(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】リチウムイオン組電池
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20220105BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220105BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220105BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20220105BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20220105BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220105BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H01M10/44 P
H01M4/587
H01M4/485
H01M10/0566
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2019544527
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2018033491
(87)【国際公開番号】W WO2019065190
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2017185433
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】由良 幸信
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-011596(JP,A)
【文献】国際公開第2014/142078(WO,A1)
【文献】特開2011-124166(JP,A)
【文献】特開2015-103370(JP,A)
【文献】特開2006-318074(JP,A)
【文献】特開2010-045963(JP,A)
【文献】特開2004-135424(JP,A)
【文献】特開2013-146159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H01M 4/485
H01M 4/587
H01M 10/052
H01M 10/0566
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列接続された複数のリチウムイオン単電池と、
前記
リチウムイオン単電池の各々に並列接続されるツェナーダイオードと、
を備え、前記ツェナーダイオードが、前記
リチウムイオン単電池の平均電圧において、前記
リチウムイオン単電池の容量の1/200以下の電流が流れることによって特性付けられる、リチウムイオン組電池。
【請求項2】
前記リチウムイオン単電池の負極が、チタン酸リチウム及びカーボンからなる群から選択されるいずれか1種を負極活物質として含む、請求項1に記載のリチウムイオン組電池。
【請求項3】
前記負極がチタン酸リチウムを含む場合、前記平均電圧が2.2~2.4Vであり、前記負極がカーボンを含む場合、前記平均電圧が3.6~3.8Vである、請求項2に記載のリチウムイオン組電池。
【請求項4】
前記負極が、チタン酸リチウムを負極活物質として含む、請求項
2又は3に記載のリチウムイオン組電池。
【請求項5】
前記負極が、チタン酸リチウム焼結体板を含む、請求項4に記載のリチウムイオン組電池。
【請求項6】
前記
リチウムイオン単電池が、リチウム複合酸化物を含む正極と、電解液又は固体電解質とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウムイオン組電池。
【請求項7】
前記リチウムイオン単電池は、縦及び横の寸法がそれぞれ50mm以下であり、厚みが2mm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウムイオン組電池。
【請求項8】
前記リチウムイオン単電池の容量が50mAh以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウムイオン組電池。
【請求項9】
前記
