(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】棚装置
(51)【国際特許分類】
A47F 5/00 20060101AFI20220105BHJP
A47B 96/02 20060101ALI20220105BHJP
A47B 96/06 20060101ALI20220105BHJP
A47B 57/42 20060101ALI20220105BHJP
A47B 46/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A47F5/00 C
A47B96/02 C
A47B96/02 G
A47B96/06 B
A47B96/06 J
A47B57/42 E
A47B46/00 501B
(21)【出願番号】P 2017225749
(22)【出願日】2017-11-24
【審査請求日】2020-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】香川 洋一
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-142933(JP,A)
【文献】国際公開第2017/042228(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3183957(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 5/00
A47B 96/02
A47B 96/06
A47B 57/42
A47B 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材
の前面に片持ち状態で取付けられ前後方向に延びるアーム板を有する一対のブラケットと、一対の前記ブラケットに前後方向にスライド移動可能に摺接する可動部材を有する棚ユニットと、を備える棚装置であって、
前記アーム板の上端には、該アーム板の板厚よりも左右方向に長寸に形成された
上端面が設けられ、
前記アーム板の前端部上部には第1低摩擦部材が設けられ、前記可動部材の後端部下部には第2低摩擦部材が設けられており、
前記可動部材は、
前記アーム板の上端面の外縁に当接可能な状態で、前記上端面と前記第1低摩擦部材の上端面とに載置され、
前記アーム板の上端面には前記第2低摩擦部材の下端面が摺接し、前記第1低摩擦部材の上端面には前記可動部材の下端面が摺接するようになっていることを特徴とする棚装置。
【請求項2】
前記アーム板は、上端部が左方向または右方向に折り曲げられていることを特徴とする請求項1に記載の棚装置。
【請求項3】
前記可動部材は、下向きコ字状に形成されており、
前記第1低摩擦部材および前記第2低摩擦部材は前記可動部材が外嵌可能な下向きコ字状に形成され
ていることを特徴とする請求項1
または2に記載の棚装置。
【請求項4】
前記可動部材および前記ブラケットの少なくとも一方には、前記棚ユニットのスライド移動に伴って他方の前記可動部材または前記ブラケットと接触する抵抗付与部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の棚装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品を陳列する棚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前端部にスリットが複数配置された支柱(被取付部材)と、スリットに係止されるフックを有する左右一対のブラケットと、一対のブラケット上に載置される棚部材と、を備え、該棚部材の上に商品を陳列できるようにした棚装置が一般的に知られている。また、ローラーやスライドレール等の可動部材が固定された棚部材から成る棚ユニットを、左右一対のブラケットに取付け、前後方向にスライド移動可能とすることで、商品の陳列作業や補充作業を容易としたスライド式の棚装置もある。一方で、ローラーやスライドレールを使用すると製造コストが高く成り易く、スライド機構の構造が複雑になることから、これらの代わりに低摩擦性の樹脂で形成された低摩擦部材を用いたものもある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に示される棚装置は、フックにより支柱のスリットに係止された左右一対のブラケットと、低摩擦部材を有する棚ユニットと、を備え、棚ユニットは、棚部材に固定された低摩擦部材を介して一対のブラケットに前後にスライド移動可能に取付けられている。