(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】亜鉛二次電池用負極構造体
(51)【国際特許分類】
H01M 10/30 20060101AFI20220105BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20220105BHJP
H01M 4/24 20060101ALI20220105BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20220105BHJP
H01M 50/466 20210101ALI20220105BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20220105BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20220105BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20220105BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20220105BHJP
【FI】
H01M10/30 Z
H01M12/08 K
H01M4/24 H
H01M50/46
H01M50/466
H01M50/434
H01M50/44
H01M50/446
H01M50/451
(21)【出願番号】P 2019546647
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2018035647
(87)【国際公開番号】W WO2019069760
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2017193633
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018049810
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】松矢 淳宣
(72)【発明者】
【氏名】権田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 賢信
(72)【発明者】
【氏名】八木 毅
(72)【発明者】
【氏名】山田 直仁
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/086278(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/24-30
H01M 12/06-08
H01M 4/24
H01M 50/40-497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛二次電池用の負極構造体であって、
亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む負極活物質層と、
保液部材及び層状複水酸化物(LDH)、又は保液部材、層状複水酸化物(LDH)及び多孔質基材
で構成され、前記負極活物質層の全体
(但し、外縁の1辺又は2辺を除く)を覆う又は包み込む複合層と、
を備え、
前記複合層が四辺形の形状を有し、前記複合層の外縁の少なくとも2辺が、1対の前記複合層の封止、又は前記複合層の折り曲げにより、閉じられており、前記複合層の厚み方向の少なくとも一部が水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するLDHセパレータとして機能するように、前記LDHが前記保液部材及び/又は前記多孔質基材の少なくとも一部の孔を塞いでいる、負極構造体。
【請求項2】
前記保液部材が不織布である、請求項1に記載の負極構造体。
【請求項3】
前記複合層が保液部材及びLDHで構成され、前記LDH及び前記保液部材が前記LDHセパレータをなしており、前記LDHセパレータが水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するように、前記LDHが前記保液部材の少なくとも一部の孔を塞いでいる、請求項1又は2に記載の負極構造体。
【請求項4】
前記複合層が保液部材、LDH及び多孔質基材
で構成され、前記LDH及び前記多孔質基材が前記LDHセパレータをなしており、前記LDHセパレータが水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するように、前記LDHが前記多孔質基材の少なくとも一部の孔を塞いでいる、請求項1又は2に記載の負極構造体。
【請求項5】
前記保液部材が前記複合層の前記負極活物質層と隣接する側を構成し、かつ、前記LDHセパレータが前記複合層の前記負極活物質層から離れた側を構成する、請求項4に記載の負極構造体。
【請求項6】
前記多孔質基材が高分子材料である、請求項4又は5に記載の負極構造体。
【請求項7】
前記LDHが前記多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれている、請求項6に記載の負極構造体。
