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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/573 20060101AFI20220105BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220105BHJP
   A61M 11/00 20060101ALI20220105BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220105BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61K31/573
A61K9/12
A61K9/72
A61K31/167
A61K31/58
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/24
A61K47/32
A61M11/00 D
A61P11/00
A61P11/06
【請求項の数】 119
(21)【出願番号】P 2018529067
(86)(22)【出願日】2016-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 GB2016053804
(87)【国際公開番号】W WO2017093755
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-11-25
(31)【優先権主張番号】1521462.0
(32)【優先日】2015-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516030797
【氏名又は名称】メキシケム フロー エセ・ア・デ・セ・ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・コール
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ジェームズ・ノークス
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-502675(JP,A)
【文献】国際公開第2014/016548(WO,A1)
【文献】特開2020-073514(JP,A)
【文献】特表2010-518076(JP,A)
【文献】国際公開第03/086350(WO,A1)
【文献】特表2003-516958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/573
A61P 43/00
A61P 11/00
A61P 11/06
A61K 31/58
A61K 31/167
A61K 9/12
A61K 9/10
A61K 9/72
A61K 47/32
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/24
A61K 47/06
A61P 5/44
A61M 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的組成物であって、
(i)モメタゾン及びフランカルボン酸モメタゾンから選択される、少なくとも1つのモメタゾン化合物と、
(ii)噴霧剤成分であって、その少なくとも90重量%が1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である噴霧剤成分と、を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記組成物の少なくとも95重量%が、前記2つの成分(i)及び(ii)からなる、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、微粉化形態である、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
薬学的組成物であって、
(i)モメタゾン及びフランカルボン酸モメタゾンから選択される、少なくとも1つのモメタゾン化合物と、
(ii)ホルモテロール、ホルモテロールの薬学的に許容される塩、ホルモテロールの溶媒和物、及びホルモテロールの薬学的に許容される塩の溶媒和物から選択される、少なくとも1つのホルモテロール化合物と、
(iii)噴霧剤成分であって、その少なくとも90重量%が1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である噴霧剤成分と、を含む、薬学的組成物。
【請求項5】
前記組成物の少なくとも95重量%が、前記3つの成分(i)、(ii)、及び(iii)からなる、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物及び前記少なくとも1つのホルモテロール化合物の各々が、微粉化形態である、請求項4または5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのホルモテロール化合物が、ホルモテロールを含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
40℃及び75%相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物、前記少なくとも1つのホルモテロール化合物、及び不純物の総重量を基準として、1.0重量%未満の、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物及び前記少なくとも1つのホルモテロール化合物の分解からの前記不純物を生成することになる、請求項4~7のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
25℃及び60%相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物、前記少なくとも1つのホルモテロール化合物、及び不純物の総重量を基準として、1.0重量%未満の、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物及び前記少なくとも1つのホルモテロール化合物の分解からの前記不純物を生成することになる、請求項4~8のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
調製の直ぐ後に前記薬学的組成物中に元々含有される、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物及び前記少なくとも1つのホルモテロール化合物の少なくとも97.0重量%が、40℃及び75%相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後、前記組成物中に存在することになる、請求項4~9のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
定量吸入器から送達されるとき、界面活性剤の不在下であっても、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物及び前記少なくとも1つのホルモテロール化合物の放出量の少なくとも30重量%である、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物及び前記少なくとも1つのホルモテロール化合物の両方の細粒分をもたらす、請求項4~10のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、モメタゾンを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、フランカルボン酸モメタゾンを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、本質的にフランカルボン酸モメタゾンからなる、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、完全にフランカルボン酸モメタゾンからなる、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
界面活性剤成分を更に含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記界面活性剤成分が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、及びレシチンから選択される、少なくとも1つの界面活性剤成分を含む、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記界面活性剤成分が、オレイン酸を含む、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記界面活性剤成分が、オレイン酸である、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
界面活性剤を含まない、請求項1~15のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
極性賦形剤を更に含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記極性賦形剤が、エタノールである、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
極性賦形剤を含まない、請求項1~20のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
エタノールを含まない、請求項1~20のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
完全に前記3つの成分(i)、(ii)、及び(iii)からなる、請求項4~11のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記噴霧剤成分の少なくとも95重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項1~25のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記噴霧剤成分の少なくとも99重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記噴霧剤成分が、完全に1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記噴霧剤成分が、0.5~10ppmの不飽和不純物を含有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記組成物が、前記薬学的組成物の総重量を基準として、500ppm未満の水を含有する、請求項1~29のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記組成物が、前記薬学的組成物の総重量を基準として、0.5ppm超の水を含有する、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記組成物が、前記薬学的組成物の総重量を基準として、1000ppm未満の酸素を含有する、請求項1~31のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
前記組成物が、前記薬学的組成物の総重量を基準として、0.5ppm超の酸素を含有する、請求項32に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
酸安定剤及び有孔微細構造の一方または両方を含まない、請求項1~33のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
懸濁液の形態である、請求項1~34のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記懸濁液中の薬物粒子が、HFA-152a含有噴霧剤中の完全分散後に沈殿するまでに少なくとも2.5分かかる、請求項35に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
請求項1~36のいずれか1項に記載の薬学的組成物を含有する、密封容器。
