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特許6993338ブランクからのカスタマイズされたシール部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ブランクからのカスタマイズされたシール部材
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018532296
(86)(22)【出願日】2016-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 IB2016057521
(87)【国際公開番号】W WO2017109630
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-12-11
(31)【優先権主張番号】62/270,820
(32)【優先日】2015-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ショドコフスキ,ローレン パトリシア
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/042705(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0273170(US,A1)
【文献】米国特許第06728589(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧支持システムのカスタマイズされたマスクのためのカスタマイズされたシール部材を製造する方法であって、
患者の顔の表面幾何学的形状データを生成するステップであり、前記表面幾何学的形状データは、前記患者の顔の表面幾何学的形状に対応し且つ前記患者の顔の表面幾何学的形状を表しており、前記表面幾何学的形状データは、前記表面幾何学的形状の局所領域を表す第1データを有する、ステップ、
前記第1データに基づき、及び、所定のアルゴリズムを使用して、3次元座標のセットを表す第2データを生成するステップであり、前記3次元座標は、前記局所領域からそれぞれの所定の方向において所定の距離だけそれぞれ離間される、ステップ、
前記表面幾何学的形状データを使用してカスタマイズデータを生成するステップであり、前記カスタマイズデータは、どのようにシールブランクが、前記患者に対して変更されるべきであるかを表しており、前記カスタマイズデータは、前記シールブランクのうち除去されて前記シールブランク内に複数のスルーホールをもたらすことになる複数の部分を示す除去データであり、前記カスタマイズデータは、前記シールブランクが切除されることになる場所を示す前記第2データを含む、ステップ、及び、
前記シールブランクのうち除去されることになる複数の部分が、前記シールブランク内に複数のスルーホールをもたらすように除去されて、前記カスタマイズデータに従ってカスタマイズされたシールブランクが形づくられるように、前記カスタマイズデータを使用して前記シールブランクをカスタマイズするステップ、
を含む方法。
【請求項2】
前記局所領域は、口の端の領域、鼻の先端の領域、額の中心の領域、額の下の領域、鼻梁の領域、眼の内側の領域、鼻の骨の中心の領域、鼻と頬の境界面の中心の領域、鼻翼の遠位の領域、鼻の底部の遠位の領域、鼻の底面の中心の領域、鼻の下の中心の領域、上唇の中心の領域、下唇の中心の領域、顎の深い部分の中心の領域、及び顎の尖部の領域を含む群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記除去データは、どのように前記シールブランク上の複数の切断が行われることになるのかを示す切断データであり、前記カスタマイズするステップは、前記切断データを使用して、コンピュータ数値制御マシン及びレーザーカッターを含む群から選択された装置を用いて前記シールブランクを切断するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カスタマイズデータは、前記カスタマイズされたシール部材の所望の完成したシール部材の幾何学的形状を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記表面幾何学的形状データを生成するステップは、
3次元スキャナを用いて前記患者の顔をスキャンして、前記表面幾何学的形状データを生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
圧支持システムのためのカスタマイズされたマスクを製造する方法であって、
請求項1に記載の圧支持システムのカスタマイズされたマスクのためのカスタマイズされたシール部材を製造する方法に含まれる全てのステップ、及び
結合部材を用いて、前記カスタマイズされたシール部材を支持部材に結合させるステップ、
を含む方法。
【請求項7】
