(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】開閉体開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F  11/48        20060101AFI20220105BHJP        
   B60J   1/17        20060101ALI20220105BHJP        
【FI】
E05F11/48 D 
B60J1/17 A 
(21)【出願番号】P 2019056945
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高岡  宏幸
【審査官】砂川  充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-115373(JP,U)      
【文献】国際公開第2015/064266(WO,A1)    
【文献】特開2005-307529(JP,A)      
【文献】実開平05-014469(JP,U)      
【文献】実開昭58-064778(JP,U)      
【文献】特開2017-48517(JP,A)      
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F  1/00-15/77
B60J  1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  開閉体を保持するキャリアプレートと、
  前記開閉体の昇降方向における前記キャリアプレートの移動を案内するガイドレールと、を有し、
  前記キャリアプレートは、上方から前記キャリアプレートの上端部に到来する水分を保持する水保持部を上端部に有し、
  前記水保持部は、
    上方に面して到来する前記水分を受ける水受部と、
    前記水受部に面して前記ガイドレールへの前記水分の流出を抑制する抑制面が設けられた流出抑制部と、
            
前記水受部の前記ガイドレール側とは逆側に、水平方向に対して上がり勾配で前記ガイドレールとは逆側に延出する延出面と、
            
  を有する、
  開閉体開閉装置。
【請求項2】
  前記キャリアプレートは、前記キャリアプレートの側方または下方に排出する排水部を有し、
  前記排水部は、前記水保持部の前記水分を排水可能に前記水保持部に接続する接続部を有する、
  請求項1に記載の開閉体開閉装置。
【請求項3】
            前記排水部は、前記キャリアプレートの裏面側から表面側に下り勾配で傾斜する傾斜面で形成されている、
            
  請求項
2に記載の開閉体開閉装置。
【請求項4】
  前記流出抑制部は、前記水受部のガイドレール側において立設した、
  請求項1
から3のいずれか一項に記載の開閉体開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、キャリアプレートを介して開閉体を昇降する開閉体開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
  開閉体を保持するキャリアプレートを移動することにより、開閉体を昇降して開口部を開閉する開閉体開閉装置の一例として、車両に取り付けられるウインドウレギュレータが知られている。
【0003】
  ウインドウレギュレータは、ワイヤを介してキャリアプレートに駆動源の駆動力を伝達することで、キャリアプレートが保持する窓ガラスを移動させるものである。例えば、特許文献1に記載のウインドウレギュレータは、窓ガラスを保持するキャリアプレートと、キャリアプレートの移動を案内するガイドレールと、駆動部と、駆動部の駆動力により回転するドラムと、ドラムに一端が連結され、他端がキャリアプレートに連結されるワイヤと、を備える。
【0004】
  ウインドウレギュレータでは、車両の窓ガラスを伝わってドア内部に侵入する雨水等の水分が、キャリアプレートを介してガイドレール或いはワイヤに付着する可能性がある。
  ガイドレール或いはワイヤに付着した水分は、ガイドレール或いはワイヤを伝って下方へ流れて、駆動部或いはドラムに到達し、これらに錆を発生させる恐れがある。
【0005】
  このため、特許文献1のウインドウレギュレータは、キャリアプレートの上端部に、キャリアプレートの幅方向に延在する庇を設けている。さらに、鉛直下方向にガイドレールとインナーケーブルとが存在する存在位置の水平方向にわたって、庇や窓ガラスが取り付けられる部位から流れてきた水を、ガイドレール及びインナーケーブルの双方に当たらないように排出する案内部を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
  しかしながら、従来のウインドウレギュレータでは、窓が開口した状態でドア内に侵入してきた雨水等の水分が、キャリアプレートがガイドレールを摺動する際の振動等で、庇の上からガイドレール側に移動する可能性がある。また、特に湾曲したガイドレールを用いた場合には、キャリアプレートがガイドレールの上端部付近に位置する際に、ガイドレール側が下側となるように庇が傾いて、庇により下方への落下を抑制された雨水等の水分がガイドレールへと移動してしまう。これらの場合には、庇から移動した雨水等の水分により、雨水等でガイドレールが濡れてしまうおそれがある。
【0008】
  本発明の目的は、保持する開閉体から伝わってキャリアプレートに付着した雨水等の水分が、ガイドレールに付着することを抑制する開閉体開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
  本発明の開閉体開閉装置は、
  開閉体を保持するキャリアプレートと、
  前記開閉体の昇降方向における前記キャリアプレートの移動を案内するガイドレールと、を有し、
  前記キャリアプレートは、上方から前記キャリアプレートの上端部に到来する水分を保持する水保持部を上端部に有し、
  前記水保持部は、
    上方に面して到来する前記水分を受ける水受部と、
    前記水受部に面して前記ガイドレールへの前記水分の流出を抑制する抑制面が設けられた流出抑制部と、
               前記水受部の前記ガイドレール側とは逆側に、水平方向に対して上がり勾配で前記ガイドレールとは逆側に延出する延出面と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
  本発明によれば、保持する開閉体から伝わってキャリアプレートに付着した雨水等の水分が、ガイドレールに付着することを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
            【
図1】本発明の実施の形態に係る開閉体開閉装置を示す全体図である。
 
