(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】投射光学系および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 17/08 20060101AFI20220105BHJP
G02B 13/16 20060101ALI20220105BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220105BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G02B17/08 A
G02B13/16
G02B13/18
G03B21/14 D
(21)【出願番号】P 2018016540
(22)【出願日】2018-02-01
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】514274487
【氏名又は名称】リコーインダストリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】石亀 貴幸
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-108797(JP,A)
【文献】特開2005-292813(JP,A)
【文献】特開2007-328232(JP,A)
【文献】特開2006-058354(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104570288(CN,A)
【文献】特開2002-118058(JP,A)
【文献】特開2004-170877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子の
平面的な画像表示面に表示された画像を
単一の平面的な被投射面上に投射画像として拡大投射する投射光学系であって、
前記画像表示面の側から前記被投射面の側に向かって、順次、屈折光学系と屈折反射光学素子とを配してなり、
前記屈折光学系は複数枚のレンズにより構成され、
前記屈折反射光学素子は、
単一の反射面を有する反射面部材と、前記反射面に密接して屈折媒質部を有する単一の光学素子として構成され、前記屈折媒質部に入射面と射出面が形成され、前記反射面は屈折力を有する曲面であり、
前記屈折光学系から射出した結像光束を、前記屈折媒質部の入射面から前記屈折反射光学素子に入射させて前記反射面により反射し、前記屈折媒質部の射出面から射出させて前記被投射面に前記拡大画像として結像させる
投射光学系であり、
前記屈折光学系から前記屈折反射光学素子の射出面までの間の前記屈折媒質内に、前記画像表示面に表示された画像の中間像を1以上結像する投射光学系。
【請求項2】
請求項1に記載の投射光学系であって、
前記屈折媒質部の前記入射面と前記射出面の少なくとも一方が屈折力を有する投射光学系。
【請求項3】
請求項2に記載の投射光学系であって、
前記入射面と前記射出面とが共に屈折力を有する投射光学系。
【請求項4】
請求項3に記載の投射光学系であって、
前記入射面と前記射出面と、前記反射面が共に正の屈折力を有する投射光学系。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1項に記載の投射光学系であって、
前記屈折反射光学素子の前記入射面と前記射出面とが同一面である投射光学系。
【請求項6】
請求項5記載の投射光学系であって、
前記入射面及びこれと同一面である前記射出面が凸球面であり、前記単一の反射面が光軸に対して回転対称な非球面である投射光学系。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1項に記載の投射光学系であって、
前記屈折反射光学素子の前記反射面部材が、前記反射面と逆の側の面に放熱部を有する投射光学系。
【請求項8】
平面的な画像表示面を有する画像表示素子と、
該画像表示素子の前記平面的な画像表示面に表示された画像を単一の平面的な被投射面上に投射画像として拡大投射する投射光学系とを有する画像表示装置であって、
前記投射光学系として請求項1~7の何れか1項に記載のものを用いる画像表示装置。
【請求項9】
請求項8記載の画像表示装置であって、
前記平面的な画像表示面が、前記光軸に対して光軸直交方向へずれており、斜光束を結像光束とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、投射光学系および画像表示装置に関する。
画像表示装置はプロジェクタとして実施できる。従って、画像表示装置を以下において「プロジェクタ」とも言う。
【背景技術】
【0002】
