(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】モジュール式眼内レンズシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2018522812
(86)(22)【出願日】2016-11-03
(86)【国際出願番号】 US2016060350
(87)【国際公開番号】W WO2017079449
(87)【国際公開日】2017-05-11
【審査請求日】2019-10-30
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514185747
【氏名又は名称】クラービスタ メディカル,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CLARVISTA MEDICAL,INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】カフーク、マリック ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】サスマン、グレン
(72)【発明者】
【氏名】ツァハー、ルドルフ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】マクリーン、ポール ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウイ、ハービー
(72)【発明者】
【氏名】ソロモン、ケリー
(72)【発明者】
【氏名】シオーニ、ロバート
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0052246(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0005864(US,A1)
【文献】国際公開第98/005273(WO,A1)
【文献】特開平04-364840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、ベースに取り外し可能に挿入されるように構成されたレンズとを含むモジュール式眼内レンズ(IOL)システムであって、
ベースは、
前側開口部を取り囲む環状の前側部と、
後側開口部を取り囲む環状の後側部と、
前側開口部から後側開口部までベースを貫通して延びる中央開口と、
前記中央開口を取り囲む凹部とを含み、
前記凹部は、少なくとも前記前側部の第1水平面と、前記後側部の第2水平面と、前記後側部の垂直面であって、第1水平面及び第2水平面の間に延びる垂直面とによって画定されており、
前記後側部は、第2水平面から半径方向内側に延びかつ後側に向かって傾斜した表面をさらに含み、
レンズは、
第1の縁辺及び第2の縁辺を含む光学部と、
光学部から突出する第1のタブ及び第2のタブとを含み、
第1のタブは固定タブであり、
第1のタブの両側縁は非対称となるように異なる形状であり、第2のタブは可動タブであり、レンズがベースに挿入されたとき、第1のタブ及び第2のタブはベースの前記凹部に受容される、モジュール式IOLシステム。
【請求項2】
前記前側部は、前記前側開口部を画定する半径方向内側面を有し、前記半径方向内側面は、前記前側部の第1水平面から前方に向かって傾斜している、請求項1に記載のモジュール式IOLシステム。
【請求項3】
前記前側部は1つ又は複数のノッチを含む、請求項1に記載のモジュール式IOLシステム。
【請求項4】
前記後側部の後方周縁に沿って延びる1つ又は複数の四角いエッジをさらに含む、請求項1に記載のモジュール式IOLシステム。
【請求項5】
ベースの寸法は、前記前側部の前側表面と前記後側部の後側表面との間で前後方向に測定して約1.01mmである、請求項1に記載のモジュール式IOLシステム。
【請求項6】
ベースの直径は約7.78mmである、請求項1に記載のモジュール式IOLシステム。
【請求項7】
第1のタブが光学部に接触する位置に、レンズを貫通する穴をさらに含む、請求項1に記載のモジュール式IOLシステム。
【請求項8】
第2のタブは、光学部の周縁から突出する半径方向内側部と、前記半径方向内側部から半径方向外側に突出する半径方向外側部とを含み、前記半径方向外側部は1つ又は複数のばねタブを含む、請求項1に記載のモジュール式IOLシステム。
【請求項9】
ベースは、ベースから半径方向外側に突出する一対の支持部をさらに含み、前記一対の支持部の先端間の距離は約13.00mmである、請求項1に記載のモジュール式IOLシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年4月5日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS,TOOLS AND METHODS”と題する米国仮特許出願第62/318,272号、2015年11月17日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS,TOOLS AND METHODS”と題する米国仮特許出願第62/256,579号、及び2015年11月4日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS,TOOLS AND METHODS”と題する米国仮特許出願第62/250,780号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張するものであり、その各々を参照によって本願に援用する。本願は、2015年1月30日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS,TOOLS AND METHODS”と題する米国仮特許出願第62/110,241号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張する、2015年8月17日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS,TOOLS AND METHODS”と題する米国特許出願第14/828,083号、現在の米国特許第9,364,316号に関する、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS,TOOLS AND METHODS”と題する米国特許出願第15/150,360号、現在の米国特許第9,421,088号に関する、2016年7月25日に出願された米国特許出願第15/218,658号に関し、その各々を参照によって本願に援用する。本願はまた、2014年2月18日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS,TOOLS AND METHODS”と題する米国仮特許出願第61/941,167号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張する2015年1月30日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS,TOOLS AND METHODS”と題する米国特許第14/610,360号にも関し、その各々を参照によって本願に援用する。本願はまた、2013年6月3日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS,TOOLS AND METHODS”と題する米国仮特許出願第61/830,491号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張する、2013年8月16日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS,TOOLS AND METHODS”と題する米国特許出願第13/969,115号、現在の米国特許第9,289,287号に関する、2016年2月26日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS,TOOLS AND METHODS”と題する米国特許出願第15/054,915号にも関し、その各々を参照によって本願に援用する。