(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】管切断機
(51)【国際特許分類】
B23D 45/12 20060101AFI20220105BHJP
B23D 47/00 20060101ALI20220105BHJP
B23D 47/12 20060101ALI20220105BHJP
B23D 21/00 20060101ALI20220105BHJP
B23D 45/10 20060101ALI20220105BHJP
B23D 47/04 20060101ALI20220105BHJP
B23D 45/20 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B23D45/12 Z
B23D47/00 A
B23D47/12
B23D21/00 Z
B23D45/10
B23D47/04 F
B23D45/20
(21)【出願番号】P 2018539778
(86)(22)【出願日】2017-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2017033220
(87)【国際公開番号】W WO2018052069
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2017008510
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000150419
【氏名又は名称】株式会社中田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123467
【氏名又は名称】柳舘 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】藪田 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛之
(72)【発明者】
【氏名】王 飛舟
(72)【発明者】
【氏名】北山 皓正
(72)【発明者】
【氏名】尹 紀龍
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-346826(JP,A)
【文献】特開平04-135116(JP,A)
【文献】特開2010-017822(JP,A)
【文献】特許第3422576(JP,B2)
【文献】特許第2939409(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0202699(US,A1)
【文献】仏国特許発明第1360368(FR,A)
【文献】米国特許第3422576(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 45/12
B23D 47/00
B23D 47/12
B23D 21/00
B23D 45/10
B23D 47/04
B23D 45/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管をその中心線に直角に切断する定置式又は走行式の管切断機であって、
切断すべき管の中心線に直角な面をx-y面、前記管の中心を座標の原点として、y軸の両側にx軸方向で刃先がオーバーラップするように対向配置された一対の回転鋸刃と、
前記一対の回転鋸刃がx軸上及びその近傍ですれ違うように、一対の回転鋸刃をy軸方向で逆方向に直進駆動する直進駆動機構と、
前記一対の回転鋸刃がx軸上及びその近傍ですれ違う際に刃先の干渉を回避するべく、y軸方向の直進駆動力の一部をx軸方向に変換して一対の回転鋸刃の少なくとも一方をy軸から離れる外側へ移動させる動力方向変換機構とを
具備し、
前記動力方向変換機構は、一対の回転鋸刃の少なくとも一方をy軸へ近づく内側へ付勢して内側の移動限に保持する鋸刃付勢機構と、
一対の回転鋸刃がx軸上及びその近傍ですれ違う際に一対の回転鋸刃の少なくとも一方を付勢力に抗して外側へ退避移動させるガイド機構とを含み、
前記鋸刃付勢機構は、一対の回転鋸刃の少なくとも一方を内側の移動限に流体圧により押圧保持する、流体圧による押圧機構である管切断機。
【請求項2】
請求項1に記載の管切断機において、
前記ガイド機構は、外側へ凸の湾曲ガイドを含む管切断機。
【請求項3】
請求項1に記載の管切断機において、
前記回転鋸刃は油圧モータにより駆動される管切断機。
【請求項4】
請求項3に記載の管切断機において、
前記油圧モータは回転鋸刃と直結される管切断機。
【請求項5】
請求項1に記載の管切断機において、