【請求項8】
前記負極構造体が前記負極活物質層と接する集電体をさらに備えており、前記集電体が前記負極活物質層の1辺から延出する集電体延出部を有し、前記集電体延出部の先端部分が前記複合層で覆われない露出部分をなす、請求項1~7のいずれか一項に記載の負極構造体。
【請求項9】
前記少なくとも2辺は前記集電体延出部に接しない辺である、請求項8に記載の負極構造体。
【請求項10】
正極と、
請求項1~
9のいずれか一項に記載の負極構造体と、
電解液と、
を備え、前記LDHセパレータを介して前記正極と前記負極活物質層が互いに隔離される、亜鉛二次電池。
【請求項11】
前記正極が水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含み、それにより前記亜鉛二次電池がニッケル亜鉛二次電池をなす、請求項
10に記載の亜鉛二次電池。
【請求項12】
前記正極が空気極であり、それにより前記亜鉛二次電池が亜鉛空気二次電池をなす、請求項
10に記載の亜鉛二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛二次電池用の負極構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニッケル亜鉛二次電池、空気亜鉛二次電池等の亜鉛二次電池では、充電時に負極から金属亜鉛がデンドライト状に析出し、不織布等のセパレータの空隙を貫通して正極に到達し、その結果、短絡を引き起こすことが知られている。このような亜鉛デンドライトに起因する短絡は繰り返し充放電寿命の短縮を招く。
【0003】
上記問題に対処すべく、水酸化物イオンを選択的に透過させながら、亜鉛デンドライトの貫通を阻止する、層状複水酸化物(LDH)セパレータを備えた電池が提案されている。例えば、特許文献1(国際公開第2013/118561号)には、ニッケル亜鉛二次電池においてLDHセパレータを正極及び負極間に設けることが開示されている。また、特許文献2(国際公開第2016/076047号)には、樹脂製外枠に嵌合又は接合されたLDHセパレータを備えたセパレータ構造体が開示されており、LDHセパレータがガス不透過性及び/又は水不透過性を有する程の高い緻密性を有することが開示されている。また、この文献にはLDHセパレータが多孔質基材と複合化されうることも開示されている。さらに、特許文献3(国際公開第2016/067884号)には多孔質基材の表面にLDH緻密膜を形成して複合材料(LDHセパレータ)を得るための様々な方法が開示されている。この方法は、多孔質基材にLDHの結晶成長の起点を与えうる起点物質を均一に付着させ、原料水溶液中で多孔質基材に水熱処理を施してLDH緻密膜を多孔質基材の表面に形成させる工程を含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/118561号
【文献】国際公開第2016/076047号
【文献】国際公開第2016/067884号
【発明の概要】
【0005】
上述したようなLDHセパレータを用いてニッケル亜鉛電池等の亜鉛二次電池を構成した場合、亜鉛デンドライトによる短絡等を防止できる。そして、この効果を最大限に発揮させるためには、LDHセパレータで正極と負極を確実に隔離することが望まれる。特に、かかる構成を確保しながら、高電圧や大電流を得るために、複数の正極及び複数の負極を組み合わせて積層電池を容易に組み立てることができれば極めて好都合である。しかしながら、従来の亜鉛二次電池におけるLDHセパレータによる正極と負極の隔離は、LDHセパレータと電池容器とを液密性を確保するように樹脂枠や接着剤等を用いて巧妙かつ入念に封止接合することにより行われており、電池構成や製造工程が複雑化しやすかった。このような電池構成や製造工程の複雑化は積層電池を構成する場合にはとりわけ顕著なものとなりうる。これは積層電池を構成する複数の単電池の各々に対して液密性確保のための封止接合を行う必要があるためである。
【0006】
本発明者らは、今般、負極活物質層の全体を保液部材付きの又は保液部材を含むLDHセパレータで覆う又は包み込むことにより、LDHセパレータと電池容器との煩雑な封止接合を不要にして、亜鉛デンドライト伸展を防止可能な亜鉛二次電池(特にその積層電池)を極めて簡便にかつ高い生産性で作製することを可能とする負極構造体を提供できるとの知見を得た。
【0007】
したがって、本発明の目的は、LDHセパレータと電池容器との煩雑な封止接合を不要にして、亜鉛デンドライト伸展を防止可能な亜鉛二次電池(特にその積層電池)を極めて簡便にかつ高い生産性で作製することを可能とする負極構造体を提供することにある。
【0008】
本発明の一態様によれば、亜鉛二次電池用の負極構造体であって、
亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む負極活物質層と、
保液部材及び層状複水酸化物(LDH)、又は保液部材、層状複水酸化物(LDH)及び多孔質基材を含み、前記負極活物質層の全体を覆う又は包み込む複合層と、
