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特許6993384コンクリート函体もしくはオープンシールド機の発進反力構造および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】コンクリート函体もしくはオープンシールド機の発進反力構造および方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
E21D9/06 331
E21D9/06 311C
E21D9/06 311Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019095096
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2019206904
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2018099500
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(73)【特許権者】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元晶
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-092601(JP,A)
【文献】特開平04-062230(JP,A)
【文献】特開昭50-156215(JP,A)
【文献】特開2007-146533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進させようとするコンクリート函体の左右両側方に土留め鋼矢板を配設し、土留め鋼矢板の内側に反力伝達鋼材を横架して反力伝達構造物を形成し、コンクリート函体後端への元押しジャッキの支圧を受ける支圧体をこの反力伝達構造物の幅方向に架設したことを特徴とするコンクリート函体の発進反力構造。
【請求項2】
推進させようとするコンクリート函体の左右両側方に土留め鋼矢板を配設し、土留め鋼矢板の内側に反力伝達鋼材を横架して反力伝達構造物を形成し、コンクリート函体後端への元押しジャッキの支圧を受ける支圧体をこの反力伝達構造物の幅方向に架設したコンクリート函体の発進反力構造を使用し、元押しジャッキによりコンクリート函体を推進させることを特徴としたコンクリート函体の発進反力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法におけるコンクリート函体もしくはオープンシールド工法におけるオープンシールド機の発進反力構造および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
推進工法は、推進管(主に鉄筋コンクリート管)の先端に掘進機を取り付け、地中を掘削しつつ、後方の油圧ジャッキで推し進めて、管を埋設する工法で、地面を掘り起こして管を設置する「開削工法」に対して「非開削工法」と呼ばれている。
【0003】
図16に示すように、推進工法の機械構成は、立坑(発進立坑)A、支圧壁B、推進台C、元押ジャッキD、押輪E、ストラットF、押角G、推進管H、掘進機I(又は刃口)からなっており、長距離推進の場合はさらに中押装置Jが設置される。
【0004】
図中Kは発進口壁、Lは門型クレーン、Mは元押し、中押し用油圧ポンプ、Nは滑材圧送ポンプ、Oは滑材ミキサーである。
【0005】
推進工法は、先端の掘進機I(又は刃口)で掘削を行い、元押ジャッキDを伸長して推進管Hを推し進める。
【0006】
推進工法に関しては、先行技術文献として多くの特許文献があるが、支圧壁Bに関しては特に特許文献はない。
【0007】
また、下記特許文献は、開削工法とシールド工法の長所を生かした合理性に富むオープンシールド工法により施工する場合に、施工個所の上方に橋桁等の障害物が横切る場合でも、オープンシールド工法に用いたオープンシールド機はそのまま設置してこの障害物の影響を受けずに地下構造物を施工し、また、障害物通過後はオープンシールド工法にすぐ移行して施工を続行できるものとして提案されたものである。
【文献】特開平7-269289号公報
【0008】
