(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】液材供給装置
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20220105BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
(21)【出願番号】P 2018060335
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000198352
【氏名又は名称】株式会社IHI回転機械エンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】000145611
【氏名又は名称】株式会社コガネイ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 広和
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-011912(JP,A)
【文献】特開2000-145621(JP,A)
【文献】特開2005-111877(JP,A)
【文献】特開2001-300404(JP,A)
【文献】特開平05-111659(JP,A)
【文献】特開2018-041616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度を有する液材を吐出するための液材供給装置であって、
前記液材を供給する供給部と、
前記液材を吐出する開閉吐出部と、
前記供給部および前記開閉吐出部に接続された吐出流路と
、
前記吐出流路を通じて前記開閉吐出部へ前記液材を送り出す圧送装置と、
前記供給部と前記開閉吐出部との間に設けられ、前記吐出流路から分岐した循環流路を通じて前記吐出流路内へ前記液材を循環させる循環部と、を備え
、
前記吐出流路は、
前記供給部に接続された第1吐出流路と、
前記第1吐出流路に連通すると共に前記循環流路が分岐する第2吐出流路と、
前記第2吐出流路に連通すると共に前記開閉吐出部に接続された第3吐出流路と、を有し、
前記第1吐出流路と前記第2吐出流路の接続部には、前記第2吐出流路から前記第1吐出流路への前記液材の逆流を防止する吐出チェック弁が設けられ、
前記第2吐出流路には、前記第2吐出流路内の圧力を調整する圧力調整部が接続され、
前記第2吐出流路を通る前記液材の一部が前記循環流路を通じて前記第1吐出流路へ戻り、前記第2吐出流路を通って前記第3吐出流路へ流れる前記液材が、前記開閉吐出部から吐出される、液材供給装置。
【請求項2】
前記圧力調整部は、前記循環部の前記循環流路に対して設けられて
おり、
前記液材が、前記第2吐出流路から前記圧力調整部及び前記循環流路を介して前記第1吐出流路内へ循環する、
請求項1に記載の液材供給装置。
【請求項3】
前記圧力調整部は、前記第2吐出流路に対する接続部に設けられた弾性部材を含む別のチェック弁を有し、
前記別のチェック弁は、前記第2吐出流路内の圧力が所定の圧力を超えるまで、前記第2吐出流路から前記圧力調整部への前記液材の流れを妨げ、前記
第2吐出流路内の圧力が
前記所定の圧力を超えると、前記
第2吐出流路から前記循環流路へ向かう方向に前記液材を流
し、前記弾性部材の弾性力を調整することにより、前記所定の圧力を20~40MPaの範囲で調整可能である、
請求項1または2に記載の液材供給装置。
【請求項4】
前記圧力調整部と前記開閉吐出部は隣接して一体化されており、
前記開閉吐出部は、前記液材を吐出する吐出口と、前記吐出口を開閉する開閉弁とを有し、前記開閉弁の開閉により前記液材を噴出させる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の液材供給装置。
【請求項5】
前記循環流路の途中には、前記循環流路の断面積よりも大きな断面積を有し、前記液材における気泡の発生を抑制するための整流部が設けられている、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の液材供給装置。
【請求項6】
前記圧送装置は、前記
第1吐出流路内を往復動する往復動部材と、
前記往復動部材を往復動させる駆動源と、を有する、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の液材供給装置。
