(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 303
B41J2/14 607
(21)【出願番号】P 2017246379
(22)【出願日】2017-12-22
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】下里 正志
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-010037(JP,A)
【文献】特開2016-043484(JP,A)
【文献】特開2012-025119(JP,A)
【文献】特開2000-168094(JP,A)
【文献】特開2010-030110(JP,A)
【文献】米国特許第05426455(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並ぶ複数の溝を有するベースと、
前記ベースの外面に対向配置されるフレーム片を有し、前記ベースとの間に共通室を構成するフレーム部材と、
複数の前記溝のうち1つおきに配される溝の開口を覆うとともに、他の溝を前記共通室に連通するカバーと、
前記ベースの前記複数の溝に対向配置されるノズルプレートと、を備え、
前記複数の溝は、個別電極を有する溝と、共通電極を有する溝と、を交互に有し、
前記個別電極から前記第1方向と交差する第2方向において一方側に延出する個別配線と、
前記共通電極から前記第2方向において他方側に延出する共通配線と、
前記第2方向の他方側で前記共通配線に接続されるとともに前記一方側に至る接続配線と、を備える、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
第1方向に並ぶ複数の第1の溝及び前記第1方向に並び前記複数の第1の溝の間にそれぞれ配される複数の第2の溝を有するベースと、
前記第2の溝に形成される個別電極を有し前記第1方向と交差する第2方向における一方側に延出される個別配線と、
前記第1の溝に形成される共通電極を有し前記第2方向における他方側に延出される共通配線と、
前記第2方向の他方側で前記共通配線に接続されるとともに前記一方側に至る接続配線と、
前記ベースの前記第1の溝及び前記第2の溝に対向配置されるとともに、ノズルを有する、ノズルプレートと、
を備え、
前記複数の第1の溝及び前記複数の第2の溝は、前記ベースの一端側の端面において、前記第2方向に沿ってそれぞれ形成され、
前記個別配線は前記端面から前記ベースの第2方向の一方の主面に至って形成され、
前記共通配線は前記端面から前記ベースの第2方向の他方の主面に至って形成され、
前記接続配線は、前記共通配線から、前記ベースの前記端面の前記第1の溝及び前記第2の溝を有する溝列の端部において前記第2方向に形成される第3の溝を通り、前記一方の主面に至って形成される
、液体吐出ヘッド。
【請求項3】
第1方向に並ぶ複数の第1の溝及び前記第1方向に並び前記複数の第1の溝の間にそれぞれ配される複数の第2の溝を有するベースと、
前記第2の溝に形成される個別電極を有し前記第1方向と交差する第2方向における一方側に延出される個別配線と、
前記第1の溝に形成される共通電極を有し前記第2方向における他方側に延出される共通配線と、
前記第2方向の他方側で前記共通配線に接続されるとともに前記一方側に至る接続配線と、
前記ベースの前記第1の溝及び前記第2の溝に対向配置されるとともに、ノズルを有する、ノズルプレートと、
を備え、
前記第1の溝及び前記第2の溝は、前記ベースの一端側の端面において前記第2方向に沿って形成され、
前記個別配線は前記端面から前記ベースの第2方向の一方の主面に至って形成され、
前記共通配線は前記端面から前記ベースの第2方向の他方の主面に至って形成され、
前記接続配線は、前記共通配線から前記ベースを前記第2方向に貫通するスルーホールを通って、前記一方の主面に至って形成される、液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1の溝及び前記第2の溝を有する溝列が前記ベース上に形成され、
前記個別配線は前記溝列の一方側の側方に延び、
前記共通配線は前記溝列の他方側の側方に延び、
前記接続配線は、前記溝列の他方の側方から、前記溝列の前記第1方向の端部を通って、前記他方の側方に至る、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
第1方向に並ぶ複数の第1の溝及び前記第1方向に並び前記複数の第1の溝の間にそれぞれ配される複数の第2の溝を有するベースと、
前記第2の溝に形成される個別電極を有し前記第1方向と交差する第2方向における一方側に延出される個別配線と、
前記第1の溝に形成される共通電極を有し前記第2方向における他方側に延出される共通配線と、
前記第2方向の他方側で前記共通配線に接続されるとともに前記一方側に至る接続配線と、
前記ベースの前記第1の溝及び前記第2の溝に対向配置されるとともに、ノズルを有する、ノズルプレートと、