リチウムイオン組電池に含まれる前記リチウムイオン単電池の個数が2である、請求項1~8のいずれか一項に記載のリチウムイオン組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン組電池に関するものであり、より具体的には複数個のリチウムイオン単電池を含むリチウムイオン組電池に関する。リチウムイオン単電池及びリチウムイオン組電池はいずれもリチウムイオン二次電池とも称されるものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車や電気自動車等の高出力の電源が求められる用途において、複数のリチウムイオン単電池(単セル)を直列に接続してモジュール化することが一般的に行われている。しかしながら、このようなモジュール電池においては、各単電池の容量、劣化(サイクルや保存に起因する)及び自己放電のバラつきにより、各単電池の電圧にバラつきが生じる。そして、このような単電池の電圧のバラつきがあると、劣化が加速的に進行したり、過充電や過放電を起こしたりする等、安全上の問題がある。そのため、モジュール電池において各単電池の電圧を監視するシステムが一般的に使用されている。
【0003】
ところで、過充電状態等の電池の異常状態に起因する端子電圧の上昇を検出するため、ツェナーダイオードを用いることが知られている。ツェナーダイオードはある一定の逆電圧(ツェナー電圧又は降伏電圧と呼ばれる)を超えると逆電流が急激に増加するが、その急激な逆電流の増加によっても端子電圧がほとんど変化しないダイオードである。例えば、特許文献1(特許第4234940号公報)には、端子電圧の設定電圧への到達を検知する電圧検知機構と、設定電圧への到達の検知に連動して迂回電流路を形成して電流を流す迂回機構とを備える、リチウム二次電池が開示されており、電圧検知機構としてツェナーダイオードを用いることが提案されている。すなわち、リチウムイオン電池にツェナーダイオードを接続することで、端子電圧が設定電圧を超えた際に電流を流して電圧の上がらないようにすることが開示されている。したがって、この文献において、ツェナーダイオードはツェナー電圧(降伏電圧)を超える異常な端子電圧上昇を検知するものとして使用されている。
【0004】
一方、近年、リチウムイオン二次電池用の負極材料として、チタン酸リチウムLi4Ti5O12(以下、LTOという)が注目されている。LTOは、リチウム二次電池の負極材料として用いた場合、リチウムイオンの挿入/脱離に伴う体積変化が小さい、炭素負極よりもサイクル寿命と安全性に優れる、低温動作性に優れるといった利点がある。特に、エネルギー密度等を向上させるために、LTOを焼結させることが提案されている。すなわち、リチウム二次電池の正極又は負極としてLTO焼結体を用いることが提案されている。例えば、特許文献2(特許第5174283号公報)には、0.10~0.20μmの平均細孔径、1.0~3.0m2/gの比表面積、及び80~90%の相対密度を有し、かつ、酸化チタン結晶粒子を含有する、LTO焼結体が開示されている。特許文献3(特開2002-42785号公報)には、活物質の充填率が50~80%であり、厚さが20μmを超え200μm以下である、LTO焼結体が開示されている。特許文献4(特開2015-185337号公報)には、相対密度が90%以上であり、粒子径が50nm以上である、LTO焼結体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4234940号公報
【文献】特許第5174283号公報
【文献】特開2002-42785号公報
【文献】特開2015-185337号公報
【発明の概要】
【0006】
ところで、上述したような各単電池の電圧を監視するシステムを備えたモジュール電池は、サイズが大きいものであり、それ故、縦及び横の寸法がそれぞれ50mm以下で厚み2mm以下といったような、小型リチウムイオン電池向けの用途(すなわち小型、薄型及び省スペースが求められる用途)には適していない。一方で、特許文献1で提案されるように、ツェナーダイオードは小型の電圧検知機構として機能しうる。しかしながら、設定電圧に対応するツェナー電圧のツェナーダイオードを入手して単電池に普通に接続した場合、充電を止めると放電しなくてもツェナーダイオードを介して漏れ電流が大きく流れてしまうため、容量漏れ及びそれに伴う保存性能の低下といった問題がある。
【0007】
本発明者らは、今般、各リチウムイオン単電池にその容量に応じて規定される所定の特性のツェナーダイオードを並列接続し、かかるツェナーダイオード付き単電池を複数個直列接続することにより、容量漏れ及びそれに伴う保存性能の低下を最小限に抑えながらも、複数の単電池間の電圧バラつきや容量バラつきを常時自動的に補正することが可能な、簡素な構成のリチウムイオン組電池を提供できるとの知見を得た。
【0008】
したがって、本発明の目的は、容量漏れ及びそれに伴う保存性能の低下を最小限に抑えながらも、複数の単電池間の電圧バラつきや容量バラつきを常時自動的に補正することが可能な、簡素な構成のリチウムイオン組電池を提供することにある。
【0009】
本発明の一態様によれば、互いに直列接続された複数のリチウムイオン単電池と、
前記単電池の各々に並列接続されるツェナーダイオードと、
