(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】流体吐出装置用リング
(51)【国際特許分類】
B65D 83/14 20060101AFI20220105BHJP
B65D 83/38 20060101ALI20220105BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B65D83/14 200
B65D83/38
B05B9/04
(21)【出願番号】P 2018559862
(86)(22)【出願日】2017-05-11
(86)【国際出願番号】 FR2017051130
(87)【国際公開番号】W WO2017194887
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-04-15
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】デシャン オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】ピアッツオーニ エリック
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特許第4194752(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/14-83/76
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定キャップ(50)によって、吐出される流体を収容した容器に装着される流体吐出バルブ(20)のバルブ本体(21)周囲に配されるリング(10)であって、
前記リング(10)は、
前記バルブ本体(21)と協働する少なくとも1つの内側部分(100、110)と、前記容器の首部と前記固定キャップ(50)との間に延伸する首部ガスケットを形成する径方向フランジ(11)と、前記リング(10)の周縁部に、前記径方向フランジ(11)から径方向内側に少なくとも一部が延伸する少なくとも1つの軸方向穴(120)とを有する単一部分(15)と、
前記少なくとも1つの軸方向穴(120)を少なくとも部分的に充填する少なくとも1つの挿入物(16)とを備え、
前記単一部分(15)は、実質的に変形可能である第1材料からなり、
前記少なくとも1つの挿入物(16)は、前記第1材料よりも剛性の高い第2材料からなり、前記単一部分(15)上にオーバーモールドされる
ことを特徴とするリング(10)。
【請求項2】
前記固定キャップ(50)は圧着キャップである
請求項1に記載のリング。
【請求項15】
前記エアゾールバルブ(20)は、流体が前記容器から前記エアゾールバルブ(20)内へ流れ込む際に経由する少なくとも1つの開口(22)を有するバルブ本体(21)をさらに備え、
前記リングの前記第1径方向内側部分(100)は、前記エアゾールバルブ(20)が前記容器の下方に位置する倒立作動姿勢では、前記開口(22)の底端に位置する
請求項
14に記載の流体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体吐出バルブ用のリング及び当該リングを備える流体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール吐出バルブ、具体的には、吐出される流体を収容した容器に装着される定量バルブにリングを用いることは周知である。具体的には、そのようなリングは、倒立作動姿勢で1回分の流体を吐出するバルブに用いられる。倒立作動姿勢とは、バルブが容器の下方に配された姿勢である。そのようなリングは、一般的には2つの機能を果たす。第1に、バルブの倒立作動姿勢では、バルブの吸入口の直下にあるデッドボリュームを減少させて、容器に収容された流体の最大量を確実に吐出させる。第2に、首部ガスケットと流体との接触を減少させる。首部ガスケットは一般的には、容器の首部と、バルブを容器に固定するための固定フープ又はキャップとの間に配される。ガスケットと容器に収容された流体との接触を減少させることにより、ガスケットからの浸出物によって流体が不純となるリスクが減少し、また、流体、具体的には推進剤ガスとの接触によるガスケットの劣化が起こりにくくなる。
【0003】
一般的には、リングは、その内縁をバルブ本体に径方向に締め付け固定することによってバルブ本体に組み付けられる。こうした構成は、径方向への締め付けが強すぎる場合に、時間の経過とともにバルブ本体、具体的にはバルブ本体の内部が変形して、バルブが動作不良を起こすことがあるという欠点を有する。多くのバルブでは、バルブ本体とその内部を摺動するバルブ部材との間隙は比較的狭い。したがって、バルブ本体が径方向に変形する結果、バルブ部材が摩擦したり、動かなくなったりする。加えて、上記の2つの機能を効果的に果たすために、一般的にはリングの外側が容器の首部の一部と接触しているが、必ずしも気密状態での接触でなくてもよい。具体的には、固定キャップが圧着キャップである場合には、圧着によって容器の首部が径方向に変形するので、リング内縁に伝達される径方向への圧力が増加する。これによっても、バルブ本体にかかる負荷が増加して、バルブ本体が変形することがある。
【0004】
