(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、モータ駆動システム、モータ駆動制御装置の制御方法、及びモータ駆動制御装置の制御プログラム。
(51)【国際特許分類】
H02P 5/46 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
H02P5/46 D
(21)【出願番号】P 2017229242
(22)【出願日】2017-11-29
【審査請求日】2020-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】海津 浩之
(72)【発明者】
【氏名】青木 政人
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-256547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置とともにモータ駆動システムを構成するモータ駆動制御装置であって、
前記制御装置から送信された指示情報に応じてモータの駆動を制御する制御回路部を備え、
前記制御回路部は、
外部から入力された、自身に対する識別情報の割当に関する設定基準情報を取得する第1取得部と、
外部から入力された設定用電圧の大きさと、前記設定基準情報とに基づいて、自身の前記識別情報を設定する設定部と、
前記設定部により設定した前記識別情報に基づいて前記指示情報を取得する第2取得部とを有
し、
前記設定基準情報は、前記モータ駆動システムの定格電圧に関する情報を含み、
前記設定部は、前記定格電圧と前記モータ駆動制御装置に供給される電源電圧との比に応じて電圧範囲を決定し、決定した電圧範囲のうち前記外部から入力された設定用電圧が属する電圧範囲を特定し、特定した電圧範囲に対応する識別情報を自身の前記識別情報として設定する
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記指示情報は、モータの駆動に関する情報と、その情報に基づく制御動作を実行させる対象となるモータ駆動制御装置を指定する指定情報とを含み、
前記制御回路部は、前記指示情報に前記設定部により設定した前記識別情報に対応する指定情報が含まれるとき、前記指示情報に応じて前記モータの駆動を制御する、請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記制御回路部は、前記指示情報に前記設定部により設定した前記識別情報に対応する指定情報が含まれないとき、前記指示情報に応じた前記モータの駆動の制御動作を行わない、請求項2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記制御回路部は、前記指示情報に前記設定部により設定した前記識別情報に対応する指定情報が含まれるとき、前記制御装置に応答情報を出力する、請求項2又は3に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項5】
前記設定基準情報は、前記モータ駆動システムで使用可能なモータ駆動制御装置の数に関する台数情報を含む、請求項1から
4のいずれかに記載のモータ駆動制御装置。
【請求項6】
第1のモータの駆動を制御する、請求項1から5のいずれかに記載の第1のモータ駆動制御装置と、
第2のモータの駆動を制御する、請求項1から5のいずれかに記載の第2のモータ駆動制御装置と、
前記第1のモータ駆動制御装置と前記第2のモータ駆動制御装置とに接続された制御装置と、
前記第1のモータ駆動制御装置に第1の設定用電圧を出力する第1電圧出力部と、
前記第2のモータ駆動制御装置に前記第1の設定用電圧とは大きさが異なる第2の設定用電圧を出力する第2電圧出力部とを備え、
前記制御装置は、
前記第1のモータ駆動制御装置と前記第2のモータ駆動制御装置とに前記指示情報を出力するとともに、
前記第1のモータ駆動制御装置と前記第2のモータ駆動制御装置とに前記設定基準情報を出力する、モータ駆動システム。
【請求項7】
前記第1電圧出力部と前記第2電圧出力部とのそれぞれは、互いに異なる分圧比で所定の電圧源の電圧を分圧する分圧回路である、請求項
6に記載のモータ駆動システム。
【請求項8】
前記所定の電圧源の電圧は、複数のモータ駆動制御装置に供給される電源電圧であり、
前記第1の設定用電圧と前記第2の設定用電圧とは定電圧である、請求項
7に記載のモータ駆動システム。
【請求項9】
前記第1電圧出力部と前記第2電圧出力部とは、前記制御装置に設けられている、請求項
6から
8のいずれかに記載のモータ駆動システム。
【請求項10】
制御装置とともにモータ駆動システムを構成し、前記制御装置から送信された自身に対応する指示情報に応じてモータの駆動を制御するモータ駆動制御装置の制御方法であって、
外部から入力された、自身に対する識別情報の割当に関する設定基準情報とを取得する第1取得ステップと、
外部から入力された設定用電圧の大きさと、前記設定基準情報とに基づいて、自身の前記識別情報を設定する設定ステップと、
前記設定ステップにより設定した前記識別情報に基づいて前記指示情報を取得する第2取得ステップとを備え、
前記設定基準情報は、前記モータ駆動システムの定格電圧に関する情報を含み、
前記設定ステップは、前記定格電圧と前記モータ駆動制御装置に供給される電源電圧との比に応じて電圧範囲を決定し、決定した電圧範囲のうち前記外部から入力された設定用電圧が属する電圧範囲を特定し、特定した電圧範囲に対応する識別情報を自身の前記識別情報として設定するステップを含む
モータ駆動制御装置の制御方法。
【請求項11】
制御装置とともにモータ駆動システムを構成し、前記制御装置から送信された自身に対応する指示情報に応じてモータの駆動を制御するモータ駆動制御装置の制御プログラムであって、
外部から入力された、自身に対する識別情報の割当に関する設定基準情報とを取得する第1取得ステップと、
外部から入力された設定用電圧の大きさと、前記設定基準情報とに基づいて、自身の前記識別情報を設定する設定ステップと、
前記設定ステップにより設定した前記識別情報に基づいて前記指示情報を取得する第2取得ステップとをコンピュータに実行させ、
前記設定基準情報は、前記モータ駆動システムの定格電圧に関する情報を含み、
前記設定ステップは、前記定格電圧と前記モータ駆動制御装置に供給される電源電圧との比に応じて電圧範囲を決定し、決定した電圧範囲のうち前記外部から入力された設定用電圧が属する電圧範囲を特定し、特定した電圧範囲に対応する識別情報を自身の前記識別情報として設定するステップを含む