ブラケットは、金属板を打ち抜いて形成されており、平面形状のアーム板と、該アーム板の後方にフックが形成されている。また、棚部材は、金属板により形成されており、商品を陳列可能に略水平方向に配置される平板部には左右両端から下方に略直交して折れ曲がった側壁部が連接されており、両側壁部の内壁には、下方に開放する断面コ字状の低摩擦部材が固定されている。低摩擦部材は、アーム板の上端部を挟むように外嵌した状態でアーム板の上端部に載置されている。これにより、棚ユニットを前後にスライド移動させると、低摩擦部材は、当該アーム板の上端部に摺接しながら棚部材の荷重を支持する一方でアーム板の側面と摺接することにより当該棚ユニットの移動を案内可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-63833号公報(第7,8頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の棚装置にあっては、棚ユニットを前後に移動させる際に、棚ユニットに載置された商品の荷重バランスやブラケットのフックが支柱のスリットに遊嵌されて係止されていることにより、ブラケットが低摩擦部材に対して相対的に左右方向へと傾動することがある。このとき、アーム板の側面と低摩擦部材の側面との間に強い摩擦力が発生してしまい、棚ユニットを前後に移動させ難くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、安定してスムーズに棚部材をブラケットに沿って移動させることができる棚装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の棚装置は、
被取付部材の前面に片持ち状態で取付けられ前後方向に延びるアーム板を有する一対のブラケットと、一対の前記ブラケットに前後方向にスライド移動可能に摺接する可動部材を有する棚ユニットと、を備える棚装置であって、
前記アーム板の上端には、該アーム板の板厚よりも左右方向に長寸に形成された上端面が設けられ、
前記アーム板の前端部上部には第1低摩擦部材が設けられ、前記可動部材の後端部下部には第2低摩擦部材が設けられており、
前記可動部材は、前記アーム板の上端面の外縁に当接可能な状態で、前記上端面と前記第1低摩擦部材の上端面とに載置され、
前記アーム板の上端面には前記第2低摩擦部材の下端面が摺接し、前記第1低摩擦部材の上端面には前記可動部材の下端面が摺接するようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば、載置面と可動部材の下面とが面当接することにより、棚ユニットの荷重は各載置面において左右方向に分散され、可動部材の下面に対して載置面が追従し易い状態となっていることから、ブラケットが可動部材に対して相対的に左右方向へ傾動し難い。このことから、棚ユニットの荷重を主に載置面で分散・支持できるため、安定してスムーズに棚ユニットをブラケットに沿って移動させることができる。
【0009】
前記アーム板は、上端部が左方向または右方向に折り曲げられていることを特徴としている。
この特徴によれば、アーム板の強度を増してアーム板自体の変形を抑制すことができるとともに、載置面を簡単に構成することができる。
【0010】
前記可動部材は、下向きコ字状に形成されており、前記第1低摩擦部材および前記第2低摩擦部材は前記可動部材が外嵌可能な下向きコ字状に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、可動部材の側面と低摩擦部材の側面とが接触した際に発生する摩擦力を低減することができるとともに、可動部材の移動を案内することができる。
【0012】
前記可動部材および前記ブラケットの少なくとも一方には、前記棚ユニットのスライド移動に伴って他方の前記可動部材または前記ブラケットと接触する抵抗付与部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、可動部材またはブラケットと抵抗付与部とが接触することにより、棚ユニットが移動する際の抵抗となって、棚ユニットの前方への移動が規制され、棚ユニットを所望の前進位置に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1における棚装置の構造を示す斜視図である。
【
図2】棚装置の要部の構造を示す分解斜視図である。
【
図3】(a)は、ブラケットの構造を示す上面図、(b)は、同じく側面図、(c)は、同じく正面図である。
【
図4】(a)は、可動部材の構造を示す下面図、(b)は、同じくα矢視側断面図、(c)は、β矢視断面図である。