本願はまた、2012年1月24日に出願された、“LASER ETCHING OF IN SITU INTRAOCULAR LENS AND SUCCESSIVE SECONDARY LENS IMPLANTATION”と題する米国仮特許出願第61/589,981号及び2012年7月30日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS & METHODS”と題する米国仮特許出願第61/677,213号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張する、2013年1月23日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS & METHODS”と題する米国特許出願第13/748,207号、現在の米国特許第9,095,424号に関する、2013年7月9日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS AND METHODS”と題する米国特許出願第13/937,761号、現在の米国特許第9,125,736号に関する、2015年7月24日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS AND METHODS”と題する米国特許出願第14/808,022号、現在の米国特許第9,387,069号に関する、2016年7月8日に出願された、“MODULAR INTRAOCULAR LENS DESIGNS AND METHODS”と題する米国特許出願第15/176,582号にも関し、その各々を参照によって本願に援用する。
【0002】
本開示は一般に、眼内レンズ(IOL:intraocular lens)に関する。より詳しくは、本開示はモジュール式IOLの設計、方法、及び関連するツールに関する。
【背景技術】
【0003】
人の眼は、角膜と呼ばれる透明な外側部分を通じて光を透過させ、水晶体により像を網膜に合焦させることによって視力を提供するように機能する。合焦された像の質は、眼球の大きさや形状及び角膜と水晶体の透明さをはじめとする多数の要素に依存する。
【0004】
加齢や病気により水晶体の透明度が低下すると(例えば、曇ると)、網膜へと透過できる光の量が減るため、視力が低下する。このような眼の水晶体の異常は、医学的には白内障として知られる。受け入れられているこの状態に対する治療は、水晶体を水晶体嚢から外科的に取り出し、人工眼内レンズ(IOL)を水晶体嚢に設置することである。米国においては、白内障の水晶体のほとんどが、超音波水晶体乳化吸引術と呼ばれる外科的手技により取り出される。この処置中、水晶体前嚢に切開創(切嚢)を作成し、細い超音波水晶体乳化吸引破砕チップを病変水晶体に挿入して、超音波で振動させる。振動する破砕チップによって水晶体が液化又は乳化し、水晶体を水晶体嚢の外へと吸引してよい状態となる。病変水晶体を取り出したら、IOLに置換する。
【0005】
IOL移植のための白内障手術の後は、光学的結果が最適な状態ではないかもしれず、又はしばらくしてから調整する必要が生じるかもしれない。例えば、術後まもなく、屈折力の補正が正しくなく、「屈折力サプライズ」と呼ばれることのある屈折異常の原因となっていると判断されるかもしれない。また、例えば、手術後長い期間が経過してから、患者により強い屈折力補正、乱視矯正、又は多焦点補正等、別の補正が必要となり、又は望ましくなるかもしれない。
【0006】
これらの場合の各々において、外科医は最適ではないIOLを水晶体嚢から取り出し、新しいIOLを入れなおすのを試みたがらないかもしれない。一般に、IOLを取り出す際の水晶体嚢の操作には、後嚢が破ける等、水晶体嚢に損傷を与えるリスクが伴う。このリスクは時間と共に、水晶体嚢がIOLの周囲で虚脱し、組織の内方成長がIOLの支持部を取り囲むにつれて増大する。それゆえ、IOLを取り出さずに、また水晶体嚢を操作せずに光学的結果を補正又は修正できることが望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、水晶体嚢を操作することなく、ベース又は一次レンズに取り付けることのできるレンズを使って光学的結果を補正又は修正できるIOLシステムと方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態は、眼内ベースと光学部品を含み、これらが組み合わされてモジュール式IOLを形成するモジュール式IOLシステムを提供する。一般に、モジュール式IOLでは、術中又は術後の何れにおいても、ベースをその場に残したままレンズを調整又は交換できる。
【0009】
1つの実施形態において、モジュール式IOLシステムは、半径方向に外側に延びる2つの支持部を有する環状のベースを含む。ベースには中央穴と内周面が画定され、内周面に沿って半径方向に内側に開放する凹部がある。モジュール式IOLシステムはまた、光学本体を有するレンズを含み、第一及び第二のタブが光学本体から半径方向に外側に延びる。ベースとレンズは、レンズの第一及び第二のタブをベースの凹部の中に入れて組み立てられてもよい。第一のタブは可動ばねであってもよく、第二のタブは非可動延長部であってもよい。第一のタブは、レンズをベースと組み立てるために半径方向に圧縮される必要があってもよい。第一のタブは一対の片持ちばねを含んでいてもよく、各々、一端が光学本体に取り付けられ、一端が自由である。
【0010】
モジュール式IOLシステムを送達及び/又は組み立てるための様々な手技も開示される。これらの手技は、特に本明細書に記載されていないモジュール式IOLの実施形態にも適用されてよい。
【0011】
本開示の実施形態によるモジュール式IOLシステム、ツール、及び方法は、固定単焦点、多焦点、トーリック、調節可能、及びこれらの組合せを含む様々な種類のIOLに適用されてよい。それに加えて、本開示の実施形態によるモジュール式IOLシステム、ツール、及び方法は、例えば白内障、近視(myopic、near-sighted)、遠視(hyperopic、far-sighted)、乱視眼の重度の屈折異常、水晶体転移、無水晶体症、偽水晶体症、及び核硬化症の治療に使用されてもよい。
【0012】
本開示の実施形態のその他の様々な態様は、以下の詳細な説明と図面に記されている。
図面は本開示の例示的実施形態を示している。図面は必ずしも正確な縮尺によらず、同じ番号が付された同様の要素を含んでいるかもしれず、寸法(ミリメートル単位)及び角度(度単位)が必ずしも限定ではなく例として含まれているかもしれない。図中、
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本開示によるモジュール式IOLのベースの斜視図である。
【
図3】本開示によるモジュール式IOLのレンズの斜視図である。
【
図6A】代替的なレンズの各種の変形型の上面図である。
【
図6B】代替的なレンズの各種の変形型の上面図である。
【
図6C】代替的なレンズの各種の変形型の上面図である。
【
図6D】代替的なレンズの各種の変形型の上面図である。
【
図7】本開示によるピンホールレンズの斜視図である。
【
図8A】本開示による代替的なピンホール部品の各種の図である。
【
図8B】本開示による代替的なピンホール部品の各種の図である。
【
図8C】本開示による代替的なピンホール部品の各種の図である。
【
図8D】本開示による代替的なピンホール部品の各種の図である。
【
図9】本開示による薬剤送達機能を有するベースの上面図である。
【
図10A】本開示による薬剤送達機能を有する代替的なベースの各種の図である。
【
図10B】本開示による薬剤送達機能を有する代替的なベースの各種の図である。
【
図10C】本開示による薬剤送達機能を有する代替的なベースの各種の図である。
【
図11】モジュール式IOLを使用するためのある例示的な手順を示すフローチャートである。
【
図12A】モジュール式IOLを移植するための例示的な手技を示す。
【