画像表示素子の画像表示面に画像を表示し、表示された画像を投射光学系により被投射面(以下「スクリーン」とも言う。)上に投射画像として拡大投射する画像表示装置は、従来から種々知られているが、近時、投射光学系を、屈折光学系(レンズ系)と曲面ミラーとの組み合わせにより構成するものが知られている(特許文献1、2)。
以下、このような「屈折光学系と曲面ミラーを組み合わせた投射光学系」を、便宜上、「屈折・反射型の投射光学系」と呼ぶことにする。
屈折・反射型の投射光学系では一般に、画像表示面から屈折光学系を介した結像光束を曲面ミラーによりスクリーン側に折り返すように反射させつつ曲面ミラーの屈折力を作用させ、スクリーン上に投射画像を結像させる。
このため、画像表示装置における画像表示素子と屈折光学系の側をスクリーン側に向けることができ、画像表示装置をスクリーンに近接させることが可能となり、投射距離が短い所謂「超至近プロジェクタ」が可能になるので、近来、種々のタイプの屈折・反射型の投射光学系が広く実用化されつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、屈折・反射型の新規な投射光学系の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の投射光学系は、画像表示素子の平面的な画像表示面に表示された画像を単一の平面的な被投射面上に投射画像として拡大投射する投射光学系であって、前記画像表示面の側から前記被投射面の側に向かって、順次、屈折光学系と屈折反射光学素子とを配してなり、前記屈折光学系は複数枚のレンズにより構成され、前記屈折反射光学素子は、単一の反射面を有する反射面部材と、前記反射面に密接して屈折媒質部を有する単一の光学素子として構成され、前記屈折媒質部に入射面と射出面が形成され、前記反射面は屈折力を有する曲面であり、前記屈折光学系から射出した結像光束を、前記屈折媒質部の入射面から前記屈折反射光学素子に入射させて前記反射面により反射し、前記屈折媒質部の射出面から射出させて前記被投射面に前記拡大画像として結像させる投射光学系であり、前記屈折光学系から前記屈折反射光学素子の射出面までの間の前記屈折媒質内に、前記画像表示面に表示された画像の中間像を1以上結像する。
【発明の効果】
【0005】
この発明によれば新規な投射光学系を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】この発明の投射光学系を概念的に説明する図である。
【
図2】投射光学系の実施の1形態を示す断面図である。
【
図3】投射光学系の実施に用いられた非球面の非球面データを示す図表である。
【
図4】投射光学系の実施例の球面収差、非点収差、歪曲収差の図である。
【
図6】
図2に示す投射光学系の変形例を説明するための図である。
【
図7】画像表示装置の実施の1形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態を説明する。
図1は、この発明の投射光学系を概念的に説明する図である。
投射光学系は、画像表示素子の画像表示面に表示された画像をスクリーン等の被投射面上に投射画像として拡大投射する機能を持った光学系である。
被投射面は単一で平面的である。
図1において、符号10は画像表示素子、符号12は屈折光学系、符号14は屈折反射光学素子を示している。
画像表示素子10としては従来から知られている種々のもの、例えば、液晶パネルやDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)、LDのような微小な発光素子を2次元的にアレイ配列してなる発光素子アレイ等を適宜に用いることができる。これら画像表示素子において、投射光学系による拡大投射の対象となる画像が表示される面が「画像表示面」である。
画像表示面は平面的である。
画像表示素子10が「発光素子アレイのような発光機能」を持たない場合(液晶パネルやDMD等)は、画像表示面に表示される画像を照明手段により照明する。
投射光学系は、屈折光学系12と屈折反射光学素子14により構成され、これらは、画像表示面(
図1において、画像表示素子10における右側の面)の側から、図示を省略された被投射面の側に向かって、光路に沿って、屈折光学系12、屈折反射光学素子14を配されている。
屈折光学系12は複数枚のレンズにより構成される。屈折光学系12を構成する複数枚のレンズのうち2枚以上が、互いに接合されていてもよい。
屈折反射光学素子14は、反射面部材140と屈折媒質部141とにより構成される。反射面部材140は反射面14Bを有し、屈折媒質部141は、反射面14Bに密接して設けられており、これら反射面部材140と屈折媒質部141とは一体として「単一の光学素子」として構成されている。