前記ベースの外面に対向配置されるフレーム片を有し、前記ベースとの間に共通室を構成するフレーム部材と、
前記第2の溝の前記第2方向の端部の開口を覆うカバーと、
を備え、
前記第1の溝は、前記ノズルに連通するとともに前記共通室に連通する圧力室を構成し、
前記第2の溝は、前記圧力室に隣接するとともに前記カバーによって前記共通室から隔てられた空気室を構成す
る、
液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の液体吐出ヘッドと、
所定の搬送路に沿って媒体を搬送する搬送装置と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の圧力室を備えるシェアモードシェアードウォール方式の液体吐出ヘッドにおいて、ノズルに連通する複数の圧力室と、これらの圧力室間に配される空気室とを、所定の方向に交互に備える構成が知られている。このような液体吐出ヘッドにおいて、液体に電流が流れることによる不具合を防止するために、圧力室には接地させる共通電極をそれぞれ形成し、空気室には個別電極をそれぞれ形成し、これら共通電極及び個別電極を駆動回路に実装する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、配線を単純化できる液体吐出ヘッド、及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、第1方向に並ぶ複数の溝を有するベースと、前記ベースの外面に対向配置されるフレーム片を有し、前記ベースとの間に共通室を構成するフレーム部材と、複数の前記溝のうち1つおきに配される溝の開口を覆うとともに、他の溝を前記共通室に連通するカバーと、前記ベースの前記複数の溝に対向配置されるノズルプレートと、を備え、前記複数の溝は、個別電極を有する溝と、共通電極を有する溝と、を交互に有し、前記個別電極から前記第1方向と交差する第2方向において一方側に延出する個別配線と、前記共通電極から前記第2方向において他方側に延出する共通配線と、前記第2方向の他方側で前記共通配線に接続されるとともに前記一方側に至る接続配線と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図。
【
図2】同インクジェットヘッドの一部を破断して内部構造を示す斜視図。
【
図5】同インクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタの構成を示す説明図。
【
図6】同インクジェットヘッドの動作を示す説明図。
【
図7】同インクジェットヘッドの動作を示す説明図。
【
図8】他の実施形態にかかるインクジェットヘッドの説明図。
【
図9】他の実施形態にかかるインクジェットヘッドの説明図。
【
図10】他の実施形態にかかるインクジェットヘッドの説明図。
【
図11】他の実施形態にかかるインクジェットヘッドの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、第1実施形態に係る液体吐出ヘッドであるインクジェットヘッド1及び液体吐出装置であるインクジェットプリンタ100の構成について、
図1乃至
図7を参照して説明する。各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。図中矢印X、Y,Zは、互いに直交する3方向を示している。本実施形態において、インクジェットヘッド1の第1方向がX軸に、第2方向がY軸に、第3方向がZ軸に、それぞれ沿って配置された例を示す。
【0008】
図1はインクジェットヘッド1の斜視図であり、
図2はインクジェットヘッド1の一部を示す説明図である。
図3はベース10の一方の主面側からの側面図であり、
図4はベース10の他方の主面側からの側面図である。
【0009】
図1乃至
図4に示すインクジェットヘッド1は、いわゆるエンドシューター型のシェアモードシェアウォール方式のインクジェットヘッドである。
【0010】
インクジェットヘッド1は、ベース10と、複数のノズル21を有するノズルプレート20と、カバーであるカバープレート30と、ケース部材40と、を備える。
【0011】
ベース10は、基板12と、圧電部である積層圧電体13とを備える。
【0012】
基板12は、方形の板状に構成されている。基板12は、好ましくは、PZT、セラミックス、ガラス、快削性セラミックス、あるいはこれらを含む材料で、構成される。基板12の、ノズルプレート20側の端縁に、積層圧電体13が接続されている。
【0013】
積層圧電体13は、2枚の圧電部材が積層されて構成される。圧電部材は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系圧電セラミックス材料で構成されている。この他、圧電部材として、環境に配慮してKNN(ニオブ酸ナトリウムカリウム)等の無鉛系圧電セラミックスを使用してもよい。2枚の圧電部材は分極方向が逆向きになるように分極され、接着層を介して接着されている。
