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特許6993324樹脂材料、積層フィルム及び多層プリント配線板
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  • 特許-樹脂材料、積層フィルム及び多層プリント配線板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】樹脂材料、積層フィルム及び多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20220105BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220105BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20220105BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20220105BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220105BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220105BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C08G59/40
B32B27/20 Z
B32B27/26
B32B27/38
B32B15/08 J
H05K1/03 610L
H05K3/46 T
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018517447
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2018009161
(87)【国際公開番号】W WO2018164259
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2017046438
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 達史
(72)【発明者】
【氏名】馬場 奨
(72)【発明者】
【氏名】西村 貴至
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-32923(JP,A)
【文献】特開2017-149861(JP,A)
【文献】特開2017-179346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/40
C08L63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物と、硬化剤と、シリカとを含み、
前記硬化剤が、シアネートエステル化合物と、カルボジイミド化合物とを含む、樹脂材料(但し、硬化剤として活性エステル化合物を含む樹脂材料を除く)
【請求項2】
前記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、前記シリカの含有量が50重量%以上である、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項3】
前記シアネートエステル化合物の含有量の、前記カルボジイミド化合物の含有量に対する比が、重量比で0.2以上、4.0以下である、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項4】
前記エポキシ化合物の含有量の、前記硬化剤の含有量に対する比が、重量比で1.0以上、3.0以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項5】
前記カルボジイミド化合物が、脂環式骨格を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項6】
樹脂フィルムである、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項7】
多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる多層プリント配線板用樹脂材料である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項8】
粗化処理される硬化物を得るために用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項9】
基材と、
前記基材の表面上に積層された樹脂フィルムとを備え、
前記樹脂フィルムが、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂材料である、積層フィルム。
【請求項10】
回路基板と、
前記回路基板上に配置された複数の絶縁層と、
複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、
複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化合物と、硬化剤と、無機充填材とを含む樹脂材料に関する。また、本発明は、上記樹脂材料を用いた積層フィルム及び多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂組成物が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、内部の層間を絶縁するための絶縁層を形成したり、表層部分に位置する絶縁層を形成したりするために、樹脂組成物が用いられている。上記絶縁層の表面には、一般に金属である配線が積層される。また、絶縁層を形成するために、上記樹脂組成物をフィルム化したBステージフィルムが用いられることがある。上記樹脂組成物及び上記Bステージフィルムは、ビルドアップフィルムを含むプリント配線板用の絶縁材料として用いられている。
【0003】
上記樹脂組成物の一例が、下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)シアネートエステル樹脂、(C)イミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体、及び、(D)金属系硬化触媒を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-151700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような従来の樹脂組成物又は該樹脂組成物がBステージ化されたBステージフィルムでは、保存安定性が低いことがある。例えば、一定期間保管された樹脂組成物又はBステージフィルムを用いて、多層プリント配線板を得るために配線上に絶縁層を形成する場合がある。この場合に、樹脂組成物又はBステージフィルムが、配線における凹凸表面に十分に埋め込まれないことがある。結果として、ボイドが発生することがある。
【0006】
さらに、従来の樹脂組成物又はBステージフィルムを用いた場合には、吸湿によってブリスターが発生することがある。
【0007】