【0008】
屈折媒質部141は、ガラスやプラスチック等の光学材料により構成され、入射面14Aと射出面14Cとが形成されている。
図1に示す如く、画像表示素子10の画像表示面からの光L0は、投射光学系の屈折光学系12に入射し、屈折光学系12を構成する複数枚のレンズを透過して、各レンズの屈折作用を受け、結像光束L1となって屈折光学系12から射出する。
屈折光学系12から射出した結像光束L1は、屈折反射光学素子14の屈折媒質部141の入射面14Aから屈折媒質部141に入射し、反射面14Bで反射され、射出面14Cから射出して投射光束L2となり、被投射面上に投射画像として拡大投射される。
屈折反射光学素子14は、上記の如く、入射面14A、射出面14Cと反射面14Bとを有する。反射面14Bは反射面部材140の表面として形成される。反射面部材140は、例えば、屈折媒質部141に直接、蒸着形成された「反射膜」であることができるが、これに限らず、アルミニウムや銀等の「高い表面反射率を有する金属」の表面を反射面形状に形成された金属部材であることもできる。
あるいは、反射面形状を形成されたガラス部材や樹脂部材の上記反射面形状に反射膜を形成した構成とすることもできる。
図1において、屈折反射光学素子14は、入射面14A、反射面14B、射出面14Cともに「平面形状」として描いてあるが、図示の便宜のためであり、実際には、入射面14A、反射面14B、射出面14Cのうち、反射面14Bは「屈折力を有する
単一の曲面」であり、結像光束L1に対して屈折力を作用させる。
即ち、
図1に示す投射光学系は、画像表示素子10の
平面的な画像表示面に表示された画像を、図示を省略された
単一の平面的な被投射面上に投射画像として拡大投射する投射光学系であって、画像表示面の側から被投射面の側に向かって、順次、屈折光学系12と屈折反射光学素子14とを配してなり、屈折光学系12は複数枚のレンズにより構成され、屈折反射光学素子14は、反射面14Bを有する反射面部材140と、前記反射面に密接して屈折媒質部141を有する単一の光学素子として構成され、屈折媒質部141に入射面14Aと射出面14Cが形成され、反射面14Bは屈折力を有する
単一の曲面であり、屈折光学系12から射出した結像光束L1を、屈折媒質部141の入射面14Aから屈折反射光学素子14に入射させて反射面14Bにより反射し、屈折媒質部141の射出面14Cから射出させて被投射面に拡大画像として結像させる投射光学系である。
【0009】
上記の如く、屈折反射光学素子14の入射面14A、反射面14B、射出面14Cのうち、反射面14Bは「屈折力を持つ曲面」であるが、入射面14A、射出面14Cのうちの少なくとも一方は屈折力を持つことができる。これら入射面14A、射出面14Cのうちで、屈折力を持つものは凸面(正の屈折力)、もしくは凹面(負の屈折力)となる。
【0010】
屈折力を持つ面の曲面形状は、凸球面や凹球面等の球面形状や、非球面形状、シリンダ面のようなアナモルフィックな形状、自由曲面であることができる。
入射面14Aと射出面14Cとは、一方が正で、他方が負の屈折力をもつ形状でもよいが、共に正の屈折力を持つ形状(凸面)であることができる。また、入射面14Aと、反射面14Bと射出面14Cとが共に正の屈折力を持つ形状であることもでき、この場合、反射面14Bは反射面形状としては凹面となる。
【0011】
画像表示素子10の画像表示面と、被投射面に拡大投射された投射画像とは、投射光学系により共役な関係にある。この発明の投射光学系では、屈折光学系12に入射した光束が、屈折光学系12から屈折反射光学素子14の射出面14Cまでの間の屈折媒質部141の内部に、画像表示面に表示された画像の「中間像」を1以上結像するようにする。
【0012】
中間像が屈折反射光学素子14の屈折媒質部141内に結像する場合として、中間像が屈折光学系12と入射面14Aの光学作用で結像する場合(第1の場合)と、中間像が、屈折光学系12と入射面14Aと反射面14Bとの作用で結像する場合(第2の場合)のほか、第1の場合において、屈折光学系12と入射面14Aの光学作用で結像した中間像を物体として、反射面14Bによる他の中間像が屈折媒質部141内に結像する場合(第3の場合)が可能である。
第1の場合には、投射画像は、反射面14Bと射出面14Cによる合成の正の屈折力により結像することになり、射出面14Cには正負いずれの屈折力も許容される。第2および第3の場合には、投射画像は、射出面14Cによる屈折力により結像することになり、射出面14Cには正の屈折力が要求される。
【0013】
上記の如く、屈折反射光学素子14の屈折媒質部141には、入射面14Aと射出面14Cとが形成されているが、これら入射面14Aと射出面14Cとは、互いに異なる光学面である必要はなく、入射面14Aと射出面14Cとが同一面であることもできる。