【請求項7】
前記供給部は、前記液材を貯留する貯留空間を備える貯留タンクを有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の液材供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グリース等の粘度を有する液材を供給するための液材供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グリース等の中粘度または高粘度の液材は、高い粘度のままでは吐出することは難しい。従来、グリースを加温することで粘度を低下させ、その後に吐出(噴出)させる装置が知られている。特許文献1には、ヒータを備えた電動式液体ディスペンサが記載されている。この装置によれば、ホットメルト接着剤のような粘性の高い液体が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術のように、液材の粘度を低下させるためにヒータ等の加温装置を用いると、装置が大がかりなものとなってしまい、コスト面でも不利である。また、加温によって劣化する液材もある。加温によって液材が劣化した場合は、液材から分離した成分が吐出口の先端に付着してしまうこともある。
そこで本開示は、簡易な構成を有し、省スペース且つ低コストで、粘度の異なる様々な液材を吐出に適した状態で吐出することができる液材供給装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る液材供給装置は、粘度を有する液材を吐出するための液材供給装置であって、液材を供給する供給部と、液材を吐出する開閉吐出部と、供給部および開閉吐出部に接続された吐出流路と、吐出流路内の圧力を調整する圧力調整部と、吐出流路を通じて開閉吐出部へ液材を送り出す圧送装置と、供給部と開閉吐出部との間に設けられ、吐出流路から分岐した循環流路を通じて吐出流路内へ液材を循環させる循環部と、を備える。
【0006】
この液材供給装置によれば、圧送装置によって、吐出流路を通じて送り出された液材は、圧力調整器で所定の圧力に調整される。吐出流路に送られた液材は、開閉吐出部から吐出される。このような圧力調整部を有する機構により、吐出流路の内部を高圧状態に維持することができる。液材が吐出流路を流れるとき、一時的に液材の粘度が低下する。その後、液材は、吐出流路から循環流路を通り、吐出流路内へ循環させられる。この液材の循環により、液材供給装置内の液材の粘度が均一化・安定化し、吐出に適した状態となる。よって、液材を開閉吐出部から好適に吐出することができる。また、この液材供給装置によれば、液材を開閉吐出部から所定の距離を有する対象物に噴出させることもできる。吐出されて対象物に付着した液材は、時間の経過とともに粘度を回復させ、元の粘度に戻る。本開示の液材供給装置は、加温装置を必要としないため、加温による液材の劣化を防ぐことができる。上述した圧送装置、圧力調整部、および開閉吐出部を備えるだけなので、構成が簡易になっている。したがって、この液材供給装置は、省スペース且つ低コストを実現可能である。この液材供給装置は、簡易な構成を有し、省スペース且つ低コストで、粘度の異なる様々な液材を吐出に適した状態で吐出することができる。
【0007】
圧力調整部は、循環部の循環流路に対して設けられてもよい。この場合、循環流路は、圧力調整部よりも下流側(供給部側)において、比較的低圧に保たれる。低圧状態の循環流路内に液材を循環させると、液材が劣化しにくく、かつ、液材の粘度が均一化・安定化した状態が保たれる。
【0008】
圧力調整部は、吐出流路内の圧力が所定の圧力を超えると、吐出流路から循環流路へ向かう方向に液材を流す構造を有してもよい。
【0009】
循環流路の途中には、循環流路の断面積よりも大きな断面積を有し、液材における気泡の発生を抑制するための整流部が設けられてもよい。この場合、整流部が設けられることにより、液材に気泡を発生させることなく液材を吐出することができる。
【0010】
圧送装置は、吐出流路内を往復動する往復動部材と、往復動部材を往復動させる駆動源と、を有してもよい。
【0011】
吐出流路は、供給部に接続された第1吐出流路と、第1吐出流路に連通すると共に循環流路が分岐する第2吐出流路と、第2吐出流路に連通すると共に開閉吐出部に接続された第3吐出流路と、を有し、第2吐出流路を通る液材の一部が循環流路を通じて第1吐出流路へ戻り、第2吐出流路を通って第3吐出流路へ流れる液材が、開閉吐出部から吐出されてもよい。
