IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スティロン ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6993358シランが介在するゴムの貯蔵安定性の向上
<>
  • 特許-シランが介在するゴムの貯蔵安定性の向上 図1
  • 特許-シランが介在するゴムの貯蔵安定性の向上 図2
  • 特許-シランが介在するゴムの貯蔵安定性の向上 図3
  • 特許-シランが介在するゴムの貯蔵安定性の向上 図4
  • 特許-シランが介在するゴムの貯蔵安定性の向上 図5
  • 特許-シランが介在するゴムの貯蔵安定性の向上 図6
  • 特許-シランが介在するゴムの貯蔵安定性の向上 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】シランが介在するゴムの貯蔵安定性の向上
(51)【国際特許分類】
   C08F 36/04 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
C08F36/04
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018565722
(86)(22)【出願日】2017-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2017064775
(87)【国際公開番号】W WO2017216344
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】16175039.3
(32)【優先日】2016-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510288530
【氏名又は名称】トリンゼオ ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル レッスル
(72)【発明者】
【氏名】スベン ティーレ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルガート エーベルト
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540730(JP,A)
【文献】特表2014-507405(JP,A)
【文献】特開平01-217048(JP,A)
【文献】特開2014-001308(JP,A)
【文献】特開2008-321789(JP,A)
【文献】特表2017-538787(JP,A)
【文献】特表2018-512385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 36/00- 36/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)開始剤化合物の存在下で、少なくとも1種の共役ジエン及び以下に定義される式1-1~1-5の化合物から選択される化合物、ならびに任意選択で1種もしくは複数種の芳香族ビニルモノマーを重合すること、
(a’)以下に定義される式1-1~1-5の化合物から選択される化合物を有機アルカリ金属化合物と反応させることによって得ることができる開始剤化合物の存在下で、少なくとも1種の共役ジエン及び任意選択で1種もしくは複数種の芳香族ビニルモノマーを重合すること、または
(a’’)少なくとも1種の共役ジエン及び任意選択で1種もしくは複数種の芳香族ビニルモノマーをアニオン重合することによって得ることができるリビングポリマーを、以下に定義される式1-1~1-5の化合物から選択される化合物と反応させること
を含む、分枝状弾性ポリマーの製造方法であって、
(a)、(a’)、及び(a’’)が、以下に定義される式2の安定剤化合物の存在下で実施されることを特徴とする前記方法:
【化1】
(式中、
R’は独立にC ~C 12 アルキル、C ~C 12 アルケニル、C ~C 18 アリール、及びC ~C 18 アルキルアリールから選択され、但し2つのR’基が結合して環を形成していてもよく、前記環は、Siに結合した窒素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、>N(C ~C アルキル、C ~C 18 アリール、C ~C 18 アルキルアリール)基、及びイオウ原子の1種または複数種を含んでいてもよく、
R’’はC ~C ヒドロカルビルから選択され、
R’’’は独立にC ~C 18 ヒドロカルビルから選択され、
、R 、及びR は独立に、水素、メチル、エチル、及びビニルから選択され、
xは1及び2から選択される整数、yは0、1、及び2から選択される整数、zは0、1、及び2から選択される整数であり、且つx+y+z=3であり、
mは、R 、R 、及びR のいずれもビニルでない場合にはm=0との条件で、0及び1から選択される);
【化2】
(式中、
11 、R 12 、R 13 、R 14 、及びR 15 のそれぞれは独立に、基B、C ~C 18 アルキル、C ~C 18 アリール、任意選択でC ~C アルキルにより置換されたC ~C 12 ヘテロアリール、C ~C 18 アラルキル、ならびに-Si(R )(R )(R )(R 、R 、及びR のそれぞれは独立に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、フェニル、及びベンジルから選択される)から選択され、R 11 、R 12 、R 13 、R 14 、及びR 15 の少なくとも2つは基Bで表され、
及びR 10 のそれぞれは独立に、エタンジイル、プロパンジイル、ブタンジイル、フェニレン及び-(CH a’ -(フェニレン)-(CH b’ -(a’及びb’のそれぞれは独立に0及び1から選択される整数である)から選択され、
cは0、1、2、及び3から選択される整数である);
【化3】
(式中、
前記基-N<>N-は、5~18員ヘテロ環式基であって、飽和または不飽和であってよく、前記環の任意の炭素原子上でC ~C アルキル基により置換されていてもよく、式1-2中に明示される2つのN原子以外のヘテロ原子基が、-N=、>NR 16 (R 16 は基B、C ~C アルキル、フェニル、及びベンジルから選択される)、-O-、-S-、ならびに>SiR 17 18 (R 17 及びR 18 のそれぞれは独立に、C ~C アルキル、フェニル、及びベンジルから選択される)から選択される前記ヘテロ環式基である);
【化4】
(式中、
20 、R 21 、及びR 22 のそれぞれは独立に、単結合及び2価のC ~C 10 アルカンジイル基から選択され、
dは0、1、及び2から選択される整数であり、d’は0及び1から選択される整数であり、d’が0の場合にはdは0であり、
それぞれの基-N<>X-は独立に、5~10員ヘテロ環式基であって、飽和または不飽和であってよく、前記環の任意の炭素原子上でC ~C アルキル基により置換されていてもよく、それぞれのXは独立に、-N-、-C=、及び-CH-から選択され、式1-3中に明示される基N及びX以外のヘテロ原子基が、-N=、>NR 16 (R 16 はC ~C アルキル、基B、フェニル、及びベンジルから選択される)、-O-、-S-、ならびに>SiR 17 18 (R 17 及びR 18 のそれぞれは独立に、C ~C アルキル、フェニル、及びベンジルから選択される)から選択される前記ヘテロ環式基から選択される);
【化5】
(式中、
Dは、5~10員炭素環式またはヘテロ環式基であって、飽和もしくは不飽和であってよく、前記環の任意の炭素原子上でC ~C アルキル基により置換されていてもよく、ヘテロ原子基が、-N=、>NR 16 (R 16 は、C ~C アルキル、基B、フェニル、及びベンジルから選択される)、-O-、-S-、ならびに>SiR 17 18 (R 17 及びR 18 のそれぞれは独立に、C ~C アルキル及びフェニルから選択される)から選択される前記ヘテロ環式基であり、
それぞれの基-N<>X-は独立に、5~10員ヘテロ環式基であって、飽和または不飽和であってよく、前記環の任意の炭素原子上でC ~C アルキル基により置換されていてもよく、それぞれのXが独立に、-N-、-C=、及び-CH-から選択される前記ヘテロ環式基から選択され、
23 は単結合及び2価のC ~C 10 アルカンジイル基から選択され、
eは2、3、及び4から選択される整数である);
【化6】
(式中、
Eは6~10員脂環式または芳香族基であり、
それぞれのR 24 は独立に、単結合及びC ~C アルカンジイルから選択され、
それぞれのRは独立に、B、C ~C アルキル、及びベンジルから選択され、
fは2及び3から選択される整数である);
ここにおいて、式1-1~1-5中のそれぞれのBは独立に-Si(R )(R )(R )から選択され、但しR 、R 、及びR はそれぞれ独立に、R 、R 、及びR の少なくとも1つがビニル及びブタジエニルから選択されるとの条件で、ビニル、ブタジエニル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、フェニル、及びベンジルから選択される。
【請求項2】
前記式1-1~1-5の化合物から選択される化合物が、
【化7】
(式中、それぞれのRは独立に、B、C~Cアルキル、及びベンジルから選択される)、
【化8】
(式中、RはC~Cアルキル基である)、及び
【化9】
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式2中のR’’’が独立に、C~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アリール、及びC~C18アルキルアリールから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式2中のR’が独立に、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、及びベンジルから選択されるか、または2つのR’が結合して、Siに結合した窒素原子と共に、5~12員環を形成する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記5~12員環が、4-メチルピペラジニル基、4-エチルピペラジニル基、4-プロピルピペラジニル基、4-ブチルピペラジニル基、及び4-ベンジルピペラジニル基から独立に選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式2中のR’’がC~Cアルキル及びフェニルから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
R’’がメチルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式2中のR、R、及びRが同一であり、水素である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
式2において、
(i)x、y、及びzがそれぞれ1であり、且つm=0である、
(ii)x=2、y=0、z=1、且つm=0である、または
(iii)x=1、y=0、z=2、且つm=1であり、R、R、及びRの少なくとも1つがビニルである、
請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)における前記開始剤化合物またはステップ(a’)における前記有機アルカリ金属化合物が、メチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、イソプロピルリチウム、フェニルリチウム、シクロヘキシルリチウム、2-ブチルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、t-ブチルジメチルシリルオキシプロピルリチウム、ジアルキルアミノプロピルリチウム、N-モルホリノプロピルリチウム、ビフェニルナトリウム、ナフタレンナトリウム、ナフタレンカリウム、1,3-ビス(1-(フェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-エチルフェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-メチル-フェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-プロピルフェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-(tert-ブチル)フェニル)1-リチオヘキシル)-ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)1-リチオヘキシル)-ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-エトキシ-フェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-(メトキシ)フェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、(((ジメチルアミノ)ジメチルシリル)メチル)リチウム、(((ジエチルアミノ)ジメチルシリル)メチル)リチウム、(((ジブチルアミノ)ジメチルシリル)メチル)リチウム、(((ジヘキシルアミノ)ジメチルシリル)メチル)リチウム、(((ジオクチルアミノ)ジメチルシリル)メチル)リチウム、(((ジベンジルアミノ)ジメチルシリル)メチル)リチウム、((ジメチル(ピペリジン-1-イル)シリル)メチル)リチウム、((ジメチル(モルホリノ)シリル)メチル)リチウム、((ジメチル(4-メチルピペリジン-1-イル)シリル)メチル)リチウム、((ジメチル(4-エチルピペリジン-1-イル)シリル)メチル)リチウム、及び((ジメチル(4-ベンジルピペリジン-1-イル)シリル)メチル)リチウムから選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記式2の安定剤が、開始剤またはリビングポリマー鎖末端1当量当たり0.01~100当量の量で用いられる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる分枝状弾性ポリマー。
【請求項13】
請求項12に記載の分枝状弾性ポリマーと、
(i)前記ポリマーの製造に用いられる重合プロセスに添加されるまたは前記プロセスの結果として形成される成分、
(ii)前記重合プロセスから溶媒を除去した後に残留する成分、及び
(iii)前記ポリマー製造プロセスの完結後に前記ポリマーに添加される成分
から選択される1種または複数種の更なる成分と
を含み、任意選択で1種または複数種の充填剤を含む未加硫ポリマー組成物。
【請求項14】
1種または複数種の伸展油を含む、請求項13に記載の未加硫ポリマー組成物。
【請求項15】
1種または複数種の加硫剤を含む、請求項13または14に記載の未加硫ポリマー組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の未加硫ポリマー組成物を加硫することによって得られる加硫ポリマー組成物。
【請求項17】
請求項15に記載の未加硫ポリマー組成物を加硫すること含む、加硫ポリマー組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項16に記載の加硫ポリマー組成物を含む少なくとも1つの構成要素を備える物品であって、タイヤ、タイヤトレッド、タイヤサイドウォール、タイヤカーカス、ベルト、ガスケット、シール、ホース、振動ダンパ、履物の構成要素、ゴルフボール、及びホースから選択される前記物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の分枝形成剤及び特定の安定化化合物の存在下での共役ジエンの重合による、分枝状弾性ポリマーの製造方法を対象とする。得られる弾性ポリマーは、タイヤなどのゴム製物品に好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
高騰する原油価格及び自動車による二酸化炭素の排出の低減を求める国内法令によって、タイヤ及びゴムの製造者は「燃費がよい」、延いては省燃料のタイヤを製造することを強いられている。燃費がよいタイヤを得るための1つの手法は、ヒステリシス損失の少ないタイヤ配合物を製造することにある。架橋弾性ポリマー組成物のヒステリシス損失は60℃における該組成物の損失正接(tan δ)値と相関する(ISO 4664-1:2005;Rubber, Vulcanized or thermoplastic;Determination of dynamic properties - part 1: General guidanceを参照のこと)。一般に、ヒステリシス損失がより低いものとして、60℃におけるtan δ値が比較的に低い加硫弾性ポリマー組成物が好ましい。これは、最終的なタイヤ製品において、転がり抵抗がより低いこと及び燃料の経済性がより良好なことにつながる。対照的に、0℃におけるtan δ値がより低いことは、当該タイヤ製品のウェットグリップが悪化することに対応する。従って、ウェットグリップ特性の悪化と引き換えであれば、転がり抵抗がより低いタイヤを製造することはできる。例えば、ランダム溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(ランダムSSBR)において、全ポリブタジエン単位の濃度に対してポリスチレン単位の濃度が低下すると、当該SSBRのガラス転移温度が低下し、結果として60℃におけるtan δと0℃におけるtan δとが共に低下し、これは一般に、当該タイヤの転がり抵抗の改善及びウェットグリップ性能の悪化に対応する。したがって、ゴム加硫物の性能を正しく評価するには、60℃におけるtan δと0℃におけるtan δの両方をタイヤの発熱と共に監視する必要がある。
【0003】
WO2012/091753はシランで官能化したポリマー及びそれらから製造したゴム加硫物に関する。その著者らは、アニオン重合の開始に用いるための特定のアルケニルアミノシランの使用を記述している。
【0004】
US8,299,167B2は、アルカリ金属触媒の存在下で共役ジエンモノマーとビニルアミノシランとを重合することによって得られる共役ジエンポリマーに関する。
【0005】
