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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】移送保護を有する金属ストリップ
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/00 20060101AFI20220105BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20220105BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220105BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B05D5/00 A
B05D7/14 G
B05D7/24 301E
B32B15/08 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019526272
(86)(22)【出願日】2017-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 AT2017060308
(87)【国際公開番号】W WO2018094435
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】A51061/2016
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513268210
【氏名又は名称】ベルンドルフ バント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ゲーアノート フロール
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヤンクシク
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】オーストリア国特許発明第00514126(AT,B)
【文献】米国特許第09273214(US,B1)
【文献】特開平05-065437(JP,A)
【文献】米国特許第06964989(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高輝度研磨された表面を有する金属ストリップ(1)に移送保護を設ける方法であって、金属ストリップ(1)がステップi)においてプラスチックによってコーティングされて、ステップii)において多層で巻き上げられ、ステップi)においてプラスチックが液状又はペースト状の形状で金属ストリップ上へ塗布されて、硬化される、ものにおいて、
ステップi)において、プラスチックとして有機溶剤ベースの剥離樹脂が塗布されており、前記高輝度研磨された表面が剥離樹脂で完全にコーティングされていることを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップi)において塗布された剥離樹脂が乾燥されて、それに続くステップにおいて、機溶剤ベースのカバー樹脂の少なくとも1つの層によってオーバーコートされる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
剥離樹脂と有機溶剤ベースのカバー樹脂がスプレイされる、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
ステップi)において塗布される剥離樹脂が、30~60重量パーセントの溶剤含有量を有し、溶剤としてルエン及び/又はアセトンが使用される、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップi)において塗布される剥離樹脂が、30~60重量パーセントのプラスチック含有量を有している、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
金属ストリップにおいて、
金属ストリップが請求項1から5のいずれか1項に記載の方法に従って移送保護を設けられており、かつ金属ストリップ(1)上に直接付着する溶剤ベースの剥離樹脂を有している、ことを特徴とする金属ストリップ。
【請求項7】
金属ストリップが、高輝度研磨された表面を有しており、前記表面が剥離樹脂によって完全にコーティングされている、ことを特徴とする請求項6に記載の金属ストリップ。
【請求項8】
剥離樹脂が、50μmと100μmの間の層厚を有している、ことを特徴とする請求項7に記載の金属ストリップ。
【請求項9】
金属ストリップが、剥離樹脂上に塗布された、有機溶剤ベースのカバー樹脂からなる少なくとも1つの層を有し、剥離樹脂とカバー樹脂とからなる保護層(3、4)の全体厚みが、100μmと200μmの間である、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の金属ストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップに移送保護を設ける方法に関するものであって、その場合に金属ストリップはステップi)においてプラスチックでコーティングされて、ステップii)において多層に巻き上げられて、その場合にステップi)においてプラスチックは液状又はペースト状の形状で金属ストリップ上へ塗布されて、硬化される