【0012】
供給部は、液材を貯留する貯留空間を備える貯留タンクを有してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示のいくつかの態様によれば、簡易な構成を有し、省スペース且つ低コストで、粘度の異なる様々な液材を吐出に適した状態で吐出することができる。また、加温による液材の劣化や液材の分離を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態に係る液材供給装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1を参照して、本開示の一実施形態に係るグリース供給装置1について説明する。
図1に示されるように、グリース供給装置1は、粘度を有する液材であるグリースGを吐出するための液材供給装置である。グリース供給装置1は、グリースGが塗布されるべき対象物に対し、グリースGを吐出(または噴出)する。グリース供給装置1は、従来の装置に比して、構成が簡易化されており、省スペースを実現し得る装置である。当然ながら、簡易な構成からなるグリース供給装置1においては、低コスト化も図られている。グリース供給装置1は、作業者が手に持てる程度の小型のディスペンサである。
【0017】
グリース供給装置1は、グリースGを供給する貯留タンク2(供給部)と、貯留タンク2に貯留されたグリースGを送り出すポンプ部3(圧送装置)とを備える。またグリース供給装置1は、グリースGを吐出する開閉吐出部6と、貯留タンク2および開閉吐出部6に接続された吐出流路20とを備える。
【0018】
供給部としての貯留タンク2は、たとえば円筒状などの筒状をなすタンク本体10を有する。タンク本体10は、所定量のグリースGを貯留可能な貯留空間Sを内部に有する。タンク本体10の貯留空間Sには、グリース供給装置1が消費したグリースGの量に相当する、新しいグリースGが連続的に、または間欠的に、補充されてもよい。タンク本体10内には、グリースGの液面を覆うようにして、フォロワープレート12が設けられている。このフォロワープレート12は、貯留空間Sを密閉する密閉蓋である。フォロワープレート12は、円板部分を有し、その円板部分がグリースGの液面に密着している。これにより、フォロワープレート12は、グリースGの加圧に用いられることもできる。タンク本体10の上部に形成された開口には、カバー部11が取り付けられている。タンク本体10の底部の中央には、開口10aが形成されており、この開口10aに、円筒状の流出管13が嵌合されている。流出管13の外周と開口10aとの間はガスケットまたはOリング等によりシールされており、グリースGの漏出が防がれている。
【0019】
ポンプ部3は、貯留タンク2の下部に接続されている。貯留タンク2の下部には、グリースGが通る第1吐出流路21が形成されたケーシング14が設けられている。ケーシング14は、タンク本体10の下方に配置されており、上部に形成された開口14aに、上記の流出管13が嵌入されている。ケーシング14は、貯留タンク2を支持するベース(土台)を兼ねている。ケーシング14に形成された第1吐出流路21は、流出管13の流出流路13aに接続されて上下方向に延びる連通路21aと、連通路21aの下端に接続されて横方向に延びる吐出路21bとを含む。第1吐出流路21は、流出管13の流出流路13aを介して、貯留タンク2の貯留空間Sに連通する。本明細書において、「上下方向」は、タンク本体10および流出管13の軸線が延びる方向である。「横方向」は、ポンプ部3のプランジャ(往復動部材)19が往復動する方向である。第1吐出流路21は、ケーシング14内でL字状に延びる。
【0020】
グリース供給装置1は、貯留タンク2および開閉吐出部6に接続された吐出流路20を備える。吐出流路20は、第1吐出流路21と、後述する第2吐出流路22および第3吐出流路23とを有する。またグリース供給装置1は、吐出流路20内の圧力を調整する圧力調整部30を備える。
【0021】