WO2011/028523は、ビニルシラン、アリルシラン、またはアリルビニルシランの存在下での、ランタニド系触媒系による共役ジエンモノマーの重合を含むポリジエンの製造方法に関する。
【0006】
WO2015/055252号は、任意選択で芳香族ビニルモノマーを伴う共役ジエンモノマーの重合における修飾モノマーとして有用であり、そのようにして、ポリマー、特にタイヤの製造に用いることができる弾性ポリマーを生成するビニルシラン化合物を記述する。
【0007】
上記ポリマーの主鎖内の加水分解開裂性の結合によって、実際に開裂した場合には、当該ポリマーの分子量の低下によるポリマー粘度の低下が生じる場合がある。カップリングした(分枝状の)ポリマーの場合には、カップリング率(分枝状ポリマー鎖対非分枝状ポリマー鎖の比率)及びムーニー粘度の低下が、時間及び温度の関数として観測される場合がある。かかる不安定な貯蔵挙動を示すポリマーは商業的観点から劣位にある。本発明の目的は、経時的に一定であるかまたは変動がより少ないポリマー粘度に反映され、且つ温度依存性が小さい向上した貯蔵安定性を示す分枝状弾性ポリマーを提供することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、特に、上記ポリマーの主鎖内の加水分解開裂性の結合が、ポリマー-Si(R)-O-ポリマー、ポリマー-Si(R)-N(R)-ポリマー、及びポリマー-Si(R)-S-ポリマー結合を含むとの理解に基づいている。水、アルコールなどの求核剤の存在下において、上記結合は以下のように開裂する場合がある。
【化1】
【0009】
かかる加水分解による開裂を防止するために、当該ポリマー配合物に水捕捉剤が添加される場合がある。市販品の一例として、カルボジイミド系水捕捉剤であるRheinchemie製のStabaxol(登録商標)がある。これらの外部から添加された水捕捉剤は、表面上に存在する水分子を消費することによって加水分解による開裂の反応速度を低下させることができる。しかしながら、これらの化合物は求核剤によって消費され失活する。完全に消費された後では、これらの化合物は不活性であり、もはや上記ポリマーの加水分解による開裂を防止することはできない。本発明によれば、上記の目的は、1,3-ブタジエン(「ブタジエン」)及びイソプレンなどの1種または複数種の共役ジエン、ならびに任意選択でスチレンなどの1種または複数種の芳香族ビニル化合物の重合により弾性ポリマーを製造する際に、分枝形成(カップリング)剤としての特定の複数のビニルまたはブタジエニルを有するアミノシラン化合物と、安定化化合物としての特定のビニルシラン化合物とを併用することによって解決することができることが見出された。
【0010】
第1の態様において、本発明は、
(a)開始剤化合物の存在下で、少なくとも1種の共役ジエン及び以下に定義される式1の化合物、ならびに任意選択で1種もしくは複数種の芳香族ビニルモノマーを重合すること、
(a’)以下に定義される式1の化合物を有機アルカリ金属化合物と反応させることによって得ることができる開始剤化合物の存在下で、少なくとも1種の共役ジエン及び任意選択で1種もしくは複数種の芳香族ビニルモノマーを重合すること、または
(a’’)少なくとも1種の共役ジエン及び任意選択で1種もしくは複数種の芳香族ビニルモノマーをアニオン重合することによって得ることができるリビングポリマーを、以下に定義される式1の化合物と反応させること
を含む、分枝状弾性ポリマーの製造方法であって、
(a)、(a’)、及び(a’’)が、以下に定義される式2の安定剤化合物の存在下で実施されることを特徴とする上記方法を提供する:
(A)-B (式1)
(それぞれのBは独立に-Si(R)(R)(R)から選択され、但しR、R、及びRはそれぞれ独立に、R、R、及びRの少なくとも1つがビニル及びブタジエニルから選択されるとの条件で、ビニル、ブタジエニル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、フェニル、及びベンジルから選択され、それぞれの基Bは基Aのアミノ基の置換基であり、
基Aの上記アミノ基の少なくとも2つは、それぞれ少なくとも1つの基Bで置換されており、
nは2以上の整数、好ましくは2~6から選択される整数であり、
基A中の全てのアミノ基は第三級アミノ基である)
【化2】
(式中、
R’は独立にC~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C18アリール、及びC~C18アルキルアリールから選択され、但し2つのR’基が結合して環を形成していてもよく、上記環は、Siに結合した窒素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、>N(C~Cアルキル、C~C18アリール、C~C18アルキルアリール)基、及びイオウ原子の1種または複数種を含んでいてもよく、
R’’はC~Cヒドロカルビルから選択され、
R’’’は独立にC~C18ヒドロカルビルから選択され、
、R、及びRは独立に、水素、メチル、エチル、及びビニルから選択され、
xは1及び2から選択される整数、yは0、1、及び2から選択される整数、zは0、1、及び2から選択される整数であり、且つx+y+z=3であり、
mは、R、R、及びRのいずれもビニルでない場合にはm=0との条件で、0及び1から選択される)。
【0011】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に記載の方法によって得ることができる分枝状弾性ポリマーを提供する。
【0012】
第3の態様において、本発明は、
本発明の第2の態様に記載の分枝状弾性ポリマーと、
(i)上記ポリマーの製造に用いられる重合プロセスに添加されるまたは上記プロセスの結果として形成される成分、
(ii)上記重合プロセスから溶媒を除去した後に残留する成分、及び
(iii)上記ポリマー製造プロセスの完結後に上記ポリマーに添加される、したがって、機械的混合機(但しこれに限定されない)を利用することによって「溶媒を含まない」ポリマーに添加された成分を含む成分
から選択される1種または複数種の更なる成分と
を含む、未加硫(未硬化)ポリマー組成物を提供する。
【0013】
第4の態様において、本発明は、1種または複数種の加硫(硬化)剤を含む、本発明の第3の態様に記載の未硬化ポリマー組成物を加硫(硬化)することによって得られる、加硫(硬化)ポリマー組成物を提供する。
【0014】
第5の態様において、本発明は、1種または複数種の加硫剤を含む、本発明の第3の態様に記載の未加硫ポリマー組成物を加硫すること含む、加硫ポリマー組成物の製造方法を提供する。
【0015】
第6の態様において、本発明は、本発明の第4の態様に記載の加硫ポリマー組成物から形成された少なくとも1つの構成要素を備える物品を提供する。
【0016】
驚くべきことに、重合中に、ビニル、ブタジエニル、またはイソプレニルアミノシラン、すなわち式2の化合物を添加することによって、加水分解開裂性の結合を有する分枝状ポリマー、すなわち式1の化合物によって分枝が形成されたポリマーのポリマー粘度を安定化することができることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】比較例Ex1に記載の、末端修飾した、分枝状の、未安定化ポリマーの、ムーニー単位(MU)で表したムーニー粘度及びカップリング率(CR)の25℃における経時的な進展を示す図である。
図2】比較例Ex2に記載の、末端修飾した、分枝状の、未安定化ポリマーの、MUで表したムーニー粘度及びカップリング率(CR)の25℃における経時的な進展を示す図である。
図3】比較例Ex3に記載の、末端修飾した、分枝状の、未安定化ポリマーの、MUで表したムーニー粘度及びカップリング率(CR)の25℃における経時的な進展を示す図である。
図4】実施例Ex4に記載の、末端修飾した、分枝状の、安定化ポリマーの、MUで表したムーニー粘度及びカップリング率(CR)の25℃における経時的な進展を示す図である。
図5】以下の5種のポリマーの、MUで表したムーニー粘度の70℃における経時的な進展(貯蔵安定性の加速試験)を示す図である。未安定化ポリマー:D(18MUの低下)、E(11.5MUの低下)。安定化ポリマー:A(12.5MUの低下)、B(27.2MUの低下)、C(1.3MUの低下)。ポリマーBの安定剤(S2)は安定化効果がない。ポリマーAの安定剤S3の安定化効果は中程度であり(ポリマーBに対して14.7MUの貯蔵安定性の改善)、これはより高添加量によって補える場合がある。安定剤S7は同一の添加量において非常に有効である。
図6】以下の4種のポリマーの、MUで表したムーニー粘度の70℃における経時的な進展(貯蔵安定性の加速試験)を示す図である。未安定化ポリマー:I(19.5MUの低下)。安定化ポリマー:F(1.7MUの低下)、G(6.0MUの上昇、安定剤S6の量を多少低減することが可能)、H(7.2MUの上昇、安定剤S6の量を多少低減することが可能)。
図7】以下の3種のポリマーの、MUで表したムーニー粘度の70℃における経時的な進展(貯蔵安定性の加速試験)を示す図である。安定化ポリマー:J(14.4MUの低下、安定剤S16、2当量/開始剤添加)、K(29.7MUの上昇、安定剤S16、5当量/開始剤添加)、L(2.8MUの上昇、安定剤S16、2当量/開始剤添加、ポリマー例Jよりも低Mp且つ低CR)。未末端修飾ポリマーJ及びKの貯蔵挙動の比較によって、これらのポリマーに対する最適なS16の添加量は約3当量/開始剤の当量となる。ポリマーLは、分子量、カップリング率、及び微細構造が異なる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
式1の化合物
式1の化合物は、概括的には、複数のビニルまたはブタジエニルを有するアミノシランであり、すなわち、該化合物は少なくとも1つのエチレン性不飽和シリル基Bで置換された少なくとも2つのアミノ基を有する(式1に対して定義)。「基Bがアミノ基の置換基である」または「基Bで置換されたアミノ基」との表現は、本明細書では、基Bが当該アミノ基の窒素原子に結合していること、すなわち、>N-Si(R)(R)(R)を記述するために用いられる。基Aのアミノ基は、0、1、または2つの基Bで置換されていてもよい。基Aの全てのアミノ基は第三級アミノ基、すなわち水素原子をもたないアミノ基である。
【0019】
上記有機基Aは、好ましくは活性水素をもたない基である。「活性水素」との表現は、本発明の文脈では、ブタジエンまたはイソプレンなどの共役ジエンのアニオン重合において不活性ではない、すなわち反応する水素原子を指すために用いられる。
【0020】
上記有機基Aはまた、好ましくは求電子基をもたない基でもある。「求電子基」との表現は、本発明の文脈では、モデル開始剤としてのn-ブチルリチウム及び/またはブタジエンもしくはイソプレンなどの共役ジエンのアニオン重合におけるリビング鎖と反応することとなる基を指すために用いられる。求電子基としては、アルキン、(カルボ)カチオン、ハロゲン原子、Si-O、Si-S、Si-ハロゲン基、金属-C基、ニトリル、(チオ)カルボン酸塩、(チオ)カルボン酸エステル、(チオ)酸無水物、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、(チオ)シアナート、(チオ)イソシアナート、アルコール、チオール、(チオ)硫酸塩、スルホン酸塩、スルファミン酸塩、スルホン、スルホキシド、イミン、チオケタール、チオアセタール、オキシム、カルバゾン、カルボジイミド、尿素,ウレタン,ジアゾニウム塩、カルバマート、アミド、ニトロン、ニトロ基、ニトロソアミン、キサントゲン酸塩、ホスファン、リン酸塩、ホスフィン、ホスホン酸塩、ボロン酸、ボロン酸エステルなどが挙げられる。
【0021】
上記有機基Aは、活性水素も求電子基ももたない基であることがより好ましい。
【0022】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態において、式1の化合物は以下の式1-1~1-5の化合物から選択され、これらの式において、基B及び指数nに関して、式1のものと同一の制限及び条件が適用される、すなわち、当該化合物は少なくとも2つの基Bを有し、同時に基Aに関する式1の制限及び条件が本質的に満たされる。
【0023】
実施形態1
【化3】
(式中、
11、R12、R13、R14、及びR15のそれぞれは独立に、基B、C~C18アルキル、C~C18アリール、任意選択でC~Cアルキルにより置換されたC~C12ヘテロアリール、C~C18アラルキル、(R-O-(R(R及びRのそれぞれは独立にC~Cアルキル及びC~C18アリールから選択され、a及びbはそれぞれ独立に0~4から選択される整数である)、ならびに-Si(R)(R)(R)(R、R、及びRのそれぞれは独立に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、フェニル、及びベンジルから選択される)から選択され、
及びR10のそれぞれは独立に、2価のエチル、プロピル、ブチル、フェニル、及び-(CHa’-C-(CHb’(a’及びb’のそれぞれは独立に0及び1から選択される整数である)から選択され、
cは0、1、2、及び3から選択される整数である)。
【0024】
式1-1において、R11、R12、R13、R14、及びR15のそれぞれは独立に基B及びメチルから選択され、R及びR10のそれぞれは2価のエチルであり、cは0、1、2、及び3から選択される整数であることが好ましい。
【0025】
式1-1の詳細な実施形態としては、
【化4】
が挙げられ、式中、それぞれのRは独立に、B、C~Cアルキル、及びベンジルから選択される。
【0026】
実施形態2
【化5】
(式中、
上記基-N<>N-は、5~18員ヘテロ環式基であって、飽和または不飽和であってよく、上記環の任意の炭素原子上でC~Cアルキル基により置換されていてもよく、式1-2中に明示される2つのN原子以外のヘテロ原子基が、-N=、>NR16(R16は基B、C~Cアルキル、フェニル、及びベンジルから選択される)、-O-、-S-、ならびに>SiR1718(R17及びR18のそれぞれは独立に、C~Cアルキル、フェニル、及びベンジルから選択される)から選択される上記ヘテロ環式基である。好ましい基-N<>N-は、ピペラジニル、メチルピペラジニル、ジメチルピペラジニル、テトラメチルピペラジニルである)。
【0027】
式1-2の詳細な実施形態としては、
【化6】
が挙げられ、式中、RはC~Cアルキル基である。
【0028】
実施形態3
【化7】
(式中、
20、R21、及びR22のそれぞれは独立に、単結合及び2価のC~C10アルキル基から選択され、
dは0、1、及び2から選択される整数であり、d’は0及び1から選択される整数であり、d’が0の場合にはdは0であり、
それぞれの基-N<>X-は独立に、5~10員ヘテロ環式基であって、飽和または不飽和であってよく、上記環の任意の炭素原子上でC~Cアルキル基により置換されていてもよく、それぞれのXは独立に、-N-、-C=、及び-CH-から選択され、式1-3中に明示される2つの基N及びX以外のヘテロ原子基が、-N=、>NR16(R16はC~Cアルキル、基B、フェニル、及びベンジルから選択される)、-O-、-S-、ならびに>SiR1718(R17及びR18のそれぞれは独立に、C~Cアルキル、フェニル、及びベンジルから選択される)から選択される上記ヘテロ環式基から選択される)。好ましい基-N<>X-としてはピペリジニル及びピペラジニルが挙げられる。
【0029】
式1-3の詳細な実施形態としては、
【化8】
が挙げられる。
【0030】
実施形態4
【化9】
(式中、
Dは、5~10員炭素環式またはヘテロ環式基であって、飽和もしくは不飽和であってよく、上記環の任意の炭素原子上でC~Cアルキル基により置換されていてもよく、ヘテロ原子基が、-N=、>NR16(R16は、C~Cアルキル、基B、フェニル、及びベンジルから選択される)、-O-、-S-、ならびに>SiR1718(R17及びR18のそれぞれは独立に、C~Cアルキル及びフェニルから選択される)から選択される上記ヘテロ環式基であり、
それぞれの基-N<>X-は独立に、5~10員ヘテロ環式基であって、飽和または不飽和であってよく、上記環の任意の炭素原子上でC~Cアルキル基により置換されていてもよく、それぞれのXが独立に、-N-、-C=、及び-CH-から選択される上記ヘテロ環式基から選択され、
23は単結合及び2価のC~C10アルキル基から選択され、
eは2、3、及び4から選択される整数である)。好ましい基Dとしては、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、及びテトラヒドロフラニルが挙げられる。好ましい基-N<>X-としてはピペリジニル及びピペラジニルが挙げられる。
【0031】
式1-4において、Dは、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、及びテトラヒドロフラニルから選択され、それぞれの基-N<>X-はピペリジニル及びピペラジニルから選択され、R23は単結合であり、eは2及び3から選択される整数であることが好ましい。
【0032】
式1-4の詳細な実施形態としては、
【化10】
が挙げられる。
【0033】
実施形態5
【化11】
(式中、
Eは6~10員脂環式または芳香族基であり、
それぞれのR24は独立に、単結合及びC~Cアルキルから選択され、
それぞれのRは独立に、B、C~Cアルキル、及びベンジルから選択され、
fは2及び3から選択される整数である)。
【0034】
式1-5において、Eはシクロヘキシル及びフェニルから選択され、R’は単結合であり、Rは、B、C~Cアルキル、及びベンジルから選択され、fは2及び3から選択される整数であることが好ましい。
【0035】
式1-5の詳細な実施形態としては、
【化12】
が挙げられ、式中、それぞれのRは独立に、B、C~Cアルキル、及びフェニルから選択される。
【0036】
式1の化合物から得ることができる開始剤化合物
本発明の第1の態様における選択肢ステップ(a’)で用いられる開始剤化合物は、式1の化合物であって、その全ての実施形態を含む上記化合物を有機アルカリ金属化合物と反応させることによって得ることができる。
【0037】