            【
図2】本発明の実施の形態に係る開閉体開閉装置の一部を分解した部分斜視図である。
 
            【
図3】本発明の実施の形態に係る開閉体開閉装置のキャリアプレートを示す正面図である。
 
            
            【
図5】キャリアプレートの水避け動作を模式的に示す部分断面図である。
 
            【
図6】水保持部で溜まる水分の許容量を超えた場合の水分の流れの概略を示す図である。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0012】
  以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<開閉体開閉装置の全体構成>
  本実施の形態の開閉体開閉装置は、開口部を備える取付対象に取り付けられ、キャリアプレートを移動させることで、キャリアプレートが保持する開閉体を昇降により開口部を開閉する装置である。本実施の形態では、開閉体開閉装置は、取付対象の一例である車両のドアのインナーパネルとアウターパネルとの間に固定され、開閉体の一例である窓ガラスを昇降する装置、所謂、ウインドウレギュレータとして説明する。なお、開閉体開閉装置は、キャリアプレートの移動を案内して、キャリアプレート20に保持される開閉体を昇降させる装置であれば、ウインドウレギュレータに限らず、他の装置にも適用可能である。
【0014】
  図1は、背面側から見た開閉体開閉装置の全体図である。
図1に示す開閉体開閉装置1は、キャリアプレート20にガラスホルダ13を介して保持された開閉体Wである窓ガラスを昇降移動させる。開閉体開閉装置1は、開閉体Wを移動させることができ、この移動により開口部である窓の遮蔽状態と開放状態とを切り替える。
  開閉体開閉装置1は、例えば、車両のドアパネルに、ガイドレール30のブラケット(図示省略)、ハウジングの固定部図示省略)を用いて取り付けられる。なお、本実施の形態においては、特に断らない限り、ウインドウレギュレータのガイドレール30の長手方向を上下方向とし、ウインドウレギュレータが支持する開閉体Wである窓ガラスのガラス面に平行で、前記上下方向に垂直な方向を左右方向として説明する。
 
