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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20220128BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20220128BHJP
   B08B 3/02 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
F25D11/00 101Z
F25D23/00 Z
B08B3/02 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017249236
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019113294
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】島本 佳明
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-026263(JP,A)
【文献】特開2017-087700(JP,A)
【文献】特開平04-314413(JP,A)
【文献】特開2017-070710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25D 17/04 ~ 17/08
F25D 23/00
B08B 3/00 ~ 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却モードにおいて冷却室(4)を冷却するための冷却器ユニット(5)と、洗浄モードにおいて冷却室(4)を洗浄するための洗浄構造とを備える冷却装置であって、
冷却器ユニット(5)は、冷却室(4)内に配置されるユニットケース(15)と、ユニットケース(15)に収容される冷却器(16)および循環ファン(17)とを備えており、
洗浄構造は、冷却室(4)の壁面に設置される少なくとも1個の洗浄器(23・24)と、冷却器ユニット(5)の内部に噴射口を有する少なくとも1個の洗浄器(25)と、各洗浄器(23~25)から噴射された洗浄水を回収する貯水タンク(26)と、貯水タンク(26)から各洗浄器(23~25)へ洗浄水を送給するための送給路(27)および送給ポンプ(28)とを備えており、
送給路(27)は、貯水タンク(26)から延びる1本の主経路(47)と、主経路(47)から分岐して各洗浄器(23~25)に接続される複数本の分岐路(48~50)と、各分岐路(48~50)を開閉する制御弁(51~54)とを備えており、
洗浄モードは、各洗浄器(23~25)から洗浄水を噴射する洗浄工程を含み、
洗浄工程において、制御弁(51~54)の切り換えにより各分岐路(48~50)が順次1本ずつ開放されて、各洗浄器(23~25)に対して洗浄水が順次送給され
開放中の分岐路(48~50)を閉鎖してから、次に別の分岐路(48~50)を開放するまでの間に、送給ポンプ(28)を停止する所定の待機時間(T0)が設定されており、
送給ポンプ(28)が停止されるのと同時に開放中の分岐路(48~50)が制御弁(51~54)で閉じられ、待機時間(T0)が経過して送給ポンプ(28)が駆動されるのと同時に別の分岐路(48~50)の制御弁(51~54)が開放されることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
冷却モードにおいて冷却室(4)を冷却するための冷却器ユニット(5)と、洗浄モードにおいて冷却室(4)を洗浄するための洗浄構造とを備える冷却装置であって、
冷却器ユニット(5)は、冷却室(4)内に配置されるユニットケース(15)と、ユニットケース(15)に収容される冷却器(16)および循環ファン(17)とを備えており、
洗浄構造は、冷却室(4)の壁面に設置される少なくとも1個の洗浄器(23・24)と、冷却器ユニット(5)の内部に噴射口を有する少なくとも1個の洗浄器(25)と、各洗浄器(23~25)から噴射された洗浄水を回収する貯水タンク(26)と、貯水タンク(26)から各洗浄器(23~25)へ洗浄水を送給するための送給路(27)および送給ポンプ(28)とを備えており、