この特許文献1は、オープンシールド工法と、オープンシールド機の前面を掘削・排土し、オープンシールド機ごとコンクリート函体を発進立坑に設置した推進ジャッキで押し出し、該推進ジャッキと押し出したコンクリート函体との間に新たなコンクリート函体を配設して押し出しを繰り返す推進工法とを組み合わせる。かかるオープンシールド工法と推進工法の組み合わせについてはその概要を図11に示す。
【0009】
先にオープンシールド工法について説明する。オープンシールド工法で使用するオープンシールド機1は、基本的には左右の側壁板とこれら側壁板と同程度の長さでその間を連結する底板とからなる前面、後面及び上面を開口したシールド機である。
【0010】
該オープンシールド機1は機体を前後方向で複数に分割し、フロント部2としての前方の機体の後端にテール部3としての後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能とした。
【0011】
フロント部2は主として掘削を行うもので、前端と上面を開放面としてあり、機体内で後部に後方へ向けて中折ジャッキ4を左右によせて、また上下複数段に配設している。
【0012】
これに対してテール部3はコンクリート函体8の設置を行うもので、機体内で前部に後方へ向けてシールドジャッキ5を左右によせて、また上下複数段に配設したジャッキ部と、その後方でスペースを確保した函体吊下し部を構成している。
【0013】
図中6はフロント部2の前端に設けた可動分割刃口である。
【0014】
このようなオープンシールド機1を使用するオープンシールド工法は、図24図27に示すように、発進立坑と到達坑との間で施工される。発進立坑11内で前記オープンシールド機を組立て、発進立坑11の前の地盤を地上に設置したシャベル系の掘削機12で掘削し、該オープンシールド機1のシールドジャッキ5を伸長して発進立坑11内の反力壁(図示せず)に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体8を上方から吊り降し、オープンシールド機1のテール部3内で縮めたシールドジャッキ5の後方にセットする。
【0015】
次いで、同様に掘削機12でフロント部2の前面又は上面から土砂を掘削し、かつ排土してオープンシールド機1を前進させ、前記第1番目のコンクリート函体8の前に第2番目のコンクリート函体8をテール部3内に吊り降す。
【0016】
以下、同様の掘進及びコンクリート函体8のセット工程を繰返して、順次コンクリート函体8を縦列に地中に埋設し、後方のコンクリート函体8上にダンプ14で埋戻しを施し、オープンシールド機1が到達立坑13まで達したならばこれを分解・撤去して工事を完了する。図中15はグラウト機である。
【0017】
かかるオープンシールド工法で推進工法を取り入れる場合は、図発進立坑11内にコンクリート製の厚い支圧壁7を形成し、ここに元押しジャッキ9を設置し、これでコンクリート函体8を推進させる。図中10は受台鋼である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前記推進工法は原則として発進用の立坑Aを形成し、ここに鉄筋コンクリート製の支圧壁Bを設けて、この支圧壁Bで元押ジャッキDの推進反力を受けて、推進管Hを推し進める。
【0019】
前記図23に示すオープンシールド工法との組み合わせの場合は、発進立坑11内に支圧壁7等の元押し設備を構築する。
【0020】
従って、立坑Aや発進立坑11はこのような支圧壁Bや支圧壁7を設けるだけの、堅牢さと、スペースが必要とするものとされる。
【0021】
発進立坑背面反力部分に既設水路が存在する場合や、反力部分地山が軟弱地盤である場合、十分な強度を有する立坑A、発進立坑11を構築できないので、支圧壁Bや支圧壁7を介在させた立坑背面の受動土圧だけでは推進の反力の確保が困難となり、オープンシールド工法にて推進する為には大掛かりな補助工事が必要となる。
【0022】
前記反力部分に既設水路が存在する場合では、既設水路を埋め戻すと降雨による増水時に発進立坑から、背面の既設水路に水路流水を通水することが出来ず、周辺宅地の浸水被害の原因となる。
【0023】
前記軟弱地盤である場合、背面地山に地盤改良等を施す必要があり、経済的に高価となる。
【0024】
前記特許文献1は、発進立坑は、少なくとも前面および上面開口の鋼製チャンバーをオープンシールド機のテール部内に設置して形成することにより、オープンシールド工法で設置したコンクリート函体はそのままにして、かつ、これを反力にして推進工法でコンクリート函体を推進できるとあるが、オープンシールド工法で設置したコンクリート函体を反力体として用いるのは、コンクリート函体を痛めるおそれがある。