図12B】モジュール式IOLを移植するための例示的な手技を示す。
【
図12C】モジュール式IOLを移植するための例示的な手技を示す。
【
図12D】モジュール式IOLを移植するための例示的な手技を示す。
【
図12E】モジュール式IOLを移植するための例示的な手技を示す。
【
図13A】本開示によるモジュール式IOLと使用するためのプローブのある実施形態を示す。
【
図13B】本開示によるモジュール式IOLと使用するためのプローブのある実施形態を示す。
【
図14A】本開示によるモジュール式IOLと使用するための鉗子のある実施形態を示す。
【
図14B】本開示によるモジュール式IOLと使用するための鉗子のある実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照すると、人の眼10が断面で示されている。眼10は、いくつかの目的のために光に反応する器官と説明されている。知覚反応を伴う感覚器官として、眼は視力を提供する。網膜24の桿体細胞及び錐体細胞により、色の違いや奥行き感覚を含む知覚反応を伴う光の認識と視力が得られる。それに加えて、人の眼の網膜24内の結像しない光感受性神経節細胞が、瞳孔の大きさの調節、メラトニンホルモンの調節と抑制、及び体内時計の同調に影響を与える光信号を受け取る。
【0015】
眼10は、正確には球でなく、むしろ2つの部分の融合体である。小さい方の前側部分は、より湾曲しており、角膜12と呼ばれ、強膜14と呼ばれる大きい方の部分に連結されている。角膜部12は典型的に、半径約8mm(0.3インチ)である。強膜14は残りの6分の5を構成し、その半径は典型的に約12mmである。角膜12と強膜14は、角膜輪部と呼ばれるリングにより接続される。角膜12は透明であるため、角膜12の代わりに眼の色である虹彩16とその黒い中心である瞳孔が見える。眼10の中を見るには、光が外部に反射されないため、検眼鏡が必要である。眼底(瞳孔の反対の領域)は、黄斑28を含み、特徴的な青白い視神経円盤(視神経乳頭)を示し、この位置において、眼に入る血管が通過し、視神経繊維が眼球から出る。
【0016】
それゆえ、眼10は3つの膜から構成され、3つの透明な構造を取り囲む。最も外側の層は角膜と12と強膜14で構成される。中間の層は脈絡膜20、毛様体22、及び虹彩16からなる。最も内側の層は網膜24であり、これは脈絡膜20の血管及び網膜血管からその循環を得ており、これは検眼鏡の中で見ることができる。これらの膜の中には眼房水、硝子体26、及び柔軟な水晶体30がある。眼房水は2つの領域、すなわち角膜12及び虹彩16と水晶体30の露出領域との間の前眼房と虹彩16と水晶体30との間の後眼房に収容された透明な流体である。水晶体30は、細かい透明な繊維で構成される毛様体堤靭帯32(チン小帯)により毛様体22に懸垂されている。硝子体26は、眼房水よりはるかに大きい透明なゼリーである。
【0017】
水晶体30は眼内の透明な両面凸形状構造であり、角膜12と共に、網膜24に合焦されるように光を屈折させるのを助ける。水晶体30は、その形状を変えることによって、眼の焦点距離を変えて様々な距離で物体にピントを合わせることができるように機能し、それによって関心対象の物体の鮮鋭な実像が網膜24上に形成される。水晶体30のこの調節は調節作用として知られ、写真用カメラのそのレンズの移動による合焦と似ている。
【0018】
水晶体は3つの主要部分、すなわち水晶体包被膜、水晶体上皮細胞、及び水晶体線維細胞を有する。水晶体包被膜は水晶体の最も外側の層を形成し、水晶体線維細胞は水晶体内部の大部分を形成する。水晶体上皮細胞は、水晶体包被膜と水晶体線維細胞の最も外側の層との間に位置し、主として水晶体の前側にあるが、水晶体赤道を少し越えて後方まで延びる。
【0019】
水晶体包被膜は平滑で透明な基底膜であり、水晶体を完全に取り囲む。水晶体包被膜は弾性があり、コラーゲンからなる。これは、水晶体上皮細胞により合成され、その主成分はIV型コラーゲンと硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)である。水晶体包被膜は弾性に富み、そのため、水晶体は水晶体包被膜を毛様体22に接続する小帯繊維が緊張していないときにはより球形となる。水晶体包被膜の厚さは、水晶体赤道付近の最も厚い部分から眼底後極部付近の最も薄い部分まで約2~28マイクロメートルと変化する。水晶体包被膜には、水晶体後部より大きい前部の曲率が関係していてもよい。
【0020】
水晶体30の様々な病変や疾患は、IOLで治療されてもよい。例えば、必ずしも限定ではないが、本開示の実施形態によるモジュール式IOLは、白内障、近視(myopic、near-sighted)、遠視(hyperopic、far-sighted)、及び乱視眼の重度の屈折異常、水晶体転移、無水晶体症、偽水晶体使用、及び核硬化症の治療に使用されてもよい。しかしながら、説明を目的として、本開示のモジュール式IOLの実施形態を白内障に関して述べる。
【0021】
以下の詳細な説明では、第一及び第二の眼内部品、すなわち眼内光学部を釈放可能に受けるように構成された眼内ベースを含むモジュール式IOLシステムの各種の実施形態について述べる。何れか1つの実施形態に関して述べられている特徴は、他の実施形態にも当てはめられ、取り入れられてよい。
【0022】
図2及び3に関して、ベース100とレンズ200は、組み立てられるとモジュール式IOLのある実施形態を形成する。ベース100とレンズ200の一般的な説明を以下に示すが、米国特許出願第14/828,083号にさらに詳しく述べられており、その全体を参照によって本願に援用する。
【0023】
特に
図2に関して、モジュール式IOLのベース100の部分は、中央穴104を画定する環状リング102を含む。一対の支持部106が環状リング102から半径方向に外側に延びる。環状リング102は、下縁108、上縁110、及び内側に面する側壁を含んで内側に面する凹部112を画定し、その中にレンズ200を挿入してモジュール式IOLを形成してもよい。
【0024】
ベース100の下縁108は1つ又は複数のはけ口用切り欠き114を含んでいてもよく、これは術中に眼粘弾剤を除去するのに役立つ。上縁110は、1つ又は複数のノッチ116を含んでいてもよく、これは術中にプローブ(例えば、シンスキ・フック)を挿入するための口を提供し、それによってベース100がより操作しやすくなる。ベース100は、環状リング102の周辺に沿って延び、レンズ200上への細胞増殖を減少させるのに役立つ外縁118を含んでいてもよい。
【0025】
特に
図3に関して、モジュール式IOLのレンズ200は光学部分202と1つ又は複数のタブ204及び206を含む。図のように、タブ204は固定され、それに対してタブ206は可動式であってもよい。固定タブ204は貫通穴208を含んでいてもよく、それによってプローブ450(例えば、シンスキ・フック)又は同様の器具を使って、穴208と係合させ、タブ204を操作してもよい。可動タブ206は、ベース100の穴104の中に送達するための圧縮位置とベース100の凹部112の中に配置して、ベース100とレンズ200との間の勘合接続を形成するための圧縮されていない伸展位置(図の通り)との間で作動されてもよい。また、可動タブ206は凹部112に挿入されてもよく、固定タブ104を凹部112に入れやすくするための圧縮位置と、固定タブ104を凹部112の中へとさらに挿入して、ベース100とレンズ200との間に勘合接続を形成するための圧縮されていない伸展位置との間で作動されてもよいことも想定される。
【0026】
可動タブ206は2つの部材210及び212を含んでいてもよく、各々の一端が光学部202の周囲の周縁214に接続され、もう一端が自由であり、それゆえ2つの片持ちばねを形成する。縁214の外径はベース100の後縁108の内径より大きくてもよく、それによってレンズ200はベース100の開口104から落ちず、またレンズ200はその周辺に沿ってベース100の後縁108により円周方向に支持される。ノッチ216は周縁214の2つの部材210及び212間に形成されてもよく、これは、ヒンジのような柔軟性を付加する。ノッチ218は固定タブ204に提供されてもよく、これは固定タブ204を操作してベース100の凹部112の中に入れるためのプローブ(例えば、シンスキ・フック)又は同様の器具の挿入口を提供する。部材210及び212の自由端は、反対方向に延びてもよい。また、部材210及び212の1つ又は複数が曲げやすいように湾曲されていてもよいことも想定される。例えば、部材210及び212の半径方向に外側の面は凸型であってもよく、その一方で、部材210及び212の半径方向に内側の面は凹型であってもよい。
