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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】支圧板整列方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/28 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
E02D5/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018026542
(22)【出願日】2018-02-17
(65)【公開番号】P2019143314
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000153672
【氏名又は名称】日鉄精密加工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188248
【弁理士】
【氏名又は名称】丹生 哲治
(72)【発明者】
【氏名】橋本 隆一
(72)【発明者】
【氏名】東芝 崇
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-141826(JP,A)
【文献】特開2001-214437(JP,A)
【文献】特開2004-238942(JP,A)
【文献】特開2017-066616(JP,A)
【文献】特開2016-148236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表から突出した複数の鋼管杭の上端部に、複数のカプラーを介して、各上端面に工場溶接された複数の杭頭管の下端部を、前記杭頭管の軸方向から見たときの平面形状が多角形状を有する複数の支圧板が、対峙する端面同士を衝接させて螺合するとともに、これらの杭頭管の各支圧板の前記多角形状のうちの1つの辺部の向きを、前記複数の支圧板が並ぶ方向に予め定めた整列ラインに沿って整列させる支圧板整列方法であって、
前記各鋼管杭の上端部に、対応するカプラーの下部をそれぞれ螺合するカプラー螺合工程と、
螺合された前記各カプラーの外周面に、前記整列ラインに基づき、前記各杭頭管の螺合時における対応した支圧板の所定箇所の位置を定めるカプラー基線をそれぞれマーキングするマーキング工程と、
このマーキング工程後、前記各杭頭管と同一直径で、かつ各外周面の全周にわたり所定ピッチで目盛り線が表示された複数のねじゲージ管の下端部を、前記各鋼管杭と端面同士が衝接状態となるように、前記各カプラーの上部にそれぞれ螺合するねじゲージ管螺合工程と、
前記各ねじゲージ管の螺合時、対応するカプラー基線が指示した前記各目盛り線の値を読み取って、前記各杭頭管の支圧板の所定箇所の向きが、前記整列ラインから位置ずれしている角度を求める調整角度取得工程と、
得られた各位置ずれの角度に基づき、それぞれが前記鋼管杭の上端面と同一直径で、かつ互いに高さが異なった複数の衝接用補助リングの中から、前記整列ラインからの前記支圧板の特定箇所の位置ずれを解消可能な高さを有したものを選出するリング選出工程と、
前記各カプラーから前記各ねじゲージ管を取り外すことで、対応するカプラー内に露呈した前記各鋼管杭の先端面に、選出された前記各衝接用補助リングをそれぞれ載置するリング載置工程と、
これらの衝接用補助リングの載置後、該各衝接用補助リングを介して、対峙する端面同士を間接的に衝接させた状態で、前記各カプラーに、対応する杭頭管を螺合することにより、前記各杭頭管の支圧板の所定箇所の向きを、前記整列ラインに沿って整列させる杭頭管螺合工程とを備えたことを特徴とする支圧板整列方法。
【請求項2】
前記各鋼管杭の上端部の外周面には、上端に向かって徐々に小径化したテーパー状の台形ねじである第1の雄ねじ部がそれぞれ形成され、
前記各杭頭管の下端部の外周面、および、前記各ねじゲージ管の下端部の外周面には、各下端に向かって徐々に小径化したテーパー状の台形ねじである第2の雄ねじ部がそれぞれ形成され、
前記各カプラーの下部の内周面には、前記第1の雄ねじ部と螺合する第1の雌ねじ部がそれぞれ形成され、
前記各カプラーの上部の内周面には、前記第2の雄ねじ部と螺合する第2の雌ねじ部がそれぞれ形成され、
前記各カプラーの内周面のうち、それぞれ対応する第1の雌ねじ部と第2の雌ねじ部との間には、前記選出された各衝接用補助リングを収納するリング収納部がそれぞれ形成されたことを特徴とする請求項1に記載の支圧板整列方法。
【請求項3】
前記各支圧板は四角形状のもので、
予め前記各杭頭管の外周面には、対応する支圧板に各上端部が連結された状態で、それぞれの支圧板の対角線上に配された4枚のスチフナが工場溶接されており、