【請求項38】
コーティングされていないアルミニウム容器である、請求項37に記載の密封容器。
【請求項39】
定量吸入器(MDI)と共に使用するための加圧エアロゾル容器である、請求項37または請求項38に記載の密封容器。
【請求項40】
請求項39に記載の密封容器を備える、定量吸入器(MDI)。
【請求項41】
前記加圧エアロゾル容器に取り付けられたノズル及び弁アセンブリと、EPDM、クロロブチル、ブロモブチル、及びシクロオレフィンコポリマーゴムから選択されるエラストマー材料で作製され、前記容器と前記ノズル/弁アセンブリとの間に密封を提供するガスケットと、を備える、請求項40に記載の定量吸入器。
【請求項42】
噴霧剤と、前記噴霧剤中に溶解または懸濁される、モメタゾン及びフランカルボン酸モメタゾンから選択される少なくとも1つのモメタゾン化合物と、任意選択で、ホルモテロール、ホルモテロールの薬学的に許容される塩、ホルモテロールの溶媒和物、及びホルモテロールの薬学的に許容される塩の溶媒和物から選択される少なくとも1つのホルモテロール化合物と、を含む薬学的組成物の安定化方法であって、前記方法が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴霧剤成分を前記噴霧剤として使用することを含む、方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、フランカルボン酸モメタゾンを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、本質的にフランカルボン酸モメタゾンからなる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、完全にフランカルボン酸モメタゾンからなる、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、微粉化形態である、請求項42~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記薬学的組成物が、追加として、少なくとも1つのホルモテロール化合物を含む、請求項42~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1つのホルモテロール化合物が、微粉化形態である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
40℃及び75%相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後、結果として得られる薬学的組成物が、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物、前記少なくとも1つのホルモテロール化合物、及び不純物の総重量を基準として、1.0重量%未満の、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物及び前記少なくとも1つのホルモテロール化合物の分解からの前記不純物を生成することになる、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
25℃及び60%相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後、結果として得られる薬学的組成物が、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物、前記少なくとも1つのホルモテロール化合物、及び前記不純物の総重量を基準として、1.0重量%未満の、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物及び前記少なくとも1つのホルモテロール化合物の分解からの前記不純物を生成することになる、請求項47~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
調製の直ぐ後に前記薬学的組成物中に元々含有される、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物及び前記少なくとも1つのホルモテロール化合物の少なくとも97.0重量%が、40℃及び75%相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後、前記組成物中に存在することになる、請求項47~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記噴霧剤成分の少なくとも90重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項42~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記噴霧剤成分の少なくとも95重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記噴霧剤成分の少なくとも99重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記噴霧剤成分が、完全に1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記噴霧剤成分が、0.5~10ppmの不飽和不純物を含有する、請求項52~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記薬学的組成物の水分含有量を、前記薬学的組成物の総重量を基準として、500ppm未満に維持するように、前記薬学的組成物の調製のための成分及び条件を選択することを更に含む、請求項42~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記結果として得られる薬学的組成物の酸素含有量が、前記薬学的組成物の総重量を基準として、1000ppm未満である、請求項42~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記薬学的組成物が、有孔微細構造を含まない、請求項42~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記薬学的組成物が、界面活性剤成分を更に含む、請求項42~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記界面活性剤成分が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、及びレシチンから選択される、少なくとも1つの界面活性剤成分を含む、請求項0に記載の方法。
【請求項62】
前記界面活性剤成分が、オレイン酸を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記界面活性剤成分が、オレイン酸である、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記薬学的組成物が、界面活性剤を含まない、請求項42~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記薬学的組成物が、極性賦形剤を更に含む、請求項42~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記極性賦形剤が、エタノールである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記薬学的組成物が、請求項1~36のいずれか1項に記載されるものである、請求項42に記載の方法。
【請求項68】
噴霧剤成分と、前記噴霧剤成分中に懸濁される、モメタゾン及びフランカルボン酸モメタゾンから選択される少なくとも1つのモメタゾン化合物、ならびに任意選択で、ホルモテロール、ホルモテロールの薬学的に許容される塩、ホルモテロールの溶媒和物、及びホルモテロールの薬学的に許容される塩の溶媒和物から選択される少なくとも1つのホルモテロール化合物を含む薬物成分と、を含む薬学的組成物の沈殿時間の増加方法であって、前記方法が、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴霧剤成分を使用することを含み、前記薬学的組成物の沈殿時間は、懸濁液中の薬物粒子が、前記HFA-152a含有噴霧剤中の完全分散後に沈殿するまでにかかる時間である、方法。
【請求項69】
前記懸濁液中の前記薬物粒子が、前記HFA-152a含有噴霧剤中の完全分散後に沈殿するまでに少なくとも2.5分かかる、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、フランカルボン酸モメタゾンを含む、請求項68または69に記載の方法。
【請求項71】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、本質的にフランカルボン酸モメタゾンからなる、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、完全にフランカルボン酸モメタゾンからなる、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、微粉化形態である、請求項68~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記薬学的組成物が、少なくとも1つのホルモテロール化合物を含む、請求項68~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記少なくとも1つのホルモテロール化合物が、微粉化形態である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記噴霧剤成分の少なくとも90重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項68~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記噴霧剤成分の少なくとも95重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記噴霧剤成分の少なくとも99重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記噴霧剤成分が、完全に1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記噴霧剤成分が、0.5~10ppmの不飽和不純物を含有する、請求項76~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記薬学的組成物の水分含有量を、前記薬学的組成物の総重量を基準として、100ppm未満に維持するように、前記薬学的組成物の調製のための成分及び条件を選択することを更に含む、請求項68~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
果として得られる薬学的組成物の酸素含有量が、前記薬学的組成物の総重量を基準として、1000ppm未満である、請求項68~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記薬学的組成物が、有孔微細構造を含まない、請求項68~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記薬学的組成物が、界面活性剤成分を更に含む、請求項68~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記界面活性剤成分が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、及びレシチンから選択される、少なくとも1つの界面活性剤成分を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記界面活性剤成分が、オレイン酸を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記界面活性剤成分が、オレイン酸である、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記薬学的組成物が、界面活性剤を含まない、請求項68~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記薬学的組成物が、極性賦形剤を更に含む、請求項68~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記極性賦形剤が、エタノールである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