好適な例示的な有機アルカリ金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、t-オクチルリチウム、イソプロピルリチウム、フェニルリチウム、シクロヘキシルリチウム、2-ブチルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、t-ブチルジメチルシリルオキシプロピルリチウム、ジアルキルアミノプロピルリチウム、N-モルホリノプロピルリチウム、ビフェニルナトリウム、ナフタレンナトリウム及びナフタレンカリウム、1,3-ビス(1-(フェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-エチルフェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-メチルフェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-プロピルフェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-(tert-ブチル)フェニル)1-リチオヘキシル)-ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-(ジエチルアミノ)フェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-エトキシフェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、1,3-ビス(1-(4-(ジメトキシ)フェニル)1-リチオヘキシル)ベンゼン、(((ジメチルアミノ)ジメチル-シリル)メチル)リチウム、(((ジエチルアミノ)ジメチルシリル)メチル)リチウム、(((ジブチルアミノ)ジメチル-シリル)メチル)リチウム、(((ジヘキシルアミノ)ジメチルシリル)メチル)リチウム、(((ジオクチルアミノ)ジメチル-シリル)メチル)リチウム、(((ジベンジルアミノ)ジメチルシリル)メチル)リチウム、((ジメチル(ピペリジン-1-イル)シリル)メチル)リチウム、((ジメチル(モルホリノ)シリル)メチル)リチウム、((ジメチル(4-メチル-ピペリジン-1-イル)シリル)メチル)リチウム、((ジメチル(4-エチルピペリジン-1-イル)シリル)メチル)リチウム、及び((ジメチル(4-ベンジルピペリジン-1-イル)シリル)メチル)リチウムが挙げられる。上記開始剤化合物は、モノリチウムアルキル、モノリチウムアルキルアリール、またはモノリチウムアリール化合物であることがより好ましい。
【0038】
式1の化合物から得ることができる開始剤化合物は、不活性溶媒中、ランダム化化合物の存在下で調製してもよく、好適な溶媒は、以下に記載する溶液重合において用いられる溶媒と同一である。
【0039】
別の実施形態において、式1の化合物から得ることができる開始剤化合物は、不活性溶媒中でランダム化化合物を使用せずに調製してもよく、好適な溶媒は、以下に記載する溶液重合において用いられる溶媒と同一である。
【0040】
式1の化合物の調製
一般に、本発明の第2の態様によれば、式1の化合物は、塩基の存在下で、第一級アミノ基及び第二級アミノ基から独立して選択される少なくとも2つの基を有するアミンを、下記の式3:
X-Si(R)(R)(R) (式3)
(式中、
Xは、Cl、Br、I、トリフルオロメタンスルホナート(OTf)、及びトシラート(OTos)から選択され、
、R、及びRはそれぞれ独立に、R、R、及びRの少なくとも1つがビニル及びブタジエニルから選択されるとの条件で、ビニル、ブタジエニル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ベンジル、及びフェニルから選択される)
のシランと反応させることによって調製される。
【0041】
式1の化合物を調製するための有用な式3のシランとしては、クロロジ(C~Cアルキル)ビニルシラン、特にはクロロジメチルビニルシラン、クロロジエチルビニルシラン、及びクロロジフェニルビニルシラン、好ましくはクロロジメチルビニルシランが挙げられる。
【0042】
上記少なくとも2つの第一級または第二級アミノ基をもつアミンは構造上式1中の基Aに相当するが、相当する第三級アミノ基の代わりに少なくとも2つの第一級または第二級アミノ基を有する。
【0043】
したがって、実施形態1において、式1-1の化合物を調製するために用いられるアミンは、フェニレンジアミン、C~Cモノアルキレンジアミン、C~Cジアルキレントリアミン、及びC~Cトリアルキレンテトラアミンから、好ましくはモノエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、及びテトラエチレンペンタミンから選択してもよい。
【0044】
実施形態2において、式1-2の化合物を調製するために用いられるアミンは、ピペラジン及び1,7-ジオキサ-4,10-ジアザシクロドデカンから選択してもよい。
【0045】
実施形態3において、式1-3の化合物を調製するために用いられるアミンは、トリエチレンテトラミン、4,4’-トリメチレンジピペリジン、4,4’-エチレンジピペリジン、及び1-(3-ピペラジン-1-イルプロピル)ピペラジンから選択してもよい。
【0046】
実施形態4において、式1-4の化合物を調製するために用いられる1種のアミンは、1,4-ジ(ピペラジン-1-イル)ベンゼン(1,4-ジブロモベンゼン及びピペラジンから製造される)であってもよい。式1-4の化合物を調製するために用いられる飽和アミンは、相当する芳香族アミンの遷移金属によって触媒される水素化により製造してもよい。
【0047】
実施形態5において、式1-5の化合物を調製するために用いられるアミンは、1,2-シクロヘキサンジアミン、o-またはp-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、及び1,8-ジアミノナフタレンから選択してもよい。
【0048】
一般に、上記アミンと式3のシランを、少なくとも2つの基Bを上記アミンに結合させるような比率で、例えば、(アミンの数に応じて)0.5~0.1の範囲の、式3のシランに対するアミンのモル比を用いることによって、反応させることとなる。第一級及び第二級アミノ基のそれぞれのmolに対して、1~3モルの式3のシランが用いられる。
【0049】
式1の化合物の調製はまた、上記アミンと式3のシラン以外のシランとの(部分的な)反応を含んでいてもよい。かかる場合には、上記アミン、式3のシラン、及び上記その他のシランの間の反応は、例えば、上記アミンをまず式3のシランと反応させ、次に上記他のシランと反応させるか、またはその逆に、逐次的に行ってもよい。
【0050】
上記塩基は、好ましくは、トリエチルアミン、ピリジン、及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)などの第三級脂肪族もしくは芳香族アミン、または1,8-ジアザビシクロウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなどの置換アミンもしくはグアニジン、好ましくはトリエチルアミン及びピリジンから選択される。上記塩基は、一般的に、第一級及び第二級アミノ基1mol当たり0.5~5mol、好ましくは第一級及び第二級アミノ基1mol当たり1~3molの合計量で用いられる。上記塩基として、少なくとも2つの第一級または第二級アミノ基を有する上記アミンを用いることも可能であるが、それに伴って、該アミンの量を通常1.5~5当量増加させることが必要となる。当該の反応において生成する全てのHXを塩基によって捕捉(クエンチ)できるように、上記シラン反応物と比較して、塩基を確実にモル量で過剰にすることが重要である。
【0051】
上記反応は溶媒中で、特には、ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、及びトルエンを含む炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びtert-ブチルメチルエーテルを含むエーテル溶媒、クロロホルム、テトラクロロメタン、及びジクロロメタンを含む塩素化溶媒、酢酸エチル及び酢酸メチルなどのエステル溶媒、またはアセトン、ジメチルホルムアミド、及びアセトニトリルなどの他の双極性溶媒などの不活性な溶媒中で行ってもよい。好ましい溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、酢酸エチル、トルエン、及びシクロヘキサンである。上記溶媒中の上記反応物の合計濃度は通常0.1~2Mの範囲である。
【0052】
上記アミンと式3のシランとの間の上記反応は、当業者にとって、例えば、アミンをハロシランと反応させるために用いられる反応から明らかとなるであろう条件と同様の条件下で行ってもよい。
【0053】
上記反応は、-30℃~当該反応混合物の還流温度、好ましくは0℃~25℃の温度で好適に実施することができる。
【0054】
通常、上記反応は、溶液中またはニートで、式3のシランを上記アミン及び上記塩基の溶液に滴下により添加することによって実施される。この反応混合物を撹拌し、一般に通常0℃~還流温度の温度で、十分な時間、一般には数時間、好ましくは少なくとも1時間反応させる。反応の停止または完結後に、反応の過程で生成した不溶な塩をろ去してもよく、減圧下での蒸留によって溶媒を除去してもよく、真空蒸留または再結晶などの精製によって式1の化合物が得られる。
【0055】
式2の安定剤化合物
本発明の第1の態様で用いられる式2の安定剤化合物は、ビニルアミノシラン、ブタジエニルアミノシラン、またはイソプレニルアミノシランのケイ素原子に結合した少なくとも1つのアミノ基を有することを特徴とする。上記ケイ素原子に結合したアミノ基とシロキシ基の両方を組み合わせで有することにより、安定化性能を更に向上させることができる。
【0056】
式2中のR’’’としてのC~C18ヒドロカルビルは、好ましくは、独立にC~C18アルキル、C~C18アルケニル、C~C18アリール、及びC~C18アルキルアリール、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、及びベンジルから選択される。R’’’と上記シロキシ(-O-Si)基との組み合わせによって形成される特定の例示的なトリヒドロカルビルシロキシ基は、tert-ブチルジメチルシロキシ、トリエチルシロキシ、トリイソプロピルシロキシ、トリフェニルシロキシ、tert-ブチルジフェニルシロキシ、ジエチルイソプロピルシロキシ、ジメチルオクタデシルシロキシ、及びトリヘキシルシロキシである。
【0057】
R’は好ましくは独立に、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、及びベンジルから選択される。一実施形態において、上記2つのR’基はそれぞれエチル基であり、これらは酸素原子を介して再び結合し、そのようにしてSiに結合した窒素原子と共にモルホリン環を形成する。別の実施形態において、上記2つのR’は結合して、Siに結合した窒素原子と共に、シクロペンチルアミン基、シクロヘキシルアミン基、シクロヘプチルアミン基、シクロオクチルアミン基、シクロドデシルアミン基、モルホリン基、オキサゾリジン基、チアゾリジン基、チアモルホリン基、4-メチルピペラジン基、4-エチルピペラジン基、4-プロピルピペラジン基、4-ブチルピペラジン基、及び4-ベンジルピペラジン基などの5~12員環、好ましくは5~8員環を形成する。一実施形態において、1つのR’は-Si(CR=CR)(OSiR’’’(R’’)を表し、但し、R、R、R、R’’’、R’’、y、及びzは独立に上記で定義した通りであり、且つy+z=2である。
【0058】
R’’としてのC~Cヒドロカルビルは、C~Cアルキル及びフェニルから選択されてもよい。上記ヒドロカルビルは好ましくはメチルである。
【0059】
、R、及びRは、好ましくは同一であり、更により好ましくは水素である。一実施形態において、R、R、及びRの1つのみがビニルであり、残余の2つは水素である。好ましい実施形態において、x、y、及びzはそれぞれ1であり、mは0である。別の好ましい実施形態において、x=2、y=0、z=1、且つm=0である。別の好ましい実施形態において、x=1、y=0、z=2、且つm=1であり、R、R、及びRの少なくとも1つはビニルである。
【0060】
式1のビニルシラン化合物の好ましい実施形態において、当該パラメーター及び置換基は以下の値:
a)R’’’は、(メチル、メチル、t-ブチル)または(フェニル、フェニル、フェニル)または(t-ブチル、フェニル、フェニル)または(ヘキシル、ヘキシル、ヘキシル)、
R’は独立に、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、ペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、及びベンジル(メチル基を介して結合)、または-NR’R’が、モルホリン基、ピロリジン基、ピペリジン基、もしくはオキサゾリジン基を形成し、
R’’はメチル、
、R、及びRはそれぞれ水素、及び
x=y=z=1
b)R’’’は、(メチル、メチル、t-ブチル)または(ヘキシル、ヘキシル、ヘキシル)、
R’は独立に、メチル及びエチルから選択されるか、または-NR’R’が、モルホリン基、ピロリジン基、ピペリジン基、もしくはオキサゾリジン基を形成し、
R’’はメチル、
、R、及びRはそれぞれ水素、及び
x=2、y=1、且つz=1
c)R’’’は、(メチル、メチル、t-ブチル)または(ヘキシル、ヘキシル、ヘキシル)、
R’は独立に、メチル及びエチルから選択されるか、または-NR’R’が、モルホリン基、ピロリジン基、ピペリジン基、またはオキサゾリジン基を形成し、
R’’はメチル、
及びRはそれぞれ水素、且つRはビニル、及び
x=y=z=1
をとる。
【0061】
一般に、基-NR’中の置換基がより小さいほど、基-OSiR’’’としてより嵩高い置換基を選択することが好ましい。
【0062】
式2のビニルシラン化合物の好ましい実施形態は、(tert-ブチルジメチルシロキシ)メチル-4-モルホリノ(ビニル)シラン、(tert-ブチルジメチルシロキシ)-(ジメチルアミノ)-メチル-(ビニル)シラン、(tert-ブチルジメチルシロキシ)-(ジエチルアミノ)メチル(ビニル)シラン、(tert-ブチルジメチル-シロキシ)(ジブチルアミノ)メチル(ビニル)シラン、(tert-ブチルジメチルシロキシ)-(ジベンジルアミノ)-メチル-(ビニル)シラン、1-[(tert-ブチルジメチルシロキシ)メチル(ビニル)シリル]-4-エチルピペラジン、1-[(tert-ブチルジメチルシロキシ)メチル(ビニル)シリル]-4-メチルピペラジン、4-エチル-1-(ジメチル-(2-メチレンブタ-3-エン-1-イル)シリル)ピペラジン、1-[(tert-ブチルジメチルシロキシ)-メチル(ビニル)シリル]-4-ベンジルピペラジン、及び1-[(tert-ブチルジメチルシロキシ)-メチル(ビニル)シリル]-4-プロピルピペラジンである。
【0063】
m=0である式2の化合物の調製ならびにかかる化合物の更なる詳細がWO2015/055252に記載され、該公報の全体が参照により本明細書に援用される。m=1である式2の化合物は、下記式4の化合物及び下記式5の化合物を、溶媒中、
(i)マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、及びホウ素からなる群より選択される金属と、
(ii)遷移金属触媒と
の存在下で反応させることによって、またはその変化形を用いることによって調製してもよい:
【化13】
(式中、
それぞれのR’は独立に、C~C12アルキル、C~C18アリール、C~C18アルキルアリール、トリ(C~Cアルキル、C~C12アリール、またはC~C18アルキルアリール)シリル、及びアリルから選択され、但し2つのR’基が結合して環を形成していてもよく、上記環は、Siに結合した窒素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、>N(C~CアルキルまたはC~C18アルキルアリール)基、及びイオウ原子の1種または複数種を含んでいてもよく、
それぞれのR’’は独立にC~Cヒドロカルビルから選択され、
、R、R、R、及びRは独立に、水素、メチル、及びエチルから選択され、
xは0、1、及び2から選択される整数、yは1、2、及び3から選択される整数、且つx+y=3である)。
【0064】
重合
式1の化合物は弾性ポリマー中に可逆的な分枝を導入するための分枝形成剤として用いられる。この目的のために、上記式1の化合物を、それ自体でもしくは開始剤化合物を生成するための有機アルカリ金属化合物との反応の後に、弾性ポリマーを製造するために実施される重合反応において予め用いてもよく、または上記化合物をリビング弾性ポリマーに添加し、且つ該ポリマーと反応させてもよい。2種以上の式1の化合物を併用してもよい。それぞれの場合において、上記重合または反応は式2の安定剤化合物の存在下で実施され、2種以上の式2の安定剤化合物を併用してもよい。
【0065】
本弾性ポリマーは一般に、アニオン重合、ラジカル重合、または遷移金属により触媒される重合によって製造することができるが、好ましくはアニオン重合によって製造される。上記重合は溶媒中で行ってもよく、1種または複数種の連鎖末端修飾剤、更にカップリング剤(修飾カップリング剤を含む)、ランダム化剤化合物、及び重合促進剤化合物を用いて実施してもよい。
【0066】
以下の詳細な開示に加えて、重合開始剤化合物、極性調整剤化合物、及び(開始剤の反応性を増加/変化させるための、芳香族ビニルモノマーをランダムに配置するための、ならびに/あるいは当該ポリマー中に導入される1,2-ポリブタジエンもしくは1,2-ポリイソプレンもしくは3,4-ポリイソプレン単位をランダムに配置する及び/または上記単位の濃度を変化させるための)促進剤;各化合物の量;モノマー(複数可);ならびに好適なプロセス条件を含む重合技術における一般的に利用可能な指針が、WO2009/148932に記載され、該公報は全体が参照により本明細書に援用される。
【0067】
共役ジエン(共役ジエンモノマー)
本発明において有用な例示的な共役ジエンモノマーとしては、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)などの2-(C~Cアルキル)-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、2-メチル-2,4-ペンタジエン、シクロペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、α-及びβ-ファルネセン、ならびに1,3-シクロオクタジエンが挙げられる。2種以上の共役ジエンの混合物を用いてもよい。好ましい共役ジエンとしては、1,3-ブタジエン及びイソプレンが挙げられる。一実施形態において、上記共役ジエンは1,3-ブタジエンである。