前記各カプラー基線は、前記各杭頭管の螺合時に、前記4枚のスチフナのうち、何れか1つのスチフナの位置を定めるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の支圧板整列方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の鋼管杭の各杭頭管にそれぞれ配された支圧板の所定箇所の向きを、予め定めた整列ラインに沿って整列させる支圧板整列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、STマイクロパイル工法に基づき、軟弱地盤の改良および基礎補強等のために、地中に埋設される橋梁柱、鉄塔等の基礎杭のうち、直径が300mm以下の小径な鋼管杭を上部構造物のコンクリート躯体に接合する技術として、カプラーを介して、鋼管杭の上端部に杭頭管をそれぞれ螺合(連結)し、その後、杭頭管の上端面に、周方向へ90°ピッチで配された4枚のスチフナを介して、正方形の支圧板を現場で溶接し、次いで杭頭管と支圧板とを上部構造物のコンクリート躯体に埋設するものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
施工現場では、それぞれカプラーを介して、複数本の鋼管杭の上端部に各支圧板付きの杭頭管を手作業(人力)によって螺合している。この螺合時には、各カプラーの上部への各杭頭管のねじ込み量を調整し、各支圧板の一辺の長さ方向を、予め定められた整列ラインに沿って整列させる作業が行われる。これは、設計計算における支圧板から縁端部までの距離の確保や、基礎の計画された鉄筋への接触の回避等のためである。
このように、各支圧板の一辺を整列させる際には、各カプラーの上部への各杭頭管のねじ込み量を調整する必要がある。したがって、各カプラーを介して連結される各鋼管杭の上端面と、対応する杭頭管の下端面との間には、それぞれサイズが異なる隙間が現出することとなる。その結果、各カプラーは、鋼管杭用ねじ継手としての重要な性能の1つである曲げ強度が低下していた。
【0004】
そこで、従来、この管体同士を連結したカプラーの曲げ強度を解消する技術として、例えば、施工現場において、テーパー状の雄、雌ねじ間での螺合となるカプラーの長さ方向の中間部で、連結される上下側の鋼管の雄ねじ部の先端面同士を衝接させるものが知られている(例えば、特許文献2)。
この“衝接技術”を採用すれば、各鋼管に曲げ荷重が負荷され、カプラーの両端に上向きの曲げモーメントが作用した時、曲げ荷重により発生する圧縮応力は、衝接していない連結の場合と同様の雄、雌ねじ部からの伝達に加えて、一方の鋼管の雄ねじ部から他方の鋼管の雄ねじ部に直接伝達されることになる。さらには、衝接していない場合と比べて、各雄ねじ部とカプラーの各雌ねじ部とが深く螺合しているため、浅く螺合したときに比べて、カプラー危険断面でのカプラーの肉厚が大きくなり、断面係数が増大する。したがって、このように各鋼管の雄ねじ部の先端同士を衝接するように構成すれば、各カプラーの曲げ強度を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6071125号公報
【文献】特許第4049682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、各カプラーの曲げ強度を確保した上で、各支圧板の一辺の長さ方向を所定の整列ラインに整列させるには、施工現場で、各鋼管杭に連結された各杭頭管の上端面に、対応する支圧板を溶接すればよい。その理由は、施工現場であれば、溶接工が溶接する際、各支圧板の一辺の向きを自由に変更できるためである。
しかしながら、このように現場溶接を行う場合には、多数の熟練した溶接工の確保が必要になる。これに加えて、コンクリート躯体への杭の埋め込み長(杭頭管の突出長)は、コンクリート躯体への埋め込みが必要な設計長ではなく、溶接の作業性を考慮した、それより長尺な長さが必要となる。その結果、コンクリート躯体のコンクリートが厚くなり、その分だけ、コンクリートの打設作業やコンクリートの使用量が増加し、コスト高となっていた。
【0007】
そこで、このような各杭頭管への各支圧板の溶接を、施工現場ではなく、溶接ロボットなどが使用可能な工場内で行うようにすれば、上述した現場溶接時の課題は全て解消されることとなる。
しかしながら、杭頭管として予め支圧板が溶接されたものを使用すれば、上述した各支圧板の一辺の長さ方向を整列ラインに揃えたとき、各カプラー内において、鋼管杭の上端面と杭頭管の下端面とのあいだに前記隙間が現出してしまう。その結果、鋼管杭と杭頭管とは、対峙する端面同士を衝接状態では連結することができず、カプラーの曲げ強度の低下の問題が再発することとなる。
【0008】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、予め各上端面に支圧板が工場溶接され、かつそれぞれライン整列される複数の杭頭管にあって、カプラーを介して、対峙する端面同士を衝接させた状態で杭頭管を鋼管杭に連結したとき、支圧板の所定箇所(例えば一辺)が整列ラインから位置ずれした角度を、ダミー杭頭管であるねじゲージ管をカプラーの上部に螺合して求め、その後、この整列ラインからの位置ずれ(角度ずれ)を解消可能な高さを有した衝接用補助リング(嵩上げリング)を、カプラーの下部に螺合された鋼管杭の上端面に載置することで、鋼管杭の雄ねじ部の高さを、支圧板の所定箇所が整列ラインに揃う高さまで嵩上げすれば、上述した課題は全て解消されることを知見し、この発明を完成させた。