【0027】
一般に、ベース100とレンズ200を組み立てる際、これらの特徴は、光学部202の中央平面がベース100の中央平面と平行になり、光学部202の中心(前後)軸がベース100の中心(前後)軸と一致し、共線的となるように構成されてもよい。天然の水晶体包被膜が解剖学的に対称で水晶体包被膜内においてベース100が中央にあると仮定すると、この構成では基本的に光学部202の中心軸と水晶体嚢の中心が整列し、光学部202が中央に置かれる。しかしながら、視軸(中心窩軸)が解剖軸(瞳孔中心線)と整列しない場合があり、この差はγ角と呼ばれる。このような例において、ベース100に関する光学部200の中心軸をずらし、そのようにして偏位を提供することが望ましいかもしれない。これは、例えばタブ204及び206、凹部112、及び/又は支持部106を、光学部202の中心(前後)軸がベース200の中心(前後)軸に関して横方向に(鼻側又はこめかみ側に)ずれるように構成することによって達成されてもよい。例えば、限定的ではないが、ベースの凹部112を画定する側壁は、支持部106に関してずらされてもよく、それによって光学部202の中心軸がずれる。例えば0.5mm~2.0mmまで5mm間隔で異なるずれを提供することができるであろう。ベース100とレンズ200に角方位マークが提供されてもよく、これはずれの方向(鼻側又はこめかみ側)を示す。同様に、組み立てられたベース100と光学部200の中央平面は、天然の水晶体嚢の赤道面に関して傾いているかもしれない。この傾きを補償するために、例えば、タブ204及び206、凹部112、及び/又は支持部106は、光学部202の中央平面がその反対に傾けられてもよい。
【0028】
後でより詳しく説明するように、レンズ200は、例えばインジェクタを介して送達するために、軸220又は軸222を中心として丸めてもよい。軸220及び222は基本的にレンズ200を二分する。軸220は光学部202の中心と2つのタブ204及び206の中心を通る。軸222は、光学部202の中心をタブ204及び206間において、直径方向に反対のタブ204及び206が軸222のそれぞれの側にあるように通過する。
【0029】
ベース100及びレンズ200は、本明細書に記載されている代替的な実施形態を含め、疎水性アクリル材料を極低温で切削加工及び研磨することによって形成されてもよい。任意選択により、ベース100は、2つの(前側及び後側)部品を形成し、これらを接着剤により一体に接続することによって製造されてもよい。例えば、2つの部品は、U.V.硬化性接着剤により一体に接続された親水性アクリル樹脂を極低温切削加工したものであってもよい。あるいは、2つの部品は、接着剤で一体に接続される、異なる材料から形成されてもよい。例えば、前側部品は眼球組織に接着しない親水性アクリル樹脂で形成されてもよく、後側部品は眼球組織に接着する疎水性アクリル樹脂で形成されてもよい。
【0030】
別の代替案として、ベース100は第一の部品を極低温切削加工し、第二の部品をオーバモールドすることによって製造されてもよい。第一の部品は、オーバモールドされたときに相互に勘合する形状的特徴を含んでいてもよく、それゆえ部品を接続するための接着剤が不要となる。例えば、ベース100は、親水性アクリル樹脂を極低温切削加工して後側部品を形成し、シリコン等の成形可能材料の前側部品をオーバモールドすることによって製造されてもよい。
【0031】
疎水性アクリル樹脂によってベース100とレンズ200は、光干渉断層撮影(OCT:optical coherence tomography)を使って可視化されるが、OCTの可視化を向上させる材料を取り入れることが望ましいかもしれない。例示的な「OCT好適」材料には、参照によって本願に援用されるEhlersらの米国特許出願公開第2013/0296694号に記載されているように、ポリ塩化ビニル、グリコール修飾ポリ(エチレンテレフタレート)(PET-G)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、及びRADEL(商標)のブランド名で販売されているようなポリフェニルスルホンが含まれるが、これらに限定されない。このようなOCT好適材料は、ベース100又はレンズ200の一部に適用され、又は組み込まれてもよい。例えば、OCT好適材料の同心円リングは、下縁及び上縁108/110の各々に適用されてもよい。リングは、ベースの傾きの検出に役立つように異なる直径を有していてもよい。また、例えば、OCT好適材料はレンズ200のタブ204/206に適用されてもよい。これは、ベース100とレンズ200が眼内で正しく組み立てられたか否かを判断するのに役立つかもしれない。OCT好適材料の点は、ベース100のうち、光学部200上の対応するOCT好適点と整合する部分に適用されてもよく、これは眼内での正しい組立を示す。
【0032】
中実材料の代わりに、ベース100とレンズ200は、後に眼内で膨らませることのできる中空の材料で製作されてもよい。この構成では、ベース100とレンズ200は例えば成形シリコンから製作され、シリンジと針を使って生理食塩水、シリコンゲル、等の液体で膨らまされてもよい。針は、眼内に移植されたベース100とレンズ200の壁を穿刺して、これらの部品を膨らませてもよい。材料は、針を抜くとセルフシール式に閉じてもよい。中空の材料の代わりに、ベース100とレンズ200は、加水により膨張するシリコンハイドロゲル等のスポンジ状材料で形成されてもよい。何れの方法も角膜切開創の大きさをより小さくすることができ、これは、ベース100とレンズ200を膨らませない、又は膨張していない状態で送達し、その後、眼内に入れられたところで膨らまされ、または膨張させられるからである。
【0033】
図4A~4Dを参照すると、代替的なベース400が示されている。
図4Aは斜視図であり、
図4Bは上面図であり、
図4Cは
図4Bの線A-Aに沿った断面図であり、
図4Dは
図4Cの円Cの詳細な断面図である。寸法(mm)は例として示され、必ずしも限定ではない。代替的なベース400は、以下に特段に記載されている点を除き、
図2に関して説明したベース100と同様である。
【0034】
代替的なベース400は、中央穴404を画定する環状リング402を含む。一対の支持部106は環状リング402から半径方向に外側に延びる。環状リング402は、下縁408、上縁410、及び内側に面する凹部412を含み、その中にレンズ200を挿入して、モジュール式IOLを形成してもよい。
図4A~4Dに関する説明から明らかとなるように、ベース400の凹部412は、ベース100の凹部112とは異なる大きさ及び構成とされる。
【0035】
環状リング402の上縁410は1つ又は複数のノッチ116を含んでいてもよく、これは術中に、ベース400をより扱いやすくするプローブ(例えば、シンスキ・フック)の挿入口を提供する。支持部106は、ノッチ116と同じ目的で、環状リング402の付近に穴416を含んでいてもよい。一対の四角いエッジ417が環状リング402の後方周辺に沿って延びていてもよく、レンズ200上への細胞増殖(後発白内障、すなわちPCO(posterior capsular opacification))の低減化に役立つ。
【0036】
特に