本発明の目的は、ブリスターの発生を抑えることができ、更に保存安定性に優れているので保存後であっても穴又は凹凸表面に対する埋め込み性を良好にすることができる樹脂材料を提供することである。また、本発明は、上記樹脂材料を用いた積層フィルム及び多層プリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広い局面によれば、エポキシ化合物と、硬化剤と、シリカとを含み、前記硬化剤が、シアネートエステル化合物と、カルボジイミド化合物とを含む、樹脂材料が提供される。
【0009】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、前記シリカの含有量が50重量%以上である。
【0010】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記シアネートエステル化合物の含有量の、前記カルボジイミド化合物の含有量に対する比が、重量比で0.2以上、4.0以下である。
【0011】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記エポキシ化合物の含有量の、前記硬化剤の含有量に対する比が、重量比で1.0以上、3.0以下である。
【0012】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記カルボジイミド化合物が、脂環式骨格を有する。
【0013】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、樹脂フィルムである。
【0014】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる多層プリント配線板用樹脂材料である。
【0015】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、粗化処理される硬化物を得るために用いられる。
【0016】
本発明の広い局面によれば、基材と、前記基材の表面上に積層された樹脂フィルムとを備え、前記樹脂フィルムが、上述した樹脂材料である、積層フィルムが提供される。
【0017】
本発明の広い局面によれば、回路基板と、前記回路基板上に配置された複数の絶縁層と、複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、上述した樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る樹脂材料は、エポキシ化合物と、硬化剤と、シリカとを含み、上記硬化剤が、シアネートエステル化合物と、カルボジイミド化合物とを含むので、ブリスターの発生を抑えることができ、更に保存安定性に優れているので、保存後であっても穴又は凹凸表面に対する埋め込み性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明に係る樹脂材料は、エポキシ化合物と、硬化剤と、シリカとを含む。本発明に係る樹脂材料では、上記硬化剤が、シアネートエステル化合物と、カルボジイミド化合物とを含む。
【0022】
本発明では、上記の構成が備えられているので、ブリスターの発生を抑えることができる。例えば、樹脂フィルム(樹脂材料)又は樹脂材料の硬化物が吸湿したとしても、水膨れが発生しにくくなる。
【0023】
さらに、本発明では、上記構成が備えられているので、保存安定性を高めることができる。本発明に係る樹脂材料が一定期間保管された後であっても、樹脂材料を穴又は凹凸表面に良好に埋め込ませることができる。例えば、多層プリント配線板においては、配線上に絶縁層が形成される。絶縁層が形成される表面には、配線があるので、凹凸が存在する。本発明に係る樹脂材料を用いることで、配線上に絶縁層を良好に埋め込ませることができ、ボイドの発生を抑えることができる。
【0024】
さらに、本発明では、上記の構成が備えられているので、硬化物(絶縁層など)と金属層との密着性を高めることもできる。例えば、金属層の硬化物に対する剥離強度を高めることができる。
【0025】
さらに、本発明では、上記の構成が備えられているので、一定期間保管された後に樹脂組成物をフィルム化したときに、フィルムの均一性を高めることができ、また樹脂材料を硬化させたときに、硬化物の均一性も高めることもできる。
【0026】
本発明に係る樹脂材料は、樹脂組成物であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記樹脂組成物は、流動性を有する。上記樹脂組成物は、ペースト状であってもよい。上記ペースト状には液状が含まれる。取扱性に優れることから、本発明に係る樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。また、本発明では、樹脂材料が樹脂フィルムであっても、樹脂フィルムを穴又は凹凸表面に良好に埋め込ませることができる。
【0027】
本発明に係る樹脂材料は、上記の性質に優れていることから、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。本発明に係る樹脂材料は、上記の性質に優れていることから、多層プリント配線板用樹脂材料であることが好ましく、多層プリント配線板に用いられる層間絶縁用樹脂材料であることがより好ましい。
【0028】
上記多層プリント配線板において、上記樹脂材料により形成される絶縁層の厚さ(1層当たりの厚さ)は、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さ(1層当たりの厚さ)は、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
【0029】
本発明に係る樹脂材料は、粗化処理される硬化物を得るために好適に用いられる。
【0030】
以下、本発明に係る樹脂材料に用いられる各成分の詳細、及び本発明に係る樹脂材料の用途などを説明する。
【0031】
[エポキシ化合物]
上記樹脂材料に含まれているエポキシ化合物は特に限定されない。該エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用可能である。該エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0033】
保存安定性の向上、ブリスターの発生の抑制、及び硬化物と金属層との密着性の向上の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記エポキシ化合物は、芳香族骨格を有することが好ましく、ビフェニル骨格を有することが好ましく、ビフェニル型エポキシ化合物であることが好ましい。また、上記エポキシ化合物がビフェニル骨格を有することで、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0034】
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中のシリカの含有量が30重量%以上であっても、更にシリカの含有量が60重量%以上であっても、流動性が高い樹脂組成物が得られる。このため、樹脂材料が基板上に配置された場合に、シリカを均一に存在させることができる。
【0035】