ポンプ部3は、貯留タンク2の側方に配置されたモータ部(駆動源)16と、モータ部16によって回転させられるクランク部17と、第1吐出流路21内を往復動するプランジャ19と、クランク部17とプランジャ19とを連結してクランク部17における回転力をプランジャ19に伝達するロッド部18とを有する。モータ部16がプランジャ19を往復動させることにより、ポンプ部3は、吐出流路20を通じて、開閉吐出部6へグリースGを送り出す。プランジャ19は、第1吐出流路21の吐出路21b内で往復動可能に設けられている。モータ部16は、プランジャ19を吐出路21b内で往復動させる。モータ部16は、たとえば電動の駆動源である。ただし、ポンプ部3の駆動源は電動のモータ部16に限られず、たとえば空圧等によってプランジャ19が駆動されてもよい。ポンプ部3のモータ部16は、グリースGに対して所望の圧力を与えることができるよう、一定以上の動力を有する。
【0022】
圧力調整部30は、吐出流路20に接続されており、ポンプ部3および貯留タンク2の側方に配置されている。圧力調整部30は、ポンプ部3から送られたグリースGに対して圧力調整を施すことにより、圧力調整部30内で高圧状態を生み出す。圧力調整部30は、第2吐出流路22内のグリースGの圧力を調整する。第2吐出流路22は、ケーシング14に隣接して設けられた本体部31内に形成されて横方向に延びており、第1吐出流路21の吐出路21bに接続されている。第2吐出流路22の中心軸線は、第1吐出流路21の吐出路21bの中心軸線に一致していてもよい。本体部31には、上下方向に延びて圧力調整ネジ33が挿入された孔部32が形成されている。この孔部32の下端が、第2吐出流路22の途中に接続されており、孔部32と第2吐出流路22との接続部には、チェック弁39が設けられる。チェック弁39は、孔部32から第2吐出流路22へのグリースGの逆流を防止する。さらに、チェック弁39は、不図示の弾性部材を含む。チェック弁は、この弾性部材の弾性力によって、第2吐出流路22が所定の圧力を超えるまで、第2吐出流路22から孔部32への流れを妨げる。圧力調整ネジ33は、その弾性部材の弾性力を調整することで、第2吐出流路内の圧力を調整する。孔部32および圧力調整ネジ33を備える圧力調整部30によって、第2吐出流路22を含む高圧印加領域Pが、たとえば30MPa以上の高圧状態とされる。なお、圧力調整部30によって調整され得る圧力値(圧力範囲)は、適宜に変更可能である。圧力調整部30は、高圧印加領域PのグリースGの圧力を20~40MPaの範囲で調整可能であってもよい。
【0023】
第2吐出流路22と第1吐出流路21との接続部には、グリースGの逆流を防止する吐出チェック弁37が設けられる。吐出チェック弁37は、第2吐出流路22から第1吐出流路21の吐出路21bへのグリースGの逆流を防止する。第2吐出流路22内であって、第2吐出流路22と孔部32との接続部よりもやや上流側(図示左側。吐出チェック弁37側)には、グリースGの流量を制限するためのチョーク弁38が設けられる。
【0024】
上記構成を有する圧力調整部30は、グリースGの圧力を所望の高圧力に調整して、第2吐出流路22を通じてグリースGを送り出す。なお、圧力調整部30として、上記した圧力調整ネジ33および孔部32を有する形態に限られず、その他の圧力調整機構が用いられてもよい。
【0025】
開閉吐出部6は、圧力調整部30に接続されており、圧力調整部30の側方に配置されている。すなわち、グリース供給装置1では、ポンプ部3と、ポンプ部3に取り付けられた貯留タンク2と、ポンプ部3に接続された圧力調整部30と、圧力調整部30に接続された開閉吐出部6とが、一体化されており、取り扱い易いコンパクトな装置が実現されている。開閉吐出部6は、圧力調整部30によって高圧状態が保たれたグリースGを受け入れ、グリース吐出口23aからグリースGを吐出する。開閉吐出部6は、圧力調整部30の本体部31に隣接して設けられた本体部41と、グリース吐出口23aを開閉可能な開閉弁40とを有する。本体部41の下部には、上下方向に延びる第3吐出流路23が形成されており、第3吐出流路23の下端に上述のグリース吐出口23aが設けられている。
【0026】