【0025】
ちなみに、コンクリート函体の大きさは多少大小があるが、高さが1~2m程度、幅が1~3m程度、長さが1~3m程度で、かなり大きなものである。従って、円形のコンクリートヒューム管とは大きさや用途が異なる。
【0026】
このようなコンクリート函体ではシールド機を前進させるための推進ジャッキでの力が加えられた際には大丈夫でも、コンクリート函体の推進はかなりの力を受け、コンクリート函体の左側壁版、右側壁版は圧縮される状態となり、上床版や下床版に曲げモーメントがかかりその端面にクラックが入るおそれがある。
【0027】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、地山への摩擦力を利用して反力伝達構造物を形成できるので、大掛かりな発進立坑を設けることや、もしくは発進立坑を設けることなくコンクリート函体の推進、シールド機の発進が可能となるコンクリート函体、およびシールド機の発進反力構造および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、推進させようとするコンクリート函体の左右両側方に土留め鋼矢板を配設し、土留め鋼矢板の内側に反力伝達鋼材を横架して反力伝達構造物を形成し、コンクリート函体後端への元押しジャッキの支圧を受ける支圧体をこの反力伝達構造物の幅方向に架設したことを要旨とするものである。
【0029】
請求項2記載の本発明は、コンクリート函体の発進反力方法としては、推進させようとするコンクリート函体の左右両側方に土留め鋼矢板を配設し、土留め鋼矢板の内側に反力伝達鋼材を横架して反力伝達構造物を形成し、コンクリート函体後端への元押しジャッキの支圧を受ける支圧体をこの反力伝達構造物の幅方向に架設したコンクリート函体の発進反力構造を使用し、元押しジャッキによりコンクリート函体を推進させることを要旨とするものである。
【0030】
本発明によれば、元押しジャッキやコンクリート函体の支圧を受ける支圧体は、間接的に反力伝達構造物を介して土留め鋼矢板と一体の構造となり、土留め鋼矢板側部に発生する地山と鋼矢板との摩擦力を期待できる反力構造となるので、4方を囲むような立坑を形成しなくとも推進反力を確保することができる。
【0031】
このように完璧な発進立坑を形成しなくもとよいので、背面に既設水路が存在する場合についても、既設水路を埋め戻すことなく施工可能である為、降雨時の増水、水路への通水を確保した施工が可能である。
【0032】
また、発進箇所の背面の地山が軟弱地盤であり反力が期待出来ない場合においても、補助工法等を必要とせず、例えば、オープンシールド工法と推進工法を組み合わせる場合のオープンシールド工での推進が可能となり、十分な反力を期待でき、経済的である。
【0033】
同様に発進箇所立坑背面直近に構造体があり、土留め、厚い支圧コンクリートの築造が困難である場合においても施工が可能である。
【0034】
支圧コンクリートを築造することなく施工可能である為、スクラップ鋼材は発生するが、コンクリートからは発生しない。
【0035】
従来のような発進立坑として形成する場合でも土留め鋼矢板側部に発生する地山と鋼矢板との摩擦力を期待できる反力構造となるので、立坑自体が大きな反力体となり、支圧構造の剛性が高い為、推進による反力部分の変位が少なく、推進精度が向上する。
【発明の効果】
【0036】
以上述べたように本発明のコンクリート函体やシールド機の発進反力構造および方法は、地山への摩擦力を利用して反力伝達構造物を形成できるので、大掛かりな発進立坑を設けることや、もしくは発進立坑を設けることなくコンクリート函体の発進が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明のコンクリート函体の発進反力構造および方法の第1実施形態を示す平面図である。
図2】本発明のコンクリート函体の発進反力構造および方法の第1実施形態を示す中央縦断側面図である。
図3図1のA-A線矢視図である。
図4図1のB-B線矢視図である
図5図1のC-C線矢視図である
図6】ジャッキ架台部を示す説明図である。
図7】本発明のコンクリート函体の発進反力構造および方法の第2実施形態を示す平面図である。