前記結合部材は、400から3,000メガパスカルの弾性率を有する単一の材料から作製される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記結合部材は環状であり、前記結合部材はC形の断面を有し、さらに、前記結合させるステップは、スナップアクション機構によって前記カスタマイズされたシール部材を前記支持部材に結合させることを含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容を参照により本明細書に援用する2015年12月22日に出願した米国特許仮出願第62/270,820号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、呼吸ガスの流れを患者に送達するために患者インターフェース装置が使用される非侵襲的な換気及び圧支持システムに関し、特に、患者インターフェース装置のためのカスタマイズされたシール部材及びカスタマイズされたマスクに関する。本発明は、カスタマイズされたシール部材を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
患者の気道まで呼吸ガスの流れを非侵襲的に、すなわち患者に挿管することなく、又は、患者の食道に気管チューブを外科的に挿入することなく、送達することが必要であるか又は望ましい数多くの状況が存在する。例えば、非侵襲的換気として知られている技術を使用して患者に換気を行うことが知られている。最も注目すべきものは閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)である特定の医学的障害を治療するために、気道陽圧(PAP)療法を行うことも知られている。既知のPAP療法には、一定の陽圧が患者の気道に提供されて患者の気道をスプリントにより開く持続的気道陽圧(CPAP)、及び、患者の気道に提供される圧力が患者の呼吸サイクルと共に変わる可変気道圧力が含まれる。そのような療法は、典型的には、患者が眠っている夜間に患者に提供される。上記のような非侵襲的換気及び圧支持療法は、呼吸ガスの流れを生成するためのガス流発生器と、患者の顔上のマスク要素を含む患者インターフェース装置の配置を含む。ガス流発生器は、周囲から空気を取り込み、且つ、ファンを回転させてマシンから、送達管を通って、患者インターフェース装置内に空気を押し出して患者に送達させることによって、気道陽圧を生成する。
【0004】
従来のマスクは、シール形成機構と、シール形成機構に接続される支持機構とを含む。支持機構は、顔に加圧して頑強な密封をもたらし、さらに、顔にマスクを機械的に結合させて、マスクが夜間に動くのを防ぐ。支持機構は、シール形成機構とは異なり、患者の顔面に比較的大きな圧縮力を与える。シール形成機構は、典型的には、非常に薄く、最小の地力を有する。最新のプロセスでは、完全にカスタマイズされたシール形成機構を製造するために別のツールが作製される必要があり、これは、費用対効果が高くない又は時間効率が良くないアプローチである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、カスタマイズされたシール部材、及び、カスタマイズされたシール部材を含むカスタマイズされたマスクを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
カスタマイズされたシール部材を製造するステップには、患者の顔の表面幾何学的形状データを生成するステップであり、表面幾何学的形状データは、患者の顔の表面幾何学的形状に対応し且つ患者の顔の表面幾何学的形状を表している、ステップ;表面幾何学的形状データを使用してカスタマイズデータを生成するステップであり、カスタマイズデータは、どのようにシールブランクが、患者に対して変更されるべきであるかを表している、ステップ;及び、カスタマイズデータに従ってカスタマイズされたシールブランクが形づくられるように、カスタマイズデータを使用してシールブランクをカスタマイズするステップ;が含まれる。
【0007】
カスタマイズされたマスクは、カスタマイズされたシール部材;支持部材;及び、カスタマイズされたシール部材を支持部材に結合させるように構成された結合部材;を含む。
【0008】
本発明の上記及び他の目的、特徴、並びに特性だけでなく、操作方法及び関連する構造要素及び部品の組み合わせの機能も製造のむだを省くことも、付随の図面を参考にして以下の説明及び添付の特許請求の範囲を考慮することによってより明らかになり、付随の図面の全てが本明細書の一部を形成し、類似の参照番号は種々の図において対応する部分を示している。しかし、図面は例示及び説明目的のためだけにあり、本発明の範囲を規定するとして意図されないことを明確に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】開示された概念の非限定的な実施形態によるカスタマイズされたマスクを含む圧支持システムの簡略図である。
図2図1の圧支持システムのためのカスタマイズされたマスクの分解組立図である。
図3図1のカスタマイズされたマスクのシール部材に対する製造プロセスのブロックの形の概略的な流れ図である。
図4】患者の顔の表面幾何学的形状データに対応するレンダリングの平面図である。
図5図3の製造プロセスにおいて利用されるシールブランクの平面図である。