【0015】
  開閉体開閉装置1は、開閉体Wとしての窓ガラスを接続するガラスホルダ13が設けられるキャリアプレート20と、ガイドレール30と、上ジョイント部材41が備える方向転換部40と、ケーブル60と、駆動部70と、ドラム部材80と、ドラムハウジング82と、を備える。
【0016】
<上ジョイント部材41(方向転換部40)>
  上ジョイント部材41は、例えば樹脂により構成され、ガイドレール30の上端に接続される。上ジョイント部材41には、ボルトなどの締結部材(図示省略)により車両のドアに締結される締結部41aが設けられている。締結部41aには、締結部材が挿通される挿通孔などが設けられている。締結部41aが、車両のドアのインナーパネルまたはアウターパネル等に締結されることで、上ジョイント部材41が車両のドアに固定される。上ジョイント部材41は、上昇用ケーブル61が捲き掛けられて上昇用ケーブル61の移動方向を転換する方向転換部40を有する。
【0017】
  方向転換部40は、円弧状に設けられたガイド溝であり、上昇用ケーブル61は方向転換部40を摺動して移動方向が転換する。方向転換部40は、上昇用ケーブル61の一端側を下方に引き下げる運動を、他端側を上方に引き上げる運動に転換する。方向転換部40としては、上ジョイント部材41の本体部に回転可能に設けられたプーリを採用してもよい。
【0018】
<ドラム部材80>
  ドラム部材80は、駆動部70と接続され、ケーブル60が巻回される。ドラム部材80は、ケーブル60の端末部材が固定され、ケーブル60の巻き取りおよびケーブル60の繰り出しを行う。ドラム部材80は、本実施の形態では、ケーブル60の端部の端末部材を収容する係止部(図示省略)を有し、ハウジング内に回転可能に収容されている。ドラム部材80は、駆動部70の回転駆動により、順方向の回転と、逆方向の回転とを行う。ドラム部材80は、ケーブル60を介してキャリアプレート20に接続される。ドラム部材80は、例えば、樹脂等により構成される。
【0019】
  本実施の形態では、ドラム部材80は、ケーブル60である上昇用ケーブル61と下降用ケーブル62のケーブルエンドが接続され、それぞれを収容する。ドラム部材80は、順方向の回転と、逆方向の回転とを行うことにより、上昇用ケーブル61と下降用ケーブル62の巻き取りおよび繰り出しを行う。本実施の形態のドラム部材80は、上昇用ケーブル61と下降用ケーブル62とが、互いに逆向きに捲かれる。ドラム部材80は、回転方向によって、上昇用ケーブル61を巻き込んで上昇用ケーブル61を引っ張るか、下降用ケーブル62を巻き込んで下降用ケーブル62を引っ張る。本実施の形態のドラム部材80は、ガイドレール30の下端部において、上昇用ケーブル61と下降用ケーブル62の双方に接続されていることにより、駆動部70によって回転させられることでケーブル60を介してキャリアプレート20を移動させる。
【0020】
<ドラムハウジング82>
  ドラムハウジング82は、例えば樹脂により構成され、ドラム部材80を回転可能に収容する。ドラムハウジング82には、駆動部70が固定され、また、ガイドレール30の下端部が接続されており、車両のドアに締結される締結部も有している。
【0021】
<駆動部70>
  駆動部70は、ドラム部材80と接続しドラム部材80を回転させる駆動力をドラム部材80に供給する。駆動部70は、駆動源の駆動によりドラム部材80が回転するように、ドラム部材80を駆動させるための、電源等の駆動源に接続する。駆動部70は、駆動源のエネルギー等によりドラム部材80を回転し、ケーブル60を巻き取ったり、ケーブル60を繰り出したりする。
【0022】
  駆動部70は、例えば、電源のオンオフによって駆動するモーターを含み、接続されたドラム部材80を回転させる。駆動部70は、モーターハウジングに収容され、モーターハウジングを介してドア等の取付対象である基体に固定される。本実施の形態では、モーターハウジングは、ドラムハウジング82に固定されている。本実施の形態では、駆動部70は、ドアのパネル内においてドアパネルの下端部に配置している。
【0023】
  本実施の形態の駆動部70は、バッテリから供給される電流により電気的に駆動するモーターである。駆動部70のモーターは、出力軸を所定の回転角度でロックできる所謂クラッチ機能を有することが望ましい。
【0024】
  駆動部70は、モーター軸をドラム部材80の中心部に嵌合し、モーター軸の回転によりドラム部材80を回転する。なお、モーターとドラム部材80とは、例えば、ウォームギア等の動力伝達部を介してモーターの回転運動をドラム部材80に伝達する。駆動部70であるモーターは、順方向と逆方向とに回転駆動し、これによりドラム部材80が順方向と逆方向とに回転する。
【0025】
  なお、本実施の形態では、駆動部70及びドラム部材80をガイドレール30の下端側に配置した構成としたが、これに限らない。駆動部70及びドラム部材80は、ケーブル60を介してキャリアプレート20を昇降可能であればどのような位置に配置し、どのようにケーブル60を配索しても良い。例えば、駆動部70により回転するドラム部材80を、上端位置および下端位置の間の高さの位置に設けて、この位置のドラム部材80から巻き取り繰り出しするケーブル60を介してキャリアプレート20を上昇下降させる構成としてもよい。
【0026】
<ケーブル60>
  ケーブル60は、キャリアプレート20に端部が接続される。ケーブル60は、ドラム部材80の回転によって巻取りと繰出しとがされる。ケーブル60は、キャリアプレート20を操作して、移動させる。ケーブル60は、両端の端末部材でドラム部材80およびキャリアプレート20にそれぞれ係止する。これらの係止の構造では、ドラム部材80の回転時においても、両端の端末部材が、それぞれドラム部材80およびキャリアプレート20のそれぞれから外れないように係合すればどのように係合されてもよい。
【0027】
  本実施の形態では、ケーブル60は、上昇用ケーブル61と、下降用ケーブル62とを有する。
  上昇用ケーブル61は、一端がドラム部材80に接続され、中間部が上ジョイント部材41の方向転換部40に掛けられ、他端がキャリアプレート20に接続される。ドラム部材80が上昇用ケーブル61を巻き取る方向に回転することで、上昇用ケーブル61が引かれ、方向転換部40を経由してキャリアプレート20を引き上げる。
  下降用ケーブル62は、一端がドラム部材80に接続され、他端がキャリアプレート20に接続される。ドラム部材80が下降用ケーブル62を巻き取る方向に回転することで、下降用ケーブル62が引かれて、キャリアプレート20を引き下げる。
【0028】
<ガイドレール30>
  ガイドレール30は、開閉体Wの昇降方向におけるキャリアプレート20の移動を案内する。ガイドレール30は、キャリアプレート20の移動方向に長く延びるレールであり、キャリアプレート20を昇降経路に沿って移動可能に支持する。本実施の形態では、ガイドレール30は、開閉体Wの昇降軌跡に対応して車両ドアに設けられており、例えば、車両の鉛直方向に対して車両後方側へ傾斜して設けられる。
  ガイドレール30は、典型的には、金属プレートから構成され、金属プレートを長手方向に沿って延びる折り曲げた形状を有する。
【0029】
  具体的には、ガイドレール30は、横断面の形状がコの字状(図2を参照)となる凹状のガイド部本体32と、ガイド部本体32の幅方向の両側部に設けられ、キャリアプレート20と摺動可能に係合するガイド部32cとを有する。
【0030】
  ガイドレール30では、
図2に示すように、ガイド部本体32は、側面視して、一方の面(便宜上、「表面32a」とする)側が凸状となり、他方の面(便宜上、「裏面32b」とする)側が凹状となる湾曲形状に構成されている。キャリアプレート20は、ガイドレール30の表面32a側、つまり、凸状面側で、ガイド部32cに係合し、ガイド部本体32に摺動自在に取り付けられている。
 