【0068】
芳香族ビニルモノマー
上記任意選択の芳香族ビニルモノマーとしては、モノビニル芳香族化合物、すなわち、芳香族基に結合した1つのみのビニル基をもつ化合物、及び芳香族基に結合した2つ以上のビニル基をもつ2価以上のビニル芳香族化合物が挙げられる。上記少なくとも1種の共役ジエンと共に任意選択で用いられる例示的な芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、及び4-tert-ブチルスチレンなどのC1~4アルキル置換スチレン、スチルベン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、4-(N,N-ジエチルアミノジメチル)シリルスチレン、4-(ジメチルアミノジメチル)シリルスチレン、4-((4-エチルピペラジニル)ジメチル)シリルスチレン、4-((4-メチルピペラジニル)ジメチル)シリルスチレン、tert-ブトキシスチレン、ビニルピリジン、ならびに1,2-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン、及び1,4-ジビニルベンゼンなどのジビニル芳香族化合物が挙げられる。2種以上の芳香族ビニルモノマーを併用してもよい。好ましい芳香族ビニルモノマーは、モノビニル芳香族化合物、より好ましくはスチレンである。
【0069】
特にスチレンを含む、モノビニル芳香族化合物(複数可)は、用途に応じて、当該重合反応に使用するモノマーの全重量を基準として、最大で70wt%、特には40~70wt%、または15~40wt%、または1~15wt%の合計量で用いてもよい。1,2-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン、及び1,4-ジビニルベンゼンを含むジビニルベンゼンなどの2価以上のビニル芳香族化合物は、(当該ポリマーを製造するために用いられるモノマーの全モル重量を基準として)1wt%以下の合計量で用いてもよい。好ましい一実施形態において、1,2-ジビニルベンゼンが、スチレン及びブタジエンまたはイソプレンと併用される。
【0070】
その他のモノマー
本発明の弾性ポリマーの製造に用いてもよい、式1の化合物または式2の安定剤、上記共役ジエンモノマー、及び上記任意選択の芳香族ビニルモノマー以外のコモノマーとしては、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、及びアクリル酸ブチル、ならびにメタクリル酸エステル、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、及びメタクリル酸ブチルなどのアクリル系モノマーが挙げられる。かかるその他のコモノマーは、通常、上記重合反応に用いられるモノマーの全重量を基準として、5wt%以下の比率で用いられる。
【0071】
開始剤化合物
本発明の重合プロセスにおいては開始剤化合物が用いられ、2種以上の開始剤化合物を併用してもよい。上記開始剤化合物は1価または多価(2価、3価など)の開始剤化合物であってよい。好適な開始剤化合物としては、アルカリ金属、有機アルカリ金属化合物、アルカリ金属と極性化合物との間の錯体、アルカリ金属を含むオリゴマー、及びルイス酸-塩基錯体が挙げられる。例示的なアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムが挙げられる。例示的な有機アルカリ金属化合物としては、式1の化合物から得ることができる開始剤化合物の説明において列挙したものと同一のものが挙げられる。例示的なアルカリ金属と極性化合物との間の錯体としては、リチウム-テトラメチルエチレンジアミン錯体、リチウム-テトラヒドロフラン錯体、リチウム-ジテトラヒドロフランプロパン錯体、ならびにそれらのナトリウム及びカリウム類似体が挙げられる。上記開始剤化合物は、モノまたはジリチウムアルキル、アルキルアリール、またはアリール化合物であることがより好ましい。更に有用な開始剤としては、WO2014/040640に記載のアミノシラン重合開始剤及びWO2015/010710に記載の重合開始剤が挙げられる。
【0072】
特定の実施形態において、上記開始剤化合物は、式1の化合物と上記に記載の有機アルカリ金属化合物とを反応させることによって得ることができる開始剤化合物である。この実施形態において、上記開始剤化合物は、開始剤化合物及び分枝形成剤の両方の機能を果たす能力がある。
【0073】
上記開始剤(複数可)、特に有機リチウム開始剤(複数可)の合計量は、モノマー及び標的分子量またはポリマーに応じて調整されることとなる。上記合計量は、一般的にはモノマー100g当たり0.05~5mmol、好ましくは0.2~3mmolである。低分子量ポリマーは、モノマー100g当たり5~20mmolの開始剤を用いることによって製造することができる。
【0074】
溶媒
上記重合は通常、生成するポリマーが当該反応混合物に実質的に可溶である溶液重合として、または生成するポリマーが当該反応媒体に実質的に不溶である懸濁重合/スラリー重合として実施される。本ポリマーは溶液重合で得られることがより好ましい。上記重合溶媒としては、従来より上記開始剤、触媒、または活性ポリマー鎖を失活させない炭化水素溶媒が用いられる。上記重合溶媒は2種以上の溶媒の組み合わせであってもよい。例示的な炭化水素溶媒としては脂肪族及び芳香族溶媒が挙げられる。具体的な例としては、(全ての考えられる構造異性体を含む)プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ブテン、プロペン、ペンテン、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレンが挙げられる。
【0075】
連鎖末端修飾剤
本発明のポリマー中のポリマー鎖の末端と反応させることによって、ポリマー特性を更に制御するために、本発明の重合反応において1種または複数種の連鎖末端修飾剤を用いてもよい。一般に、WO2007/047943、WO2009/148932、US6,229,036、及びUS2013/0131263(それぞれその全体が参照により本明細書に援用される)に開示されるものなどのシランスルフィドオメガ連鎖末端修飾剤を、この目的のために用いてもよい。本発明に用いるのに適した他の連鎖末端修飾剤としては、WO2014/040640及びWO2015/010710に開示されるものならびにWO2014/040639に記載されるシランスルフィド修飾剤があり、上記公報のそれぞれはその全体が本明細書に援用される。
【0076】
上記連鎖末端修飾剤は、重合中に(規則的もしくは不規則な間隔で)断続的にまたは連続的に添加されてもよいが、好ましくは80%を超える重合転化率において、より好ましくは90%を超える転化率において添加される。上記連鎖末端修飾剤との反応の前には、実質的な量の上記ポリマー鎖末端は停止されていない、すなわち、リビングポリマー鎖末端が存在し、上記修飾剤と反応する能力をもっていることが好ましい。
【0077】
カップリング剤
ポリマーの分子量及びポリマー特性を更に制御するために、任意選択成分としてカップリング剤(「連結剤」)を本発明の方法において用いてもよい。カップリング剤によって、同一の分子量のカップリングしていない本質的に直鎖状のポリマー巨大分子と比較して、当該弾性ポリマーの自由連鎖末端の数が減少することによりヒステリシス損失が低下し、且つ/またはポリマー溶液粘度が低下することとなる。四塩化スズなどのカップリング剤は、当該ポリマー鎖末端を官能化し、エラストマー組成物の成分と、例えば充填剤とまたはポリマーの不飽和部分と反応することができる。例示的なカップリング剤が、US3,281,383、US3,244,664、及びUS3,692,874(例えば、テトラクロロシラン);US3,978,103、US4,048,206、US4,474,908、及びUS6,777,569(ブロック化メルカプトシラン);US3,078,254(1,3,5-トリ(ブロモメチル)ベンゼンなどの多ハロゲン置換炭化水素);US4,616,069(スズ化合物及び有機アミノまたはアミン化合物);ならびにUS2005/0124740に記載される。
【0078】
一般に、上記連鎖末端修飾剤は、上記カップリング剤の添加前、添加中、または添加後に添加され、修飾反応は、好ましくはカップリング剤の添加後に行われる。
【0079】
用いられるカップリング剤の合計量は当該カップリングしたポリマーのムーニー粘度に影響を与えることとなり、一般的には上記弾性ポリマー100グラム当たり0.001~4.5ミリ当量、例えばポリマー100グラム当たり0.01~約1.5ミリ当量の範囲である。
【0080】
ランダム化剤
上記ポリマーの共役ジエン部分のミクロ構造(すなわちビニル結合の含有率)を調整するために、または上記ポリマー鎖中のいずれかの芳香族ビニルモノマー及びビニル結合の組成分布を調整するために、本技術分野で従来公知のランダム化剤化合物(極性調整剤化合物としても知られる)をモノマー混合物または重合反応混合物に任意選択で添加してもよい。2種以上のランダム化剤化合物を併用してもよい。本発明において有用なランダム化剤化合物の例としては、概括的にはルイス塩基化合物が挙げられる。本発明での使用に適したルイス塩基は、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、(メチルテトラヒドロフリルエーテル、エチルテトラヒドロフリルエーテル、プロピルテトラヒドロフリルエーテル、ブチルテトラ-ヒドロフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフリルエーテル、及びオクチルテトラヒドロフリルエーテルを含む)(C~Cアルキル)テトラヒドロフリルエーテル、テトラヒドロフラン、2,2-(ビステトラヒドロフルフリル)プロパン、ビステトラヒドロフルフリルホルマール、テトラヒドロフルフリルアルコールのメチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコールのエチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコールのブチルエーテル、α-メトキシテトラヒドロフラン、ジメトキシベンゼン、及びジメトキシエタンなどのエーテル化合物、ならびにトリエチルアミン、ピリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、N,N-ジエチルエタノールアミンのメチルエーテル、N,N-ジエチルエタノールアミンのエチルエーテル、N,N-ジエチル-エタノールアミン、及びジメチルN,N-テトラヒドロフルフリルアミンなどの第三級アミンである。好ましいランダム化剤化合物の例は、WO2009/148932に特定されており、上記公報はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0081】
上記ランダム化剤化合物は一般的に、開始剤化合物に対するランダム化剤化合物のモル比が0.012:1~10:1、好ましくは0.1:1~8:1、より好ましくは0.25:1~約6:1で添加されることとなる。
【0082】
促進剤化合物
上記重合は、上記開始剤の反応性を高める(延いては重合速度を高める)ため、上記ポリマー中に導入された芳香族ビニルモノマーをランダムに配置するため、または芳香族ビニルモノマーの単一鎖を与え、延いてはリビングアニオン重合による弾性コポリマー中の芳香族ビニルモノマーの分布に影響を与えるために、任意選択で促進剤を含んでいてもよい。促進剤の例としては、ナトリウムアルコキシドまたはナトリウムフェノキシド及びカリウムアルコキシドまたはカリウムフェノキシド、好ましくは、カリウムイソプロポキシド、カリウムt-ブトキシド、カリウムt-アミルオキシド、カリウムn-ヘプチルオキシド、カリウムベンジルオキシド、カリウムフェノキシドなどのカリウムアルコキシドまたはカリウムフェノキシド;イソ吉草酸、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、安息香酸、フタル酸、及び2-エチルヘキサン酸などのカルボン酸のカリウム塩;ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、及びオクタデシルベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸のカリウム塩;ならびに亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジブチル、及び亜リン酸ジラウリルなどの有機亜リン酸のカリウム塩等が挙げられる。
【0083】
かかる促進剤化合物は、1.0グラム原子当量のリチウム開始剤当り0.005~0.5molの合計量で添加してもよい。0.005mol未満が添加される場合には、一般には十分な効果が得られない。一方、上記促進剤化合物の量が約0.5molを超える場合には、連鎖末端修飾反応の生産性及び効率が著しく低下する場合がある。
【0084】
式1の化合物の添加
式1の化合物の添加は所望のカップリング率に依存し、カップリング率もポリマーの性能に影響を与える。通常、5~80%のカップリング率が望ましい。したがって、式1の化合物は、開始剤化合物1当量当たり0.01~5当量(eq)、好ましくは0.05~2当量/当量、より好ましくは0.1~1.0当量/当量、最も好ましくは0.15~0.8当量/当量の合計量で用いてもよい。選択肢(a’’)においては、リビングポリマー鎖末端の当量を「開始剤化合物の当量」として用いつつ、相当する添加が適用される。上記リビングポリマー鎖末端の当量は、本技術分野において従来公知の滴定(例えばギルマン滴定)によってまたは分光法(UV分光法)で測定することができる。式1の化合物が開始剤化合物として用いられる場合(選択肢(a’))、すなわち過剰の1種または複数種の有機アルカリ金属化合物との反応の後では、該化合物は、好ましくは以下の比率、すなわち、0.05~0.9当量/有機アルカリ金属化合物の総量の当量、より好ましくは0.1~0.5当量/有機アルカリ金属化合物の総量の当量で用いられる。上記の量は、特に、本発明のポリマーがタイヤ用途、例えばタイヤトレッドまたはタイヤサイドウォール用のゴム配合物に使用される場合に適用される。異なる式1の化合物を本発明に従って併用してもよい。
【0085】
上記重合プロセスまたは反応における、式1の化合物の、上記共役ジエンモノマー及び任意選択の芳香族ビニルモノマー、開始剤化合物、及び他の成分に対する添加(addition)(「添加(dosing)」)の様式は、生成するポリマーの構造に影響を与えることとなる。したがって、所望の比率及び配列の、複数のビニルまたはブタジエニルを有するアミノシランポリマーのブロック及び他のモノマーのブロックを有するランダムコポリマー及びブロックコポリマーを製造することができる。例示的な添加スキームは以下の通りである。
(1)共役ジエンモノマー、任意選択の芳香族ビニルモノマー、及び開始剤化合物を含む混合物に、重合の進行と共に式1の化合物を連続的に(徐々に増加させて)添加することで、ランダムコポリマーが生成する。
(2)主たる量のコモノマーと共に主たる量の開始剤を添加する前に式1の化合物を添加する。モノマーの定量的または略定量的な転化の後に、式1の化合物の2回目の添加を行って、ポリマー末端にブロック構造を生成させることができる。
(3)主たる量のコモノマーと共に主たる量の開始剤を添加する前に式1の化合物を添加し、上記主たる量のコモノマー及び主たる量の開始剤は、式1の化合物の定量的または略定量的な転化の後に添加することができる。更に、規定された全モノマーの転化率において、可変の比率の数回のステップで化合物1を添加し、ポリマー鎖内にn個の傾斜(tapered)またはブロック構造エレメントを生成させることができる。モノマーの定量的または略定量的な転化の後に、式1の化合物または連鎖末端修飾剤またはカップリング剤を最後に添加して、ポリマー末端にブロック構造を生成させる、または別の官能化もしくはカップリングを行うことができる。
(4)規定された全モノマーの転化率において、可変の比率の数回のステップで化合物1を添加し、ポリマー鎖内に傾斜またはブロック構造エレメントを生成させることができる。モノマーの定量的または略定量的な転化の後に、式1の化合物または連鎖末端修飾剤またはカップリング剤を最後に添加して、ポリマー末端にブロック構造を生成させる、または別の官能化もしくはカップリングを行うことができる。
(5)主たる量のコモノマーと共に主たる量の開始剤を添加する前に式1の化合物を添加し(傾斜構造)、上記主たる量のコモノマー及び主たる量の開始剤は、式1の化合物の定量的または略定量的な転化の後に添加することができる。モノマーの定量的または略定量的な転化の後に、連鎖末端修飾剤またはカップリング剤を添加して、ポリマー鎖を官能化するまたはカップリングさせることができ、これは好ましい添加の選択肢である。
【0086】
式2の安定剤化合物の添加
式2の化合物の添加は、式1の化合物の添加量及び式2の安定剤化合物の有効性のみならず、ポリマーの分子量、延いては「カップリング濃度」の関数でもある。また、ポリマーの後処理条件及び乾燥したゴムの含水率が、最良の貯蔵挙動にとって必要な量に影響を与える場合がある。したがって、式2の化合物の量を調節する必要があり、好ましくは関連する重合毎に最適化する必要がある。
【0087】
一般に、式2の安定剤化合物は、開始剤1当量当たり0.01~100当量、好ましくは0.05~20当量/当量、より好ましくは0.1~5当量/当量、更により好ましくは0.9当量/当量以下の式2の化合物の量で用いてもよい。選択肢(a’’)においては、リビングポリマー鎖末端の当量を「開始剤化合物の当量」として用いつつ、相当する添加が適用される。上記リビングポリマー鎖末端の当量は、本技術分野において従来公知の滴定(例えばギルマン滴定)によってまたは分光法(UV分光法)で測定することができる。
【0088】
上記重合プロセスまたは反応における、式2の化合物の、上記共役ジエンモノマー及び任意選択の芳香族ビニルモノマー、開始剤化合物、及び他の成分に対する添加(addition)(「添加(dosing)」)の様式は、上述の例示的な添加スキーム(1)~(5)に相当する形態で選択することができる。
【0089】
ポリマー