図6図1の線A-Aに沿って得られた、図1のカスタマイズされたマスクの断面図である。
図7】開示された概念の別の非限定的な実施形態によるカスタマイズされたマスクの断面図である。
図8図7のカスタマイズされたマスクのための結合部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において使用される場合、単数形の不定冠詞又は定冠詞は、その内容が何か他に明確に指示していない限り、その複数形を含む。本明細書において使用される場合、2つ以上の部品又は構成要素が「連結される」という記載は、連接が生じる限り、その部品が結合されるか、又は、直接的若しくは間接的に、すなわち、1つ以上の中間の部品又は構成要素を介して共に作動することを意味する。
【0011】
本明細書において使用される場合、「幾何学的形状」という用語は、表面又は物体の3次元特性を意味するものとする。本明細書において使用される場合、「単一の(unitary)」という用語は、通じて一定の材料性質を有する同種の材料を意味するものとする。本明細書において使用される場合、「幾何学的形状」という用語は、表面又は物体の3次元特性を意味するものとする。
【0012】
本明細書において利用される場合、2つ以上の部品又は構成要素が互いに「かみ合う/係合する」という記載は、その部品が、直接又は1つ以上の中間の部品又は構成要素を介して互いに対して力を及ぼすことを意味するものとする。本明細書において利用される場合、「数」という用語は、1又は1以上の整数(すなわち、複数)を意味するものとする。
【0013】
本明細書において利用される場合、「3次元スキャナ」という用語は、実世界の物体を分析し、3次元で物体の形状を表すデータ(例えばデジタルデータ)を生成する装置を意味するものとし、さらに、物理的接触を介して対象を探索して形状データを生成する接触式スキャナと、ある種の放射線又は光を放ち、その反射又は対象を通過するものを検出して形状データを生成する非接触式アクティブスキャナと、反射された周囲放射線を検出して形状データを生成する非接触式パッシブスキャナとを含むものとするが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書において利用される場合、「レンダリング」という用語は、物体の形状を表す2次元又は3次元のデータから生成された画像を意味するものとする。
【0015】
図1は、開示された概念の非限定的な実施形態による、患者に圧支持療法を行うように構成された圧支持システム2を示している。示されているように、圧支持システム2は、ガス送達管(例えば、簡略化された形で示されているホース6)、ガス流発生器8(簡略化された形で示されている)、及びカスタマイズされたマスク100を含む。ホース6は、ガス流発生器8をカスタマイズされたマスク100に流体接続させるように構成されている。図2は、支持部材102と、支持部材102に結合するように構成されたシール部材104とを含むカスタマイズされたマスク100の分解組立図を示している。本明細書において以下により詳細に説明されるように、シール部材104は、患者に対してカスタマイズされ、快適さ及び患者との信頼性の高い密封を有利に提供している。これは、典型的には全ての患者に対して同じ幾何学的形状を有し(例えばカスタマイズされていない等)、従って、シール部材104を用いて作製されたシールよりも劣っているシールを患者に提供する先行技術のシール部材(図示せず)とは異なる。
【0016】
図3は、カスタマイズされたシール部材104を製造するプロセスの概略図をブロックの形で示している。第1のステップ200は、患者の顔の表面幾何学的形状に対応し且つ患者の顔の表面幾何学的形状を表す表面幾何学的形状データを生成することである。1つの例証的な実施形態では、生成するステップ200は、表面幾何学的形状データを生成するために3次元スキャナ201を用いて患者の顔をスキャンするステップを含む。開示された概念の範囲から逸脱することなく、表面幾何学的形状データを生成する他の適した代替の方法を使用することもできるということが正しく理解されることになる。例えばコンピュータスクリーンに示されるステップ200において生成された表面幾何学的形状データに対応する例となるレンダリング202が、図4において示されている。
【0017】
次のステップ300は、ステップ200において生成された表面幾何学的形状データを使用してカスタマイズデータを生成することである。カスタマイズデータは、どのようにシールブランク(例えば、図5において示されているシールブランク402を参照)は、特定の患者に対するカスタマイズされたシールを形成するために変更されるべきであるかを表している。非限定的な例証的な実施形態では、カスタマイズデータは、シールブランク402が切断されることになる場所を示す3次元座標のセットを表すデータを有する。例示目的で、3次元座標が、多くの曲線表示(例えば、限定することなく、エッジ部分310、312、314等)の形で描く破線で図5において示されている。
【0018】