【0009】
本発明は、これらの問題点に鑑みなされたもので、施工現場に、支圧板を杭頭管に溶接する溶接工を不要にすることができ、かつコンクリート躯体の薄肉化が図れるとともに、鋼管杭の上端面と杭頭管の下端面との衝接によるカプラーの高い曲げ強度を確保して、各支圧板の所定箇所を予め定めた整列ラインに沿って整列させることができる支圧板整列方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、地表から突出した複数の鋼管杭の上端部に、複数のカプラーを介して、各上端面に工場溶接された複数の杭頭管の下端部を、前記杭頭管の軸方向から見たときの平面形状が多角形状を有する複数の支圧板が、対峙する端面同士を衝接させて螺合するとともに、これらの杭頭管の各支圧板の前記多角形状のうちの1つの辺部の向きを、前記複数の支圧板が並ぶ方向に予め定めた整列ラインに沿って整列させる支圧板整列方法であって、前記各鋼管杭の上端部に、対応するカプラーの下部をそれぞれ螺合するカプラー螺合工程と、螺合された前記各カプラーの外周面に、前記整列ラインに基づき、前記各杭頭管の螺合時における対応した支圧板の所定箇所の位置を定めるカプラー基線をそれぞれマーキングするマーキング工程と、このマーキング工程後、前記各杭頭管と同一直径で、かつ各外周面の全周にわたり所定ピッチで目盛り線が表示された複数のねじゲージ管の下端部を、前記各鋼管杭と端面同士が衝接状態となるように、前記各カプラーの上部にそれぞれ螺合するねじゲージ管螺合工程と、前記各ねじゲージ管の螺合時、対応するカプラー基線が指示した前記各目盛り線の値を読み取って、前記各杭頭管の支圧板の所定箇所の向きが、前記整列ラインから位置ずれしている角度を求める調整角度取得工程と、得られた各位置ずれの角度に基づき、それぞれが前記鋼管杭の上端面と同一直径で、かつ互いに高さが異なった複数の衝接用補助リングの中から、前記整列ラインからの前記支圧板の特定箇所の位置ずれを解消可能な高さを有したものを選出するリング選出工程と、前記各カプラーから前記各ねじゲージ管を取り外すことで、対応するカプラー内に露呈した前記各鋼管杭の先端面に、選出された前記各衝接用補助リングをそれぞれ載置するリング載置工程と、これらの衝接用補助リングの載置後、該各衝接用補助リングを介して、対峙する端面同士を間接的に衝接させた状態で、前記各カプラーに、対応する杭頭管を螺合することにより、前記各杭頭管の支圧板の所定箇所の向きを、前記整列ラインに沿って整列させる杭頭管螺合工程とを備えたことを特徴とする支圧板整列方法である。
【0011】
鋼管杭は、直径が300mm以下(例えば、80~300mm)の小径な鋼管である。その長さは限定されないものの、一般的に長さ500~6,000mmのものをカプラーにより連結しながら、例えば、STマイクロパイル工法により地盤に削孔される。
鋼管杭の厚さは、鋼管杭の直径に応じて適宜変更される。例えば、6~12mmである。
鋼管杭の上端部(一端部)の外周面には、雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部(杭頭管およびねじゲージ管の各雄ねじ部、カプラーの各雌ねじ部も同様)のねじ山の種類は、例えば、三角ねじ、角ねじ、台形ねじ、菅用ねじなど任意である。また、雄ねじ部はテーパーねじが好ましいものの、ストレートねじでもよい(杭頭管およびねじゲージ管の各の雄ねじ部、カプラーの雌ねじ部も同様)。
【0012】
カプラーは、長さ方向を上下方向に向けて使用されて、その上部と下部との各内周面に、雌ねじ部が形成された鋼管杭用のねじ継手である。
カプラーの素材としては、例えば、鋳鉄、鋼などを採用することができる。
カプラーのサイズは、鋼管杭および杭頭管の各サイズに応じて適宜変更される。
鋼管杭へのカプラーの螺合時、鋼管杭の雄ねじ部へのカプラーの下側の雌ねじ部の螺合は、カプラーの雌ねじ部の奥部分まで鋼管杭の雄ねじ部がねじ込まれた完全螺合状態が好ましいものの、そうでなくてもよい。
【0013】
支圧板の素材としては、例えば、鋳鉄、鋼などを採用することができる。
支圧板の形状は、例えば四角形(正方形を含む)、六角形など多角形状であれば限定されない。
支圧板に杭頭管の工場での溶接方法は任意である。例えば、溶接工による溶接、または溶接ロボットによる自動溶接でもよい。また、複数枚のスチフナ(補強板)を使用してもよい。
ここでいう“支圧板の所定箇所”は、支圧板の一部であれば限定されない。例えば、支圧板の任意の一辺、任意の頂点(コーナー)でもよい。
【0014】
杭頭管の素材としては、例えば、各種の鋼を採用することができる。ただし、鋼管杭と同一素材が好ましい。
杭頭管の直径(外径)は任意であるものの、一般的に鋼管杭の直径と同一である。
杭頭管の長さは任意である。例えば、300~500mmである。杭頭管が長くなれば、削孔後に打設されるコンクリート躯体が厚くなるため、必要最小限とした方がよい。