を備え、前記ツェナーダイオードが、前記単電池の平均電圧において、前記単電池の容量の1/200以下の電流が流れることによって特性付けられる、リチウムイオン組電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のリチウムイオン組電池の一例を示す回路図である。
【
図2】市販される10種類のツェナーダイオードの電流-電圧特性を示す図である。
【
図3】
図2に示されるツェナーダイオードA及びBの、1.5~2.9Vの範囲における電流-電圧特性を示す図である。
【
図4A】3mAhのリチウムイオン単電池における充放電曲線である。
【
図4B】
図2及び3に示されるツェナーダイオードBの2.3~2.7Vの範囲における電流-電圧特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に本発明のリチウムイオン組電池の一例が示される。
図1に示されるように、リチウムイオン組電池10は、複数のリチウムイオン単電池12と、ツェナーダイオード14とを備える。複数のリチウムイオン単電池12は互いに直列接続されている。そして、ツェナーダイオード14は単電池12の各々に並列接続されている。ツェナーダイオード14は、単電池12の平均電圧において、単電池12の容量の1/200以下(すなわち0.005以下)の電流が流れることによって特性付けられるものである。このように、各リチウムイオン単電池12にその容量に応じて規定される所定の特性のツェナーダイオード14を並列接続し、かかるツェナーダイオード14付き単電池12を複数個直列接続することにより、容量漏れ及びそれに伴う保存性能の低下を最小限に抑えながらも、複数の単電池間の電圧バラつきや容量バラつきを常時自動的に補正することが可能な、簡素な構成のリチウムイオン組電池を提供することができる。
【0012】
すなわち、複数のリチウムイオン単電池を直列接続して組電池とすることで、高出力化を図ることができる。しかしながら、この場合、前述したように、組電池全体の電圧の制御のみでは、各単電池の容量、劣化及び自己放電のバラつきにより、各単電池の電圧にバラつきが生じうる。このような単電池の電圧のバラつきがあると、劣化が加速的に進行したり、過充電や過放電を起こしたりする等、安全上の問題がある。このような複数の単電池間の電圧のバラつきは、複数の単電池間で初期容量、自己放電速度、劣化速度等のあらゆる特性が同一であれば本来は生じないものであるが、かかる完全同一の特性を有する単電池の製造は現状の製造技術水準では困難である。したがって、単電池の電圧のバラつきを無くす手段として、各単電池の電圧を監視及び制御するシステムやセルバランサーが従来使用されている。しかし、かかるシステムやセルバランサーは大掛かりなものであり、小型リチウムイオン電池向けの用途(すなわち小型、薄型及び省スペースが求められる用途)、例えば、小型リチウムイオン電池を内蔵したスマートカード(無線通信IC、指紋解析用ASIC及び指紋センサを備えた、指紋認証・無線通信機能付きカード等)や小型リチウムイオン電池を内蔵したRFIDタグ(IC回路及びアンテナを備えた、管理用RFID等)、小型リチウムイオン電池を内蔵した農場管理、工場の環境管理、IC電源などに用いられるIoTモジュールには適したものではない。この点、ツェナーダイオードは典型的には米粒サイズの非常に小型かつ簡素な素子なので、これを用いて組電池を構成する単電池の電圧のバラつきを低減できれば好都合である。
【0013】
そこで、本発明においては、組電池10を構成する各リチウムイオン単電池12にツェナーダイオード14を並列接続することで、単電池12の電圧のバラつきを低減することができる。例えば、
図1に示されるように直列接続された2個の単電池12を含む組電池10において、2個の単電池12の電圧が互いにずれて異なっている場合、電圧が高い単電池12はツェナーダイオード14に流れる電流が大きく、電圧が低い単電池12はツェナーダイオード14に流れる電流が小さくなる。これは、
図2に例示される様々なツェナーダイオードの特性からも分かるように、ツェナーダイオードは、印加される電圧が大きいほど電流が多く流れる特性を有するためである。そして、この電流値の差分によって2個の単電池12の電圧は次第にバランスされていく。こうして2個の単電池12に関して常時電圧がバランスされるようにツェナーダイオード14が作動する結果、単電池12の電圧のバラつきが低減される。すなわち、ツェナーダイオード14が単電池12の電圧バラつきを常時補正するように働き、その結果、過充電及び過放電を回避することができる。また、自己放電差等により単電池12に容量バラつきが生じても、それをツェナーダイオード14が自動で補正して、直列接続で起こりうる単電池12の劣化を回避することができる。
【0014】