【0031】
<開閉体W>
  開閉体Wは、キャリアプレート20に接続され、キャリアプレート20の移動により昇降して所定の開口部(例えば、ドア本体に設けられた開口)を開閉する。開閉体Wは、開口部の遮蔽状態と、開放状態とを切り替える。
【0032】
  本実施の形態では、開閉体Wは窓ガラスである。なお、窓ガラスは、図示しない開口部を規定するドアサッシュに対して摺動し、ドアサッシュにより支持されるようにしてもよい。
【0033】
  開閉体Wは、キャリアプレート20がガイドレール30の上端側の位置に案内されることにより開口部を遮蔽状態とし、キャリアプレート20がガイドレール30の上端側の位置から下端側の位置に案内されるに従って開口部を開放状態にする。
【0034】
  開閉体Wは、本実施の形態では、ケーブル60の巻き取り繰り出しによって移動するキャリアプレート20により移動する。開閉体Wは、窓ガラスとしたが、例えば、ガラス以外に、金属、樹脂等により形成されたパネルとしてもよい。
【0035】
<キャリアプレート20>
  図1および
図2に示すキャリアプレート20は、開閉体Wに接続し、ガイドレール30により、その移動が案内される。キャリアプレート20は、上端部20bに取り付けられるガラスホルダ13を介して接続される。キャリアプレート20は、開閉体Wを保持した状態で昇降移動する。キャリアプレート20は、開閉体Wで窓を完全に遮蔽して締め切りする状態とする上側位置と、窓を全開放する状態とする下側位置との間を移動する。キャリアプレート20は、窓を締め切りする状態から開状態となるように下側へと移動する際に、開閉体Wと供にドア内(図示せず)へと移動する。
 