ここでいう“対峙する端面同士を衝接させる”とは、カプラーを介して、鋼管杭の上端面と、杭頭管の下端面とを面接触させることをいう。
整列ラインとは、施工現場の地面に引かれた、各支圧板の向きを揃えるための任意の直線(仮想直線)または曲線(仮想曲線)である。
整列ラインに整列されるのは、通常、支圧板の一箇所であるが、例えば、複数の整列ラインを引き、支圧板の複数箇所をそれぞれ整列させるようにしてもよい。
【0015】
ねじゲージ管とは、カプラーを介して、対峙する端面同士を衝接させた状態で杭頭管を鋼管杭に螺合(連結、締結)したとき、支圧板の所定箇所が、整列ラインから周方向へ位置ずれした角度を測定するためのダミー杭頭管である。
ねじゲージ管の素材は限定されない。ただし、カプラーを介して、対峙する端面同士を衝接させた状態で杭頭管を鋼管杭に螺合(連結、締結)したときの再現性を高めるために、杭頭管と同一素材の鋼管が好ましい。
ねじゲージ管は、杭頭管と少なくとも直径が同一の円筒管である。例えば、杭頭管と同一サイズのものでもよい。
ねじゲージ管の下部の外周面には、杭頭管と同一の雄ねじ部が形成されている。
ねじゲージ管を人力で容易にカプラーに螺合できるように、例えば、ねじゲージ管の上部の両側部に左右一対の貫通孔を形成し、これらに1本の手回し棒を差し込んで、ねじゲージ管をねじ込むようにしてもよい。
【0016】
目盛り線が表示されるねじゲージ管の外周面の部分は任意である。ただし、雄ねじ部の上端に沿って表示した方が、カプラー基線との距離が短くなって、カプラー基線が指示した目盛り線の値を読み取り易いために好ましい。
目盛り線のピッチは任意である。例えば、5°~10°ピッチである。5°未満では、衝接用補助リングの製造における品質精度が低下する。また、10°を超えれば、衝接用補助リングで調整設置した杭頭部は、整列されていない外観と感じるおそれがある。特に好ましい目盛り線のピッチは5°ピッチである。5°ピッチであれば、大きく外観は整列されたものと感じ、衝接用補助リングも無理なく製造可能なため、高い品質精度を確保することができる。
【0017】
例えば、支圧板の形状が正方形の場合、目盛り線の表示は“-40°~45°(例えば、5°ピッチ)”を4回繰り返し、目盛り線をねじゲージ管の全周にわたって形成した方が好ましい。このように正方形の支圧板であれば、全方位に最少の衝接用補助リングで方向修正が可能となる。
カプラー基線とは、カプラーの外周面に表示されて、杭頭管の螺合時、杭頭管に溶接された支圧板の所定箇所の位置を定める基準となる線(点でもよい)である。
現場でのカプラー基線のマーキング方法としては、例えば、チョーク、マーカーなどによる線引きを採用することができる。
カプラー基線のマーキング箇所は、ねじゲージ管の目盛り線との距離が短くなって、カプラー基線が指示した目盛り線を読み取りやすいカプラーの上端部が好ましい。
【0018】
ここでいう調整角度取得工程とは、カプラー基線を利用して、ねじゲージ管の目盛り線を読み取ることにより、連結される鋼管杭と杭頭管とを、対峙する端面同士が衝接状態となる位置(カプラーを介した螺合位置)から、支圧板の所定箇所が整列ラインに揃う位置まで、支圧板の周方向へ(鋼管杭または杭頭管の軸線を中心として)位置ずれしている角度を求める工程である。
支圧板の周方向において、ねじゲージ管を使用し、鋼管杭と杭頭管とが衝接した位置から、支圧板の所定箇所が整列ラインに揃う位置までの角度(調整角度)を求める方法は限定されない。例えば、以下の2つの方法などを採用することができる。
【0019】
第1の方法は、予めねじゲージ管の外周面に所定ピッチで表示された目盛り線の0°値の位置(基準角度位置)を、支圧板の周方向における前記所定箇所の位置に該当する位置とする。ねじゲージ管は鋼管杭と同一直径のダミー管である。そのため、鋼管杭の周方向における前記所定箇所の角度位置は、ねじゲージ管の外周面に容易に反映させることができる。これを踏まえて、この反映されたねじゲージ管の周方向の角度位置を、上記目盛り線の0°値の位置とする。その後、カプラーを介して、対峙する端面同士が衝接状態となるまで、鋼管杭の上端部に杭頭管の下端部を連結(螺合)する。次に、このカプラー基線が指示する目盛り線aの値を読み取る。この目盛り線aの値が、鋼管杭と杭頭管との衝接状態を維持しつつ、支圧板の所定箇所を整列ラインに揃えるための調整角度θとなる。
【0020】
第2の方法は、まず、カプラーの上部にねじゲージ管を、鋼管杭の上端面とねじゲージ管の下端面とが衝接するまでねじ込む。このとき、カプラー基線が指示する目盛り線bの値を読み取る。その後、この目盛り線bが整列ラインに揃うまで、ねじゲージ管を緩める。次に、この目盛り線bが整列ラインに揃った時において、カプラー基線が指示した別の目盛り線cの値を読み取る。その後、これらの目盛り線b,cの値の差から、鋼管杭と杭頭管との衝接状態を維持し、かつ支圧板の所定箇所を整列ラインに揃えるための調整角度θ1を求めるという方法である。