本発明の第2の態様に記載の弾性ポリマーは、本発明の方法によって、すなわち、(a)開始剤化合物の存在下で、少なくとも1種の共役ジエン及び式1の化合物を重合すること、(a’)式1の化合物と有機アルカリ金属化合物を反応させることによって得ることができる開始剤化合物の存在下で、少なくとも1種の共役ジエンを重合すること、または(a’’)少なくとも1種の共役ジエンをアニオン重合することによって得ることができるリビングポリマーを式1の化合物と反応させることであって、(a)、(a’)、及び(a’’)のそれぞれが式2の安定剤化合物の存在下で実施される、上記(a)、(a’)、または(a’’)によって得ることができる。本発明のポリマーは、式1及び2の化合物が該化合物のビニルもしくはブタジエニル官能基によって本ポリマーの連鎖中に組み込まれている、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、または傾斜コポリマー、あるいはαまたはα,ω修飾ポリマーであってもよい。ジリチウム化アレンなどの2価開始剤を用いることによって、連鎖両末端修飾ポリマーを生成させることができる。式2の安定剤化合物の本ポリマー中への導入に関しては、WO2015/055252を参照されたい。得られるポリマーは、概括的には分枝状弾性ポリマーである。
【0090】
好ましい実施形態において、本発明のポリマーは、好ましいビニル含有率が(特定の用途に応じて)15~80%、より好ましくは30~75%、最も好ましくは40~70%、スチレン含有率が(特定の用途に応じて)合計量で40~70wt%、もしくは15~40wt%、もしくは1~15wt%のSSBR(溶液重合スチレン-ブタジエンゴム);ビニル含有率が<15%、もしくは15~40%、もしくは40~80%のPBR(ポリブタジエンゴム);PIR(ポリイソプレンゴム);SSIR(溶液重合スチレン-イソプレンゴム);またはSSIBR(溶液重合スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム);より好ましくはSSBRまたはPBR;更により好ましくはSSBRであり、上記のそれぞれは、式1の複数のビニルを有するアミノシランの導入によって修飾されている。SSBRの場合、本弾性ポリマーは、ガラス転移温度(Tg、DSCによって測定)が-90~0℃、好ましくは-80~-5℃、より好ましくは-70~-10℃であることを特徴とする。トラックタイヤ用途向けの最も好ましいTgは-70~-40℃であり、乗用車タイヤ用途向けの最も好ましいTgは-40~-10℃である。
【0091】
未硬化ポリマー組成物
本発明の第3の態様の未硬化ポリマー組成物は、
本発明の第2の態様の弾性ポリマーと、
(i)上記ポリマーの製造に用いられる重合プロセスに添加されるまたは上記プロセスの結果として形成される成分、
(ii)上記重合プロセスから溶媒を除去した後に残留する成分、及び
(iii)上記ポリマー製造プロセスの完結後に上記ポリマーに添加される成分
から選択される1種または複数種の更なる成分とを含む。特に、かかる成分(i)~(iii)は、油分(伸展油)、充填剤、安定剤、及び(本発明のポリマーではない)更なるポリマーから選択される1種または複数種の成分であってよい。特に伸展油は、重合の完結後であり溶媒除去の前に、ポリマー溶液へ添加してもよい。一実施形態において、上記ポリマー組成物は1種または複数種の加硫剤を更に含む。
【0092】
一実施形態において、上記未硬化(未架橋または未加硫)ポリマー組成物は、上記重合プロセスで得られた反応混合物の従来の後処理によって得られる。後処理とは、スチームストリッピングまたは真空蒸発技法を用いた溶媒の除去を意味する。
【0093】
別の実施形態において、本発明の未硬化ポリマー組成物は、好ましくはゴムベール(すなわち、内部ミキサー中での及び/または2本ロールミルによる従来の配合プロセスの生成物)の形態の、(本発明のポリマーを含む)上記後処理された反応混合物と、少なくとも1種の充填剤とが関わる更なる機械的混合プロセスの結果として得られる。
【0094】
タイヤに用いられる未硬化組成物には、通常以下の成分:伸展油、安定剤、充填剤、更なるポリマーが添加される。
【0095】
油分(伸展油)
一実施形態において、本発明のポリマー組成物は、1種または複数種の油分、特に鉱油との組み合わせで、本発明の弾性ポリマーを含む。油分の代表例及び分類については、WO2009/148932及びUS2005/0159513を参照されたく、上記公報のそれぞれはその全体が参照により本明細書に援用される。かかる油分としては、例えば、芳香族系、ナフテン系、及びパラフィン系伸展油などの従来公知の伸展油、例えば、MES(mild extraction solvate)、TDAE(treated distillate aromatic extract)、rubber-to-liquid(RTL)油、biomass-to-liquid(BTL)油、ファクチス、伸展樹脂、または分子量中央値(median molecular weight)(BS ISO 11344:2004に準拠してGPCにより測定)が500~20000g/molの液状ポリマー(液体BRなど)が挙げられる。上記伸展油として鉱油を用いる場合、該鉱油は、好ましくはDAE(Destillated Aromatic Extracts)、RAE(Residual Aromatic Extract)、TDAE、MES、及びナフテン系油から選択される1種または複数種である。上記油分は、異なる濃度の多環式芳香族化合物、パラフィン系化合物、ナフテン系化合物、及び芳香族系化合物を含み、ガラス転移温度が異なる。いくつかの実施形態において、MES、RAE、及びTDAEはゴム用の好ましい伸展油である。
【0096】
上記1種または複数種の油分は、上記重合プロセスの終了前または終了後にポリマーに添加してもよい。上記伸展油がポリマー溶液に添加される場合、添加時期は、好ましくはポリマーの修飾または重合停止の後、例えば修飾剤または重合停止剤の添加の後である必要がある。上記伸展油の添加後に、直接乾燥法またはスチームストリッピング法により当該ポリマーからいずれの重合溶媒も分離し、真空乾燥機、熱風乾燥機、ローラーなどを用いて当該ゴムを乾燥させることによって、油展ポリマー組成物を得てもよい。
【0097】
上記ポリマー組成物は、0~70phr、好ましくは0.1~60phr、より好ましくは0.1~50phrの合計量で1種または複数種の油分を含んでいてもよい。本発明のポリマー組成物中の伸展油として液体ポリマーが用いられる場合、当該ポリマーマトリクスの組成を計算する際には、該液体ポリマーは考慮されない。
【0098】
別の実施形態において、上記油分は、少なくとも1種の充填剤、好ましくは少なくとも1種の充填剤及び少なくとも1種の更なるポリマーと共に、機械的混合機中で「溶媒を含まない」ポリマーに添加される。
【0099】
充填剤
任意選択で上記に定義された1種または複数種の伸展油を含む本発明のポリマー組成物は、1種または複数種の充填剤を更に含んでいてもよい。充填剤は、重合プロセスの終了前または後に上記ポリマーに添加してもよい。好適な充填剤の例としては、カーボンブラック(導電性カーボンブラックを含む)、カーボンナノチューブ(CNT)(離散(discrete)CNT、中空炭素繊維(HCF)、及びヒドロキシル基、カルボキシル基、及びカルボニル基などの1種または複数種の官能基をもつ変性CNTを含む)、黒鉛、グラフェン(剥離(discrete)グラフェンプレートレットを含む)、シリカ、カーボン-シリカ二重相充填剤、クレー(剥離ナノクレー及び有機クレーを含む層状ケイ酸塩)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、二酸化チタン、ゴムゲル、リグニン、セルロース、ガラス粒子系充填剤などの非晶質充填剤、デンプン系充填剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適な充填剤の更なる例がWO2009/148932に記載され、該公報は参照により全てが本明細書に援用される。
【0100】
当業者に従来公知の任意の種類のカーボンブラックを用いてもよい。一実施形態において、上記カーボンブラックは、ASTM D1510に準拠したヨウ素価が、20~250mg/g、好ましくは30~180mg/g、より好ましくは40~180mg/g、更により好ましくは40~130mg/gであり、且つASTM D2414に準拠したDBP値が、80~200ml/100g、好ましくは100~200ml/100g、より好ましくは115~200ml/100gである(DBP値はカーボンブラックまたは黒色以外の任意の充填剤の、フタル酸ジブチルを用いた比吸収容積を測定する)。
【0101】
当業者に従来公知であり、タイヤ用ゴムブレンド物向けの充填剤として好適な任意の種類のシリカを用いてもよい。窒素表面積(BET表面積;DIN ISO9277及びDIN66132に準拠)が、35~350m/g、好ましくは35~260m/g、より好ましくは100~260m/g、更により好ましくは130~235m/gであり、且つCTAB表面積(ASTM D3765に準拠)が、30~400m/g、好ましくは30~250m/g、より好ましくは100~250m/g、更により好ましくは125~230m/gである、高度に分散した沈降シリカを使用することが特に好ましい。かかるシリカによって、例えば、タイヤトレッド用のゴムブレンド物において、加硫物の特に有益な物理的特性が得られる。更に、上記シリカは、上記ブレンド物の加工において、すなわち、製品の特性を維持しながら、ブレンドに要する時間を短縮し、延いては生産性を向上することによって、利点をもたらすことができる。有用なシリカとしては、Ultrasil(登録商標)VN3(Evonik Industriesの商標)のタイプのもの、ならびに高度に分散したタイプのもの、いわゆるHDシリカ(例えば、RhodiaのZeosil(登録商標)1165MP)が挙げられる。
【0102】
安定剤
酸素分子による本弾性ポリマーの劣化を防止するために、本重合プロセスの終了の前または後に、1種または複数種の安定剤(「抗酸化剤」;式2の安定剤化合物と混同しないように)を本ポリマーに任意選択で添加してもよい。2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、6,6’-メチレンビス(2-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、イソ-オクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、イソトリデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’-エチリデンビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]メタン、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリラート、及び2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリラートなどの立体障害フェノール系酸化防止剤、ならび4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール及びペンタエリトリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオナート)などのチオエステル系抗酸化剤が一般的に用いられる。好適な安定剤の更なる例が、F. Rothemeyer, F. Sommer, Kautschuk Technologie, 2nd ed., (Hanser Verlag, 2006) pages 340-344、及びそこで引用されている参考文献に記載される。
【0103】
更なるポリマー
本発明のポリマー、伸展油(複数可)、充填剤(複数可)などとは別に、本発明のポリマー組成物は、更なるポリマー、特に更なる弾性ポリマーを更に含んでいてもよい。更なるポリマーは、ポリマーブレンドの後処理の前に、本発明のポリマーの溶液に溶液として添加されてもよく、または、例えばブラベンダーミキサー中での機械的混合プロセスの間に添加されてもよい。
【0104】
本明細書において言及される更なる(弾性)ポリマーは、本発明のポリマーに合致しない、すなわち、式1及び2の両方の化合物から誘導される繰り返し単位を含まない弾性ポリマーである。
【0105】
加硫剤及び加硫促進剤
本発明のポリマー組成物は、任意選択で、少なくとも1種の加硫剤を更に含んでいてもよい。本発明では、ゴム製品の製造に従来使用されている任意の加硫剤を用いることができ、2種以上の加硫剤を併用してもよい。
【0106】
イオウ、ジチオールなどのイオウ供与体として作用するイオウ含有化合物、イオウ促進剤系、及び過酸化物が最も一般的な加硫剤である。イオウ供与体として作用するイオウ含有化合物の例としては、ジチオジモルホリン(DTDM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、及びジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)が挙げられる。イオウ促進剤の例としては、アミン誘導体、グアニジン誘導体、アルデヒドアミン縮合生成物、チアゾール、キサントゲナート、チウラムスルフィド、ジチオカルバマート、及びチオホスファートが挙げられる。N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシルベンゾチアゾール2-スルフェンアミド(DCBS)、ベンゾチアジル2-スルフェンモルホリド(MBS)、及びN-tert-ブチル2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)から選択される1種または複数種のスルフォンアミド促進剤を用いることが好ましい。Vulkuren(登録商標)(1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)-ヘキサン;Lanxess)、Duralink(登録商標)、またはPerkalink(登録商標)(1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン;Lanxess)の商標で入手可能なものまたはWO2010/049261に開示されるものなどの更なる架橋系を、本ポリマー組成物に添加してもよい。過酸化物の例としては、ジ-tert-ブチル-ペルオキシド、ジ-(tert-ブチル-ペルオキシ-トリメチル-シクロヘキサン)、ジ-(tert-ブチル-ペルオキシ-イソプロピル)ベンゼン、ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert-ブチル-クミル-ペルオキシド、ジメチル-ジ(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン、ジメチル-ジ(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキシン、及びブチル-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレラートが挙げられる(Rubber Handbook, SGF, The Swedish Institution of Rubber Technolgy 2000)。
【0107】
必要に応じて、加硫剤と共に、スルフェンアミド型、グアニジン型、チウラム型の加硫促進剤を用いてもよい。
【0108】
更に、本発明のポリマー組成物は、従来の添加剤及び加硫助剤を従来用いられている比率で含んでいてもよい。かかる添加剤としては以下:
a)N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、2,2,4-トリメチル1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)などの老化防止剤、
b)酸化亜鉛及び脂肪酸(例えばステアリン酸)などの活性化剤、
c)ワックス、
d)樹脂、特に接着性樹脂、
e)2,2’-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)などの素練り添加剤、ならびに
f)亜鉛石ケン及び脂肪酸エステル及びそれらの誘導体などの加工添加剤
が挙げられる。酸化亜鉛(亜鉛白)が、好ましくはイオウ促進剤系の成分として使用される。
【0109】
加硫剤は、一般的には、全ポリマー100重量部当たり0.5~10重量部、またはいくつかの実施形態において、1~6重量部の量で本ポリマー組成物に添加される。加硫促進剤の例及び全ポリマーに対して添加されるそれらの量は、WO2009/148932に記載され、該公報はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0110】
加硫ポリマー組成物及びその製造方法
本発明の第8の態様の加硫ポリマー組成物は、1種または複数種の加硫剤を含む本発明の第7の態様のポリマー組成物を、本技術分野において従来公知の条件下及び機器を用いて加硫することによって得られる。当該加硫プロセスは本発明の第9の態様を構成する。
【0111】
加硫ポリマー組成物を含む物品
本発明の加硫ポリマー組成物は、低い転がり抵抗、低い動的発熱、及び向上したウェットグリップを示すことから、例えばタイヤまたは、例えばタイヤトレッド、サイドウォール、及びタイヤカーカスを含むタイヤの部品、ならびにベルト、ホース、振動ダンパ、及び履物の構成要素などの他の工業製品の製造に用いるのに好適である。従って、本発明の第10の態様の物品は、本発明の加硫ポリマー組成物から形成された少なくとも1つの構成要素を備える。本物品は、例えば、タイヤ、タイヤトレッド、タイヤサイドウォール、タイヤカーカス、ベルト、ガスケット、シール、ホース、振動ダンパ、ゴルフボール、または靴底などの履物の構成要素であってよい。
【0112】
用語の定義
本明細書で定義されるアルキル基は、それ自体であるか、またはアルキルアリールもしくはアルコキシのように他の基と連結しているかにかかわらず、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(Pr)、n-ブチル(Bu)、n-ペンチル、n-ヘキシル、オクチル(oct)などの直鎖アルキル基、イソプロピル、tert-ブチルなどの分枝状アルキル基、及びシクロヘキシルなどの環状アルキル基の全てを包含する。
【0113】
本明細書で定義されるアリール基は、フェニル、ビフェニル、及び他のベンゼン系化合物を包含する。アリール基は、好ましくは1のみの芳香族環を含み、最も好ましくはC芳香族環を含む。