噴霧剤成分と、モメタゾン及びフランカルボン酸モメタゾンから選択される少なくとも1つのモメタゾン化合物、ならびにホルモテロール、ホルモテロールの薬学的に許容される塩、ホルモテロールの溶媒和物、及びホルモテロールの薬学的に許容される塩の溶媒和物から選択される少なくとも1つのホルモテロール化合物を含む薬物成分と、を含む界面活性剤を含まない薬学的組成物のエアロゾル化性能の改善方法であって、前記方法が、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴霧剤成分を使用することを含む、方法。
【請求項92】
定量吸入器から送達されるとき、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物及び前記少なくとも1つのホルモテロール化合物の放出量の少なくとも30重量%である、前記少なくとも1つのモメタゾン化合物及び前記少なくとも1つのホルモテロール化合物の両方の細粒分をもたらす、薬学的組成物を提供する、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
噴霧剤成分と、モメタゾン及びフランカルボン酸モメタゾンから選択される少なくとも1つのモメタゾン化合物、ならびにホルモテロール、ホルモテロールの薬学的に許容される塩、ホルモテロールの溶媒和物、及びホルモテロールの薬学的に許容される塩の溶媒和物から選択される少なくとも1つのホルモテロール化合物を含む薬物成分と、を含む薬学的組成物の貯蔵後のエアロゾル化性能の改善方法であって、前記方法が、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴霧剤成分を使用することを含む、方法。
【請求項94】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、フランカルボン酸モメタゾンを含む、請求項91~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、本質的にフランカルボン酸モメタゾンからなる、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物が、完全にフランカルボン酸モメタゾンからなる、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記少なくとも1つのモメタゾン化合物及び前記少なくとも1つのホルモテロール化合物の各々が、微粉化形態である、請求項91~96のいずれかを1項に記載の方法。
【請求項98】
前記噴霧剤成分の少なくとも90重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項91~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記噴霧剤成分の少なくとも95重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記噴霧剤成分の少なくとも99重量%が、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記噴霧剤成分が、完全に1,1-ジフルオロエタン(R-152a)である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記噴霧剤成分が、0.5~10ppmの不飽和不純物を含有する、請求項98~101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
前記薬学的組成物の水分含有量を、前記薬学的組成物の総重量を基準として、100ppm未満に維持するように、前記薬学的組成物の調製のための成分及び条件を選択することを更に含む、請求項91~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
果として得られる薬学的組成物の酸素含有量が、前記薬学的組成物の総重量を基準として、1000ppm未満である、請求項91~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
前記薬学的組成物が、界面活性剤成分を更に含む、請求項91~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記界面活性剤成分が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、及びレシチンから選択される、少なくとも1つの界面活性剤成分を含む、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記界面活性剤成分が、オレイン酸を含む、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
前記界面活性剤成分が、オレイン酸である、請求項105に記載の方法。
【請求項109】
前記薬学的組成物が、界面活性剤を含まない、請求項91~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
前記薬学的組成物が、極性賦形剤を更に含む、請求項91~109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
前記極性賦形剤が、エタノールである、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記薬学的組成物が、有孔微細構造を含まない、請求項91~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
前記薬学的組成物が、酸安定剤を含まない、請求項42~112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
前記薬学的組成物が、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227ea)を噴霧剤として用いること以外は同じである薬学的組成物と比較して、安定化される、請求項42~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
前記薬学的組成物の沈殿時間が、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227ea)を噴霧剤として用いること以外は同じである薬学的組成物と比較して、増加される、請求項68~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
前記薬学的組成物のエアロゾル化性能が、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227ea)を噴霧剤として用いること以外は同じである薬学的組成物と比較して、改善される、請求項91~112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
呼吸器障害を患っているかまたは患う可能性が高い患者を前記患者に治療または予防有効量の薬剤を投与することにより治療するための薬剤の製造における、請求項1~36のいずれか1項に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項118】
前記呼吸器障害が、喘息または慢性閉塞性肺疾患である、請求項117に記載の使用。
【請求項119】
前記薬剤が、定量吸入器(MDI)を使用して前記患者に送達可能である、請求項117または118に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴霧剤を使用する定量吸入器(MDI)などの医療用デバイスからの薬物製剤の送達に関する。より具体的には、本発明は、R-152a噴霧剤と、噴霧剤中に溶解または懸濁される二元薬物製剤とを含む薬学的組成物、及びこれらの組成物を含有する医療用デバイスに関する。本発明の薬学的組成物は、定量吸入器(MDI)を使用する加圧エアロゾル容器からの送達に特に適している。
【背景技術】
【0002】
MDIは、吸入薬物送達系の最も重要な種類であり、当業者には周知である。これらは、薬物が溶解、懸濁、または分散した液化噴霧剤を使用して、個別かつ正確な量の薬物を患者の気道へと応需型で送達するように設計される。MDIの設計及び操作は、多くの標準テキスト及び特許文献に記載されている。これらは全て、薬物製剤を収容する加圧容器、ノズル、及び起動時に制御された量の薬物を、ノズルを通して分注することができるバルブアセンブリを備える。ノズル及びバルブアセンブリは、典型的には、マウスピースを備え付けた筐体の中に位置する。薬物製剤は、薬物が溶解、懸濁、または分散した噴霧剤を含むことになり、また極性添加剤、界面活性剤、及び防腐剤などの他の物質を含有してもよい。
【0003】
噴霧剤をMDI中で十分に機能させるためには、噴霧剤がいくつかの特性を有する必要がある。これらは、適切な沸点及び蒸気圧を含むことで、室温の閉鎖された容器中で液化し得るが、周囲温度が低くても、MDIを起動して薬物を噴霧製剤として送達するときに十分な高圧を生じさせるようにする。更に、本噴霧剤は、急性及び慢性毒性が低く、心臓感作閾値が高くあるべきである。これは、薬物、容器、ならびにMDIデバイスの金属及び非金属構成要素と接触しているときに化学的安定性が高く、MDIデバイス中のあらゆるエラストマー材料から低分子量の物質を引き出す傾向が低くあるべきである。本噴霧剤はまた、薬物を、均一な溶液、安定した懸濁液、または安定した分散液中に、使用中の薬物の再現性送達を可能にするために十分な時間、維持することが可能であるべきである。薬物が、噴霧剤中の懸濁液の中にある場合、液体噴霧剤の密度は、液体における薬物粒子の急激な沈降または浮上を避けるために、固体薬物の密度に望ましく類似している。最後に、本噴霧剤は、使用中の患者に重大な燃焼リスクを示すべきでない。特に、気道中で空気と混合される際に不燃性または低可燃性である混合物が形成されるべきである。
【0004】
ジクロロジフルオロメタン(R-12)が、特性の好適な組み合わせを保有し、長年、最も広く使用されているMDI噴霧剤(トリクロロフルオロメタン(R-11)とブレンドされることが多い)であった。ジクロロジフルオロメタン及びトリクロロフルオロメタンなどの完全に及び部分的にハロゲン化されたクロロフルオロカーボン(CFC)が地球の保護オゾン層を破壊しているという国際的な懸念から、多くの国がモントリオール議定書の協定を締結し、その製造及び使用を厳しく制限し、最終的には完全に廃止すると規定した。ジクロロジフルオロメタン及びトリクロロフルオロメタンは、冷凍用途では1990年代に廃止されたが、MDIセクターにおいては、モントリオール議定書における必須用途のための例外を受けて、依然として少量で使用されている。
【0005】
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)がR-12の代わりの冷媒及びMDI噴霧剤として導入された。1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227ea)も、MDIセクターにおいてジクロロテトラフルオロエタン(R-114)の代わりの噴霧剤として導入され、本用途のために、ときに単独でまたはR-134aとブレンドして使用される。
【0006】
R-134a及びR-227eaは、オゾン破壊係数(ODP)は低いが、地球温暖化係数(GWP)がそれぞれ1430及び3220であり、これは現在では、一部の規制機関によって、特にそれらが大気中に放出される分散性の使用には高すぎるとみなされている。
【0007】