更に、一対の回転鋸刃による切断面の正面側及び背面側にそれぞれ配置されて管を固定する前クランプ及び後クランプを具備する管切断機。
【請求項6】
請求項5に記載の管切断機において、
前記後クランプは、回転鋸刃の直進駆動方向であるy軸方向で管をクランプする管切断機。
【請求項7】
請求項6に記載の管切断機において、
前記前クランプ及び後クランプは、共に、回転鋸刃の直進駆動方向であるy軸方向で管をクランプする管切断機。
【請求項8】
請求項5に記載の管切断機において、
一対の回転鋸刃の移動域を覆うことにより、管の切断に伴って発生する切粉を回収する切粉回収ボックスを具備しており、
当該切粉回収ボックスは正面側の開口部を開閉する開閉扉を有すると共に、その開閉扉にて前記前クランプを支持する管切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば製管ラインに走行式切断機等として使用される管切断機に関し、より具体的には、回転鋸刃にミーリングカッターを用い、その回転鋸刃を回転させながら管と直角な面内で移動させて、その管を切断する管切断機に関する。ここにおける管切断機は走行式の他、定置式を含む。また、以下の説明では、切断すべき管と直角な面をx-y面と称する。
【背景技術】
【0002】
製管ラインでは、連続的に製造される管を定寸に切断するために走行式切断機が使用される。走行式切断機は、製造される管と同期して走行しながら、回転鋸刃を管と直角な面内で移動させて、その管を切断する。
【0003】
そのような管切断機として、特許文献1には、複数の回転鋸刃を回転させながら管の外周面に沿って旋回させる方式の切断機が開示されている。ここにおける切断方式は、回転鋸刃の管周方向の旋回移動が公転運動であることから公転式と呼ばれており、公転式のなかでも特に、回転鋸刃をx-yの2軸方向に位置制御することからx-y方式と呼ばれている。
【0004】
x-y方式以外の公転式切断方式としては、回転鋸刃を先端部に支持した揺動アームを、管が貫通する面板の周方向複数位置に取付けて、揺動アームの揺動角度と面板の回転角度とを制御するθ-θ方式や、回転鋸刃を管が貫通する面板の周方向複数位置に半径方向に移動可能に取付けて、回転鋸刃の半径方向位置と面板の回転角度とを制御するR-θ方式がある。
【0005】
公転式切断機の利点は、管径に対して比較的小径の回転鋸刃と、その回転鋸刃の小さな移動ストロークとにより高速切断を行える点である。この利点のために、公転式切断機は定置式切断機の他、製管ラインにおける走行式切断機等として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
公転式切断機の欠点としては、複数の回転鋸刃をx-y面で2方向に位置制御する必要があることから、駆動機構及び位置制御機構が複雑化及び大型化し、必然的に重量も嵩み、コスト高となり、故障も生じやすくなることがある。
【0008】
公転式とは別に、1枚の回転鋸刃を回転させながら、管の直径方向に直線的に移動させる直進式(R方式)もある。構造が単純であるが、回転鋸刃の半径が、管の直径より十分に大きくなければならないため、回転鋸刃の大径化による切断精度の低下等が問題となる。
【0009】
本発明の目的は、大径の管も短時間で精度よく効率的に切断でき、しかも構造が簡単で小型、軽量な経済性、耐久性に優れた管切断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の管切断機は、管をその中心線に直角に切断する定置式又は走行式の管切断機であって、
切断すべき管の中心線に直角な面をx-y面、前記管の中心を座標の原点として、y軸の両側にx軸方向で刃先がオーバーラップするように対向配置された一対の回転鋸刃と、
前記一対の回転鋸刃がx軸上及びその近傍ですれ違うように、一対の回転鋸刃をy軸方向で逆方向に直進駆動する直進駆動機構と、
前記一対の回転鋸刃がx軸上及びその近傍ですれ違う際に刃先の干渉を回避するべく、y軸方向の直進駆動力の一部をx軸方向に変更して一対の回転鋸刃の少なくとも一方をy軸から離れる外側へ移動させる動力方向変換機構とを具備する。
【0011】