エポキシ化合物の分子量、及び後述する硬化剤の分子量は、エポキシ化合物又は硬化剤が重合体ではない場合、及びエポキシ化合物又は硬化剤の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、エポキシ化合物又は硬化剤が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
【0036】
上記エポキシ化合物及び後述する硬化剤(シアネートエステル化合物及びカルボジイミド化合物)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0037】
[硬化剤]
上記樹脂材料は、硬化剤として、シアネートエステル化合物と、カルボジイミド化合物とを含む。
【0038】
エポキシ化合物を硬化させるための硬化剤として、様々な硬化剤が存在する。エポキシ化合物を硬化させるための硬化剤としては、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物、ジシアンジアミド及びカルボジイミド化合物(カルボジイミド硬化剤)等が挙げられる。本発明では、硬化剤として、シアネートエステル化合物と、カルボジイミド化合物との2種が少なくとも用いられる。
【0039】
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記シアネートエステル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」及び「PT-60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA-230S」、「BA-3000S」、「BTP-1000S」及び「BTP-6020S」)等が挙げられる。
【0041】
保存安定性の向上、ブリスターの発生の抑制、及び硬化物と金属層との密着性の向上の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記シアネートエステル化合物の分子量は、好ましくは200以上、より好ましくは300以上であり、好ましくは4000以下、より好ましくは2000以下である。
【0042】
上記カルボジイミド化合物は、下記式(1)で表される構造単位を有する。下記式(1)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。上記カルボジイミド化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
【化1】
【0044】
上記式(1)中、Xは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基、アリーレン基、又はアリーレン基に置換基が結合した基を表し、pは1~5の整数を表す。Xが複数存在する場合、複数のXは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0045】
Xがアルキレン基又はアルキレン基に置換基が結合した基である場合に、該アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは6以下、特に好ましくは4以下、最も好ましくは3以下である。該アルキレン基の好適な例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びブチレン基が挙げられる。
【0046】
Xがシクロアルキレン基又はシクロアルキレン基に置換基が結合した基である場合に、該シクロアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは3以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは6以下である。該シクロアルキレン基の好適な例としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、及びシクロヘキシレン基が挙げられる。
【0047】
Xがアリーレン基又はアリーレン基に置換基が結合した基である場合に、該アリーレン基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を2個除いた基である。該アリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上であり、好ましくは24以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、特に好ましくは10以下である。該アリーレン基の好適な例としては、フェニレン基、ナフチレン基、及びアントラセニレン基が挙げられる。
【0048】
Xが、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基又はアリーレン基に置換基が結合した基である場合がある。この場合に、該置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基及びアシルオキシ基が挙げられる。置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。置換基としてのアルキル基及びアルコキシ基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。置換基としてのアルキル基及びアルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは6以下、特に好ましくは4以下、最も好ましくは3以下である。置換基としてのシクロアルキル基及びシクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは3以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは6以下である。置換基としてのアリール基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を1個除いた基である。置換基としてのアリール基の炭素原子数は、好ましくは6以上であり、好ましくは24以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、特に好ましくは10以下である。置換基としてのアリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6以上であり、好ましくは24以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、特に好ましくは10以下である。置換基としてのアシル基は、式:-C(=O)-R1で表される基であり、該式中、R1はアルキル基又はアリール基を表す。R1で表されるアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。R1で表されるアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは6以下、特に好ましくは4以下、最も好ましくは3以下である。R1で表されるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6以上であり、好ましくは24以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、特に好ましくは10以下である。置換基としてのアシルオキシ基は、式:-O-C(=O)-R1で表される基であり、該式中、R1はアシル基のR1と同じ意味を表す。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、又はアシルオキシ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0049】