モータ駆動制御装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ駆動制御装置、モータ駆動システム、モータ駆動制御装置の制御方法、及びモータ駆動制御装置の制御プログラムに関し、特に、外部から取得した自身の識別情報に基づいてモータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置、モータ駆動システム、モータ駆動制御装置の制御方法、及びモータ駆動制御装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のモータ駆動制御装置を1つの制御装置により制御し、モータ駆動制御装置のそれぞれに接続されたモータを駆動させるモータ駆動システムがある。このようなモータ駆動システムとしては、例えば電子計算機等に用いられ、1台の制御装置により電子計算機の各部にそれぞれ配置された複数台のファンモータを駆動して電子計算機の冷却を行うものがある。
【0003】
このようなモータ駆動システムには、それぞれのモータ駆動制御装置に書き込まれるID情報(識別コード等の識別情報)を利用して制御装置による制御を行うことにより、モータ駆動制御装置毎に異なる動作を実行させるものがある。例えば、制御装置から出力される指示情報に、指示対象となるモータ駆動制御装置のID情報を含めることで、特定のモータ駆動制御装置を対象にして、回転速度等に関する指示を行うことができる。モータ駆動制御装置は、自身(自機)のID情報を含む指示情報を受信したとき、その指示情報に基づいてモータの駆動を制御する。
【0004】
例えば、第1のファンモータは冷却対象Aを冷却対象とし、第2のファンモータは冷却対象Bを冷却対象とし、……、というように、それぞれ異なる冷却対象に風を送る複数台のファンモータを1台の制御装置で制御するモータ駆動システムを想定する。この種のモータ駆動システムにおいて、第1のファンモータは分速10000回転で回転させ、第2のファンモータは分速4000回転で回転させる、というように、ファンモータ毎に異なる制御を行いたいというニーズがある。
【0005】
このような場合、例えば、それぞれのファンに予めID情報を書き込んでおき、制御装置からの指示情報にそのID情報を含めることで、それぞれのファンモータに自分宛の指示情報であるかどうか判断させ、ファンモータ毎に異なる制御を実行させることができる。
【0006】
なお、下記特許文献1には、ファンモータを制御する複数のファンモータ制御手段と、電気機器システムを制御するシステム制御手段とを有し、システム制御手段と複数のファンモータ制御手段との間でデータ通信を行うことにより複数台のファンモータを制御する電気機器システムの構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば上記のように複数台のファンモータを用いる場合、それぞれのファンモータのID情報が互いに異なるものになるように、モータ駆動システムを設定する必要がある。すなわち、モータ駆動システムの製造時に、ID情報が互いに異なる複数のファンモータのそれぞれを、そのID情報に対応する適切な位置に配置したり配線したりする必要があり、製造作業の難度が高いという問題がある。また、複数のうち1つのファンモータを交換等する必要がある場合において、交換前後でID情報が一致するようにファンモータを用意する必要があるため、モータ駆動システムのメンテナンスに掛かる負担が大きいという問題がある。
【0009】
特許文献1には、それぞれのファンモータ制御装置が外部信号を読み取って対応する識別情報を認識することが記載されているが、外部信号の具体的な内容や識別情報の認識方法などについて具体的には開示されていない。
【0010】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、モータ駆動システムの構築及びメンテナンスを容易にすることができるモータ駆動制御装置、モータ駆動システム、モータ駆動制御装置の制御方法、及びモータ駆動制御装置の制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、制御装置とともにモータ駆動システムを構成するモータ駆動制御装置は、制御装置から送信された指示情報に応じてモータの駆動を制御する制御回路部を備え、制御回路部は、外部から入力された、自身に対する識別情報の割当に関する設定基準情報を取得する第1取得部と、外部から入力された設定用電圧の大きさと、設定基準情報とに基づいて、自身の識別情報を設定する設定部と、設定部により設定した識別情報に基づいて指示情報を取得する第2取得部とを有する。
【0012】
好ましくは、指示情報は、モータの駆動に関する情報と、その情報に基づく制御動作を実行させる対象となるモータ駆動制御装置を指定する指定情報とを含み、制御回路部は、指示情報に設定部により設定した識別情報に対応する指定情報が含まれるとき、指示情報に応じてモータの駆動を制御する。
【0013】
好ましくは、制御回路部は、指示情報に設定部により設定した識別情報に対応する指定情報が含まれないとき、指示情報に応じたモータの駆動の制御動作を行わない。
【0014】
好ましくは、制御回路部は、指示情報に設定部により設定した識別情報に対応する指定情報が含まれるとき、制御装置に応答情報を出力する。
【0015】
好ましくは、設定部は、設定基準情報に基づいて定まる複数の電圧範囲のうち設定用電圧が含まれる電圧範囲に対応する識別情報を自身の識別情報として設定する。
【0016】
好ましくは、設定基準情報は、モータ駆動システムで使用可能なモータ駆動制御装置の数に関する台数情報を含む。
【0017】
好ましくは、設定基準情報は、モータ駆動システムの定格電圧に関する情報を含む。
【0018】
この発明の他の局面に従うと、モータ駆動システムは、第1のモータの駆動を制御する、請求項1から7のいずれかに記載の第1のモータ駆動制御装置と、第2のモータの駆動を制御する、請求項1から7のいずれかに記載の第2のモータ駆動制御装置と、第1のモータ駆動制御装置と第2のモータ駆動制御装置とに接続された制御装置と、第1のモータ駆動制御装置に第1の設定用電圧を出力する第1電圧出力部と、第2のモータ駆動制御装置に第1の設定用電圧とは大きさが異なる第2の設定用電圧を出力する第2電圧出力部とを備え、制御装置は、第1のモータ駆動制御装置と第2のモータ駆動制御装置とに指示情報を出力するとともに、第1のモータ駆動制御装置と第2のモータ駆動制御装置とに設定基準情報を出力する。
【0019】
好ましくは、第1電圧出力部と第2電圧出力部とのそれぞれは、互いに異なる分圧比で所定の電圧源の電圧を分圧する分圧回路である。
【0020】
好ましくは、所定の電圧源の電圧は、複数のモータ駆動制御装置に供給される電源電圧であり、第1の設定用電圧と第2の設定用電圧は定電圧である。
【0021】
好ましくは、第1電圧出力部と第2電圧出力部とは、制御装置に設けられている。
【0022】
この発明のさらに他の局面に従うと、モータ駆動制御装置の制御方法は、制御装置とともにモータ駆動システムを構成し、制御装置から送信された自身に対応する指示情報に応じてモータの駆動を制御するモータ駆動制御装置の制御方法であって、外部から入力された、自身に対する識別情報の割当に関する設定基準情報とを取得する第1取得ステップと、外部から入力された設定用電圧の大きさと、設定基準情報とに基づいて、自身の前記識別情報を設定する設定ステップと、設定ステップにより設定した識別情報に基づいて指示情報を取得する第2取得ステップとを備える。