本発明の管切断機においては、x-y面内のy軸の両側にx軸方向で刃先がオーバーラップするように対向配置された一対の回転鋸刃が、y軸方向で逆向きに直進駆動される。また、x軸上及びその近傍で一対の回転鋸刃がすれ違う際に、y軸方向の直進駆動力の一部がx軸方向に変換されて、一対の回転鋸刃がy軸から離れる方向、すなわち外側へ離反移動することにより、一対の回転鋸刃の刃先同士の干渉が回避される。本発明の管切断機において、前記動力方向変換機構は、一対の回転鋸刃の少なくとも一方をy軸へ近づく内側へ付勢して内側の移動限に保持する鋸刃付勢機構と、一対の回転鋸刃がx軸上及びその近傍ですれ違う際に一対の回転鋸刃の少なくとも一方を付勢力に抗して外側へ退避移動させるガイド機構とを含む。前記鋸刃付勢機構は、一対の回転鋸刃の少なくとも一方を内側の移動限に弾性的に押圧保持する弾性部材であり、或いは、一対の回転鋸刃の少なくとも一方を内側の移動限に流体圧により押圧保持する、流体圧による押圧機構である。前記ガイド機構は、外側へ凸の湾曲ガイドを含む。前記回転鋸刃は油圧モータにより駆動される。前記油圧モータは回転鋸刃と直結される。本発明の管切断機は、更に、一対の回転鋸刃による切断面の正面側及び背面側にそれぞれ配置されて管を固定する前クランプ及び後クランプを具備する。前記後クランプは、回転鋸刃の直進駆動方向であるy軸方向で管をクランプする。前記前クランプ及び後クランプは、共に、回転鋸刃の直進駆動方向であるy軸方向で管をクランプする。本発明の管切断機は、一対の回転鋸刃の移動域を覆うことにより、管の切断に伴って発生する切粉を回収する切粉回収ボックスを具備する。当該切粉回収ボックスは正面側の開口部を開閉する開閉扉を有すると共に、その開閉扉にて前記前クランプを支持する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の管切断機は、x-y面内のy軸の両側にx軸方向で刃先がオーバーラップするように配置された一対の回転鋸刃を、y軸方向で逆向きに直進駆動すると共に、そのy軸方向の直進駆動力を利用して刃先の干渉を回避するので、比較的大径の管も短時間で効率的にしかも高精度に切断できる。しかも構造が簡単であるので小型、軽量であり、経済性、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態を示す管切断機の正面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態を示す管切断機の正面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態を示す管切断機の正面側からの斜視図である。
【
図4】同管切断機の正面側からの斜視図で、正面側が開放された状態を示す。
【
図6】同管切断機の背面側からの斜視図で、主要構成部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を説明する。
【0015】
まず、第1実施形態の管切断機を
図1により説明する。
【0016】
第1実施形態の管切断機は、管10をその中心線に直角に切断する管切断機であって、切断すべき管10の中心線に直角な面をx-y面、前記管の中心を座標の原点として、y軸の両側にx軸方向で刃先がオーバーラップするように配置された一対の回転鋸刃20,20と、一対の回転鋸刃20,20がx軸上及びその近傍ですれ違うように、一対の回転鋸刃20,20をy軸方向で逆方向に直進駆動する直進駆動機構50と、一対の回転鋸刃20がx軸上及びその近傍ですれ違う際に刃先の干渉を回避するべく、y軸方向の直進駆動力の一部をx軸方向に変更して一対の回転鋸刃20,20の少なくとも一方(ここでは両方)をy軸から離れる外側へ移動させる動力方向変換機構46及び47とを具備している。
【0017】
上記構成によれば、x-y面内のy軸の両側にx軸方向で刃先がオーバーラップするように配置された一対の回転鋸刃20,20が、y軸方向で逆向きに直進駆動される。また、x軸上及びその近傍で一対の回転鋸刃20,20がすれ違う際に、y軸方向の直進駆動力の一部がx軸方向に変換されて、一対の回転鋸刃20,20の両方がy軸から離れる外側へ離反移動することにより、一対の回転鋸刃20,20の刃先同士の干渉が回避される。
【0018】
こうして管10が切断されるので、大径の管10も短時間で効率的にかつ高精度に切断される。しかも構造が簡単であるので、装置が小型、軽量であり、経済性、耐久性が良好である。
【0019】
次に、第2実施形態の管切断機を
図2により説明する。
【0020】
第2実施形態の管切断機は、管10をその中心線に直角に切断する管切断機であって、切断すべき管10の中心線に直角な面をx-y面、前記管の中心を座標の原点として、y軸の両側にx軸方向で刃先がオーバーラップするように配置された一対の回転鋸刃20,20と、一対の回転鋸刃20,20がx軸上及びその近傍ですれ違うように、一対の回転鋸刃20,20をy軸方向で逆方向に直進駆動する直進駆動機構50と、一対の回転鋸刃20がx軸上及びその近傍ですれ違う際に刃先の干渉を回避するべく、y軸方向の直進駆動力の一部をx軸方向に変更して一対の回転鋸刃20,20の少なくとも一方(ここでは一方)をy軸から離れる外側へ移動させる動力方向変換機構46及び47とを具備している。
