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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】オープンシールド機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
E21D9/06 331
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019076073
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020172812
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(73)【特許権者】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】吉越 健太
(72)【発明者】
【氏名】上林 直人
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-031806(JP,A)
【文献】特開2009-114640(JP,A)
【文献】特開平08-338022(JP,A)
【文献】実開昭57-018508(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右側壁板と底板からなる機体を前後方向でフロント部とテール部に分割し、フロント部の後端にテール部の前端を嵌入させ、フロント部に後方へ向けて中折ジャッキを設けてフロント部とテール部が相互の嵌合部で屈曲可能とした中折れ部を形成したオープンシールド機において、中折ジャッキのロッドの先に円筒形ヘッドを設け、この円筒形ヘッドを抱え込むようなL字形の脚部を有し、支圧面に角度を持たせたストローク調整部材を中折ジャッキ毎に設けたことを特徴とするオープンシールド機。
【請求項2】
ストローク調整部材は持運び用のコ字形の取手を有する請求項1記載のオープンシールド機。
【請求項3】
ストローク調整部材は継足し可能なブロック体もしくは板体で構成する請求項1または請求項2記載のオープンシールド機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンシールド工法に使用するオープンシールド機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のごとくオープンシールド工法は、開削工法(オープン工法)とシールド工法の長所を生かした合理性に富む工法であり、このオープンシールド工法では、シールド機を前方の機体の後端に後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能としてカーブ施工を可能としたり、方向修正を行えるようにしたものがある。
【0003】
その一例を説明すると、オープンシールド機1は、図13に示すように基本的には左右の側壁板1a,1bとこれら側壁板1a,1bと同程度の長さでその間を連結する底板1cとからなる前面、後面及び上面を開口したシールド機である。
【0004】
該オープンシールド機1は図14に示すように機体を前後方向で複数に分割し、フロント部2としての前方の機体の後端にテール部3としての後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能とした。
【0005】
フロント部2は主として掘削を行うもので、前端と上面を開放面としてあり、機体内で後部に後方へ向けて中折ジャッキ4を左右によせて、また上下複数段に配設している。
【0006】
これに対してテール部3はコンクリート函体8の設置を行うもので、機体内で前部に後方へ向けてシールドジャッキ5を左右によせて、また上下複数段に配設したジャッキ部17と、その後方でスペースを確保した函体吊下し部18を構成している。
【0007】
図中6はフロント部2の前端に設けた可動分割刃口、7はテール部3の後端に設けた側方土留板、9はストラット、10はプレスバー(押角)である。
【0008】
このようなオープンシールド機1を使用するオープンシールド工法は、図15図18に示すように、発進坑と到達坑との間で施工される。発進坑11内で前記オープンシールド機を組立て、発進坑11の前の地盤を地上に設置したシャベル系の掘削機12で掘削し、該オープンシールド機1のシールドジャッキ5を伸長して発進坑11内の反力壁に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体8を上方から吊り降し、オープンシールド機1のテール部3内で縮めたシールドジャッキ5の後方にストラット9およびプレスバー10とともにセットする。
【0009】
また、発進坑11はシートパイル等の土留壁で構成し、オープンシールド機1を発進させるにはこの土留壁を一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入等で発進坑11の前方部分に地盤改良を施しておくこともある。
【0010】
次いで、同様に掘削機12でフロント部2の前面又は上面から土砂を掘削し、かつ排土してオープンシールド機1を前進させ、前記第1番目のコンクリート函体8の前に第2番目のコンクリート函体8をテール部3内に吊り降す。
【0011】
以下、同様の掘進及びコンクリート函体8のセット工程を繰返して、順次コンクリート函体8を縦列に地中に埋設し、後方のコンクリート函体8上にダンプ14で埋戻しを施し、オープンシールド機1が到達坑13まで達したならばこれを分解・撤去して工事を完了する。図中15はグラウト機である。
【0012】
ところで、オープンシールド機1の掘進はシールドジャッキ5を伸長だけでなく、このシールドジャッキ5を固定して中折ジャッキ4の伸長でテール部3に対してフロント部2を進めることでも行なわれ、シールドジャッキ5と中折ジャッキ4との2段階で押し進める。