昨今、特に注目を集めている1つの産業分野は、R-134aの使用がEuropean Mobile Air Conditioning Directive(2006/40/EC)を受けて規制対象となった自動車用空調セクターである。産業界は、温室効果温暖化係数(GWP)及びオゾン破壊係数(ODP)が低い、自動車用空調及び他の用途におけるR-134aに対するいくつかの可能性のある代替手段を開発している。これらの代替手段の多くは、ヒドロフルオロプロペン、特に、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)及び1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234ze)などのテトラフルオロプロペンを含む。
【0008】
R-134aに対する提案されている代替手段はGWPが低いものの、成分の多く、例えば、フルオロプロペンのうちのいくつかの毒性状況は不明であり、これらの代替手段がMDIセクターにおける使用に容認可能となる可能性は、仮にそうなるとしても長年にわたって低い。
【0009】
R-134a及びR-227eaに関する問題は他にもある。喘息といった呼吸器障害用の薬学的有効成分のほとんどは、R-134aまたはR-227eaのいずれにも十分に溶解しない傾向にあり、噴霧剤中では懸濁液として扱う必要がある。薬物懸濁液は、ノズルの閉塞、凝集、及び堆積などのいくつかの問題を引き起こし、後者の問題により、薬物が噴霧剤中に均等に分布していることを確実にするために、使用前にMDIをしっかりと振ることが必須となる。更に、よくあることだが、薬学的有効成分が噴霧剤中の再懸濁後に素早く沈殿してしまう場合には、送達される用量が有効濃度の薬学的有効成分を含有することを確実にするために、噴霧剤/薬物組成物を振った後すぐにMDIから送達しなければならない。
【0010】
薬物の溶解が不良である問題は、極性添加剤を組成物に含めることによって解決されており、これらの極性添加剤は、薬物の溶解を助けて溶液を形成させるか、さもなければ懸濁した薬物粒子の湿潤性を高めてより良好に分散し、より安定した懸濁液をもたらすものである。好ましい極性添加剤はエタノールである。しかしながら、大量のエタノールの使用により、肺の深部の細気管支道に許容できるだけ浸透するには液滴サイズが大きすぎる、粗粒の噴霧が生じ得る傾向にある。更に、高レベルのエタノールは、若年の使用者には特に、口及び咽喉に対して許容できない刺激性を有し得、また宗教的な理由で許容されない場合がある。
【0011】
界面活性剤も、より安定した懸濁液の産出を助け得るため、噴霧剤中に不溶性または難溶性である薬物を含む一部の製剤に含められている。しかしながら、界面活性剤は、肺における受容性について慎重に選択する必要があり、製剤複雑性を一層増大させる。このため、界面活性剤を使用せずに安定した懸濁液を形成させることが有益である。
【0012】
喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に一般的に使用される薬物は、最も一般的にはフマル酸塩二水和物の形態にある、ホルモテロールである。ホルモテロールは、MDIを使用して気道に送達することができる選択的長時間作用型βアドレナリン作動薬(LABA)である。残念ながら、ホルモテロールをMDI技術による送達に好適な形態で製剤化することは、その物理的及び化学的安定性が制限されていることに起因して、困難であることが立証されている。安定性の問題は、ホルモテロールが、添加剤、溶媒、例えば、エタノール、及び他の治療薬を含む、医薬製剤で使用されることが多い他の成分に曝露する場合に特に顕著である。ホルモテロールと併用される他の治療薬には、コルチコステロイド、より具体的には糖質コルチコステロイドが挙げられる。特に望ましい複合製剤には、モメタゾン(多くの場合、フランカルボン酸モメタゾンとして)、ブデソニド、ベクロメタゾン(多くの場合、ジプロピオン酸ベクロメタゾンとして)、及びフルチカゾン(多くの場合、プロピオン酸フルチカゾンとして)から選択される1つ以上のコルチコステロイドと併せたホルモテロールが挙げられる。
【0013】
ホルモテロールの医薬製剤の不安定性により、周囲温度での保存期間が制限され得、使用前の冷蔵貯蔵が必要となり得る。
【発明の開示】
【0014】
MDIを使用して送達することができ、かつR-134a及びR-227eaと比較してGWPが低下した噴霧剤を使用する、モメタゾンの薬学的組成物が、任意選択でホルモテロールと共に必要とされている。改善した貯蔵安定性を呈する、モメタゾンの薬学的組成物もまた、任意選択でホルモテロールと共に必要とされている。
【0015】
本発明の第1の態様に従い、薬学的組成物、特に分散液が提供され、該組成物は、
(i) モメタゾン及びその薬学的に許容される誘導体、例えばモメタゾンの薬学的に許容される塩、モメタゾンのプロドラッグ、モメタゾンの溶媒和物、モメタゾンの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びモメタゾンのプロドラッグの溶媒和物から選択される、少なくとも1つのモメタゾン化合物と、
(ii) 1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴霧剤成分と、を含む。
【0016】
本発明の第1の態様の薬学的組成物は、典型的には、薬学的組成物の総重量を基準として、500ppm未満の水を含有する。好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の薬学的組成物は、薬学的組成物の総重量を基準として、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。本薬学的組成物の水分含有量のことを言う場合、発明者らは組成物中の自由水の含有量を指し、これは、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶発的に存在する任意の水のことではない。特に好ましい実施形態では、本薬学的組成物は水を含まない。あるいは、第1の態様の薬学的組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm以上であるが上で考察した量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、その後それをかかる無水状態に保持することが実際には困難であり得るためである。水分含有量がより低いと、薬物化合物の分解が低下する傾向にあり、その結果、より化学的安定性の高い組成物がもたらされるため、好ましい。
【0017】
したがって、本発明の第1の態様の好ましい実施形態は、薬学的組成物、特に分散液を提供し、該組成物は、
(i) モメタゾン及びその薬学的に許容される誘導体、例えばモメタゾンの薬学的に許容される塩、モメタゾンのプロドラッグ、モメタゾンの溶媒和物、モメタゾンの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びモメタゾンのプロドラッグの溶媒和物から選択される、少なくとも1つのモメタゾン化合物と、
(ii) 1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴霧剤成分と、を含み、
本組成物は、薬学的組成物の総重量を基準として、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。
【0018】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の薬学的組成物は、薬学的組成物の総重量を基準として、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態では、薬学的組成物は酸素を含まない。あるいは、第1の態様の薬学的組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm以上であるが上で考察した量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を無酸素状態に保持することが実際には困難であり得るためである。酸素含有量がより低いと、薬物化合物の分解が低下する傾向にあり、その結果、より化学的安定性の高い組成物がもたらされるため、好ましい。
【0019】
したがって、本発明の第1の態様の好ましい実施形態は、薬学的組成物、特に分散液を提供し、該組成物は、
(i) モメタゾン及びその薬学的に許容される誘導体、例えばモメタゾンの薬学的に許容される塩、モメタゾンのプロドラッグ、モメタゾンの溶媒和物、モメタゾンの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びモメタゾンのプロドラッグの溶媒和物から選択される、少なくとも1つのモメタゾン化合物と、
(ii) 1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴霧剤成分と、を含み、
本組成物は、薬学的組成物の総重量を基準として、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の酸素を含有する。
【0020】
一実施形態では、本発明の第1の態様の薬学的組成物は、本質的に、上に列挙した成分(i)及び(ii)からなる。別の実施形態では、本発明の第1の態様の薬学的組成物は、完全に、上に列挙した成分(i)及び(ii)からなる。「本質的に~からなる」という用語は、薬学的組成物の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%が、2つの列挙した成分からなることを意味する。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明の薬学的組成物は、追加として、ホルモテロール及びその薬学的に許容される誘導体、例えばホルモテロールの薬学的に許容される塩、ホルモテロールのプロドラッグ、ホルモテロールの溶媒和物、ホルモテロールの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びホルモテロールのプロドラッグの溶媒和物から選択される、少なくとも1つのホルモテロール化合物を含む。
【0022】
したがって、本発明の第2の態様は、薬学的組成物、特に分散液を提供し、該組成物は、
(i) モメタゾン及びその薬学的に許容される誘導体、例えばモメタゾンの薬学的に許容される塩、モメタゾンのプロドラッグ、モメタゾンの溶媒和物、モメタゾンの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びモメタゾンのプロドラッグの溶媒和物から選択される、少なくとも1つのモメタゾン化合物と、
(ii) ホルモテロール及びその薬学的に許容される誘導体、例えばホルモテロールの薬学的に許容される塩、ホルモテロールのプロドラッグ、ホルモテロールの溶媒和物、ホルモテロールの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びホルモテロールのプロドラッグの溶媒和物から選択される、少なくとも1つのホルモテロール化合物と、
(iii) 1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴霧剤成分と、を含む。
【0023】
本発明の第2の態様の薬学的組成物は、典型的には、薬学的組成物の総重量を基準として、500ppm未満の水を含有する。好ましい実施形態では、本発明の第2の態様の薬学的組成物は、薬学的組成物の総重量を基準として、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。本薬学的組成物の水分含有量のことを言う場合、発明者らは組成物中の自由水の含有量を指し、これは、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶発的に存在する任意の水のことではない。特に好ましい実施形態では、本薬学的組成物は水を含まない。あるいは、第2の態様の薬学的組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm以上であるが上で考察した量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、その後それをかかる無水状態に保持することが実際には困難であり得るためである。水分含有量がより低いと、薬物化合物の分解が低下する傾向にあり、その結果、より化学的安定性の高い組成物がもたらされるため、好ましい。
【0024】
したがって、本発明の第2の態様の好ましい実施形態は、薬学的組成物、特に分散液を提供し、該組成物は、