【0023】
この発明のさらに他の局面に従うと、モータ駆動制御装置の制御プログラムは、制御装置とともにモータ駆動システムを構成し、制御装置から送信された自身に対応する指示情報に応じてモータの駆動を制御するモータ駆動制御装置の制御プログラムであって、外部から入力された、自身に対する識別情報の割当に関する設定基準情報とを取得する第1取得ステップと、外部から入力された設定用電圧の大きさと、設定基準情報とに基づいて、自身の前記識別情報を設定する設定ステップと、設定ステップにより設定した識別情報に基づいて指示情報を取得する第2取得ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0024】
これらの発明に従うと、モータ駆動システムの構築及びメンテナンスを容易にすることができるモータ駆動制御装置、モータ駆動システム、モータ駆動制御装置の制御方法、及びモータ駆動制御装置の制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動システムの構成を示す図である。
【
図2】モータ駆動システムに用いられるそれぞれのファンモータの構成を示す図である。
【
図3】制御装置とモータ駆動制御装置との通信シーケンスの一例について説明する図である。
【
図4】アドレス決定処理を示すフローチャートである。
【
図5】設定基準情報と電圧分解能との関係の第1の例を示す図である。
【
図6】第1の例における識別情報と電圧範囲との関係を示す表である。
【
図7】設定基準情報と電圧分解能Vrとの関係の第2の例を示す図である。
【
図8】第2の例における識別情報と電圧範囲との関係を示す表である。
【
図9】設定基準情報と電圧分解能との関係の第3の例を示す図である。
【
図10】本実施の形態の一変形例におけるモータ駆動システムの構成を示す図である。
【
図11】本実施の形態の一変形例におけるそれぞれのファンモータの構成を示す図である。
【
図12】本変形例における制御装置とモータ駆動制御装置との通信について説明する図である。
【
図13】本変形例におけるアドレス決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態におけるモータ駆動システムの構成について説明する。
【0027】
[実施の形態]
【0028】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動システム1の構成を示す図である。
【0029】
モータ駆動システム1は、例えば、複数のファンモータ10の動作を1つの制御装置で制御して、複数の冷却対象のそれぞれに対して送風するものである。各ファンモータ10は、モータ20(
図2に示す)と、モータ20の駆動を制御するモータ駆動制御装置50(
図2に示す)とを有している。
【0030】
以下に説明するように、モータ駆動システム1は、少なくとも、第1のモータ20a(不図示)と第1のモータ20aの駆動を制御する第1のモータ駆動制御装置50a(不図示)とを有する第1ファン10aと、第2のモータ20b(不図示)と第2のモータ20bの駆動を制御する第2のモータ駆動制御装置50b(不図示)を有する第2ファン10bと、第1のモータ駆動制御装置50aと第2のモータ駆動制御装置50bとに接続された制御装置2と、第1のモータ駆動制御装置50aに第1の設定用電圧V1を出力する第1分圧部(第1電圧出力部の一例)6aと、第2のモータ駆動制御装置50bに第1の設定用電圧V1とは大きさが異なる第2の設定用電圧V2を出力する第2分圧部(第2電圧出力部の一例)6bとを備えている。第1分圧部6aと第2分圧部6bとのそれぞれは、互いに異なる分圧比で所定の電圧源の電圧を分圧する分圧回路である。本実施の形態において、所定の電圧源の電圧は、複数のファンモータ10すなわち複数のモータ駆動制御装置50(総称符号)に供給される電源電圧Vccである。
【0031】
制御装置2は、後述のように、第1のモータ駆動制御装置50aと第2のモータ駆動制御装置50bとに指示情報を出力する。また、制御装置2は、第1のモータ駆動制御装置50aと第2のモータ駆動制御装置50bとに設定基準情報を出力する。詳細は後述するが、設定基準情報は、識別情報の割当に関する情報である。
【0032】
図1に示されるように、本実施の形態においては、モータ駆動システム1は、1つの制御装置2と、4つのファンモータ10(第1ファン10a、第2ファン10b、第3ファン10c、及び第4ファン10d)とを有している。第1ファン10aは、冷却対象Aに対して送風するファンモータである。第2ファン10bは、冷却対象Bに対して送風するファンモータである。第3ファン10cは、冷却対象Cに対して送風するファンモータである。第4ファン10dは、冷却対象Dに対して送風するファンモータである。なお、4つのファンモータ10のうち複数のファンモータが、同一の冷却対象に対して送風するように構成されていてもよい。
【0033】
モータ駆動システム1において、制御装置2とそれぞれのファンモータ10とは、高圧側電源ライン3aと、グランド(接地電圧;基準電圧)GNDとなる低圧側電源ライン3bとで接続されている。各ファンモータ10は、高圧側電源ライン3aと低圧側電源ライン3bとを通して印加される電源電圧Vccによって動作可能になっている。
【0034】
また、制御装置2とそれぞれのファンモータ10とは、通信ライン4で接続されている。通信ライン4を通して、制御装置2とそれぞれのファンモータ10とは、通信可能に接続されている。本実施の形態において、制御装置2とそれぞれのファンモータ10とは、双方向シリアル通信を行うことができるように構成されているが、制御装置2とファンモータ10との通信方式はこれに限られるものではなく、制御装置2からファンモータ10に対する単方向通信を行うものであってもよい。
【0035】
本実施の形態において、モータ駆動システム1は、複数の分圧部(第1電圧出力部の一例、第2電圧出力部の一例)6を有している。本実施の形態では、4つの分圧部6(第1分圧部6a、第2分圧部6b、第3分圧部6c、及び第4分圧部6d)が設けられている。
【0036】
複数の分圧部6のそれぞれは、互いに異なる分圧比で所定の電圧源の電圧を分圧する分圧回路である。本実施の形態では、それぞれの分圧部6は、高圧側電源ライン3aと低圧側電源ライン3bとの間に配置されており、それぞれの分圧回路によって異なる分圧比で、電源電圧Vccを分圧する。分圧部6により分圧された電圧は、設定用電圧Vidとして、その分圧部6に対応するファンモータ10に入力される。
【0037】