【0013】
その際、中折ジャッキ4のうち、左右いずれかを多く伸長させればフロント部2はその反対側に向きを変え、その方向に曲がる。また、上下いずれかを多く伸長させればフロント部2はその反対側に向きを変え、上向きまたは下向きに曲がる。このようにしたカーブ施工または方向修正が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
現状として標準的なオープンシールド機に搭載可能なジャッキにジャッキストローク等の性能が固定されている。
【0015】
図14図15に示すように、中折ジャッキ4はテール部3の前端に中折れジャッキ先端の円筒形ヘッド4bが当接するが、中折れジャッキのストローク、円筒形ヘッド可動角度の性能により隙間が生じ、十分反力が取れないおそれがある。
【0016】
また、前記カーブ施工または方向修正を行う場合にこのジャッキストローク等の性能に影響され、施工状況によリジャッキの持つ伸び量+αの伸張が必要な場合には伸張したジャッキを一度戻し、クレーンにて大きく強固なストラット部材をジャッキ先端の円筒形ヘッド4bとテール部3の間に設置し、再度伸張する必要がある。
【0017】
また、ストロークが大きいジャッキを予め設置しようとすると、ジャッキ寸法に合わせたシールド機形状が必要となり、シールド機寸法が増大する。
【0018】
また、曲線施工においてジャッキ側の支圧部が角度を持った場合に、ジャッキに横方向の負荷がかかり、ジャッキ性能に影響を及ぼす。
【0019】
ジャッキ伸張方向に対し、反力部分が垂直に当る構造となっている。現状のストラット部材は大きく、重量物である為、クレーンを配置しストラットの設置作業を行う必要があり、わずかな伸張量を確保する為にもクレーン配置、玉掛け作業等作業に時間を要する。
【0020】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、左右側壁板と底板からなる機体を前後方向でフロント部とテール部に分割し、フロント部の後端にテール部の前端を嵌入させ、フロント部に後方へ向けて中折ジャッキを設けてフロント部とテール部が相互の嵌合部で屈曲可能とした中折れ部を形成したオープンシールド機において、フロント部とテール部が相互の嵌合部で屈曲させる場合に中折ジャッキのストローク以上に屈曲角度に対応でき、中折ジャッキに過大な負荷もかけることなく、簡単かつ迅速に対応できるオープンシールド機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、左右側壁板と底板からなる機体を前後方向でフロント部とテール部に分割し、フロント部の後端にテール部の前端を嵌入させ、フロント部に後方へ向けて中折ジャッキを設けてフロント部とテール部が相互の嵌合部で屈曲可能とした中折れ部を形成したオープンシールド機において、中折ジャッキのロッドの先に円筒形ヘッドを設け、この円筒形ヘッドを抱え込むようなL字形の脚部を有し、支圧面に角度を持たせたストローク調整部材を中折ジャッキ毎に設けたことを要旨とするものである。
【0022】
請求項1記載の本発明によれば、中折ジャッキに支圧面に角度を持たせたストローク調整部材を反力追加部材として設置することで、ジャッキ伸張方向に対し、垂直に反力部分が当る構造とすることができ、ジャッキ伸張方向に対し、調整部材を介して垂直に反力部分が当る為、ジャッキの負荷が低減する。
【0023】
また、ストローク調整部材は各ジャッキヘッドに取付け可能なものであり、ジャッキ毎個別に分けることで、人力にて設置が可能なものである。
【0024】
このように人力で調整部材を設置することが可能になる為、クレーン配置、玉掛け等の作業時間を短縮することができ、作業の効率化を図ることができる。
【0025】
ストローク調整部材は小さい為、多種の角度調整部材を必要とする場合においても、1つ当りの製造コストが安く、一人力で取り替えられることで、調整作業が行いやすくなる。
【0026】
請求項2記載の本発明は、ストローク調整部材は持運び用のコ字形の取手を有することを要旨とするものである。
【0027】
請求項2記載の本発明によれば、コ字形の取手により持運びが楽になる。
【0028】
請求項3記載の本発明は、ストローク調整部材は継足し可能なブロック体もしくは板体で構成することを要旨とするものである。
【0029】
請求項3記載の本発明によれば、ストローク調整部材は継足し可能なブロック体もしくは板体で構成することで、ブロック体もしくは板体の増減で調整するストローク長を可変とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上述べたように本発明のオープンシールド機は、左右側壁板と底板からなる機体を前後方向でフロント部とテール部に分割し、フロント部の後端にテール部の前端を嵌入させ、フロント部に後方へ向けて中折ジャッキを設けてフロント部とテール部が相互の嵌合部で屈曲可能とした中折れ部を形成したオープンシールド機において、フロント部とテール部が相互の嵌合部で屈曲させる場合に中折ジャッキのストローク以上に屈曲角度に対応でき、中折ジャッキに過大な負荷もかけることなく、簡単かつ迅速に対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す平面図である。
図2】本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す縦断側面図である。
図3】本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す中央縦断正面図である。
図4】本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す要部の平面図である。