即ち、入射面と射出面が同一面となる構成の屈折反射光学素子が可能である。
反射面14Bは、結像光束を反射して、結像光束の向きを被投射面の側に偏向させる機能を有するので、この機能を実現するべく、同一面である入射面・射出面の中心法線に対して、反射面の中心法線が傾くようにすることができる。
しかしこのようにしないでも、入・射出面と反射面とが回転対称軸を光軸としてもつようにすることもできる。このような場合には、結像光束として「斜光束」を用いることにより、反射面へ入射する結像光束に対して、反射面により反射された結像光束が角度を持ち、反射面により反射された結像光束が被投射面へ向かうようにすることができる。
【0014】
入射面及びこれと同一面である射出面が凸球面で、反射面が光軸に対して回転対称な非球面である組み合わせは、良好な組み合わせの一つである。
【0015】
図2に、投射光学系の「実施の1形態」を示す。繁雑を避けるべく、混同の恐れが無いと思われるものについては、
図1におけると同一の符号を用いる。
図2において、符号10Aは画像表示素子の画像表示面を示している。
図2に示す投射光学系は、カラー画像の拡大投射を行うカラーのプロジェクタを想定されており、画像表示素子としては赤、緑、青の画像成分をそれぞれ表示する3枚の液晶パネルが想定され、画像表示面10Aは、これら3枚の液晶パネルの画像表示面を1面に纏めて示している。符号10Bは、各液晶パネルのカバーガラスを1枚に纏めて示し、符号Pは「色合成プリズム」を示している。また、符号10Cは、色合成プリズムPの射出側に設けられたカバーガラスを示している。色合成プリズムPは、3枚の液晶パネルに対して共通である。
【0016】
投射光学系は、屈折光学系12と屈折反射光学素子14により構成され、屈折光学系12が画像表示面10Aの側に、屈折反射光学素子14が屈折光学系12の像側に配置されている。
屈折光学系12は物体側から像側へ向かって、11枚のレンズLN1~LN11を順次配列して構成されている。レンズLN2~LN4の3枚は接合され、レンズLN4とレンズLN5との間に開口絞りSが配置されている。
開口絞りSの像側には、7枚のレンズLN5~LN11が配置されている。
屈折反射光学素子14は「両凸レンズ形状」で、入射面14Aと射出面14Cが「同一のレンズ面」であり、反射面14Bはレンズ面に蒸着形成された反射膜を「反射面部材」として形成されている。
【0017】
この実施の形態例では「斜光束」が結像光束として用いられている。即ち、図の如く、画像表示面10Aに表示される画像は、投射光学系の光軸OXに対して「図で上方」へずれている。結像光束としての斜光束は屈折光学系12と「屈折反射光学素子14の入射面14Aの正の屈折力」とにより、屈折媒質部の内部に「画像表示面10Aに表示された画像の中間像Im1」を倒立像として結像する。
【0018】
投射画像は、中間像Im1を物体として、反射面14Bと射出面14Cの正の屈折力により、図示を省略された被投射面上に平面的に拡大投射される。
開口絞りSよりも像側に位置するレンズLN5~LN11のうち、レンズLN9~LN11は、反射面14Bにより反射され屈折反射光学素子14の射出面14Cから射出する結像光束を「ケラない」ように「使用しないレンズ部分を切除された形状」となっている。
【0019】
なお、中間像Im1の結像位置は「光線の集中」により高温となることが考えられるが、説明中の実施の形態では中間像の結像位置は「屈折媒質部の内部」であるので、この部分に誤って手を差し込んで火傷を負う恐れがない。
【0020】
「実施例」
図2に実施の1形態を示した投射光学系の具体的な実施例を以下に挙げる。
この実施例の投射光学系は、画素数:1920×1080で、ピッチ:5.4μmの画像表示面をもつ画像表示素子の画像表示面に表示された画像を、94.7インチの対角長を有するスクリーン上に拡大投射する態様を想定している。
結像における物体高は10mm、焦点距離:4.28mmである。また、開口数NA:0.2778で、光学系全長:193.28mmであり、結像倍率は201.6倍である。投射距離は「-855mm」で投射倍率は「201.6倍」である。
【0021】
以下に示す光学系データにおいて、「面番号」は縮小側(画像表示面10Aの側)から拡大側に向かって数えた数字で表し、画像表示面10Aを物面として「S0」、被投射面であるスクリーンの面を「Si」としている。
「R」は、開口絞りSの面や色合成プリズムPを含む各面の曲率半径(非球面にあっては近軸曲率半径)を表わす。
「D」は、光軸上の面間隔を表す。
「Nd」および「Vd」は、各レンズの材質のd線での屈折率とアッペ数を表す。