【
図5】棚板およびブラケットの構造を示す一部断面側面図である。
【
図6】(a)は、棚板が後退位置にある状態を示す断面側面図、(b)は、γ矢視断面図である。
【
図7】(a)は、棚板が前進位置にある状態を示す断面側面図、(b)は、δ矢視断面図である。
【
図8】本発明の実施例2における棚装置の要部の構造を示す断面正面図である。
【
図9】本発明の実施例3におけるブラケットの構造を示す断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る棚装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例に係る棚装置につき、
図1から
図7を参照して説明する。以下、棚装置の棚ユニット側を正面側とし、正面側から見たときの上下左右前後方向を基準として説明する。
【0016】
本実施例の棚装置1は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等で商品を陳列する商品陳列棚である。尚、棚装置1は、商品陳列棚に限られず、倉庫などで物品を収納する物品収納棚として利用してもよい。
【0017】
図1に示されるように、棚装置1は、左右に離間する一対の支柱2,2(被取付部材)と、支柱2,2の上端部と下端部との対向面同士を連結している横連結杆3,3と、支柱2,2と横連結杆3,3とで構成された矩形状の枠内に固定される格子状の背面パネル4と、支柱2,2の前端部側に取り付けられたブラケット52と、ブラケット52に前後方向にスライド移動可能に支持された棚ユニット5,5,…と、から主に構成されている。尚、棚ユニット5は、棚板51と棚板51に固定された後述する可動部材55(
図2参照)により構成されており、各棚板51には商品が陳列可能となっている。支柱2,2は、脚部6,6を有して自立可能となっているとともに、前端部には、上下方向に1列に並ぶ多数のスリット7,7,…が設けられている。
【0018】
図2に示されるように、支柱2,2の前端部に左右一対のブラケット52,52が取付けられており、ブラケット52,52の後端部同士は第1連結部材53より相互に連結固定されており、ブラケット52,52の載置部52b,52b上に可動部材55,55を有する可動体54が前後にスライド移動可能に載置されており、可動体54には棚板51が載置・固定されている。
【0019】
次に、ブラケット52の構造を
図2,
図3に基づいて説明する。尚、ここでは、右側のブラケット52を説明し、略同一形状である左側のブラケット52の説明を省略する。
【0020】
図3に示されるように、ブラケット52は、金属製の板状部材から側面視略横向きL字状かつ正面視L字状に形成され、前後方向に延びる平板状のアーム板52aと、アーム板52aの上端縁から左方に略直交して折れ曲がった平板状の載置部52bと、アーム板52aの後端に設けられる下向き鉤状のフック52c,52c,…と、アーム板52aの後部中央において切り起こして形成され左方に突出する平板状の突出部52dと、から主に構成されており、載置部52bは、アーム板52aの板厚よりも左右方向に長寸に形成されている。尚、ブラケット52は、金属製の板状部材を打ち抜き加工した後、アーム板52aの上端縁を略L字状に折り曲げることにより容易に製作することができる。
【0021】
ブラケット52のアーム板52aの上端部が左方向(尚、左方のブラケット52にあっては右方向)に折り曲げられていることにより、ブラケット52の載置部52bが形成されていることから、アーム板52aおよび載置部52bの強度を増してアーム板52aおよび載置部52b自体の変形を抑制すことができるとともに、載置面Sの一部を構成する載置部52bの上端面S2を簡単に構成することができる。
【0022】
図2,
図3(c)に示されるように、ブラケット52の載置部52bの前端部には、上下方向に貫通し雌ネジが形成された前後二つの雌ネジ部が形成されており、当該雌ネジ部に皿ネジが螺合されることにより第1低摩擦部材11が固定されている。
【0023】
第1低摩擦部材11は、金属製のブラケット52よりも摩擦係数が小さい合成樹脂からなる正面視下向きコ字状に形成されており、載置部52bの上面に沿って配置される平板状の基部11aと、基部11aの左右側端部それぞれから略直交して下方に延設され載置部52bの左右それぞれの側面に当接する平板状の側端部11b,11bを有している。
【0024】