特許文献1が開示するリングは、変形可能壁を有する。この変形可能壁が、バルブ本体にかかる負荷を減少させて、首部ガスケットと流体との接触も減少させる。こうしたリングによって、上記の問題を部分的に解決することが可能となる。
【0005】
特許文献2が開示するリングは、首部ガスケットを形成する径方向フランジを有する単一部分として形成され、環状オレフィン共重合体(CОC)エラストマーを含む材料からなる。具体的には、こうしたリングは比較的可撓性の高い材料のみからなるため、製造及び組立がより難しくなるという欠点を有する。さらに、COCエラストマーは比較的高価な材料である。
【0006】
特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、及び特許文献10は、従来技術のその他の装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2007/074274号
【文献】国際公開第2012/136927号
【文献】欧州特許第1,065,156号明細書
【文献】米国特許第5,697,532号明細書
【文献】仏国特許発明第2,865,198号明細書
【文献】仏国特許発明第2,840,890号明細書
【文献】仏国特許発明第2,792,295号明細書
【文献】国際公開第2011/012804号
【文献】特開2004-202410号
【文献】独国特許発明第10,2005,002,444号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の欠点を有さない、具体的には特許文献2のリングを改良した流体吐出装置用のリングを提供することである。
【0009】
本発明のさらに具体的な目的は、特にバルブを容器に圧着するときに、バルブ本体にかかる径方向への過度の負荷を回避することによって、バルブ本体が過度に変形するリスクを回避する、エアゾール吐出装置用のリングを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、バルブ本体に対する径方向負荷を増加させることなく、製造公差からのばらつきを解消することのできるリングを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、容器に収容された流体の吐出可能量を最大にするリングを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、容器に収容された流体と推進剤ガスの相互作用をなるべく少なくするリングを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、製造及び組立を容易かつ安価に行うことができる、具体的には部材の数の少ない流体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、固定キャップによって、吐出される流体を収容した容器に装着される流体吐出バルブのバルブ本体周囲に配されるリングであって、前記リングは、前記バルブ本体と協働する少なくとも1つの内側部分と、前記容器の首部と前記固定キャップとの間に延伸する首部ガスケットを形成する径方向フランジと、前記リングの周縁部に、前記径方向フランジから径方向内側に少なくとも一部が延伸する少なくとも1つの軸方向穴とを有する単一部分と、前記少なくとも1つの軸方向穴を少なくとも部分的に充填する少なくとも1つの挿入物とを備え、前記単一部分は、実質的に変形可能である第1材料からなり、前記少なくとも1つの挿入物は、前記第1材料よりも剛性の高い第2材料からなり、前記単一部分上にオーバーモールドされるリングを提供する。
前記固定キャップ(50)は例えば圧着キャップである。
【0015】
望ましい構成としては、前記単一部分の前記内側部分は、それぞれ前記バルブ本体の別個の部分と協働する第1径方向内側部分及び第2内側部分である。
【0016】
望ましい構成としては、前記第1径方向内側部分は、変形可能リップ部を有する。
【0017】
望ましい構成としては、前記単一部分の前記軸方向穴は、単一である。
【0018】
望ましい構成としては、前記挿入物は単一であり、前記軸方向穴の全てを充填する。
【0019】
変形例においては、前記単一部分の前記軸方向穴は複数であり、複数の径方向リブによって離間している。
【0020】
望ましい構成としては、前記単一部分は、ガラス転移温度が-10℃~15℃の範囲で、結晶融点が50℃~120℃の範囲で、対重量結晶化度が5%~40%の範囲で、ノルボルネン成分量が2mol%~15mol%の範囲である共重合体エラストマーからなる。
【0021】
望ましい構成としては、前記単一部分は、環状オレフィン共重合体(CОC)エラストマーからなる。
【0022】
望ましい構成としては、前記第2材料は、ポリアミド、ポリプロピレン、及び/又はポリエチレンである。
【0023】
望ましい構成としては、前記少なくとも1つの挿入物には、前記単一部分とは異なる着色がされている。
【0024】
望ましい構成としては、前記少なくとも1つの軸方向穴は貫通穴であり、前記少なくとも1つの挿入物は、前記単一部分の軸方向の上側と下側に露出している。
【0025】
変形例においては、前記少なくとも1つの軸方向穴は有底穴であり、前記少なくとも1つの挿入物は、前記単一部分の軸方向の上側のみに露出している。
【0026】
本発明はまた、流体吐出装置であって、吐出される流体と推進剤ガス、具体的にはヒドロフルオロアルカン(HFA)系のガスとを収容した容器と、エアゾールバルブと、上記のようなリングとを備える流体吐出装置を提供する。
