社、商品名「MODEL1000」)を使用し、ASTM D 2856のA法に記載の方法に従い、試片の閉鎖空間体積(V2:cm3)を測定した。
また、上述の平均気泡径の測定法に従い、平均気泡径(t:cm)を計測すると共に、上記試片の各辺の長さより、試片の表面積(A:cm2)を算出した。
求めたt、及びAより、下記(4)式より、試片表面の切断された気泡の開孔体積(Va:cm3)を算出した。また、固形フェノール樹脂の密度は1.3g/cm3とし、試片に含まれる気泡壁を構成する固体部分の体積(Vs:cm3)を、下記(5)式より算出した。
Va=(A×t)/1.14 ・・・(4)
Vs=W/1.3 ・・・(5)
上記の結果より、下記式(6)により独立気泡率を算出した。
独立気泡率(%)=〔(V2-Vs)/(V1-Va-Vs)〕×100 ・・・(6)
【0109】
同一製造条件の発泡体サンプルについて6回測定し、その平均値を代表値とした。
【0110】
<面材のフラジール通気度>
面材のフラジール通気度はJIS L 1096:2010年 8.26.1 A法(フラジール形法)に準じて以下のようにして測定した。
面材を200mm×200mmに切断して試験片とし、フラジール形試験機(株式会社東洋精機製作所製、「フラジールパーミアメータ FP-2型」)の円筒の一端に取り付けた。試験片を取り付けた後、加減抵抗器によって傾斜形気圧計が125Paの圧力を示すように吸込みファン及び空気孔を調整し、そのときの垂直形気圧計の示す圧力を測定した。測定した圧力と使用した空気孔の種類から、試験片の通過する空気量(cm3/cm2・sec)を算出し、面材のフラジール通気度とした。
【0111】
<染み出し面積率>
発泡性フェノール樹脂組成物が面材より染み出した箇所をマジックで囲んで印を付けた後、該フェノール樹脂発泡体積層板の300×300mmエリアをデジタルカメラで撮影し、色調補正後、ピクセルカウンターソフトにて樹脂組成物が染み出した箇所の画素数と30cm×30cmエリア全体の画素数をそれぞれカウントし、下記計算式にて樹脂しみ出し面積率を計算した。
染み出し面積率(%)=(マジックで囲んだ部分の画素数/300×300mmエリア全体の画素数)×100
染み出し面積率は、フェノール樹脂発泡体積層板(例えば幅910mm、長さ1820mm)の幅方向の中心部、左右端部より合計3カ所よりサンプリングした300×300mmの試験体の測定結果を平均化して求めた。
【0112】
<面材付着強度>
フェノール樹脂発泡体積層板の面材付着強度は以下の様に測定して求めた(
図1参照)。
先ず、フェノール樹脂発泡体積層板を、幅50mm、長さ120mm(長さ方向が製品MD方向と一致する。)に切り出し、上下面に位置する面材(a)、(b)のうちの一方の面材(b)を剥離した。その後、面材(b)剥離後の積層板を上下面と平行方向に切断することで、面材(a)を備え、幅50mm、長さ120mm、厚み25mmの評価用サンプル1を準備した。
【0113】
次に、評価用サンプルの長さ方向の一端から20mmの位置に、カッターを用いて、面材(a)を有さない側の面から厚み方向に深さ20mmの切り込みを入れた。その切込み位置にて、評価用サンプルの母材を厚み方向に慎重に分割した。この際に面材(a)(
図1中の面材に相当)が母材から剥がれないように、長さ方向の力を加えないようにした。
【0114】
そして、母材が分割された評価用サンプルの、母材の長さが長い側の部位を、
図2に示すようにクランプ7で水平面と45°の角度になるように保持し、また、母材の長さが短い側の部位の先に金属ワイヤ5で繋がれた容器6を、クランプ4を介してセットした。
【0115】
その後、ポンプを用いて空の容器6内に、100g/分の投入速度で、水を連続的に投入した。面材2が評価用サンプルの長さ方向に、切り込み位置から50mm剥離した時点での容器6内の水の質量を測定した。同様の操作を二回行い、クランプ4、金属ワイヤ5、容器6、及び得られた水の質量の合計の平均値を面材付着強度(a)とした。
【0116】
更に別途、面材(b)を備え、幅50mm、長さ120mm、厚み25mmの評価用サンプルを準備し、面材付着強度(a)と同様にして面材の付着強度(b)を求めた。そして、面材付着強度(a)及び面材付着強度(a)の内低い方の値を、フェノール樹脂発泡体積層板の面材付着強度(単位:g)とした。
【0117】
<フェノール樹脂発泡体積層体の面材手はがし性>
以下の基準にて◎、〇、△、×の4段階評価を行った。
◎:面材を手で容易にはがすことができる。
〇:面材を手ではがす際に面材の一部が破れてしまう。