【0036】
  キャリアプレート20は、湾曲したガイドレール30の表面32a上を駆動部70の駆動により移動し、ガイドレール30の湾曲に応じて、姿勢を変化させる。キャリアプレート20は、開閉体Wの下側に接続した状態でガイドレール30の表面32a上を移動させられる。
【0037】
  キャリアプレート20は、ケーブル60の端部を収容するエンド収容部21、22を有する。
【0038】
  本実施の形態では、キャリアプレート20は、所定厚を有する板状のプレート本体20aを有し、プレート本体20aの裏面側、つまり、ガイドレール30の表面32aに対向する面側に、エンド収容部21、22が設けられている。
【0039】
  上昇用ケーブル61と下降用ケーブル62は、それぞれのケーブル端部と金属により成形された端末部材とにより端部を構成している。エンド収容部21、22は、キャリアプレート20を上昇させるための上昇用ケーブル61の端末部材612を収容するエンド収容部21と、キャリアプレート20を下降させるための下降用ケーブル62の端末部材622を収容するエンド収容部22とを有する。
【0040】
  キャリアプレート20の各エンド収容部21、22から上昇用ケーブル61と下降用ケーブル62のそれぞれの導出部分が、キャリアプレート20を上昇或いは下降させる支点となるように、上昇用ケーブル61と下降用ケーブル62とがエンド収容部21、22から導出される。
【0041】
  キャリアプレート20は、本実施の形態では、プレート本体20aの裏面側で、ガイドレール30に嵌合することにより、ガイドレール30により左右方向の移動が規制された状態で、ガイドレール30に上下方向に摺動可能に設けられる。
         
【0042】
  図3は、本発明の実施の形態に係る開閉体開閉装置1のキャリアプレート20を示す正面図であり、
図4は、
図3のA-A線断面図である。
 
【0043】
  キャリアプレート20は、
図3及び
図4に示すように、取付部23a、23bと、水保持部25と、排水部28と、を有する。キャリアプレート20は、上端部20bに設けた水保持部25により、上端部20bに到来する水分がガイドレール30側へ流出することを避ける(水避けする)ように構成されている。キャリアプレート20では、上端部20bは、プレート本体20aにおけるエンド収容部21、22及びガイドレール30との嵌合部分の上方に位置している。上端部20bは、上方からの水分がエンド収容部21、22及びガイドレール30との嵌合部分に直接到達することを抑制している。また、プレート本体20aの形状は、上端部20bに水保持部25を有する構成であれば、ガイドレール30および開閉体Wの形状に応じて随時設計変更可能である。
 
【0044】
  取付部23a、23b及び水保持部25は、プレート本体20aの上端部20b側に設けられている。本実施の形態では、排水部28は、上端部20bの他に、プレート本体20aの下端部及び一側部に設けられている。
【0045】
  取付部23a、23bは、開閉体Wに接続されるガラスホルダ13が取り付けられる。本実施の形態では、取付部23a、23bは、ガラスホルダ13の上方に延びて立設した壁部をゆうし、その壁部にプレート本体20aの厚み方向に開口する取付孔がそれぞれ設けられている。これら取付孔に挿入されるビス、ボルト等の締結部材を介して、開閉体Wの下側に取り付けられたガラスホルダ13がそれぞれ回動自在に取り付けられる(
図1参照)。
 