また、第1低摩擦部材11の基部11aには、ブラケット52の載置部52bの雌ネジ部に位置合わせされ上下方向に貫通するすり鉢状の孔部11c,11cが、皿ネジの頭部を収容可能に形成されており、第1低摩擦部材11を載置部52bに固定した状態で、皿ネジの頭部が基部11aよりも上方に突出しないようになっている。ここで、第1低摩擦部材11はアーム板52aおよび載置部52bに外嵌した状態で皿ネジにより固定できることから、取付が容易である。尚、皿ネジの材質は問わないが、樹脂製とすることで皿ネジ自体も摩擦係数が小さいことから、第1低摩擦部材11が摩耗やクリープ変形等によって厚みが減少しても、可動部材55に損傷を与え難くなることから好ましい。
【0025】
また、第1低摩擦部材11の基部11aの上端には、前後方向に直線状に延びる突条状のリブR1,R1,…が略平行に左右方向に並んで12本形成されており(
図3(c)参照)、基部11aの上端面S1は凹凸形状となっている。この上端面S1および第1低摩擦部材11が固定される位置から後方において上方に露出する載置部52bの上端面S2は載置面Sを構成しており、後述する可動部材55が摺接してスライド移動する。尚、本実施例において、リブR1は左右方向に12本形成されている態様として説明したが、その数値を限定するものではなく、その形状についても例えば半球状であってもよく、限定するものではない。
【0026】
また、
図2に示されるように、載置部52bの前端部における第1低摩擦部材11の下方には、対向するブラケット52側に突出する規制部材58がボルトナットを介して固定されている。規制部材58は、対向するブラケット52側の端部に上方に突出する鉤状の規制片58aが形成されており、規制片58aは、前方から後方に向かうほどに上方に突出する側面視直角三角形状となっている。尚、説明の便宜上、
図3においては規制部材58を示していない。
【0027】
図1,
図2に示されるように、フック52c,52c,…を、支柱2の前端部に設けられたスリット7,7,…に遊嵌・係止させることで、ブラケット52は支柱2,2の前端部に片持ち支持される。
【0028】
図2,3に示されるように、一対のブラケット52,52は、ブラケット52の突出部52dの中央部に形成された挿通孔、および、左右方向に延びる金属製の板状部材を折り曲げて上向きコ字状に形成された第1連結部材53(
図2参照)の貫通孔に挿通されたボルトにナットが緊締されることにより、連結されている。これにより、ブラケット52が単独で傾き難くなっている。
【0029】
次に、可動体54の構造を
図2,4に基づいて説明する。可動体54は、ブラケット52,52にスライド移動可能に載置される左右一対の可動部材55,55と、可動部材55,55の前部同士を相互に連結する第2連結部材56と、により上面視コ字状に形成されており、可動部材55,55の上端面には、係止部材59,59がそれぞれ溶接固定されている。
【0030】
次いで、可動部材55の構造を
図4に基づいて説明する。尚、ここでは、右側の可動部材55を説明し、略同一形状である左側の可動部材55の説明を省略する。
【0031】
図4に示されるように、可動部材55は、金属製の板状部材により形成されており、前後方向に延びる板状の基部55aと、基部55aの左右それぞれの側端縁から下方に略直交して折れ曲がった板状の側端部55b,55b’と、基部55aの前端縁から下方に略直交して折れ曲がった板状の前端部55cと、を有し、基部55a、側端部55b,55b’、前端部55cにより囲まれた溝部55dが形成されている。尚、可動部材55は、金属製の板状部材を打ち抜き加工した後、基部55aの前端縁および左右の側端縁それぞれを略L字状に折り曲げることにより容易に製作することができる。
【0032】
可動部材55の側端部55b,55b’間の左右寸法は、ブラケット52の前端部に固定される第1低摩擦部材11の左右寸法よりも僅かに長寸な略同寸となっており、可動部材55は、溝部55dに第1低摩擦部材11を含むブラケット52の載置部52bを収容し、該載置部52bに外嵌されている(
図6,
図7参照)。
【0033】
第2低摩擦部材12は、第1低摩擦部材11と同じ合成樹脂からなり、正面視下向きコ字状に形成されており、板状の基部12aと、基部12aの左右側端部それぞれから略直交して下方に延設される板状の側端部12b,12bを有している。
【0034】
また、第2低摩擦部材12の側端部12b,12bには、外方向の左方向または右方向に突出する凸部12c,12cが形成されており、当該凸部12c,12cを可動部材55の凹部55e,55eに嵌合することで第2低摩擦部材12は可動部材55に固定されている。このとき、第2低摩擦部材12は、断面視コ字状である可動部材55に内嵌されており、第2低摩擦部材12の基部12aと可動部材55の基部55aとが面当接し、第2低摩擦部材12の側端部12b,12bと側端部55b,55bとがそれぞれ面当接している。尚、第2低摩擦部材12は、ボルトナットや接着剤等により可動部材55に固定されていてもよい。