本実施の形態においては、以下のように4つの分圧部6が4つのファンモータ10に対応付けられて設けられている。すなわち、第1分圧部6aは、第1ファン10aに対応して設けられている。第1分圧部6aからの設定用電圧V1は、第1ファン10aに入力される。第2分圧部6bは、第2ファン10bに対応して設けられている。第2分圧部6bからの設定用電圧V2は、第2ファン10bに入力される。第3分圧部6cは、第3ファン10cに対応して設けられている。第3分圧部6cからの設定用電圧V3は、第3ファン10cに入力される。第4分圧部6dは、第4ファン10dに対応して設けられている。第4分圧部6dからの設定用電圧V4は、第4ファン10dに入力される。
【0038】
設定用電圧Vid(4つの分圧部6により分圧された設定用電圧V1,V2,V3,V4)は、電源電圧Vccを分圧部6によりそれぞれの分圧比で分圧された電圧であるので、定電圧である。それぞれの分圧部6の分圧比は互いに異なるので、設定用電圧V1,V2,V3,V4は、互いに異なる大きさの電圧である。
【0039】
図2は、モータ駆動システム1に用いられるそれぞれのファンモータ10の構成を示す図である。
【0040】
図2に示されるように、ファンモータ10は、インペラを回転させるモータ20と、モータ20の駆動を制御するモータ駆動制御装置50とを有している。モータ駆動制御装置50は、制御装置2とともにモータ駆動システム1を構成し、制御装置2から送信された指示情報に応じてモータ20の駆動を制御する。
【0041】
具体的には、モータ駆動制御装置50は、モータ20に駆動信号を出力して、モータ20の駆動を制御する。モータ駆動制御装置50は、モータ20の電機子コイルに周期的に駆動電流を流すことで、モータ20を回転させる。本実施の形態において、モータ20は、例えば3相のブラシレスモータであるが、これに限られるものではない。モータ駆動制御装置50は、例えばホールICなど、モータ20のロータの位置を検出する位置検出器(図示せず)と共に用いられるが、これに限られるものではない。
【0042】
本実施の形態においては、モータ駆動制御装置50は、モータ駆動部12と、制御回路部13と、複数の端子を有している。複数の端子としては、例えば、高圧側電源ライン3aに接続されて電源電圧Vccが印加される電源端子VDDと、低圧側電源ライン3bに接続されるグランド端子GNDと、通信端子SCと、設定用電圧Vidが入力される設定用端子VIDとが設けられている。なお、
図2に示されているモータ駆動制御装置50の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置50は、
図2に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
【0043】
モータ駆動部12は、インバータ回路12a及びプリドライブ回路12bを有する。モータ駆動部12は、制御回路部13から出力される駆動制御信号に基づいて、モータ20に駆動信号を出力し、モータ20を駆動させる。
【0044】
プリドライブ回路12bは、制御回路部13から出力される駆動制御信号に基づいて、インバータ回路12aを駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路12aに出力する。インバータ回路12aは、プリドライブ回路12bから出力された出力信号に基づいてモータ20に駆動信号を出力し、モータ20が備える3相の電機子コイルに通電する。インバータ回路12aは、例えば、直流電源の両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対が、電機子コイルの各相に対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点に、モータ20の各相の端子が接続されている。プリドライブ回路12bは、出力信号として、インバータ回路12aの各スイッチ素子に対応する6種類の信号を出力する。これらの出力信号が出力されることで、それぞれの出力信号に対応するスイッチ素子がオン、オフ動作を行い、モータ20に駆動信号が出力されてモータ20の各相に電力が供給される。
【0045】
制御回路部13は、例えば、マイクロコンピュータやデジタル回路等で構成されている。制御回路部13は、複数の端子(電源端子VDD、グランド端子GND、設定用端子VID、及び通信端子SC)に接続されている。制御回路部13は、電圧監視部31と、ID決定部(設定部の一例)32と、通信処理部(第1取得部、第2取得部の一例)33と、記憶部34と、モータ制御部35とを有している。制御回路部13は、位置検出器から入力された位置信号に基づいて、モータ駆動部12に駆動制御信号を出力してモータ駆動部12の動作を制御する。
【0046】
電圧監視部31は、電源端子VDDを通してモータ駆動制御装置50に入力された電源電圧Vccと、設定用端子VIDを通してモータ駆動制御装置50に入力された設定用電圧Vidとを監視する。電圧監視部31は、電源電圧Vccの大きさに関する電源電圧情報を取得し、ID決定部32に出力する。また、電圧監視部31は、設定用電圧Vidの大きさに関する設定用電圧情報を取得し、ID決定部32に出力する。なお、以下の説明において、便宜上、制御回路部13内で用いられる電源電圧情報を単に電源電圧Vccと呼び、設定用電圧情報を単に設定用電圧Vidと呼ぶことがある。
【0047】
ID決定部32には、電圧監視部31から出力された電源電圧情報(電源電圧Vcc)と設定用電圧情報(設定用電圧Vid)とが入力される。また、後述するように、通信処理部33により受信された設定基準情報がID決定部32に入力される。ID決定部32は、設定部として機能し、後述のようにアドレス決定処理を行い、モータ駆動制御装置50の識別情報(ID情報、アドレスと呼ぶこともある)を決定する。決定した識別情報は通信処理部33に送られ、通信処理部33又は記憶部34に記憶される。これにより、モータ駆動制御装置50の識別情報が設定される。
【0048】
通信処理部33は、通信端子SCに接続されており、モータ駆動制御装置50と制御装置2との間で行う通信に関する制御を行う。通信端子SCは、通信ライン4に接続されている。通信端子SCは、制御装置2から送信された指示情報や、制御装置2から送信された設定基準情報が入力される端子である。また、通信端子SCは、モータ駆動制御装置50から制御装置2に対して応答情報が出力される端子である。通信処理部33は、第1取得部として、制御装置2から送信される、自身に対する識別情報の割当に関する設定基準情報を取得し、ID決定部32に出力する。また、ID決定部32によって自身の識別情報が設定された後には、通信処理部33は、制御装置2から自身宛の指示情報が送信されたとき、第2取得部として、その指示情報を取得し、モータ制御部35に出力する。
【0049】
指示情報は、モータ20の駆動に関する情報と、その情報に基づく制御動作を実行させる対象となるモータ駆動制御装置50を指定する指定情報とを含む。モータ20の駆動に関する情報は、例えば、モータ20の目標回転数に対応する回転数指令情報など、モータ20の回転速度を制御するために用いられる情報などである。また、モータ20を駆動させたり停止させたりすることを指示する情報などである。指定情報は、例えば、制御動作を実行させる対象となるモータ駆動制御装置50の識別情報を特定する情報である。