【0014】
積層圧電体13の、ノズルプレート20と対向する端面には、第1方向に並ぶ複数の溝14を有する溝列14Aが形成されている。複数の溝14は、ノズルプレート20側が開口するとともに所定深さを有する有底のスリットである。積層圧電体13のXZ面に沿う断面は櫛歯形状である。隣接する溝14の間に形成された支柱状の部分が、溝14の容積を変化させる駆動部となる積層圧電素子15を構成する。
【0015】
すなわち、ベース10の一端側に、複数の細長い積層圧電素子15が複数の溝14を介して第1方向に並んで配される。積層圧電素子15は、第1の圧電素子15a及び第2の圧電素子15bを積層して備え、第2の圧電素子15bが溝14の底部側で連続している。
【0016】
複数の溝14は、第1方向に並ぶ複数の第1の溝14aと、複数の第1の溝14aの間に配される複数の第2の溝14bと、溝列14Aの両端部に配される複数の第3の溝14cと、で構成される。複数の溝14a,14b,14cはそれぞれ、第1方向と直交する第2方向及び第3方向に沿って延び、互いに平行に形成されている。溝14a,14b,14cは、ベース10の第2方向の全長に亘って形成されている。
【0017】
第1の溝14aの内壁には、共通電極16aが形成されている。共通電極16aは、例えば第1の溝14aの底壁及び側壁に形成される金属膜である。共通電極16aは、ベース10の他方の主面10aに形成された共通パターン17aに接続されている。第1の溝14aは、第2方向の両端が、フレーム部材40aの内側にて開口し、共通室C3に連通する。また、第1の溝14aに対向する位置にはノズル21が設けられている。すなわち、第1の溝14aは、共通室C3に連通するとともにノズル21に連通する圧力室C1を構成する。
【0018】
第2の溝14bの内壁には一対の個別電極16bが形成されている。一対の個別電極16bはベース10の一方の主面10bに形成された個別パターン17bに接続されている。第2の溝14bは、第2方向の両端部がフレーム部材40a内においてカバープレート30によって覆われている。第2の溝14bは閉塞され、共通室C3及び圧力室C1から隔てられた空気室C2を構成する。
【0019】
第3の溝14cの内壁には接続電極16cが形成されている。接続電極16cは、ベース10の他方側の共通パターン17aと、ベース10の一方側の接続パターン17cとに、接続されている。
【0020】
ベース10の一対の主面10a,10bには、所定の配線パターン17(配線電極)が形成されている。配線パターン17は、共通パターン17aと、個別パターン17bと、接続パターン17cと、を備える。
【0021】
共通パターン17aは、ベース10の他方の主面10aに形成された金属膜であり、複数並列する共通電極16aと端部に配される接続電極16cとに接続される所定の配線パターンを有する。複数の共通電極16aと、共通パターン17aとによって、複数の第1の溝14aの内壁からベース10の他方の主面10aに至って形成される共通配線17dが構成される。
【0022】
複数の個別パターン17bは、ベース10の一方の主面10bに形成された金属膜であり、複数の個別電極16bにそれぞれ接続される、所定の配線パターンを有する。個別パターン17bは、他方の主面10a上においてフレーム部材40aの外側に延び、フレキシブル基板51を介して駆動回路52に接続される。個別パターン17bと、個別電極16bと、によって、複数の第2の溝14bの内壁からベース10の一方の主面10bに至って形成される個別配線17eが構成される。
【0023】
一対の接続パターン17cは、ベース10の一方の主面10bに形成された金属膜であり、一対の接続電極16cにそれぞれ接続される所定の配線パターンを有する。接続パターン17cは一方の主面10b上においてフレーム部材40aの外側に延び、接地される。接続パターン17cは、接続電極16cを介して他方の主面10aの共通パターン17aに接続され、接続電極16c及び接続パターン17cが、他方側から一方の主面10bに至る接続配線17fを構成する。
【0024】
共通電極16a、個別電極16b、接続電極16c、共通パターン17a、個別パターン17b、接続パターン17cは、例えば、真空蒸着法や無電解ニッケルメッキ法等の手法で形成され、エッチングやレーザ加工により所定形状にパターニングされている。
【0025】
ノズルプレート20は、厚さ10μm~100μm程度の方形の板状に構成される。ノズルプレート20には、厚さ方向に貫通する複数のノズル21を有するノズル列が形成されている。ノズルプレート20はベース10の一端側の溝列14Aの開口を覆うように対向配置されている。ノズル21は、複数の圧力室C1に対応する位置にそれぞれ設けられている。すなわち、ノズルプレート20は、第1の溝14aで構成される圧力室C1に連通するノズル21を有するとともに、第2の溝14b及び第3の溝14cの開口を塞ぐ。