なお、カプラー基線が指示した目盛り線の値の読み取りは、一般的に作業者が行う。ただし、例えば、読み取り用カメラにより撮像した画像データに基づき、目盛り線読み取り回路を有した読み取り装置により自動的に読み取るように構成してもよい。
【0021】
衝接用補助リングとは、鋼管杭の雄ねじ部の高さを、支圧板の所定箇所が整列ラインに揃うまで嵩上げした状態で、鋼管杭の上端面と杭頭管の下端面とを衝接させるための“嵩上げリング”である。したがって、ここでいう“整列ラインからの支圧板の特定箇所の位置ずれを解消可能な高さ”とは、鋼管杭の雄ねじ部の高さを、支圧板の所定箇所が整列ラインに揃うまで嵩上げするために必要となる衝接用補助リングの高さ(厚さ)を意味する。
衝接用補助リングの種類(高さ別のリングの数)は、目盛り線のピッチに応じて適宜増減する。例えば、上述した“-40°~+45°(5°ピッチ)”の場合には、(例えば、リング高さが約0.1mm刻みの)17本である。なお、0°の場合、衝接用補助リングは不要となる。
【0022】
ここでいう“鋼管杭の上端面と同一直径”とは、各衝接用補助リングの外径と、対応する鋼管杭の上端面の外径とが、それぞれ同一であることを意味する。
リング載置工程では、カプラーの上部から各ねじゲージ管を取り外すことで、対応するカプラー内に鋼管杭の先端面が露出することとなる。選出された衝接用補助リングは、この露出した先端面に下端面(一端面)を面接触させた状態で載置される。
また、杭頭管螺合工程では、杭頭管の下端面が、衝接用補助リングの上端面(他端面)に面接触するまで、杭頭管の下端部をカプラーの上部にねじ込む。これにより、衝接用補助リングを介して、鋼管杭の上端部と杭頭管の下端部とが衝接状態となる。その結果、カプラーの高い曲げ強度を確保することができる。
【0023】
請求項2に記載の発明は、前記各鋼管杭の上端部の外周面には、上端に向かって徐々に小径化したテーパー状の台形ねじである第1の雄ねじ部がそれぞれ形成され、前記各杭頭管の下端部の外周面、および、前記各ねじゲージ管の下端部の外周面には、各下端に向かって徐々に小径化したテーパー状の台形ねじである第2の雄ねじ部がそれぞれ形成され、前記各カプラーの下部の内周面には、前記第1の雄ねじ部と螺合する第1の雌ねじ部がそれぞれ形成され、前記各カプラーの上部の内周面には、前記第2の雄ねじ部と螺合する第2の雌ねじ部がそれぞれ形成され、前記各カプラーの内周面のうち、それぞれ対応する第1の雌ねじ部と第2の雌ねじ部との間には、前記選出された各衝接用補助リングを収納するリング収納部がそれぞれ形成されたことを特徴とする請求項1に記載の支圧板整列方法である。
【0024】
第1,第2の雄ねじ部と、第1,第2の雌ねじ部との各テーパー角は任意である。例えば、0°~5°である。
カプラーの内周面に形成されたリング収納部は、衝接用補助リングを位置ずれなく収納するため、傾斜や凹凸が存在しないストレートな内周面が好ましい。もちろん、一般的なカプラーのように、カプラーの長さ方向の中間位置で、第1の雌ねじ部と第2の雌ねじ部とが接合する領域にリング収納部を配してもよい。
リング収納部の内径は、衝接用補助リングの外周面と略同一である。また、リング収納部の高さ(カプラーの長さ方向の長さ)は、複数本の衝接用補助リング(衝接用補助リング群)の中で、最も高さが低い衝接用補助リングが、杭頭管のねじ込み中に、このリング収納部から容易に脱落しない高さ(例えば、最も低い衝接用補助リングの高さより2mm以上を有していればよい。
【0025】
請求項3に記載の発明は、前記各支圧板は四角形状のもので、予め前記各杭頭管の外周面には、対応する支圧板に各上端部が連結された状態で、それぞれの支圧板の対角線上に配された4枚のスチフナが工場溶接されており、前記各カプラー基線は、前記各杭頭管の螺合時に、前記4枚のスチフナのうち、何れか1つのスチフナの位置を定めるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の支圧板整列方法である。
【0026】
スチフナは支圧板の補強板で、工場内において、上端部が支圧板の下面にそれぞれ溶接(固定)され、一側部が杭頭管の外周面にそれぞれ溶接される。
支圧板の形状は、例えば、正方形を含む四角形(矩形)であれば任意である。
スチフナの素材としては、例えば、杭頭管と同一素材(鋼など)を採用することができる。
スチフナの形成は任意である。一般的には矩形状である。
対応するカプラーと杭頭管との螺合時、4枚のスチフナのうちの1枚が、カプラー基線の延長上に配置される。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載の発明によれば、まず、各鋼管杭の上端部に、対応するカプラーの下部をそれぞれ螺合し(カプラー螺合工程)、螺合後の各カプラーの外周面に、予め定められた整列ラインに基づき、各杭頭管の螺合時における各支圧板の所定箇所の位置を定めるカプラー基線をそれぞれマーキングする(マーキング工程)。
