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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】防震構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 31/08 20060101AFI20220105BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
E02D31/08
E02D27/34 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019521441
(86)(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2017076844
(87)【国際公開番号】W WO2018073412
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】1617808.9
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501440765
【氏名又は名称】インペリアル カレッジ イノベイションズ リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】511025226
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス-マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D’AIX-MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】Jardin du Pharo, 58, Bld Charles Livon, F-13284 Marseille cedex 07, France
(73)【特許権者】
【識別番号】515322183
【氏名又は名称】エコール・サントラル・ドゥ・マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】ECOLE CENTRALE DE MARSEILLE
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トリフォン・アントナカキス
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・クラスター
(72)【発明者】
【氏名】ユーネス・アチャウイ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・エノク
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・グンノー
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・ブリュレ
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-171702(JP,A)
【文献】特開2000-170194(JP,A)
【文献】特開2015-165065(JP,A)
【文献】特開2014-51852(JP,A)
【文献】特開2014-214509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 31/08
E02D 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表土(3)に埋め込まれ、岩盤(4)と接触している柱(1)のセットを備え、前記柱(1)を形成する材料と前記表土(3)との間に材料差異がある地震波シールドであって、前記地震波シールドが、建物(2)の側面外周部の外側に位置決めされ、阻止されるべき波の方向(R, P, S)における前記地震波シールドの幅は、少なくとも柱(1)の2列分である、地震波シールド。
【請求項2】
前記柱(1)を形成する前記材料は、前記表土(3)より高い密度を有する、請求項1に記載の地震波シールド。
【請求項3】
前記柱(1)は、前記岩盤(4)に埋め込まれる、請求項1または2に記載の地震波シールド。
【請求項4】
前記柱(1)を形成する前記材料は、前記表土(3)の少なくとも1.1倍の密度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の地震波シールド。
【請求項5】
前記柱(1)を形成する前記材料のヤング率は、前記表土(3)のヤング率より少なくとも10倍大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載の地震波シールド。
【請求項6】
前記柱(1)は、前記地震波シールドにおいて周期的に、またはほとんど周期的に位置決めされる、請求項1から5のいずれか一項に記載の地震波シールド。
【請求項7】
前記柱(1)は前記岩盤(4)に0.3m超で埋め込まれる、請求項3に記載の地震波シールド。
【請求項8】
前記柱(1)の全体積は、前記地震波シールドの体積の少なくとも15%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の地震波シールド。
【請求項9】
前記柱(1)は、六角形格子または他のブラベ格子の点に位置決めされる、請求項5に記載の地震波シールド。
【請求項10】
阻止されるべき波の方向(R, P, S)における前記地震波シールドの幅は、柱(1)の2列分より大きい、請求項1から9のいずれか一項に記載の地震波シールド。
