(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】美容処理方法
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
A41G3/00 K
(21)【出願番号】P 2018504857
(86)(22)【出願日】2016-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2016067845
(87)【国際公開番号】W WO2017021241
(87)【国際公開日】2017-02-09
【審査請求日】2018-03-22
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-04
(32)【優先日】2015-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-バティスト・ブラン
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ジロン
(72)【発明者】
【氏名】アンリ・サマン
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】関口 哲生
【審判官】田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6214141(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0224126(US,A1)
【文献】特開平5-321008(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0333714(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G3/00
A41G5/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容処理方法であって、
処理対象のヒトのケラチン物質の領域上に、接着領域(A)と接着領域間に延在する非接着領域とのセットを生成するステップと、
前記領域上に繊維(F)を静電的に放射するステップと、
を含み、
前記接着領域が、
互いに接続されておらず、
隣り合う2つの
接着領域が、
前記非接着領域によって、30ミクロンから3mmに及ぶ距離だけ、互いに分離された状態であり、
前記接着領域が、直径が30ミクロンから3mmまでの点のネットワークの形態であり、接着剤が、感圧接着剤である、美容処理方法。
【請求項2】
隣り合う2つの
接着領域が、100ミクロンから1mmに及ぶ距離だけ、互いに分離された状態である、請求項1に記載の美容処理方法。
【請求項3】
前記点の形状が、円形である、請求項
1に記載の美容処理方法。
【請求項4】
前記ネットワークが、不規則である、請求項
1に記載の美容処理方法。
【請求項5】
前記接着領域が、互いから分離された位置において皮膚上に
前記接着剤を配置するように構成された接着剤アプリケータを活用して形成される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の美容処理方法。
【請求項6】
前記接着剤アプリケータが、スタンピングによって前記接着剤を移転させる、請求項
5に記載の美容処理方法。
【請求項7】
前記接着剤が、ステンシルを活用して塗布される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の美容処理方法。
【請求項8】
前記接着剤が、
前記ステンシルを介して吹付けによって塗布される、請求項
7に記載の美容処理方法。
【請求項9】
前記接着剤が、1つまたは複数の接着性製品を
、ドットの形態で、皮膚に対して接合させることによって塗布され、
前記ドットは、取外し可能な保護膜で両面が覆われた、両面粘着剤膜から構成され、前記両面粘着剤膜は、前記ドットとなるように予めカットされている、請求項1から
3のいずれか一項に記載の美容処理方法。
【請求項10】
前記接着領域の密度が、1平方センチメートル当たり10から50の間である、請求項1から
9のいずれか一項に記載の美容処理方法。
【請求項11】
前記繊維が、合成繊維である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の美容処理方法。
【請求項12】
前記繊維の静電放射中に、人を1000Vよりも大きい電位に至らせる、請求項1から
11のいずれか一項に記載の美容処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間のケラチン物質、特に皮膚の美容処理のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、脱毛症を隠すための、または治療するための様々な技法が存在する:
- 外科的処置を必要とする植毛、
- ヘアピースまたはかつら、
- 薄くなっている領域にまだ残っている毛髪に対して、それらの毛髪をより目に見えるようにするために、分量を増やす「ペッパーシェイカー」システム、