図4Dに関して、凹部412の深い部分は、水平の後面418、水平の前面420、及び垂直の側面又は外面422により画定される四角い形状を有していてもよい。凹部はまた、水平の前面420から半径方向に内側に、前方の外側に向かって延びるフレア状の前面426と、水平後面418から半径方向に内側に、後方の外側に向かって延びるフレア状の後面428も含んでいてよい。後縁408の内径は前縁410の内径より小さくてもよい。この構成により、レンズ200は、前側縁410により画定される円形の開口を通って設置されて、後縁の上に着座し、又は載ってもよく、フレア状の前壁426は、フレア状の後壁428と共に、レンズ200のタブ204及び206を凹部412の深い部分の中に案内するための漏斗として機能してもよい。凹部412の中に完全に嵌められた後に、水平な後壁418、水平な前壁420、及び垂直な側壁422は、タブ204及び206の、対応する水平及び垂直面と勘合する形状を形成し、レンズ200のベース400に関する前方、後方、及び半径方向への移動を制限する。
【0037】
図5A~5Eを参照すると、代替的なレンズ500が示されている。
図5Aは斜視図であり、
図5Bは上面図であり、
図5Cは
図5Bの線A-Aに沿った断面図であり、
図5Dは
図5Cの円Bの詳細断面図であり、
図5Eは
図5Bの円Cの詳細上面図である。寸法(mm)は例として示され、必ずしも限定ではない。代替的なレンズ500は、以下に特段に記載されている点を除き、
図3に関して説明されたレンズ200と同様である。
【0038】
レンズ500は、光学部分502と1つ又は複数のタブ504及び506を含んでいてもよい。図のように、タブ504は固定され、その一方でタブ506は可動的であってもよい。固定タブ504は貫通穴208を含んでいてもよく、それによってプローブ(例えば、シンスキ・フック)又は同様の器具を使って穴208と係合させ、タブ504を操作してもよい。可動タブ506は、ベース400の穴404の中に送達するための圧縮位置と、ベース400の凹部412の中に配置して、それゆえベース400とレンズ500との間に勘合接続を形成するための圧縮されていない伸展位置(図の通り)との間で作動させてもよい。また、可動タブ506を凹部412に挿入してもよく、固定タブ504を凹部412の中に入れやすくする圧縮位置と、固定タブ504を凹部412の中にさらに挿入して、ベース400とレンズ500との間に勘合接続を形成するための圧縮されていない伸展位置との間で作動させてもよいことも想定される。
【0039】
可動タブ506は2つの部材510及び512を含んでいてもよく、各々の一端は光学部502の縁辺に接続され、もう一方の端は自由であり、それゆえ2つの片持ちばねが形成される。縁514は光学部502の周辺に沿って延び、ばね510及び512を避けて終了していてもよく、それゆえ、ばね510及び512は光学部502の縁辺に当たって完全に圧縮できる。レンズ500の縁514の外径は、ベース400の後縁408の内径より大きくてもよく、それによってレンズ500はベース400の開口404から落ちず、また、レンズ500はその周辺に沿ってベース400の後縁408により円周方向に支持される。案内穴516を有するガセットは2つの部材510及び512間に配置されてもよく、これはプローブによる操作を容易にする。同様に、案内穴508は固定タブ504の中に提供されてもよく、これはタブ504を操作してベース400の凹部412の中に入れるためのプローブ(例えば、シンスキ・フック)又は同様の器具の挿入口を提供する。ノッチ518は固定タブ504に提供されてもよく、これは、ノッチが穴508の反時計回り方向にあるときに前側が(下ではなく)上になることを示す視覚的表示となる非対称を提供する。
【0040】
図5Cにおいてわかるように、光学部502の前側及び後側は、光学部の所望の屈折力(ディオプトリ)に対応する凸形半径を有していてもよい。固定タブ504とばねタブ510及び512は、図のようなフレア状の断面を有していてもよい。より具体的には、また
図5Dに示される詳細図からよりよくわかるように、固定タブ504は、光学部502から半径方向に外側に、より薄い内側部分504Bからフレア状のより厚い外側部分504Aへと延びる。穴508は、より薄い内側部分504Bを通じて延びていてもよい。より厚い部分504Aの最も外側の形状は、前述のように凹部412と勘合してベース400に関するレンズ500の前後及び半径方向/横方向の移動を最小化する前方水平面と後方水平面と側面又は外側垂直面による正方形の形状を有する。より厚い部分504Aはまた、インジェクタのプランジャとよりよく係合することになり、レンズ500がインジェクタ内に詰まりにくくする。より薄い部分504Bによっても、ベース400の凹部412を画定する表面から前方及び後方へのオフセット部が提供され、それによってレンズ500とベース400との間が接着しにくくなる。同じフレア状の構成及び関連する利点は、図のように、ばねタブ510及び512の各々にも当てはまる。
【0041】
市販のIOLは典型的に、赤道上の直径(支持部を除く)が約6mmであり、前後厚さが6mmの直径部分で約0.2mm、中央で0.7mmであり、全体の体積は約12mm3を提供する。レンズ500は同様の寸法であるが、ベース400により体積は実質的により大きくなる。ベース400は、赤道上の直径(支持部を除く)が約7.8mmであり、前後厚さが約1mmであり、レンズがベース内に配置されたときに全体の体積は約26立方ミリメートル[ベースが13.4mm3、支持部が12.5mm3]を提供する。それゆえ、組み立てられたベース400とレンズ500の大きさは、体積において、市販されている従来のIOLよりはるかに大きい。この比較的大きい体積は、水晶体嚢をより天然の水晶体のように満たすためのものであり、それゆえ、ベース400とレンズ500の安定性が増し、ベース400の周囲での水晶体嚢の虚脱による術後転移が軽減される。比較として、対応する約180mm3の体積の場合、典型的な天然の水晶体の赤道上直径は約10.4mm、前後寸法は約4.0mmである。解剖学的なばらつきにより、天然の水晶体の体積は130mm3~250mm3の範囲であってもよい。それゆえ、ベース400とレンズ500は、天然の水晶体が抽出された後の水晶体嚢の体積のうちの10%を超える部分(約20%~10.4%)を占め、それに対して従来のIOLが占めるのは水晶体の体積の10%以下(約10%~5%)である。換言すれば、ベース400とレンズ500は、従来のIOLと比較して、水晶体嚢の体積を約2倍使用する。
【0042】
図6A~6Dを参照すると、各種のレンズ500が概略的上面図で示されている。
図6Aにおいて、レンズ500Aは可動タブ500Aを含み、これはプローブ又は同様の器具により操作するための穴520を含むばねタブ510A及び512Aを持つ。ばねタブ510A及び512Aは、
図5A~5Eに関して説明した実施形態より比較的長く、光学部502から半径方向に外側に延び、対応する端は相互に向かって延びる。これによって可動タブを容易に操作でき、固定タブ504をベース400の凹部412の中に挿入してもよく、その後、ばねタブ510A及び512Bを、穴520の中にセットされたプローブを使って個別に操作し、凹部412の中に詰め込んでもよい。穴520は、ばねタブ510A及び512Aの上に、凹部412の中に着座されたときにこれらが部分的に見えるような位置及び寸法とされてもよい。換言すれば、穴520が完全に見えれば、ばねタブ510A及び512Aはベース400の前縁410より前にあり、穴520が見えなければ、ばねタブ510A及び512Aはベース400の後縁408より後方にあり、穴520が部分的に見えれば(例えば、半分見えている)、ばねタブ510A及び512Aはベース400の凹部412の中に正しく着座している。ばねタブ510A及び512Aの端はレンズ500のアーム510及び512の端より近い位置まで近接しているため、術中に顕微鏡で見たときに、可動タブ506Aがベース400の凹部412の中に入っていることを確認するために必要な視覚的領域がより小さくなる。
図6Bは同様のレンズ500Bを示しているが、そのばねタブ510B及び512Bはより短く、ベース400の凹部412の中でのより大きなばね荷重と安定性を提供する。
【0043】
図6Cにおいて、可動タブ506Cは、光学部502から半径方向に外側に延びるばねタブ510C及び512Cを含み、対応する端は相互に反対に延びる。相互に反対に延びることによって、ばねタブ510C及び512Cは、ベース400の凹部412と接触するためのより広い基部を提供し、それによって、ベース内でのレンズ500Cの傾きが軽減される。