△:面材を手ではがす際にフェノール樹脂発泡体が壊れてしまう。
×:面材を手ではがすことができない、又は、はがす時に面材が著しく破れてしまう。
【0118】
<フェノール樹脂発泡体中の発泡剤成分の種類同定、及び各発泡剤成分のモル比の算出>
はじめに発泡剤として使用したハロゲン化不飽和炭化水素、炭化水素、及びハロゲン化飽和炭化水素の標準ガスを用いて、以下のGC/MS測定条件における保持時間を求めた。
【0119】
次に、実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板から面材を剥がし、フェノール樹脂発泡体試料約10gと金属製ヤスリとを10L容器(製品名「テドラーバック」)に入れて密封し、窒素5Lを注入した。テドラーバックの上からヤスリを用いて試料を削り、細かく粉砕した。続いて、試料をテドラーバックに入れたまま、81℃に温調された温調機内に10分間入れた。テドラーバック中で発生したガスを100μL採取し、以下に示す測定条件にて、GC/MS分析を行い、フェノール樹脂発泡体中の発泡剤成分の種類を同定した。
【0120】
ハロゲン化不飽和炭化水素、炭化水素、及びハロゲン化飽和炭化水素の種類は、事前に求めた保持時間とマススペクトルから同定した。更に別途、発生したガス成分の検出感度を各々標準ガスによって測定し、GC/MSで得られた各ガス成分の検出エリア面積と検出感度より、組成比を算出した。同定した各ガス成分の組成比とモル質量より各ガス成分のモル比を算出した。
【0121】
(GC/MS測定条件)
ガスクロマトグラフィー:アジレント・テクノロジー社製「Agilent7890型」
カラム:ジーエルサイエンス社製「InertCap 5」(内径0.25mm、膜厚5μm、長さ30m)
キャリアガス:ヘリウム
流量:1.1ml/分
注入口の温度:150℃
注入方法:スプリット法(1:50)
試料の注入量:100μL
カラム温度:-60℃で5分間保持し、50℃/分で150℃まで昇温した後、2.8分保持
質量分析:日本電子株式会社製「Q1000GC型」
イオン化方法:電子イオン化法(70eV)
スキャン範囲:m/Z=10~500
電圧:-1300V
イオン源温度:230℃
インターフェース温度:150℃
【0122】
<フェノール樹脂発泡体のホルムアルデヒドの放散速度>
フェノール樹脂発泡体のホルムアルデヒドの放散速度は、JIS A 1901に準拠して測定した。
【0123】
<110℃の雰囲気に14日間放置条件前後の23℃における熱伝導率の変化量>
まずはじめに、JIS A 1412-2:1999に準拠し、以下の方法で23℃の環境下におけるフェノール樹脂発泡体の初期熱伝導率を測定した。
【0124】
フェノール樹脂発泡体を600mm角に切断した。切断により得られた試片を23±1℃、湿度50±2%の雰囲気に入れ、24時間ごとに質量の経時変化を測定した。24時間経過での質量変化率が0.2質量%以下になるまで、試片の状態を調節した。状態を調節された試片は、発泡体を傷つけないように面材を剥がしてから、同環境下に置かれた熱伝導率の測定装置に導入された。
【0125】
熱伝導率の測定は、試験体1枚、対称構成方式の測定装置(英弘精機社、商品名「HC-074/600」)を用い行った。23℃の環境下における熱伝導率は、低温板が13℃、高温板が33℃の条件で測定した。
【0126】
つづいて、以下の操作により、110℃の雰囲気に14日間放置条件後、23℃における熱伝導率を測定した。初期熱伝導率の測定が終了した試片を110℃に温調された循環式オーブン内に14日間入れて加速試験を行なった。その後、試片を23±1℃、湿度50±2%の雰囲気に入れ、24時間ごとに質量の経時変化を測定した。24時間経過での質量変化率が0.2質量%以下になるまで、試片の状態を調節した。引き続き、上述の熱伝導率の測定方法に従い、110℃の雰囲気に14日間放置条件後の23℃の環境下における、熱伝導率の測定を行った。
【0127】
110℃の雰囲気に14日間放置条件前後の23℃における熱伝導率の変化量は、110℃の雰囲気に14日間放置条件後の23℃における熱伝導率から23℃における初期熱伝導率を差し引くことによって算出した。
【0128】
<フェノール樹脂の40℃における粘度>
フェノール樹脂の40℃における粘度は、回転粘度計(東機産業(株)製、R-100型、ローター部は3°×R-14)を用い、40℃で3分間安定させた後の測定値とした。
【0129】
<フェノール樹脂の合成>