好適な一つの形態において、少なくとも1つのXは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、又はシクロアルキレン基に置換基が結合した基である。
【0050】
好適な一つの形態において、カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化合物の分子全体の重量を100重量%としたとき、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上にて、式(1)で表される構造単位を有する。すなわち、カルボジイミド化合物は、式(1)で表される構造単位を、上述した含有量の下限を満足するように含むことが好ましい。カルボジイミド化合物は、末端構造を除く構造が、実質的に式(1)で表される構造単位であってもよい。カルボジイミド化合物の末端構造としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルルキル基に置換基が結合した基、シクロアルキル基、シクロアルキル基に置換基が結合した基、アリール基、及びアリール基に置換基が結合した基が挙げられる。末端構造としてのアルキル基に置換基が結合した基、シクロアルキル基に置換基が結合した基、及びアリール基に置換基が結合した基における置換基を、置換基Aとする。該置換基Aとしては、上記式(1)中のXがアルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基又はアリーレン基に置換基が結合した基における置換基として挙げた置換基が挙げられる。また、置換基Aは、上記式(1)中のXがアルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基又はアリーレン基に置換基が結合した基における置換基と、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0051】
なお、カルボジイミド化合物は、その製法に由来して、イソシアネート基(-N=C=O)を有する場合がある。樹脂材料の保存安定性をより一層高める観点、より一層良好な特性を示す絶縁層を実現する観点から、カルボジイミド化合物中のイソシアネート基の含有量(「NCO含有量」ともいう。)は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4重量%以下、より一層好ましくは3重量%以下、更に好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下である。カルボジイミド化合物中のイソシアネート基の含有量は、0重量%(未含有)であってもよい。
【0052】
保存安定性の向上、ブリスターの発生の抑制、及び硬化物と金属層との密着性の向上の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記カルボジイミド化合物は、脂環式骨格を有することが好ましい。特に、上記カルボジイミド化合物が脂環式骨格を有することで、保存安定性がより一層高くなる。更に、上記カルボジイミド化合物が芳香族骨格を有さずかつ脂環式骨格を有することで、保存安定性がかなり高くなる。
【0053】
上記カルボジイミド化合物の市販品としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-02B、V-03、V-04K、V-07、V-09、10M-SP、及び10M-SP(改)、並びに、ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P、P400、及びハイカジル510が挙げられる。
【0054】
保存安定性の向上、ブリスターの発生の抑制、及び硬化物と金属層との密着性の向上の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記カルボジイミド化合物の分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上であり、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下である。
【0055】
上記シアネートエステル化合物の含有量の、上記カルボジイミド化合物の含有量に対する比を、比(シアネートエステル化合物の含有量/カルボジイミド化合物の含有量)と記載する。保存安定性の向上、ブリスターの発生の抑制、及び硬化物と金属層との密着性の向上の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記比(シアネートエステル化合物の含有量/カルボジイミド化合物の含有量)は、重量比で、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.8以下である。
【0056】
上記エポキシ化合物の含有量の、上記硬化剤の含有量に対する比を、比(エポキシ化合物の含有量/硬化剤の含有量)と記載する。保存安定性の向上、ブリスターの発生の抑制、及び硬化物と金属層との密着性の向上の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記比(エポキシ化合物の含有量/硬化剤の含有量)は、重量比で、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.2以上であり、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.8以下である。上記硬化剤の含有量は、シアネートエステル化合物の含有量と、カルボジイミド化合物の含有量と、他の硬化剤が配合される場合に他の硬化剤との合計の含有量である。
【0057】
上記樹脂材料中の上記シリカ及び溶剤を除く成分100重量%中、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量は、好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な硬化物が得られ、絶縁層の熱による寸法変化をより一層抑制できる。上記エポキシ化合物と上記硬化剤との含有量比は、エポキシ化合物が硬化するように適宜選択される。
【0058】
[熱可塑性樹脂]
上記樹脂材料は、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