(i) モメタゾン及びその薬学的に許容される誘導体、例えばモメタゾンの薬学的に許容される塩、モメタゾンのプロドラッグ、モメタゾンの溶媒和物、モメタゾンの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びモメタゾンのプロドラッグの溶媒和物から選択される、少なくとも1つのモメタゾン化合物と、
(ii) ホルモテロール及びその薬学的に許容される誘導体、例えばホルモテロールの薬学的に許容される塩、ホルモテロールのプロドラッグ、ホルモテロールの溶媒和物、ホルモテロールの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びホルモテロールのプロドラッグの溶媒和物から選択される、少なくとも1つのホルモテロール化合物と、
(iii) 1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴霧剤成分と、を含む。
本組成物は、薬学的組成物の総重量を基準として、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明の第2の態様の薬学的組成物は、薬学的組成物の総重量を基準として、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態では、薬学的組成物は酸素を含まない。あるいは、第2の態様の薬学的組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm以上であるが上で考察した量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を無酸素状態に保持することが実際には困難であり得るためである。酸素含有量がより低いと、薬物化合物の分解が低下する傾向にあり、その結果、より化学的安定性の高い組成物がもたらされるため、好ましい。
【0026】
したがって、本発明の第2の態様の好ましい実施形態は、薬学的組成物、特に分散液を提供し、該組成物は、
(i) モメタゾン及びその薬学的に許容される誘導体、例えばモメタゾンの薬学的に許容される塩、モメタゾンのプロドラッグ、モメタゾンの溶媒和物、モメタゾンの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びモメタゾンのプロドラッグの溶媒和物から選択される、少なくとも1つのモメタゾン化合物と、
(ii) ホルモテロール及びその薬学的に許容される誘導体、例えばホルモテロールの薬学的に許容される塩、ホルモテロールのプロドラッグ、ホルモテロールの溶媒和物、ホルモテロールの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びホルモテロールのプロドラッグの溶媒和物から選択される、少なくとも1つのホルモテロール化合物と、
(iii) 1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴霧剤成分と、を含む。
本組成物は、薬学的組成物の総重量を基準として、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の酸素を含有する。
【0027】
一実施形態では、本発明の第2の態様の薬学的組成物は、本質的に、上に列挙した3つの成分(i)~(iii)からなる。別の実施形態では、本発明の第2の態様の薬学的組成物は、完全に、上に列挙した3つの成分(i)~(iii)からなる。「本質的に~からなる」という用語は、薬学的組成物の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%が、3つの列挙した成分からなることを意味する。
【0028】
本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物は、定量吸入器(MDI)を使用する気道への送達に好適である。
【0029】
好ましい実施形態では、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物は、有機酸及び無機酸などの酸安定剤を含まない。
【0030】
本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物は、追加として、エタノールなどの極性賦形剤を含んでもよい。極性添加剤は、定量吸入器(MDI)を使用して送達される、呼吸器障害を治療するための薬学的組成物中で、日常的に使用される。これらは、溶媒、共溶媒、担体溶媒、及びアジュバントとも称される。これらを含めることで、界面活性剤または薬物が霧剤中で可溶性となり、かつ/または薬学的組成物が、それが貯蔵されている容器からノズル出口へと通過するときに接触する、定量吸入器の表面における薬物粒子の堆積が抑制され得る。これらはまた、薬物が好適な極性添加剤と混合される2段階充填プロセスにおいて、増量剤として使用される。最も一般的に使用される極性添加剤はエタノールである。極性添加剤を使用する場合、極性添加剤は、典型的には、薬学的組成物の総重量を基準として、0.5~10重量%の量、好ましくは1~5重量%の量で存在することになる。
【0031】
一実施形態では、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物は、エタノールなどの極性添加剤を含まない。
【0032】
本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物は、追加として、少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む、界面活性剤成分を含んでもよい。
【0033】
MDIの薬学的製剤においてこれまで使用されてきた種類の界面活性剤化合物を、本発明の薬学的組成物において使用することができる。好ましい界面活性剤は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、及びレシチンから選択される。界面活性剤成分が含まれる場合、好ましくは、本質的に、なおもより好ましくは完全に、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、オレイン酸、及びレシチンから選択される少なくとも1つの界面活性剤成分からなる。オレイン酸が、特に好ましい。オレイン酸とは、特に、商業的に入手可能な界面活性剤材料を指し、これは100%純粋でない場合がある。「本質的に~からなる」という用語は、界面活性剤成分の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%が、列挙した界面活性剤のうちの少なくとも1つからなることを意味する。
【0034】
一実施形態では、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物は、界面活性剤を含まない。
【0035】
本明細書に開示される全ての態様及び実施形態における本発明の薬学的組成物中の少なくとも1つのモメタゾン化合物、及び含まれる場合は、少なくとも1つのホルモテロール化合物は、好ましくは微粉化形態である。更に、本明細書に開示される全ての態様及び実施形態における本発明の薬学的組成物は、好ましくは、有孔微細構造を含まない。
【0036】
少なくとも1つのモメタゾン化合物、及び含まれる場合は、少なくとも1つのホルモテロール化合物は、噴霧剤中に分散または懸濁され得る。そのような分散液/懸濁液中の薬物粒子は、好ましくは、100ミクロン未満、例えば、50ミクロン未満の直径を有する。本発明の薬学的組成物はまた、少なくとも1つのモメタゾン化合物、及び含まれる場合は、少なくとも1つのホルモテロール化合物が噴霧剤中に溶解された、例えば、エタノールなどの極性賦形剤で補助された溶液であってもよい。好ましくは、本発明の薬学的組成物は、分散液である。
【0037】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのモメタゾン化合物は、フランカルボン酸モメタゾンを含む。本発明の特に好ましい薬学的組成物は、少なくとも1つのモメタゾン化合物が、本質的にフランカルボン酸モメタゾンからなるものである。「本質的に~からなる」という用語は、少なくとも1つのモメタゾン化合物の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%が、フランカルボン酸モメタゾンであることを意味する。本発明の最も好ましい薬学的組成物は、少なくとも1つのモメタゾン化合物が、完全にフランカルボン酸モメタゾンであるものである。
【0038】
好適なホルモテロールの薬学的に許容される塩には、有機酸及び無機酸由来の酸付加塩、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、ヒドロキ安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グルタル酸塩、グルコン酸塩、及びオレイン酸塩が挙げられる。ホルモテロールのフマル酸塩が好ましく、特に好ましい実施形態では、本発明の第2の態様の薬学的組成物は、ホルモテロールフマル酸塩二水和物を含む。第2の態様の特に好ましい薬学的組成物は、少なくとも1つのホルモテロール化合物が、本質的にホルモテロールフマル酸塩二水和物からなるものである。「本質的に~からなる」という用語は、少なくとも1つのホルモテロール化合物の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%がホルモテロールフマル酸塩水和物であることを意味する。第2の態様の最も好ましい薬学的組成物は、少なくとも1つのホルモテロール化合物が、完全にホルモテロールフマル酸塩二水和物であるものである。
【0039】
特に好ましい実施形態では、本発明の第2の態様の薬学的組成物は、フランカルボン酸モメタゾン及びホルモテロールフマル酸塩二水和物の両方を含む。好ましくは、フランカルボン酸モメタゾン及びホルモテロールフマル酸塩二水和物は、本発明の第2の態様の薬学的組成物中で唯一の薬学的活性剤である。
【0040】
少なくとも1つのモメタゾン化合物、例えばフランカルボン酸モメタゾンと、少なくとも1つのホルモテロール化合物、例えばホルモテロールフマル酸塩二水和物との重量比は、典型的には、100:1~10:1の範囲、好ましくは40:1~20:1の範囲である。
【0041】
本発明の薬学的組成物中の噴霧剤成分は、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む。よって、噴霧剤成分がR-152aに加えて他の噴霧剤化合物を含み得る可能性を除外しない。例えば、噴霧剤成分は、例えば、R-227ea、R-134a、ジフルオロメタン(R-32)、プロパン、ブタン、イソブタン、及びジメチルエーテルから選択される、1つ以上の追加のヒドロフルオロカーボンまたは炭化水素噴霧剤化合物を更に含んでもよい。好ましい追加の噴霧剤はR-227ea及びR-134aである。
【0042】
R-134aまたはR-227eaなどの追加の噴霧剤化合物が含まれる場合、噴霧剤成分の少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%がR-152aであるべきである。典型的には、R-152aは、噴霧剤成分の少なくとも90重量%、例えば、90~99重量%を構成することになる。好ましくは、R-152aは、噴霧剤成分の少なくとも95重量%、例えば、95~99重量%、より好ましくは少なくとも99重量%を構成することになる。
【0043】
特に好ましい実施形態では、噴霧剤成分は、完全にHFA-152aからなり、その結果、本発明の薬学的組成物は、HFA-152aを唯一の噴霧剤として含む。「完全に~からなる」という用語は、言うまでもなく、HFA-152aの作製に使用されるプロセスの後に存在し得る少量の、例えば、最大で数百ppmの不純物の存在を除外しないが、但し、それらが医療用途における噴霧剤の安定性に影響しないことを条件とする。好ましくは、HFA-152a噴霧剤は、10ppm以下、例えば、0.5~10ppm、より好ましくは5ppm以下、例えば、1~5ppmの不飽和不純物、例えば、フッ化ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、及びクロロ-フルオロエチレン化合物を含有することになる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、