【0050】
本実施の形態において、通信処理部33は、ID決定部32により決定/設定された識別情報を個々のモータ駆動制御装置50自身の識別情報として認識し、制御装置2との通信を制御する。例えば、後述のように、自身を制御動作の実行対象として指定する指定情報が含まれる指示情報(自身宛の指示情報ということがある)が制御装置2から出力されたとき、通信処理部33は、第2取得部として、ID決定部32により設定された自身の識別情報に基づいてその指示情報を取得し、モータ20の駆動に関する情報をモータ制御部35に送る。
【0051】
記憶部34は、例えば、ROM(リードオンリーメモリ)やRAM(ランダムアクセスメモリ)等を用いて構成されている。記憶部34には、制御回路部13がモータ駆動制御装置50の動作状態を自己診断することにより生成された自己診断情報や、モータ20の制御動作に関する情報や、予め設定されモータ20の制御動作に用いられる動作パラメータ(例えば、進角値等)等が記憶されている。記憶部34には、ID決定部32により決定された識別情報等が記憶されていてもよい。記憶部34には、制御回路部13で実行される制御プログラム等が記憶されていてもよい。
【0052】
制御回路部13は、記憶部34に記憶されている情報に基づいて、種々の動作を行うことができる。例えば、記憶部34に動作パラメータとして進角値が記憶されているとき、モータ制御部35は、その進角値に基づいて駆動制御信号を出力することができる。これにより、モータ20のコイルへの通電タイミングの調整を行うことができる。
【0053】
モータ制御部35は、通信処理部33で取得された自身宛の指示情報と、モータ20の回転位置に関する情報(例えば、位置検出器により得られた位置信号など)と、記憶部34に記憶されている情報とに基づいて、モータ駆動部12に駆動制御信号を出力する。駆動制御信号は、例えば、モータ20を回転させるトルクに対応するデューティ比のPWM信号である。例えば、モータ制御部35は、位置情報に基づいて判別されるモータ20の実回転数が目標回転数に一致するようにデューティ比を調整した駆動制御信号を出力する。駆動制御信号は、モータ20の各相についてモータ20の回転位置に対応する適切なタイミングで出力される。
【0054】
なお、本実施の形態において、モータ駆動制御装置50は、1つの集積回路としてパッケージ化されている。すなわち、モータ駆動部12と、制御回路部13とは、1つの集積回路である。集積回路は、電源端子VDD、通信端子SC、グランド端子GND等の複数の端子を備えている。なお、例えば、制御回路部13のみなど、モータ駆動制御装置50の一部が、1つの集積回路としてパッケージ化されていてもよい。また、他の装置と一緒に、モータ駆動制御装置50の全部又は一部がパッケージ化されて1つの集積回路が構成されていてもよい。
【0055】
図3は、制御装置2とモータ駆動制御装置50との通信シーケンスの一例について説明する図である。
【0056】
本実施の形態において、モータ駆動制御装置50の制御回路部13は、モータ駆動制御装置の外部から入力された、自身に対する識別情報の割当に関する設定基準情報を取得し、外部から入力された設定用電圧Vidの大きさに関する設定用電圧情報と、設定基準情報とに基づいて、個々のモータ駆動制御装置50自身の識別情報を設定する。そして、設定した自身の識別情報に基づいて指示情報を取得する。
【0057】
ここで、制御回路部13は、制御装置2から送信された指示情報に、設定した自身の識別情報に対応する指定情報が含まれるとき、指示情報に応じてモータ20の駆動を制御する。また、制御回路部13は、制御装置2から送信された指示情報に、設定した識別情報に対応する指定情報が含まれるとき、通信処理部33から制御装置2に対して応答情報を出力する。他方、制御回路部13は、制御装置2から送信された指示情報に、設定した自身の識別情報に対応する指定情報が含まれないとき、指示情報に応じたモータ20の駆動の制御動作を行わない。
【0058】
本実施の形態において、設定基準情報は、モータ駆動システム1で使用可能なモータ駆動制御装置50の数に関する台数情報を含む。具体的には、本実施の形態において、台数情報は、同時に制御装置2に接続して用いることができるファンモータ10の最大数(最大接続台数)である。
【0059】
また、本実施の形態において、設定基準情報は、モータ駆動システム1の定格電圧に関する情報(以下、単に定格電圧ということがある)を含む。例えば、定格電圧が12ボルトであるとき、設定基準情報にその旨の情報が含まれる。なお、定格電圧は12ボルトに限られず、他の値であってもよい。
【0060】
モータ駆動システム1において、例えば電源が投入されたときなどには、まず、個々のモータ駆動制御装置50自身の識別情報を設定するための動作が、制御装置2と各モータ駆動制御装置50との間で行われる。そして、各モータ駆動制御装置50自身の識別情報が設定されると、制御装置2から出力された指示情報に基づいて各モータ駆動制御装置50による制御が行われる。
【0061】
すなわち、
図3に示されるように、ステップS11において、まず、制御装置2から個々のモータ駆動制御装置50に対して、設定基準情報が出力される。ここで、設定基準情報としては、台数情報(最大接続台数)と、定格電圧についての情報とが含まれる。
【0062】
このように制御装置2から設定基準情報が出力されると、モータ駆動制御装置50の通信処理部33が、第1取得部として機能し、設定基準情報を受信する(取得する)。このとき、通信処理部33は、制御装置2に対して情報を出力しない(応答しない)。
【0063】
ステップS12において、ID決定部32は、アドレス決定処理を行う。
【0064】
ステップS13において、ID決定部32は、設定部として機能し、アドレス決定処理で決定したアドレス(識別情報)を自身の識別情報として設定する。ここでは、「1」が設定されたものとして以下の説明を行う。
【0065】
その後、ステップS15において、アドレス「1」に対する指示情報が送信された場合を想定する。ここでは、指示情報として、回転数取得要求が送られた場合を想定する。このような指示情報は、アドレス「1」を指定情報として、回転数取得要求をモータ20の制御に関する情報として含むものである。
【0066】
このような、自身の識別情報に対応する指定情報が含まれる自身宛の指示情報が送信されると、通信処理部33は、その指示情報を自身宛のものとして取得し、指示情報に応じた処理を行う。
【0067】
すなわち、ステップS16において、モータ駆動制御装置50は、制御装置2に対して、応答情報を送信する。ここでは、通信処理部33が回転数取得要求が含まれる指示情報を取得したので、それに対して、現在のモータ20の回転数が応答情報として送信される。なお、応答情報としては、単に通信処理部33が指示情報を取得した旨や、指示情報に基づくモータ20の制御動作を行った旨などが送信されていてもよい。また、応答情報には、モータ駆動制御装置50の識別情報が含まれるようにしてもよく、これにより、制御装置2は、どのモータ駆動制御装置50から応答情報が送信されたかを判別することができるようになる。