【0035】
また、第2低摩擦部材12の側端部12b,12b間の左右寸法は、ブラケット52の載置部52bの左右寸法よりも僅かに長尺な同寸となっており、第2低摩擦部材12は載置部52bに外嵌されている(
図6,
図7参照)。
【0036】
また、第2低摩擦部材12の基部12aの下端には、前後方向に直線状に延びる突条状のリブR2,R2,…が略平行に左右方向に並んで複数形成されており(
図4(c)参照)、基部12aの下端面F1は凹凸形状となっている。この下端面F1および第2低摩擦部材12が固定される位置の前方において下方に露出する可動部材55の基部55aの下端面F2は摺接面F(可動部材の下面)を形成しており、ブラケット52の載置面Sに摺接してスライド移動する。
【0037】
図6に示されるように、第1低摩擦部材11および第2低摩擦部材12は、可動部材55がブラケット52の載置部52bに外嵌し、かつ、可動部材55が後述する後退位置にある際に、摺接面Fと載置面Sとが互いに略平行となるように形成されている。
【0038】
また、対向する可動部材55側に位置する可動部材55の側端部55b’には、凹部55eよりも後方に、左右方向に貫通する前後一対の貫通孔が形成されており、当該貫通孔に挿通されるボルトにより第3低摩擦部材13が固定されている。
【0039】
第3低摩擦部材13は、第1低摩擦部材11と同じ合成樹脂からなり、直方体状に形成されており、可動部材55の側端部55b’の貫通孔に挿通されたボルトの螺合により固定されている。可動部材55に固定された第3低摩擦部材13は、可動部材55の基部55aと上下方向に離間しており、棚ユニット5のスライド移動の際に第3低摩擦部材13と可動部材55の基部55aとの間にブラケット52の載置部52bが位置する。
【0040】
また、第3低摩擦部材13の上端には、前後方向に直線状に延びる突条状のリブR3,R3,…が略平行に左右方向に並んで複数形成されており(
図4(c)参照)、第3低摩擦部材13の上端面Cは凹凸形状となっている。
【0041】
また、可動部材55の側端部55b’と対向する側端部55bの後端側には、前方から後方に向かうほどに溝部55内側への突出量が増加する下面視直線テーパー状(
図4(a)参照)に形成された抵抗付与部55fが形成されており、抵抗付与部55fは、可動部材55をブラケット52の載置部52bに外嵌した状態において、棚ユニット5を前方にスライド移動させることで、第1低摩擦部材11の側端部11bと接触する(
図7(b)参照)。
【0042】
次に、
図2,
図5を用いて、第2連結部材56について説明する。第2連結部材56は、金属の押出成形により側面視クランク状に形成されており、その左右端は可動部材55,55の前部それぞれに溶接固定されている。また、第2連結部材56の左右端部には、第2連結部材56の下端面から前方に突出する左右一対のストッパ部材57,57が回動可能に取付けられ、ストッパ部材57の左右端部には、上下方向に貫通する係合孔57a,57aが形成されている。尚、説明の都合上、
図5においては、支柱2の前端部、第1連結部材53、第2連結部材56の断面を図示し、
図5の吹出し内においては、第1低摩擦部材11の図示を省略している。
【0043】
次に、棚板51の構造を説明する。
図2,
図5に示されるように、棚板51は、商品を陳列可能に略水平方向に配置される平板部51aと、平板部51aの左右両端縁それぞれから下方に折り曲がる側壁部51b,51bと、側壁部51b,51bそれぞれの近傍かつ平板部51aの下面にてそれぞれ溶接固定された鉤状の接続部51c,51c(
図5参照)と、平板部51aの下面にて左右方向に延びる2本の補強杆部51d,51d’と、を有し、側壁部51bと補強杆部51dの側端との間には、一対の係止部材59,59を差し込むための空隙(図示略)が形成されている。
【0044】
次に、
図5,
図6を用いて、棚ユニット5の取付構造を説明する。尚、棚ユニット5の右側の取付構造について説明し、略同一形状である左側の取付構造の説明を省略する。尚、
図6では、説明の都合上、第2連結部材56、ストッパ部材57、規制部材58、係止部材59の図示を省略し、棚板51を二点鎖線にて図示している。
【0045】