【請求項11】
(5)であって、前記板(5)の第1の端部において前記地震波シールドの第1の柱(1)に取り付けられる板(5)をさらに備え、前記板(5)は、前記板の第2の端部において前記地震波シールドの第2の柱(1)にさらに取り付けられる、請求項1から10のいずれか一項に記載の地震波シールド。
【請求項12】
前記柱(1)のうちの少なくとも1つは、コンクリートを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の地震波シールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防震構造に関し、特に、建物または建物群のために防震を提供する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
US Geological Surveyによれば、世界中で毎年3百万回を超える地震があり、大半はリヒタースケールでマグニチュード3.9以下であるが、900回を超える回数で5.0以上を計測している。小さな地震によって引き起こされる地上の振動であっても、建物の構造的完全性に対して影響を及ぼす。同様に、都市の鉄道網、地下鉄、杭打機などの機械、および道路からの侵入的な地上振動は、不動産価値または土地利用に対してしばしば影響を与える。地震波は、地上を通じて進行する表面波(レーリー波)、圧力波、およびせん断波から作られる。表面波は、損害の大部分をもたらし、最も遠くまで進行するが、体積波(圧力波およびせん断波)も、特に堆積盆地(sedimentary basins)において波がトラップする(wave trapping)場合、損害をもたらす。
【0003】
地震波が建物に到達することを防止するために防護構造を提供することが望ましい。具体的には約1~10Hzの周波数の波が膨大な損害を引き起こし得る。なぜならば、そのような低周波数は、大きな距離を進行し、建物の共鳴基本周波数としばしば一致するためである。機械または近くの鉄道に起因する小さい大きさの地震波であっても、特に時間と共に、建物に著しい損害をもたらし得る。原子力発電所および石油精製所などの建物では、建物への小さい度合いの損害であっても壊滅的な結果をもたらし得る。
【0004】
「Seismic metamaterial: how to shake friends and influence waves?」(S. Bruleら)では、地震試験が、約5mの深さ、320mmの直径、および、1.73mの間隔にある、空の円筒形の掘削孔の規則正しい正方形の格子において実施されている。試験は、格子の周期性によって引き起こされる伝達方向における地震波の相殺的干渉によって、約50Hzの地震波の地上を通る伝達が低減することを示した(これは、いわゆる部分的阻止帯域であり、つまり、特定の極性の弾性波が配列内で特定の結晶学的方向において伝播することができない周波数の範囲である)。
【0005】
「Artificial Seismic Shadow Zone by Acoustic Metamaterials」(Sang-Hoon KimおよびMukunda P. Das)および「Seismic Waveguide of Metamaterials」(Sang-Hoon KimおよびMukunda P. Das)では、地震波の共鳴周波数に対応する側孔を伴う巨大な空の箱(メタボックス)から成る防護が提案されている。多くのメタボックスから構成されたメタ障壁が地震波を減衰し、これは、地震エネルギーを消散させることにより波の振幅を飛躍的に低減する。これらのメタ障壁は、保護される建物の周りに地上に配置される。
【0006】
「Possible Measures Of Taking-Over/ Dynamic Control Of Seismic Actions Applicable To Urban Utility Systems. Seismic Waves Deflection/ Damping Using Metamaterials」(Ungureanuら)は、建物のための地震の防護として、地震波の反射と、前述した方法(波を減衰するための周期的なパターンでの空の掘削孔、およびメタボックス)とを記載している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】「Seismic metamaterial: how to shake friends and influence waves?」、S. Bruleら
【文献】「Artificial Seismic Shadow Zone by Acoustic Metamaterials」、Sang-Hoon KimおよびMukunda P. Das
【文献】「Seismic Waveguide of Metamaterials」、Sang-Hoon KimおよびMukunda P. Das
【文献】「Possible Measures Of Taking-Over/ Dynamic Control Of Seismic Actions Applicable To Urban Utility Systems. Seismic Waves Deflection/Damping Using Metamaterials」、Ungureanuら