【0026】
カバープレート30は、例えばセラミックスやガラス等の材料で構成される。カバープレート30は、複数の切欠部31を有する方形の板状部材である。カバープレート30は、第2の溝14bの端部の開口を含む所定の領域を覆う。切欠部31は、厚み方向に貫通して形成されている。切欠部31は第1の溝14a及び第3の溝14cの位置に対応しているため、第1の溝14aと第3の溝14cの第2方向の両端は、カバープレート30によって覆われずに、フレーム部材40aの内部にて開口している。したがって、第1の溝14aで構成される圧力室C1はカバープレート30の外側に形成される共通室C3に連通し、切欠部31を通じてインク等の液体が圧力室C1に流入する。一方、第2の溝14bの第2方向の両端の開口はカバープレート30によって塞がれ、インクの流入が防止される。
【0027】
すなわち、ベース10の一端側には、共通室C3に連通する圧力室C1と、閉塞された空気室C2とが、交互に構成されるとともに、溝列14Aの両端には接続電極16cが形成される第3の溝14cが配される。
【0028】
ケース部材40は、方形の枠状に構成されるフレーム部材40aと、フレーム部材40aの開口を塞ぐプレート状の蓋部材40bと、を一体に備える。フレーム部材40aはベース10の外周を囲み、ベース10の一部の領域の外周を覆う。具体的には、フレーム部材40aは、ベース10の第1方向の端面に接合されるプレート状の一対の第1フレーム片41と、ベース10の外面である両主面10a,10bに所定距離離間して配されるプレート状の一対の第2フレーム片42と、を備える。フレーム部材40aは、カバープレート30で覆われたベース10との間に、共通室C3を形成する。共通室C3は、カバープレート30の切欠部31を通じて圧力室C1に連通する。フレーム部材40aは、インクなどの液体を案内するガイド機能を果たす。フレーム部材40aの一方側の開口縁である端縁はノズルプレート20の外周に接合され、フレーム部材40aの他方側の開口縁である端縁に蓋部材40bが設けられている。
【0029】
蓋部材40bはフレーム部材40a蓋部材40bと一体に構成されている。蓋部材40bは、外部から共通室C3にインクを流入させる供給口、及び共通室C3から外部にインクを排出する排出口を有する矩形の板状部材である。供給口には供給流路133aが接続され、排出口には回収流路133bが接続されている。蓋部材40bは、フレーム部材40aの開口の一方側を塞ぎ、共通室C3を構成する。
【0030】
すなわち、ノズルプレート20とフレーム部材40aと蓋部材40bによって、ベース10のノズルプレート20側の部分であるアクチュエータ部分が覆われている。また、ベース10のうちノズルプレート20の反対側でフレーム部材40a及び蓋部材40bの外側に延びる部分の配線パターン17に駆動回路などの各種電子部品が実装される。
【0031】
以上のように構成されたインクジェットヘッド1のフレーム部材40aの内部には、ノズル21に連通する複数の圧力室C1と、カバープレート30で塞がれた複数の空気室C2と、複数の圧力室C1に連通する共通室C3と、が形成される。インクジェットヘッド1は、内部に形成される圧力室C1及び共通室C3を通る流路においてインクを循環させる。
【0032】
以下、インクジェットヘッド1を有するインクジェットプリンタ100について、
図5を参照して説明する。
図5はインクジェットプリンタ100の構成を示す説明図である。
図5に示すように、インクジェットプリンタ100は、筐体111と、媒体供給部112と、画像形成部113と、媒体排出部114と、搬送装置115と、制御部116と、を備える。
【0033】
インクジェットプリンタ100は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る所定の搬送路A1に沿って、吐出対象物である記録媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行う液体吐出装置である。
【0034】
媒体供給部112は複数の給紙カセット112aを備える。媒体排出部114は、排紙トレイ114aを備える。画像形成部113は、用紙を支持する支持部117と、支持部117の上方に対向配置された複数のヘッドユニット130と、を備える。
【0035】
支持部117は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト118と、搬送ベルト118を裏側から支持する支持プレート119と、搬送ベルト118の裏側に備えられた複数のベルトローラ120と、を備える。
【0036】
ヘッドユニット130は、複数のインクジェットヘッド1と、各インクジェットヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしての複数のインクタンク132と、インクジェットヘッド1とインクタンク132とを接続する接続流路133と、循環部である循環ポンプ134と、を備える。ヘッドユニット130は、液体を循環させる循環型のヘッドユニットである。