- 従来のメークアップ製品もしくは着色製品を塗布することによって皮膚を着色すること、または、タトゥーのように、より侵襲的かつ恒久的に皮膚に着色すること、
- 自由な繊維またはゲルタイプの処方を構成する繊維の塗布。
【0003】
不完全に行われた場合に修正することが難しい、侵襲的で高価な外科的処置とは別に、近くからも遠くからも気づかれない、脱毛症用のメークアップを行うこと、つまり、人間の毛髪の植え込み状態および密度を正確に再現することは困難である。
【0004】
かつらおよびヘアピースは、一定の利点を有するが、日中にずれてしまうおそれにつながる。さらに、それらは、否定的で不快な影響を有するプロステーゼと見なされる。最後に、それらは、ほとんどの脱毛症、特に、頭皮が毛髪により部分的に覆われている場合には適していない。加えて、かつらおよびヘアピースは、短い髪型に適していない。したがって、この解決策は、成功をもたらさない。
【0005】
別のアプローチは、静電植毛によって個々の繊維を接合することにある。この解決策は、繊維のセットと、連続的な膜の形態で接着剤によりプレコートされた処理対象領域との間の静電電位差を生成することにある。その結果、繊維は、力線に沿って運ばれ、接着剤に植え付けられる。
【0006】
特許文献1は、毛髪を貼り付けるためのステッカーを開示している。
【0007】
既存の携帯用植毛ツールは、植毛されるべき繊維のグループを帯電電極の近くへ運ぶ。電極は、繊維を収容する箱の底部において見出され、この箱は、電極と反対側のその端部において、繊維を解放するための開口を提供する。次いで、繊維は、静電場によって処理対象面上へ放射され、この処理対象面において、繊維は、アースされている皮膚上に配置された接着剤の膜に植え込まれる。繊維の流れおよびそれらの軌道も、完全に制御されるわけではない。これは、植毛対象領域全体にわたる、不規則に分布した繊維の配置をもたらす。審美的に満足できる結果を得るためには、ユーザは、結果を視覚的に監視しなければならず、植毛動作を継続すること、または繰り返すことによって、繊維の量および分布も調整しなければならない。この動作は、著しく不正確であり、配慮に欠ける。なぜならば、過剰な繊維を除去するための動作は厄介であると分かっているので、あまりにも密な植毛は、取り返しがつかないと見なされ得るからである。
【0008】
特許文献2は、身体の領域を処理するための携帯用静電植毛デバイスを開示している。
【0009】
特許文献3は、静電気経路を介して粒状物質を分注するためのデバイスの他の例を説明している。
【0010】
さらに、別の問題は、繊維の封じ込めに関する。皮膚は、導電性であることが知られている。植毛対象領域を所与の電位にすることは、皮膚の全体がこの電位にされることをもたらす。したがって、確立される力線は、植毛対象領域の方へ排他的に向けられるわけではない。これは、所望の領域を大幅に越えた繊維の生成をもたらす。目の輪郭領域などの敏感な領域の近くにおける適用の場合には、望ましくない方向への繊維の放射が防止されなければならない。
【0011】
繊維が広がることを防止するために、封じ込めコーンが存在するが、この解決策は、特に、植毛することが難しい繊維については、完全ではない。身体の敏感な領域を保護するための術野は存在するが、この解決策は、空間内での繊維の分散を防止しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第03/011066号
【文献】国際公開第2013/015759号
【文献】米国特許出願公開第2011/0089268(A1)号明細書
【文献】国際公開第04/055081号
【文献】国際公開第2015/091513号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、現在まで依然として、人間のケラチン物質、特に皮膚上への静電植毛中に繊維の植え込みを制御するための単純な方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、この必要を満たすことを目的としており、この目的を、
- 処理対象のケラチン物質の領域上に、接着領域と接着領域間に延在する非接着領域とのセットを生成するステップと、
- 前記領域上に繊維を静電的に放射する(electrostatically projecting)ステップと、
から成るステップを含む、美容処理方法によって達成する。
【0015】
本発明は、例えば、皮膚、特に、毛髪領域、眉または顎ひげを処理することを意図される。接着領域は、繊維の放射に先立って、ケラチン物質上への接着剤組成物の配置によって形成される。
【0016】
「接着剤組成物」または「接着剤」とは、長持ちする接着強度の有無に関わらず、はぎ取られることに耐えることができる任意の材料を表す。繊維は、本発明において、接着剤の存在に起因してケラチン物質上で保持され、静電荷という単なる事実によっては適所に把持されない。
【0017】
本発明は、先行技術からの接着剤の連続的な膜を、接着点のネットワークに置換することを可能にし、したがって、このネットワークの点の分布に対して影響を与えることによって、繊維の植え込み、および、特に植毛の密度をより簡単に制御することを可能にする。本発明において、接着領域間に非接着領域を作ることによって接着剤組成物を配置する事実は、ケラチン物質に接着されたままとなる繊維の密度および分布に対する制御を実際に提供する。