図6Dは同様のレンズ500Dを示しているが、ばねタブ510D及び512Dと光学部502との取付部がより広く、ベース400の凹部412内でのより大きなばね荷重と安定性を提供する。
【0044】
図7に関して、レンズ200の光学部分202は不透明リング230を含んでいてもよく、これは小さい1.0~2.0mmの中心開口232(ピンホール)を画定して、集束された光だけが眼内に入り、焦点深度を深くすることができる。不透明リング230は、可視光を部分的又は完全にブロックするために、光学部202の表面に適用される遮光マスク、又はその他の表面処理を含んでいてもよい。表面処理は、移植前(すなわち、製造時)に光学部202に適用されても、又は術後に(すなわち、移植後)に適用して、患者のニーズに合わせて開口232の特徴(例えば、大きさと位置)をカスタマイズしてもよい。表面処理は、不透明リング230を画定又は変更するための光学部202の表面へのレーザエッチング又はフロスティングを含んでいてもよい。あるいは、表面処理は、光学部202の上の、又はその中に埋め込まれた発色団を選択的に活性化又は不活性化して、その色又はコントラストを変化させて(より明るく、又はより暗くする)、それによって開口232を画定又は変更することを含んでいてもよい。開口232は、図のように光学部202の中央に置かれてもよく、又は、開口232の横方向の位置が、レンズ200をベース100に関して回転させることによって視軸に関して調整されるように中心からずらされてもよい。
【0045】
あるいは、不透明リングは、
図8A~8Dに示されるピンホールを持つ第三の(別の)構成要素800を含んでいてもよい。
図8Aはピンホール部品800の斜視図であり、
図8Bは
図8Aの線A-Aに沿った断面図であり、
図8Cは側面図であり、
図8Dは底面図である。ピンホール部品800は、小さい1.0~2.0mmの中心開口832(ピンホール)を画定して、集束された光だけが眼に入り、焦点深度を深くするための不透明な前方リング830を含んでいてもよい。固定タブ804は、後方の立ち上がりリング820から半径方向に外側に延びる。同様に、ばね部材810及び812を含む可動タブ806は、直径方向の反対側において、立ち上がりリング820から半径方向に外側に延びていてもよい。後方の立ち上がりリング820の高さは、レンズ200の厚さよりわずかに大きくてもよく、それによってタブ804及び806は、ピンホール部品800がレンズ200の前面上に配置されたときに、ベース100上の凹部112と整列する。この構成により、ピンホール部品800をレンズ200の上に、レンズ200とピンホール部品800の両方がベース100に接続された状態で位置付けることができる。ピンホール部品800はベース100に、ピンホール部品800のタブ804及び806がレンズ200のタブ204及び206からずれて(例えば90度)位置付けられるように取り付けられてもよい。換言すれば、ピンホール部品800のタブ804及び806はベース100の凹部112のうち、レンズ200のタブ204及び206により占められていない部分を利用する。任意選択により、同様の構成は、トーリックレンズ、多焦点レンズ、テレスコーピックレンズ等を含む第三の部品に使用されてもよい。
【0046】
任意選択により、
図9に示されるように、薬剤がベース100の中に組み込まれ、又はそれによって担持されてもよい。ベース100をレンズ200ではなく薬剤のキャリアとして使用することに数多くの利点がある。例えば、それによって、薬剤(複数の場合もある)がレンズ200の光学性能と有するかもしれないすべての干渉が回避される。また、ベース100はレンズ200には必要な製造プロセスの一環としてのタンブリングを必要としないため、ベース100により担持される薬剤は損害の可能性にさらされない。薬剤は、1つ又は複数の別々の薬剤キャリアをベース100に接続することによって、又はベース100の材料を薬剤用キャリアとして(例えば、スポンジ状に)機能させることによって、又は1つ又は複数の薬剤溶出材料をベース100に組み込むことによって、又は1つ又は複数の再充填可能な薬剤担持容器をベース100に組み込むことによって、ベース100に組み込むことができる。ベース100の1つ又は複数の部分が薬剤(複数の場合もある)を担持してもよく、これらの部分は相互に分離されて、例えば異なる薬剤間の相互作用が回避されてもよい。ベース100の、薬剤を担持する部分(複数の場合もある)は、光又は熱エネルギー(例えば、レーザ、UV光等)により選択的に活性化させて、保存されている薬剤(複数の場合もある)を一度に、又はある期間にわたって連続的に放出させてもよい。
【0047】
このような薬剤の臨床適応の例には、萎縮型又は滲出型黄斑変性症、開放又は閉塞隅角緑内障、ぶどう膜炎、後発白内障、白内障手術後の術後管理等が含まれる。滲出型黄斑変性症に使用されてもよい薬剤の例には、アフリベルセプト、ベバシブマム、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ステロイド、及びアプタマが含まれる。萎縮型黄斑変性症に使用されてもよい薬剤の例には、補体因子、抗酸化剤、及び抗炎症剤が含まれる。開放隅角緑内障に使用されてもよい薬剤の例には、ブリモニジン、ラタノプロスト、チモロール、ピロカルピン、ブリンゾラミド、及びベータ遮断薬、アルファアゴニスト、ROCK阻害薬、アデノシン取り込み阻害薬、炭素脱水酵素阻害薬、アドレナリン及びアセチルコリン受容体活性剤、及びプロスタグランジン類縁体の一般的カテゴリに属するその他の薬剤が含まれる。ぶどう膜炎に使用されてもよい薬剤の例には、メトトレキサート、抗体、デキソメタゾン、トリアムシノロン、及びその他のステロイド剤が含まれる。後発白内障に使用されてもよい薬剤の例には、増殖抑制、抗有糸分裂、抗炎症及び、水晶体上皮細胞の各地用を阻害するその他の薬剤が含まれる。白内障手術後の術後管理に使用されてもよい薬剤の例には、フルオロキノロン等の抗生剤、ケトロラック等の非ステロイド剤、及びプレドニゾロン等のステロイドが含まれる。様々な眼科疾患及び状態の治療に使用されてもよいその他の薬剤には、抗繊維化剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗癌剤、遊走阻害剤、抗増殖剤、ラパマイシン、トリアムシノロンアセトニド、エベロニムス、タクロリムス、パクリタキセル、タソチミラマイシン、アザチオプリン、デキサメタゾン、シクロスポリン、ベバシズマブ、抗VEGF薬、抗IL-1薬、カナキヌマブ、抗IL-2薬、ウイルスベクタ、ベータ阻害薬、アルファアゴニスト、ムスカリン拮抗剤、ステロイド、抗生剤、非ステロイド抗炎症剤、プロスタグランジン類縁体、ROCK阻害薬、一酸化窒素、エンドセリン、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害薬、CNPA、コルチコステロイド、及び抗体による免疫抑制剤が含まれる。これらの薬剤は、患者の特定の臨床適応に応じて、個別に、又は組み合わせて使用されてよい。
【0048】
また、ベース100のうち、薬剤(複数の場合もある)を担持する部分(複数の場合もある)は、特定の方向(複数の場合もある)に面していてもよく、その一方で、他の方向は遮蔽又は遮断して、水晶体包被膜の特定の部分に薬剤をより集中させる。例えば、後部の眼球構造が薬剤送達標的であってもよく(例えば、黄斑変性症の緩和のため)、及び/又は前方眼球構造が薬剤送達標的であってもよい(例えば、緑内障薬を隅角付近に送達するため、ぶどう膜炎のための薬剤を送達するため、又は白内障手術後の術と語管理のため)。
【0049】
例えば、
図9は、1つ又は複数の薬剤キャリア90を取り入れたベース100の上面(前方)図を示す。図のように、薬剤キャリア90は、ベース100の本体の前面の円周に沿って離間されている。薬剤キャリア90は、再充填可能容器(例えば、シリコン容器)と、溶出多孔質材料(例えば、生体適合スポンジ)、生分解可能又は生体溶出性材料(例えば、PLGA)等を含んでいてもよい。容器はまた、レーザ、UV光、RF信号、磁気による操作、又は拡散バリアを遠隔的に除去するためのその他の方法を通じて薬剤を水性環境に露出させることを目的としていてもよい。キャリア90は、例えばベース100の表面上に設置しても、又は埋め込んでもよい。薬剤の送達を眼球の特定領域に集中させるために、キャリア90は片面(例えば、図のように前側)において露出させてもよく、その一方で、反対側はベース100の材料で覆われる。