(i) フランカルボン酸モメタゾンと、
(ii) ホルモテロールフマル酸塩二水和物と、
(iii) 1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴霧剤成分と、を含む、薬学的組成物が提供されることは、上の考察から明らかとなるであろう。
【0045】
この好ましい実施形態では、薬学的組成物は、好ましくは本質的に、より好ましくは完全に、3つの列挙した成分(i)~(iii)からなる。「本質的に~からなる」という用語は、薬学的組成物の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%が、3つの列挙した成分(i)~(iii)からなることを意味する。加えて、噴霧剤成分は、好ましくは本質的に、より好ましくは完全に、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)からなる。「本質的に~からなる」という用語は、噴霧剤成分の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%が、R-152aからなることを意味する。更に、この好ましい実施形態の薬学的組成物中の水及び酸素の量は、上で考察したとおりである。
【0046】
本発明の第1の態様の薬学的組成物は、典型的には、0.01~1.0重量%の少なくとも1つのモメタゾン化合物、及び99.0~99.99重量%の噴霧剤成分を含む。好ましい組成物は、0.05~0.重量%の少なくとも1つのモメタゾン化合物、及び99.5~99.95重量%の噴霧剤成分を含む。特に好ましい薬学的組成物は、0.07~0.3重量%の少なくとも1つのモメタゾン化合物、及び99.7~99.93重量%の噴霧剤成分を含む。全ての割合は、薬学的組成物の総重量を基準とする。
【0047】
本発明の第2の態様の薬学的組成物は、典型的には、0.01~1.0重量%の複合された少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物と、99.0~99.99重量%の噴霧剤成分とを含む。好ましい組成物は、0.05~0.5重量%の複合された少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物と、99.5~99.95重量%の噴霧剤成分とを含む。特に好ましい薬学的組成物は、0.07~0.3重量%の複合された少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物と、99.7~99.93重量%の噴霧剤成分とを含む。全ての割合は、薬学的組成物の総重量を基準とする。
【0048】
フランカルボン酸モメタゾンなどのモメタゾン化合物を、単独で、またはホルモテロールフマル酸塩二水和物などのホルモテロール化合物と共に含有する薬学的組成物中に1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴霧剤を使用することで、予想外に、モメタゾン化合物及びホルモテロール化合物の化学的安定性を、それらがR-134aまたはR-227eaのいずれかを噴霧剤として含有する既知の製剤において呈する安定性と比較して改善できることが分かった。
【0049】
したがって、本発明の第3の態様では、噴霧剤成分と、噴霧剤成分中に溶解または懸濁される、モメタゾン及びその薬学的に許容される誘導体、例えばモメタゾンの薬学的に許容される塩、モメタゾンのプロドラッグ、モメタゾンの溶媒和物、モメタゾンの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びモメタゾンのプロドラッグの溶媒和物から選択される少なくとも1つのモメタゾン化合物と、を含む薬学的組成物の安定性の改善方法が提供され、該方法は、1,1-ジフルオロエタン(R-152a)を含む噴霧剤成分を使用することを含む。
【0050】
特に、薬学的組成物が、薬学的組成物の総重量を基準として、500ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、更により好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する場合に、改善した化学的安定性がもたらされ得る。本薬学的組成物の水分含有量のことを言う場合、発明者らは組成物中の自由水の含有量を指し、これは、使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶発的に存在する任意の水のことではない。特に好ましい実施形態では、本薬学的組成物は水を含まない。あるいは、本発明の第3の態様で列挙される薬学的組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上で考察した量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、その後それをかかる無水状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0051】
実際には、上に列挙した低い水分量の薬学的組成物を調製することは、水分含有量が好適に低い噴霧剤成分を使用し(これが通常は最終デバイスにおいて最大の質量のものであるため)、その後、薬学的組成物を、好適な乾燥した条件下、例えば、乾燥窒素雰囲気下で調製することを伴う。乾燥条件下での薬学的組成物の調製は周知であり、関与する技法は当業者によって十分に理解されている。最終デバイス中で低い水分含有量を得るための他のステップには、デバイスの組立て前及び組立て中に、缶及びバルブ部品を、湿度制御された雰囲気、例えば、乾燥窒素または空気中で乾燥させ貯蔵することが挙げられる。また、薬学的組成物が十分な量のエタノールを含有する場合には、噴霧剤に加えてエタノール中の水分含有量を、例えば、乾燥させて水分含有量を好適に低いレベルに減少させることによって、制御することが重要であり得る。好適な乾燥技法は当業者には周知であり、分子篩または他の無機乾燥剤及び膜乾燥プロセスの使用を含む。
【0052】
本発明の第3の態様の安定化方法では、好ましいモメタゾン化合物は、フランカルボン酸モメタゾンである。加えて、本発明の第3の態様の安定化方法におけるモメタゾン化合物及び噴霧剤成分の典型的かつ好ましい量、ならびに噴霧剤成分に適した典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の薬学的組成物について上記のとおりである。
【0053】
本発明の第3の態様の好ましい安定化方法では、薬学的組成物は、追加として、ホルモテロール及びその薬学的に許容される誘導体、例えばホルモテロールの薬学的に許容される塩、ホルモテロールのプロドラッグ、ホルモテロールの溶媒和物、ホルモテロールの薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びホルモテロールのプロドラッグの溶媒和物から選択される、少なくとも1つのホルモテロール化合物を含む。ホルモテロール化合物が含まれる場合、適切かつ好ましいホルモテロール化合物は、本発明の第2の態様の薬学的組成物について記載のとおりである。
【0054】
一実施形態では、本発明の第3の態様の薬学的組成物は、本質的に、またはより好ましくは完全に、上で定義した薬物成分(複数可)及び噴霧剤成分からなる。「本質的に~からなる」という用語は、薬学的組成物の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、2つの成分からなることを意味する。
【0055】
本発明の第3の態様の薬学的組成物はまた、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上で考察した極性賦形剤及び界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。適切かつ好ましい極性賦形剤及び界面活性剤は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上で考察したとおりである。極性賦形剤及び界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上で考察したとおりである。
【0056】
薬学的組成物が少なくとも1つのホルモテロール化合物も含む1つの好ましい安定化方法では、例えばコーティングされているか、またはコーティングされていないアルミニウム容器内で、40℃及び75%相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後の結果として得られる薬学的組成物は、少なくとも1つのモメタゾン化合物、少なくとも1つのホルモテロール化合物、及び不純物の総重量を基準として、1.0重量%未満、好ましくは0.8重量%未満、より好ましくは0.7重量%未満、なおもより好ましくは0.6重量%未満の、少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物の分解からの不純物を生成することになる。
【0057】
薬学的組成物がまた、少なくとも1つのホルモテロール化合物を含む別の好ましい安定化方法では、例えばコーティングされているか、またはコーティングされていないアルミニウム容器内で、25℃及び60%の相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後の結果として得られる薬学的組成物は、少なくとも1つのモメタゾン化合物、少なくとも1つのホルモテロール化合物、及び不純物の総重量を基準として、1.0重量%未満、好ましくは0.8重量%未満、より好ましくは0.7重量%未満、なおもより好ましくは0.5重量%未満の、少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物の分解からの不純物を生成することになる。
【0058】
薬学的組成物がまた、少なくとも1つのホルモテロール化合物を含む更に別の好ましい安定化方法では、調製の直ぐ後に薬学的組成物中に元々含有されている少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物の少なくとも97.0重量%、好ましくは少なくとも97.5重量%が、コーティングされているか、またはコーティングされていないアルミニウム容器内で、40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後、組成物中に存在することになる。
【0059】
更に好ましい安定化方法では、組成物の元々の薬学的活性の少なくとも97.0%、好ましくは少なくとも97.5%が、例えばコーティングされているか、またはコーティングされていないアルミニウム容器内で、40℃及び75%相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後に保持される。
【0060】
本発明の方法に従い観察される改善した安定性は、オレイン酸などの界面活性剤を含有する組成物、ならびに界面活性剤を含まないものについて達成可能である。
【0061】
特に好ましい実施形態では、本発明の第3の態様の安定化方法において提供される薬学的組成物は、有機酸及び無機酸などの酸安定剤を含まない。
【0062】
したがって、本発明の第2の態様の好ましい薬学的組成物は、例えばコーティングされているか、またはコーティングされていないアルミニウム容器内で、40℃及び75%相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後に、1.0重量%未満、好ましくは0.8重量%未満、より好ましくは0.7重量%未満、なおもより好ましくは0.6重量%未満の薬学的活性の分解からの総不純物、すなわち少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物を生成するものである。
【0063】
本発明の第2の態様の更に好ましい薬学的組成物は、例えばコーティングされているか、またはコーティングされていないアルミニウム容器内で、25℃及び60%相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後に、1.0重量%未満、好ましくは0.8重量%未満、より好ましくは0.7重量%未満、なおもより好ましくは0.5重量%未満の薬学的活性の分解からの総不純物、すなわち少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物を生成するものである。