マーキング後、各ねじゲージ管の下端部を、各鋼管杭と端面同士が衝接状態となるように、各カプラーの上部に螺合し(ねじゲージ管螺合工程)、この状態で、対応するカプラー基線が指示した各目盛り線の値を読み取って、各杭頭管の支圧板の所定箇所の向きが、整列ラインから位置ずれしている角度を求める(調整角度取得工程)。
【0028】
次に、得られた各位置ずれ角度に基づき、複数の衝接用補助リングの中から、整列ラインからの支圧板の特定箇所の位置ずれを解消可能な高さ(厚さ)を有した衝接用補助リングをそれぞれ選出する(リング選出工程)。
一方、各カプラーから各ねじゲージ管を取り外す。これにより、各カプラー内に各鋼管杭の先端面が露呈し、この露呈した各鋼管杭の先端面に、選出された各衝接用補助リングをそれぞれ載置する(リング載置工程)。
【0029】
各衝接用補助リングの載置後、各カプラーの上部に、各杭頭管の下端面が各衝接用補助リングの上端面に当接するまで、対応する杭頭管を螺合する。これにより、各カプラーを介して、各鋼管杭の上端部と各杭頭管の下端部とが、対峙する端面同士を間接的に衝接させた状態で螺合(連結)する(杭頭管螺合工程)。しかも、各カブラーの下部に螺合された各鋼管杭の上端部は、予め各衝接用補助リングによって整列ラインからの位置ずれ(角度ずれ)を解消可能な高さまで嵩上げされている。そのため、その後、各カプラーの上部に、対応する杭頭管を螺合するだけで、前述した衝接状態を維持したまま、各杭頭管の支圧板の所定箇所の向きが、整列ラインに沿って整列される。
【0030】
以上のことから、施工現場において、支圧板を杭頭管に溶接する溶接工を不要にすることができ、かつ削孔後に打設されるコンクリート躯体の薄肉化が図れるとともに、鋼管杭の上端面と杭頭管の下端面との衝接によってカプラーの高い曲げ強度を確保しながら、各支圧板の所定箇所を、予め定めた整列ラインに沿って整列させることができる。
【0031】
特に、請求項2に記載の発明によれば、各鋼管杭の先細り化した上端部の第1の雄ねじ部と、各カプラーの下部の先細り化した第1の雌ねじ部とを螺合し、その後、各カプラーのリング収納部に、選出された各衝接用補助リングを収納する。次いで、各カプラーの上部に各杭頭管の下端部を螺合する。これにより、対応する鋼管杭と杭頭管とが、各衝接用補助リングを介して、対峙する端面同士を衝接させた状態で連結される。
このとき、互いに螺合する第1の雄ねじ部および第1の雌ねじ部と、第2の雄ねじ部および第2の雌ねじ部として、それぞれテーパー状の雄または雌の台形ねじを採用したため、各螺合領域において、高いシール性を確保することができるとともに、摩耗が少なく、ねじ込み時および取り外し時の送り量が正確となる。
また、カプラーの内周面のうち、第1の雌ねじ部と第2の雌ねじ部との間にリング収納部を形成したため、衝接用補助リングを位置ずれなく収納することができる。
【0032】
また、請求項3に記載の発明によれば、各カプラーの上部に螺合される各杭頭管の上端面には、予め各対角線上に配された4枚のスチフナを介して、四角形状の支圧板が工場溶接されている。
そのため、各支圧板のライン整列時、対応するカプラー基線に、何れかのスチフナを位置合わせするだけで、全ての支圧板の所定箇所を整列ラインに揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施例1に係る支圧板整列方法の全体フローを示す模式図である。
図2】本発明の実施例1に係る支圧板整列方法に使用されるねじゲージ管の要部拡大正面図である。
図3】本発明の実施例1に係る支圧板整列方法のうち、杭頭管螺合工程後の状態を示す要部拡大断面図である。
図4図3において、カプラーにより鋼管杭の上端面と杭頭管の下端面とが、衝接用補助リングを介して衝接状態になっている状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して具体的に説明する。ここでは、軟弱地盤の改良のために、STマイクロパイル工法により地中に埋設される橋梁柱の基礎杭として、直径165mmの鋼管杭を削孔後に適用される支圧板整列方法を例とする。
【実施例
【0035】
以下、図1のフロー図に基づき、本発明の実施例1に係る支圧板整列方法を説明する。
実施例1の支圧板整列方法は、STマイクロパイル工法により、軟弱地盤の改良のために地中に埋設されて、地表から突出した複数の鋼管杭10の上端部に、複数のカプラー11を介して、複数の正方形状の支圧板12が各上端面に工場溶接された複数の杭頭管13の下端部を、対峙する端面同士を衝接させて螺合するとともに、これらの杭頭管13の各支圧板12の1つの頂点(所定箇所)Pの向き(各支圧板12の周方向の向き)、ひいては各支圧板12の一辺の長さ方向の向きを、予め地面に引かれた整列ラインLに沿って整列させるものである。
【0036】
次に、図1図4を参照して、この実施例1の支圧板整列方法を具体的に説明する。
図1のフローに示すように、この支圧板整列方法は、カプラー螺合工程(図1(a))と、マーキング工程(図1(a))と、ねじゲージ管螺合工程(図1(b))と、調整角度取得工程(図1(c))と、リング選出工程(図1(d))と、リング載置工程(図1(e))と、杭頭管螺合工程(図1(f))とを備えている。