とはいえ、いかなるツェナーダイオードでも本発明で採用可能という訳ではない。これは
図2に示されるように、様々な特性の各種ツェナーダイオードが知られているが、ツェナーダイオードは充電時以外にも常時漏れ電流として放電し続けるため、その漏れ電流が小さいことが望まれるからである。この点、本発明に用いるツェナーダイオード14は、単電池12の平均電圧において、単電池12の容量の1/200以下の電流が流れることによって特性付けられるものである。この1/200以下という微電流は、急激な電流増加が生じるツェナー電位(降伏電位)よりも低い電圧域(すなわち微量電流しか流れない電圧域)でのツェナーダイオードの使用を主に狙ったものであり、この点、特許文献1で提案されるようなツェナー電圧(降伏電圧)を超える異常な端子電圧上昇の検知を狙ったものではない。なお、単電池12の容量の1/200以下なる比率は、単電池12の容量をC(Ah)、ツェナーダイオード14の電流をI(A)とした場合に、C/I(単位:h
-1)に相当するものであることから、充放電しない状態であれば、漏れ電流によって完全放電(SOC:0%)に至る時間として約200時間以上(すなわち約9日以上)確保できることを意味するといえる。すなわち、上記特性を満たすツェナーダイオード14を採用することで、単電池12の電圧バランスを取りながらも、充放電していない際も容量の漏れ及びそれに伴う保存性能の低下を最小限に抑えることができる。
【0015】
例えば、容量3.0mAh、平均電圧2.36Vの単電池12を想定した場合、
図2においてA及びBと記される特性曲線に対応するツェナーダイオードが望ましい候補となりうる。
図3から分かるように、ツェナーダイオードAの電圧2.36Vにおけるツェナー電流は4.7μAであり、3mAhの単電池を充放電をしない状態で完全放電するのに要する期間は約27日と算定される(3mAh/4.7μA=638h=26.6日)。また、
図3から分かるように、ツェナーダイオードBの電圧2.36Vにおけるツェナー電流は1.5μAであり、3mAhの単電池を充放電をしない状態で完全放電するのに要する期間は約83日と算定される(3mAh/1.5μA=2000h=83.3日)。そして、このツェナーダイオードBを容量3.0mAhの単電池12に並列接続し、それを2個直列接続した
図2に示されるような組電池10において、充電状態(SOC)が10%ずれた系を想定する。この場合、定電圧充電して組電池電圧が5.0Vに達するとき、
図4Aに示されるように、2個の単電池12の各電圧は約2.63V及び約2.37Vとなり、それらに対応するツェナー電流は
図4Bからそれぞれ約1.6μA及び約4.7μAとなる。そして、容量3.0mAhのSOC10%に相当量(300μAh)を、2個の単電池のツェナー電流の差分3.1μA(=4.7-1.6)で除することにより、約97時間(300μAh/3.1μA=96.7h)と算出される。すなわち、このケースでは97時間程度で2個の単電池12で電圧の不均衡が解消されることになる。このケースからも分かるように、本発明の組電池10によれば、充放電を行っていない放置状態でも、複数の単電池12の電圧が時間経過に伴いバランスされていく。すなわち、本発明の組電池10は構成する複数の単電池12の電圧をバランスする優れた性能を発揮することができる。
【0016】
ツェナーダイオード14は、単電池12の平均電圧において、単電池12の容量の1/200以下、好ましくは1/500以下の電流が流れることによって特性付けられるものである。下限値は特に限定されるではないが、ツェナーダイオード14は、単電池12の平均電圧において、単電池12の容量の1/100以上の電流が流れることによって特性付けられるのが典型的である。なお、単電池12の平均電圧としては、充電状態(SOC)0%、20%、40%、60%、80%、100%時の電圧の平均値を採用するのが好ましい。上述のとおり、様々な特性のツェナーダイオードが市販されており、それらの市販品の製品情報又は実際の製品から、上記条件を満たすツェナーダイオードを適宜選択すればよい。例えば、平均電圧2.3Vで容量3mAhの単電池を使用する場合、ツェナー電圧(降伏電圧)の公称値が5.1V以上のものを購入して使用することができる(ツェナー電圧の公称値が5.1V以上ということは単電池の平均電圧2.3Vにおいては微量電流しか流れないことを意味する)。
【0017】