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、表土に埋め込まれ、岩盤と接触している柱のセットを備え、柱は、表土との材料差異を伴う材料から形成される、地震波シールドを提供する。このようなシールドは、より大きな範囲の周波数を網羅し、先行技術の空の掘削孔の配列における阻止帯域の下限周波数よりも低減された下限周波数を有する阻止帯域を生成することにより、地震波を反射する。シールドは、幅広いゼロ周波数バンドギャップを有する。阻止帯域内の周波数を有する地震波はシールドを通過することができない。先行技術よりも大きい本発明の阻止帯域の帯域幅は、柱と岩盤との間の接触と、表土(しばしば柔らかい土)と柱における材料との間での材料パラメータ(例えば、密度、ヤング率、体積弾性率、および/またはせん断弾性率)の不一致とに起因する。さらに、阻止帯域の下限は、柱と岩盤との間の接触に起因して、0Hzに近づいて、ゼロ周波数バンドギャップを作り出す。この接触は、柱を岩盤に効果的にピン留めまたは締め付けする。
【0009】
阻止帯域の帯域幅の増加、ゼロに近い周波数バンドギャップ、および上限周波数の上昇により、本発明は低周波数の地震波の大きな帯域を反射させることができる。したがって、阻止帯域は、最も遠くまで進行し、建物に最も大きな損害をもたらす周波数を網羅する。阻止帯域は、建物のほとんどの共鳴周波数も網羅する。効果は波動物理学によってもたらされるため、柱の塑性、配置、および形は、所望の阻止帯域を生成するために、波動物理学に従って選択され得る。
【0010】
空の掘削孔の方法を用いて約1~10Hzの周波数を網羅する阻止帯域を作り出すためには、穴は数メートルから数十メートルの直径を必要とする。地上に大きな穴を有することは、特に他の建物が近くにある領域では、明らかに実用的ではない。したがって、本発明は、先行技術の方法では達成できない実用的な手法で有用な阻止帯域を達成する。
【0011】
柱と表土との間の材料差異は、柱の材料の特性が表土の特性と異なるときに起こる。例えば、柱は、表土と異なる密度、ヤング率、せん断弾性率、または体積弾性率を有する可能性がある。2つ以上の特性が柱の材料と表土との間で異なる可能性がある。例えば、柱を形成する材料が、表土の材料と異なる密度および異なるヤング率を有する可能性がある。柱の材料は、剛体、液体、発泡体、またはゲルであり得る。
【0012】
材料差異は、表土より大きい密度を有する柱によって達成されてもよく、材料差異は、表土より大きいヤング率を有する柱によって達成されてもよく、材料差異は、表土より大きい体積弾性率を有する柱によって達成されてもよく、または、材料差異は、表土より大きいせん断弾性率を有する柱によって達成されてもよい。材料差異は、これらの条件のうちの2つ以上の組み合わせによって達成されてもよい。
【0013】
材料差異は、表土の密度の少なくとも1.1倍の密度を有する柱によって達成されてもよく、材料差異は、表土のヤング率の少なくとも10倍のヤング率を有する柱によって達成されてもよく、材料差異は、表土の体積弾性率の少なくとも10倍の体積弾性率を有する柱によって達成されてもよく、または、材料差異は、表土のせん断弾性率の少なくとも10倍のせん断弾性率を有する柱によって達成されてもよい。材料差異は、これらの条件のうちの2つ以上の組み合わせによって達成されてもよい。土のヤング率は153MPaであってもよく、岩盤のヤング率は30GPaであってもよい。
【0014】
柱は、表土より大きい密度を有し得る。柱は、表土の少なくとも1.1倍の密度であり得る。
【0015】
表土の密度範囲は1600~2300kg/m3であり得、1800kg/m3であり得る(または、表土が泥炭である場合、密度は1200~1300kg/m3であり得る)。岩盤の密度は2500kg/m3であり得る。コンクリートから形成され得る柱の密度は2300~2500kg/m3であり得る。他の実施形態は、より大きい密度であり得る特別なコンクリート(重コンクリート)を使用してもよい。柱は表土の少なくとも1.1倍の密度であり得る。好ましくは、柱は表土の少なくとも1.4倍の密度であり得る。柱は、例えば柱が鋼鉄の杭(約7000kg/m3の密度)から形成されるとき、表土の少なくとも4倍の密度であり得る。
【0016】
柱は表土より大きいヤング率を有し得る。柱のヤング率は、表土のヤング率より少なくとも10倍大きくし得る。
【0017】
柱の各々の下部が岩盤に埋め込まれてもよい。これは、岩盤への柱のより効果的なピン留めを提供し、阻止帯域の下限周波数を低下させることにより、完全に、またはほとんど完全にゼロの周波数バンドギャップを作り出す。これは、このようなゼロ周波数バンドギャップを作り出すために阻止帯域の下限を低下させることが、より低い周波数の地震波が阻止され得ることを意味するため、有利である。
【0018】
下部の高さは30cmを超えてもよい。これは、柱が岩盤によりしっかりと取り付けられ、そのため阻止帯域の下限がゼロにより近づくように低下させられることを意味する。
【0019】
柱の直径(φ)は、鉛直方向の荷重の下で設計される最小強度容量の目標によって導くことができ、掘削における通常の実施は、25~50cmとしての直径を有するが、10~150cmの範囲で実現することができる。柱の直径は、柱の上部に据え付けられるあらゆるものによって柱に加えられる鉛直方向の荷重の下で柱が失陥しないように、柱の環境に依存して選択される。柱を形成する材料の強度と、柱に加えられる鉛直方向の荷重の両方が、選択される直径に影響を与えることになる。例えば、鉛直方向の荷重の下でのコンクリートの最大強度は、通常、12MPa(剛体の柱について)から25MPa(杭について)までである。これらは、コンクリートの失陥に対応する応力の値であり、コンクリートから形成された柱の直径は、印加される鉛直方向の荷重(kN)に応じて合わせられることになる。より大きい荷重は、より大きい直径の柱を要求することになる。
【0020】