【0027】
望ましい構成としては、前記エアゾールバルブは、流体が前記容器から前記エアゾールバルブ内へ流れ込む際に経由する少なくとも1つの開口を有するバルブ本体をさらに備え、前記リングの前記第1径方向内側部分は、前記エアゾールバルブが前記容器の下方に位置する倒立作動姿勢では、前記開口の底端に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の特徴、利点、及びその他の事項は、非限定的な例として以下に示す詳細な説明及び添付図面を参照することにより、さらに明確となる。
【
図1】本発明の第1の望ましい実施形態にかかるリングを有するエアゾール吐出装置の直立保管姿勢での模式断面図である。
【
図2】本発明の別の望ましい実施形態にかかるリングを有するエアゾール吐出装置の直立保管姿勢での模式断面図である。
【
図3】
図1のリングを上方から見た模式斜視図である。
【
図4】
図3に類似した、
図1のリングを下方から見た模式斜視図である。
【
図5】
図3に類似した、別の実施形態にかかるリングを上方から見た模式斜視図である。
【
図6】
図5に類似した、別の実施形態にかかるリングを下方から見た模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の説明において、「軸方向」、「径方向」、「上」、「下」、「頂」、及び「底」という用語は、長手軸A、及び
図1、
図2に示すエアゾール装置の直立保管姿勢に対するものである。
【0030】
特に
図1を参照すると、エアゾール装置は、吐出される流体を収容した容器(不図示)を有する。具体的には、容器は特許文献2に示されるような、従来の缶状のものである。
【0031】
吐出される流体は、薬剤系のものであってもよい。また、ヒドロフルオロアルカン(HFA)系のガスなどの推進剤ガスを用いて、望ましくは定量バルブであるエアゾールバルブ20を経由して流体を吐出してもよい。
【0032】
エアゾールバルブは、バルブ本体21を有し、バルブ本体21内をバルブ部材30が摺動する。バルブ本体21は、容器の首部に、具体的には圧着性である固定キャップ50によって、封止のために首部ガスケットが挿入された状態で組み付けられる。
図1においては、バルブは直立保管姿勢である。直立保管姿勢とは、バルブが容器の上方に配された姿勢である。
【0033】
バルブ本体21は、開口22を1つ以上有する。この開口22を通じて、バルブが容器からの流体で、具体的には重力によって充填される。
図1においては、開口は、バルブ本体21の軸方向長さより短い範囲に延伸する側方長手細穴22として示されている。変形例においては、同じ役割のために、異なる形の開口、例えば穴が1つ以上設けられてもよい。
【0034】
図2に示すように、バルブ本体はまた、バルブを経由して容器を流体で充填するための充填開口23を1つ以上有してもよい。
【0035】
バルブ本体21の周囲に、リング10が組み付けられている。リング10を設けて、バルブの倒立作動姿勢において、バルブ本体21の開口22の底端の下方に位置するデッドボリュームをなるべく少なくすることによって、容器がなるべく空になることを特に確実にすることができる。
【0036】
リング10は、単一部分15を有する。単一部分15は径方向フランジ11を有し、径方向フランジ11は、容器の首部と固定キャップ50との間に挿入される首部ガスケットとなる。このように、本発明によって部材、具体的には首部ガスケットを省略することができるので、装置の製造及び組立を簡易化することができる。
【0037】
首部ガスケットとして機能する径方向フランジ11は、容器の首部と固定キャップ50との間に保持されているために、組立後にリング10がバルブ本体21に沿って摺動できなくなるという利点を有する。固定キャップ50の底面との封止を改善するために、径方向フランジ11の頂面上にビードを形成してもよい。
【0038】
リング10の単一部分15は、バルブ本体21と協働する少なくとも1つの第1径方向内側部分100を有する。第1径方向内側部分100は、望ましくはリング10の径方向に最も内側の部分である。望ましくは、バルブ本体の別の部分と協働する第2内側部分110がリング10の単一部分15に設けられる。このような構成によって、リング10がバルブ本体21にかける径方向負荷を、1つの接触領域にかけるのではなく2つの接触領域に分散させることができる。そのため、第1に、各接触領域に個別にかかる径方向負荷を減少させることができる。また第2に、リングをバルブ本体21に対して2つの別個の位置で締め付け固定することにより、バルブ本体21上でのリング10の摺動を実質的になくすことができる。
【0039】
望ましくは、第1径方向内側部分100は、バルブ本体21と実質的に気密状態で接触する変形可能リップ部を有する。このため、リング10の第1径方向内側部分100は、バルブ本体に高い径方向負荷をかけることなく、実質的に気密状態でバルブ本体21と協働することができる。
【0040】
望ましくは、バルブが容器の下方に位置する倒立作動姿勢では、第1径方向内側部分100は、少なくとも1つの開口22の底端に位置する。
【0041】
リング10は、容器の内側に向かって延伸する軸方向突起12を1つ以上、望ましくは3つ有してもよい。軸方向突起12は、リング10の周縁部に分布し、溝13によって離間していてもよい。