【0018】
特に、一般に強固であり、したがって、皮膚の変形に簡単に追随することができない高強度の接着剤組成物が使用される場合には、全領域を覆う接着剤の膜と比較して、快適さが著しく改善される。
【0019】
最後に、メークアップの除去が、より簡単であり、洗髪タイプの処理は、実行するのがより簡単である。なぜならば、洗髪タイプの処理は、より簡単に頭皮に到達するからである。
【0020】
本発明は、頭皮または眉弓上の頭髪または体毛を模倣する天然繊維または合成繊維を「取り付ける」ことによって、美化目的のための、毛髪脱毛症または眉毛脱毛症の治療に対する満足できる解決策を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、時間と共に毛髪が平らになる問題に直面せずに、頭皮の処理のために、PSA(pressure-sensitive adhesive(感圧接着剤))タイプの接着剤を使用することを可能にする。
【0022】
好ましくは、接着領域は、接続されておらず、特に、2つの隣接する領域が、30ミクロンから3mm、より良好には、100ミクロンから1mmに及ぶ(縁から縁まで測定された)距離だけ、互いに分離された状態である。
【0023】
非接着領域によって分離された、2つの隣接する接着領域間の空間のサイズは、例えば、30μmから3mmまで、より良好には、100μmから1mmまでに及ぶ。
【0024】
接着領域は、ネットワーク、好ましくは、点のネットワーク、特に、直径が30ミクロンから3mmまでの点のネットワークの形態とされ得る。変形例として、接着領域は、線のネットワーク、もしくは線および点のネットワーク、またはグリッドパターンの形態である。ネットワークは、規則的であっても、または不規則であってもよい。不規則なネットワーク、特に、ランダムネットワークまたは擬似乱数ネットワークは、より自然な外観を与えることを可能にするという点で有利である。点のネットワークの場合、後者は、任意の形状、例えば、円形または非円形であってもよい。ネットワークのすべての点は、同じ形状であってもよく、または、ネットワーク内の変形例として、点の形状および/もしくはサイズが、例えば、ネットワーク内の位置に応じたサイズもしくは形状におけるバリエーションと共に変化してもよい。
【0025】
好ましくは、点の形状は、円形である。
【0026】
また、好ましくは、ネットワークは、2つの隣接する点間に一定でない間隔を有した状態で不規則である。
【0027】
接着領域は、任意の適切な手段によって、例えば、互いから分離された位置において皮膚上に接着剤を配置するように構成された接着剤アプリケータを活用して形成され得る。
【0028】
接着領域は、接着剤が分注される分注口が提供された、少なくとも1つの分注ノズルを備えたディスペンサを活用して形成され得る。
【0029】
1つの好ましい例示的な実施形態において、接着点のネットワークは、下記の特性を有する:
- 4~700個の点/cm2、好ましくは、25個の点/cm2±20%の密度、
- 点のサイズ:直径300μmから3mmまで、
- 密度およびサイズに応じた間隔:30μmから3mm、および、好ましくは、100μmから1mm、
- 点の厚さ:3μmから1mm。
【0030】
アプリケータは、スタンピングによっても接着剤を移転させ得る。
【0031】
変形例において、接着剤は、ステンシルを活用して塗布される。接着剤は、吹付けによって、特に、上記のステンシルを介して塗布されてもよい。
【0032】
接着剤は、1つまたは複数の接着性製品を、特にドットの形態で、皮膚に対して接合させることによって塗布されてもよい。特に、ドットは、取外し可能な保護膜で両面が覆われた、両面粘着剤膜から構成されてもよい。両面粘着剤膜は、ドットとなるように予めカットされている。
【0033】
接着領域の密度は、好ましくは、1平方センチメートル当たり4~700、より良好には、1平方センチメートル当たり10から50の間、さらに良好には、1平方センチメートル当たり20から30の間である。
【0034】
前記領域のうちの1つにおいてケラチン物質に対して接合された繊維が15mN、より良好には20mNの剥離力に耐えるような接着強度を有する接着剤が選ばれることが好ましい。接着剤は、感圧接着剤(PSA)であってもよい。
【0035】
繊維は、合成であることが好ましい。変形例として、繊維は、天然であり、好ましくは、処理される人の毛髪から取得される。
【0036】
繊維の静電放射中に、繊維の近くに据えられた電極との電位差を増加させるように、およびアースとの付加的な電位差を有するように、人を非ゼロ電位に至らせることが好ましい。本発明の1つの例示的な実施形態において、繊維に接触する電極が負電位にされた場合、人は陽電位にされ、特に、1000Vよりも大きい電位、さらに良好には、10000Vよりも大きい電位、または30kV以上の電位にさえなる。そのような電位は、処理される人の上以外の場所に配置される可能性がある繊維の量を低減させる。
【0037】
本発明の別の主題は、上記に定義されたような方法を実施するための組立体であって、