第3吐出流路23は、第2吐出流路22に連通すると共に開閉吐出部6に接続されている。開閉弁40は、グリース吐出口23aを開閉する弁体46と、本体部41の上部に取り付けられたシリンダ部42とを有している。シリンダ部42内には、弁体46を閉じる方向の力を加えるスプリング43が設けられている。また、シリンダ部42には、弁体46の開閉時間を調節する吐出口開閉時間・吐出流量調整弁44が設けられている。吐出口開閉時間・吐出流量調整弁44により、グリース吐出口23aの開閉時間が調節される。開閉弁40は、さらに、本体部41の周囲に嵌められてシリンダ部42の軸方向(上下方向)に移動可能な環状体48と、環状体48の軸方向の両側(上側および下側)にそれぞれ接続された第1エアラインL1および第2エアラインL2と、これらの第1エアラインL1および第2エアラインL2に対してコントロールエアを切り替えて供給する電磁弁47とを有する。第1エアラインL1および第2エアラインL2には、図示しないエア供給源から、圧縮エアが供給される。電磁弁47による圧縮エアの切り替え制御により、本体部41内で、環状体48と弁体46とは、軸方向に一緒に往復移動する。開閉弁40の弁体46が、グリース吐出口23aを開閉させる(開閉を繰り返す)。開閉弁40がグリース吐出口23aを開いたときに、グリース吐出口23aから、第3吐出流路23内のグリースGが所定の圧力をもって吐出される。上述の高圧印加領域Pは、第3吐出流路23とグリース吐出口23aとを含む。電磁弁47を開閉弁40に直接取り付けて、第1エアラインL1および第2エアラインL2を省いてもよい。
【0027】
グリース供給装置1には、グリースGの粘度を一時的に低下させてグリース吐出口23aから好適にグリースGを吐出するための機構が備わっている。しかもグリース供給装置1は、従来のディスペンサのような加温装置を必要としない。グリース供給装置1に必要とされる動力源は、ポンプ部3の動力源と、開閉弁40を作動させるための圧縮エアのみであり、その他の動力源は不要である。
【0028】
圧力調整部30の本体部31およびポンプ部3のケーシング14には、圧力調整部30の孔部32の上部と、ポンプ部3の連通路21aの中間部とを接続する循環流路24が設けられている。この循環流路24は、第2吐出流路22から分岐しており、その分岐点よりも上流側の第1吐出流路21に接続されている。そして、圧力調整部30は、循環流路24に対して設けられている。循環流路24は、第2吐出流路22と第1吐出流路21とを接続し、第2吐出流路22から圧力調整部30を介して第1吐出流路21にグリースGを戻す。循環流路24は、グリースGを戻すことにより、開閉吐出部6とポンプ部3との間でグリースGを循環させる。
【0029】
すなわち、上述した圧力調整部30は、チェック弁39および圧力調整ネジ33を有することにより、吐出流路20内の圧力が所定の圧力を超えると、吐出流路20から循環流路24へ向かう方向にグリースGを流す構造を備えている。
【0030】
グリース供給装置1は、貯留タンク2と開閉吐出部6との間に設けられ、吐出流路20から分岐した循環流路24を通じてその吐出流路20内へグリースGを循環させる循環部25を備える。グリース供給装置1では、第2吐出流路22を通るグリースGの一部が循環流路24を通じて第1吐出流路21へ戻り、第2吐出流路22を通って第3吐出流路23へ流れるグリースGが、開閉吐出部6から吐出される。
【0031】
図1に示されるように、循環部25の循環流路24は、本体部31の内部に形成されて孔部32に接続された分岐路34と、同じく本体部31の内部に形成されて分岐路34に接続された整流部36と、ポンプ部3のケーシング14に形成されて整流部36と連通路21aとを接続する還流路24aとを含む。整流部36は、循環流路24の断面積、すなわち分岐路34や還流路24aの断面積よりも大きな断面積を有する円筒形の空間を形成する。整流部36の上端に分岐路34が接続され、整流部36の下端に還流路24aが接続されている。整流部36は、その独自の構造により、グリースGにおける気泡の発生を抑制する。
【0032】
本実施形態のグリース供給装置1によれば、グリースGは、ポンプ部3によって、第1吐出流路21から第2吐出流路22に送り出された後、第3吐出流路23と循環流路24に送り出される。第2吐出流路22と第3吐出流路23に送り出されたグリースGは、圧力調整部30により所定の圧力に調整される。第3吐出流路23に送られたグリースGは、開閉吐出部6の開閉弁40が開いたときに、グリース吐出口23aから吐出される。このような圧力調整部30と開閉弁40とを有する機構により、第2吐出流路22および第3吐出流路23の内部を高圧状態に維持することができる。第1吐出流路21をプランジャ19が往復動するときに、グリースGの粘度が一時的に低下する。また、高圧状態の第2吐出流路22から、グリースGがチェック弁39を通過するとき、一時的にグリースGの粘度が低下する。