【0042】
図4に示す実施形態では、溝13の幅は軸方向突起12の幅よりも狭い。しかしながら、溝13の幅は、軸方向突起12の幅以上であってもよい。
【0043】
リング10の単一部分15は、容器に収容された流体と接触した状態で、首部ガスケットとして封止を行う。したがって、単一部分15に封止機能を持たせるような性質を有し、同時に、容器に収容された流体及び/又は推進剤ガスと有害な相互作用を起こさない材料を用いて単一部分15を形成する必要がある。具体的には、変形可能性又は可撓性が比較的高い材料が推奨される。
【0044】
リングの単一部分15の形成に特に適した材料は、COCエラストマーである。COCエラストマーが唯一の基材であることが望ましいが、1つ以上の他の材料、具体的には以下に列挙された材料を含むCOCエラストマー混合物を調製することも考えられる。
【0045】
COCとは、ノルボルネン環とポリエチレンによって合成された共重合体である。ノルボルネンは、エチレンとシクロペンタジエンを合成することで得られる。
【0046】
従来のCOCは、実質的に剛性の材料である。
【0047】
COCエラストマーは、ポリエチレン成分量が増加したCOCであり、この構成によって、従来のCOCにエラストマーの性質が付与される。
【0048】
したがって、COCエラストマーは、従来のCOCとエラストマー材料との混合物ではなく、エラストマーに類似した特定の性質を有する材料である。
【0049】
COCエラストマーは、ガラス転移温度が-10℃~15℃の範囲、結晶融点が50℃~120℃の範囲、対重量結晶化度(crystallinity by weight)が5%~40%の範囲、そしてノルボルネン成分量が2mol%~15mol%の範囲の材料である。
【0050】
COCエラストマーは、非常に多くの利点を有する。
【0051】
まず、COCエラストマーは、不活性度が非常に高いという化学的性質を有する。なぜなら、他のエラストマー材料とは対照的に、他の物質と結合することのできる二重結合を有さないからである。
【0052】
また、COCエラストマーは、浸出物量が非常に少ない。即ち、COCエラストマー製のガスケットが特に反応性の激しいHFA系推進剤ガスと接触しているときであっても、ガスケットから浸出する微粒子はほとんどないことが周知である。特に、エラストマーや熱可塑性エラストマーとは異なり、COCエラストマーからは脂肪酸が浸出することがない。COCエラストマーからの浸出物は、主に抗酸化物である。
【0053】
以下のグラフは、熱可塑性エラストマー(TPE)よりもCOCエラストマー(COC-E)の方が、浸出物量がはるかに少ないことを示す。なお、本比較例においては、TPEはブチルゴム50%とポリエチレン50%の混合物である。
【0054】
【表1】
エラストマー材料は、浸出物量がはるかに多い。例えば、ニトリルゴムの浸出物量は1グラムあたり約14ミリグラム(mg/g)で、エチレンプロピレンジエン単量体(EPDM)の浸出物量は1.4mg/g~5.3mg/gの範囲である。
【0055】
COCエラストマーはまた、水蒸気遮断性が非常に高く、その力学的性質も、特に硬度とヤング係数に関して、バルブガスケットの形成に完全に適している。さらに、COCエラストマーは、摩滅への耐性も有する。そして、COCエラストマーはまた、薬剤系の活性物質と相性が良い。なぜなら、COCエラストマーは、浸出するイオンや微量金属を有さず、表面が疎水性であるため吸湿が少なく、さらに設計が容易である、即ち、COCエラストマーからは、どのような形状の部材を形成することも可能だからである。
【0056】
非限定的な例を示すと、TOPAS ADVANCED POLYMERS社製のCOC-E 140が本発明に適した材料である。
【0057】
COCエラストマーとその他の材料、例えば熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)を混合することも考えられる。変形例においては、例えばポリプロピレン(PP)とスチレン-ブロック共重合体(SBC)の混合物、ポリ(エチレンオクテン)(PEO)、ポリ(エチレンブテン)(PEB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、PPとエチレンプロピレンジエン単量体(EPDM)の混合物などのオレフィン系熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPE)材料を用いることもできる。その他に使用可能な材料は、例えば、ポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、PP、ポリエチレン(PE)、及びこれらの材料全ての混合物である。また、例えば、熱可塑性混合物(ニトリルブタジエンゴム(NBR)/PP、ブチル/PP、ハロブチル/PP、水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)/PE)、動的加硫により合成された熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー(ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリエステルアミド(PEA)、ポリエーテルエステルアミド(PEEA)、ポリカーボネート-エステルアミド(PCEA))、熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー、スチレン-ブロック共重合体(スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン(SIBS))、及びこれらの材料の混合物も使用可能である。