まず、反応器に52質量%ホルムアルデヒド水溶液(52質量%ホルマリン)3500kgと99質量%フェノール2510kg(不純物として水を含む)を仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで、50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えながら昇温して、反応を行わせた。オストワルド粘度が60センチストークス(=60×10-6m2/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を570kg(ホルムアルデヒド仕込み量の15モル%に相当)添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液でpHを6.4に中和した。
【0130】
この反応液を60℃で濃縮処理して、フェノール樹脂Aを得た。なお、フェノール樹脂Aの40℃における粘度は20000mPa・sであった。そして、濃縮時間を適宜変更して、表1に示す粘度(40℃)を有するフェノール樹脂B~Fを得た。
【0131】
【0132】
【0133】
(実施例1)
フェノール樹脂A100質量部に対して、界面活性剤としてエチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体(BASF製、「プルロニックF-127」)を2.0質量部の割合で混合した。得られたフェノール樹脂Aと界面活性剤を含む組成物102質量部と、発泡剤として表2に示す発泡剤Aを11質量部と、硬化触媒としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物14質量部からなる混合物とを25℃に温調した混合機のミキシングヘッドに供給して得られる発泡性フェノール樹脂組成物を、マルチポート分配管を通して、移動する下面材(表3の面材A)上に供給した。なお、使用する混合機は、特開平10-225993号公報に開示されたものを使用した。即ち、混合機の上部側面に、フェノール樹脂に界面活性剤を添加して得られる組成物、及び、発泡剤の導入口があり、回転子が攪拌する攪拌部の中央付近の側面に硬化触媒の導入口を備えている混合機を使用した。攪拌部以降は発泡体を吐出するためのノズルに繋がっている。即ち、混合機は、硬化触媒導入口までを混合部(前段)、硬化触媒導入口~攪拌終了部を混合部(後段)、攪拌終了部~ノズルを分配部とし、これらにより構成されている。分配部は先端に複数のノズルを有し、混合された発泡性フェノール樹脂組成物が均一に分配されるように設計されている。
【0134】
【0135】
下面材(表3の面材A)上に供給した発泡性フェノール樹脂組成物の、下面材と接触する側とは反対側の面を、上面材(表3の面材A)で被覆すると同時に、発泡性フェノール樹脂組成物を上下二枚の面材で挟み込むようにして、表4に示すような加熱工程に対する長さ比率を有する予成型行程へ搬送した。その後、スラット型ダブルコンベアを有する加熱工程へ搬送した。加熱工程において、80℃(雰囲気温度)で15分間滞留させ硬化した後、110℃(雰囲気温度)の後硬化のオーブンで2時間キュア(第2の加熱工程)した。上記スラット型ダブルコンベアにより、上下方向から面材を介してフェノール樹脂発泡体に720kgf/m2の圧力を加えることで、板状のフェノール樹脂発泡体積層板を得た。得られたフェノール樹脂発泡体積層板の上面材側に尿素の15質量%水溶液を30g/m2塗工し120℃の乾燥炉で2分間乾燥させた。
【0136】
実施例2~14及び比較例1~7は、表1~4に示すように各々条件を変更して実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。得られた結果を表4に示す。
【0137】
【0138】
表4より、実施例1~14で得られたフェノール樹脂発泡体積層板中のフェノール樹脂発泡体は、比較例1~7で得られたフェノール樹脂発泡体積層板中のフェノール樹脂発泡体に比して、面材の付着強度が適正の範囲に入っており、面材が使用中に剥がれることなく、かつリサイクル時に面材とフェノール樹脂発泡体が分離が可能である。また、長期間にわたる断熱性能に優れ、かつ施工後のホルムアルデヒドの放散量が少ない点で快適な住環境を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明によれば、優れた断熱性能を長期間に亘って保持可能なフェノール樹脂発泡体を提供することができる。
【符号の説明】
【0140】
1 フェノール樹脂発泡体積層板
2 面材
3 フェノール樹脂発泡体
4 クランプ
5 金属ワイヤ
6 容器
7 クランプ