【0021】
上記構成によれば、x-y面内のy軸の両側にx軸方向で刃先がオーバーラップするように配置された一対の回転鋸刃20,20が、y軸方向で逆向きに直進駆動される。また、x軸上及びその近傍で一対の回転鋸刃20,20がすれ違う際に、y軸方向の直進駆動力の一部がx軸方向に変換されて、一対の回転鋸刃20,20の一方がy軸から離れる外側へ離反移動することにより、一対の回転鋸刃20,20の刃先同士の干渉が回避される。
【0022】
こうして管10が切断されるので、大径の管10も短時間で効率的にかつ高精度に切断される。しかも構造が簡単であるので、装置が小型、軽量であり、経済性、耐久性が良好である。
【0023】
次に、第3実施形態の管切断機を
図3~
図6により説明する。なお、
図1は
図3~
図6に示された管切断機の主要構成部分を示す。
【0024】
第3実施形態の管切断機は、例えば電縫管製造ラインの出口において、当該ラインから連続的に排出される管を、当該管と共に走行しながら切断する走行式切断機として使用される。
【0025】
本実施形態の管切断機は、
図3~
図6に示すように、管10を、そのパスセンター(すなわち中心線)の両側に対向配置された回転鋸刃20,20により切断するものである。以下の説明では、管10のパスセンター(すなわち中心線)に直角な平面をx-y面とし、x軸を水平線、y軸を水平線に対する垂直線で鉛直線、z軸を管10のパスセンター(すなわち中心線)とする。また、
図3及び
図4における手前側をライン出側、すなわち管10の排出側で正面側と称し、先奥側をライン入側、すなわち管10の進入側で背面側と称する。
【0026】
この管切断機は、x-y面内の特にy軸の両側にx軸方向で刃先がオーバーラップするように対向配置された回転鋸刃20,20と、両側の回転鋸刃20,20がx軸上及びその近傍ですれ違うように、両側の回転鋸刃20,20をy軸方向で逆方向に直進駆動する直進駆動機構50と、両側の回転鋸刃20がx軸上及びその近傍ですれ違う際に、y軸方向の直進駆動力の一部をx軸方向に変更して一対の回転鋸刃20,20をy軸から離れる方向(すなわち外側)へ離反移動させる動力方向変換機構と、切断される管10を固定するクランプ機構60とを具備している。
【0027】
両側の回転鋸刃20,20は、管10のパスセンター(すなわちz軸)を包囲する四角形のフレーム30内に配置されており、より詳しくは、フレーム30内に配置された両側の鋸刃ユニット40,40に、x軸方向で刃先がオーバーラップするように搭載されている。
【0028】
フレーム30は、z軸を上下から挟む上下一対の水平部材31,31と、z軸を両側から挟む左右一対の垂直部材32,32と、これらの内側に固定された四角形で垂直な背板33と、上下の水平部材31,31を正面側で連結する両側の連結棒34,34とを有しており、背板33の中央部には管10が通過する開口35が設けられている。
【0029】
フレーム30の正面側の開口部は、両側の連結棒34,34の外側に配置された両側の閉塞板36,36と、連結棒34,34の内側に配置された両開き状の開閉扉37,37とにより閉塞されている。両開き構造の開閉扉37,37は、管10が通過する開口38と、クランプ機構60の特に後述する前クランプ60Aが配置される空間とを残して、フレーム30の正面側の開口部を閉塞する一方、両側の連結棒34,34をヒンジ軸として開閉動作を行う。
【0030】
そして、このフレーム30は、背面側の背板33、正面側の閉塞板36,36及び両開き構造の開閉扉37,37と共に、切粉回収ボックスを構成する。また、開閉扉37,37の一方は、後で詳しく説明するが、前記前クランプ60Aの支持体を兼ねる。
【0031】
両側の鋸刃ユニット40,40は、パスセンターであるz軸の両側に対向配置されており、いずれも、y軸方向に移動可能な第1可動体41と、x軸方向に移動可能な第2可動体42との組み合わせにより構成されている。
【0032】
第1可動体41は、フレーム30内の背板33のライン出側、すなわち正面側に位置しており、その背板33の正面側の表面に取付けられた2本のy軸方向の直線ガイド43により、y軸方向に移動自在に支持されている。そして、前記直進駆動機構50により、y軸方向で逆方向に且つ対称的に同期駆動される。
【0033】
前記直進駆動機構50は、フレーム30内の背板33の背面側からフレーム30の上側にかけて配置されており、両側の鋸刃ユニット40,40の特に第1可動体41,41をy軸方向で逆方向に対称的に同期駆動する。
【0034】