「有効径」は、各面の光学有効径を表す。長さの次元を持つ量の単位は、特に断らない限り「mm」である。
曲率半径:Rの欄で(※)の記号を付した面は「非球面」である。
非球面は、非球面量:Z、光軸からの高さ:r、円錐定数:k、2次~20次の偶数次の非球面係数:A、B、・・・、G、H、Jを用いて、周知の次式により表す。
【0022】
Z=(1/R)r2/[1+√{1-(1+k)(1/R)2r2}]
+A・r4+ B・r6+・・・+G・r16++H・r18+J・r20
実施例の光学系データを表1に示す。
【0023】
【0024】
「非球面のデータ」
非球面データを
図2に「図表」として示す。
非球面のデータにおいて例えば「-1.392830E-17」とあるのは「-1.392830×10
-17」を意味する。
「表1」に示されたように、反射屈折光学素子の入射面(S28)、射出面(S30)は同一面で「凸球面」であり、反射面(S29)は「光軸に対して回転対称な非球面」である。
実施例の収差図を
図4及び
図5に示す。
図4は、球面収差、非点収差、歪曲収差の図である。
図5は、コマ収差の図である。
【0025】
非点収差の図において「太線」は「メリディオナル光線」、「細線」は「サジタル光線」に関するものである。
図4、
図5から明らかなように収差は良好に補正されており、実施例の投射光学系は高性能である。
図6に、
図2に示した実施の形態の変形例を説明図として示す。繁雑を避けるため、混同の恐れが無いと思われるものについては、
図2におけると同一の符号を付した。
図6の形態例は、
図2に示す形態例に対して「放熱部14Dを有する点」で異なっている。屈折反射光学素子14の反射面部材は、蒸着形成された「反射膜」であり、その屈折媒質部側が反射面であるが、反射させるべき結像光束の照射により反射面部材が昇温することが考えられる。
反射面部材の昇温は、屈折媒質部の温度上昇と熱膨張を齎し、屈折反射光学素子14の光学特性を変化させる可能性がある。これを防ぐには、
図6のように放熱部14Dを設けて、反射面部材の放熱を行い、反射面部材における蓄熱を軽減するのが良い。
「放熱部」は、反射面部材に形成された放熱フィンのような「放熱構造」でもよいし、反射面部材よりも熱伝導性の高い材質によるヒートシンクを反射面部材に接合したり、熱伝導シートを貼着したり、金属等の熱伝導体をコートしたり塗装したりして構成することができる。
【0026】
図7に、画像表示装置の実施の1形態を示す。
画像表示装置であるプロジェクタPRは、ケーシング内に
図2に示した如き投射光学系(図示を省略されている。)と制御部CTを有する。制御部CTは「照明系や画像表示素子(いずれも図示を省略されている。)」を制御する。表示される画像は、コンピュータ等の外部装置から画像信号として制御部CTへ入力され、制御部CTは画像信号に従って画像表示素子を制御し、投射すべき画像を画像表示面に表示する。表示された画像は、制御部CTに制御される照明系により照射され、投射光学系により、被走査面である
平面的なスクリーンSC上に拡大された投射画像として投射される。
【0027】
投射光学系としては請求項1~7の何れか1項に記載のもの、具体的には実施例のものを用いることができる。
以上、発明の好ましい実施の形態について説明したが、この発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、屈折反射光学素子は「単一の光学素子」であるが、「単一」は形態上のものである。上には、屈折媒質部が単一構造の場合を説明したが、屈折媒質部の構造としてはこれに限らず、例えば、接合レンズ形態のように、2以上の異なる光学媒質の複合的な構造であってもよい。屈折媒質部をこのように複数の光学媒質で構成すると、投射光学系の性能を調整するパラメータが増えるので、投射光学系の設計が容易になる。
【0028】
この発明の実施の形態に記載された効果は、発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、発明による効果は「実施の形態に記載されたもの」に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0029】
10A 画像表示面
12 屈折光学系
14 屈折反射光学素子
140 反射面部材
14A 屈折反射光学素子14の入射面
14B 屈折反射光学素子14の反射面
14C 屈折反射光学素子14の射出面
141 屈折媒質部
14D 放熱部
LN1~LN11 屈折光学系を構成するレンズ
S 開口絞り
OX 光軸
Im1 中間像
P 色合成プリズム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【文献】特許第5274030号公報
【文献】特許第5632782号公報