- 処理対象のケラチン物質に対して塗布されるべき接着剤組成物と、
- 前記ケラチン物質に対して塗布されるべき繊維と、
- 接着領域間に非接着領域を作ることによって化粧品組成物を塗布するためのアプリケータと、
を備える、組立体である。
【0038】
組成物、繊維および/またはアプリケータは、最初の使用の前に、同じパッケージングデバイス、例えば、箱、ケース、ブリスターパックまたは小袋に収容されることが好ましい。適切な場合には、植毛装置も、パッケージングデバイスに収容される。この装置は、繊維を収容し、第1の電極を組込んだハンドピースを備えてもよい。本装置は、処理対象の人の上に把持され、または据えられる第2の電極を備えてもよい。
【0039】
本発明は、その非限定的で例示的な実施形態の下記の詳細な説明を読むことで、および添付の図面を検討することで、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】処理対象領域上への接着剤組成物の塗布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
繊維
「繊維」という用語は、Lは、Dよりも大きく、好ましくは、Dより非常に大きく、Dは、繊維の断面が内接する円の直径となるような、長さLおよび直径Dの物体を意味するものとして理解されるべきである。特に、比L/D(またはアスペクト比)は、3.5から2500までの範囲、好ましくは、5~500までの範囲、さらに良好には、5~150までの範囲において選ばれる。
【0042】
本発明において使用され得る繊維は、合成繊維または天然繊維であっても、無機物由来の繊維または有機物由来の繊維であってもよい。それらは、短くてもまたは長くてもよく、個別であってもまたは組織化されていてもよく、例えば、編み込まれていてもよく、中空であってもまたは中実であってもよい。それらは、任意の形状を有してもよく、予期される特定の適用例に応じて、円形の断面または多角形(正方形、六角形または八角形)の断面図を特に有してもよい。特に、それらの端部は、けがを防止するために、鈍くされ、および/または滑らかであり得る。
【0043】
特に、繊維は、好ましくは、0.5mmから20mmに及ぶ長さを有する。
【0044】
それらの断面は、20から120μm、より良好には、30から100μm、さらに良好には、40から80μmまでとすることができる。
【0045】
繊維の重さまたは糸番手は、デニールまたはデジテックスで与えられることが多く、9kmの糸当たりのグラム量を表す。
【0046】
本発明に係る繊維は、例えば、0.1から100デニールまでの範囲、好ましくは、1から70デニールの範囲、さらに良好には、5から60デニールの範囲において選ばれる糸番手を有する。
【0047】
繊維は、織物の製造に使用されるもの、特に、絹繊維、綿繊維、羊毛繊維、亜麻繊維、特に木材から、野菜から、もしくは藻類から抽出されたセルロース繊維、レーヨン繊維、ポリアミド(ナイロン(登録商標))繊維、ビスコース繊維、アセテート繊維、特にレーヨンアセテート繊維、アクリルポリマー繊維、特にポリメチルメタアクリレート繊維もしくはポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)繊維、ポリオレフィン繊維、特にポリエチレン繊維もしくはポリプロピレン繊維、ガラス繊維、珪酸繊維、炭素繊維、特に黒鉛形状の炭素の繊維、(テフロン(登録商標)などの)ポリテトラフルオロエチレン繊維、不溶性コラーゲン繊維、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビニル繊維もしくはポリ塩化ビニリデン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維、キトサン繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレンフタレート繊維、および上述されたものなどのポリマーの混合物から形成された繊維、例えば、ポリアミド/ポリエステル繊維であってもよい。
【0048】
好ましくは、繊維は、ポリアミド6,6繊維である。
【0049】
さらに、繊維は、随意的に、表面処理されてもよく、随意的に、保護層により、または繊維に色を与えることを意図された層により覆われてもよい。
【0050】
「Kanekalon」という商標の難燃性のアクリル繊維が使用されてもよい。
【0051】
繊維は、例えば、Minke-props SKINTEX Flock ref. 590502という参照名の下で販売されるものである。
【0052】
同一の繊維を使用すること、または変形例として、長さ、物質、形状および/もしくは断面が互いに異なる繊維の混合物を使用することが、可能である。様々な長さの繊維の使用は、より自然さを与え得る。色の混合も同様である。特に、灰色の繊維と白色の繊維、または黒色の繊維と白い繊維を混合することは有利となり得る。
【0053】
接着剤組成物
接着領域を生み出すために使用される接着剤組成物は、皮膚に対する塗布、および化粧用途に適している。
【0054】
接着剤組成物は、接着物質を含み、または接着物質から構成される。
【0055】