【背景技術】
【0002】
金属ストリップは、所定の使用目的のためにきわめて高い表面品質をもって形成されて、たとえば研磨され、あるいは特に高輝度に磨き上げられる。この種の金属ストリップは、たとえば特にフォトグラフィ、LCDスクリーン用、あるいはまた人造石(”Engineered Stone”)用のフィルムのために、プレート形状又はフィルム状の材料を形成するために、使用される。そのために液状又はペースト状の材料が、駆動され/移動されるストリップ上に塗布されて、少なくとも部分的に硬化した材料が取り外される。この種の金属ストリップによって形成された製品の表面品質は、金属ストリップの表面品質に直接依存している。
【0003】
金属ストリップの要求される表面品質は、通常、工場生産の枠内でしか得られず、それによってできあがった金属ストリップはできるだけ損傷なしで後の使用場所まで移送されなければならない、という要請が生じる。この目的のために、従来技術に基づく金属ストリップは、自己接着するプライフィルムを貼られ、そのプラスチックフィルムが移送路上の金属ストリップをひっかき傷から、そしてある程度までは尖った対象の侵入に対しても保護する。このプラスチックフィルムは、使用場所において再び引き剥がされる。
【0004】
この方法には欠点があって、接着フィルムは通常残滓なしでは引き剥がせない。金属ストリップ上の接着剤の残りが裸眼ではもはや見えない場合でも、それらは金属表面上に証拠を残している。このような最少の汚れでも、金属ストリップを使用する後の製造プロセス(たとえばプレート形状又はフィルム形状の材料の形成)の障害となるので、金属ストリップは手間をかけてきれいにされなければならない。これは、表面品質が高いことにより、特殊な手段でしか可能とならない。というのは、柔らかい布で拭くこと、あるいは接着剤の残りを「こすり取る」ことでもすでに、金属ストリップの表面品質を損ないかねないからである。溶剤の使用も、大体において除外される。というのは溶剤も通常望ましくない残滓を金属ストリップ上にもたらすからである。
【0005】
したがって、特許文献1(オーストリア国特許出願公開第514126(A1)号明細書)からは、上述した欠点を克服するために、金属ストリップの表面を保護するために、シリコンゴムからなるコーティングあるいは溶剤としての水ベースの、プラスチック箔の形状のコーティングを金属ストリップ上に取り付けることが、知られている。引き剥がし可能な表面コーティングが、特許文献2(米国特許第9273214(B1)号明細書)から知られている。
【0006】
しかしながら、高輝度研磨された表面とそれによって形成された製品に対する品質要請が高くなることにより、最小限の残滓でも障害と見なされることが、明らかにされている。しかし水ベースのコーティングもしくはシリコンゴムにおいては、プラスチックフィルムを引き剥がす場合に、金属ストリップの表面上にわずかに残滓が残ってしまうことがあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】オーストリア国特許出願公開第514126(A1)号明細書
【文献】米国特許第9273214(B1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、従来技術の上述した欠点を克服して、最高品質の表面のために、移送保護として用いられるフィルムの残滓のない引き剥がしを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上で挙げた課題は、冒頭で挙げた種類の方法によって、本発明によれば、ステップi)においてプラスチックとして有機溶剤ベースの剥離樹脂が塗布されることによって、解決される。
【0010】
驚くべきことに、有機溶剤ベースの剥離樹脂においては、たとえばフィルム鋳造工業においてそうであるような、最高の品質要請に合致しなければならない高輝度研磨された表面においても、金属ストリップから剥離樹脂を引き剥がした後に、表面上及びその上で形成された製品、たとえばスクリーン内に、いかなる残滓も認識されないことが、明らかにされた。
【0011】
保護層が金属ストリップから残滓なしで引き剥がせる効果の他に、好ましい清掃作用も得られる。金属ストリップのコーティングの間、汚れとほこりの粒子が金属ストリップに付着して、その結果保護層に囲い込まれることは、是認できる技術的手間においては100パーセントの確実性をもって排除することはできない。
【0012】
接着箔を有する従来の方法においては、これにより、場合によってはこの汚れとほこりの粒子が接着剤残渣によってかなり強く金属ストリップに付着して、除去するのが困難になってしまう。特にクリーニングプロセスは、各機械的な清掃(たとえば拭くことやブラシかけ)がほぼ不可避的に、汚れとほこりの粒子による金属ストリップのひっかき傷をもたらすことにより、困難になる。
【0013】