【0050】
代替的な薬剤担持ベース100が
図10A~10Cに示されている。
図10Aは斜視図であり、
図10Bは
図10Aの線B-Bに沿った断面図であり、
図10Cは
図10Aの線C-Cに沿った断面図である。
図10B及び10Cにおいてわかるように、ベース100は環状リング102の円周に沿って延びる内側通路96を含んでいてもよい。内側通路96は、環状リング102の前面に沿って均等に分散されていてもよい一連のポート92を介してベース100の外部と流体連通する。リング状材料94は、通路96の中に配置されてもよい。リング状材料94の脱水時の体積は通路96の体積より小さくてもよく、加水時の体積はその脱水時の体積より大きく、最大で通路96の体積である。リング94材料は、例えば、高平衡含水比(EWC)シリコンハイドロゲル、又はその他のこれに類する加水可能材料又はスポンジ様材料を含んでいてもよい。使用時には、移植前に、脱水状態のリング94を有するベース100がステロイド及びNSAID等の所望の薬剤(複数の場合もある)を含む流体中に浸漬されてもよい。ポート92によって、薬剤を含む流体が脱水状態のリング94の中へと流れることができ、それによって脱水状態のリング94は、それが薬剤含有流体で加水されるにつれて体積を増大させる(膨張する)。すると、加水状態のリング94は通路チャネル96の容積全体を占めてもよい。ベース100が移植されると、眼の眼房水は、通路96内のリング94全体に曝されるのではなく、ポート92の付近で加水状態のリング状材料96と接触する。それゆえ、リング94から眼への薬剤溶出は、ポート92の数と大きさにより制御されてもよく、これらはある薬剤又は薬剤の組合せにとって望ましい溶出速度を実現するように選択されてもよい。
【0051】
一般に、組み立てられたベース100とレンズ200を含むモジュール式IOLでは、本明細書に記載されている代替的な実施形態を含め、ベース100を所定の位置に残したまま、レンズ200を術中、術後の何れにも調整又は交換できる。これが望ましいかもしれないケースの例には、術中に検出された最適に至らない屈折力の結果を矯正するためにレンズ200を交換する場合、術後に検出された最適に至らない屈折力の結果(残留屈折異常)を補正するためにレンズ200を交換する場合、レンズ200をベース100に関して回転しながら調整することにより、トーリック矯正を微調整する場合、レンズ200をベース100に関して横方向に調整することにより、光学部を真の光軸(水晶体嚢の中心ではないかもしれない)と整列させる場合、及び時間を追って変化する患者の光学的ニーズ又は要望に対応するためにレンズ200を交換する場合が含まれるが、これらに限定されない。この場合の例には、これらに限定されないが、当初の光学的矯正の必要性が加齢又は成長と共に変化する成人又は小児のIOL患者、単焦点IOLからプレミアムIOL(トーリック、多焦点、調節又はその他の特徴を持つレンズ技術)にアップグレードしたい患者、そのプレミアムIOLが不満足であり、多焦点IOLにダウングレードしたい患者、及びIOL又は特定の種類のIOLが禁忌である医学的状態を進行させた患者が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
図11は、モジュール式IOLを移植するための手順の一例を示す。この例において、術中測定を行って所望のレンズ200を選択し、及び/又は術中の調整又は交換が必要か否かを判断してもよい。IOL移植手順、例えば白内障手術は従来の慣行により開始されてもよい310。次に、例えば角膜アクセス切開創を作成し、前嚢の切嚢を作成し、白内障水晶体を超音波水晶体乳化吸引術又はその他の手段によって除去する等の従来のステップを用いて、天然の水晶体包被膜を、モジュール式IOLを受けられるように準備してもよい312。次に、ベース100を水晶体嚢の中に設置する314。この時点で、術中測定を行って316、解剖学的構造に関するベース100の位置を判断してもよい。この情報は、例えばベース100の位置を調整するため、及び/又はレンズ200の光学部分202の所望の屈折力の選択を支援するために使用されてよい。
【0053】
具体的な例として、光干渉断層撮影(OCT)を使って、視軸に沿った有効ベース位置(EBP:effective base position)を測定してもよく、これによってレンズ200をベース100に接続するときの有効レンズ位置(ELP:effective lens position)が決まる。ELPは屈折力の結果に影響を与えるため、EBP情報は、適切な屈折力を有するレンズ200を選択するために使用されてもよい。これによって、残留屈折異常が低減するかもしれず、これは特に、EBPが術後に比較的安定するからである。OCTはまた、ベース100の中心からのずれと傾きを検出するためにも使用されてよく、それによって、そのための調整が術中に行われてもよい。本明細書の別の箇所に記載されているように、ベース100にはOCT視覚化を強化させるための材料が組み込まれてもよい。
【0054】
任意選択により、仮レンズ200を眼内に設置し、ベース100に接続してからOCT測定を行ってもよい。これは、虹彩が小さく、ベース100のOCT可視化が難しい場合に有益であるかもしれない。仮レンズ200は非常に薄くてもよく(例えば、0~2ディオプトリ)、それによってOCT測定完了後に容易に取り出すことができる。薄い仮レンズの代わりに、OCT反射材料の薄いディスクをベース100の上に設置し、又はそれに接続してからOCT測定を行い、その後取り出してもよい。
【0055】
次に、レンズ200を水晶体嚢の中に設置する320。次に、ベース100とレンズ200を、後でより詳しく説明するように組み立てる322。この時点で、術中測定を行って324、ベース100とレンズ200が正しく組み立てられたか否かを判断し、組み立てられたベース100とレンズ200の解剖学的構造に関する位置を判断し、及び/又は光学的補正が満足であるか否かを判断してもよい326。
【0056】
例えば、OCTは、レンズ200のタブ204及び206がベースの凹部112の中に入っているか否かを判断するために使用されてもよく、必要に応じて、レンズ200とベース100を正しく組み立てるためのステップを実行してもよい。それに加えて、又はその代わりに、OCTは、ELP、中心からのずれ又は傾きを測定するために使用されてもよく、必要に応じて、レンズ200及び/又はベース100の位置を調整するためのステップを実行してもよい。それに加えて、又はその代わりに、波面収差を利用して光学的結果を測定してもよい。光学的結果が満足できると判断されると326、手順は従来の慣行に従って終了されてもよい328。光学的結果が不満足であると判断された場合326、レンズ200及び/又はベース100の調整(例えば、回転、横方向への移動等)によって光学的結果が満足できるものになるか否かを判断する330。イエスであれば、調整を行い332、手順は完了する328。ノーであれば、レンズ200をベース100から外し334、眼から取り出し336、新しいレンズ200を選択して318、同じステップ320~328に従って移植する。
【0057】
図12A~12Dは、モジュール式IOL 100/200の移植のための手技を示す。
図12Aに示されているように、モジュール式IOLはまず、角膜切開創13から切嚢36を通じて水晶体嚢34の中へと挿入されるインジェクタ300(インサータ又は送達管とも呼ばれる)を使って、ベース100を丸めた状態で水晶体嚢内へと送達することにより移植されてもよい。従来のインジェクタ300(インサータとも呼ばれる)を使ってベース100とレンズ200を送達してもよい。適当なインジェクタの例は、Kelmanの米国特許第5,123,905号、Bartellの米国特許第4,681,102号、Rheinishの米国特許第5,304,182号、及びCicenasの米国特許第5,944,725号に記載されている。