本発明の目的のために、「物質」という用語は、異なる性質の1つまたは複数のポリマーを含み得る、ポリマーまたはポリマー系を意味する。この接着物質は、ポリマー溶液、または溶媒中のポリマー粒子の分散の形態であってもよい。この接着物質は、上記で定義されたような可塑剤を付加的に含んでもよい。この接着物質は、その粘弾性特性によって定義される一定の粘着性を有しなければならない。
【0056】
本発明に係る接着物質は、「感圧接着」タイプの接着剤、例えば、「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」、3rd edition, D. Satasにおいて引用される接着剤から選ばれてもよい。
【0057】
感圧接着物質は、アクリルポリマー、特に、アクリレートとメタクリレートとの共重合体、ゴムベースの感圧接着剤、またはスチレン共重合体ベースの、例えば、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)およびスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)共重合体ベースの感圧接着剤から選ばれてもよい。
【0058】
それらは、ウレタンポリマー、ポリウレタン、Bio-PSAなどのシリコーン、エチレン/酢酸ビニルポリマー、スチレンベースのブロック共重合体、または天然ゴム、クロロプレン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレンなどであってもよい。
【0059】
ゴム状ポリマーベースの感圧接着剤の非限定的な例として、特に、天然ゴム(ポリ(cis-1,4-イソプレン))、メチルメタクリレート-イソプレングラフト共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンブロック共重合体、ポリブタジエン、エチレン-ブチレンブロック共重合体およびポリクロロプレンが言及され得る。
【0060】
極性アクリルポリマーを含む感圧接着剤の中では、アクリル酸、アクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルベースのブロック共重合体または統計共重合体、ならびに、これらのアクリルとエチレンおよび酢酸ビニルとの共重合体も、言及され得る。
【0061】
他の感圧接着剤として、アクリル酸ブチル、ブチルメタクリレートおよびアクリレートの共重合体が言及されてもよく、これらの共重合体は、例えば、RODERM 560(Rohm and Haas)という商標で市販されている。
【0062】
適切となり得る感圧接着剤の一例は、ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)であり、例えば、固形分40%の15ミクロンの接着性のアクリル微小球を含む水分散体として、GEL-TAC 100G(Advanced Polymer International)という商標で市販されているものである。
【0063】
適切であり得るアクリル重合体の例は、EASTAREZ 2010、2020および2050(Eastman Chemical Co.)、ACRONAL V210(BASF)、MOWILITH LDM 7255、REVACRYL 491(Clariant)ならびにFLEXBOND 165(Air Products)という商標で市販されている。
【0064】
適切であり得る重合体ゴムの市販例は、RICON 130ポリブタジエン(Atofina Sartomer)およびISOLENE 40ポリイソプレン(エレメンティス)という商標で知られている。
【0065】
適切であり得るポリウレタンベースの接着剤の例は、SANCURE 2104(Noveon)およびVYLON UR 1400(東洋紡Vylon)という商標で入手可能である。
【0066】
適切であり得る酢酸ビニル共重合体の例は、PVP/VA 6-630(International Specialty Products)およびFLEXBOND 149(Air Products)という商標で市販されている。
【0067】
ビニルアルコール/酢酸ビニル共重合体の例は、CELVOL 107(Celanese)およびELVANOL 50-42(DuPont)という商標で市販されている。
【0068】
少なくとも1つのモノマー、または、その結果として生じるポリマーが室温(25℃)よりも低いガラス転移温度を有するモノマーの組み合わせを含む、ブロック共重合体または統計共重合体にも言及することができ、これらのモノマーまたはモノマーの組み合わせは、おそらくは、ブタジエン、エチレン、プロピレン、イソプレン、イソブチレン、シリコーン、およびこれらの混合物から選ばれる。そのような物質の例は、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-(エチレンブチレン)-スチレンおよびスチレン-イソプレン-スチレンなどのタイプのブロック重合体、例えば、KratonからKratonの商品名で、またはDexco PolymersからVectorという商品名で販売されているものである。
【0069】