送給路(27)は、貯水タンク(26)から延びる1本の主経路(47)と、主経路(47)から分岐して各洗浄器(23~25)に接続される複数本の分岐路(48~50)と、各分岐路(48~50)を開閉する制御弁(51~54)とを備えており、
洗浄モードは、各洗浄器(23~25)から洗浄水を噴射する洗浄工程を含み、
洗浄工程において、複数の洗浄器群が設定されており、
洗浄構造が備える洗浄器(23~25)をN個とするとき、各洗浄器群は(N-1)個以下の洗浄器(23~25)で構成されており、
制御弁(51~54)の切り換えにより各分岐路(48~50)が開閉されて、各洗浄器群に対して洗浄水が順次送給され、
開放中の分岐路(48~50)を閉鎖してから、次に別の分岐路(48~50)を開放するまでの間に、送給ポンプ(28)を停止する所定の待機時間(T0)が設定されており、
送給ポンプ(28)が停止されるのと同時に開放中の分岐路(48~50)が制御弁(51~54)で閉じられ、待機時間(T0)が経過して送給ポンプ(28)が駆動されるのと同時に別の分岐路(48~50)の制御弁(51~54)が開放されることを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
洗浄モードは、洗浄工程に次いで行われる少なくとも1回のすすぎ工程を含み、
すすぎ工程においても各洗浄器(23~25)または各洗浄器群に対して洗浄水が順次送給される請求項1または2に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却室を洗浄するための洗浄構造を備える冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却室に収容された加熱調理直後の食材に冷気を吹き付けて、食材を急速に冷却する冷却装置においては、食材の断片等が冷気で吹き飛ばされて、冷却室の壁面などに付着することがある。この断片等を除去するための洗浄構造を冷却装置に搭載することは、例えば本出願人が先に提案した特許文献1に開示されており公知である。そこでの洗浄構造は、冷却室内に洗浄水を噴射する複数個の洗浄器と、各洗浄器から噴射された洗浄水を回収する貯水タンクと、同タンクから各洗浄器へ洗浄水を送給するための送給路および送給ポンプなどで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-26263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の冷却装置のように、冷却室内に複数個の洗浄器を配置すると、冷却室を万遍なく洗浄することができる。しかし、全ての洗浄器から同時にかつ十分な水量の洗浄水を噴射させるには、多量の洗浄水と高出力の送給ポンプが必要である。送給ポンプの高出力化は、洗浄構造の大型化や高コスト化などの不利を招くものである。
【0005】
本発明の目的は、冷却室を万遍なく洗浄することができる従来の冷却装置の利点を損なうことなく、洗浄水の使用量の削減と、洗浄構造の小型化および低コスト化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る冷却装置は、冷却モードにおいて冷却室4を冷却するための冷却器ユニット5と、洗浄モードにおいて冷却室4を洗浄するための洗浄構造とを備える。冷却器ユニット5は、冷却室4内に配置されるユニットケース15と、ユニットケース15に収容される冷却器16および循環ファン17とを備える。洗浄構造は、冷却室4の壁面に設置される少なくとも1個の洗浄器23・24と、冷却器ユニット5の内部に噴射口を有する少なくとも1個の洗浄器25と、各洗浄器23~25から噴射された洗浄水を回収する貯水タンク26と、貯水タンク26から各洗浄器23~25へ洗浄水を送給するための送給路27および送給ポンプ28とを備える。送給路27は、貯水タンク26から延びる1本の主経路47と、主経路47から分岐して各洗浄器23~25に接続される複数本の分岐路48~50と、各分岐路48~50を開閉する制御弁51~54とを備える。洗浄モードは、各洗浄器23~25から洗浄水を噴射する洗浄工程を含み、洗浄工程において、制御弁51~54の切り換えにより各分岐路48~50が順次1本ずつ開放されて、各洗浄器23~25に対して洗浄水が順次送給される。開放中の分岐路48~50を閉鎖してから、次に別の分岐路48~50を開放するまでの間に、送給ポンプ28を停止する所定の待機時間T0が設定されており、送給ポンプ28が停止されるのと同時に開放中の分岐路48~50が制御弁51~54で閉じられ、待機時間T0が経過して送給ポンプ28が駆動されるのと同時に別の分岐路48~50の制御弁51~54が開放される