製造プロセスは、図2において示されているカスタマイズされたシール部材104を形成するために、カスタマイズデータを使用してシールブランク402(図5)をカスタマイズするステップ400をさらに含む(カスタマイズされたシール部材104は、シールブランク402のカスタマイズが完了した後に残る、図5において示されているシールブランク402の部分404によって表されている)。正しく理解されるように、カスタマイズされたシール部材104は、カスタマイズデータに従って形づくられている。例証的な実施形態では、シールブランク402は、平均的な患者の顔の表面幾何学的形状に従って形づくられた所定の輪郭を有する。すなわち、図5は上面図を描いているけれども、シールブランク402は、例えば鼻を受けるように形づくられた輪郭を有しており、張力により患者の鼻に及ぼされるであろう力を有利に最小にしている。さらに、いかなる数の異なるシールブランク(図示せず)も、所与のマスクタイプに対して及び/又は異なるマスクタイプに対して利用することができる。より具体的には、所与のマスクタイプ(例えば、フルフェイスのマスクタイプ)内で、シールブランクによって、例えば、より幅広の鼻部分及び/又はより長い頬部分等、有する輪郭は異なり得る。さらに、異なるそれぞれのカスタマイズされたマスクを製造するために、例えば、鼻のシールブランク、クレイドルスタイルのシールブランク及びピロースタイルのシールブランク等、異なるマスクタイプに対するシールブランクもあり得る。
【0019】
図5において示され且つ本明細書において記載されるように、部分404は、カスタマイズされたシール部材104を表している。従って、ステップ300において生成されるカスタマイズデータは、カスタマイズされたシール部材104を生じるために除去されることになるシールブランク402の多くの部分(実線及び破線によって境界が示された図5における影が付けられた部分410、412、414を参照)を示すデータ(例えば、限定されることなく、どのように切断が行われることになるかを示す切断データ等)である。別の言い方をすれば、カスタマイズするステップ400の前に、シールブランク402は、一般にスルーホールを欠く(すなわち、それぞれ内部エッジのない2つの対向する表面を有する)比較的滑らかな構成要素であり、カスタマイズするステップ400の間に、部分410、412、414が、カスタマイズデータによって示されるように除去される。部分410、412、414を除去するとき、カスタマイズするステップ400は、シールブランク402を切断し、その結果、カスタマイズされたシール部材104を作製するために、装置(例えば、限定されることなく、レーザーカッター406、コンピュータ数値制御マシン408等)を利用することを含む。より具体的には、例証的な実施形態では、レーザーカッター406又はコンピュータ数値制御マシン408がシールブランク402を切断してカスタマイズされたシール部材104を生じることを可能にするために、カスタマイズデータがレーザーカッター406又はコンピュータ数値制御マシン408に送られる。
【0020】
再び図4を参照して、1つの特定の例証的な実施形態が次に記載される。図4において示されるように、レンダリング202は、多くの局所領域(例えば、限定されることなく、口の端の領域204、206、鼻の先端の領域208、額の中心の領域210、額の下の領域212、鼻梁の領域214、眼の内側の領域216、218、鼻の骨の中心の領域220、鼻と頬の境界面の中心の領域222、224、鼻翼の遠位の領域226、228、鼻の底部の遠位の領域230、232、鼻の底面の中心の領域234、鼻の下の中心の領域236、上唇の中心の領域238、下唇の中心の領域240、顎の深い部分の中心の領域242、及び顎の尖部の領域244等、それぞれが、患者の顔の領域に対応している)を有する。この例証的な実施形態では、表面幾何学的形状データを生成するステップ200の間に、患者の重要な顔の特徴に対応するデータ(例えば、領域204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244に対応するデータ)が生成され、その重要な顔の特徴のデータは、ステップ300においてカスタマイズデータを生成するために使用される。再び図5を参照すると、領域204、206、208が、シールブランク402上に重ねられて示されている。
【0021】
特に、開示された概念のこの例証的な実施形態によると、カスタマイズデータを生成するステップ300は、(3次元座標の形で)エッジ部分310、312、314を表すデータを含むカスタマイズデータを生成するために、表面幾何学的形状データ及び重要な顔の特徴のデータと共に所定のアルゴリズムを利用するステップをさらに含む。図5において見ることができるように、エッジ部分310、312、314を表すデータは、カスタマイズされたシール部材104を生じるために除去されることになる部分410、412、414も描写している。1つの特定の例証的な実施形態において、所定のアルゴリズムは、エッジ部分310、312、314が、それぞれの領域204、206、208から所定の距離(図5における例となる距離316、318、320を参照)だけ所定の方向(図5における例となる方向322、324、326を参照)においてそれぞれ離間されるようにエッジ部分310、312、314を表すデータを生成する。