組電池10に含まれるリチウムイオン単電池12の個数は2以上であれば特に限定されず、用途に応じて必要な出力を確保できるように適宜決めればよい。組電池10に含まれるリチウムイオン単電池12の好ましい個数は、2~10個、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~4個、特に好ましくは2~3個、最も好ましくは2個である。このように単電池12の個数が少なくすることで、非常に小型かつ簡素な素子であるというツェナーダイオードの利点を最大限に活かした、簡素かつ小型の組電池10とすることができる。すなわち、小型リチウムイオン電池向けの用途(すなわち小型、薄型及び省スペースが求められる用途)、例えば、小型リチウムイオン電池を内蔵したスマートカード(無線通信IC、指紋解析用ASIC及び指紋センサを備えた、指紋認証・無線通信機能付きカード等)や小型リチウムイオン電池を内蔵したRFIDタグ(IC回路及びアンテナを備えた、管理用RFID等)、小型リチウムイオン電池を内蔵した農場管理、工場の環境管理、IC電源などに用いられるIoTモジュールに適したものとなる。
【0018】
リチウムイオン単電池12は、縦及び横の寸法がそれぞれ50mm以下であるのが好ましく、より好ましくは7.5~50mm、さらに好ましくは8~47.5mm、特に好ましくは10~46mmである。また、リチウムイオン単電池12は、厚みが2mm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.05~1.0mm、さらに好ましくは0.1~0.8mm、特に好ましくは0.2~0.7mmである。このようなサイズ及び厚さである単電池12は非常に小型かつ薄型なものとなるので、非常に小型かつ簡素な素子であるというツェナーダイオードの利点を最大限に活かした、小型リチウムイオン電池向けの用途(すなわち小型、薄型及び省スペースが求められる用途)、例えば、小型リチウムイオン電池を内蔵したスマートカード(無線通信IC、指紋解析用ASIC及び指紋センサを備えた、指紋認証・無線通信機能付きカード等)や小型リチウムイオン電池を内蔵したRFIDタグ(IC回路及びアンテナを備えた、管理用RFID等)、小型リチウムイオン電池を内蔵した農場管理、工場の環境管理、IC電源などに用いられるIoTモジュールに適した組電池10とすることができる。また、このような薄型セルではなく小型のコインセルにおいても同様の効果が得られる。
【0019】
リチウムイオン単電池12の容量は50mAh以下であるのが好ましく、より好ましくは0.3~50mAh、さらに好ましくは0.5~47mAh、特に好ましくは1~45mAhである。このような範囲内の容量の単電池12であると、上述した特性を満たすツェナーダイオードを商業的に入手しやすくなる。また、上記範囲内の容量の単電池12であれば、小型リチウムイオン電池向けの用途(すなわち小型、薄型及び省スペースが求められる用途)に適したサイズとなりうる。
【0020】
リチウムイオン単電池12はリチウムイオン二次電池の構成を有するものであれば特に限定されないが、リチウムイオン単電池12の負極が、チタン酸リチウム(LTO)及びカーボンからなる群から選択されるいずれか1種を負極活物質として含むものであるのが好ましい。これらの負極活物質を用いることで、上述した特性を満たすツェナーダイオードを商業的に入手しやすくなる。すなわち、負極がチタン酸リチウム(LTO)を含む場合、リチウムイオン単電池12の典型的な平均電圧は2.2~2.4V(例えば2.3V)となり、負極がカーボンを含む場合、リチウムイオン単電池12の典型的な平均電圧は3.6~3.8V(例えば3.7V)となる。したがって、このような単電池12の平均電圧において、単電池12の容量の1/200以下の電流が流れるツェナーダイオードを選択して商業的に入手すればよい。
【0021】
特に、負極はチタン酸リチウム(LTO)を負極活物質として含むのが好ましく、より好ましくはチタン酸リチウム(LTO)焼結体板を含む。LTO焼結体板は特許文献2~4に開示されるように公知の焼結体板であってよい。負極としてLTOを用いることで、組電池10においてサイクル性能及び保存性能が向上するとともに、単電池12間での電圧や容量のバラつきもより一層生じにくくなる。特に、LTO負極を用いた二次電池は充電末に急峻に電圧が上がるという特性を有しており、これは組電池10を構成する複数の単電池12間で容量のずれが少し生じただけでも電圧に大きな差が生じること意味し、それによりツェナーダイオード14による各単電池12の電圧のバランスをしやすいとの利点がある。また、複数のツェナーダイオード14がバラついた際にも十分に電圧バランス効果が得られるとの利点もある。さらに、上述のとおり、LTO負極を用いたリチウムイオン単電池12は、平均電圧を低くできるため(例えば2.3V)、電池の劣化(例えば電解液の酸化)が生じにくく、また、上述した特性を満たすツェナーダイオードをより一層商業的に入手しやすくなるとの利点もある。特に、LTO焼結体板を用いて作製したリチウムイオン二次電池は、サイクル性能が良く、また、保存性能が良い(自己放電が少ない)など高信頼性を示すことから、簡易な制御による直列化に特に適している。
【0022】