【0007】
別の本発明に係る冷却装置は、冷却モードにおいて冷却室4を冷却するための冷却器ユニット5と、洗浄モードにおいて冷却室4を洗浄するための洗浄構造とを備える。冷却器ユニット5は、冷却室4内に配置されるユニットケース15と、ユニットケース15に収容される冷却器16および循環ファン17とを備える。洗浄構造は、冷却室4の壁面に設置される少なくとも1個の洗浄器23・24と、冷却器ユニット5の内部に噴射口を有する少なくとも1個の洗浄器25と、各洗浄器23~25から噴射された洗浄水を回収する貯水タンク26と、貯水タンク26から各洗浄器23~25へ洗浄水を送給するための送給路27および送給ポンプ28とを備える。送給路27は、貯水タンク26から延びる1本の主経路47と、主経路47から分岐して各洗浄器23~25に接続される複数本の分岐路48~50と、各分岐路48~50を開閉する制御弁51~54とを備える。洗浄モードは、各洗浄器23~25から洗浄水を噴射する洗浄工程を含む。洗浄工程において、複数の洗浄器群が設定されており、洗浄構造が備える洗浄器23~25をN個とするとき、各洗浄器群はN-1個以下の洗浄器23~25で構成されている。制御弁51~54の切り換えにより各分岐路48~50が開閉されて、各洗浄器群に対して洗浄水が順次送給される。開放中の分岐路48~50を閉鎖してから、次に別の分岐路48~50を開放するまでの間に、送給ポンプ28を停止する所定の待機時間T0が設定されており、送給ポンプ28が停止されるのと同時に開放中の分岐路48~50が制御弁51~54で閉じられ、待機時間T0が経過して送給ポンプ28が駆動されるのと同時に別の分岐路48~50の制御弁51~54が開放される
【0009】
洗浄モードは、洗浄工程に次いで行われる少なくとも1回のすすぎ工程を含み、すすぎ工程においても各洗浄器23~25または各洗浄器群に対して洗浄水を順次送給することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る冷却装置の洗浄構造は、冷却室4の壁面に設置される少なくとも1個の洗浄器23・24と、冷却器ユニット5の内部に噴射口を有する少なくとも1個の洗浄器25とを備える。そのため、従来の冷却装置と同様に、冷却室4の壁面やユニットケース15の内外面、および、冷却器16と循環ファン17の表面など、冷却室4の全体を万遍なく洗浄することができる。
【0011】
そのうえで本発明では、各洗浄器23~25への洗浄水の送給路27が、貯水タンク26から延びる1本の主経路47と、主経路47から分岐して各洗浄器23~25に接続される複数本の分岐路48~50と、各分岐路48~50を開閉する制御弁51~54とを備えており、洗浄工程において、制御弁51~54の切り換えにより各分岐路48~50が順次1本ずつ開放されて、各洗浄器23~25に対して洗浄水が順次送給されるようにした。換言すれば、各洗浄器23~25から洗浄水が順番に噴射されるようにした。これによれば、全ての洗浄器から同時に洗浄水が噴射される従来の冷却装置に比べて、洗浄水の循環水量を少なくして、その使用量を削減することができる。さらに、洗浄水の循環水量の減少により、洗浄水を送給する送給ポンプ28の低出力化、すなわち洗浄構造の小型化と低コスト化を実現することができる。
【0012】
別の本発明では、洗浄工程において複数の洗浄器群を設定した。洗浄構造が備える洗浄器23~25をN個とするとき、各洗浄器群はN-1個以下の洗浄器23~25で構成される。そして、制御弁51~54の切り換えにより各分岐路48~50が開閉されて、各洗浄器群に対して洗浄水が順次送給されるようにした。つまり、N-1個以下の洗浄器23~25から洗浄水が順番に噴射されるようにした。これによっても、全ての洗浄器から同時に洗浄水が噴射される従来の冷却装置に比べて、洗浄水の循環水量を少なくして、その使用量を削減することができる。さらに、洗浄水の循環水量の減少により、洗浄水を送給する送給ポンプ28の低出力化、すなわち洗浄構造の小型化と低コスト化を実現することができる。