しかし提示される方法によれば、汚れとほこりの粒子は保護層と共に引き剥がされ、その場合に敏感な金属表面と部分的にきわめて硬い汚れ及びほこりの粒子との間の研磨するような相対移動がもたらされることはない。特に、保護層の付着力又は接着力が、ほこり粒子の静電的な引きつけ力よりも大きいと、効果的である。
【0014】
したがって最終結果において、提示された保護層を使用する場合には、保護層が移送する際の機械的な損傷に対する、あるいは他の環境影響(たとえば腐食、特に海路で移送する場合)に対する保護に加えて、金属ストリップから残滓なしで再び引き剥がせるだけでなく、付加的に金属ストリップも清掃する限りにおいて、相乗作用が生じる。したがって金属ストリップは、通常、保護層の引き剥がし後に、即座に使用できる状態である。
【0015】
剥離樹脂を機械的な負荷に対して保護するために、ステップi)において塗布された剥離樹脂が乾燥されて、それに続くステップにおいて、特に有機溶剤ベースの、カバー樹脂の少なくとも1つの層によってオーバーコートされる。
【0016】
金属表面における最適な付着を得ることに関して特に効果的であり、かつできる限り一定かつ定められた層厚を得るために、剥離樹脂とカバー樹脂はスプレイすることができる。
【0017】
ステップi)において塗布される剥離樹脂が、30~60重量パーセントの溶剤含有量を有しており、その場合に溶剤として特にトルエン及び/又はアセトンが使用されると、残滓の回避に関して特に効果的であることが明らかにされている。さらに、ステップi)において塗布される剥離樹脂は、30~60重量パーセントのプラスチック含有量を有することができる。
【0018】
上で挙げた課題は、冒頭で挙げた種類の金属ストリップによっても解決され、本発明によれば、金属ストリップが請求項1から5に記載の方法に従って移送保護を設けられており、かつ金属ストリップ上に直接付着する溶剤ベースの剥離樹脂を有していることによって、解決される。
【0019】
たとえばTACフィルム鋳造方法において、特に金属ストリップのできる限りパーフェクトな表面を必要とする適用に適した、本発明の変形例によれば、金属ストリップは高輝度研磨された表面を有することができ、その表面が剥離樹脂によって完全にコーティングされている。
【0020】
剥離樹脂の良好な付着も、良好な引き剥がし力も得ることに関して、特に効果的であるとして、剥離樹脂は50μmと100μmの間の層厚を有することができる。
【0021】
さらに金属ストリップが、剥離樹脂上に直接設けられる、カバー樹脂からなる少なくとも1つの層を有し、その場合に剥離樹脂とカバー樹脂とからなる保護層の全体厚みが100μmと200μmの間である場合に、移送保護の付着特性又は引き剥がし特性を損なうことなしに、金属ストリップの表面の最適な保護を得ることができる
【0022】
本発明をさらによく理解するために、以下の図を用いて本発明を詳細に説明する。
図は、それぞれ著しく簡略化された図式的な表示である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】コア上に螺旋形状に巻き上げられた、互いに重なり合う層を有する金属ストリップを示している。
図2】コア上に螺旋形状に巻き上げられた、互いに離隔した層を有する金属ストリップを示している。
図3】片側がコーティングされた金属ストリップを詳細に示している。
図4】両側がコーティングされた金属ストリップを詳細に示している。
図5】巻き上げプロセス前のエンドレスの金属ストリップを示している。
図6図5のエンドレスの金属ストリップを巻き上げプロセス後に示している。
図7】液状のプラスチックを吹き付けるためのスプレイ装置の例を示している。
図8】保護層の引き剥がしプロセスを図式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
最初に記録しておくが、異なるように記載される実施形態において、同一の部分には同一の参照符号ないし同一の構成部分名称が設けられており、その場合に説明全体に含まれる開示は、同一の参照符号ないし同一の構成部分名称を有する同一の部分へ意味に従って移し替えることができる。また、説明内で選択される、たとえば上、下、側方などのような位置記載は、直接説明され、かつ示される図に関するものであって、この位置記載は位置が変化した場合には意味に従って新しい位置へ移し替えられる。
【0025】
図1は、金属ストリップ1を巻き上げる第1の可能性を示している。この場合において、金属ストリップはコア2の回りに螺旋形状に巻かれており、その場合に個々の層は互いに重なり合っている。
【0026】
図2において、金属ストリップ1は同様に螺旋形状に巻かれているが、その場合に個々の層は互いに離隔している。
【0027】
図3は、保護層3の例を示しており、この場合においてその保護層は金属ストリップ1の片側だけ付着している。
【0028】
それに対して図4においては、両側に保護層3、4を有する金属ストリップ1が示されている。
【0029】