【0037】
図1(a)に示すように、カプラー螺合工程では、各鋼管杭10の上端部に、鋼製のカプラー11の下部をそれぞれ螺合する。以下、説明の都合上、言及しない限り1本の鋼管杭10についてのみ上記各工程を説明する。もちろん、他の鋼管杭10についても、同様の作業が行われる。
鋼管杭10の上端部の外周面には、上端に向かって徐々に小径化したテーパー状の台形ねじである第1の雄ねじ部14が形成されている。
【0038】
カプラー11の下部の内周面には、鋼管杭10の第1の雄ねじ部14と螺合時に、雌ねじの奥部分まで第1の雄ねじ部14の先端がねじ込まれる(完全螺合される)第1の雌ねじ部15が形成されている。また、カプラー11の上部の内周面には、杭頭管13の下端部の外周面に形成された第2の雄ねじ部16が螺合される第2の雌ねじ部17が形成されている。この第2の雄ねじ部16は、下端に向かって徐々に小径化したテーパー状の台形ねじである。
【0039】
さらには、カプラー11の内周面のうち、第1の雌ねじ部15と第2の雌ねじ部17との間には、後述する“選出された衝接用補助リング18”を収納するリング収納部19が形成されている。リング収納部19の内周面は、衝接用補助リング18を位置ずれなく収納するため、傾斜や凹凸が存在しないストレート面である。その内径は、衝接用補助リング18の外周面と略同一である。また、リング収納部19の高さ(カプラー11の長さ方向の長さ)は、複数本の衝接用補助リング18の中で、最も高さが低いものが、杭頭管13のねじ込み中に、リング収納部19から容易に脱落しない2.5mmに設計されている。
マーキング工程では、螺合されたカプラー11の上端部の外周面に、整列ラインLに基づき、杭頭管13の螺合時における支圧板12の1つの頂点Pの位置を定めるカプラー基線20を、マーカーにより線引きする(同じく図1(a)を参照)。支圧板12の1つの頂点Pの位置は、これを反映して杭頭管13の外周面に工場溶接された1枚のスチフナ21の位置から容易に知ることができる。
【0040】
図1(b)に示すように、ねじゲージ管螺合工程では、杭頭管13と同一直径で、かつ外周面の全周にわたり所定ピッチで目盛り線22が表示されたねじゲージ管23が使用される(図2を参照)。この螺合工程では、ねじゲージ管23の下端部を、鋼管杭10と端面同士が衝接状態(面接触状態)となるように、カプラー11の上部に螺合する(図1(b)を参照)。
ねじゲージ管23は、杭頭管13と同じ鋼製の円筒管(杭頭管13のダミー管)で、その下端部に、杭頭管13の下端部の外周面に形成されたものと同一の第2の雄ねじ部16が形成されている。この第2の雄ねじ部16は、下端に向かって徐々に小径化するテーパー状の台形ねじである。ねじゲージ管23の長さは250mmである。
また、ねじゲージ管23の上端部の両側部には、図示しないものの左右一対の棒差し込み孔が形成されている。ねじゲージ管23のカプラー11への着脱時、各棒差し込み孔に1本の手回し棒を差し通し、この手回し棒を利用してねじゲージ管23を手回しするようにすれば、比較的小さな力でねじゲージ管23の手回しを行うことができる。
【0041】
目盛り線22は、ねじゲージ管23の外周面のうち、第2の雄ねじ部16の上縁に下端を揃えて表示されている。そのため、カプラー基線20との距離が短くなり、カプラー基線20が指示した目盛り線22の値を読み取り易い。
ここでの目盛り線22のピッチは5°である。5°ピッチとすれば、大きく外観は整列されたものと感じ、衝接用補助リング18も無理なく製造することができ、高い品質精度を確保することができる。
また、ここでは支圧板12の形状が正方形であることから、目盛り線22の表示は“-40°~45°”をねじゲージ管23の周方向へ4回繰り返し、目盛り線22をねじゲージ管23の全周にわたって表示している。このように表示したため、正方形の支圧板12であれば全方位に最少の衝接用補助リング18で方向修正が可能となる。なお、0°の目盛り線22aの延長上には、前記1枚のスチフナ21の位置を示すラインSが配されているものとする。
【0042】
図1(c)に示すように、調整角度取得工程では、ねじゲージ管23の螺合時、対応するカプラー基線20が指示した目盛り線22bの値を読み取って、杭頭管13の支圧板12の所定箇所の向きが、整列ラインLから位置ずれしている角度(調整角度θ)を求める。
具体的には、カプラー11の上部にねじゲージ管23を、鋼管杭10の上端面とねじゲージ管23の下端面とが衝接状態となるまで螺合する。ここで、カプラー基線20が指し示す目盛り線22bの値を読み取る。予め0°の目盛り線22aの延長上に、前記1枚のスチフナ21が配されているため、この目盛り線22bの値が、鋼管杭10と杭頭管13との衝接状態を維持しつつ、支圧板12の所定箇所を整列ラインLに揃えるための調整角度θとなる。
【0043】
図1(d)に示すように、リング選出工程では、得られた各調整角度θに基づき、鋼管杭10の上端面と同一直径で、かつ互いに高さ(リング軸線方向の長さ)が異なった複数の衝接用補助リング18の中から、整列ラインLからの支圧板12の前記頂点Pの位置ずれを解消可能な高さを有したものを選出する。