【0013】
本発明において、各洗浄器23~25から噴射された洗浄水は貯水タンク26に回収されるが、その際に、貯水タンク26へ洗浄水がスムーズに流れ込まず、貯水タンク26内の洗浄水が不足することがある。そこで本発明では、開放中の分岐路48~50を閉鎖してから、次に別の分岐路48~50を開放するまでの間に、送給ポンプ28を停止する所定の待機時間T0を設定した。つまり、洗浄工程において、洗浄水の噴射を一時的に停止する時間を設けた。これにより、洗浄水が貯水タンク26へ流れ込むのに十分な時間を確保して、同タンク26内の洗浄水が不足する問題を解決することができる。
【0014】
洗浄工程に次いで行われるすすぎ工程においても、各洗浄器23~25または各洗浄器群に対して洗浄水を順次送給すると、同工程における洗浄水の循環水量を少なくして、洗浄モードの全体での洗浄水の使用量をさらに削減することができる。すすぎ工程において、全ての洗浄器23~25に対して同時に洗浄水を送給することは一応可能であるが、その場合には、各洗浄器23~25に送給される洗浄水の水量や水圧が不足するおそれがある。そこで本発明では、各洗浄器23~25に対して洗浄水を順次送給することにより、その水量や水圧が不足しないようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る冷却装置の洗浄構造の概略構成を示す説明図である。
図2】扉を開放した冷却装置の正面図である。
図3】冷却装置の横断平面図である。
図4】洗浄工程における送給ポンプの駆動状態と各弁の開閉状態の推移を示すタイミングチャートである。
図5】洗浄水の送給路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例) 図1から図4に、本発明を冷却装置の一種である急速冷却庫(ブラストチラー)に適用した実施例を示す。本実施例における前後、左右、上下とは、図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2において急速冷却庫は、前面(正面)に開口を有する断熱箱1と、断熱箱1の開口を揺動開閉する扉2と、断熱箱1を支持するシャーシ3とを備える。断熱箱1と扉2で囲まれる冷却室4の左部には、同室4を冷却するための冷却器ユニット5が配置されており、その右側に食材(冷却対象)を載せたホテルパン(トレイ)の収容空間が形成されている。収容空間に装填されたホテルパンは、冷却器ユニット5の右外面と冷却室4の右壁面にそれぞれ設けられた左右一対のトレイ受け6で上下多段状に支持される。
【0017】
シャーシ3の内部には、上機械室7aと下機械室7bからなる機械室7が画成されている。上機械室7aの前面には操作パネル8が配置されており、その後方に急速冷却庫の全体を制御する制御装置9が収容されている(図1参照)。下機械室7bには、圧縮機と凝縮器などで構成される冷凍機器10が収容されている。断熱箱1の天面に設置される外箱11には、冷却室4の換気を行うための不図示の換気装置などが収容されている。
【0018】
冷却器ユニット5は、箱型のユニットケース15の内部に、冷却器16と上下一対の循環ファン17などを収容して構成される。冷却器16は、下機械室7b内の圧縮機と凝縮器に冷媒配管で接続されており、凝縮器から膨張部を介して低温低圧の冷媒液の供給を受けることで冷却される。図3に示すように冷却器16の一面には、霜が付着した場合にこれを融解除去するためのヒーター18が付設されている。循環ファン17は軸流ファンからなり、ユニットケース15の内部を右から左へ向かう空気流を形成する。ユニットケース15の右壁には、循環ファン17に臨む上下一対の吸込口19が形成されている。ユニットケース15の左面は開口されており、この開口が吹出口20を構成する。冷却室4の左壁面と吹出口20の間には、通風用の隙間が形成されている。
【0019】
ユーザーが操作パネル8を操作して、冷却モードの開始を指示すると、制御装置9は扉2が閉まっていることを条件に、冷凍機器10と循環ファン17を起動させる。循環ファン17の送風作用により、吸込口19からユニットケース15の内部に吸い込まれた空気は、冷却器16を通過することにより冷却されて、吹出口20から吹き出される。この冷気は前後に分かれ、冷却室4の前後の壁面に沿って右方へ流れ、冷却室4の右壁面に至ったところで反転し、ホテルパンを横切ってこれを冷却したのち、再度吸込口19に吸い込まれる。