詳しく説明すると、直進駆動機構50は、背板33の背面側に垂直に且つ回転自在に支持された両側のスクリュウロッド51,51と、両側のスクリュウロッド51,51に螺合する両側のボールネジ52,52とを有しており、両側のボールネジ52,52が背板33の正面側に支持された第1可動体41,41と連結されると共に、両側のスクリュウロッド51,51が、フレーム30上に配置されたモータ53及び連結軸54により同期して逆方向に回転駆動されることにより、両側の第1可動体41,41を前記のとおりy軸方向で逆方向に対称的に同期駆動する。
【0035】
すなわち、第1可動体41,41の一方がフレーム20内の上側の待機位置から下側の待機位置へ向けて下降するときに、他方がフレーム30内の下側の待機位置から上側の待機位置へ向けて上昇する。これにより、両側の鋸刃ユニット40,40は、回転鋸刃20,20と共にy軸方向で逆方向に且つ対称的に直進駆動されて、x軸上及びその近傍ですれ違う。
【0036】
一方、第2可動体42は、第1可動体41の正面側に配置されており、y軸に近い内側部分に、前記回転鋸刃20をその回転駆動機21と共に支持している。回転駆動機21は、ここでは油圧モータであり、その正面側には回転鋸刃20が、減速機構を介することなく連結(すなわち直結)されている。
【0037】
第2可動体42は、第1可動体41の正面側に、鋸刃付勢機構である弾性部材46を介して取付けられており、より具体的には、第1可動体41の正面側の表面に取付けられた2本のx軸方向の直線ガイド44により、x軸方向に移動自在に支持されると共に、同じく2本のx軸方向のロッド45に装着されたコイルスプリング状の弾性部材46により内側へ付勢されている。そして、第2可動体42が可動域の内側の限界位置に、付勢力により弾性的に保持されている状態で、鋸刃ユニット40,40における回転鋸刃20,20は、それぞれの刃先をx軸方向でオーバーラップさせる。
【0038】
背板23の正面側の表面には、パスセンターであるz軸を挟んでガイド機構である湾曲ガイド47,47が対称的に突設されている。個々の湾曲ガイド47はx軸上にあり、外側へ凸の弧状のガイド面48を有している。
【0039】
詳しく説明すると、第2可動体42の一部は、背面側の第1可動体41を貫通して第1可動体41の更に背面側に突出し、第1可動体41の背面側に配置された接触子49を支持している。接触子49は、ガイド機構である湾曲ガイド47のガイド面48に当接するローラであり、鋸刃ユニット40がx軸上及びその近傍を通過するとき当該ガイド面48に案内されて外側へ変位する。
【0040】
この第2可動体42の外側への変位により、鋸刃ユニット40は、x軸上及びその近傍を通過する際に、弾性部材46による付勢力に抗して外側へ弧状に退避移動して、両側の回転鋸刃20,20が干渉する事態を回避する。
【0041】
これから分かるように、両側の回転鋸刃20,20がx軸上及びその近傍ですれ違う際に、y軸方向の直進駆動力の一部をx軸方向に変換して、鋸刃ユニット40,40内の第2可動体42,42を外側へ離反移動させることにより、回転鋸刃20,20がx軸上及びその近傍ですれ違う際の刃先の干渉を回避するのが、前記動力方向変換機構であり、いずれの側においても、鋸刃ユニット40内に鋸刃付勢機構として設けられた弾性部材46と、背板23の正面側の表面にガイド機構として設けられた湾曲ガイド47との組み合わせにより構成されている。
【0042】
前記クランプ機構60は、フレーム30内の背板33より正面側に設けられた前後一対の前クランプ60A及び後クランプ60Bを含む。前後一対の前クランプ60A及び後クランプ60Bは、回転鋸刃20,20の配置面であり切断面であるx-y面の前後(すなわち正面側及び背面側)にそれぞれ配置されている。
【0043】
正面側の前クランプ60Aは、回転鋸刃20,20による切断面より正面側、特にその切断面に近い位置において管10を上下から挟持固定するものであり、具体的には、その挟持のための上下のクランプヘッド61A,61Aと、上下のクランプヘッド61A,61Aを上下から支持する垂直な棒状の支持部材62A,62Aと、支持部材62A,62Aを垂直方向で案内する上下の案内部材63A,63Aと、上下の案内部材63A,63Aに対して支持部材62A,62Aを上下各方向に各付勢する上下のスプリング64A,64Aとを備えている。
【0044】
そして、前クランプ60Aの特に案内部材63A,63Aは、両開き構造の開閉扉37,37の一方、ここでは向かって右側の開閉扉37の内側縁部に取付けられている。これにより、右側の開閉扉37を閉状態から開状態へ移行させると、前クランプ60Aが右側の連結棒34を中心として正面側へ旋回移動して、回転鋸刃20,20の正面側を開放する。
【0045】