【0059】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂の使用により、樹脂材料の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及びシリカの不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるためにシリカの分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に樹脂材料が濡れ拡がり難くなる。上記フェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0062】
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
【0063】
保存安定性をより一層高める観点からは、上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
【0064】
上記熱可塑性樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0065】
上記熱可塑性樹脂の含有量は特に限定されない。上記樹脂材料中の上記シリカ及び溶剤を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量(熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である場合にはフェノキシ樹脂の含有量)は好ましくは2重量%以上、より好ましくは4重量%以上であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、樹脂組成物のフィルム化がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。また、絶縁層の表面の表面粗さがより一層小さくなり、絶縁層と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0066】
[シリカ]
上記樹脂材料は、無機充填材として、シリカを含む。シリカの使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。また、硬化物の誘電正接がより一層小さくなる。更に、他の無機充填材と比較して、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くすることもできる。
【0067】
絶縁層の表面の表面粗さを小さくし、絶縁層と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記シリカは、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの形状は球状であることが好ましい。
【0068】
上記シリカの平均粒径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは150nm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。上記シリカの平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、粗化処理などにより形成される孔の大きさが微細になり、孔の数が多くなる。この結果、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0069】
上記シリカの平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
【0070】
上記シリカは、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記シリカが球状である場合には、上記シリカのアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0071】
上記シリカは、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。これにより、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成され、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
【0072】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0073】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記シリカの含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。上記シリカの含有量が上記下限以上であると、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。また、上記シリカの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成される。
【0074】
[硬化促進剤]
上記樹脂材料は、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂材料を速やかに硬化させることで、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
【0076】
上記イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0077】
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0078】
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0079】
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
【0080】
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂材料中の上記シリカ及び溶剤を除く成分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.9重量%以上であり、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは3.0重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料が効率的に硬化する。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、樹脂材料の保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
【0081】
[溶剤]
上記樹脂材料は、溶剤を含まないか又は含む。上記溶剤の使用により、樹脂材料の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂材料が樹脂組成物である場合に樹脂組成物の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記シリカを含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0082】
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
【0083】