【0046】
  取付部23a、23bは、上端部20bにおいて、移動方向と交差する方向で所定間隔を空けて離間するように配置され、本実施の形態では、ガイドレール30の幅方向に設けられている。取付部23a、23bは、ガイドレール30と摺動可能に係合した状態で、ガイドレール30の幅方向の一方側と他方側とに配置され、それぞれガイドレール30の幅方向の縁部よりも外側に離間するようにプレート本体20aに設けられている。取付部23a、23bには、立設した壁部の下側には、水平方向に延びる平面上の段部を設けてもよい。
【0047】
  水保持部25は、キャリアプレート20の上端部20bに設けられている。水保持部25は、キャリアプレート20の上方からキャリアプレート20の上端部20bに到来する水分を保持する。水保持部25は、上端部20bに至る水分を保持することにより、ガイドレール30に水分が伝わることを防止する。
【0048】
  上方からキャリアプレート20の上端部20bに到来する水分とは、上端部20bに到来する水分であれば、どのような水分であってもよい。上端部20bに到来する水分とは、例えば、雨水等の液体であり、具体的には、開閉体Wを伝わる雨水、開閉体Wからガラスホルダ13を介して伝わる雨水、或いは、サッシュがある場合、サッシュ、開閉体W及びガラスホルダ13を介して伝わる雨水が挙げられる。なお、液体は、雨水でなく、洗車水等の液体であってもよい。水保持部25は、開閉体Wに対して下方となる位置に設けられている。特に、水保持部25は、開閉体Wに付着した水分が、直接またはガラスホルダ13を介して水保持部25に到達するようなキャリアプレート20の位置に設けられていることが好ましい。
【0049】
  水保持部25は、本実施の形態では、上端部20bにおいて取付部23a、23bの間に設けられている。
【0050】
  水保持部25は、接続部281を介して排水部28(28a、28b)と接続している。本実施の形態では、水保持部25は、さらに排水部28(28a、28b)を介して、取付部23a、23bに接続されている。
  水受部26は、上端部20bにおいて水分を受ける形状に設けられ、上方に面して到来する水分を受ける。水保持部25は、水受部26と、流出抑制部27、延出面29とを有する。水保持部25は、下側に凸なる底面を有してもよく、流出抑制部27と延出面29とを有することにより、水平面に比べて更に水分を受けることができる。
【0051】
  水受部26は、キャリアプレート20がガイドレール30の上端側の位置に位置し、開閉体Wにより開口部が閉塞状態であるときに、上方に開口する凹状となるように形成されている。
【0052】
  流出抑制部27は、キャリアプレート20の裏面側、つまり、ガイドレール30側から水分が流出するのを抑制する。流出抑制部27は、水受部26に面してガイドレール30への水分の流出を抑制する抑制面271を有する。
【0053】
  流出抑制部27は、本実施の形態では、水受部26のガイドレール30側において立設している。流出抑制部27は、水受部26における立設部分、つまり、水受部26との接合部分において、水受部26で受ける水分がガイドレール30側に流れることを防いでいる。
【0054】
  抑制面271は、水受部26に面してガイドレール30への水分の流出を抑制するものであれば、曲面、平面或いは凹凸面等のように、どのような形状の面で形成されてもよい。本実施の形態では、抑制面271は、流出抑制部27の表面として機能し、立設方向に延在する複数の仕切り壁部272と接続部281となる壁部により複数の部位に仕切られた状態で設けられている。
【0055】
  なお、本実施の形態では、水保持部25は、キャリアプレート20がガイドレール30の上端側の位置に位置し、開閉体Wにより開口部が閉塞状態であるときに、上方からキャリアプレート20の上端部20bに到来する水分を保持する機能を有する構成であればどのように構成されてもよい。例えば、キャリアプレート20がガイドレール30の中央或いは下端部に位置する場合でも、上端部20bに到達する水分を溜める構成としてもよい。
【0056】
  また、本実施の形態では、水保持部25は、仕切り壁部272により仕切られて構成され、キャリアプレート20の幅方向で並ぶ複数の凹部を有しているが、この構成に限らない。キャリアプレート20は、水保持部25のガイドレール側に流出抑制部27が設けられている。流出抑制部27は、本実施の形態においては、立設した壁部として設けられている。流出抑制部27は、キャリアプレート20の昇降移動時に水分がガイドレール30側から流出するのを容易に抑制できる。水保持部25は、上端部20bにおいてキャリアプレート20の幅方向に延在する水受部26と、キャリアプレート20の幅方向に延在し、且つ水受部26に面した抑制面271を有する流出抑制部27を有するように構成されてもよい。延出面29も水受部26の全幅に渡って配置されてもよい。
【0057】
  延出面29は、上方に面する面であり、水受部26のガイドレール側とは逆側に、水平方向に対して上がり勾配で、且つ、ガイドレール30とは逆側に延出している。
  延出面29は、本実施の形態では、上端部20bにおいて水受部26の底面となる面においてガイドレール30とは逆側の縁部、つまり、キャリアプレート20の表面側の縁部からガイドレール30とは逆側に延出して設けられている。延出面29が設けられることにより、水保持部25での水分の保持が容易となる。
  延出面29は、本実施の形態では、キャリアプレート20がガイドレール30の上端に位置するときに、水受部26で受ける水分が、ガイドレール30側とは逆側、つまり、キャリアプレート20の表面側に漏れることを防止する。延出面29は、キャリアプレート20がガイドレール30の下方への移動により、下方に傾斜する(
図5参照)。
 