地質工学的な岩盤に埋め込まれる各々の柱の下部の長さは、柱の直径の少なくとも3~5倍(3~5φ)であり得る。
【0021】
柱の全体積は、シールドの体積の少なくとも15%であり得る。好ましくは、柱の全体積は少なくとも19%であり得る。より好ましくは、柱の全体積は、シールドの体積の50%であり得る。所望の体積は、部分的阻止帯域の出現についての希薄複合極限(dilute composite limit)を用いて計算され得る(Maxwell-Garnett理論から引き出される数値計算支持条件(numerical computations support conclusions))。
【0022】
シールドの深さは、岩盤から地上の高さまでの表土の高さである。シールドの外周部は、シールドのうちの最も外側の柱と最も内側の柱とによって定められ、シールドの面積は、外周部の内側の面積である。体積は、シールドの深さを面積により乗算したものである。この割合は、地震波を阻止するように最適化される。
【0023】
柱は、シールドにおいて、周期的に、例えばブラベ格子(Bravais lattice)の点上に位置決めされてもよく、または、準周期的に位置決めされてもよい。これは、メタマテリアルのように、特定の周波数について破壊的な干渉を引き起こすことにより、シールドによって反射される周波数を増加させる。柱は、六角形、正方形、三角形、他のブラベ格子、もしくは準周期的な格子の点上に、または、準無作為の格子の点上に、位置決めされ得る。柱と周囲材料との間のパラメータにおける大きな差異(つまり、材料差異)は、柱がヘルムホルツ共鳴器として振る舞うことを意味し、結果として生じる局在化された共鳴は阻止帯域を生成する。したがって、柱の周期性が壊される可能性があり、柱はほとんど周期的な配置または無作為な配置で置かれてもよく、シールドは阻止帯域を依然として生成する。
【0024】
阻止されるべき波の方向におけるシールドの幅は、少なくとも柱の2列分であり得る。より好ましくは、阻止されるべき波の方向におけるシールドの幅は、少なくとも柱の3列分であり得る。シールドがより幅広であれば、波はより効率的に阻止される。幅は、保護されるべき区域から、保護されるべき区域に最も近い柱から径方向外向きに、区域から最も遠い柱への方向において測定され得る。代替として、幅は、地震波の発生源の場所が分かっている場合、保護される区域とその発生源との間で、発生源に最も近い柱から、保護される区域に最も近い柱への方向において測定され得る。
【0025】
シールドは、板であって、この板の第1の端部においてシールドの第1の柱に取り付けられる板を有してもよく、この板は、この板の第2の端部においてシールドの第2の柱にさらに取り付けられる。板は、第1の柱の側部と第2の柱の側部とに取り付けられてもよい。板は、地上面の下の5mの深さにおいて、柱に取り付けられ得る。シールドにおける柱のすべて、または、柱のサブセットが、板によって結合されてもよい。これらの板は、コンクリート、鋼鉄、コンクリートと鋼鉄との組み合わせ、または別の剛体の材料から作られ得る。板は、柱の安定性を向上させ、追加の阻止帯域を差し込む。
【0026】
柱は、コンクリート、鋼鉄、木材、または、これらの材料の2つ以上の組み合わせ、例えば鋼鉄およびコンクリートから形成され得る。これらの材料は、大きな密度とヤング率とを有し、そのため、柱と表土との間の不一致が大きく、阻止帯域の帯域幅を大きくする。柱を形成する材料が、シールドの一端部から他端部へとシールド全体にわたって徐々に変化してもよい。
【0027】
本発明の表土は、柔らかい土(例えば、粘土を伴う堆積土)、沖積盆地、砂利、沖積層、泥炭、または砂であってよい。地面の下部にあり、かつ岩盤の上部にあるいかなる材料も、表土の一部であると考えられ得る。概して、表土の密度またはヤング率が小さければ小さいほど、柱との不一致を増加させ、これによって阻止帯域の帯域幅を拡大させるため、本発明はより効果的に作用する。
【0028】
本発明の第2の態様は、地震波シールドを区域の外周部の少なくとも一部に設置することにより、区域を地震波から遮蔽する方法を提供する。前述したように、地震波シールドは、地震波シールドの阻止帯域内の周波数を有する地震波の通過を防止する。このようなシールドを区域の外周部の周りに設置することは、阻止帯域の周波数の地震波が区域に入ることを防止し、したがって区域を遮蔽し、損害が地震波によって区域の内側で引き起こされることを防止する。
【0029】
地震波シールドは、建物の側面外周部の外側に位置決めされ得る。これは、地震波が建物の下で地上に到達することを防止し、そのため、建物への損害を防止する。代替として、地震シールドは、建物の側面外周部の内側の一部または全部に位置決めされてもよい。これは、地震波が建物に到達することを防止する。
【0030】
いくつかの実施形態では、柱は建物の側面外周部の内側で建物の下に位置決めされ得るが、建物の基礎ではない。いくつかの実施形態では、柱は建物に直接的に取り付けられない。これらの実施形態では、柱は建物の基礎の間に設けられてもよいが、シールドの柱は建物に取り付けられない。いくつかの実施形態では、柱は建物に直接的に接触せず、例えば、表土が柱と建物との間に存在し得る。
【0031】
また、構造に到達する地震波を防止することは、より小さい弾性歪みと、より小さい間隙圧力変化とをもたらし、したがって、土の液状化が起こる危険性を抑えることになる。
【0032】
本発明の第3の態様は、建物の外周部の一部に隣接して位置決めされる地震波シールドを備える、地震から遮蔽された建物を提供する。シールドの方向において、建物は、シールドの阻止帯域内の周波数を有する地震波から保護され、建物への損害の機会を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】建物を包囲する、本発明の実施形態であるシールドの、土を貫いた水平方向の断面図である。