【0020】
冷却モードを実行すると、食材の断片等が冷気で吹き飛ばされて、冷却室4の壁面や冷却器ユニット5などに付着することがある。この断片等を定期的に除去するために、本実施例に係る急速冷却庫には、冷却室4を洗浄する洗浄構造が搭載されている。図1において洗浄構造は、冷却室4の上壁面に設置された左右一対の回転式の洗浄ノズル(洗浄器)23・24と、冷却器ユニット5の内部に噴射口を有する洗浄パイプ(洗浄器)25と、洗浄水を貯留する貯水タンク26と、同タンク26から洗浄ノズル23・24と洗浄パイプ25へ洗浄水を送給するための送給路27および送給ポンプ28とを備えている。
【0021】
貯水タンク26は、送給ポンプ28と共に冷却室4の下側の上機械室7aに収容されている。貯水タンク26には水位センサー31が設けられており、また排水路32とオーバーフロー路33が接続されている。排水路32には排水弁34が配置されており、オーバーフロー路33は排水弁34よりも下流側で排水路32に合流している。貯水タンク26への洗浄水の供給は、冷却室4の上壁隅部に設けられた給水口35から、冷却室4の底壁に設けられた集水口36を介して行われる。給水口35は給水路37を介して水道管に接続されており、給水路37に配置された給水弁38を開くと、洗浄水としての水道水が、給水口35から集水口36を通じて貯水タンク26に流れ込む。この給水は、排水弁34を閉じた状態で行われ、水位センサー31が満水を検知するまで続けられる。万一、水位センサー31に検知異常が生じた場合でも、満水を超えた分の洗浄水はオーバーフロー路33を通じて排水されるため、貯水タンク26から洗浄水が溢れることはない。
【0022】
洗浄パイプ25は、冷却室4の上壁から下方へ伸びる1本の主管43と、主管43から分岐して後方へ伸びる4本の枝管44とで構成される。各枝管44は、ユニットケース15の内部の左右中央に配置されており(図3参照)、冷却器16と循環ファン17のそれぞれに臨む複数個の噴射口を備えている。各枝管44の噴射口から噴射される洗浄水は、主に冷却器16および循環ファン17の表面と、ユニットケース15の内面を洗浄する。一方、各洗浄ノズル23・24から噴射される洗浄水は、主に冷却室4の壁面とユニットケース15の外面を洗浄する。
【0023】
図1において洗浄水の送給路27は、貯水タンク26から延びる1本の主経路47と、主経路47から分岐する3本の分岐路48~50と、各分岐路48~50に配置される開閉弁(制御弁)51~53とで構成される。第1分岐路48が第1洗浄ノズル23に接続されており、第2分岐路49が第2洗浄ノズル24に接続されており、第3分岐路50が洗浄パイプ25に接続されている。
【0024】
ユーザーが操作パネル8を操作して、洗浄モードの開始を指示すると、制御装置9は扉2が閉まっていることを条件に、洗浄モードによる運転を開始する。本実施例における洗浄モードは、洗浄工程と前すすぎ工程と後すすぎ工程と乾燥工程の4つの工程で構成されている。図4のタイミングチャートは、最初の洗浄工程における送給ポンプ28の駆動状態と、給水弁38、開閉弁51~53および排水弁34の開閉状態を示したものである。まず制御装置9は、給水弁38を開いて貯水タンク26への洗浄水(水道水)の供給を開始し(時点t1)、貯水タンク26の水位センサー31が満水を検知すると、給水弁38を閉じて給水を終了する(時点t2)。なおユーザーは、洗浄モードの開始を指示する前に、冷却室4の底部などに洗剤を投入しておくことが好ましい。これにより、給水口35から供給される水道水と洗剤が混ざり合った洗剤入りの洗浄水を、貯水タンク26に供給することができる。
【0025】
洗浄水の供給が完了すると、制御装置9は3つの開閉弁51~53を順次開いて、第1洗浄ノズル23による洗浄と、第2洗浄ノズル24による洗浄と、洗浄パイプ25による洗浄とを交互に実施する。具体的には、制御装置9は、給水弁38を閉じてから所定の待機時間T0(例えば30秒)が経過すると、送給ポンプ28を起動するとともに、第1分岐路48に配置された第1開閉弁51を開く(時点t3)。これにより、貯水タンク26から第1洗浄ノズル23へ洗浄水が供給されて、同ノズル23から洗浄水が噴射される。第1洗浄ノズル23から噴射された洗浄水は、冷却室4の壁面やユニットケース15の外面を洗浄した後、集水口36から貯水タンク26に回収されて、再び洗浄に供される。