【0058】
  延出面29は、上端部20bの左右に渡って延在して設けられている。延出面29は、キャリアプレート20がガイドレール30の上端側の位置に位置し、開閉体Wにより開口部が閉塞状態であるときに、水受部26においてガイドレール30側とは逆側の表面側の辺部から水受部26の底面に対して上がり勾配でガイドレールとは逆側に延出して配置される。
  本実施の形態では、略平面状の平面部により構成された水受部26がキャリアプレート20の幅方向に亘って延びている。水受部26のガイドレール30側の縁部には流出抑制部27が設けられており、流出抑制部27の水受部に面する面である抑制面271と水受部26とは、略90°もしくは鈍角となるような角度を形成している。水受部26のガイドレール30とは反対側の縁部に設けられた延出面29は、水受部26の平面部と鈍角となる角度を形成している。キャリアプレート20の上端部では、厚さ方向において、水受部26は、流出抑制部27の抑制面271と延出面29とに挟まれている。水受部26上の水分は、流出抑制部27の抑制面271と延出面29とによって、キャリアプレート20の厚さ方向に移動するのが抑制されることとなる。水受部26は、ガイドレール30に沿って昇降している間に、水平な状態とガイドレール側が下側となる傾斜した状態とに、状態が変位するが、流出抑制部27との間や、延出面29との間に水分を保持することもできる。水受部26と流出抑制部27との間や、水受部26と延出面29との間に保持された水分は、排水部28によって、ガイドレール30から離れた位置に排水することもできる。
【0059】
  排水部28は、キャリアプレート20に到達する水分を、キャリアプレート20の側方または下方に排出する第1排水部28a及び第2排水部28bを有する。
  本実施の形態では、第1排水部28a及び第2排水部28bは、上端部20bにおいて水保持部25を挟むように配置され、且つ、それぞれ傾斜面により形成されている。第1排水部28a及び第2排水部28bは、傾斜面としてもよいが、ガイドレール30の延びる方に沿った垂直面としてもよく、取付部23a、23bの立設した壁部の下側には設けられた水平方向に延びる段部と繋がるように設けられてもよい。排水部28は、溝状の設けられてもよい。
【0060】
  第1排水部28aは、上端部20bにおいて、取付部23a側と、水保持部25側との間に設けられている。第1排水部28aは、キャリアプレート20の裏面側から表面側に延在するV字溝を有する。
【0061】
  V字溝は、キャリアプレート20がガイドレール30の上端側の位置に位置し、開閉体Wにより開口部が閉塞状態であるときに、略水平となる第一面282aと、第一面282aから裏面側に上がるように傾斜する第二面282bとにより形成される。これにより、第1排水部28aに到達する水分は、V字状溝に案内されてキャリアプレート20の表面側に排水される。
【0062】
  第2排水部28bは、上端部20bにおいて、取付部23b側と、水保持部25側との間で、キャリアプレート20の裏面側から表面側に下り勾配で傾斜する傾斜面により形成されている。
【0063】
  これにより、第2排水部28bは、キャリアプレート20がガイドレール30の上端側の位置に位置し、開閉体Wにより開口部が閉塞状態であるときに、略水平な面となるか、或いは、キャリアプレートの裏面側から表面側に傾斜する面となる。これにより、第2排水部28bに到達する水分は、第2排水部28bの傾斜面によりキャリアプレート20の表面側に排水される。
【0064】
  第1排水部28a及び第2排水部28bは、水保持部25に接続される接続部281(281a、281b)を有する。
【0065】
  接続部281aは、上端部20bに到達して水保持部25により保持される水を、第1排水部28aより排出可能となるように、水保持部25と第1排水部28aとを接続する。接続部281bは、上端部20bに到達して水保持部25により保持される水を、第2排水部28bより排出可能となるように、水保持部25と第2排水部28bとを接続する。本実施の形態では、接続部281a、281bは、それぞれ、水受部26から立設して、流出抑制部27の抑制面271に接合された壁部のうち、水受部26に接合される傾斜した下部である。傾斜した下部は、水受部26において表面側から裏面側に向かって上がり勾配で傾斜する部位である。
【0066】
  なお、キャリアプレート20には、プレート本体20aの下側縁部と取付部23b側の側縁部とに渡って、排出樋28cが設けられている。
【0067】
  排出樋28cは、キャリアプレート20のプレート本体20aにおいて、キャリアプレート20の表面側に突出したリブ状に設けられており、上方からの水分を排出樋28cの延在方向に沿ってキャリアプレート20の下方に案内してキャリアプレート20の表面側でガイドレール30に接触しないように排出する。
【0068】
  <キャリアプレート20の水避け動作>
  図5は、キャリアプレートの水避け動作を模式的に示す部分断面図である。
  