図2】建物を包囲する、本発明の実施形態であるシールドの、鉛直方向の断面図である。
図3a】板が取り付けられている、本発明によるシールドの柱の斜視図である。
図3b】板が取り付けられている、本発明によるシールドの柱の上面図である。
図3c】板が取り付けられている、本発明によるシールドの柱の側面図である。
図4図3に示した柱から形成されたシールドの帯域図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
地震波は、前述したように、長距離を進行し、建物に損害をもたらすことがある。本発明による地震波シールドは、保護対象の区域または建物の周りに設置されることが可能であり、その結果、シールドは、これらの波がその区域または建物に到達することを防止するために、これらの波を反射する。
【0035】
本発明による地震波シールドの例は、表在する土(例えば、沖積層または泥炭)に埋め込まれた柱のセットを備え、柱は地質工学的な岩盤に留め付けられる。この例におけるヤング率Eの差異は以下のとおりである。
・ Ecolumn>100.Esuperficial soilおよび
・ Egeotechnical bedrock>5.Esuperficial soil
・ 1MPa<Esuperficial soil<10MPa
・ 5000<Ecolumn<30000MPa。
柱のための材料として使用され得るコンクリートのヤング率は、15,000~30,000MPaである。モルタル、または、土にセメントグラウトを加えた混合物のヤング率は、約5,000MPaである。柱は、表土との激しい材料差異を伴う材料から形成される。
【0036】
本発明の実施形態は、表土において、地上の下10~200メートルにある岩盤と接触して位置付けられた円筒形の柱のセットを有する。柱は、直径が25cm~1.5mの範囲にある。この例では、柱はコンクリートから作られており、柱の下部50cmが岩盤に埋め込まれている。柱は正方形の配列で位置決めされ、最も近くの隣接する柱から0.5~5mで離間される(直径の2~3倍の最小間隔を伴う)。
【0037】
最小の間隔は、シールドを組み立てている間の掘削作業の最中に、ある柱の、その最も近くに隣接する柱に対する影響によって決定され得る。柱同士が近すぎる場合、柱を作り出す間に生み出される掘削の影響が、隣接する柱の直径を縮小させ、それによってシールドの効率を低減させ得る。掘削機の経験は、0.5mから5mの間の最小間隔がこの影響の発生を抑えることができることを示している。
【0038】
この例における表土は柔らかい土であるが、概して、表土は、岩盤上において地上の高さまで存在する物質である。表土は、土、浮石、生物学的物質、砂、沖積層、泥炭、および/または他のものなど、多くの異なる物質から作られ得る。岩盤は、地上の下方で表土の下に位置する硬い岩である。
【0039】
このシールドは、0Hz~20Hzの地震波のための阻止帯域を有し、これは、この範囲内にある波がシールドによって反射されると共に一部吸収されることを意味する。エネルギーは熱として一部消散される。先に詳述したように、最も損害を与える地震波は、低周波数を有し、この範囲内にあるために、このシールドは、地震波による建物への損害を防止することにおいて非常に効果的である。これらの柱は、阻止帯域を生成できる一方で、先行技術で使用された掘削孔よりはるかに小さい直径を有するが、これは、柱が岩盤と接触しているためであると共に、コンクリートの密度および率が空気の密度および率よりはるかに大きいためである。柱の特性と表土の特性との間の不一致は、地震波の反射をもたらす。柱と岩盤との間の接触は、阻止帯域の帯域幅を拡大させ、阻止帯域の下限周波数を0Hzへとさせる。
【0040】
本発明の多くの実施形態は、レーリー(Rayleigh)、圧力、およびせん断波(すべての結晶学的方向について)についての完全な阻止帯域と、追加の部分的阻止帯域とを作り出す。
【0041】
本発明によるシールドのための阻止帯域の下限は、非常に低く、0Hzに近い。ゼロ周波数を通過させないシールドにおいて波動分散を数学的にもたらし、それによってゼロ周波数阻止帯域を生成するシールドが固定されるため、阻止帯域は0Hz近くで生成される。シールドにおける固定位置は、岩盤との接触にあることにより固定されるシールドにおいて、柱によって提供される。
【0042】
この実施形態では、柱を岩盤によりしっかりと留め付けるために、柱の下部50cmが岩盤に埋め込まれている。岩盤に柱をよりしっかりと取り付けることにより、前述した柱が岩盤と接触している効果を増加させる。岩盤に埋め込まれた柱は岩盤に留め付けられる。柱を岩盤に留め付けることにより、阻止帯域の下限周波数が低下させられ、阻止帯域の帯域幅が拡大させられる。
【0043】
他の実施形態における柱は、岩盤の表面と接触している可能性があり、または、岩盤に埋め込まれる可能性がある。好ましくは、柱は岩盤に0.3m超で埋め込まれる。概して、柱のより多くの部分が岩盤に埋め込まれれば、柱はよりしっかりと留め付けられ、阻止帯域の下限周波数は0Hzにより近づくことになる。
【0044】
柱に使用される材料は、表土より、より大きいかもしくはより小さい密度、より大きいかもしくはより小さいヤング率、より大きいかもしくはより小さい体積弾性率、および/または、より大きいかもしくはより小さいせん断弾性率を有し得る。柱の特性と表土の特性との間の不一致は阻止帯域を広げ、そのため、表土の特性と柱の特性との間の差がより大きくなると、シールドによって生成される阻止帯域の帯域幅がより大きくなる。したがって、柱が表土より大きい密度を有する場合、柱を形成するために使用される材料の密度がより大きくなり、生成される阻止帯域の周波数がより低くなる。