図1図2に示す巻き技術は、有端の金属ストリップ1を巻き上げ/巻き付けるのに適している。それに対して図5図6には、エンドレスの金属ストリップ1を巻き上げる巻き技術が示されている。その場合に金属ストリップは、第1と第2のコア5、6の回りに載置される。そして外部から第3のコア7が金属ストリップ1上に載置される。第1と第3のコア5と7は固定される(たとえばこれらはバーを介して互いに螺合することができる)が、第2のコア6はコア5と7の回りを矢印方向に移動され、それによって金属ストリップ1が巻き上げられる。その場合には、図6に示すような配置が生じる。生じた複合体を安定させるために、第2のコア6は同様にバーを用いて第1及び第3のコア5及び7と螺合することができる。
【0030】
本発明によれば、金属ストリップ1を巻き上げもしくは巻き付ける前に、金属ストリップが第1のステップi)において、有機溶剤ベースの剥離樹脂によってコーティングされる。液状の剥離樹脂は、たとえば30~60重量パーセントの有機溶剤及び30~60重量パーセントのプラスチックを有することができる。プラスチックは、たとえばポリオレフィン、たとえば高密度と低密度のポリエチレン(PE)あるいはポリプロピレン(PP)とすることができる。しかしそのほかに、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチロール(PS)、種々のポリエステルとポリカーボネート(PC)あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)も適している。さらに、添加物を添加することもできる。
【0031】
剥離樹脂は、溶剤の蒸発後に、引き剥がし可能に付着するプラスチック箔の形式のプラスチック層を形成し、そのプラスチック箔は金属ストリップ1の表面から破壊されずに引き剥がされる。好ましくは金属ストリップ1上の乾燥された剥離樹脂の層厚は、50μmと100μmの間である。
【0032】
図7は、どのようにして液状の剥離樹脂を金属ストリップ1上に塗布することができるかの、第1の可能性を図式的に示している。その場合に金属ストリップ1は2つのローラ8、9を介して案内されて、移動され、そのようにしてスプレイ装置10を通過し、そのスプレイ装置が液状の剥離樹脂を金属ストリップ1上へスプレイする。スプレイ装置10は、金属ストリップ1の幅全体にわたって延びるスプレイビームとして形成されている。さらに、いわゆるエアレススプレイ方法に従ってスプレイが行われる。金属ストリップの移動方向においてスプレイ装置10の後方に、図示されない乾燥ドラムを配置することができ、その乾燥ドラム内で剥離樹脂が乾燥する。
【0033】
剥離樹脂の乾燥後に、それに続くステップにおいて剥離樹脂が、好ましくは有機溶剤ベースのカバー樹脂によって被覆塗装される。その場合にカバー樹脂は、剥離樹脂と同様にスプレイ装置10によってスプレイすることができ、その場合にスプレイビーム10の下を金属ストリップ1が複数回完全に周回することによって、複数のカバー樹脂層をスプレイすることができる。
【0034】
図7においては、片側のコーティングが示されているが、金属ストリップ1の両側をコーティングすることも、もちろんできる。たとえばそのために、ストリップ内側にも第2のスプレイ装置を設けることができ、あるいは第1の側のコーティング後に金属ストリップ1がひっくり返される。スプレイ装置の代わりに、液状の剥離樹脂を塗りつけ、あるいはローラで塗る装置を設けることも、同様にできる。
【0035】
図8は、金属ストリップ1をコーティングする他の可能性を示している。ここでも金属ストリップは2つのローラ8、9を介して案内され、かつ移動される。しかしここではスプレイ装置10の代わりに、液状のプラスチックを有する浸漬槽が設けられており、それを通して金属ストリップ1が引き出される。その場合にそれぞれ浸漬深さに応じて、金属ストリップ1は片側をコーティングされ、あるいは1つの作業工程で両側をコーティングすることもできる。
【0036】
さらに、金属ストリップ1がその全長にわたってコーティングされていると、効果的である。というのは、それによって特に良好な保護が与えられ、特に巻き上げられた金属ストリップ1の層が滑る場合の保護も与えられているからである。特に好ましくは、金属ストリップ1は高輝度研磨された表面を有し、その表面は製品を形成するために使用されるプロセス表面として用いられ、かつ剥離樹脂で完全にコーティングされている。
【0037】
一般的に、図7図8に示す方法は、エンドレスの金属ストリップ1のコーティングに限定されるものではない。もちろんこのようなやり方で有端の金属ストリップ1もコーティングすることができ、それにおいてたとえば金属ストリップが1つのローラから繰り出されて、コーティングされて、その後に他のローラへ巻き上げられる。
【0038】
コーティング後に金属ストリップ1は、それに続くステップii)において、たとえば図5図6に示すように、巻き上げられる。それによって金属ストリップ1は、巻き上げる際にすでに保護されている。さらにそれによって比較的簡単なやり方で、金属ストリップ1は全面において、剥離樹脂とカバー層とからなる保護層3、4によって覆われている。それによって保護層3、4の検査も、比較的簡単に可能である。巻き上げも、個々の層が互いに重なるように、あるいは互いに離隔したままであるように、行うことができる。
【0039】