を備え、前記複合層の厚み方向の少なくとも一部が水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するLDHセパレータとして機能するように、前記LDHが前記保液部材及び/又は前記多孔質基材の少なくとも一部の孔を塞いでいる、負極構造体が提供される。
【0009】
本発明の他の一態様によれば、
正極と、
前記負極構造体と、
電解液と、
を備え、前記LDHセパレータを介して前記正極と前記負極活物質層が互いに隔離される、亜鉛二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の負極構造体の一例を示す斜視図である。
【
図1B】
図1Aに示される負極構造体の層構成を示す模式断面図である。
【
図2A】本発明の負極構造体の他の一例を示す斜視図である。
【
図2B】
図2Aに示される負極構造体の層構成を示す模式断面図である。
【
図3】本発明の負極構造体の一例におけるLDHセパレータで覆われる領域を説明するための模式図である。
【
図4】例1で用いた電気化学測定系を示す模式断面図である。
【
図5A】例1の緻密性判定試験で使用された測定用密閉容器の分解斜視図である。
【
図5B】例1の緻密性判定試験で使用された測定系の模式断面図である。
【
図6A】例1で使用されたHe透過度測定系の一例を示す概念図である。
【
図6B】
図6Aに示される測定系に用いられる試料ホルダ及びその周辺構成の模式断面図である。
【
図7】例1において作製されたLDHセパレータの断面微構造を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
負極構造体
本発明の負極構造体は亜鉛二次電池に用いられるものである。
図1A及び1Bに本発明の負極構造体の一例が示される。
図1に示される負極構造体10は、負極活物質層12と、負極活物質層12の全体を覆う又は包み込む複合層14とを備える。負極活物質層12は、亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。複合層14は、保液部材14a、層状複水酸化物(LDH)、及び所望により多孔質基材を含む。なお、
図1A及び1BにおいてLDH及び多孔質部材はそれらで構成されるLDHセパレータ14bとして描かれている。一方、
図2A及び2Bに示されるように、保液部材14aを単独で用いないで、保液部材及びLDHで構成されるLDHセパレータ14cを複合層14’として採用してもよく、この場合、多孔質基材を不要にすることができる。すなわち、多孔質基材は任意の構成部材である。なお、本明細書において「LDHセパレータ」は、LDHを含むセパレータであって、専らLDHの水酸化物イオン伝導性を利用して水酸化物イオンを選択的に通すものとして定義される。いずれにしても、複合層14(又は14’)の厚み方向の少なくとも一部が水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するように(それ故水酸化物イオン伝導性を呈するLDHセパレータとして機能するように)、LDHが保液部材及び/又は多孔質基材の少なくとも一部の孔を塞いでおり、その結果、LDHセパレータとしての構成が確保されている。このように、負極活物質層の全体を保液部材付きの又は保液部材を含むLDHセパレータで覆う又は包み込むことにより、LDHセパレータと電池容器との煩雑な封止接合を不要にして、亜鉛デンドライト伸展を防止可能な亜鉛二次電池(特にその積層電池)を極めて簡便にかつ高い生産性で作製することを可能とする負極構造体を提供することができる。
【0012】
すなわち、前述のとおり、従来の亜鉛二次電池におけるLDHセパレータによる正極と負極の隔離は、LDHセパレータと電池容器とを液密性を確保するように樹脂枠や接着剤等を用いて巧妙かつ入念に封止接合することにより行われており、電池構成や製造工程が複雑化しやすかった。このような電池構成や製造工程の複雑化は積層電池を構成する場合にはとりわけ顕著なものとなりうる。この点、本発明の負極構造体10(又は10’)においては、負極活物質層12の全体がLDHセパレータ14b(又は14c)を含む複合層14(又は14’)で覆う又は包み込まれているので、負極構造体10(又は10’)自体で亜鉛デンドライトによる短絡等を防止できる機能を備えている。しかも、複合層14(又は14’)は保液部材14aを単独で備える(又は保液部材をLDHセパレータ14cに内在した形で備える)ため、負極構造体10(又は10’)内に電解液を注入すれば、亜鉛二次電池の負極室を亜鉛デンドライト伸展を防止可能な形で簡便に構成することができる。したがって、本発明の負極構造体10(又は10’)を亜鉛二次電池の作製に採用する場合、正極板と負極構造体を積層するだけでLDHセパレータによる正極と負極の隔離を実現することができる。とりわけ、複数の単電池を備えた積層電池を作製する際には、正極板と負極構造体を交互に積層するだけで所望の構成を実現することができる点で極めて有利といえる。これは、LDHセパレータで正極と負極を隔離するために従来行われていた巧妙かつ入念な封止接合が不要になるからである。