【0045】
材料パラメータ(例えば、密度、ヤング率、体積弾性率、および/またはせん断弾性率)における差異が大きすぎる場合、阻止帯域の帯域幅は縮小してしまうため、差異は適度に大きくても過度に大きくなるべきではなく、これは、達成可能な材料パラメータでのスペクトルにおける周波数帯域幅および場所の観点において、最適な低い周波数阻止帯域を達成するために最適化を必要とする。柱は表土の2倍未満の密度とすることができる。柱のヤング率は表土の200倍のヤング率より小さくできる。柱のせん断弾性率は表土の300倍のせん断弾性率より小さくできる。
【0046】
この実施形態における柱はコンクリートから作られている。コンクリートは、土または浮石からしばしば作られる表土(この実施形態では柔らかい土)よりはるかに大きい密度およびヤング率を有する。したがって、阻止帯域によって網羅される周波数の範囲を増加させ、帯域を広げ、そのためより多くの地震波がシールドを通じて伝播することを止める表土とコンクリートの間の不一致が大きい。他の実施形態では、柱は、同じく表土より大きい密度およびヤング率を有する鋼鉄から作られ得る。ゴムが柱を形成するために使用されてもよい。コンクリートのパラメータの典型的な値が[表1]に示されており、いくつかの種類の堆積土のパラメータの典型的な値が[表2]に示されている。
【0047】
代替として、2つ以上の媒体の複合材料の柱が検討できる。柱の一部が、例えば鋼鉄といったより硬い材料から形成され、柱の一部が、例えばコンクリートまたはゴムといったより柔らかい材料から形成されてもよい。例えば、柱は、鉛直方向に柱の上へと交互になっているコンクリートの層と鋼鉄の層とから作られてもよい。または、柱は、柱およびシールドの反射特性を向上させるために、コンクリートおよび鋼鉄の交互の円形区域を伴う同心円の断面を有してもよい。これは、製造することと帯域幅を向上させることとの両方の観点において魅力的である。別の代替は、柱がコンクリートの柱を包囲する鋼鉄のスリーブから形成されることである。
【0048】
柱は、コンクリートとゴムとの組み合わせから代替として形成され得る。コンクリートとゴムとの同心の層が、柱を形成するために使用されてもよい。径方向の層(径方向ではなく方位角における交互の層)を検討することもできる。
【0049】
柱の好ましい直径および間隔は、ナビエ方程式(Navier equations)についてのフロケ-ブロッホ(Floquet-Bloch)の理論に基づく数値解法によって決定され、帯域図の計算を伴う。阻止帯域は、柱の間隔が波長より10~100倍小さいときに現れることができる。柱の数の増加によって地震波の減衰に指数的な増加があるため、より多くの柱の方がより良いことは、留意されたい。
【0050】
いくつかの実施形態では、シールドの異なる部分における充填割合(シールドの体積の割合としてのすべての柱の全体積)が異なってもよい。例えば、波に最も曝されるシールドの部分(例えば、地震波の発生源を向く部分)は、より高い充填割合を有してもよく、発生源からより遠いシールドの部分は、より低い充填割合を有してもよい。これは、柱を製作するために必要とされる材料の量を低減し、シールドを建築するために要求されるコストおよび労力を低減する一方で、最も重要な領域において高レベルの保護を維持する。
【0051】
充填割合は、シールドのすべての柱の体積を合計し、これをシールドの全体積(配列の内部の柱および表土を含む)によって割ることにより計算される。
【0052】
充填割合は、好ましくは15%を超える。より好ましくは、充填割合は19%を超える。より好ましくは、充填割合は50%を超える。部分的阻止帯域の出現は、正方形の単位セルの0.25の内包の半径に対して見られ、そのため0.25*0.25*3.14=0.19(19%)の面積割合である。大きい(および完全な、つまり、すべての極性および結晶学的方向について)阻止帯域が、0.4より大きい半径について観測でき、そのため50%の面積割合について観測できることは、留意されたい。充填割合は、シールドの設置をより実用的とするように、10~20%未満であり得る。
【0053】
柱は、柱を介しての岩盤へのシールドの固定点によって、シールドの特性を変え、それによってシールドを通る地震波の分散を変える。これは、阻止帯域をもたらし、具体的には、柱と岩盤との接触から生じるピン留め効果によって引き起こされる0Hzの近くの阻止帯域をもたらす。有効性は、シールドにおける柱の充填割合によって影響される。先に詳述したように、ピン留め効果は、柱を岩盤において留め付けることにより増加させられる。
【0054】
この実施形態では、柱は周期的な正方形の配列で地上に配置されている。三角形または六角形の配列など、他の配列が用いられてもよい。好ましくは、シールドの幅(先に詳述したように止められる地震波の伝播の方向における幅)は、3列以上の柱をシールドにおいて許容するために、柱同士の間の間隔の少なくとも2倍である。
【0055】
配列の周期性は、阻止帯域を生成することと、地震波を反射することとにおける二次的な要因であるが、これは、波長が柱の間隔と比較して大きく、そのため柱が必ずしも周期的なパターンで配置される必要がないためである。柱は準無作為パターンまたは準周期的(例えば、ペンローズ(Penrose))パターンで配置され得る。柱は、代替として、シールドによって覆われる区域において無作為に配置され得る。柱の位置は、区域における障害物(建物または道路など)を回避するために選択され得る、または、要求される柱の高さを抑えるために岩盤が表面のより近くにある場所が選択され得る。柱の配置(間隔および/または格子の形)が、シールドの一端部から他端部へとシールド全体にわたって徐々に変化してもよい。