【0068】
他方、ステップS17において、アドレス「2」に対する指示情報が送信された場合を想定する。ここでは、指示情報としては、回転数取得要求が送られた場合を想定する。
【0069】
このような、自身の識別情報に対応しない指定情報が含まれる指示情報(他者宛の指示情報)が送信されると、通信処理部33は、その指示情報の取得を行わない。そのため、アドレス「1」が設定されたモータ駆動制御装置50は、この指示情報に基づく動作を行わない。
【0070】
なお、この場合において、モータ駆動システム1でほかにアドレス「2」が設定されたモータ駆動制御装置50があれば、そのモータ駆動制御装置50で指示情報が取得され、指示情報に基づく動作が行われることになる。
【0071】
図4は、アドレス決定処理を示すフローチャートである。
【0072】
本実施の形態において、個々のモータ駆動制御装置50自身の識別情報の決定は、以下のようにして行われる。ID決定部32は、通信処理部33にて取得した設定基準情報に基づいて定まる複数の電圧範囲のうち設定用電圧Vidが含まれる電圧範囲に対応する識別情報を、モータ駆動制御装置50自身の識別情報として決定する。
【0073】
図4に示されるように、ステップS21において、ID決定部32は、電源電圧情報を読み込む。すなわち、ID決定部32は、電圧監視部31の監視結果に基づいて、電源電圧Vccを読み込む。
【0074】
ステップS22において、ID決定部32は、電圧分解能Vrを算出する。電圧分解能Vrは、電源電圧Vccと、通信処理部33が第1取得部として取得した設定基準情報とに基づいて算出される。すなわち、電圧分解能Vrは、電源電圧Vccと、定格電圧(電源電圧Vccの基準値)と、台数情報とに基づいて算出される。
【0075】
ステップS23において、ID決定部32は、電圧監視部31が取得した設定用電圧情報を読み込む。すなわち、ID決定部32は、電圧監視部31の監視結果に基づいて、モータ駆動制御装置50に入力された設定用電圧Vid(すなわち、分圧部6により分圧された電圧)を読み込む。
【0076】
ステップS24以降において、ID決定部32は、電圧分解能Vrに基づいて定まる複数の電圧範囲のうち、設定用電圧Vidが属する電圧範囲を特定し、その電圧範囲に対応するアドレスを、個々のモータ駆動制御装置50自身の識別情報として決定する。
【0077】
図5は、設定基準情報と電圧分解能Vrとの関係の第1の例を示す図である。
図6は、第1の例における識別情報と電圧範囲との関係を示す表である。
【0078】
図5において、接続個数(台数情報)と、モータ駆動システム1の定格電圧と、電圧範囲の最小の基準電圧Vmin(最小電圧Vmin)と、電圧範囲の最大の基準電圧Vmax(最大電圧Vmax)と、電圧分解能Vrとが示されている。ここでは、接続個数が4であり、定格電圧が12ボルトであるという情報が、制御装置2から送信される設定基準情報に含まれる。最小電圧Vminと、最大電圧Vmaxとは、予め設定された値である。最小電圧Vminと、最大電圧Vmaxとは、例えば記憶部34に予め記憶されていてもよい。最大電圧Vmaxは、制御回路部13のハイ電圧(例えば、5ボルト)よりも若干低い電圧に設定されている。
【0079】
電圧分解能Vrは、最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの差を、台数情報(最大接続台数)から1を減じた数で除した値となる。ここでは、台数情報が4であり、最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの差が3ボルトであるため、電圧分解能Vrは1となる。
【0080】
図6に示されるように、台数情報の数である4つの電圧範囲及びその基準電圧が、最大電圧Vmaxと、最小電圧Vminと、電圧分解能Vrとに基づいて定められる。ここでは、アドレス「1」に対応する最も低い電圧範囲から、アドレス「4」に対応する最も高い電圧範囲が定められる。
【0081】
それぞれの電圧範囲は、基本的には、基準電圧よりも電圧分解能Vrの二分の一だけ低い電圧から、基準電圧よりも電圧分解能Vrの二分の一だけ高い電圧までの範囲となる。すなわち、電圧範囲の幅は、電圧分解能Vrの大きさだけある。なお、電圧範囲は、このように基準電圧を中央とするものに限られず、基準電圧を下限又は上限とする範囲であってもよい。なお、最も低い電圧範囲は、0ボルト以上の範囲であってもよい。また、最も高い電圧範囲の上限は設定されておらず、計測可能な最大値に設定されていてもよい。
【0082】
図6に示される例では、アドレス「1」に対応する電圧範囲は、最小電圧Vminである1ボルトを基準電圧として、プラスマイナス0.5ボルトの範囲である。換言すると、設定用電圧Vidの大きさがこの範囲であれば、アドレス「1」が設定される。なお、本例では、プラス側の値は別のアドレスの電圧範囲と重なるため、その値は含まないものとして処理する。
【0083】
同様に、アドレス「2」に対応する電圧範囲は、アドレス「1」の基準電圧である1ボルトよりも電圧分解能Vrだけ高い2ボルトを基準電圧として、プラスマイナス0.5ボルトの範囲である。アドレス「3」に対応する電圧範囲は、アドレス「2」の基準電圧である2ボルトよりも電圧分解能Vrだけ高い3ボルトを基準電圧として、プラスマイナス0.5ボルトの範囲である。アドレス「4」に対応する電圧範囲は、最大電圧Vmaxすなわちアドレス「3」の基準電圧である3ボルトよりも電圧分解能Vrだけ高い4ボルトを基準電圧として、基準電圧からマイナス0.5ボルトだけ低い電圧から、計測可能の最大値までの範囲である。
【0084】
なお、上述の各電圧範囲は、定格電圧12Vに対して、電源電圧Vccが12Vである場合のものである。定格電圧が12Vであるのに、電源電圧Vccが変動して異なる値となっている場合には、定格電圧に対する電源電圧Vccの変動割合に応じて、電圧範囲が異なるものとなる。
【0085】
すなわち、各電圧範囲は、電源電圧Vccを定格電圧で除した数を乗じて設定される。例えば、定格電圧が12Vであり、電源電圧Vccが6Vとなっていた場合を想定する。この場合には、各電圧範囲は、電源電圧Vccが定格電圧に一致しているときの電圧範囲に0.5を乗じた範囲となる(
図6においては、その場合の範囲の例が示されている)。
【0086】
このように定格電圧12Vと電源電圧Vccとの比に応じて電圧範囲が定まるので、電源電圧Vccが変動することにより、それを分圧して得られる設定用電圧Vidが変動しても、識別情報の決定には影響が生じない。
【0087】
図7は、設定基準情報と電圧分解能Vrとの関係の第2の例を示す図である。
図8は、第2の例における識別情報と電圧範囲との関係を示す表である。
【0088】
図7及び