図5】本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す中折ジャッキの平面図である。
図6】本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す中折ジャッキの側面図である。
図7】本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す中折ジャッキの正面図である。
図8】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す中折ジャッキの平面図である。
図9】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す中折ジャッキの側面図である。
図10】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す中折ジャッキの他例を示す縦断正面図である。
図11】従来例を示す平面図である。
図12】従来例を示す要部の平面図である。
図13】オープンシールド機の概要を示す縦断正面図である。
図14】オープンシールド機の概要を示す縦断側面図である。
図15】オープンシールド工法の第1工程を示す側面図である。
図16】オープンシールド工法の第2工程を示す側面図である。
図17】オープンシールド工法の第3工程を示す側面図である。
図18】オープンシールド工法の最終工程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す平面図、図2は同上縦断側面図、図3は中央縦断正面図である。
【0033】
オープンシールド機1の全体は前記図13図14に示すように機体を前後方向で複数に分割し、テール部3の前端は縮径してフロント部2の後端に入り込むもので、これによりフロント部2とテール部3との間には隙間が確保され、これが中折れ部16となる。
【0034】
フロント部2は可動分割刃口6を有する前端と上面を開放面としてあり、機体内で後方へ向けて中折ジャッキ4を左右によせて、また上下複数段に配設した。
【0035】
一方、テール部3は機体内で前部に後方へ向けてシールドジャッキ5を左右によせて、また上下複数段に配設したジャッキ部17と、その後方でスペースを確保した函体吊下し部18を構成している。
【0036】
本発明は中折ジャッキ4に支圧面21に角度を持たせたストローク調整部材20を中折ジャッキ4毎に着脱自在に設けた。
【0037】
図5図7に該ストローク調整部材20の1例を示すと、全体は台盤状の鋼製ブロックであり、台盤の中心となる基盤23上に支板24を直交させて、相互に間を開けて並列させ、その上に支圧面21を形成する板を架け渡した。
【0038】
支板24は台形状で、これにより上に直交させて載せる板は傾斜して支圧面21を形成する。
【0039】
中折ジャッキ4のロッド4aの先には円筒形ヘッド4bが設けられているが、この円筒形ヘッド4bを抱え込むようなL字形の脚部22を基盤23の裏側に突設する。
【0040】
図中25は円筒形ヘッド4bを抑えるように突設するピンとなるボルトである。
【0041】
基盤23の左右側辺にはコ字形の取手26を持運び用として形成した。
【0042】
なお、図示は省略するが、ストローク調整部材20はブロックを継ぎ足して形成するものとしてもよく、その場合の継ぎ足しブロックは角度を持たない直方体のものでよい。
【0043】
次に使用法について説明する。カーブ施工または方向修正を行う場合にジャッキの持つ伸び量+αの伸張が必要な場合には中折ジャッキ4の円筒形ヘッド4bにストローク調整部材20を取付ける。
【0044】
このストローク調整部材20の取付はカーブ施工または方向修正を行う方向と反対側に位置する側の中折ジャッキ4についてだけでもよい。
【0045】
中折ジャッキ4のうち、左右いずれかを多く伸長させればフロント部2はその反対側に向きを変え、その方向に曲がる。その際、ストローク調整部材20を設けた側の中折ジャッキ4を多く伸長させればよい。
【0046】
図8図10は本発明の第2実施形態としての中折ジャッキ4を示すもので、ストローク調整部材20は前記第1実施形態と同じく、ストローク調整部材20は各中折ジャッキ4毎に設けるものであるが、継足し可能な板体27を重ねて端部を蝶番28で結合したクリップ板体30、31で挟み込み固定した。
【0047】
外側に位置するクリップ板体31には支圧板32に取り付けて支圧面21を形成する。
【0048】
板体27の各ピースは断面扇型で、これを重ねることでクリップ板体30、31の開き角度が調整でき、全体として支圧面21を傾斜させる適宜な角度が得られる。
【0049】
図中29は板体27を重ねて挟み込んだ後にクリップ板体30、31の相互を固定する止めボルトで、クリップ板体30、31の端部の切欠きに掛け渡される。
【0050】
中折ジャッキ4のロッド4aの先には円筒形ヘッド4bが設けられているが、この円筒形ヘッド4bを抱え込むようなL字形の脚部22をクリップ板体30の裏側に突設する。
【0051】
この第2実施形態においても、使用法は前記第1実施形態と同じなので説明を省略する。
【符号の説明】
【0052】
1…オープンシールド機
1a,1b…側壁板 1c…底板
2…フロント部 3…テール部
4…中折ジャッキ 4a…ロッド
4b…円筒形ヘッド 5…シールドジャッキ
6…可動分割刃口 7…側方土留板
8…コンクリート函体 9…ストラット
10…プレスバー 11…発進坑
12…掘削機 13…到達坑
14…ダンプ 15…グラウト機
16…中折れ部 17…ジャッキ部
18…函体吊下し部 20…ストローク調整部材
21…支圧面 22…脚部
23…基盤 24…支板
25…ボルト 26…取手
27…板体 28…蝶番
29…止めボルト 30、31…クリップ板体
32…支圧板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18