【0064】
上で示した不純物の重量%は、少なくとも1つのモメタゾン化合物、少なくとも1つのホルモテロール化合物(含まれる場合)、及び不純物の総重量を基準とする。
【0065】
本発明の第2の態様の更に好ましい薬学的組成物では、調製の直ぐ後に薬学的組成物中に元々含有されている少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物の少なくとも97.0重量%、好ましくは少なくとも97.5重量%が、例えばコーティングされているか、またはコーティングされていないアルミニウム容器内で、40℃及び75%の相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後、組成物中に存在することになる。
【0066】
本発明の第2の態様の更に別の好ましい薬学的組成物では、薬学的組成物の元々の薬学的活性の少なくとも97.0%、好ましくは少なくとも97.5%が、例えばコーティングされているか、またはコーティングされていないアルミニウム容器内で、40℃及び75%相対湿度で3ヶ月間貯蔵した後に保持される。
【0067】
本発明の薬学的組成物について観察される改善した安定性は、オレイン酸などの界面活性剤を含有する組成物、ならびに界面活性剤を含まないものについて達成可能である。加えて、有機酸及び無機酸などの酸安定剤を含まない組成物について達成可能である。
【0068】
上記の安定化方法において薬学的組成物の貯蔵のことを言う場合、発明者らは、特にコーティングされているか、またはコーティングされていないアルミニウム容器におけるそのような組成物の貯蔵を指す。同様に、上記の薬学的組成物の貯蔵のことを言う場合、発明者らは、特にコーティングされているか、またはコーティングされていないアルミニウム容器におけるそれらの貯蔵を指す。
【0069】
フランカルボン酸モメタゾンなどのモメタゾン化合物、ホルモテロールフマル酸塩二水和物などのホルモテロール化合物、及び定量吸入器を使用して送達されるように設計された噴霧剤を含む噴霧剤を含有する界面活性剤を含まない薬学的組成物中の1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴霧剤の使用が、予想外に、HFA-134aまたはHFA-227eaのいずれかが噴霧剤として使用されるときに観察される性能と比較して、その組成物が定量吸入器から送達されるときに、薬学的組成物のエアロゾル化性能を改善できることが分かった。特に、放出量のモメタゾン化合物及びホルモテロール化合物の両方の細粒分は、典型的には、放出量のモメタゾン化合物及びホルモテロール化合物の少なくとも30重量%及び好ましくは少なくとも35重量%を含む。発明者らは、本明細書において、特に薬学的組成物がMDIキャニスターに充填された直ぐ後、及び任意の長期貯蔵前に観察される放出量について言及している。
【0070】
したがって、本発明の第4の態様では、噴霧剤成分と、本明細書で定義される少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物を含む薬物成分と、を含む界面活性剤を含まない薬学的組成物のエアロゾル化性能の改善方法が提供され、該方法は、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴霧剤成分を使用することを含む。
【0071】
本発明の第4の態様の方法における薬学的組成物は、懸濁液または溶液であり得るが、典型的には、懸濁液である。
【0072】
本発明の第4の態様の好ましい実施形態では、噴霧剤成分と、本明細書で定義される少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物を含む薬物成分と、を含む界面活性剤を含まない薬学的組成物のエアロゾル化性能の改善方法が提供され、該方法は、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴霧剤成分を使用することと、定量吸入器から送達されるときに、少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物の放出量の少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%である、少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物の両方の細粒分をもたらす、薬学的組成物を提供することと、を含む。発明者らは、本明細書において、特に薬学的組成物がMDIキャニスターに充填された直ぐ後、及び任意の長期貯蔵前に観察される放出量について言及している。
【0073】
放出量の細粒分を増加させることは、肺の深い細気管支経路及び肺胞経路に浸透して、喘息発作またはCOPDの作用の軽減を最大化することができる、微細薬物粒子であるため、非常に有益である。
【0074】
細粒分は、当該技術分野において広く認識された用語である。これは、5μmを下回る直径を有する放出されたエアロゾル粒子の質量分率の尺度であり、有効な肺胞薬物送達のために最も望ましい粒径範囲であると一般に受け入れられている。
【0075】
本発明の第4の態様の方法では、適切かつ好ましいモメタゾン化合物及び適切かつ好ましいホルモテロール化合物は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上記のとおりである。加えて、本発明の第4の態様の方法において典型的かつ好ましい量の薬物成分及び噴霧剤成分、ならびに噴霧剤成分に適した典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上記のとおりである。
【0076】
一実施形態では、本発明の第4の態様における薬学的組成物は、本質的に、またはより好ましくは完全に、上で定義した薬物成分及び噴霧剤成分からなる。「本質的に~からなる」という用語は、薬学的組成物の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、2つの成分からなることを意味する。
【0077】
本発明の第4の態様の薬学的組成物はまた、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上で考察した極性賦形剤を含有してもよい。適切かつ好ましい極性賦形剤は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上で考察したとおりである。極性賦形剤の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上で考察したとおりである。
【0078】
特に好ましい実施形態では、本発明の第4の態様の方法において提供される薬学的組成物は、有機酸及び無機酸などの酸安定剤を含まない。
【0079】
また、フランカルボン酸モメタゾンなどのモメタゾン化合物、ホルモテロールフマル酸塩二水和物などのホルモテロール化合物、及び定量吸入器を使用して送達されるように設計された噴霧剤を含む噴霧剤を含有する界面活性剤を含まない薬学的組成物中の1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴霧剤の使用が、予想外に、HFA-134aまたはHFA-227eaのいずれかが噴霧剤として使用されるときに観察される性能と比較して、その組成物が定量吸入器から送達されるときに、貯蔵後の薬学的組成物のエアロゾル化性能を改善できることも分かった。
【0080】
したがって、本発明の第5の態様では、噴霧剤成分と、本明細書で定義される少なくとも1つのモメタゾン化合物及び本明細書で定義される少なくとも1つのホルモテロール化合物を含む薬物成分と、を含む薬学的組成物の、例えば、コーティングされているか、またはコーティングされていないアルミニウム容器における貯蔵後のエアロゾル化性能の改善方法が提供され、該方法は、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴霧剤成分を使用することを含む。
【0081】
本発明の第5の態様の方法における薬学的組成物は、懸濁液または溶液であり得るが、典型的には、懸濁液である。
【0082】
長期貯蔵後の放出量の細粒分を増加させることは、非常に有益である。上で説明したとおり、これは、肺の深い細気管支経路及び肺胞経路に浸透して、喘息発作またはCOPDの作用の軽減を最大化することができる、微細薬物粒子である。したがって、貯蔵後に高い細粒分を保持することは、薬学的組成物が最初に製造されてから相当の期間が経過したとしても、MDIの使用者が、依然として医学的に満足な用量の薬物を受け取るはずであることを意味する。
【0083】
本発明の第5の態様の方法では、適切かつ好ましいモメタゾン化合物及び適切かつ好ましいホルモテロール化合物は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上記のとおりである。加えて、本発明の第5の態様の方法における薬物及び噴霧剤成分の典型的かつ好ましい量、ならびに噴霧剤成分に適した典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上記のとおりである。
【0084】
一実施形態では、本発明の第5の態様における薬学的組成物は、本質的に、またはより好ましくは完全に、上で定義した薬物及び噴霧剤成分からなる。「本質的に~からなる」という用語は、薬学的組成物の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、2つの成分からなることを意味する。
【0085】
本発明の第5の態様の薬学的組成物はまた、本発明の第1の態様の薬学的組成物について上で考察した極性賦形剤及び界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。適切かつ好ましい極性賦形剤及び界面活性剤は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上で考察したとおりである。極性賦形剤及び界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上で考察したとおりである。
【0086】
特に好ましい実施形態では、本発明の第5の態様の方法において提供される薬学的組成物は、有機酸及び無機酸などの酸安定剤を含まない。
【0087】
噴霧剤中に分散または懸濁される本明細書で定義されるモメタゾン化合物を、任意選択で、本明細書で定義されるホルモテロール化合物と共に含有する薬学的組成物中に、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴霧剤を使用することで、予想外に、微粒子薬物(複数可)が、HFA-134aまたはHFA-227eaのいずれかが噴霧剤として使用されるときに観察される沈殿時間と比較して、噴霧剤中に完全に分散された後に沈殿するまでにかかる時間を増加させ得ることが分かった。
【0088】
したがって、本発明の第6の態様では、噴霧剤成分と、本明細書で定義されるモメタゾン化合物を、任意選択で、本明細書で定義されるホルモテロール化合物と共に含む噴霧剤成分中に懸濁された薬物成分と、を含む薬学的組成物の沈殿時間の増加方法が提供され、該方法は、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴霧剤成分を使用することを含む。
【0089】
本発明の第6の態様の好ましい一実施形態では、沈殿時間は、HFA-152aを含有する噴霧剤中に完全に分散させた後、少なくとも2.0分、より好ましくは少なくとも2.5分、なおもより好ましくは少なくとも3.0分である。
【0090】
本発明の第6の態様の方法では、適切かつ好ましいモメタゾン化合物及び適切かつ好ましいホルモテロール化合物は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上記のとおりである。加えて、本発明の第6の態様の方法における薬物(複数可)及び噴霧剤成分の典型的かつ好ましい量、ならびに噴霧剤成分に適した典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上記のとおりである。
【0091】