【0026】
第1開閉弁51を開いてから所定の送給時間T1(例えば6分30秒)が経過すると、制御装置9は送給ポンプ28を停止させて同開閉弁51を閉じる(時点t4)。さらに待機時間T0が経過すると、制御装置9は送給ポンプ28を再び起動するとともに、今度は第2分岐路49に配置された第2開閉弁52を開く(時点t5)。これにより、貯水タンク26から第2洗浄ノズル24へ洗浄水が供給されて、同ノズル24から洗浄水が噴射される。第2洗浄ノズル24から噴射された洗浄水は、冷却室4の壁面やユニットケース15の外面を洗浄した後、集水口36から貯水タンク26に回収されて、再び洗浄に供される。
【0027】
第2開閉弁52を開いてから送給時間T1が経過すると、制御装置9は送給ポンプ28を停止させて同開閉弁52を閉じる(時点t6)。さらに待機時間T0が経過すると、制御装置9は送給ポンプ28を再び起動するとともに、今度は第3分岐路50に配置された第3開閉弁53を開く(時点t5)。これにより、貯水タンク26から洗浄パイプ25へ洗浄水が供給されて、同パイプ25を構成する各枝管44から洗浄水が噴射される。各枝管44から噴射された洗浄水は、冷却器16および循環ファン17の表面やユニットケース15の内面を洗浄した後、集水口36から貯水タンク26に回収されて、再び洗浄に供される。
【0028】
第3開閉弁53を開いてから送給時間T1が経過すると、制御装置9は送給ポンプ28を停止させて同開閉弁53を閉じ(時点t8)、待機時間T0が経過するまで待機する(時点t9)。以上の時点t3から時点t9までを1セットとし、以後、所定の洗浄時間(例えば50分)が経過するまでこれを繰り返す。洗浄時間の計時を開始するのは、最初に洗浄水が噴射される時点t3とする。洗浄時間が経過すると、制御装置9は洗浄工程の終了処理を開始する(時点t10)。具体的には、排水路32に配置された排水弁34を開いて、貯水タンク26からの洗浄水の排水を開始するとともに、送給ポンプ28が駆動中であればこれを停止させて、さらに開放中の開閉弁(図4の例では第3開閉弁53)を閉じる。貯水タンク26からの排水が完了すると、排水弁34を閉じて(時点t11)、次の前すすぎ工程に移る。洗浄水の排水が完了したことは、例えば排水路32に配置した流量センサーで検知することができる。なお、洗浄水の排水の際は、各洗浄器23~25や送給路27の水抜きを目的として、全ての開閉弁51~53を開くようにしてもよい。
【0029】
開放中の分岐路48~50を閉鎖してから、次に別の分岐路48~50を開放するまでの間に、上述のように待機時間T0を設定したのは、冷却室4の底部に洗浄水が滞留した場合に、当該洗浄水が貯水タンク26へ流れ込むのに十分な時間を確保するためであり、加えて、冷却室4の底部に落下した食材の断片等を、集水口36に向かって押し流すためである。待機時間T0の間は洗浄ノズル23・24や洗浄パイプ25から洗浄水が噴射されないから、冷却室4の底部に滞留した洗浄水の水位は徐々に低下し、やがて全ての滞留水が集水口36に吸い込まれる。このときに滞留水が、食材の断片等を集水口36へ押し流す作用を発揮する。また、洗浄工程においては、ヒーター18に通電することができ、これにより、冷却室4の温度を上昇させて、特に油汚れに対する洗浄効果を高めることができる。この場合は、例えば送給ポンプ28と同じタイミングでヒーター18をオンオフ制御するとよい。
【0030】
次の前すすぎ工程と後すすぎ工程における送給ポンプ28と各弁38・51~53・34の制御方法は、上述の洗浄工程と全く同一であるため、その説明を省略する。なお、洗浄工程において最後に開放された開閉弁51~53にかかわらず、前すすぎ工程では最初に第1開閉弁51が開放される。後すすぎ工程においても同様である。各すすぎ工程では事前に洗剤を投入することはないため、同工程における洗浄水は水道水となる。
【0031】
最後の乾燥工程では、制御装置9はヒーター18に通電するとともに循環ファン17を駆動し、同時に外箱11内の換気装置を駆動させて、洗浄後の冷却室4の空気よりも湿度の低い外気を取り込んで、洗浄水の蒸発を促す。所定の乾燥時間が経過すると、制御装置9はヒーター18、循環ファン17および換気装置を停止させて、乾燥工程すなわち洗浄モードを終了させる。
【0032】