【0013】
負極活物質層12は、亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。すなわち、亜鉛は、負極に適した電気化学的活性を有するものであれば、亜鉛金属、亜鉛化合物及び亜鉛合金のいずれの形態で含まれていてもよい。負極材料の好ましい例としては、酸化亜鉛、亜鉛金属、亜鉛酸カルシウム等が挙げられるが、亜鉛金属及び酸化亜鉛の混合物がより好ましい。負極活物質層12はゲル状に構成してもよいし、電解液と混合して負極合材としてもよい。例えば、負極活物質に電解液及び増粘剤を添加することにより容易にゲル化した負極を得ることができる。増粘剤の例としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、CMC、アルギン酸等が挙げられるが、ポリアクリル酸が強アルカリに対する耐薬品性に優れているため好ましい。
【0014】
亜鉛合金として、無汞化亜鉛合金として知られている水銀及び鉛を含まない亜鉛合金を用いることができる。例えば、インジウムを0.01~0.1質量%、ビスマスを0.005~0.02質量%、アルミニウムを0.0035~0.015質量%を含む亜鉛合金が水素ガス発生の抑制効果があるので好ましい。とりわけ、インジウムやビスマスは放電性能を向上させる点で有利である。亜鉛合金の負極への使用は、アルカリ性電解液中での自己溶解速度を遅くすることで、水素ガス発生を抑制して安全性を向上できる。
【0015】
負極材料の形状は特に限定されないが、粉末状とすることが好ましく、それにより表面積が増大して大電流放電に対応可能となる。好ましい負極材料の平均粒径は、亜鉛合金の場合、短径で3~100μmの範囲であり、この範囲内であると表面積が大きいことから大電流放電への対応に適するとともに、電解液及びゲル化剤と均一に混合しやすく、電池組み立て時の取り扱い性も良い。
【0016】
負極構造体10(又は10’)は負極活物質層12と接する集電体13をさらに備えるのが好ましい。特に、集電体13は負極活物質層12の1辺から延出する集電体延出部13aを有するのが好ましく、集電体延出部13aの先端部分が複合層14で覆われない露出部分をなすのが好ましい。これにより露出部分を介して集電体13(特に集電体延出部13a)を負極端子(図示せず)に望ましく接続することができる。この場合、
図3に示されるように、LDHセパレータ14b(又は14c)が負極活物質層12の集電体延出部13a側の端部を十分に隠すように所定のマージンMを伴って覆う又は包み込むのが好ましい。こうすることで、負極活物質層12の集電体延出部13a側の端部又はその近傍からの亜鉛デンドライトの伸展をより効果的に防止することができる。
【0017】
負極集電体13の好ましい例としては、銅箔、銅エキスパンドメタル、銅パンチングメタルが挙げられるが、より好ましくは銅エキスパンドメタルである。この場合、例えば、銅エキスパンドメタル上に、酸化亜鉛粉末及び/又は亜鉛粉末、並びに所望によりバインダー(例えばポリテトラフルオロエチレン粒子)を含んでなる混合物を塗布して負極/負極集電体からなる負極板を好ましく作製することができる。その際、乾燥後の負極板(すなわち負極/負極集電体)にプレス処理を施して、電極活物質の脱落防止や電極密度の向上を図ることも好ましい。
【0018】
複合層14(又は14’)は、負極活物質層12の全体を覆う又は包み込む層であり、保液部材、層状複水酸化物(LDH)、及び所望により多孔質基材を含む。複合層14(又は14’)又はそれに含まれるLDHセパレータの枚数は片面につき典型的には1(両面では向かい合う2枚又は折り曲げられた1枚)であるが、2以上であってもよい。例えば、数枚重ねの複合層14(又は14’)あるいは数枚重ねのLDHセパレータ14b(又は14c)で負極活物質層12の全体を覆う又は包み込む構成としてもよい。いずれにしても、複合層14(又は14’)の厚み方向の少なくとも一部が水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するように(それ故水酸化物イオン伝導性を呈するLDHセパレータとして機能するように)、LDHが保液部材及び/又は多孔質基材の少なくとも一部の孔を塞いでおり、その結果、LDHセパレータとしての構成が確保されている。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、
図1A及び1Bに示されるように、複合層14が保液部材14a、LDH及び多孔質基材を含み、LDH及び多孔質基材がLDHセパレータ14bをなす。そして、LDHセパレータ14bが水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するように(それ故水酸化物イオン伝導性を呈するLDHセパレータとして機能するように)、LDHが多孔質基材の少なくとも一部の孔を塞いでいる。この場合、保液部材14aが複合層14の負極活物質層12と隣接する側を構成し、かつ、LDHセパレータ14bが複合層14の負極活物質層12から離れた側を構成するのが好ましい。こうすることで、負極活物質層12とLDHセパレータ14bとの間に電解液を万遍なく存在させることができ、負極活物質層12とLDHセパレータ14bとの間における水酸化物イオンの授受を効率良く行うことができる。