一実施形態では、本発明の第6の態様における薬学的組成物は、本質的に、またはより好ましくは完全に、上で定義した薬物(複数可)及び噴霧剤成分からなる。「本質的に~からなる」という用語は、薬学的組成物の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、2つの成分からなることを意味する。
【0092】
本発明の第6の態様の薬学的組成物はまた、本発明の第1の態様の薬学的組成物について上で考察した極性賦形剤及び界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。適切かつ好ましい極性賦形剤及び界面活性剤は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上で考察したとおりである。極性賦形剤及び界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1及び第2の態様の薬学的組成物について上で考察したとおりである。
【0093】
特に好ましい実施形態では、本発明の第6の態様の方法において提供される薬学的組成物は、有機酸及び無機酸などの酸安定剤を含まない。
【0094】
本発明の薬学的組成物は、例えば、定量吸入器(MDI)を使用する、加圧エアロゾル容器からのモメタゾン化合物及びホルモテロール化合物(含まれる場合)の送達に特定の可用性を見出す。この用途のためには、本薬学的組成物は、加圧エアロゾル容器内に収容され、R-152a噴霧剤は、薬物を微細なエアロゾル噴霧として送達する働きをする。
【0095】
本発明の薬学的組成物は、バルブ潤滑剤などの、加圧MDI用薬物製剤中で従来的に使用される種類の、1つ以上の他の添加物を含み得る。他の添加物が薬学的組成物に含まれる場合、それらは通常、当該技術分野で慣習となっている量で使用される。
【0096】
本発明の薬学的組成物は、通常、薬剤送達デバイスと併せて使用されることになる加圧容器またはキャニスターの中で貯蔵される。そのように貯蔵されるとき、本薬学的組成物は、通常、液体である。好ましい実施形態では、加圧容器は、定量吸入器(MDI)における使用のために設計される。特に好ましい実施形態では、この加圧容器は、コーティングされたアルミニウム缶またはコーティングされていないアルミニウム缶、特にその低コスト及び使用の容易性を考慮すると後者である。
【0097】
したがって、本発明の第7の態様は、本発明の第1または第2の態様の薬学的組成物を保持する加圧容器を提供する。第8の態様では、本発明は、本発明の第1または第2の態様の薬学的組成物を収容する加圧容器を有する薬剤送達デバイス、特に定量吸入器を提供する。
【0098】
この定量吸入器は、典型的には、分注される薬学的組成物を収容する容器に圧着されるノズル及びバルブアセンブリを備える。容器とノズル/バルブアセンブリとの間に密封をもたらすために、エラストマーガスケットが使用される。好ましいエラストマーガスケット材料は、EPDM、クロロブチル、ブロモブチル、及びシクロオレフィンポリマーゴムであり、理由は、これらがHFA-152aと良好な互換性を呈し、またHFA-152aの容器からの透過を防止または制限する良好なバリアを提供し得るためである。
【0099】
本発明の薬学的組成物は、呼吸器障害、及び特に喘息、または慢性閉塞性肺疾患を患っているかまたは患う可能性が高い患者を治療するための医薬品における使用を目的とする。
【0100】
したがって、本発明はまた、呼吸器障害、特に喘息、または慢性閉塞性肺疾患を患っているかまたは患う可能性が高い患者を治療するための方法も提供し、本方法は、患者に、治療または予防有効量の、本発明の第1または第2の態様の薬学的組成物を投与することを含む。本薬学的組成物は、好ましくは、MDIを使用して患者に送達される。
【0101】
本発明の薬学的組成物は、少なくとも1つのモメタゾン化合物、少なくとも1つのホルモテロール化合物(含まれる場合)、R-152aを含有する噴霧剤、及び任意の他の任意選択の成分を、好適な混合容器において求められる割合でまとめて混合する、単純なブレンド作業によって調製することができる。混合は、当該技術分野で一般的であるように、撹拌によって促進することができる。便宜的に、R-152aを含有する噴霧剤を液化して、混合を補助する。薬学的組成物を別々の混合容器中で作製する場合には、これらを、薬剤送達デバイス及び特にMDIの一部として使用される加圧容器などの貯蔵用加圧容器に移してもよい。
【0102】
本発明の薬学的組成物はまた、エアロゾルキャニスターまたはバイアルなどの加圧容器内で調製することもでき、組成物は、最終的にはここからMDIなどの薬剤送達デバイスを使用してエアロゾル噴霧として放出される。この方法では、秤量した量の少なくとも1つのモメタゾン化合物及び少なくとも1つのホルモテロール化合物(含まれる場合)が、開放している容器中に導入される。次に、バルブが容器に圧着され、液体形態のR-152a含有噴霧剤成分が、任意選択でまずバルブを通して容器を空にした後、バルブを通して圧力下の容器に導入される。界面活性剤成分及び任意の他の任意選択の成分をモメタゾンと混合してもよく、あるいは代替的に、単独で、または噴霧剤成分との予混合物として、バルブを装着した後で容器に導入してもよい。その後、混合物全体を処理して、例えば、激しい撹拌または超音波槽の使用によって、薬物を混合物中に分散させることができる。好適な容器は、プラスチック、金属、例えば、アルミニウム、またはガラスで作製され得る。好ましい容器は、金属、特に、コーティングされる場合もされない場合もあるアルミニウムで作製される。コーティングされていないアルミニウム容器は、より安価で使用が容易であるため、特に好ましい。
【0103】
容器には、複数の用量を提供するのに十分な薬学的組成物が充填され得る。MDI中で使用される加圧エアロゾルキャニスターは、典型的には、50~150回の個別用量を含有する。
【実施例
【0104】
本発明は、これから以下の実施例によって説明されるが、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0105】
実施例1
初期調製後、及びストレス貯蔵条件下で貯蔵した後に、HFA-227eaまたはHFA-152aのいずれかを噴霧剤として使用して、定量吸入器(MDI)から送達されるフランカルボン酸モメタゾン及びホルモテロールフマル酸塩二水和物の薬学的製剤のインビトロエアロゾル化性能を調査するために、多くの実験が行われた。
【0106】
微粉化フランカルボン酸モメタゾン(0.17% w/w)、微粉化ホルモテロールフマル酸塩二水和物(0.01% w/w)、エタノール(2.70% w/w)、及び任意選択でオレイン酸(1.70% w/w)の薬学的製剤を、HFA-227eaまたはHFA-152a(Mexichem,UK)のいずれかにおいて調製し、噴霧剤で均衡させた。オレイン酸(含まれる場合)を、最初にエタノールと混合した。薬物を秤量して、エタノールまたはエタノール/オレイン酸混合物を添加したガラス容器に直接入れた。次にこの混合物を、Silverson LS5ミキサーを4000rpmで20分間使用して均質化した。次にスラリーを、14mLのコーティングされたアルミニウムキャニスター及びステンレス鋼キャニスターに分注した。次にキャニスターを、50μLのバルブ(Aptar,France)で圧着させ、その後に噴霧剤を、手動Pamasol圧着機/充填機(Pamasol,Switzerland)を使用し、バルブを通してキャニスターに充填した。最後に、キャニスターを20分間音波処理して、懸濁液中の薬物の分散を助けた。
【0107】
製剤のインビトロエアロゾル化性能を、調製の直ぐ後(時間t=0)に次世代インパクターを用い、下記の方法を使用して試験した。次に製剤を、ストレス貯蔵条件下(バルブを下げて)、40℃及び75%相対湿度で1ヶ月間及び3ヶ月間貯蔵した。ストレス貯蔵条件下で1ヶ月間及び3ヶ月間貯蔵した後、薬学的製剤のインビトロエアロゾル化性能を、前述のとおり次世代インパクターを用い、下記の方法を使用して再度試験した。
【0108】
次世代インパクター(NGI,Copley Scientific,Nottingham UK)を、真空ポンプ(GE Motors,NJ,USA)に接続した。試験前に、NGIシステムのカップを、ヘキサン中の1% v/vシリコーン油でコーティングして、粒子の跳ね上がりを排除した。各実験の場合、バルブを3回作動させて、薬局方ガイドラインにより30L.分-1でNGIに排出した。エアロゾル化後に、NGI装置を分解し、アクチュエータ及びNGIの各部品を既知の堆積のHPLC移動相に洗い流した。NGIの各部品に堆積した薬物の質量を、HPLCによって決定した。このプロトコルを各キャニスターについて3回繰り返し、その後細粒量(FPD)及び放出量の細粒分(FPFED)を決定した。
【0109】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、エアロゾル化研究後の薬物含有量を決定した。分析には、粒径が2.6μmの100mm×3.0mmのAccucore Phenyl-Xカラムを使用した。カラムを、40℃で維持し、250nmの波長で動作するUV検出器に連結した。オートサンプラを周囲温度で動作させ、分析のために100μlの試料をカラムに注射した。稼働時間は27分であり、流量は0.55mL/分であった。クロマトグラフィー条件を以下の表1及び2に示す。
【表1】
【0110】
移動相の組成物は、以下の表2に示されるように変化した。
【表2】
【0111】
結果を以下の表3A、3B、4A、4B、5A、及び5Bを示す。
【表3A】
【0112】
【表3B】
【0113】
【表4A】
【0114】
【表4B】
【0115】
【表5A】
【0116】
【表5B】
【0117】
HFA-227eaを噴霧剤として使用したとき、オレイン酸の省略が、放出量及び細粒量の実質的な低減をもたらしたことを、上の表から見ることができる。対照的に、HFA-152aを噴霧剤として使用したとき、エアロゾル化性能は、オレイン酸の有無にかかわらず同様であった。加えて、HFA-152aを含む製剤は、加速した老化条件下ではるかにより安定しており、特にオレイン酸が製剤から省かれたとき、該製剤は、HFA-227eaを含む製剤よりも良好なエアロゾル化性能を呈していた。
【0118】
実施例2
オレイン酸を含む場合と含まない場合のHFA-227ea及びHFA-152aにおけるフランカルボン酸モメタゾン及びホルモテロールフマル酸塩二水和物の化学的安定性を、時間ゼロ(T=0)と、バルブを下げて、アルミニウム缶及びスチール缶中で40℃及び75%の相対湿度(RH)、ならびに25℃及び60%の相対湿度(RH)で1ヶ月間(T=1M)及び3ヶ月間(T=3M)貯蔵した後とで調査した。
【0119】
薬物製剤は、上の実施例1に記載したとおりに調製し、上の実施例1に記載したHPLC技法を使用して分析した。
【0120】
HFA-152a及びHFA-227ea中のフランカルボン酸モメタゾン(MMF)及びホルモテロールフマル酸塩二水和物(FFD)複合薬製剤の化学的安定性を調査した結果を下の表6~9に示す。
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】
【0125】
フランカルボン酸モメタゾン及びホルモテロールフマル酸塩二水和物の薬学的製剤が、エアロゾル化噴霧剤としてのHFA-152aと共にブレンドされたとき、優れた化学的安定性を呈することは、上の表6~9におけるデータから見ることができる。
【0126】
実施例3
フランカルボン酸モメタゾン及びホルモテロールフマル酸塩二水和物、ならびにHFA-227eaまたはHFA-152aのいずれかを含有する製剤を、PETバイアル中で調製し、製剤の懸濁安定性を、Turbiscan MA 2000を使用して決定した。Turbiscan計器は、平底の5mLの円筒形ガラスセルに沿って移動する読み取りヘッドを有し、最大試料高80mmで、40μmごとに透過光及び後方散乱光の読み値を取る。読み取りヘッドは、近赤外線パルス及び2つの同期検出器を使用する。透過検出器は、0°でサスペンションチューブを通して透過した光を拾い、後方散乱検出器は、135°で産出物による後方光を受ける。
【0127】
異なる製剤の堆積及びフロックのサイズを下の表10に示す。
【表10】
【0128】
フランカルボン酸モメタゾン及びホルモテロールフマル酸塩二水和物の複合薬学的製剤が、エアロゾル化噴霧剤としてのHFA-152aと共にブレンドされたとき、顕著に優れた沈殿性能を呈することは、上の表10におけるデータから見ることができる。