樹脂材料が樹脂組成物である場合に、上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂材料における上記溶剤の含有量は特に限定されない。樹脂材料が樹脂組成物である場合に、上記樹脂材料の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
【0084】
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂材料には、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及びエポキシ化合物以外の他の熱硬化性樹脂等を添加してもよい。
【0085】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0086】
上記他の熱硬化性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0087】
(樹脂フィルム(Bステージフィルム)及び積層フィルム)
上記樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルム(Bステージフィルム)が得られる。樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。
【0088】
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚みは好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
【0089】
上記樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、押出機を用いて、樹脂材料を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法、溶剤を含む樹脂材料をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、並びに従来公知のその他のフィルム成形法等が挙げられる。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
【0090】
上記樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50~150℃で1~10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
【0091】
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂材料をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にあるフィルム状樹脂材料である。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0092】
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロスなどに沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。上記樹脂材料は、基材と、該基材の表面上に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムの形態で好適に用いることができる。上記積層フィルムにおける上記樹脂フィルムが、上記樹脂組成物により形成される。
【0093】
上記積層フィルムの上記基材としては、金属箔、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのオレフィン樹脂フィルム、及びポリイミドフィルム等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。上記基材は、金属箔であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
【0094】
(多層プリント配線板)
本発明に係る多層プリント配線板は、回路基板と、上記回路基板上に配置された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える。上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上述した樹脂材料の硬化物である。上記回路基板に接している絶縁層が、上述した樹脂材料の硬化物であってもよい。2つの絶縁層の間に配置された絶縁層が、上述した樹脂材料の硬化物であってもよい。上記回路基板から最も離れた絶縁層が、上述した樹脂材料の硬化物であってもよい。複数の上記絶縁層のうち、上記回路基板から最も離れた絶縁層の外側の表面上に、金属層が配置されていてもよい。
【0095】
上記多層プリント配線板は、例えば、上記樹脂フィルムを加熱加圧成形することにより得られる。
【0096】
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属箔を積層できる。上記樹脂フィルムと金属箔とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを金属箔に積層可能である。
【0097】
また、多層プリント配線板の絶縁層が、積層フィルムを用いて、上記積層フィルムの上記樹脂フィルムにより形成されていてもよい。上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
【0098】
上記多層プリント配線板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
【0099】
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
【0100】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
【0101】
図1に示す多層プリント配線板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の絶縁層13~16が積層されている。絶縁層13~16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数層の絶縁層13~16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13~15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13~16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
【0102】
多層プリント配線板11では、絶縁層13~16が、上記樹脂材料により形成されている。本実施形態では、絶縁層13~16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13~16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層プリント配線板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層プリント配線板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