【0056】
この実施形態における柱の形は円筒形である。他の実施形態は、柱について異なる形(三角形、正方形、五角形、六角形、円形、長方形、楕円形、星形)および断面を使用してもよい。1つのシールドの中での柱同士は異なる形であってもよく、柱の断面の形は、シールドの一端部から他端部へとシールド全体にわたって徐々に変化してもよい。柱の断面は、柱の長さ(高さ)に沿って一定である必要はない(例えば、断面が、岩盤から上向きに斜めに伝播する体積地震波を反射するために、鉛直方向において追加の阻止帯域を作り出すために、長さに沿って周期的に変化してもよい)。
【0057】
柱は、岩盤から地上の表面に向けて延びるが、土または舗装が覆っている状態で柱の上面を地上の下に(例えば、1~5m下に)有する可能性がある。柱の高さは、シールドの領域における表面岩盤の深さに依存する。この例では、柱の高さは10メートルである。他の実施形態では、約50メートルの柱が使用され得る。地上の下の岩盤の深さのため必要な場合には、10メートルから200メートルの間の高さの柱が使用され得る。岩盤がこれより深い場合、より高い柱が岩盤の深さに到達するために使用され得る。岩盤の上の土の深さは約15mであり得るし、岩盤の深さは約5mであり得る。
【0058】
柱または柱のサブセットが、板によって結合されてもよい。これらの板は、コンクリート、鋼鉄、コンクリートと鋼鉄との組み合わせ、または別の剛体の材料から作られ得る。板は、柱の安定性を向上させ、追加の阻止帯域を差し込む。板は、地上表面の下における約5メートルに位置付けられ得る。板は、隣接する柱の間で延び得る。板は水平方向に延び得る。板はまた、岩盤と接触し得る、または、岩盤に埋め込まれ得る。板は、平面状の形を有しすることができ、実質的に鉛直である。柱の増加した安定性は留め付けの効果を増加させ、それによって、柱がそれらの相互連結のおかげでよりしっかりと固定されるため、阻止帯域の下限周波数を低下させる。板の追加は、シールドが質量を連結する梁の格子に近づけられ得るため、追加の阻止帯域を作り出す。これは、梁の振動と関連付けられる追加の阻止帯域を作り出す。
【0059】
柱は、隣接する柱同士を結合する板の格子によって、すべて互いに取り付けられてもよい。例えば、柱が正方形または長方形の格子で配置される場合、板は各々の柱をその4つの最も近い隣接するもの(三角形の格子について3つなど)に取り付けることができる。
【0060】
シールドの柱が、柱の形であって柱の大きさの穴を、地上の中へと表土を貫いて、岩盤表面まで下へと掘削することにより生成される。柱が岩盤へと埋め込まれる場合、穴は、掘削によって岩盤へと必要な距離で延ばされる。そのため、穴は、コンクリートであり得る所望の材料で充填される。柱がコンクリートを含む場合、固まっていないコンクリートを穴へと注ぐことにより柱はシールドの内部に形成でき、そのため、次にコンクリートは柱を形成するために固まる。
【0061】
本発明は、街の境界の周りにシールドを配置することにより街全体を保護するために実施されてもよい。本発明は、原子力発電所または石油精製所などの重要な施設の境界の周りにシールドを配置することにより、施設を保護するために実施されてもよい。シールドは、保護される建物または構造の境界から5メートル未満に位置決めされ得る。個々の建物は、建物の境界の周りにシールドを配置することにより、本発明によって保護され得る。シールドは、建物がシールドの上に位置しないように建物から側方へと離間され得る。シールドは、建物の外周部から2~10メートルの間に位置決めされ得る。シールドは、建物が遮蔽の上に位置しないように、あらゆる建物の側面外周部の外側にあり得る。シールドは、橋、ダム、空港、原子力設備、および、さらには街を保護することもできる。シールドの柱は、保護される建物または構造と別にされて連結されなくてもよい。シールドは、構造または建物に直接的に連結されないように位置決めされ得る。
【0062】
区域は、地震波が生成された区域から地震波が出て行くのを防止するために、シールドを発生源に位置決めすることにより、例えば鉄道または振動機器からの、局所的に生成された地震波からも保護できる。これは、より実用的でコスト効果があるため、1つの場所において使用される機器によって生成される地震波から複数の建物が保護されることになる密集した区域において起こる建築工事において、特に有用である。
【0063】
シールドは、地震波の局在化された発生源から区域を主に保護する場合、発生源を向く区域の側だけに配置されてもよい。地震波の発生源があらかじめ分からない場合(例えば、地震帯において)、シールドは、保護される区域の境界全体の周りに配置され得る。
【0064】
本発明の実施形態が図1に示されており、地震波シールドが、保護される建物の周りに位置決めされている。2列の円筒形の柱1があり、柱は正方形の格子の点に配置されている。柱は建物2から離間されており、そのため建物は柱の上に位置していない。湾曲した矢印は、建物に近づいてくる地震波を示しており、地震波はシールドによって止められる。地震波は、表面レーリー波R、バルク圧力波P、およびせん断波Sから作られている。この実施形態では、表土は土3である。柱は、柱の下部が岩盤に埋め込まれるため、岩盤に留め付けられている。
【0065】