【0114】
本明細書で定義されるアルキルアリール基とは、例えばアルキル-アリール、アリール-アルキル、アルキル-アリール-アルキル、及びアリール-アルキル-アリールの形態の、1つもしくは複数のアルキル基に結合した1つまたは複数のアリール基の組み合わせをいう。アルキルアリール基は、好ましくは1つのみの芳香族環を含み、最も好ましくはC芳香族環を含む。
【0115】
本発明を実施例によってより詳細に説明するが、該実施例は本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0116】
【表1】
【0117】
1)分枝形成剤及び安定剤の調製及びキャラクタリゼーション
a)分枝形成剤
-<2-{ビス[ジメチル(ビニル)シリル]アミノ}エチル>-N,N,N-トリス[ジメチル(ビニル)シリル]エタン-1,2-ジアミン(M1)
【化14】
室温でジエチレントリアミン(3.00g、29.1mmol、1.0当量)をDCM(125ml)に溶解した。25℃でTEA(19.1g、189mmol、6.5当量)を添加し、続いてクロロジメチルビニルシラン(22.8g、189mmol、6.5当量)を滴下により添加した。この反応混合物を25℃で7日間撹拌した。ろ過及び全ての揮発分の除去により、標記化合物M1(12.0g、23.0mmol、79%、純度:91%)を黄色油状物として得た。
2453Si, M = 524.13 g mol-1
H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.29 (dd, J = 20.3 Hz, J = 14.6 Hz, 5 H), 5.94 (dd, J = 14.6 Hz, J = 3.8 Hz, 5 H), 5.74 (dd, J = 20.3 Hz, J = 3.8 Hz, 2 H), 2.99 - 2.95 (m, 4 H), 2.86 - 2.84 (m, 4 H), 0.29 (s, 24 H), 0.24 (s, 6 H) ppm。13C NMR (100 MHz, 20℃, C): δ = 141.26 (4 CH), 140.28 (CH), 132.23 (4 CH), 131.73 (CH), 53.43 (2 CH), 47.25 (2 CH), 1.09 (8 CH), -0.64 (2 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 524 (M, 0.1), 325 (100), 283 (12), 212 (100), 198 (89), 172 (5), 128 (24), 85 (82)。
【0118】
,N-(エタン-1,2-ジイル)ビス{N,N,N-トリス[ジメチル(ビニル)シリル]エタン-1,2-ジアミン}(M2)
【化15】
室温でトリエチレンテトラミン(2.00g、13.7mmol、1.0当量)をDCM(60ml)に溶解した。25℃でTEA(11.1g、109mmol、8.0当量)を添加し、続いてクロロジメチルビニルシラン(13.2g、109mmol、8.0当量)を滴下により添加した。この反応混合物を25℃で7日間撹拌した。ろ過及び全ての揮発分の除去により、標記化合物M2(6.15g、9.44mmol、69%、純度:80%の主異性体)を黄色油状物として得た。
3066Si, M = 651.40 g mol-1
H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.30 (dd, J = 20.3 Hz, J = 14.6 Hz, 4 H), 6.25 (dd, J = 20.0 Hz, J = 14.8 Hz, 2 H), 5.97 (dd, J = 14.7 Hz, J = 3.9 Hz, 2 H), 5.96 (dd, J = 14.6 Hz, J = 3.8 Hz, 4 H), 5.76 (dd, J = 20.2 Hz, J = 3.9 Hz, 2 H), 5.75 (dd, J = 20.3 Hz, J = 3.8 Hz, 4 H), 3.00-2.82 (m, 12 H), 0.30 (s, 24 H), 0.26 (s, 12 H) ppm。13C NMR (100 MHz, 20℃, C): δ = 141.14 (4 CH), 140.15 (2 CH), 132.18 (2 CH), 131.81 (4 CH), 52.74 (2 CH), 50.06 (2 CH), 46.52 (2 CH), 0.96 (8 CH), -0.91 (4 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): 主異性体 m/z (%) = 452 (M -199, 32), 369 (3), 325 (100), 256 (19), 212 (100), 198 (73), 142 (32), 85 (27);少量の異性体 m/z (%) = 452 (M -199, 100), 212 (2)。比 4.8 : 1 (GC)。
【0119】
1,4-ビス[ジメチル(ビニル)シリル]ピペラジン(M3)
【化16】
室温でピペラジン(8.00g、92.9mmol)をDCM(150ml)に溶解した。25℃でTEA(21.6g、214mmol、2.3当量)を添加し、続いてクロロジメチルビニルシラン(25.8g、214mmol、2.3当量)を滴下により添加した。この反応混合物を25℃で7日間撹拌した。ろ過及び溶媒の除去により残渣を得、これを真空蒸留により精製した。標記化合物M3(17.4g、68.4mmol、74%)を無色油状物として得た。
1226Si, M = 254.52 g mol-1
沸点=92~93℃ (5ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.14 (dd, J = 20.2 Hz, J = 14.7 Hz, 2 H), 5.94 (dd, J = 14.7 Hz, J = 4.1 Hz, 2 H), 5.73 (dd, J = 20.2 Hz, J = 4.1 Hz, 2 H), 2.97 (s, 8 H), 0.12 (s, 12 H) ppm。13C NMR (100 MHz, 20℃, C): δ = 139.34 (2 CH), 132.15 (2 CH), 47.36 (4 CH), -2.43 (4 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 254 (M, 100), 239 (M -CH, 9), 210 (2), 170 (9), 140 (20), 85 (44)。
【0120】
b)モノビニルシラン及び安定剤
ジメチル(トリエチルシロキシ)(ビニル)シラン(S1)
【化17】
トリエチルシラノール(1.70g、12.9mmol、1.0当量)及びトリエチルアミン(1.51g、14.9mmol、1.2当量)のシクロヘキサン(15ml)溶液に、室温でクロロジメチルビニルシラン(1.63g、13.5mmol、1.05当量)を滴下により添加した。この混合物を室温で16時間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、30ミリバールで蒸留してビニルシランS1(1.32g、6.1mmol、48%)を無色液体として得た。
1024OSi, M = 216.47 g mol-1
沸点=95~97℃ (30ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.20 (dd, J = 20.3 Hz, J = 14.9 Hz, 1 H), 5.90 (dd, J = 14.8 Hz, J = 3.9 Hz, 1 H), 5.76 (dd, J = 20.3 Hz, J = 4.0 Hz, 1 H), 0.99 (t, J = 7.9 Hz, 9 H), 0.55 (q, J = 7.8 Hz, 6 H), 0.20 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 139.85 (CH,ビニル), 131.72 (CH,ビニル), 7.06 (3 CH), 6.67 (3 CH), 0.60 (2 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 216 (M, 1), 187 (M -C, 100), 159 (M -C -2 CH, 69), 131 (M -CSi, 85), 59 (36)。
【0121】
ジメチル(tert-ブチルジメチルシロキシ)(ビニル)シラン(S2)
【化18】
tertブチルジメチルシラノール(12.2g、92.4mmol、1.0当量)及びトリエチルアミン(10.3g、102mmol、1.1当量)のシクロヘキサン(100ml)溶液に、室温でクロロジメチルビニルシラン(11.2g、92.4mmol、1.0当量)を滴下により添加した。この混合物を室温で18時間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、15ミリバールで蒸留してビニルシランS2(14.6g、67.4mmol、73%)を無色液体として得た。
1024OSi, M = 216.47 g mol-1
沸点=49~51℃ (15ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.17 (dd, J = 20.3 Hz, J = 14.8 Hz, 1 H), 5.89 (dd, J = 14.9 Hz, J = 4.0 Hz, 1 H), 5.75 (dd, J = 20.3 Hz, J = 4.0 Hz, 1 H), 0.94 (s, 9 H), 0.17 (s, 6 H), 0.06 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 139.75 (CH,ビニル), 131.79 (CH,ビニル), 25.89 (3 CH), 18.28 (C), 0.55 (2 CH), -2.71 (2 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 216 (M, 0.1), 201 (M -CH, 3), 159 (M -tertBu, 100), 131 (11), 145 (100), 73 (12)。
【0122】
1-[ジメチル(ビニル)シリル]-4-メチルピペラジン(S3)
【化19】
メチルピペラジン(11.0g、110mmol、1.1当量)及びLiH(0.95g、120mmol、1.2当量)のMTBE(80ml)溶液に、室温でクロロジメチルビニルシラン(12.1g、100mmol、1.0当量)を滴下により添加した。この混合物を室温で18時間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、40ミリバールで蒸留してS3(14.1g、76.5mmol、76%)を無色油状物として得た。
20Si, M = 184.36 g mol-1
沸点=55~57℃ (0.2ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.12 (dd, J = 20.2 Hz, J = 14.7 Hz, 1 H), 5.93 (dd, J = 14.7 Hz, J = 4.1 Hz, 1 H), 5.71 (dd, J = 20.2 Hz, J = 4.1 Hz, 1 H), 2.88 (t, J = 4.8 Hz, 4 H), 2.14 - 2.11 (m, 4 H), 2.11 (s, 3 H), 0.10 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 139.28 (CH, ビニル), 132.20 (CH, ビニル), 57.22 (2 CH), 47.00 (CH), 45.67 (2 CH), -2.32 (2 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 184 (M, 100), 169 (M -CH, 24), 155 (5), 140 (22), 114 (28), 85 (CSi, 42)。
【0123】
4-[(ジメチル(ビニル)シリル]モルホリン(S4)
【化20】
モルホリン(11.2g、128mmol、1.1当量)及びトリエチルアミン(14.2g、140mmol、1.2当量)のシクロヘキサン(100ml)溶液に、室温でクロロジメチルビニルシラン(14.1g、117mmol、1.0当量)を滴下により添加した。この混合物を室温で18時間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、40ミリバールで蒸留してS4(14.6g、85.0mmol、73%)を無色油状物として得た。
17NOSi, M = 171.31 g mol-1
沸点=85℃ (37ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.05 (dd, J = 20.0 Hz, J = 14.7 Hz, 1 H), 5.91 (dd, J = 14.7 Hz, J = 4.2 Hz, 1 H), 5.67 (dd, J = 20.0 Hz, J = 4.2 Hz, 1 H), 3.44 - 3.41 (m, 4 H), 2.68 - 2.66 (m, 4 H), 0.04 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 138.71 (CH,ビニル), 132.49 (CH,ビニル), 68.61 (2 CH), 45.92 (2 CH), -2.77 (2 CH) ppm. GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 171 (M, 70), 156 (M -CH, 32), 130 (19), 113 (30), 85 (CSi, 100), 59 (65)。
【0124】
(tert-ブチルジメチルシロキシ)メチル-4-モルホリノ(ビニル)シラン(S5)
【化21】
tert-ブチルジメチルシラノール(14.1g、106mmol、1.0当量)の酢酸エチル(60ml)溶液を、室温でジクロロビニルメチル-シラン(15.0g、106mmol、1.0当量)及びトリエチルアミン(21.5g、213mmol、2.0当量)のEA(200ml)溶液に滴下により添加した。この混合物を室温で14時間撹拌した。次いで、モルホリン(9.45g、108mmol、1.0当量)を添加し、この混合物を更に6時間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、3ミリバールで蒸留してS5(22.7g、78.9mmol、74%)を無色液体として得た。
1329NOSi, M = 287.55 g mol-1
沸点=95~97℃ (1ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.02 (dd, J = 19.3 Hz, J = 14.7 Hz, 1 H), 5.94 (dd, J = 14.8 Hz, J = 5.4 Hz, 1 H), 5.83 (dd, J = 19.0 Hz, J = 5.4 Hz, 1 H), 3.47 (t, J = 4.6 Hz, 4 H), 2.85 - 2.75 (m, 4 H), 0.95 (s, 9 H), 0.11 (s, 3 H), 0.07 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 137.06 (CH,ビニル), 133.73 (CH,ビニル), 68.56 (2 CH), 45.55 (2 CH), 25.92 (3 CH), 18.38 (C), -2.46 (CH), -2.75 (2 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 287 (M, 6), 272 (M -CH, 9), 230 (M -C, 100), 202 (4), 174 (6), 145 (39), 117 (16), 70 (22)。IR (ATR): λ-1 = 2953 (m), 2855 (w), 1473 (w), 1373 (w), 1256 (m), 1115 (m), 1047 (m), 963 (m), 834 (m), 775 (s), 742 (m), 684 (m) cm-1
【0125】
(tert-ブチルジメチルシロキシ)(ジブチルアミノ)メチル(ビニル)シラン(S6)
【化22】
ジクロロメチルビニルシラン(10.0g、70.9mmol、1.0当量)及びトリエチルアミン(15.8g、156mmol、2.2当量)のEA/cヘキサン(150ml)溶液に、室温でtert-ブチルジメチルシラノール(9.38g、70.9mmol、1.00当量)を滴下により添加した。この混合物を室温で2.5時間撹拌した。次いで、ジブチルアミン(9.33g、72.3mmol、1.02当量)を添加し、この混合物を更に20時間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、4ミリバールで蒸留して修飾剤S6(18.1g、54.9mmol、77%)を無色液体として得た。
1739NOSi, M = 329.67 g mol-1
沸点=133~135℃ (4ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.17 (dd, J = 20.1 Hz, J = 14.8 Hz, 1 H), 5.96 (dd, J = 14.8 Hz, J = 4.3 Hz, 1 H), 5.86 (dd, J = 20.0 Hz, J = 4.3 Hz, 1 H), 2.84 (dd, J = 8.4 Hz, J = 6.9 Hz, 4 H), 1.46 (5重項, J = 7.5 Hz, 4 H), 1.25 (6重項, J = 7.4 Hz, 4 H), 0.99 (s, 9 H), 0.91 (t, J = 7.4 Hz, 6 H), 0.25 (s, 3 H), 0.13 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 138.60 (CH,ビニル), 132.66 (CH,ビニル), 46.12 (2 CH), 32.86 (2 CH), 26.02 (3 CH), 20.73 (2 CH), 18.50 (C), 14.38 (2 CH), -1.40 (CH), -2.64 (CH), -2.65 (CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 329 (M, 4), 315 (M, 12), 286 (100), 244 (7), 215 (2), 186 (12), 133 (75), 103 (7), 73 (18)。IR (ATR): λ-1 = 3053 (w), 2956 (m), 2929 (m), 2858 (w), 1463 (w), 1252 (m), 1163 (w), 1033 (s), 834 (s), 770 (s) cm-1