支柱2に係止されたブラケット52の載置部52bに可動部材55を外嵌させて、ストッパ部材57の係合孔57aと規制部材58の規制片58aとを係合させた後、棚板51を可動体54に固定する。この、ストッパ部材57の係合孔57aと規制部材58の規制片58aとを係合させた位置が棚ユニット5の後退位置である。
【0046】
また、
図6(a)に示されるように、載置部52bに可動部材55を外嵌させるにあたり、載置部52bよりも可動部材55の基部55aは前後方向に長寸であり、ブラケット52の載置部52bの後端部と支柱2の前端面との間には隙間が形成されていることから、当該隙間を通じて第3低摩擦部材13を上方から下方に移動させて、載置部52bの上に可動部材55を載置することにより、容易に外嵌させることができる。
【0047】
また、
図6(b)に示されるように、可動部材55は断面視コ字状に形成されており、ブラケット52の載置部52bに外嵌しているため、可動部材55が左右方向に移動することが規制されており、ブラケット52の載置部52bから左右方向に脱落することが防止されている。
【0048】
棚板51は、棚板51の下方の空隙(図示略)に係止部材59を差し込み、棚板51の接続部51c,51cを係止部材59,59の係止溝59a,59aに係止させることで、可動部材55,55に固定される。このとき、ストッパ部材57と規制部材58とにより可動体54の移動が規制されていることから、棚板51の空隙と係止部材59との位置合わせが容易である。
【0049】
次に、
図6,
図7を用いて、棚ユニット5のスライド動作について説明する。尚、
図7では、説明の都合上、第2連結部材56、ストッパ部材57、規制部材58、係止部材59の図示を省略し、棚板51を二点鎖線にて図示している。
【0050】
図6に示されるように、棚ユニット5が後退位置にある状態において、ストッパ部材57を回動させ、規制部材58の規制片58aからストッパ部材57の係合孔57aを離脱させた後(
図5参照)、棚ユニット5をブラケット52の前方側へスライド移動させる。このとき、可動部材55の下端面F2は第1低摩擦部材11の上端面S1に、第2低摩擦部材12の下端面F1はブラケット52の載置部52bの上端面S2に、それぞれ摺接しながらスライド移動する。
【0051】
ここで、第1低摩擦部材11の上端面S1と可動部材55の下端面F2とが面当接し、第2低摩擦部材12の下端面F1とブラケット52の載置部52bの上端面S2とが面当接することにより、棚ユニット5の荷重は各上端面S1または各上端面S2において左右方向に分散され、摺接面Fに対して載置面Sが追従し易い状態となっていることから、ブラケット52が可動部材55に対して相対的に左右方向へ傾動し難い。このことから、可動部材55,55は、棚ユニット5の荷重を主に載置面Sで分散・支持できるため、安定してスムーズに棚ユニット5をブラケット52,52に沿ってスライド移動させることができる。
【0052】
また、第1低摩擦部材11および第2低摩擦部材12は、可動部材55の基部55aまたはブラケット52よりも摩擦係数が小さいことから、第1低摩擦部材11の上端面S1と可動部材55の下端面F2との間に発生する摩擦力、および、第2低摩擦部材12の下端面F1とブラケット52の載置部52bの上端面S2との間に発生する摩擦力が小さい。これにより、棚ユニット5をよりスムーズにスライド移動させ易い。
【0053】
また、第1低摩擦部材11の上端面S1および第2低摩擦部材12の下端面F1には、それぞれリブR1,R2,…が形成されていることから、第1低摩擦部材11の上端面S1と可動部材55の下端面F2との接触面積、および、第2低摩擦部材12の下端面F1とブラケット52の載置部52bの上端面S2との接触面積が低減されている。さらに、これらリブR1,R2,…は可動部材55の移動方向に沿って形成されていることから、発生する摩擦力が小さい。これにより、棚ユニット5をさらによりスムーズにスライド移動させ易い。
【0054】
また、上述したように、第1連結部材53により連結されたブラケット52,52は、個別に傾動し難いことから、より安定して棚ユニット5の荷重を主に載置面Sで分散・支持できる。
【0055】
また、ブラケット52は、アーム板52aの上端縁を略L字状に折り曲げて形成されており、アーム板52aおよび載置部52b自体の変形が抑制されていることから、可動部材55の移動に伴って撓む・曲がる等し難いため、棚ユニット5をスムーズにスライド移動させ易い。
【0056】