図2は、図1の実施形態と同様であるが、シールドを作る4列の柱1を有する、本発明の別の実施形態を示している。この図は、土3を通じて建物2に向かって進行するバルク圧力波P、せん断波S、およびレーリー(表面)波Rがシールドによってすべて止められることを示している。柱の下部は、岩盤4に埋め込まれているとして見られる。柱は、領域6をレーリー表面波R、バルク圧力波P、およびせん断波Sから保護する。
【0066】
板5が取り付けられている柱1が図3に示されている。図は、柱および板を見えるようにするために表土が透明にされている、シールドの単位セルを示している。単位セルは1つの柱を含んでいる。柱は円筒形であり、30cmの直径を有している。岩盤の上での柱の高さは15mであり、岩盤に埋め込まれている柱の下部の高さは80cmであり、したがって柱の全体の高さは15.8mである。柱は、隣接する柱同士の間で延びる4つの板に取り付けられている。板5は10cmの厚さで1.7mの幅である(各々の板の半分だけが単位セルに示されている)。板は柱と同じ高さ(15.8m)である。シールドは、正方形の配列において互いの隣に図3の単位セルを多数配置することにより形成されている。板は、2つの隣接する柱の表面同士の間で延びている。
【0067】
図3に示された柱から作られたシールドについての帯域図が図4に示されている。これは、20Hz未満の周波数についての阻止帯域を示している。これは、図3の単位セルの正方形の配列から作られたシールドが20Hz未満の周波数を伴う地震波を止めることを意味している。
【0068】
柱を形成する材料の例であるコンクリートのパラメータの典型的な値が[表1]に示されている。表土を形成する材料の例であるいくつかの種類の堆積土のパラメータの典型的な値が[表2]に示されている。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
地震のシールドの一例では、1.2mの直径を各々有する多数の鋼鉄(7850kg/m3の密度)の円筒形の柱が、5mの深さである岩盤の上で、15mの深さである土の表土で使用される。各々の柱の下部が岩盤に埋め込まれ、下部は80cmの高さを有する。柱は、最も近くの隣接する柱の中心同士の間の距離が2mとなるように、正方形の配列で配置される。柱は、表土の表面に到達するように15.8mの高さである。約4.5Hzまでのゼロ周波数バンドギャップが、このようなシールドによってもたらされる。
【0072】
多数の柱は、10本の柱の3つの列で配置された30本の柱であり得る。
【0073】
地震のシールドの他の例では、0.2mの直径を各々有する多数の鋼鉄(7850kg/m3の密度)の円筒形の柱が、5mの深さである岩盤の上で、15mの深さである土の表土において使用される。柱は、最も近くの隣接する柱の中心同士の間の距離が2mとなるように、正方形の配列で配置される。さらに、柱は、厚さが0.2mの鋼鉄の板によって、最も近くの隣接する柱の各々に、各々結合される。したがって、柱と板とが一緒になって十字形の断面を有する。柱の下部80cmと板とが岩盤に埋め込まれる。柱は、表土の表面に到達するように15.8mの高さである。このシールドは、柱が岩盤に埋め込まれず、15mの高さとなるように、柱の下部を除去することにより変更されてもよい。このシールドは、柱が岩盤に埋め込まれず、15mの高さとなるように、柱の下部を除去することにより変更されてもよい。約26Hzまでのゼロ周波数バンドギャップが、このようなシールドによってもたらされる。この例のシールドは、0.3mの直径の柱を作ることにより変更されてもよい。
【0074】
地震のシールドの他の例では、0.3mの直径を各々有する多数の鋼鉄(7850kg/m3の密度)の円筒形の柱が、5mの深さである岩盤の上で、15mの深さである土の表土において使用される。柱は、最も近くの隣接する柱の中心同士の間の距離が2mとなるように、ハチの巣状の配列で配置される。さらに、柱は、厚さが0.3mの鋼鉄の板によって、最も近くの隣接する柱の各々に、各々結合される。柱の下部80cmと板とが岩盤に埋め込まれる。柱は、表土の表面に到達するように15.8mの高さである。約20Hzまでのゼロ周波数バンドギャップが、このようなシールドによってもたらされる。
【0075】
六角形の格子を使用する同様の配列が、約18Hzまでのゼロ周波数バンドギャップを生成できる。
【0076】
地震のシールドの他の例では、0.3mの直径を各々有する多数の鋼鉄(7850kg/m3の密度)の円筒形の柱が、5mの深さである岩盤の上で、15mの深さである土の表土において使用される。柱は、最も近くの隣接する柱の中心同士の間の距離が2mとなるように、正方形の配列で配置される。柱は、岩盤から7.5mの高さに位置付けられる0.2mの厚さの水平方向の鋼鉄の板を貫通している。このシールドは、3つまたは7つの等しく離間された水平方向の板を有するように変更され得る。柱は、表土の表面に到達するように15.8mの高さである。
【0077】
地震のシールドのさらなる例では、0.6mの半径を各々有する多数の鋼鉄(7850kg/m3の密度)の円筒形の柱が、5mの深さである岩盤の上で、15mの深さである土の表土において使用される。各々の柱の下部が岩盤に埋め込まれ、下部は80cmの高さを有する。柱は、最も近くの隣接する柱の中心同士の間の距離が2mとなるように、正方形の配列で配置される。柱は、表土の表面に到達するように15.8mの高さである。このシールドは、柱が岩盤に埋め込まれず、15mの高さとなるように、柱の下部を除去することにより変更されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 柱
2 建物
3 土
4 岩盤
6 領域
P バルク圧力波
R 表面レーリー波
S せん断波
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4