【0126】
1-[(tert-ブチルジメチルシロキシ)メチル(ビニル)シリル]-4-メチルピペラジン(S7)
【化23】
ジクロロメチルビニルシラン(5.0g、35.4mmol、1.0当量)及びトリエチルアミン(7.15g、70.8mmol、2.0当量)の酢酸エチル(70ml)溶液に、室温でtert-ブチルジメチルシラノール(4.68g、35.4mmol、1.0当量)の酢酸エチル(20ml)溶液を滴下により添加した。この混合物を室温で2.5時間撹拌した。次いでN-メチルピペラジン(3.72g、37.2mmol、1.05当量)を添加し、この混合物を更に20時間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、6ミリバールで蒸留して修飾剤S7(8.57g、28.5mmol、81%)を無色液体として得た。
1432OSi, M = 300.59 g mol-1
沸点=113~115℃ (6ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.09 (dd, J = 19.7 Hz, J = 14.8 Hz, 1 H), 5.95 (dd, J = 14.8 Hz, J = 4.7 Hz, 1 H), 5.88 (dd, J = 19.7 Hz, J = 4.6 Hz, 1 H), 3.03 - 2.95 (m, 4 H), 2.20 - 2.11 (m, 4 H), 2.12 (s, 3H), 0.96 (s, 9 H), 0.17 (s, 3 H), 0.10 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 137.53 (CH,ビニル), 133.44 (CH,ビニル), 57.11 (2 CH), 46.98 (CH), 45.26 (2 CH), 25.98 (3 CH), 18.42 (C), -2.15 (CH), -2.68 (2 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 300 (M, 100), 243 (M-C, 65), 188 (13), 133 (35), 99 (8), 70 (23)。IR (ATR): λ-1 = 2955 (m), 2928 (m), 2856 (w), 2785 (w), 1472 (w), 1289 (m), 1254 (m), 1151 (m), 1050 (m), 1004 (m), 964 (m), 834 (m), 774 (s), 742 (m), 685 (m) cm-1
【0127】
(tert-ブチルジメチルシロキシ)(ジエチルアミノ)メチル(ビニル)シラン(S8)
【化24】
ジクロロメチルビニルシラン(20.1g、142mmol、1.0当量)及びトリエチルアミン(28.6g、248mmol、2.0当量)の酢酸エチル(250ml)溶液に、室温でtertブチルジメチルシラノール(18.7g、142mmol、1.0当量)の酢酸エチル(80ml)溶液を滴下により添加した。この混合物を室温で3時間撹拌した。次いで、ジエチルアミン(10.6g、145mmol、1.02当量)を添加し、この混合物を更に4時間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、4ミリバールで蒸留して修飾剤S8(27.1g、99.1mmol、70%)を無色液体として得た。
1331NOSi, M = 273.56 g mol-1
沸点=78~80℃ (4ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.15 (dd, J = 20.0 Hz, J = 14.8 Hz, 1 H), 5.95 (dd, J = 14.8 Hz, J = 4.4 Hz, 1 H), 5.86 (dd, J = 20.0 Hz, J = 4.3 Hz, 1 H), 2.84 (q, J = 7.0 Hz, 4 H), 0.99 (t, J = 7.0 Hz, 6 H), 0.98 (s, 9 H), 0.21 (s, 3 H), 0.11 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 138.47 (CH,ビニル), 132.72 (CH,ビニル), 39.80 (2 CH), 25.99 (3 CH), 18.45 (C), 16.04 (2 CH), -1.54 (CH), -2.70 (2 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 273 (M, 8), 258 (M -CH, 100), 216 (48), 186 (5), 158 (59), 145 (71), 119 (29), 73 (28)。
【0128】
(tert-ブチルジメチルシロキシ)(ジメチルアミノ)メチル(ビニル)シラン(S9)
【化25】
ジクロロメチルビニルシラン(5.00g、35.4mmol、1.0当量)及びトリエチルアミン(7.53g、74.4mmol、2.1当量)の酢酸エチル(60ml)溶液に、室温でtertブチルジメチルシラノール(4.69g、35.4mmol、1.0当量)を滴下により添加した。この混合物をこの温度で3時間撹拌し、次いでジメチルアミン(1.76g、38.9mmol、1.1当量)を0℃で添加し、この混合物を更に18時間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、24ミリバールで蒸留して修飾剤S9(6.06g、24.7mmol、70%)を無色液体として得た。
1127NOSi, M = 245.51 g mol-1
沸点=89~90℃ (24ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.11 (dd, J = 19.8 Hz, J = 14.8 Hz, 1 H), 5.96 (dd, J = 14.8 Hz, J = 4.5 Hz, 1 H), 5.87 (dd, J = 19.8 Hz, J = 4.5 Hz, 1 H), 2.47 (s 6 H), 0.97 (s, 9 H), 0.19 (s, 3 H), 0.09 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 137.56 (CH,ビニル), 133.27 (CH,ビニル), 37.56 (2 CH), 25.92 (3 CH), 18.42 (C), -2.15 (CH), -2.84 (2 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 245 (M, 6), 230 (M -CH, 10), 188 (99), 145 (100), 105 (7), 73 (20)。IR (ATR): λ-1 = 2955 (m), 2929 (w), 2888 (w), 2857 (m), 2795 (w), 1473 (w), 1254 (m), 1176 (m), 1046 (m), 890 (s), 834 (m), 780 (s), 743 (s), 687 (m) cm-1
【0129】
(tert-ブチルジメチルシロキシ)(ジオクチルアミノ)メチル(ビニル)シラン(S10)
【化26】
ジクロロメチルビニルシラン(1.50g、10.6mmol、1.0当量)及びトリメチルアミン(13%のTHF溶液、10.6g、23.4mmol、2.2当量)のEA(10+20ml)溶液に、室温でtertブチルジメチルシラノール(1.41g、10.6mmol、1.0当量)を滴下により添加した。この混合物を室温で3時間撹拌した。次いでジオクチルアミン(2.56g、10.6mmol、1.00当量)を添加し、この混合物を更に3日間撹拌した。転化率が低下することから、トリエチルアミン(1.07g、9.0mmol、0.85当量)を添加し、この混合物を室温で更に1日撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、0.4ミリバールで蒸留して修飾剤S10(2.15g、4.87mmol、46%)を無色液体として得た。
2555NOSi, M = 441.89 g mol-1
沸点=185~187℃ (0.44ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.23 (dd, J = 20.0 Hz, J = 14.8 Hz, 1 H), 5.99 (dd, J = 14.8 Hz, J = 4.4 Hz, 1 H), 5.91 (dd, J = 20.0 Hz, J = 4.4 Hz, 1 H), 2.92 (dd, J = 8.0 Hz, J = 6.8 Hz, 1 H), 1.56 (5重項, J = 7.6 Hz, 4 H), 1.33 - 1.26 (m, 20 H), 1.01 (s, 9 H), 0.91 (t, J = 6.8 Hz, 6 H), 0.30 (s, 3 H), 0.16 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 138.65 (CH, ビニル), 132.66 (CH, ビニル), 46.54 (2 CH), 32.54 (2 CH), 30.77 (2 CH), 30.17 (2 CH), 29.90 (2 CH), 27.71(2 CH), 26.08 (3 CH), 23.15 (2 CH), 18.54 (C), 14.40 (2 CH), -1.34 (CH), -2.59 (CH), -2.60 (CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 441 (M, 3), 426 (M -CH, 8), 414 (4), 384 (9), 343 (100), 286 (5), 244 (8), 186 (18), 160 (46), 133 (48), 119 (16)。IR (ATR): λ-1 = 2954 (w), 2926 (m), 2854 (m), 1463 (w), 1253 (m), 1046 (m), 834 (m), 775 (s), 685 (w) cm-1
【0130】
tert-ブチルジメチルシロキシ)(ジヘキシルアミノ)メチル(ビニル)シラン(S11)
【化27】
ジクロロメチルビニルシラン(2.54g、18.0mmol、1.00当量)及びトリメチルアミン(2.34g、39.6mmol、2.20mmol)のシクロヘキサン(35ml)溶液に、室温でtertブチルジメチルシラノール(2.34g、18.0mmol、1.00当量)を滴下により添加した。この混合物を室温で18時間撹拌した。次いで、ジヘキシルアミン(3.34g、18.0mmol、1.00当量)を添加し、この混合物を更に3日間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、4ミリバールで蒸留して修飾剤S11(6.11g、15.8mmol、88%)を無色液体として得た。
2147NOSi, M = 385.78 g mol-1
沸点=155~158℃ (4ミリバール). H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.22 (dd, J = 20.4 Hz, J = 14.8 Hz, 1 H), 5.98 (dd, J = 14.8 Hz, J = 4.4 Hz, 1 H), 5.90 (dd, J = 20.0 Hz, J = 4.4 Hz, 1 H), 2.94 - 2.87 (m, 4 H), 1.53 (5重項, J = 7.4 Hz, 4 H), 1.33 - 1.12 (m, 12 H), 1.00 (s, 9 H), 0.90 (t, J = 6.8 Hz, 6 H), 0.29 (s, 3 H), 0.15 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 138.64 (CH,ビニル), 132.68 (CH,ビニル), 46.50 (2 CH), 32.32 (2 CH), 30.70 (2 CH), 27.34 (2 CH), 26.02 (3 CH), 23.16 (2 CH), 18.50 (C), 14.32 (2 CH), -1.37 (CH), -2.62 (2 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 385 (M, 5), 370 (M -CH, 16), 315 (100), 274 (1), 244 (15), 215 (1), 202 (8), 186 (C1228, 24), 159 (74), 133 (87), 119 (32), 94 (19)。IR (ATR): λ-1 = 2956 (m), 2927 (m), 2856 (m), 1462 (w), 1253 (m), 1045 (s), 1003 (m), 834 (s), 770 (s), 745 (m), 687 (m) cm-1
【0131】
1-[(tert-ブチルジメチルシロキシ)メチル(ビニル)シリル]-4-エチルピペラジン(S12)
【化28】
ジクロロメチルビニルシラン(10.0g、70.9mmol、1.00当量)及びトリエチルアミン(17.9g、177mmol、2.50当量)のDCM(160ml)溶液に、室温でtertブチルジメチルシラノール(9.38g、70.9mmol、1.00当量)を滴下により添加した。この混合物を室温で3時間撹拌した。次いでN-エチルピペラジン(8.10g、70.9mmol、1.00当量)を添加し、この混合物を更に18時間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、4ミリバールで蒸留して修飾剤S12(19.4g、61.7mmol、87%)を無色液体として得た。
1534OSi, M = 314.62 g mol-1
沸点=125~130℃ (4ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.11 (dd, J = 19.6 Hz, J = 14.8 Hz, 1 H), 5.97 (dd, J = 14.8 Hz, J = 4.8 Hz, 1 H), 5.90 (dd, J = 19.6 Hz, J = 4.8 Hz, 1 H), 3.06 - 2.97 (m, 4 H), 2.25 (q, J = 7.2 Hz, 2 H), 2.27 - 2.18 (m, 4 H), 0.99 (t, J = 7.2 Hz, 2 H), 0.98 (s, 9 H), 0.19 (s, 3 H), 0.11 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 137.56 (CH,ビニル), 133.45 (CH,ビニル), 55.09 (2 CH), 53.24 (CH), 45.40 (2 CH), 25.98 (3 CH), 18.44 (C), 12.34 (CH), -2.15 (CH), -2.67 (2 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 314 (M, 100), 299 (M -CH, 53), 257 (37), 230 (34), 201 (20), 159 (36), 133 (50), 72 (37)。IR (ATR): λ-1 = 2955 (m), 2901 (w), 2804 (w), 1472 (w), 1377 (w), 1253 (m), 1152 (m), 1048 (m), 976 (s), 834 (m), 776 (s), 742 (m), 684 (m), 651 (w) cm-1
【0132】
4-ベンジル-1-[(tert-ブチルジメチルシロキシ)メチル(ビニル)シリル]ピペラジン(S13)
【化29】
ジクロロメチルビニルシラン(6.65g、47.1mmol、1.00当量)及びトリエチルアミン(11.9g、118mmol、2.50当量)のDCM(120ml)溶液に、室温でtertブチルジメチルシラノール(6.24g、47.1mmol、1.00当量)を滴下により添加した。この混合物を室温で3時間撹拌した。次いでN-ベンジルピペラジン(8.31g、47.1mmol、1.00当量)を添加し、この混合物を更に18時間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、0.5ミリバールで蒸留して修飾剤S13(12.3g、32.7mmol、69%)を無色液体として得た。
2036OSi, M = 376.69 g mol-1
沸点=155~158℃ (0.5ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 7.35 (d, J = 6.8 Hz, 2 H), 7.21 - 7.18 (m, 2 H), 7.13 - 7.09 (m, 1 H), 6.08 (dd, J = 20.0 Hz, J = 14.8 Hz, 1 H), 5.95 (dd, J = 14.8 Hz, J = 4.8 Hz, 1 H), 5.87 (dd, J = 19.6 Hz, J = 4.8 Hz, 1 H), 3.34 (s, 2 H), 2.98 - 2.93 (m, 4 H), 2.20 - 2.24 (m, 4 H), 0.97 (s, 9 H), 0.16 (s, 3 H), 0.10 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 139.24 (C), 137.50 (CH,ビニル), 133.44 (CH,ビニル), 129.36 (2 CH), 128.48 (2 CH), 127.21 (CH), 64.11 (CH,ベンジル), 55.37 (2 CH), 45.31 (2 CH), 25.98 (3 CH), 18.43 (C), -2.19 (CH), -2.69 (2 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 376 (M, 92), 361 (M -CH, 16), 335 (29), 285 (36), 230 (55), 188 (21), 159 (43), 133 (55), 91 (C , 100)。IR (ATR): λ-1 = 2954 (m), 2928 (m), 2798 (w), 1471 (w), 1378 (w), 1253 (m), 1132 (m), 1049 (m), 1001 (m), 966 (m), 834 (m), 775 (s), 736 (s), 696 (m) cm-1