典型的なリチウムイオン単電池12は、正極と、電解液又は固体電解質とを含む。正極はリチウム複合酸化物を含むのが好ましい。リチウム複合酸化物の例としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル・マンガン酸リチウム、ニッケル・コバルト酸リチウム、コバルト・ニッケル・マンガン酸リチウム、コバルト・マンガン酸リチウムなどが挙げられる。リチウム複合酸化物には、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi、W等から選択される一種以上の元素が含まれていてもよい。最も好ましいリチウム複合酸化物はコバルト酸リチウム(LiCoO2)である。したがって、特に好ましい正極はリチウム複合酸化物焼結体板であり、最も好ましくはコバルト酸リチウム焼結体板である。電解液はリチウム二次電池に一般的に用いられる公知の電解液を使用すればよい。あるいは、電解液の代わりに固体電解質を用いてよい。固体電解質としては、全固体リチウム電池において一般的に用いられる公知のリチウムイオン伝導材料を使用すればよく、そのような例としては、Li-La-Zr-O系セラミックス材料及び/又はリン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)系セラミックス材料が挙げられる。
【実施例】
【0023】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0024】
例1
(1)負極板の作製
(1a)LTOグリーンシートの作製
まず、LTO粉末A(体積基準D50粒径0.06μm、シグマアルドリッチジャパン合同会社製)100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM-2、積水化学工業株式会社製)20重量部と、可塑剤(DOP:Di(2-ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP-O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた負極原料混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、LTOスラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、LTOグリーンシートを形成した。乾燥後のLTOグリーンシートの厚さは焼成後の厚さが80μmとなるような値とした。
【0025】
(1b)LTOグリーンシートの焼成
得られたグリーンシートを25mm角にカッターナイフで切り出し、エンボス加工されたジルコニア製セッター上に載置した。セッター上のグリーンシートをアルミナ製鞘に入れて500℃で5時間保持した後に、昇温速度200℃/hにて昇温し、800℃で5時間焼成を行なった。得られたLTO焼結体板のセッターに接触していた面にスパッタリングによりAu膜(厚さ100nm)を集電層として形成した後、10mm×10mm平方の形状にレーザー加工した。
【0026】
(2)正極板の作製
(2a)Li(Co,Mg)O2グリーンシートの作製
Co3O4粉末(平均粒径D50:0.9μm、正同化学工業株式会社製)、Li2CO3粉末(本荘ケミカル株式会社製)及びMgCO3粉末(神島化学工業株式会社製)を(Li1.02Co0.98Mg0.02)O2となるように秤量して混合した。得られた混合物を800℃で5時間保持して仮焼粉末を得た。この仮焼粉末をポットミルにて平均粒径D50が0.5μmとなるように粉砕した。得られた粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM-2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2-ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP-O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、Li(Co,Mg)O2スラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、グリーンシートを形成した。乾燥後のグリーンシートの厚さは60μmであった。
【0027】
(2b)Li(Co,Mg)O2焼結板の作製
PETフィルムから剥がしたLi(Co,Mg)O2グリーンシートをカッターで50mm角に切り出し、下部セッターとしてのマグネシア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置し、その上に上部セッターとしての多孔質マグネシア製セッターを載置した。上記グリーンシート片をセッターで挟んだ状態で、120mm角のアルミナ鞘(株式会社ニッカトー製)内に載置した。このとき、アルミナ鞘を密閉せず、0.5mmの隙間を空けて蓋をした。得られた積層物を昇温速度200℃/hで600℃まで昇温して3時間脱脂した後、800℃で20時間保持することで焼成を行った。焼成後、室温まで降温させた後に焼成体をアルミナ鞘より取り出した。こうしてLi(Co,Mg)O2焼結体板を正極板として得た。得られた正極板を9.5mm×9.5mm平方の形状にレーザー加工した。