図7(b)に示されるように、第3低摩擦部材13は、棚ユニット5がブラケット52の前方に移動し、棚ユニット5の荷重バランスにより可動部材55の後端部が浮き上がると、ブラケット52の載置部52bの下面に摺接して、棚ユニット5の荷重を支持する。また、棚ユニット5のスライド移動に伴い発生する振動、可動部材55の左右方向への傾動等により、可動部材55の後端部が浮き上がる際についても同様である。このように、第3低摩擦部材13は、可動部材55の後端部の浮き上がりを規制し、可動部材55の脱落を防止することができる。ここで、第3低摩擦部材13は第1低摩擦部材11および第2低摩擦部材12同様に発生する摩擦力が小さいため、第3低摩擦部材13が載置部52bの下面に摺接しても棚ユニット5をブラケット52に沿ってスムーズにスライド移動させることができる。
【0057】
図6(b)に示されるように、第2低摩擦部材12の側端部12b,12bは、ブラケット52の載置部52bに外嵌しているため、第2低摩擦部材12と載置部52bの側面やアーム板の側面とが接触した際に発生する摩擦力を低減することができるとともに、可動部材55の移動を案内する。
【0058】
また、可動部材55の抵抗付与部55fは、上述したようにテーパー状(
図4(a)参照)に形成されているため、可動部材55が前方に向かうほど抵抗付与部55fと可動部材55の側端部55’とによる第1低摩擦部材11への挟圧が強まる。これにより、棚ユニット5が前方に移動する際の抵抗となって、棚ユニット5の前方への移動が規制され、
図7(a)に示されるように、棚ユニット5を所望の前進位置に停止させることができる。
【0059】
尚、抵抗付与部55fおよび可動部材55の側端部55’により、第1低摩擦部材11を左右方向から挟圧した状態において、さらに棚ユニット5が前方側に引張られた際には、第1低摩擦部材11の後端と第2低摩擦部材12の前端とが接触するため、可動部材55の移動は規制され、棚ユニット5がブラケット52から前方に脱落することを防止されている。
【0060】
また、可動部材55の抵抗付与部55fは、第2低摩擦部材12の側端部12bの方が溝部55内側に突出しているため、ブラケット52に対して前方に棚ユニット5をスライド移動させた際に、第1低摩擦部材11の側端部11bと接触するものの、それ以外においては、アーム板52aの側面と接触し難いため、棚ユニット5のスライド移動の妨げとなり難い。
【0061】
棚ユニット5を前進位置にから後退位置へとスライド移動させる際には、棚ユニット5を支柱2,2側へと押動すればよい。また、棚ユニット5が後端位置に近接すると、直角三角形状の規制部材58の規制片58aにストッパ部材57が乗り上げ、規制片58aとストッパ部材57の係合孔57aとが係合され、可動部材55の移動が規制され、
図6に示す後退状態となる。
【0062】
以上のように、可動部材55,55を有する棚ユニット5は、ローラーやスライドレール等を用いることなく、ブラケット52,52に摺接して、前後方向にスライド移動することができる。
【0063】
また、棚ユニット5をブラケット52の前端側へスライド移動させる間、ブラケット52のアーム板52aおよび載置部52bと可動部材55との間に第1低摩擦部材11および第2低摩擦部材12を介在させ続けることができる。
【0064】
ここで、可動体54と棚板51とは着脱可能であることから、可動体54に取付け可能な棚板であれば、任意に取り換えることができる。これにより、既存の棚板を利用することができる。また、棚板が損傷した際に、容易に他の棚板と取り換えることができる。
【0065】
また、棚ユニット5は、ストッパ部材57の係合孔57aと規制部材58の規制片58aとが係合することで移動が規制されることから、前端が下方に位置するように傾斜した状態で支柱2,2に係止された一対のブラケットであっても安全に使用することができる。
【実施例2】
【0066】
前記実施例1においては、可動部材55が断面正面において下向きコ字状に形成された例について説明したが、実施例2では対向する可動部材155,155’が断面視横向きL字状に形成された例について説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成を省略する。
【0067】
図8に示されるように、右側に位置する可動部材155は、ブラケット52の載置部52bに沿って配置される基部155aと、アーム板52aに沿って配置される側端部155bを有し、可動部材155の後端部には、ボルトの螺合により、正面視L字状に形成された第2低摩擦部材112が固定されている。一方、左側に位置する可動部材155’は、可動部材155を左右反転した形状であるため、説明を省略する。
【0068】