【0133】
(tert-ブチルジメチルシロキシ)(ジベンジルアミノ)メチル(ビニル)シラン(S14)
【化30】
ジクロロメチルビニルシラン(10.0g、70.9mmol、1.00当量)及びトリエチルアミン(15.8g、156mmol、2.20当量)のヘキサン(180ml)溶液に、室温でtertブチルジメチルシラノール(9.38g、70.9mmol、1.00当量)を滴下により添加した。この混合物を室温で3時間撹拌した。次いで、ジベンジルアミン(14.0g、70.9mmol、1.00当量)を添加し、この混合物を2日間撹拌した。GC分析により、所望の化合物への転化率がわずか11%であることが明らかになったことから、溶媒交換を行った。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、DCM(150ml)を加えた。更にTMA溶液(10%のTHF溶液)を添加し(33g、71mmol、1.0当量)、この反応混合物を室温で3日間撹拌した。ろ過後に全ての揮発分を減圧下で除去した。0.5ミリバールで蒸留して修飾剤S14(20.0g、50.3mmol、71%)を無色液体として得た。
2335NOSi, M = 397.71 g mol-1
沸点=167~170℃ (0.5ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20°C, C): δ = 7.26 - 7.09 (m, 10 H), 6.21 (dd, J = 20.4 Hz, J = 15.2 Hz, 1 H), 5.94 (dd, J = 15.0 Hz, J = 4.0 Hz, 1 H), 5.89 (dd, J = 20.4 Hz, J = 4.0 Hz, 1 H), 3.96 (AB系のA部, J = 15.6 Hz, 2 H), 3.92 (AB系のB部, J = 15.7 Hz, 2 H), 0.98 (s, 9 H), 0.32 (s, 3 H), 0.11 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 140.76 (2 C), 137.68 (CH,ビニル), 133.63 (CH,ビニル), 128.53 (4 CH), 128.39 (4 CH), 126.97 (2 CH), 49.08 (2 CH), 26.02 (3 CH), 18.51 (C), -1.56 (CH), -2.66 (CH), -2.67 (CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 397 (M, 5), 382 (M -CH, 4), 340 (M-C, 100), 221 (11), 181 (3), 145 (24), 91 (C , 60)。IR (ATR): λ-1 = 3030 (w), 2954 (m), 2927 (w), 2855 (w), 1494 (w), 1453 (w), 1365 (w), 1255 (m), 1058 (s), 956 (m), 834 (m), 776 (s), 696 (s), 649 (m) cm-1
【0134】
tertブチルジメチルシロキシ)(ジアリルアミノ)メチル(ビニル)シラン(S15)
【化31】
ジクロロメチルビニルシラン(10.0g、70.9mmol、1.00当量)及びトリエチルアミン(17.9g、177mmol、2.50当量)のジクロロメタン(120ml)溶液に、室温でtertブチルジメチルシラノール(9.38g、70.9mmol、1.00当量)を滴下により添加した。この混合物を室温で3時間撹拌した。次いでジアリルアミン(6.89g、70.9mmol、1.00当量)を添加し、この混合物を更に18時間撹拌した。ろ過後に溶媒を減圧下で除去し、4ミリバールで蒸留して修飾剤S15(17.7g、59.5mmol、84%)を無色液体として得た。
1531NOSi, M = 297.59 g mol-1
沸点=96~98℃ (4ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.11 (dd, J = 20.0 Hz, J = 14.8 Hz, 1 H), 5.93 (dd, J = 14.8 Hz, J = 4.4 Hz, 1 H), 5.85 (dd, J = 20.0 Hz, J = 4.4 Hz, 1 H), 5.73 (ddt, J = 17.2 Hz, J = 10.0 Hz, J = 5.6 Hz, 2 H), 5.11 (dq, J = 17.2 Hz, J = 1.7 Hz, 2 H), 5.05 (ddt, J = 10.0 Hz, J = 2.0 Hz, J = 1.2 Hz, 2 H), 3.45 - 3.43 (m, 4 H), 0.96 (s, 9 H), 0.21 (s, 3 H), 0.10 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 138.00 (CH,ビニル), 137.81 (2 CH,アリル), 133.24 (CH,ビニル), 115.46 (2 CH,アリル), 48.45 (2 CH), 25.96 (3 CH), 18.43 (C), -1.73 (CH), -2.71 (CH), -2.72 (CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 297 (M, 13), 282 (M -CH, 37), 270 (49), 240 (100), 198 (32), 159 (47), 145 (64), 133 (65), 119 (40), 103 (15), 73 (39)。IR (ATR): λ-1 = 2954 (w), 2855 (w), 1406 (w), 1254 (m), 1046 (m), 1004 (m), 914 (m), 834 (m), 776 (s) cm-1
【0135】
4-エチル-1-(ジメチル(2-メチレンブタ-3-エン-1-イル)シリル)ピペラジン(S16)
【化32】
1-((クロロメチル)ジメチルシリル)-4-エチルピペラジンを、(クロロメチル)ジメチルクロロシラン及びN-エチルピペラジンを用いて調製した。クロロ-プレンを3,4-ジクロロブタ-1-エン及び水酸化カルシウムを用い、文献[EP646561]に従って調製した。
【0136】
以下のアミノシラン官能化ジエンを、Sakurai [Sakurai et al. Tetrahedron 1983, 39, 883-894.]の改変した手順に従って調製した。
ステップ1:不活性条件下で、丸底フラスコに、粉砕した直後の削り屑状Mg(1.15g、47.5mmol、1.10当量)及び触媒量のジブロモエタン及びZnCl(THF溶液)を50mLのTHFと共に仕込んだ。温度を55℃に設定し、1-((クロロメチル)-ジメチルシリル)-4-エチルピペラジン(10.00g、45.3mmol、1.05当量)を上記反応混合物に滴下により添加した。次いで、この反応混合物を還流下で15分間、その後50℃で3時間撹拌した。この後、この反応混合物を不活性ガス条件下でろ過し、ステップ2の溶液として用いた。
ステップ2:不活性ガス条件下で、蒸留直後のクロロプレン(3.82g、43.1mmol、1.00当量)を50mLのTHFに溶解し、室温で1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンニッケル(II)クロリド(1.2g、2.2mmol、0.05等量)を添加し、続いて室温で1時間撹拌した。次いでステップ1で調製した溶液を滴下により添加し、この反応混合物を室温で終夜撹拌した。溶媒を除去し、次いで残渣をシクロヘキサンに溶解し、塩をろ去した。残った溶液の溶媒を再度除去した。真空蒸留により、S16(4.42g、43%)を無色油状物として単離した。
1326Si, Mw = 238.45 g mol-1
沸点=69℃ (0.001ミリバール)。H NMR (400 MHz, 20℃, C): δ = 6.39 (dd, J = 17.3 Hz, J = 10.8 Hz, 1 H), 5.15 (d, J = 17.3 Hz, 1 H), 5.00 (d, J = 10.8 Hz, J = 4.8 Hz, 1 H), 4.96 - 4.93 (m, 1 H), 4.89 - 4.86 (m, 1 H), 2.86 (t, J = 4.9 Hz, 4 H), 2.25 (q, J = 7.3 Hz, 2 H), 2.24 - 2.13 (m, 4 H), 1.73 (s, 2 H), 1.01 (t, J = 7.3 Hz, 3 H), 0.08 (s, 6 H) ppm。13C NMR (101 MHz, 20℃, C): δ = 144.44 (C,ブタジエニル), 140.49 (CH,ブタジエニル), 114.90 (CH,ブタジエニル), 113.68 (CH,ブタジエニル), 55.20 (2 CH), 53.26 (CH), 45.86 (2 CH), 21.47 (CH 12.34 (CH), -2.17 (2 CH), -2.67 (2 CH) ppm。GC-MS (EI, 70 eV): m/z (%) = 238 (M, 100), 171 (63), 142 (28), 114 (33), 84 (51), 59 (43)。IR (ATR): λ-1 = 3084 (m), 2953 (w), 2815 (w), 1587 (s), 1447 (w), 1377 (m), 1307 (m), 1247 (s), 1151 (m), 1102 (m), 1032 (m), 990 974 (m), 899 (m), 874 (m), 830 (s), 656 (s) cm-1
【0137】
*)化合物S1及びS2は式2の範囲外であり、貯蔵安定性の向上に有効ではないことが判っている。
【0138】
2)重合手順
概括的な重合手順:例Ex1~Ex4
シクロヘキサン(表1~5に示す量)、ブタジエン(表1~6に示す量の98.3%)、及びスチレン(表に示す量)を、空気を含まない10l(または5l)の反応器に仕込み、撹拌した混合物を40℃まで加熱した。次いで、TMEDA(量は表に示す)及び分枝形成剤(BA)(表1~5に量及び修飾剤を示す)を添加し、n-ブチルリチウムを滴下により添加し、上記反応混合物の色がやや黄色に変わるまで反応させた(滴定)。その後、ポリマーの目標分子量に対応する処方量の開始剤のシクロヘキサン溶液を直ちに添加して重合を開始した。開始剤の添加開始時刻を重合の開始時刻として用いた。同時に、開始剤の添加と共に開始した反応器壁中での加熱または冷却によって、80分間、60℃の最終重合温度まで温度を上昇させた。次いで、ブタジエン(表に示す量の1.7%)を添加した。5分後に、連鎖末端修飾剤3-メトキシ-3,8,8,9,9-ペンタメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン(2f)(表1に示す量)を添加した。20分後にメタノールの添加により反応を停止させた。このポリマー溶液をイルガノックス1520Dで安定化させ、スチームストリッピングによりポリマーを回収し、残留揮発分含有率が<0.6%となるまで乾燥した。試料の全てのデータ一式を表1に示す。
【0139】
重合手順:例A~E
シクロヘキサン(表2に示す量)、ブタジエン(A~D:表1に示す量の100%、E:全量の98%)を、空気を含まない10lの反応器に仕込み、撹拌した混合物を40℃まで加熱した。次いで、TMEDA(表2に示す量)、及び分枝形成剤M(表2に示す量)、ならびに任意選択の安定剤S(表2に示す量)を添加し、n-ブチルリチウムを滴下により添加し、上記反応混合物の色がやや黄色に変わるまで反応させた(滴定)。その後、ポリマーの目標分子量に対応する処方量のNBのシクロヘキサン溶液を直ちに添加して重合を開始した。開始剤の添加開始時刻を重合の開始時刻として用いた。同時に、開始剤の添加と共に開始した反応器壁中での加熱または冷却によって、30分間、60℃の最終重合温度まで温度を上昇させた。この反応混合物を60℃で約60分間更に撹拌した。Eに関しては、ブタジエン(表2に示す量の2%)を添加し、この混合物を更に5分間撹拌した。次いで末端修飾剤を添加し、この混合物を更に20分間撹拌した。次いでメタノールの添加により反応を停止させた。このポリマー溶液をイルガノックス1520Dで安定化させた。試料の全てのデータ一式を表2に示す。
【0140】
重合手順:例F~I
シクロヘキサン(表3に示す量)、ブタジエン(全量の98%)を、空気を含まない10lの反応器に仕込み、撹拌した混合物を40℃まで加熱した。次いで、TMEDA(表3に示す量)、及び分枝形成剤M(表3に示す量)、ならびに任意選択の安定剤S(表3に示す量)を添加し、n-ブチルリチウムを滴下により添加し、上記反応混合物の色がやや黄色に変わるまで反応させた(滴定)。その後、ポリマーの目標分子量に対応する処方量のNBのシクロヘキサン溶液を直ちに添加して重合を開始した。開始剤の添加開始時刻を重合の開始時刻として用いた。同時に、開始剤の添加と共に開始した反応器壁中での加熱または冷却によって、30分間、60℃の最終重合温度まで温度を上昇させた。この反応混合物を60℃で約60分間更に撹拌した。ブタジエン(表3に示す量の2%)を添加し、この混合物を更に5分間撹拌した。次いで末端修飾剤を添加し、この混合物を更に20分間撹拌した。次いでメタノールの添加により反応を停止させた。このポリマー溶液をイルガノックス1520Dで安定化させた。試料の全てのデータ一式を表3に示す。
【0141】
重合手順:例J~L
シクロヘキサン(表4に示す量)、ブタジエン(全量の100%)を、空気を含まない10lの反応器に仕込み、撹拌した混合物を40℃まで加熱した。次いで、TMEDA(表4に示す量)、及び分枝形成剤M(表4に示す量)、ならびに任意選択の安定剤S(表4に示す量)を添加し、n-ブチルリチウムを滴下により添加し、上記反応混合物の色がやや黄色に変わるまで反応させた(滴定)。その後、ポリマーの目標分子量に対応する処方量のNBのシクロヘキサン溶液を直ちに添加して重合を開始した。開始剤の添加開始時刻を重合の開始時刻として用いた。同時に、開始剤の添加と共に開始した反応器壁中での加熱または冷却によって、15分間、60℃の最終重合温度まで温度を上昇させた。この反応混合物を60℃で約60分間更に撹拌した。次いで末端修飾剤を添加し、この混合物を更に20分間撹拌した。次いでメタノールの添加により反応を停止させた。このポリマー溶液をイルガノックス1520Dで安定化させた。試料の全てのデータ一式を表4に示す。
【表2】
例Ex1~Ex3は安定化されていない比較例である。Ex4は安定剤S6で安定化されている。
【表3】
ポリマーAは、非安定化修飾剤S2を有するポリマーBに対して中程度の安定化を示す。ポリマーDは安定化されていない比較例である。ポリマーEは、安定化されていない、連鎖末端を官能化した比較例である。
【表4】
【表5】
NB=nBuLi、2f=3-メトキシ-3,8,8,9,9-ペンタメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、Bu-2f=[3-(ブチルチオ)プロピル]ジメトキシ(メチル)シラン、Si1=ジメトキシジメチルシラン、Si4=3-クロロプロピルジメトキシメチルシラン。
【0142】
凝固ゴムの貯蔵安定性:
70℃での貯蔵試験用の乾燥器:「Memmert 800型」、70℃で空気循環。
分析機器:
分子量の分析は、HEWLETT PACKARD HP 1100を用いたSEC/RIによって実施した。溶離液であるTHFをオンラインで脱気した。溶媒の流速は1.0ml/分であった。1回の分析当たり100μLのポリマー溶液を注入した。分析は40℃で行った。分子量は、まずポリスチレンによる較正に基づいて算出し、ポリスチレンとして表に示した。真の分子量(SSBRの分子量)は、SEC/RIによる分子量とSEC/MALSによる分子量の間の事前の比較から導かれた係数で除すことによって求めることができる。上記係数の値は、ポリマー組成(スチレン及びブタジエン含有率)及びある程度までは分子量に依存する。21%及び30%のスチレンを含むSSBRに対しては1.52の係数を用いることができる。スチレン含有率が0%のSBRに対しては1.84の係数を用いることができる。16%のスチレンを含むSSBRに対しては1.56の係数を用いることができる。45%のスチレンを含むSSBRに対しては1.41の係数を用いることができる。
【0143】
NMR分光法は、BRUKER Avance 400上、5mmのBBOプローブ中で行った。溶媒、周波数、及び温度はキャラクタリゼーションデータ中に示す。
【0144】
全反射法で測定したFTIR分光法を用いて、ビニル含有率及びスチレン含有率を測定した。
【0145】
ガラス転移温度は、DSC Q2000を用い、以下の条件下で測定した。
重量:約10~12mg
試料容器:Alu/S
温度範囲:(-140...80)℃
昇温速度:20K/分それぞれ5K/分
冷却速度:放冷
パージガス:20mlのAr/分
冷却剤:液体窒素
【0146】
各試料を少なくとも1回測定した。測定は2回の加熱操作を含む。2回目の加熱操作を用いてガラス転移温度を測定した。
【0147】
ロータレスせん断レオメーター(MDR 2000E)を用いて、ASTM D5289-95に準拠した未加硫でのレオロジー特性の測定を行って、硬化特性をキャラクタライズした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7