【0037】
本実施形態において、インクジェットヘッド1としてシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色のインクジェットヘッド1C,1M,1Y,1Kと、これらの各色のインクをそれぞれ収容するインクタンク132として、インクタンク132C,132M,132Y,132Kを備える。インクタンク132は接続流路133によってインクジェットヘッド1に接続される。接続流路133は、インクジェットヘッド1の供給口に接続される供給流路133aと、インクジェットヘッド1の排出口に接続される回収流路133bと、を備える。
【0038】
また、インクタンク132には、図示しないポンプなどの負圧制御装置が連結されている。そして、インクジェットヘッド1とインクタンク132との水頭値に対応して、負圧制御装置によりインクタンク132内を負圧制御することで、インクジェットヘッド1の各ノズルに供給されたインクを所定形状のメニスカスに形成させている。
【0039】
循環ポンプ134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。循環ポンプ134は、供給流路133aに設けられている。循環ポンプ134は、配線により制御部116の駆動回路に接続され、CPU(Central Processing Unit)116aの制御によって制御可能に構成されている。循環ポンプ134は、インクジェットヘッド1とインクタンク132を含む循環流路で液体を循環させる。
【0040】
搬送装置115は、媒体供給部112の給紙カセット112aから画像形成部113を通って媒体排出部114の排紙トレイ114aに至る搬送路A1に沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置115は、搬送路A1に沿って配置される複数のガイドプレート対121a~121hと、複数の搬送用ローラ122a~122hと、を備えている。
【0041】
制御部116は、コントローラであるCPU(中央制御装置)116aと、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)と、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
【0042】
インクジェットヘッド1及びインクジェットプリンタ100において、ノズル21から液体を吐出する駆動時には、制御部116は、駆動回路52により、複数の個別配線17eを介して駆動電圧を印加する。電圧の印加により駆動する圧力室C1内の電極と、両隣の空気室C2の電極に電位差を与えると、第1の圧電素子15aと第2の圧電素子15bは互いに逆向きに変形し、両圧電素子の変形により、駆動素子が屈曲変形する。例えば、
図6に示す様に、まず駆動する圧力室C1を開く方向に変形させ圧力室C1内を負圧にすることで、切欠部31からインクを圧力室C1内に導く。続いて、
図7に示す様に、圧力室C1を閉じる方向に変形させ、圧力室C1内を加圧することで、ノズル21からインク滴を吐出させる。
【0043】
本実施形態にかかるインクジェットヘッド1及びインクジェットプリンタ100は、交互に配される圧力室C1と空気室C2から、第2方向における一方側と他方側にそれぞれ個別パターン17bと共通パターン17aを引き出すことで、配線や実装を単純化できる。すなわち、個別パターン17bと共通パターン17aを反対側に導出し、他方側に導出された複数の共通パターン17aをまとめることで端子数を減らすことができ、配線ピッチを広げることができる。また、共通パターン17aに接続される接続パターン17cを個別パターン17bと同じ面に引き出すことで、実装性の高い構成とすることができる。また、インクが流入する圧力室C1に形成される共通配線17dを接地し、電圧が印加される個別配線17eは閉塞された空気室C2に形成したことにより、導電性の水性インクに電流が流れることによる吐出不良を防止できる。
【0044】
また、第1の溝14aや第2の溝14bを形成する溝形成工程で第3の溝14cを同じ端面に同時に形成することができ、個別電極16bや共通電極16aを形成する工程と同時に接続電極16cを形成することができ、さらに、共通パターン17aや個別パターン17bの形成工程おいて接続パターン17cを同時に形成できるため、製造が容易である。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0046】
上記実施形態においては、基板12の端縁部分に溝列14Aを有する積層圧電体13を配した例を示したが、これに限られるものではない。また、ノズル列の数も上記実施形態に限られるものではなく、2列以上備える構成としてもよい。
【0047】
例えば他の実施形態にかかるインクジェットヘッド201は、