【0028】
(3)単電池の組立
Li(Co,Mg)O2焼結体板(正極板)、セパレータ、及びLTO焼結体板(負極)を順に載置して積層体を作製した。この積層体を電解液に浸すことによりラミネート型電池を作製した。電解液としては、プロピレンカーボネート(PC)及びジエチルカーボネート(DEC)を1:2で混合した有機溶媒にLiPF6を1mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いた。セパレータとしては、厚さ25μmのセルロース製多孔質単層膜(ニッポン高度紙工業株式会社製)を用いた。こうして、リチウムイオン単電池を2個作製した。
【0029】
(4)組電池の作製
上記(3)で得られた個々の単電池にツェナーダイオードを並列に接続した。このとき、ツェナーダイオードとして、単電池の平均電圧において、単電池の容量の1/50000の電流が流れる市販品を用いた。ここで、1/50000は、単電池の平均電圧におけるツェナーダイオードの電流値I(A)を、単電池の容量C(Ah)で除した値(すなわちI/C(単位:h-1))であり、本明細書においてツェナーダイオード規格と称する。なお、単電池の平均電圧としては、充電状態(SOC)0%、20%、40%、60%、80%、100%時の電圧の平均値を採用した。
【0030】
こうしてツェナーダイオードが接続された2個の単電池を
図1に示されるように直列に接続して、組電池とした。
【0031】
(5)組電池の評価
こうして作製された組電池に対して以下の評価を行った。
【0032】
<サイクル容量維持率>
上記(4)で作製された組電池(ツェナーダイオードを含む)のサイクル試験における容量維持率RZCを、上記(3)で作製された単電池(ツェナーダイオードを含まない)のサイクル試験における容量維持率RNC(これを100とする)に対する比率、すなわち100×RZC/RNC(%)をサイクル容量維持率として算出した。具体的には、上記(3)で得られた単電池に対して(i)1Cレートで定電流充電し、(ii)引き続き電流値が0.2Cレートになるまで定電圧充電した後、(iii)1Cレートで放電することを含む充放電サイクルを3000回行い、3000サイクル目の放電容量C3000を、1サイクル目の放電容量C1で除した値を、サイクル試験における容量維持率RNC(=C3000/C1)とした。上記(4)で得られた組電池についても上記同様にしてサイクル試験における容量維持率RZCを算出し、100×RZC/RNC(%)に従いサイクル容量維持率を算出した。
【0033】
<保存特性>
上記(4)で作製された組電池(ツェナーダイオードを含む)の保存試験における容量維持率RZSを、上記(3)で作製された単電池(ツェナーダイオードを含まない)の保存試験における容量維持率RNS(これを100とする)に対する比率、すなわち100×RZS/RNS(%)を保存特性として算出した。具体的には、上記(3)で得られた単電池を満充電状態にて0.2Cで放電して初期容量C0を測定した後、同じ単電池を25℃で5日間保存した後に0.2Cで放電して保存後容量C1を測定し、保存後容量C1を初期容量C0で除することにより、単電池の保存試験における容量維持率RNS(=C1/C0)を算出した。上記(4)で得られた組電池についても上記同様にして保存試験における容量維持率RBPを算出し、100×RZS/RNS(%)に従い保存特性を算出した。
【0034】
例2
ツェナーダイオードとして、単電池の平均電圧において、単電池の容量の1/500の電流が流れる市販品を用いたこと以外は、例1と同様にして、組電池の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0035】
例3
ツェナーダイオードとして、単電池の平均電圧において、単電池の容量の1/200の電流が流れる市販品を用いたこと以外は、例1と同様にして、組電池の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0036】
例4(比較)
ツェナーダイオードとして、単電池の平均電圧において、単電池の容量の1/50の電流が流れる市販品を用いたこと以外は、例1と同様にして、組電池の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0037】
例5(比較)
ツェナーダイオードを用いなかったこと以外は例1と同様にして、組電池の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
【0038】