例示を容易にし、開示のむだを省くために、領域204、206、208のみが図5において示されているが、領域210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、240、242、244(図4)も、エッジ部分310、312、314を表すデータを生成するために、アルゴリズムと共に利用することができるということが正しく理解されることになる。所定の距離316、318、320及び所定の方向322、324、326が、エッジ部分310、312、314上の特定の位置に関連して本明細書において開示されてきたけれども、エッジ部分310、312、314の全体を表すデータが、領域204、206、208からの無限数の所定の方向における無限数の所定の距離を計算するアルゴリズムによって生成される。
【0022】
この例証的な実施形態では、エッジ部分310、312、314は、例えばシールブランク402が切断されることになる切断線を表している。従って、カスタマイズするステップ400の間に、エッジ部分310、312、314を表すデータを含むカスタマイズデータは、部分410、412、414を除去することによりシールブランク402をカスタマイズするために、装置406、408のうちの1つによって使用される。装置406、408はそれぞれ、シールブランク402が切断される前に、それぞれの装置406、408がシールブランク402を位置づけることを可能にする位置合わせ機構を含む。カスタマイズするステップ400の間に、エッジ部分310、312、314を表すデータを含むカスタマイズデータが、受信したデータ及び位置合わせ機構に基づいて切断動作を行う装置406、408のうちの1つに送られる。
【0023】
エッジ部分310、312、314を表すデータは、患者に特定の表面幾何学的形状データを使用して生成される(すなわち、局所領域204、206、208から所定の方向322、324、326において所定の距離316、318、320だけエッジ部分310、312、314を離間させる)ため、結果として生じるシール部材104は、患者の顔に従ってカスタマイズされ且つ形づくられる。結果として、カスタマイズされたシール部材104が、カスタマイズされたマスク100において利用される場合、患者とカスタマイズされたマスク100との間の密封は、カスタマイズされていないシール部材を含むマスク(図示せず)と患者との間の密封と比較して、より快適で信頼できるということになる。例えば、実際の患者の口の端及び鼻の先端と、シール部材104の多くのエッジ部分110、112、114(図2)との間隔は、患者に特有である。これは、領域204、206、208から所定の距離316、318、320だけエッジ部分310、312、314を離間させるアルゴリズムから生じる。さらに、開示される方法は、あらゆる数の異なる患者に対してカスタマイズデータを生成するために利用されてもよい。すなわち、異なる顔に対応する表面幾何学的形状データは、異なる局所領域を有することになる。次に、カスタマイズデータをそれぞれの局所領域及び所定のアルゴリズムに基づいて生成することができ、シールブランク402及び/又は適した代替のシールブランク(図示せず)が、カスタマイズデータを使用してカスタマイズされ得る。
【0024】
開示された概念は、カスタマイズデータが、除去されることになるシールブランク402の多くの特定の部分を表すデータの形である例証的な実施形態に関連して記載されてきたけれども、所望のカスタマイズされたシール部材104の完成した幾何学的形状全体を代わりに表すカスタマイズデータも開示された概念の範囲内である。そのような実行においては、そのカスタマイズデータは、レーザーカッター406又はコンピュータ数値制御マシン408等の装置に送られ、該装置は、次に、そのデータを使用して、所望のカスタマイズされたシール部材104を生じるためにどのようにシールブランクが変更されるべきであるかを決定するであろう(すなわち、装置は、完成した幾何学的形状全体を表す受信したカスタマイズデータを使用して、シールブランク402のどの部分が除去される必要があるかを決定し、次に、それに応じて上記の部分を除去するであろう)。言い換えると、カスタマイズデータは、代替の実施形態において、カスタマイズされたシール部材104の幾何学的形状を表していてもよい。
【0025】
図6は、別の例証的な実施形態によるカスタマイズされたマスク100の断面図を示している。示されているように、この実施形態におけるカスタマイズされたマスク100は、カスタマイズされたシール部材104に支持部材102を接着して結合させるように構成された結合部材(例えば、接着ビーズ106)をさらに含む。接着ビーズ106は、支持部材102及びシール部材104が適切に結合されるために、カスタマイズされたマスク100の周囲全体に沿って延びる。支持部材102はまた、いかなる適した代替の既知の方法(例えば接着テープ等)によってシール部材104に結合されてもよい。加えて、例証的な実施形態では、支持部材102は、カスタマイズされ、比較的強固で単一の材料(すなわち、400から3,000メガパスカルの一定の弾性率を有する材料)から作製される。しかし、開示された概念の範囲から逸脱することなく、いかなる適した代替の支持部材(図示せず)と共に利用されることになるカスタマイズされたシール部材104も開示された概念の範囲内である。すなわち、カスタマイズされたシール部材104は、カスタマイズされ且つ比較的柔らかい材料(例えば、支持部材102の材料よりも柔らかい材料等)から作製されたか、又は、カスタマイズされていない且つ比較的柔らかい材料から作製された支持部材(図示せず)を有するマスクにおいて利用されてもよい。