図8に示される第2の例では、接続個数(台数情報)が8である点が第1の例とは異なっている。この場合、電圧分解能Vrは、0.428…ボルトとなる。そのため、
図8に示されるように、台数情報が4である場合よりも1つの電圧範囲の幅が狭くなる。なお、本例でも、プラス側の値は別のアドレスの電圧範囲と重なるため、その値は含まないものとして処理する。
【0089】
図9は、設定基準情報と電圧分解能Vrとの関係の第3の例を示す図である。
【0090】
図9においては、最大電圧Vmaxの値が3ボルトとなっている点で、第1の例とは相違する。例えば制御回路部13のハイ電圧が3.3ボルトである場合には、その範囲内で電圧範囲を複数設けることができるように、最大電圧Vmaxの値がハイ電圧よりも低く設定される。この場合、最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの差が2ボルトであり、台数情報が4であるため、電圧分解能Vrは、0.666…ボルトとなる。
【0091】
以上のように、複数の電圧範囲が電圧分解能Vrに基づいて定まるため、
図4のステップS24以降において、ID決定部32は、複数の電圧範囲のうち、設定用電圧Vidが属する電圧範囲を特定し、その電圧範囲に対応するアドレスを、個々のモータ駆動制御装置50自身の識別情報として決定する。
【0092】
すなわち、ステップS24において、ID決定部32は、変数nを1に設定する。変数nは、本実施の形態において、アドレスに対応する、電圧範囲の番号である。
【0093】
ステップS25において、ID決定部32は、電圧範囲nの基準電圧V_IDnを、「1」に設定する。ここで、基準電圧V_IDnは、最小の電圧範囲の基準電圧であり、本実施の形態においては最小電圧Vminに設定される。
【0094】
ステップS26において、ID決定部32は、定格電圧と電源電圧Vccとの比に応じて、基準電圧V_IDnと電圧分解能Vrとの補正処理を行う。補正処理は、設定基準情報として通知された定格電圧と、電源電圧Vccとに基づいて行われる。すなわち、補正後基準電圧VA_IDnは、基準電圧V_IDnに、電源電圧Vccを定格電圧で除した数を乗じて算出される。また、補正後分解能VrAは、電圧分解能Vrに、電源電圧Vccを定格電圧で除した数を乗じて算出される。
【0095】
ステップS27において、ID決定部32は、設定用電圧Vidがその電圧範囲内にあるか否かを判断する。すなわち、補正後基準電圧VA_IDnから補正後分解能VrAの二分の一を減じた電圧から、補正後基準電圧VA_IDnに補正後分解能VrAの二分の一を加えた電圧までの範囲に設定用電圧Vidが入っているか否かを判断する。範囲内でなければ、ステップS29に進む。範囲内であれば、ステップS31に進む。
【0096】
ステップS29では、ID決定部32は、変数nに1を加える。
【0097】
ステップS30において、ID決定部32は、次の電圧範囲nの基準電圧V_IDnを、前の電圧範囲の基準電圧V_ID(n-1)に電圧分解能Vrを加えた値とする。
【0098】
以後、ステップS26に戻り、ステップS27において、その電圧範囲に設定用電圧Vidが入っているか否かが判断される。
【0099】
ステップS31において、ID決定部32は、そのときの変数n(アドレス「n」)を、モータ駆動制御装置50の識別情報として決定する。識別情報が決定すると、識別情報がID決定部32から通信処理部33に送られ、個々のモータ駆動制御装置50自身の識別情報が設定される(
図3のステップS13)。
【0100】
以上説明したように、本実施の形態においては、各ファンモータ10には、制御装置2からの電源電圧Vccと、電源電圧Vccを分圧して生成されたファンモータ10毎に異なる値の設定用電圧Vidとが供給される。制御装置2は、通信ライン4を利用して、制御開始時などに、設定基準情報を各ファンモータ10に送信する。各ファンモータ10のモータ駆動制御装置50は、電源電圧Vcc、設定用電圧Vid、及び設定基準情報に基づいて、演算処理により、個々のモータ駆動制御装置50自身の識別情報を決定することができる。
【0101】
このように、識別情報は、モータ駆動制御装置50に外部から入力される設定用電圧Vidに基づいて自動的に設定される。したがって、各分圧部6の分圧比を調整するなどして設定用電圧Vidを設定することにより、簡素な構成で、互いに競合しない自身宛の識別情報を自動的に各モータ駆動制御装置50に設定することができる。そのため、各ファンモータ10に予め識別情報が付与されていないので、識別情報と配置位置等の関係を考慮することなく複数のファンモータ10をモータ駆動システム1に配置でき、モータ駆動システム1の構築及びメンテナンスを容易に行うことができる。
【0102】
決定される識別情報に対応する電圧範囲は、定格電圧と電源電圧Vccとの比に応じて補正される。したがって、電圧低下やノイズ等の影響によって電源電圧Vccが変動した場合であっても、適切な識別情報が決定される。
【0103】
本実施の形態においては、各ファンモータ10に入力される設定用電圧Vidは、共通の電源電圧Vccをそれぞれの分圧比で分圧することにより生成される。したがって、制御装置2の出力端子数を少なく抑えることができ、モータ駆動システム1の製造コストを低くすることができる。
【0104】
[変形例の説明]
【0105】
なお、各設定用電圧Vidは、制御装置からそのまま各モータ駆動制御装置に入力されるようにしてもよい。例えば、モータ駆動システムに、第1のモータ駆動制御装置と第2のモータ駆動制御装置とが含まれるとき、第1のモータ駆動制御装置に第1の設定用電圧を出力する第1電圧出力部と、第2のモータ駆動制御装置に第2の設定用電圧を出力する第2電圧出力部とは、制御装置の内部に設けられていてもよい。この場合、制御装置の内部に設けられた電圧源を、第1電圧出力部と第2電圧出力部とがそれぞれの分圧比で分圧した電圧が、第1の設定用電圧及び第2の設定用電圧として出力されるようにしてもよい。
【0106】
図10は、本実施の形態の一変形例におけるモータ駆動システム101の構成を示す図である。
図11は、本実施の形態の一変形例におけるそれぞれのファンモータ110の構成を示す図である。
【0107】
図10及び
図11を参照し、上述の実施の形態とは異なる点について以下に説明する。
【0108】
本変形例において、モータ駆動システム1は、制御装置102と、制御装置102に接続されたファンモータ110(第1ファン110aから第4ファン110d)とを有している。制御装置102の内部に、電圧源102aと、各ファンモータ110に対応する4つの分圧部6(第1分圧部6aから第4分圧部6d)が含まれている。電圧源102aは、定電圧であり、各分圧部6は、電圧源102aの電圧をそれぞれ異なる分圧比で分圧し、設定用電圧Vid(設定用電圧V1からV4)として対応するファンモータ110に出力する。
【0109】
各ファンモータ110のモータ駆動制御装置150は、電圧監視部131が設定用電圧Vidの監視を行い、電源電圧Vccの監視を行わない点が、上述の実施の形態とは異なっている。