【0033】
その後、グリースGは、第2吐出流路22から循環流路24を通り、第1吐出流路21内へ循環させられる。このグリースGの循環により、吐出流路20および循環流路24内のグリースGの粘度が均一化・安定化し、吐出に適した状態となる。
【0034】
このグリース供給装置1によれば、第2吐出流路22および第3吐出流路23の内部は高圧状態に維持されているので、開閉弁40を開閉させることによって、グリースGをグリース吐出口23aから所定の距離を有する対象物に噴出させる(飛ばす)こともできる。吐出されて対象物に付着したグリースGは、時間の経過とともに粘度を回復させ、元の粘度に戻る。従来の加温によってグリースの粘度を低下させる装置では、このようなグリースの粘度の回復は望めない。本開示のグリース供給装置1は、加温装置を必要としないため、加温によるグリースGの劣化および、グリースGから分離した油分のグリース吐出口23aへの付着を防ぐことができる。また、上述したポンプ部3、圧力調整部30、および開閉吐出部6を備えるだけなので、構成が簡易になっている。したがって、このグリース供給装置1は、省スペース且つ低コストを実現している。したがって、このグリース供給装置1は、簡易な構成を有し、省スペース且つ低コストで、粘度の異なる様々なグリースG(液材)を吐出に適した状態で吐出することができる。
【0035】
圧力調整部30は、循環部25の循環流路24に対して(循環流路24の途中に)設けられているので、循環流路24は、圧力調整部30よりも下流側(貯留タンク2側)において、比較的低圧に保たれる。低圧状態の循環流路24内にグリースGを循環させると、グリースGが劣化しにくく、かつ、グリースGの粘度が低下された状態が保たれる。本実施形態とは違って、もし循環流路内を高圧にしたままグリース(液材)を循環させると、液材は分離して劣化する可能性がある。それに対して本実施形態では、低圧状態の循環流路24内に液材を循環させるので、液材は劣化しにくく、かつ低下した粘度が維持される。
【0036】
循環流路24の途中に、気泡の発生を抑制するための整流部36が設けられているので、グリースGが整流部36を通過することで、低下した粘度がさらに均一に保たれ、より吐出に適した状態となる。グリースGに気泡を発生させることなく、グリースGを吐出することができる。
【0037】
グリースGとしては、多種多様なものが存在する。グリース供給装置1では、グリースGの粘度に応じて、圧力調整部30によって高圧印加領域Pの圧力を調整することができる。そのため、粘度の異なるグリースGに対して高い汎用性を有する。しかも、圧力調整部30によって昇圧される圧力は、従来品に対して高い。
【0038】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、気泡の発生を抑制するための整流部は省略されてもよい。若しくは、気泡の発生を抑制するために、整流部とは異なる他の機構が設けられてもよい。気泡発生抑制機構は、循環流路24に設けられてもよいが、その他のいずれかの吐出流路に設けられてもよい。
【0039】
上記実施形態では、液材としてのグリースGに液材供給装置が適用される場合について説明したが、これに限られず、グリースG以外の他の液材に本発明の液材供給装置が適用されてもよい。たとえば、液材供給装置は、中粘度または高粘度の接着剤や塗料などの液材を供給する装置であってもよい。
【0040】
循環流路24の接続形態は、上記実施形態に限られない。循環流路24は、第2吐出流路22と第1吐出流路21の吐出路21bとを直接に接続する流路であってもよい。循環流路24は、本体部の内部に形成される場合に限られず、外部の配管として設けられてもよい。整流部36は、省略されてもよい。また、液材の供給部としては、第1吐出流路21に接続される外部の配管から、グリースGを供給する機構であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 グリース供給装置(液材供給装置)
2 貯留タンク(供給部)
3 ポンプ部(圧送装置)
6 開閉吐出部
16 モータ部(駆動源)
19 プランジャ
20 吐出流路
21 第1吐出流路
22 第2吐出流路
23 第3吐出流路
23a グリース吐出口(吐出口)
24 循環流路
25 循環部
30 圧力調整部
33 圧力調整ネジ
36 整流部
40 開閉弁(開閉弁)
G グリース(液材)