図8】本発明のコンクリート函体の発進反力構造および方法の第2実施形態を示す中央縦断側面図である。
図9図7のA-A線矢視図である。
図10図7のB-B線矢視図である。
図11】推進工法併用のオープンシールド工法の説明図である。
図12】オープンシールド工法の第1工程を示す側面図である。
図13】オープンシールド工法の第2工程を示す側面図である。
図14】オープンシールド工法の第3工程を示す側面図である。
図15】オープンシールド工法の第4工程を示す側面図である。
図16】推進工法の概要説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のコンクリート函体の発進反力構造および方法の第1実施形態を示す平面図、図2は同上側面図で、図中8はコンクリート函体を示す。
【0039】
なお、この縦列されたコンクリート函体8は通常の推進工法で施工されたものでもよいが、前記のごとく、オープンシールド工法で施工したものでもよい。
【0040】
また、図示の例は後方に既設水路16が存在し、十分な発進立坑を形成できない場合である。
【0041】
本発明は推進させようとするコンクリート函体8の左右両側方に多少間隔を存してシートパイルによる土留め鋼矢板17を並行に配設する。この土留め鋼矢板17は発進立坑11を構成するものと同じものでよいが、発進立坑11のように囲繞させる必要はない。
【0042】
また、相対向する土留め鋼矢板17の下方には、捨て石および捨てコンクリートを敷設し、その上に受台25を設置して発進立坑的に形成してもよい。
【0043】
前記土留め鋼矢板17の内側にアングル材によるブラケット18を溶接等で取付け、このブラケット18で挟み込むようにしてCチャンネル材のような形鋼による反力伝達鋼材19を複数段に横架して反力伝達構造物20を形成した。
【0044】
反力伝達構造物20の幅方向、すなわち相対向する土留め鋼矢板17間に端部をボルト24で反力伝達鋼材19に固定したH形鋼による横方向部材21aとこの横方向部材21aに直交させる縦方向部材21bとで格子に枠組んだ支圧体21を架設する。
【0045】
該支圧体21はコンクリート函体8の後端への元押しジャッキ9の支圧を受けるもので、元押しジャッキ9を設置するジャッキ架台23をこの支圧体21の前に置く。
【0046】
次に使用法について説明すると、コンクリート函体8を推進させるには元押しジャッキ9を伸長してこの元押しジャッキ9によりコンクリート函体8を押し出す。
【0047】
図示は省略するが縦列するコンクリート函体8の先端にはオープンシールド機が設置され、オープンシールド工法によりコンクリート函体8は設置されていた。(地上に設置したショベルカーで、オープンシールド機の刃口部を掘削し、オープンシールド機の前進とコンクリート函体の吊下し・設置を繰り返す。)
【0048】
橋梁等の構造物下を施工する場合、オープンシールド工法を取れないので、オープンシールド機の刃口部分はオープンシールド機内部から掘削し、このオープンシールド機ごとコンクリート函体8を元押しジャッキ22で推進させる。
【0049】
元押しジャッキ22の推進反力は支圧体21で受けるが、これが反力伝達鋼材19を介して土留め鋼矢板17に伝わり、土留め鋼矢板17の側部に発生する地山と鋼矢板との摩擦力を利用することができる。
【0050】
本発明の第2実施形態として、図7図10に示すように、土留め鋼矢板17はこれをもって発進立坑11を形成するものであり、前記支圧体21はH形鋼による横方向部材21aの背後に支圧コンクリート壁21cを設けてなるものとした。その詳細を図21に示す。
【0051】
使用法は前記第1実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0052】
1…オープンシールド機
2…フロント部 3…テール部
4…中折ジャッキ 5…シールドジャッキ
6…可動分割刃口 7…支圧壁
8…コンクリート函体 9…元押しジャッキ
10…受台鋼 11…発進立坑
12…掘削機 13…到達坑
14…ダンプ 15…グラウト機
16…既設水路 17…土留め鋼矢板
18…ブラケット 19…反力伝達鋼材
20…反力伝達構造物 21…支圧体
21a…横方向部材 21b…縦方向部材
21c…支圧コンクリート壁 23…ジャッキ架台
24…ボルト 25…受台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16