以上のように、本実施例に係る急速冷却庫の洗浄構造は、冷却室4の上壁面に設置された一対の洗浄ノズル23・24と、冷却器ユニット5の内部に噴射口を有する洗浄パイプ25とを備える。そのため、冷却室4の壁面やユニットケース15の内外面、および、冷却器16と循環ファン17の表面など、冷却室4の全体を万遍なく洗浄することができる。さらに本実施例では、洗浄水の送給路27が、貯水タンク26から延びる1本の主経路47と、主経路47から分岐する3本の分岐路48~50と、各分岐路48~50を開閉する開閉弁51~53とを備えており、洗浄工程において、開閉弁51~53の切り換えにより各分岐路48~50が順次1本ずつ開放されて、洗浄ノズル23・24と洗浄パイプ25に対して洗浄水が順次送給されるようにした。これによれば、全ての洗浄器から同時に洗浄水が噴射される従来の冷却装置に比べて、洗浄水の循環水量を少なくして、その使用量を削減することができる。さらに、洗浄水の循環水量の減少により、洗浄水を送給する送給ポンプ28の低出力化、すなわち洗浄構造の小型化と低コスト化を実現することができる。
【0033】
上記の実施例では、3本の分岐路48~50を3個の開閉弁51~53で開閉するように構成したが、本発明はこれに限られず、例えば図5に示すように、1個の開閉弁51と1個の三方弁54で3本の分岐路48~50を開閉することもできる。三方弁54を(a)の状態に切り換えると、第2分岐路49を開放して第3分岐路50を閉鎖することができ、三方弁54を(b)の状態に切り換えると、逆に第2分岐路49を閉鎖して第3分岐路50を開放することができる。また、三方弁54を(c)の状態に切り換えると、両分岐路49・50を閉鎖することができる。
【0034】
また上記の実施例では、3個の洗浄器23~25のうちの1個から洗浄水が順番に噴射されるようにしたが、2個から同時に洗浄水が噴射されるように構成することもできる。例えば、最初に第1分岐路48と第2分岐路49を同時に開放して、2個の洗浄ノズル23・24から洗浄水を噴射させ、次に第3分岐路50だけを開放して、洗浄パイプ25から洗浄水を噴射させ、以後これを繰り返す。洗浄水が同時に噴射される洗浄器23~25の群を洗浄器群と呼ぶと、この例では2個の洗浄ノズル23・24が第1の洗浄器群を構成し、洗浄パイプ25が第2の洗浄器群を構成する。
【0035】
他の例として、例えば最初に第1分岐路48と第2分岐路49を同時に開放し、次に第2分岐路49と第3分岐路50を同時に開放し、次に第1分岐路48と第3分岐路50を同時に開放し、以後これを繰り返すことができる。この場合は、2個の洗浄ノズル23・24が第1の洗浄器群を構成し、第2洗浄ノズル24と洗浄パイプ25が第2の洗浄器群を構成し、第1洗浄ノズル23と洗浄パイプ25が第3の洗浄器群を構成する。このように、各洗浄器23~25が属する洗浄器群は1つとは限らず、各洗浄器23~25が複数の洗浄器群に属していてもよい。各洗浄器群に対して洗浄水を順次送給する場合でも、全ての洗浄器から同時に洗浄水が噴射される従来の冷却装置に比べて、洗浄水の循環水量を少なくして、その使用量を削減することができる。さらに、洗浄水の循環水量の減少により、洗浄水を送給する送給ポンプ28の低出力化、すなわち洗浄構造の小型化と低コスト化を実現することができる。
【0036】
上記の実施例では、冷却室4の上壁面に2個の洗浄器23・24を設置したが、その個数は1個であってもよく、3個以上であってもよい。上壁面以外の壁面に設置することもでき、その形態も回転式の洗浄ノズルに限られない。冷却器ユニット5の内部の洗浄器25についても、その個数や形態は上記の実施例で示したものに限られない。各洗浄器23~25に洗浄水を送給する送給時間T1は、洗浄器23~25ごとに異ならせることができる。すすぎ工程の回数は任意に選択することができる。
【符号の説明】
【0037】
4 冷却室
5 冷却器ユニット
15 ユニットケース
16 冷却器
17 循環ファン
23 洗浄器(第1洗浄ノズル)
24 洗浄器(第2洗浄ノズル)
25 洗浄器(洗浄パイプ)
26 貯水タンク
27 送給路
28 送給ポンプ
47 主経路
48 分岐路(第1分岐路)
49 分岐路(第2分岐路)
50 分岐路(第3分岐路)
51 制御弁(第1開閉弁)
52 制御弁(第2開閉弁)
53 制御弁(第3開閉弁)
54 制御弁(三方弁)
図1
図2
図3
図4
図5