一方、背面側の後クランプ60Bは、回転鋸刃20,20による切断面より背面側、特にその切断面に近い位置において管10を上下から挟持固定するもので、回転鋸刃20,20を駆動する回転駆動機21,21の間に配置されている。この後クランプ60Bは、上下のクランプヘッド61B,61Bと、上下のクランプヘッド61B,61Bを上下から支持する垂直な棒状の支持部材62B,62Bと、支持部材62B,62Bを垂直方向で案内する上下の案内部材63B,63Bとを有し、上下の案内部材63B,63Bはフレーム30に支持されている。
【0046】
そして、フレーム30の上下に設けた前後で共用のシリンダー65,65が、同じく前後で共用の昇降ヘッド66,66を介して前クランプ60Aの支持部材62A,62A、及び後クランプ60Bの支持部材62B,62Bを上下から押圧することにより、管10が切断面の正面側及び背面側の切断面に近い各位置で、前クランプ60Aのクランプヘッド61A,61A及び後クランプ60Bのクランプヘッド61B,61Bにより、上下から挟持固定される。
【0047】
ここで、後クランプ60Bにおける上下の支持部材62B,62Bは上下の昇降ヘッド66,66と結合されているが、前クランプ60Aにおける上下の支持部材62A,62Aは、前クランプ60Aの正面側への旋回移動を許容するために、上下の昇降ヘッド66,66とは非結合状態である(縁切りされている)。
【0048】
この結合・非結合のため、上下の昇降ヘッド66,66が元の位置へ復帰したとき、後クランプ60Bにおける上下の支持部材62B,62Bは元の位置へ復帰駆動されるが、前クランプ60Aにおける上下の支持部材62A,62Aは、上下の昇降ヘッド66,66による元の位置への復帰駆動がなされない。これに代わって、上下のスプリング64A,64による付勢力により、上下の支持部材62A,62Aが元の位置への復帰動作を行う。
【0049】
次に、第3実施形態の管切断機による管切断動作を説明する。
【0050】
待機状態では、両側の鋸刃ユニット40,40の一方は上側の待機位置にあり、他方は下側の待機位置にある。また、前クランプ60Aにおける上下のクランプヘッド61A,61A、及び後クランプ60Bにおける上下のクランプヘッド61B,61Bは、共に上下に開いた状態にある。また、両開き構造の開閉扉37,37は閉状態である。
【0051】
切断すべき管10が当該切断機に挿通されると、上下のシリンダー65,65が作動して、前クランプ60Aにおける上下のクランプヘッド61A,61A、及び後クランプ60Bにおける上下のクランプヘッド61B,61Bを閉じる方向へ駆動する。これにより管10が切断面の前後で上下から挟持され固定される。
【0052】
管10が固定されると、両側の回転鋸刃20,20が回転を始める。これと共に、両側の鋸刃ユニット40,40が、それぞれの待機位置から他方の待機位置へ向けて直進移動を開始する。すなわち、鋸刃ユニット40,40の一方が、上側の待機位置から下側の待機位置へ向けて下降を始め、他方が下側の待機位置から上側の待機位置へ向けて上昇を始める。
【0053】
これにより、両側の鋸刃ユニット40,40に各搭載された両側の回転鋸刃20,20は、x軸を挟んで対称位置(すなわち上側の待機位置と下側の待機位置)からx軸に向かって直進し、x軸上及びその近傍ですれ違って反対側の対称位置(すなわち下側の待機位置と上側の待機位置)へ向かう。両側の回転鋸刃20,20はx軸方向でそれぞれの刃先がオーバーラップする位置に配置されているので、2枚の回転鋸刃20,20のy軸方向の直進動作により管10が短時間で効率よく切断される。
【0054】
両側の回転鋸刃20,20がx軸上及びその近傍ですれ違うとき、そのままでは刃先同士が干渉するが、鋸刃ユニット40,40内でコイルスプリング状の弾性部材46,46により内側へ付勢された両側の第2可動体42,42が、両側の湾曲ガイド47,47に案内されることにより、付勢力に抗して外側へ退避移動するので、その干渉は回避される。
【0055】
かくして、管10が両側の回転鋸刃20,20により切断される。管10の切断に伴って発生する切粉は、切粉回収ボックスであるフレーム30内に回収され、周囲への飛散が防止される。背板33に設けられた開口35については、最大径の管10が通過できる孔部を残して蓋板等で閉塞するのがよく、小径管の場合は、交換するクランプヘッドの外周部に、前記蓋板等との隙間を覆う部材を設けるのが更によい。そうすることにより、切断時に生じる切粉が上流側へ飛散するのが防止され、下流側に設けられた開閉扉37と相まって、フレーム30内への切粉の回収効率が向上し、切粉回収対策の実効性がより向上する。
【0056】
本実施形態の管切断機の構成上、機能上の特徴は以下のとおりである。