図5に示すように、開閉体開閉装置1において、キャリアプレート20は、ガイドレール30の上端側の位置に位置した状態である。キャリアプレート20は、開閉体Wにより開口部が閉塞状態となるとき、水受部26の底面は水平となるように形成され、水受部26は、流出抑制部27と延出面29とにより、上方に開口する凹状となる。これにより、キャリアプレート20の上端部20bにおいて、キャリアプレート20の上方からの上端部20bに到達する水分は、水受部26に到達する。水受部26は、上方から上端部20bに到達する水分を受けて、流出抑制部27によりキャリアプレート20の裏面側へ伝わることを阻害することができる。
 
【0069】
  また、上方から上端部20bにさらに水分が到達すると、水受部26の許容量を超えることになる。この場合、
図6に示すように、水分が水受部26の許容量を超えると、許容量を超えた水分は、接続部281a、281bを伝わり(矢印R1)、水保持部25に接続される排水部28(28a、28b)に案内されてキャリアプレート20の外部に流れる。
  これにより、ガイドレール30側に水が流れることがなく、ケーブル60、駆動部70、ドラム部材80を水分が伝わることがない。
 
【0070】
  このように本実施の形態の開閉体開閉装置1では、キャリアプレート20は、上端部20bに水滴などの水分が到達すると、水分を水保持部25の水受部26と流出抑制部27とで保持して、ガイドレール側に流れることを抑制できる。
【0071】
  ガイドレール上端に位置したキャリアプレート20では、上端部20bにおいて、上面(水受部26の底面)が水平面に対して角度を有するように設けられ、水分を水受部26と、水受部26から立設する流出抑制部27との隅に溜めることができる。また、水受部26と流出抑制部27との間で水分が所定以上溜まると、水分を接続部281a、281bを介して排水部28a、28bに流すことにより、水分をガイドレール30側に流出させることなく、キャリアプレート20の側方(矢印R1参照)或いは前方に流すことができる。すなわち、キャリアプレート20の裏面側であるガイドレール側とは離れる方向に水が流れることになり、ガイドレール30に水が流れてガイドレール30に付着することを抑制できる。
【0072】
  また、キャリアプレート20をガイドレール30の上端側の位置から下方に移動させると、
図5の破線のキャリアプレート20で示すように、キャリアプレート20は、湾曲するガイドレール30の形状により、上端部20bが下方に傾くように移動する。これにより、上端部20bにおける水保持部25の水受部26は、表面側に傾斜する面となり、溜めた水は、キャリアプレート20の表面側(
図5の矢印R2参照)或いは側方に流れ、水がガイドレール30側に流れることがない。
 
【0073】
  このように本実施の形態によれば、キャリアプレート20が保持する開閉体Wから伝わる雨水等の水分が、キャリアプレート20の移動を案内するガイドレール30に付着することを効果的に抑制できる。よって、ガイドレール30自体の錆の発生を防止でき、更に、ガイドレール30に設けられる駆動部70及びキャリアプレート20に接続されるケーブル60等に水分が付着することを抑制できる。
  また、ガイドレール30側に水が流れて、ガイドレール30に水が付着することなく、キャリアプレート20をガイドレール30の下端の位置に移動して、開閉体を開状態にすることができる。
  その他、実施の形態で具体的に示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
  本発明は、自動車などの車両の窓ガラスを昇降するウインドウレギュレータに利用できる。
【符号の説明】
【0075】
  1  開閉体開閉装置
  13  ガラスホルダ
  20  キャリアプレート
  20a  プレート本体
  20b  上端部
  21、22  エンド収容部
  23a、23b  取付部
  25  水保持部
  26  水受部
  27  流出抑制部
  28  排水部
  28a  第1排水部(排水部)
  28b  第2排水部(排水部)
  28c  排出樋
  29  延出面
  30  ガイドレール
  32  ガイド部本体
  32a  表面
  32b  裏面
  32c  ガイド部
  40  方向転換部
  41  上ジョイント部材
  41a  締結部
  60  ケーブル
  61  上昇用ケーブル
  62  下降用ケーブル
  70  駆動部
  80  ドラム部材
  82  ドラムハウジング
  271  抑制面
  272  仕切り壁部
  281  接続部
  281a、281b  接続部
  282a  第一面
  282b  第二面
  612、622  端末部材