図8に示すように、基板212上に積層圧電体213が形成されている。インクジェットヘッド201は、ベース210と、複数のノズル221を有するノズルプレート220と、フレーム部材240と、を備える。
【0048】
ベース210は、基板212と、基板212上に設けられた積層圧電体213と、を備える。積層圧電体213は、第1の溝214a及び第2の溝214bを備える2列の溝列214Aを有するとともに、第1方向に並ぶ複数の圧電素子部215を有している。
【0049】
基板212は、外部から共通室C3にインクを流入させる供給口218a、及び共通室C3から外部にインクを排出する排出口218bを有する矩形の板状部材である。ベース210にノズルプレート220が対向配置され、ベース210及びノズルプレート220の間にフレーム部材240が配置されることで、インクジェットヘッド201内に共通室C3が形成される。
【0050】
第1の溝214aは第2方向であるY方向の両端が開口し、共通室C3に連通する圧力室C1を構成している。第2の溝214bはY方向の両端部が塞がれ、空気室C2を構成する。第1の溝214aの内壁には共通電極が、第2の溝214bの内壁には個別電極が、それぞれ形成されている。
【0051】
本実施形態において、共通電極及び共通パターン217aを有する共通配線217dは、基板212上において第1の溝214aから他方側の側方に延出される。個別電極と個別パターン217bとで構成される個別配線217eは基板212上において第2の溝214bから一方側に延出される。また、接続パターン217cを有する接続配線217fは溝列214Aの他方側において共通配線217dに接続されるとともに、溝列214Aの一方側に引き出される。すなわち、共通電極は共通パターン217a及び接続パターン217cによって個別配線217eと同じ側に引き出される。その他の構成は第1実施形態に係るインクジェットヘッド1と同様である。例えばインクジェットヘッド201は
図5に示すインクジェットプリンタ100に設けられ、供給口218aは供給流路133aに接続され、排出口218bは回収流路133bに接続されている。
【0052】
本実施形態においても上記第1実施形態と同様に、溝列214Aの一方側に個別電極を、他方側に共通電極を延出することで、共通パターン217aをまとめて端子数を減らすことができるとともに配線ピッチを広げることができる。また、共通電極を共通パターン217a及び接続配線217fにより溝列214Aの端部を通して個別電極と同じ一方側に引き出すことで、実装が容易となる。また、インクが流入する圧力室C1には接地される共通電極を配し、閉塞された空気室C2には電圧が印加される個別電極を、形成することで、インクに電流が流れることによる不具合を防止できる。
【0053】
上記実施形態ではいわゆるエンドシューター型のインクジェットヘッド1を例示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として
図9に示すサイドシューター型のインクジェットヘッド301に適用してもよい。インクジェットヘッド301は、ノズル321を備えるノズルプレートが、Y方向の端部に配置されている。その他の構成は第1実施形態に係るインクジェットヘッド1と同様である。本実施形態においても上記第1実施形態と同様の効果を得られる。
【0054】
上記実施形態においては、溝列14Aの両端にそれぞれ2つずつ形成された第3の溝14cを通って接続配線17fを接続する構成を例示したが、これに限られるものではない。第3の溝14cは溝列14Aの一端側にのみ形成されていてもよいし、1つのみあるいは3つ以上形成されていてもよい。例えば、他の実施形態として
図10に示すインクジェットヘッド401は第3の溝14cが溝列14Aの一端側に、1つのみ設けられている。例えば溝の数や位置によって、接続配線17fの幅等の寸法を適宜調整する。本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、共通側の配線を一方側に引き出す構成も溝14cに限るものではなく、例えばスルーホールや貫通ビアを介して引き出される構成であってもよい。例えば他の実施形態として
図11に示すインクジェットヘッド501は、ベース10を第2方向に貫通するスルーホール514cを備える。インクジェットヘッド501はスルーホール514c内に接続電極16cが形成され、スルーホール514cを介して接続配線17fを他方側から一方側へ引き出す構成であり、その他の構成は第1実施形態に係るインクジェットヘッド1と同様である。本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0055】
また、上記実施形態においては、基板12に圧電部材からなる積層圧電体13を備えたベース10を例示したが、これに限るものではない。例えば基板を用いずに圧電部材のみでベース10を形成しても良い。また、2枚の圧電部材を用いずに、1枚の圧電部材としてもよい。