本発明に係る接着物質は、樹脂、ロジンまたは水素化ロジンといったロジン誘導体などの粘着付与樹脂、ロジンエステル、水素化合ロジンエステル、テルペン、脂肪族または芳香族炭化水素ベースの樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂およびクマロン-インデン樹脂も含んでもよい。化合物、例えば、セラック、サンダラックゴム、ダンマル樹脂、エレミゴム、コーパル樹脂、ベンゾイン、およびマスチックガムなども言及されるであろう。
【0070】
下記も言及され得る。
- 架橋されたポリオルガノシロキサンポリマーであるシリコーン樹脂。
【0071】
シリコーン樹脂の呼称は、「MDTQ」という名前で知られており、この樹脂は、それが含む様々なシロキサンモノマー単位の機能として説明され、文字M、D、T、およびQの各々は、あるタイプのユニットを特徴づけている。
【0072】
これらの樹脂のうちで、特に言及され得るものは、化学式[(CH3)3XSiXO]XX(SiO4/2)y(MQ単位)(式中、xおよびyは50から80の範囲の整数である)のトリメチルシロキシケイ酸であり得る、シロキシケイ酸樹脂と、
- NADとしても知られている、ポリマー粒子の非水性分散の形態にある脂肪分散性薄膜形成ポリマーである。
【0073】
疎水性薄膜形成ポリマーの非水性分散としては、液状油性相において、グラフトエチレンポリマー、好ましくはアクリルポリマーの粒子の分散、例えば、液状脂肪相において分散された表面安定化粒子の形態での分散が、言及され得る。
【0074】
表面安定化ポリマー粒子の分散は、文書(特許文献4)において説明されているように製造され得る。
【0075】
文書(特許文献5)において説明されるような、イソボルニル(メタ)アクリレートポリマーから選ばれる安定剤によって安定された、C1~C4アルキル(メタ)アクリレートポリマー粒子の分散も言及され得る。
【0076】
好ましい接着剤の例として、アクリルラテックス、およびスルホポリエステルなどの可溶性ポリマーが言及され得る。
【0077】
UV反応型の接着剤も使用され得る。
【0078】
例において、下記が使用される:
- Pros-Aide(アクリルラテックス)Cream Blend 331 Adhesive、
- AQ1350 - Eastman Chemical(スルホポリエステル可溶性ポリマー)という参照名の下で知られている接着剤。
【0079】
繊維Fおよび接着剤組成物、ならびに接着剤組成物の塗布を可能にするシステムNも、
図4に示されるように、同じパッケージングデバイスPに収容され得る。
【0080】
(実施例)
様々な例において、接着点は、下記の特性を有して生み出される:
- 70μmの間隔で直径330μm、すなわち、625/cm2の密度、
- 140μmの間隔で直径660μm、すなわち、150/cm2の密度、
- 1mmの間隔で直径1mm、すなわち、25/cm2の密度、
- 100μmの間隔で直径1mm、すなわち、90/cm2の密度、
- 1mmの間隔で直径2mm、すなわち、9/cm2の密度。
【0081】
例において、接着点のネットワークは、例えば
図1に示されるように、液体接着剤組成物の1つもしくは複数の液滴を分注することによって、または移転による接着剤組成物の液滴の配置によって、生成される。
図1においては、互いに離れている点のネットワークに従って位置付けられた接着剤の点Aが見られる。塗布は、分注エンドピースNが提供された、接着剤組成物を収容する管Tを用いて行われ得る。
【0082】
接着剤の塗布は、容積測定型の接着剤ディスペンサ、例えば、EFD Ultimusという参照名の下で知られているものなどを活用して、または標準的な注射器タイプのエンドピースによっても、実行され得る。
【0083】
図2においては、植毛後に接着剤組成物が塗布された領域が表されている。
【0084】
繊維Fは、接着剤が配置された点に対して取り付けられたままとなる。
【0085】
図3Aおよび
図3Bにおいては、処理の前の頭皮および処理の後の頭皮が表されている。
【0086】
この例においては、PROS-AIDE Cream Blend 331接着剤の点が、マルチチップアプリケータを活用して頭皮上に配置される。大きい直径、例えば75mmの植毛ヘッドを備えた、CAMPBELL COUTTS Ltd.からのMicroflockerなどの、手動植毛装置を活用して、Minke-props(SKINTEX Flock ref. 590502) PA-6,6繊維が使用される。電位差は、45kVにされる。
【0087】
実行された試験は、本発明によって、処理対象領域の方へ不規則に放射された繊維が、連続的かつ均一に塗布された接着剤が使用される場合よりも、一層魅力的な結果を与えることを実証している。
【0088】
頭皮上で得られる視覚的な結果は、あまりに変化せずに、長期間にわたり維持されるのに対して、連続的な接着剤では、配置部分の外観が、一定の場合には見えてしまう。
【0089】
言うまでもなく、本発明は、ここまでに説明された例に限定されない。特に、頭皮以外の領域を処理することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
A 接着剤の点(接着領域)
F 繊維
N システム
P パッケージングデバイス
T 管