【0026】
図7は、支持部材502、カスタマイズされたシール部材504、及び、スナップアクション機構によって支持部材502をシール部材504に結合させるように構成された比較的強固な結合部材506を含む、さらなる例証的な実施形態による別のカスタマイズされたマスク500の断面図を示している。カスタマイズされたシール部材504は、本明細書において先に記載したカスタマイズされたシール部材104と同じプロセスによって作製される。示されているように、結合部材506は、一般に、C形の断面を有する。図8は、結合部材506の平面図を示している。結合部材506もまた、一般に環状であり、シール部材504に支持部材502を適切に結合させるために、カスタマイズされたマスク500の周囲全体に沿って延びるように構成されるということが正しく理解されることになる。例証的な実施形態では、結合部材506は、400から3,000メガパスカルの弾性率を有する単一の材料から作製される。すなわち、結合部材506の所与の位置が1,000メガパスカルの弾性率(例えば、又は400から3,000メガパスカルのいかなる他の弾性率)を有する場合、結合部材506の全ての他の位置は同じ弾性率を有する(すなわち、1,000メガパスカルの場合、結合部材506の全ての他の位置は、1,000メガパスカルの弾性率を有する)。
【0027】
結合部材506の材料の強剛性にもかかわらず、結合部材506は、患者の表面幾何学的形状とは異なって形づくられ(すなわち、患者の表面幾何学的形状とは一致せず)、快適な係合を有利に可能にしている。より具体的には、結合部材506は、接触圧力(すなわち、単位面積当たりの力)が患者の顔の全ての領域に対して比較的快適な範囲にあるように、比較的堅い鼻梁の領域及び顎の領域よりも患者の顔の頬の領域を加圧する(すなわち動かす)ように構成されている。これは、マスクの幾何学的形状が患者の顔の幾何学的形状に正確に対応するように構成されているという点で典型的な従来技術のマスク構成、すなわち、結合部材が、結合部材506と類似の弾性率を有する強固な材料から作製された場合に患者に望ましくない不快感及び/又は痛みをもたらすであろう構成とは異なる。
【0028】
開示された概念は、カスタマイズされたマスク100、500におけるシール部材104、504及び結合部材504、506に関連して記載されてきたけれども、シール部材104、504及び結合部材506を製造するために使用されるものと類似のプロセスによって作製されるそれぞれ他の適した代替のシール部材及び/又は結合部材が、開示された概念の範囲から逸脱することなく、他のカスタマイズされたマスク(例えば、限定されることなく、カスタマイズされた鼻のマスク、カスタマイズされたクレイドルスタイルのマスク、カスタマイズされたピロースタイルのマスク等)において利用されてもよいということが正しく理解されることになる。
【0029】
特許請求の範囲において、括弧内に置かれたいかなる参照番号も特許請求の範囲を限定するとして解釈するべきではない。「含む」(“comprising”又は“including”)という用語は、請求項に述べられたもの以外の要素又はステップの存在を除外しない。いくつかの手段を列挙する装置の請求項において、これらの手段のうちいくつかは、1つの且つ同じハードウェアのアイテムによって実現することができる。単数名詞を言及する際に不定冠詞又は定冠詞が使用されている場合は、その名詞の複数形の存在を除外しない。いくつかの手段を列挙するいかなる装置の請求項においても、これらの手段のうちいくつかは、1つの且つ同じハードウェアのアイテムによって実現することができる。特定の要素が互いに異なる従属項において記載されるという単なる事実は、これらの要素を組み合わせて使用することができないと示しているのではない。
【0030】
本発明は、最も実用的で好ましい実施形態であると現在考慮されるものに基づき例示を目的として詳細に記述されてきたけれども、そのような詳細は単にその目的のためだけであり、本発明は開示された実施形態に限定されないが、それどころか、付随の特許請求の範囲の真意及び範囲内にある修正及び同等の構成をカバーするよう意図されることを理解されたい。例えば、本発明は、可能な限り、いかなる実施形態の1つ又は複数の特徴もいかなる他の実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせることができると熟考していることを理解されたい。
図1
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