巻き上げられた金属ストリップ1の個々の層が互いに重なり合う場合に、それぞれコーティングと巻き上げ後に、1つのプラスチック表面と1つの金属表面あるいは2つのプラスチック表面が互いに出合う。金属ストリップ1が、たとえば図3に示すように片側だけコーティングされて、図1に示すように巻き上げられた場合に、(硬化された)プラスチック層3が金属表面へ当接する。両側がコーティングされる場合には、プラスチック層3が他のプラスチック層4上へ当接する。以下の考察については、この後者の場合であるものとする。
【0040】
金属ストリップ1とその上に付着している保護層3の間、もしくは金属ストリップ1とその上に付着している保護層4の間の、第1の付着摩擦係数が、保護層3、4の2つの硬化した境界層の間の摩擦を特徴づける第2の付着摩擦係数よりも大きいと、効果的である。すなわち言い換えると、滑りは、金属ストリップ1と保護層3もしくは保護層4との間ではなく、保護層3、4の間で開始される。それによって好ましくは、巻き上げられたボディの層が滑り移動した場合に、保護層3、4によって包まれている金属表面の異物が金属表面にひっかき傷をつけることが、回避される。このようにして保護層3、4の剥がれも、回避される。
【0041】
同様な考察は、保護層3が金属表面1上に載置された場合も、成立する。その場合には、金属ストリップ1と液状のプラスチックが塗布される保護層3の間の第1の境界面と、金属ストリップ1とすでに硬化した保護層3の間の第2の境界面とが、区別されなければならない。ここでも第1の境界面における第1の付着摩擦係数が、第2の境界面における第3の付着摩擦係数よりも大きいと、効果的である。これは、滑り移動が第2の境界面において、したがって硬化したプラスチック表面3と金属ストリップ1の間で、導入され、付着するプラスチック層3と金属ストリップ1の間ではないことを、意味している。
【0042】
ここで注釈を加えると、金属ストリップ1と付着する保護層3の間の境界面においては、古典的な意味における摩擦だけでなく、付着に基づいて剪断力も作用し、そのために法線力は必要とされない。
【0043】
上述したことに関連して、硬化したプラスチック層3、4が耐ブロック性であると、特に効果的である。耐ブロック性というのは、一度硬化した層は、互いに圧接された場合でも、もはや互いに接着しない特性である。それによって、金属ストリップ1上に塗布された保護層3及び/又は4は、金属ストリップ1が巻き上げられた場合でも、互いに接着しないことが、保証されている。
【0044】
さらに、硬化したプラスチック層3が少なくとも180°だけ(図8の角度αも参照)、破壊されずに曲げることができ、すなわちそれが付着する金属表面に対して少なくとも垂直に曲げて上げることができると、効果的である。このようにして、保護層3を容易に引き剥がすことが可能になり、もしくは保証される。というのは、この保護層は引き剥がす際に、脆いコーティングがそうであるようには割れないからである。理想場合においては、保護層3は大体において1つの片として剥がすことができる。
【0045】
これに関連して、硬化したプラスチックの引っ張り強度と保護層3の厚みとの積が、そのピール強度よりも大きい場合、すなわち
【数1】
が成立する場合も、効果的である。
【0046】
これを明らかにするのが、部分的に引き剥がされた保護層3を有する金属ストリップ1の片を示す、図8である。ピール強度は、
【数2】
によって定義され、その場合にFAは、保護層3を引き剥がすのに必要な力を表し、bは、力FAが作用する引き剥がしエッジの長さである。引っ張り強度は、
【数3】
として定義され、その場合にFAは保護層内部で作用する力を表し、ここでもbは、引き剥がしエッジの長さを表し、sは保護層の厚みを表す。上の要請が満たされた場合に、保護層3は簡単に、特に1つの片で、引き剥がすことが可能になる。
【0047】
保護層3のピール強度が少なくとも0.1N/cm、かつ/又は最大で1N/cmであると、効果的である。このようにして、保護層3が手で引き剥がし可能であることが、保証される。その場合にさらに、保護層3の引っ張り強度が少なくとも0.1N/cm2、特に少なくとも1N/cm2であると、効果的である。というのは、それによって、引き剥がす際に保護層3が裂けないことが、保証されるからである。さらに、保護層の付着力が少なくとも0.1N/cm2かつ/又は最大で1N/cm2であると、効果的である(これについては、図8の面Aに関する付着力又は接着力FKを参照)。このようにして、保護層3は移送の間充分に付着しているが、手で引き剥がせることが、保証される。剥離樹脂とカバー樹脂とからなる保護層3の層厚sが、少なくとも100μmかつ最大で200μmである場合も、効果的である。この領域内では、プラスチック層3のための是認できる材料消費において、損傷に対す得る金属ストリップ1の良好な保護が与えられる。
【0048】
最後に形式的に指摘しておくが、構造を理解しやすくするために、部材は一部縮尺どおりではなく、かつ/又は拡大及び/又は縮小して示されている。
【符号の説明】
【0049】
1 金属ストリップ
2 コア
3 保護層
4 保護層
5 コア
6 コア
7 コア
8 ローラ
9 ローラ
10 スプレイ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8