【0044】
以下、これについて具体的に説明する。
上述したように、目盛り線22の表示は“-40°~45°(5°ピッチ)”をねじゲージ管23の周方向へ4回繰り返している。すなわち、1つの0°の目盛り線22aの延長上(ラインS上)に、1枚のスチフナ21が配されていることから、この4つの目盛り線群は、杭頭管13の外周面に90°ピッチで配された4枚のスチフナ21の溶接位置に対応している。したがって、1つの目盛り線群に対応した、高さが異なる衝接用補助リング18からなる衝接用補助リング群の本数は、17本(目盛り線22aの値が0°は不要)となる。ここでは、杭頭管13のカプラー11への螺合時における衝接用補助リング18の強度とそのリング18の取り扱いが容易なように、全ての衝接用補助リング18の基準高さ(厚さ)を3.2mmとし、また各衝接用補助リング18において、5°毎の角度ずれを補正するための高さを0.1mmとしている。これにより、各衝接用補助リング18の高さは、2.5mm~12mmの範囲で、0.1mmずつ異なっている。各衝接用補助リング18は、上下端面(表裏面)が平坦で、かつ全周にわたって高さが均一なものである。
【0045】
また、1つの目盛り線群において、鋼管杭10と杭頭管13とが衝接した位置から、支圧板12の所定箇所が整列ラインLに揃う位置までの調整角度θと、1つの衝接用補助リング群を構成する各衝接用補助リング18の高さとの関係は、例えば、表1に示すような関係であってもよい。この表1では、調整角度0°を基準として、-5°~-40°までは5°刻みで約0.1mmずつ高さが低くなっている。反対に、+5°~+45°までは5°刻みで約0.1mmずつ高さが高くなっている。このように変則的な高さとしたのは、正方形の支圧板12を全方位について調整可能とするためである。
【0046】
図1(e)に示すように、リング載置工程では、まずカプラー11からねじゲージ管23を取り外し、これによりカプラー11内に露呈した鋼管杭10の先端面に、リング収納部19を介して、リング選出工程で選出された1つの衝接用補助リング18を載置する(図3および図4を参照)。このとき、鋼管杭10の先端面に、衝接用補助リング18の下端面を面接触させる。
【0047】
図1(f)、図3および図4に示すように、杭頭管螺合工程では、衝接用補助リング18の載置後、衝接用補助リング18を介して、鋼管杭10の上端面と、あらかじめ支圧板12が工場溶接された杭頭管13の下端面とを間接的に衝接させた状態で、カプラー11に、杭頭管13を螺合する。これにより、全ての杭頭管13の支圧板12の頂点Pの向きを、整列ラインLに沿って整列させることができる(図1を参照)。
【0048】
このように、各杭頭管13の上端面への各支圧板12の溶接が、施工現場でなく予め工場内で行われているため、この現場において、支圧板12を杭頭管13に溶接する溶接工を不要にすることができる。また、工場溶接であるため、比較的短い杭頭管13に対しても支圧板12およびスチフナ21を工場溶接することができ、その結果、削孔後に打設されるコンクリート躯体の薄肉化も図ることができる。さらには、鋼管杭10の上端面と杭頭管13の下端面との衝接によってカプラー11の高い曲げ強度を確保しながら、各支圧板12の1つの頂点P、ひいては各支圧板12の一辺の長さ方向を、予め定めた整列ラインLに沿って整列させることができる。
【0049】
また、互いに螺合する第1の雄ねじ部14および第1の雌ねじ部15と、第2の雄ねじ部16および第2の雌ねじ部17として、それぞれテーパー状の雄または雌の台形ねじを採用したため、各螺合領域において、高いシール性を確保することができるとともに、摩耗が少なく、ねじ込み時および取り外し時の送り量が正確となる。
さらに、カプラー11の内周面のうち、第1の雌ねじ部15と第2の雌ねじ部17との間にリング収納部19を配したため、衝接用補助リング18を位置ずれなく収納することができる。
【0050】
さらにまた、各カプラー11の上部に螺合される各杭頭管13の上端面には、予め各対角線上に配された4枚のスチフナ21を介して、四角形状の支圧板12を工場溶接している。これにより、各支圧板12のライン整列時、対応するカプラー基線20に、何れかのスチフナ21を位置合わせするだけで、全ての支圧板12の1つの頂点Pを整列ラインLに揃えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の支圧板整列方法は、例えば、複数本の鋼管杭の各杭頭管にそれぞれ配された支圧板の所定箇所の向きを、予め定めた整列ラインに沿って整列させる技術として有用である。
【符号の説明】
【0052】
10 鋼管杭
11 カプラー
12 支圧板
13 杭頭管
14 第1の雄ねじ部
15 第1の雌ねじ部
16 第2の雄ねじ部
17 第2の雌ねじ部
18 衝接用補助リング
19 リング収納部
20 カプラー基線
21 スチフナ
22 目盛り線
23 ねじゲージ管
L 整列ライン

【表1】

図1
図2
図3
図4