【0056】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(1)
第1方向に並ぶ複数の第1の溝及び前記第1方向に並び前記複数の第1の溝の間にそれぞれ配される複数の第2の溝を有するベースと、
前記第2の溝に形成される個別電極を有し前記第1方向と交差する第2方向における一方側に延出される個別配線と、
前記第1の溝に形成される共通電極を有し前記第2方向における他方側に延出される共通配線と、
前記第2方向の他方側で前記共通配線に接続されるとともに前記一方側に至る接続配線と、
前記ベースの前記第1の溝に連通するノズルを有する、ノズルプレートと、
を備える液体吐出ヘッド。
(2)
前記複数の第1の溝及び前記複数の第2の溝は、前記ベースの一端側の端面において、前記第2方向に沿ってそれぞれ形成され、
前記個別配線は前記端面から前記ベースの第2方向の一方の主面に至って形成され、 前記共通配線は前記端面から前記ベースの第2方向の他方の主面に至って形成され、 前記接続配線は、前記共通配線から、前記ベースの前記端面の前記第1の溝及び前記第2の溝を有する溝列の端部において前記第2方向に形成される第3の溝を通り、前記一方の主面に至って形成される、(1)に記載の液体吐出ヘッド。
(3)
前記第1の溝及び前記第2の溝は、前記ベースの一端側の端面において前記第2方向に沿って形成され、
前記個別配線は前記端面から前記ベースの第2方向の一方の主面に至って形成され、 前記共通配線は前記端面から前記ベースの第2方向の他方の主面に至って形成され、 前記接続配線は、前記共通配線から前記ベースを前記第2方向に貫通するスルーホールを通って、前記一方の主面に至って形成される、(1)に記載の液体吐出ヘッド。
(4)
前記第1の溝及び前記第2の溝を有する溝列が前記ベース上に形成され、
前記個別配線は前記溝列の一方側の側方に延び、
前記共通配線は前記溝列の他方側の側方に延び、
前記接続配線は、前記溝列の他方の側方から、前記溝列の前記第1方向の端部を通って、前記他方の側方に至る、(1)に記載の液体吐出ヘッド。
(5)
前記ベースの外面に対向配置されるフレーム片を有し、前記ベースとの間に共通室を構成するフレーム部材と、
前記第2の溝の前記第2方向の端部の開口を覆うカバーと、
を備え、
前記第1の溝は、前記ノズルに連通するとともに前記共通室に連通する圧力室を構成し、
前記第2の溝は、前記圧力室に隣接するとともに前記カバ-によって前記共通室から隔てられた空気室を構成する、
(1)乃至(4)のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
(6)
(1)乃至(5)のいずれかに記載の液体吐出ヘッドと、
所定の搬送路に沿って媒体を搬送する搬送装置と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【符号の説明】
【0057】
1…インクジェットプリンタ(液体吐出装置)、1(1C、1K、1M、1Y)…インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)、10…ベース、12…基板、13…積層圧電体、14…溝、14A…溝列、14a…第1の溝、14b…第2の溝、14c…第3の溝、15…積層圧電素子、16a…共通電極、16b…個別電極、16c…接続電極、17…配線パターン、17a…共通パターン、17b…個別パターン、17c…接続パターン、17d…共通配線、17e…個別配線、17f…接続配線、20…ノズルプレート、21…ノズル、30…カバープレート、31…切欠部、32…インクタンク、40…ケース部材、40a…フレーム部材、41…フレーム片、42…フレーム片、40b…蓋部材、51…フレキシブル基板、52…駆動回路、100…インクジェットプリンタ、111…筐体、112…媒体供給部、112a…給紙カセット、113…画像形成部、114…媒体排出部、114a…排紙トレイ、115…搬送装置、116…制御部、116a…CPU、117…支持部、118…搬送ベルト、119…支持プレート、120…ベルトローラ、121a~121h…ガイドプレート対、122a~122h…搬送用ローラ、130…ヘッドユニット、132(132K、132Y、132C、132M…インクタンク、133…接続流路、133a…供給流路、133b…回収流路、134…循環ポンプ、201…インクジェットヘッド、210…ベース、212…基板、213…積層圧電体、214A…溝列、214a…溝、214b…溝、215…圧電素子部、217a…共通パターン、217b…個別パターン、217c…接続パターン、217d…共通配線、217e…個別配線、217f…接続配線、218a…供給口、218b…排出口、220…ノズルプレート、221…ノズル、240…フレーム部材、301…インクジェットヘッド、321…ノズル、401…インクジェットヘッド、501…インクジェットヘッド、514c…スルーホール、A1…搬送路、C1…圧力室、C2…空気室、C3…共通室。