【0058】
図12Bに示されているように、ベース100をインジェクタから吐出させ、展開させてもよい。丁寧に操作することにより、ベース100の支持部106が水晶体包被膜34の内側赤道と係合し、ベース100の穴104が切嚢36に関して中央に置かれる。
【0059】
レンズ200もまた、インジェクタ300を使って丸めた状態で送達してよく、その際、インジェクタの先端チップはベース100の付近に位置付けられる。レンズ200をインジェクタから吐出させ、展開させてもよい。丁寧に操作することにより、レンズ200はベース100の前方に浮いた状態となり、ベース100の穴104を覆うように中心に置かれるかもしれない。レンズ200は、タブ204及び206を凹部112の中に入れてベース100とレンズ200との間に勘合接続が提供されるようにすることによってベース100に接続してもよい。
【0060】
図12C~12Dに示されるように、レンズ200は、まず可動タブ206を凹部112の中に挿入することによってベース100と接続してもよい。
図12Cに関して、可動タブは
図3の可動タブ206の特徴を有していてもよいと理解すべきである。可動タブ206は、プローブ450を使って凹部112の中に挿入してもよい。あるいは、可動タブ206は、インジェクタ300を使ってレンズ200を誘導する注入ステップ中に、凹部112の中に挿入してもよい。この代替案において、レンズ200はインジェクタ300から一部のみ吐出され、可動タブ206はベース100の凹部112の中に入り、その一方で固定タブ204はインジェクタ300内に残ったままである。可動タブ206が凹部112の中に入ったところで、レンズ200はインジェクタ300から完全に吐出させてよい。
【0061】
次に、可動タブ206は、固定タブ204の穴208の中に挿入されたプローブ450又は同様の器具を使って、横方向の力を加えることによって圧縮してもよく、それによってレンズ200がベース100の穴104の中へと進められ、レンズ200とベース100が同一平面となる。その後、圧縮力を可動タブ206から解除してもよく、それによって固定タブ204はベース100の凹部112の中に滑り込み、レンズ200がベース100に接続される。逆のステップに従い、レンズ200をベース100から取り外してもよい。
【0062】
あるいは、可動タブ206は、インジェクタ300を使って圧縮してもよい。この代替案において、レンズ200はインジェクタ300から一部のみ吐出され、可動タブ206はベース100の凹部112の中に入り、固定タブ204はインジェクタ300内に残ったままである。インジェクタ300を使ってレンズ200を押すと、凹部112の中の可動タブ206が圧縮される。プローブを第二の角膜切開創の中に挿入して、可動タブ206が圧縮されるときにベース100に反対の力を加えてもよい。次に、インジェクタ300を使ってレンズ200をベース100と同一平面内に位置付けてもよく、それによって固定タブ204は凹部112と整列する。次に、レンズ200をインジェクタ300から完全に吐出させてもよく、そうすることで可動タブ206の圧縮が解除され、固定タブ204はベース100の凹部112の中へと移動できる。
【0063】
レンズ200を送達する前に、上述のようにレンズ200を送達のために折り畳むか、丸めてインジェクタ300の中にセットしてもよい。
図3に関して説明したように、レンズ200は例えば、レンズ200を基本的に二分する軸220又は軸222の周囲で丸めてもよい。レンズ200は、前方に丸めても、後方に丸めてもよい。1つの例において、レンズ200は一方の端から反対の端へと、ポスタを丸めるのと同様の方法で丸められてもよい。あるいは、他の例において、レンズ200の両端を軸220又は軸222に向かって内側に折り畳み、又は丸めてもよい。
【0064】
レンズ200は、軸220の周囲で丸め、上述のようにレンズ200をインジェクタ300から一部のみ吐出しやすくしてもよい(すなわち、可動タブ206がインジェクタ300の外側にあり、固定タブ204がインジェクタ200の中に残っている場合)。あるいは、レンズ200を軸222の周囲で後方に丸めた場合、タブ204及び206は、レンズ200が中央穴104の中で環状リング102と同一平面内に位置付けられた後に展開する際に、ベース100の凹部112の中へと自然に移動してもよい。この手法によれば、レンズ200をベース100に接続するために可動タブ206を圧縮する必要がなくなるかもしれない。
【0065】
レンズ200をベース100に接続するために可動タブ206を圧縮する必要性をなくすことのできる別の手法は、固定タブ204にトルクを付与することを含む。
図12Eに関して、レンズ200がインジェクタ300から吐出され、ベース100の前面に位置付けられる。可動タブ206は、ベースの凹部112の中に設置される。プローブ450が固定タブ204の穴208の中に設置される。プローブ450を回転させることによって固定タブ204にトルクが付与され、それにより固定タブ204は後方に、及び半径方向に内側に撓み、光学部202は前方に曲がる。すると、固定タブ204はベース100の凹部112と整列し、トルクが解除され、それによって固定タブ204はベース100の凹部112の中で半径方向に外側に、その静止位置へと伸展する。
【0066】
図13A及び13Bを参照すると、プローブ450のある実施形態が概略的に示されている。プローブ450は、今日の白内障の手術で一般的に使用されるシンスキ・フックと同様であってもよく、多少の変形が加えられている。
図13Aに示されているように、プローブ450はシャフト460と先端部分470を含む。プローブ450の基端側ハンドル部分は図示されていないが、標準的なシンスキハンドルであってもよい。
図13Bに詳しく示されている先端部分470は、先端シャフト472、エルボ474、エルボ延長部476、挿入チップ478、及びカラー480を含む。挿入チップ478は、レンズ200の穴208の中に、それを操作するようにフィットする大きさである。カラー480は穴208より大きく、それによってチップ478が穴208の中の深くまで入り込まず、その結果、プローブ450がレンズ200から離れなくなることが回避される。
【0067】
図14A及び14Bを参照すると、折り曲げ鉗子600のある実施形態が示されている。折り曲げ鉗子600は、一対のリーフばねアーム602を含み、各々が把持部604と斜めの先端部分606を有する。アーム602は基端側で接合部608において接続される。先端部分606は、アームの各々に関連付けられるチップ610を含む。アーム602は、図のように付勢されているが、先端チップ610を分離するために握って圧搾してもよく、これはストッパ612により限定される。この構成により、アーム602を握って圧搾してもよく、チップ610を、レンズ200の穴208とノッチ216又はレンズ500の穴516及び518等のレンズ内の正反対にある穴又はノッチの中に挿入してもよい。アーム602から手を離すと、チップ610は相互に近付くように移動し、レンズ200又は500が湾曲し、対応するタブ204/206又は504/506が相互に近付くように移動する。タブ204/206又は504/506が相互に近付いた状態で、これらはベース100/400の凹部112/412の中に挿入されてもよく、レンズ200/500の可動タブ206/506を圧縮する必要がない。
【0068】
開示に関する以上の記述は、例示と説明を目的として提示されている。以上は、本開示を本明細書中で開示されている形態(複数の場合もある)に限定しようとしていない。本開示には1つ又は複数の実施形態及び特定の変形型及び改良型の説明が含まれているが、例えば本開示を理解した後に当業者の技能と知識の一部とされるもの等、その他の変形型及び改良型も本開示の範囲に包含される。意図されているのは、代替的、互換可能、及び/又は同等の構造、機能、範囲、又はステップを含めた代替的実施形態を、かかる代替的、互換可能、及び/又は同等の構造、機能、範囲、又はステップが本明細書中で開示されているか否かに関わりなく、また、特許可能な何れの主題も公衆に献呈することを意図せずに、可能な限り、特許請求されているものに含める権利を取得することである。