【0057】
両側の回転鋸刃20,20がx軸方向で外側へ退避する動作は、y軸方向の直進駆動力を利用、すなわちx軸方向に変換することにより行われるので、この退避動作に新たな動力、駆動源を必要としない。すなわち、必要な動力は、基本的に両側の回転鋸刃20,20を回転させるための回転駆動力と、y軸方向の直進駆動力だけである。このため、両側の回転鋸刃20,20はx-y面で2方向に駆動されるにもかかわらず、駆動機構が簡素となる。
【0058】
回転鋸刃20,20は、管10の全体を切断するのではなく、管10の約半分を切断するだけであるので、管10の全体を切断する場合と比べて切断時間が短縮される。また、回転鋸刃20,20の半径が小さくなり、このことも、構造の簡素化に寄与する。
【0059】
両側の回転鋸刃20,20が管10の周囲を旋回せず、y軸方向に直進駆動されることは、回転鋸刃20,20の移動域が狭いことを意味するので、前述した駆動機構の簡素化と共同で、当該管切断機の小型化、軽量化に寄与する。
【0060】
回転鋸刃20,20の一方が上側の待機位置から下側の待機位置へ下降し、他方が下側の待機位置から上側の待機位置へ上昇した後、次の切断では回転鋸刃20,20の一方が下側の待機位置から上側の待機位置へ上昇し、他方が上側の待機位置から下側の待機位置へ下降する。これにより、次の切断に備えた回転鋸刃20,20の元の位置への復帰動作が不要となり、切断工程の短縮が可能となる。
【0061】
両側の回転鋸刃20,20がx軸上及びその近傍ですれ違うとき、外側に退避移動するが、x軸上では管10の横幅が最大となるので、両側の回転鋸刃20,20が管10から外れる事態が効果的に回避される。このため、回転鋸刃20,20が兼用できる管径の範囲が広がり、回転鋸刃20,20の直径、ひいてはその種類を少なくすることができる。すわわち、当該管切断機の特徴の一つとして、種々の口径の管10を切断できることがあり、回転鋸刃20,20の外径、湾曲ガイド47,47のガイド面形状、更には前クランプ60Aにおける上下のクランプヘッド61A,61A、及び後クランプ60Bにおける上下のクランプヘッド61B,61Bの接触面形状等を最適化することにより、兼用範囲を広く設定することが可能となる。
【0062】
回転鋸刃20,20による切断面の正面側は他の機器との干渉がないため、切断面に近い位置で前クランプ60Aによる管10の固定が可能となるが、切断面の背面側は回転鋸刃20,20を搭載する鋸刃ユニット40,40との干渉が懸念されるため、切断面に近い位置での後クランプ60Bによる管10の固定は容易でない。
【0063】
しかるに、本実施形態の管切断機では、両側の回転鋸刃20,20は、管10の周囲を旋回せず、y軸方向に直進駆動され、x軸方向では外側へ退避移動する。このため、両側の鋸刃ユニット40,40間に、y軸方向に延びる直線状の空間が形成可能となる。一方、前クランプ60A及び後クランプ60Bは、クランプ方向がy軸方向であるため、y軸方向に長い設計となっている。このため、両側の鋸刃ユニット40,40間に、管クランプ機構60の特に後クランプ60Bが配置可能となり、切断面の前後とも、切断面に近い位置で管10を固定することが可能となる。
【0064】
すなわち、両側の鋸刃ユニット40,40の直線駆動方向(両側の回転鋸刃20,20の直線駆動方向と同じ)と後クランプ60Bのクランプ方向とが同じであるため、切断面の前後とも、切断面に近い位置で管10を固定することが可能となり、結果、管10が強固に固定されることにより、管10の切断効率が上がり、回転鋸刃20,20の使用寿命が長くなる。
【0065】
加えて、本実施形態の管切断機では、前クランプ60Aのクランプ方向もy軸方向で、後クランプ60Bのクランプ方向と同じであるため、前後で共用の上下のシリンダー65,65及び昇降ヘッド66,66により開閉駆動される。このため、クランプ機構60の駆動機構が簡素となる。
【0066】
前クランプ60Aは、開閉扉37,37の一方(ここでは向かって右側の開閉扉37)に取付けられているので、開閉扉37,37を閉状態から開状態へ移行させると、前クランプ60Aが右側の連結棒34を中心として正面側へ旋回移動することにより、回転鋸刃20,20の正面側が開放される。これにより、フレーム30の一部を分解せずとも回転鋸刃20,20の交換作業が可能となる。このため、回転鋸刃20,20の交換作業が容易である。
【0067】
フレーム30の正面側では、クランプ機構60を作動させることにより、上下の水平部材31,31に離反方向の反力が作用するが、上下の水平部材31,31が連結軸34,34により連結されているので、軽量化を維持しつつ、必要な強度が確保される。両側の連結軸34,34は開閉扉37,37のヒンジ軸を兼ねているので、これもフレーム30の軽量化に寄与する。