【0110】
図12は、本変形例における制御装置102とモータ駆動制御装置150との通信について説明する図である。
【0111】
図12に示されるように、本変形例において、制御装置102とモータ駆動制御装置150との間の通信は、設定基準情報に関する部分(ステップS112)のみが上述の実施の形態とは異なっており、他の部分(ステップS112からステップS117)は上述の実施の形態と同様である。すなわち、本変形例では、設定基準情報として台数情報(最大接続台数)が送られるが、定格電圧に関する情報は送られない。
【0112】
図13は、本変形例におけるアドレス決定処理を示すフローチャートである。
【0113】
本変形例では、設定用電圧Vidは制御装置2から安定的に入力される。そのため、上述の実施の形態においては行われていた、電源電圧Vccの変動を考慮するための処理(すなわち、
図4におけるステップS21,ステップS26)は省略されており、その他のステップS122からS125,S127からS131は、
図4のステップS22からS25,S27からS31と同様に行われる。ただし、電圧範囲に関する補正処理は行われないため、ステップS127においては、基準電圧V_IDnと電圧分解能Vrとをそのまま用いて定まる電圧範囲に設定用電圧Vidが入るか否かが判断される。
【0114】
本変形例では、設定用電圧Vidが制御装置2から安定的に入力されるため、電源電圧Vccを考慮する必要がない。したがって、電源電圧Vccを監視する必要もない。そのため、制御回路部13の回路を簡素化できるとともに、アドレス決定処理における演算量を少なくすることができ、かつ、適切に識別情報を設定することができる。また、電源電圧Vccの仕様が変更されても、その影響が識別情報の設定に及ぶことがない。
【0115】
そのほか、本変形例においても、上述の実施の形態と同様に、モータ駆動システム1の構築及びメンテナンスを容易に行うことができるという効果を得ることができる。
【0116】
[その他]
【0117】
モータ駆動システムの回路構成は、上述の実施の形態やその変形例に示されるような具体例に限定されない。上述の実施の形態やその変形例における個々の構成を適宜組み合わせて本発明の目的に適合するように構成してもよい。ほかにも、本発明の目的に適合するように構成された、様々な回路構成が適用できる。
【0118】
制御回路部の構成は、上述のものに限られない。制御回路部において、第1取得部としての機能、設定部としての機能、第2取得部としての機能などが行われる、様々な回路構成が適用できる。
【0119】
上述の各種の電圧の値は、例示に過ぎず、それらに限定されるものではない。
【0120】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、3相のブラシレスモータに限られない。モータの種類は、他の種類であってもよい。モータの相数は、3相以外であってもよい。
【0121】
モータ駆動システムは、複数のファンモータを用いるものに限られず、複数のモータを制御する他の用途に用いられるものであってもよい。
【0122】
制御装置と各モータ駆動制御装置との間で行われる通信は、単方向のものであってもよいし、双方向に行われるものであってもよい。また、双方向の場合、1線式に限定されない。例えば、通信端子以外に通信用の端子を別に設け、送受信でラインを分ける2線式の通信を行うことができるようにしてもよい。
【0123】
電圧範囲の設定例は、上述のものに限られない。また、例えば、設定用電圧Vidが0ボルトやハイ電圧相当(例えば、5ボルトなど)であれば、それに基づいた識別情報の設定動作を行わず、従前に設定されていた識別情報が継続して設定された状態となるようにしてもよい。これにより、電源電圧Vccや分割回路などに異常が発生した場合でも、それによって識別情報が変更されることを防止することができ、異常発生の前後で複数のファンモータの識別情報の関係の一貫性を維持することができる。
【0124】
本実施形態では設定基準情報は制御装置から送信されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、制御装置とは別の装置から送信されるようにしてもよい。
【0125】
本実施形態では、接続される複数のモータのすべてに対して異なる識別情報を設定する例として説明したが、識別情報は、必ずしも、接続されるすべてのモータに対して異なるようにする必要はなく、同じ指示情報を受け取れるようにするために、グループ別あるいは一部のモータ群に対しては、同じ識別情報を設定するようにしてもよい。この場合、制御装置は、それらに対して、同じ設定電圧情報を送信するとともに、設定基準情報を区別する(例えば、グループや群に対しては、接続数を「1」とカウントするなど)ことで、個々の識別情報を設定することができる。
【0126】
上述のフローチャートなどは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではなく、例えば、各ステップの順番が変更されたり、各ステップ間に他の処理が挿入されたりしてもよいし、処理を並列化してもよい。
【0127】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウエアによって行われるようにしても、ハードウエア回路を用いて行われるようにしてもよい。例えば、制御回路部は、マイコンに限定されない。制御回路部の内部の構成は、少なくとも一部がソフトウエアで処理されるようにしてもよい。
【0128】
上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD-ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザに提供することにしてもよい。プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。上記のフローチャートで文章で説明された処理は、そのプログラムに従ってCPUなどにより実行される。
【0129】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0130】
1,101 モータ駆動システム、2,102 制御装置、3a 高圧側電源ライン、3b 低圧側電源ライン、4 通信ライン、6 分圧部(第1電圧出力部の一例、第2電圧出力部の一例)、6a~6d 第1~第4分圧部、10,110 ファンモータ、10a~10d 第1~第4ファン、110a~110d 第1~第4ファン、12 モータ駆動部、13 制御回路部、20 モータ、31,131 電圧監視部、32 ID決定部(設定部の一例)、33 通信処理部(第1取得部の一例、第2取得部の一例)、34 記憶部、35 モータ制御部、50,150モータ駆動制御装置、102a 電圧源、Vcc 電源電圧、Vid、V1~V4 設定用電圧、VDD 電源端子、VID 設定用端子、SC 通信端子、GND グランド端子