【0103】
(粗化処理及び膨潤処理)
上記樹脂材料は、粗化処理又はデスミア処理される硬化物を得るために用いられることが好ましい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。
【0104】
上記樹脂材料を予備硬化させることにより得られた硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
【0105】
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30~85℃で1~30分間、硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50~85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に絶縁層と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
【0106】
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0107】
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0108】
上記粗化処理の方法は特に限定されない。上記粗化処理の方法として、例えば、30~90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30~90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30~85℃及び1~30分間の条件で、硬化物を処理する方法が好適である。上記粗化処理の温度は50~85℃の範囲内であることが好ましい。上記粗化処理の回数は1回又は2回であることが好ましい。
【0109】
硬化物の表面の算術平均粗さRaは好ましくは10nm以上であり、好ましくは200nm未満、より好ましくは100nm未満、更に好ましくは50nm未満である。算術平均粗さRaが上記下限以上及び上記上限未満であると、電気信号の導体損失を効果的に抑えることができ、伝送損失を大きく抑制することができる。さらに、絶縁層の表面により一層微細な配線を形成することができる。上記算術平均粗さRaは、JIS B0601(1994)に準拠して測定される。
【0110】
(デスミア処理)
上記樹脂材料を予備硬化させることにより得られた硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、COレーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60~80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
【0111】
上記スミアを除去するために、硬化物の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
【0112】
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0113】
上記デスミア処理の方法は特に限定されない。上記デスミア処理の方法として、例えば、30~90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30~90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30~85℃及び1~30分間の条件で、1回又は2回、硬化物を処理する方法が好適である。上記デスミア処理の温度は50~85℃の範囲内であることが好ましい。
【0114】
上記樹脂材料の使用により、デスミア処理された絶縁層の表面の表面粗さが十分に小さくなる。
【0115】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0116】
(エポキシ化合物)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「850-S」)
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032D」)
ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000」)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製「830-S」)
ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX-4000H」)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(日本化薬社製「XD-1000」)
【0117】
(硬化剤)
カルボジイミド樹脂含有液(日清紡ケミカル社製「V-03」、固形分50重量%)
カルボジイミド樹脂(日清紡ケミカル社製「10M-SP(改)」)
ノボラック型フェノール樹脂(明和化成社製「H-4」)
シアネートエステル樹脂含有液(ロンザジャパン社製「BA-3000S」、固形分75重量%)
シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」)
【0118】
(硬化促進剤)
イミダゾール化合物(2-フェニル-4-メチルイミダゾール、四国化成工業社製「2P4MZ」)
【0119】
(シリカ)
シリカ含有スラリー(シリカ70重量%:アドマテックス社製「SC-2050-HNK」、平均粒子径0.5μm、アミノシラン処理、シクロヘキサノン30重量%)
【0120】
(アルミナ)
アルミナ含有スラリー(アルミナ70重量%:アドマテックス社製「AC-2050-MOE」、平均粒子径0.6μm、アミノシラン処理、メチルエチルケトン25重量%)
【0121】
(熱可塑性樹脂)
フェノキシ樹脂含有液(三菱化学社製「YX6954BH30」、固形分30重量%)
【0122】
(実施例1~11及び比較例1~4)
下記の表1,2に示す成分を下記の表1,2に示す配合量で配合し、撹拌機を用いて1200rpmで4時間撹拌し、樹脂組成物ワニスを得た。
【0123】
アプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に得られた樹脂材料(樹脂組成物ワニス)を塗工した後、100℃のギアオーブン内で3分間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルムと、該PETフィルム上に厚さが40μmであり、溶剤の残量が1.0重量%以上、3.0重量%以下である樹脂フィルム(Bステージフィルム)とを有する積層フィルムを得た。
【0124】
その後、積層フィルムを、190℃で90分間加熱して、樹脂フィルムが硬化した硬化物を作製した。
【0125】
(評価)
(1)ピール強度(90°ピール強度)