【0068】
加えて、回転鋸刃20,20の回転駆動機21,21はここでは油圧モータである。油圧モータは軽量である上に、トルクが一定であるので、減速機を介さずに回転鋸刃20,20をダイレクトドライブできる。これによる小型化により、両側の鋸刃ユニット40,40間に形成される空間が大きくなり、後クランプ60Bの配置が容易になるので、この観点からも装置の小型化、軽量化が推進される。
【0069】
加えて、前記油圧モータにより回転鋸刃20,20を回転速度が一定で駆動し、直進駆動機構50により回転鋸刃20,20の昇降速度を可変制御するならば、回転鋸刃20,20の刃先寿命を延ばすことが可能となる。
【0070】
したがって、第3実施形態の管切断機も又、大径の管10も短時間で効率的に切断できる。しかも構造が簡単であるので小型、軽量であり、経済性、耐久性に優れる。
【0071】
なお、本実施形態では、x-y面内のx軸を水平線、y軸を水平線に対する垂直線で鉛直線としているが、これに限らない。y軸を水平線、x軸を水平線に対する垂直線で鉛直線としてもよい。2軸の方向は、x-y面内の直角な2方向という意味である。
【0072】
また、動力方向変換機構は、本実施形態では、鋸刃ユニット40内に鋸刃付勢機構として設けられた弾性部材46と、背板23の正面側の表面にガイド機構として設けられた湾曲ガイド47との組み合わせにより構成されているが、鋸刃付勢機構とガイド機構との組み合わせに限るものではなく、ガイドレールを用いたものでもよい。
【0073】
動力方向変換機構に関連して、第2図に図示された第2実施形態では、一対の回転鋸刃20,20のうちの、外側へ離反移動しない方の回転鋸刃20においても、鋸刃付勢機構としての弾性部材46が図示されているが、ガイド機構と共にこの鋸刃付勢機構を省略して、回転鋸刃20をx軸方向で固定することも当然可能である。
【0074】
動力方向変換機構が鋸刃付勢機構とガイド機構との組み合わせにより構成される場合、その鋸刃付勢機構は、前述の実施形態では、一対の回転鋸刃20,20の少なくとも一方を内側の移動限に弾性的に保持する弾性部材46とされているが、油圧シリンダー、空圧シリンダー等の流体圧による押圧機構でもよい。すなわち、一対の回転鋸刃20,20の少なくとも一方を内側の移動限に保持するための付勢力は、ばね圧でも油圧等の流体圧でもよいということである。
【0075】
鋸刃付勢機構が流体圧による押圧機構の場合、一対の回転鋸刃20,20の少なくとも一方が、内側の移動限に、流体圧により、設定圧で保持される。そして、両側の回転鋸刃20,20がx軸上及びその近傍ですれ違う際には、一対の回転鋸刃20,20の少なくとも一方が、ガイド機構により、前記設定圧を超える圧力で外側へ押し返されて退避移動することにより、弾性部材46の場合と同様に一対の回転鋸刃20,20の干渉が回避される。むしろ、流体圧による押圧機構は、弾性部材46の場合よりも、押圧力(設定圧)を簡単に大きくできるので、鋸刃付勢機構の小型化を図ることができる。また、その押圧力(設定圧)の調整が容易であるので、例えば、最初の切り込み時の押圧力を設定値より増圧しておき、切り込み直後に設定値に減圧すると、より切断動作の安定化を図ることができる。
【0076】
これに加えて、管10の直径が大きくなると、ガイド機構である湾曲ガイド47の交換が必要になり、それによって回転鋸刃20のx軸方向における移動距離が長くなり、弾性部材46についても交換の必要が生じる場合がある。付勢力を得るにあたって、弾性部材46に代えて油圧シリンダー等の流体圧による押圧機構を採用すると、動作ストローク及び付勢力を可変とすることができるために、管10の直径範囲が広い製品群を切断する場合に好都合であり、切断装置の適用範囲を広げることが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
10 管
20 回転鋸刃
21 回転駆動機
30 フレーム
31 水平部材
32 垂直部材
33 背板
34 連結棒
35 開口
36 閉塞板
37 開閉扉
40 鋸刃ユニット
41 第1可動体
42 第2可動体
43,44 直線ガイド
45 ロッド
46 弾性部材(鋸刃付勢機構)
47 湾曲ガイド(ガイド機構)
48 ガイド面
49 接触子
50 直進駆動機構
51 スクリュウロッド
52 ボールネジ
53 モータ
54 連結軸
60 クランプ機構
60A 前クランプ
60B 後クランプ
61A,61B クランプヘッド
62A,62B 支持部材
63A,63B 案内部材
64A スプリング
65 シリンダー
66 昇降ヘッド