可動部材155,155’は、説明の都合上直接の図示は省略するが、前記実施例1の可動部材55,55と同様に、第2連結部材56により連結されることで、可動体154となっており、支柱2,2に係止されたブラケット52,52に可動部材155,155’を外嵌させて可動体154を載置した後、可動体154に棚板51を載置・固定することにより、棚ユニット5がブラケット52,52に取付けられる。
【0069】
また、棚ユニット5が左右方向に移動しようとしても、一対の可動部材155,155’がブラケット52,52に外嵌しているため、その左右方向への移動が規制される。換言すれば、可動部材は、載置面Sの外縁に当接可能に載置面Sに載置されていれば、可動体154がブラケット52,52から左右方向に脱落することが防止される。
【実施例3】
【0070】
前記実施例1においては、正面視L字状に形成されたブラケット52の載置部52bに外嵌して第1低摩擦部材11が取付けられた例について説明したが、平板状のアーム板52aに幅広の第1低摩擦部材が取付けられた例について説明する。尚、前記実施例1,2と同一構成で重複する構成を省略する。
【0071】
ブラケット152は、アーム板52aと、フック(図示略)と、突出部52dとにより構成されており、アーム板52aの上端部には、前後方向に延びる直方体状の第1低摩擦部材111が嵌合された状態で、アーム板52aを左右方向に貫通する貫通孔、および、第1低摩擦部材111を左右方向に貫通する貫通孔に挿通されたボルトにナットが緊定されることで固定されている。これにより、第1低摩擦部材111の上端面すべてを載置面S’とすることができるとともに、第1低摩擦部材111に可動部材55を外嵌可能に形成することにより、可動部材55に第2低摩擦部材12を配置せず、可動部材55の基部55aの下端面すべてを摺接面F’とすることができる。
【0072】
以上、本発明の実施例1~3を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0073】
例えば、前記実施例1では、ブラケット52の載置部52bと可動部材55との間に、断面視コ字状の第1低摩擦部材11と第2低摩擦部材12を配置する態様として説明したが、これに限らず、載置部52bの上端面S2および可動部材55の下端面F2の少なくとも一方に、低摩擦性の塗料、グリース等の潤滑剤等が塗布・焼成処理等されていてもよい。また、第2低摩擦部材は、可動部材55に載置部52bを外嵌可能に形成されたが溝部に亘って配置されていてもよい。さらに、第1低摩擦部材11と第2低摩擦部材12との配置については、適宜変更されてもよい。
【0074】
前記実施例1では、ブラケット52は、正面視L字状に形成されている態様として説明したが、これに限らず、正面視T字状に形成されていてもよく、アーム板52aの上端面(載置面)の左右方向における合計寸法がアーム板52aの板厚よりも左右方向に長寸となるのであれば、正面視Y字状、正面視Ψ字状等に形成されていてもよく、限定するものではない。
【0075】
また、ブラケット52,52は、第1連結部材53により連結されている態様として説明したが、連結されていなくともよい。可動部材55,55についても同様である。
【0076】
可動体54と棚板51とは、着脱可能である態様として説明したが、これに限らず、棚板51と可動部材55,55とが直接溶接固定されていたり、押出成形、型抜き成形、切削成形等により棚板と可動部材とが一体成形されていたりしてもよい。
【0077】
抵抗付与部55fは、可動部材55の側端部55bの後端部に形成されている態様として説明したが、これに限らず、前後方向に亘って形成されていてもよく、ブラケット52のアーム板52aや載置部52bに形成されていてもよく、可動部材55とブラケット52の双方に形成されていてもよい。また、抵抗付与部55fは、第1低摩擦部材11と接触する態様として説明したが、限定するものではない。一方で、抵抗付与部55fが形成されていなくともよい。
【0078】
ブラケット52,52は、支柱2,2に限らず、被取付部材は自由に選択されてよい。また、棚ユニット5は、本実施例における棚板51に限定するものでなく、可動体54に載置可能であればよく、かご状やフレーム材にガラス板が取付けられた態様であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 棚装置
2 支柱(被取付部材)
5 棚ユニット
11 第1低摩擦部材
12 第2低摩擦部材
52 ブラケット
52a アーム板
55 可動部材
55f 抵抗付与部
111 第1低摩擦部材
112 第2低摩擦部材
152 ブラケット
155,155’ 可動部材
S,S’ 載置面