エッチングにより内層回路を形成した100mm角のCCL基板(日立化成工業社製「E679FG」)の両面を銅表面粗化剤(メック社製「メックエッチボンド CZ-8101」)に浸漬して、銅表面を粗化処理した。得られた積層フィルムを、樹脂フィルム側から上記CCL基板の両面にセットして、積層体を得た。この積層体について、真空加圧式ラミネーター機(名機製作所社製「MVLP-500」)を用いて、20秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後ラミネート圧0.4MPa及びラミネート温度100℃で20秒間ラミネートし、更にプレス圧力1.0MPa及びプレス温度100℃で40秒間プレスした。
【0126】
次に、180℃及び30分の硬化条件で樹脂フィルムを硬化させた。その後、樹脂フィルムからPETフィルムを剥離し、硬化積層サンプルを得た。
【0127】
60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップセキュリガントP」と和光純薬工業社製「水酸化ナトリウム」とから調製された水溶液)に、上記硬化積層サンプルを入れて、膨潤温度60℃で10分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
【0128】
80℃の過マンガン酸ナトリウム粗化水溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレートコンパクトCP」、和光純薬工業社製「水酸化ナトリウム」)に、膨潤処理された上記硬化積層サンプルを入れて、粗化温度80℃で20分間揺動させた。その後、25℃の洗浄液(アトテックジャパン社製「リダクションセキュリガントP」、和光純薬工業社製「硫酸」)により2分間洗浄した後、純水でさらに洗浄した。このようにして、エッチングにより内層回路を形成したCCL基板上に、粗化処理された硬化物を形成した。
【0129】
上記粗化処理された硬化物の表面を、60℃のアルカリクリーナ(アトテックジャパン社製「クリーナーセキュリガント902」)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、上記硬化物を25℃のプリディップ液(アトテックジャパン社製「プリディップネオガントB」)で2分間処理した。その後、上記硬化物を40℃のアクチベーター液(アトテックジャパン社製「アクチベーターネオガント834」)で5分間処理し、パラジウム触媒を付けた。次に、30℃の還元液(アトテックジャパン社製「リデューサーネオガントWA」)により、硬化物を5分間処理した。
【0130】
次に、上記硬化物を化学銅液(全てアトテックジャパン社製「ベーシックプリントガントMSK-DK」、「カッパープリントガントMSK」、「スタビライザープリントガントMSK」、「リデューサーCu」)に入れ、無電解めっきをめっき厚さが0.5μm程度になるまで実施した。無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニールをかけた。無電解めっきの工程までのすべての工程は、ビーカースケールで処理液を2Lとし、硬化物を揺動させながら実施した。
【0131】
次に、無電解めっき処理された硬化物に、電解めっきをめっき厚さが25μmとなるまで実施した。電解銅めっきとして硫酸銅溶液(和光純薬工業社製「硫酸銅五水和物」、和光純薬工業社製「硫酸」、アトテックジャパン社製「ベーシックレベラーカパラシド HL」、アトテックジャパン社製「補正剤カパラシド GS」)を用いて、0.6A/cmの電流を流しめっき厚さが25μm程度となるまで電解めっきを実施した。銅めっき処理後、硬化物を190℃で90分間加熱し、硬化物を更に硬化させた。このようにして、銅めっき層が上面に積層された硬化物を得た。
【0132】
得られた銅めっき層が積層された硬化物において、銅めっき層の表面に、10mm幅に切り欠きを入れた。その後、引張試験機(島津製作所社製「AG-5000B」)を用いて、クロスヘッド速度5mm/分の条件で、硬化物(絶縁層)と金属層(銅めっき層)のピール強度(90°ピール強度)を測定した。
【0133】
[ピール強度の判定基準]
○:ピール強度が0.5kgf/cm以上
△:ピール強度が0.4kgf/cm以上、0.5kgf/cm未満
×:ピール強度が0.4kgf/cm未満
【0134】
(2)樹脂材料の保存安定性
得られた積層フィルムを25℃で3日間及び5日間それぞれ保管した。
【0135】
銅張り積層板(厚さ150μmのガラスエポキシ基板と厚さ35μmの銅箔との積層体)を用意した。銅箔をエッチング処理し、L/Sが50μm/50μm及び長さが1cmである銅パターンを26本作製し、凹凸基板を得た。保管後の積層フィルムを、樹脂フィルム側から上記凹凸基板の凹凸表面に重ねて両面にセットして、積層体を得た。この積層体について、真空加圧式ラミネーター機(名機製作所社製「MVLP-500」)を用いて、20秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後ラミネート圧0.4MPa及びラミネート温度100℃で20秒間ラミネートし、更にプレス圧力1.0MPa及びプレス温度100℃で40秒間プレスした。このようにして、凹凸基板上に樹脂フィルムが積層されている積層体Aを得た。積層体Aの状態で、ビーコ社製「WYKO」を用いて、積層体Aにおける樹脂フィルムの上面の凹凸の値を測定した。具体的には、凹凸の隣り合う凹部部分と凸部部分との高低差の最大値を、凹凸の値として採用した。このようにして、ラミネート試験での凹凸の状態の有無を評価した。樹脂材料の保存安定性を下記の基準で判定した。
【0136】
[樹脂材料の保存安定性の判定基準]
○:3日後及び5日後の樹脂フィルムにおいて銅パターン内に樹脂が充填されており、凹凸の値が0.5μm以下
△:3日後の樹脂フィルムにおいて銅パターン内に樹脂が充填されており、凹凸の値が0.5μm以下であるが、5日後の樹脂フィルムにおいて、銅パターン内に樹脂が充填されていない、または凹凸の値が0.5μmを超える
×:3日後及び5日後の樹脂フィルムにおいて、銅パターン内に樹脂が充填されていない、または凹凸の値が0.5μmを超える
【0137】
(3)ブリスターの抑制性
銅めっき層が積層された100mm角の硬化物を用いて、JEDECのLEVEL3に準拠して、上記基板の吸湿(温度60℃及び湿度60RH%で40時間)を行った。その後、上記基板の窒素リフロー処理(ピークトップ温度260℃)を行った。なお、リフローは30回繰り返した。リフロー後のブリスターの発生の有無を目視により確認した。
【0138】
[ブリスターの抑制性の判定基準]
○:30回のリフローにてブリスター発生無
△:20回のリフローにてブリスター発生無、21~29回のリフローにてブリスター発生
×:20回以下のリフローでブリスター発生
【0139】
(4)平均線膨張係数(CTE)
得られた硬化物(厚さ40μmの樹脂フィルムを使用)を3mm×25mmの大きさに裁断した。熱機械的分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「EXSTAR TMA/SS6100」)を用いて、引っ張り荷重33mN及び昇温速度5℃/分の条件で、裁断された硬化物の25℃~150℃までの平均線膨張係数(ppm/℃)を算出した。
【0140】
組成及び結果を下記の表1,2に示す。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【符号の説明】
【0143】
11…多層プリント配線板
12…回路基板
12a…上面
13~16…絶縁層
17…金属層
図1