【0058】
成型後にヒケが生じるのを防ぐために、リング10の単一部分15は軸方向穴120を1つ以上有する。軸方向穴120は、リングの周縁部に、径方向フランジ11から径方向内側に延伸する。望ましくは、
図3に示すように、単一の軸方向穴120が設けられる。変形例においては、複数の径方向リブによって離間した複数の軸方向穴が設けられる。
【0059】
図1~
図4に示すように、軸方向穴120は、単一部分15の片側のみ、具体的には単一部分15の軸方向の上側のみが開放された有底軸方向穴であってもよい。
【0060】
別の実施形態においては、
図5及び
図6に示すように、軸方向穴は単一部分15の軸方向の上側と下側の両方が開放された貫通穴であってもよい。
【0061】
単一部分15の形成に用いられる材料が可撓性であるために、軸方向穴120が存在すると問題が起きることがある。
【0062】
本発明においては、この少なくとも1つの軸方向穴120は、少なくとも部分的に、単一部分15の材料よりも剛性の高い材料からなる少なくとも1つの挿入物16によって充填される。
【0063】
図面の実施形態のいずれにおいても、単一の挿入物16は、単一の軸方向穴120の全てを充填する。
【0064】
図1及び
図2に示すように、軸方向穴120は、特に軸方向突起12の位置で様々な軸方向深さを有する。
【0065】
本発明においては、挿入物16は、単一部分15上にオーバーモールドされる。望ましくは、挿入物は、ポリプロピレン、ポリアミド、及び/又はポリエチレンからなる。
【0066】
図1~
図4に示す実施形態においては、挿入物16は単一部分15の上側にしか露出していないので、挿入物16は容器に収容された流体と直接接触していない。したがって、挿入物16は、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンなどの、安価でオーバーモールドが容易な材料で形成するのが望ましい。本実施形態においては、リングの軸方向突起12及び溝13は単一部分15で形成される。
【0067】
図5及び
図6の実施形態においては、挿入物16は単一部分15を貫通して、単一部分の両側に露出するので、容器に収容された流体と接触している。したがって、挿入物16は、ポリアミドなどの吸湿性を有する材料から形成されるのが望ましい。本実施形態においては、リングの軸方向突起12及び溝13は、挿入物16で形成される。
【0068】
図2に示す第2実施形態においては、第1径方向内側部分100は、バルブ本体21の充填開口23と協働する変形可能リップ部を有する。このリップ部によって、充填の際に開く逆止弁を形成することが可能となる。
【0069】
本発明は、非常に多くの利点を有する。
【0070】
2つの異なる材料を組み合わせることによって、それぞれの材料に特定の機能を付与することが可能となる。
【0071】
COCエラストマーなどの、実質的に可撓性の、即ち「柔らかい」材料を用いることで、首部ガスケット接合部を有するリングを形成することが可能となる。この構成によって、部品の数を1つ減らし、組立ステップの数を1つ減らすことが可能となる。
【0072】
COCエラストマーを用いることによって、特に輸送中に、及び/又はバルブを容器に圧着させる前に、リングがバルブ本体上により確実に保持される。
【0073】
実質的に可撓性の材料を用いることで、逆止弁機能を提供するリップ部によって、充填を補助する変形可能部分を形成することが可能となる。
【0074】
COCエラストマーよりも剛性の高い充填材料を用いることで、より剛性の高いリングを形成することが可能となる。特に、この構成によって、装置の組立中の取り扱いがより容易になり、気密性がより高くなる。
【0075】
ポリアミド(又は近い性質を持つ他の材料)からなる挿入物によって、吸湿性が得られる。
【0076】
充填材料を着色することで、バルブがリングの色に対して視認しやすくなる。
【0077】
さらに、充填された穴を有するリングによって、流体がリング内にたまるのが防がれて、望ましくは、失われる流体の量も減少する。
【0078】
本発明はまた、リングの製造、とりわけ成型、特にサイクルタイムの節約に関して有利である。
【0079】
本発明ではまた、COCエラストマーよりも安価な充填材料を用いるので、材料コストを節約することができる。
【0080】
さらに、本発明のリングは変形しにくいので、サイズや形状がより良いものとなる。
【0081】
以上、本発明を、図面に示した実施形態を参照しながら説明したが、当然のことながら、本発明はこれらに限定されない。当業者によるあらゆる有用な変形も適用可能である。特に、バルブはどのような構造のものであってもよい。加えて、バルブ本体及び開口の形状は、ここに示された形状と異なっていてもよい。同様に、キャップ又は固定フープも、留め具やねじなどの異なる方法で固定されてもよい。一般的には、添付の請求項によって規定された本発明の範囲を超えない限り、あらゆる変形が可能である。