【0020】
保液部材14aは電解液を保持可能な部材であれば特に限定されないが、シート状の部材であるのが好ましい。保液部材の好ましい例としては不織布、吸水性樹脂、保液性樹脂、多孔シート、各種スペーサが挙げられるが、特に好ましくは、低コストで性能の良い負極構造体10を作製できる点で不織布である。保液部材14aは0.01~0.20mmの厚さを有するのが好ましく、より好ましくは0.02~0.20mmであり、さらに好ましくは0.02~0.15mmであり、特に好ましくは0.02~0.10mmであり、最も好ましくは0.02~0.06mmである。上記範囲内の厚さであると、負極構造体10の全体サイズを無駄無くコンパクトに抑えながら、保液部材14a内に十分な量の電解液を保持させることができる。
【0021】
図1A及び1Bにおいて保液部材14aはLDHセパレータ14bよりも小さいサイズとして描かれているが、保液部材14aはLDHセパレータ14b(又は折り曲げられたLDHセパレータ14b)と同じサイズであってもよく、保液部材14aの外縁はLDHセパレータ14bの外縁に到達しうる。すなわち、外周部分を構成するLDHセパレータ14bの間に、保液部材14aの外周部分が挟み込まれる構成としてもよい。こうすることで、後述する複合層14の外縁封止を熱溶着又は超音波溶着により、効果的に行うことができる。すなわち、LDHセパレータ14b同士を直接的に熱溶着又は超音波溶着するよりも、LDHセパレータ14b同士をそれらの間に熱溶着性の保液部材14aを介在させて間接的に熱溶着又は超音波溶着する方が、保液部材14a自体の熱溶着性を利用できる結果、より効果的な封止を行うことができる。例えば、保液部材14aの封止されるべき端部をあたかもホットメルト接着剤かのごとく利用することができる。この場合における保液部材14aの好ましい例としては不織布、特に熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)製の不織布が挙げられる。
【0022】
LDHセパレータ14bは、LDH及び多孔質基材で構成される。具体的には複合層14の厚み方向の少なくとも一部が水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するように(それ故水酸化物イオン伝導性を呈するLDHセパレータとして機能するように)、LDHが多孔質基材の少なくとも一部の孔を塞いでおり、その結果、LDHセパレータとしての構成が確保されている。LDHは多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれているのが好ましい。LDHセパレータ14bの厚さは、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは5~100μm、さらに好ましくは5~30μmである。
【0023】
すなわち、LDHセパレータ14bは層状複水酸化物(LDH)を含むセパレータであり、亜鉛二次電池に組み込まれた場合に、正極板と負極板とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するものである。すなわち、LDHセパレータ14bは水酸化物イオン伝導セパレータとしての機能を呈する。好ましいLDHセパレータ14bはガス不透過性及び/又は水不透過性を有する。換言すれば、LDHセパレータ14bはガス不透過性及び/又は水不透過性を有するほどに緻密化されているのが好ましい。なお、本明細書において「ガス不透過性を有する」とは、特許文献2及び3に記載されるように、水中で測定対象物の一面側にヘリウムガスを0.5atmの差圧で接触させても他面側からヘリウムガスに起因する泡の発生がみられないことを意味する。また、本明細書において「水不透過性を有する」とは、特許文献2及び3に記載されるように、測定対象物の一面側に接触した水が他面側に透過しないことを意味する。すなわち、LDHセパレータ14bがガス不透過性及び/又は水不透過性を有するということは、LDHセパレータ14bが気体又は水を通さない程の高度な緻密性を有することを意味し、透水性又はガス透過性を有する多孔性フィルムやその他の多孔質材料ではないことを意味する。こうすることで、LDHセパレータ14bは、その水酸化物イオン伝導性に起因して水酸化物イオンのみを選択的に通すものとなり、電池用セパレータとしての機能を呈することができる。このため、充電時に生成する亜鉛デンドライトによるセパレータの貫通を物理的に阻止して正負極間の短絡を防止するのに極めて効果的な構成となっている。LDHセパレータ14bは水酸化物イオン伝導性を有するため、正極板と負極板との間で必要な水酸化物イオンの効率的な移動を可能として正極板及び負極板における充放電反応を実現することができる。
【0024】
LDHセパレータ14bは、単位面積あたりのHe透過度が10cm/min・atm以下であるのが好ましく、より好ましくは5.0cm/min・atm以下、さらに好ましくは1.0cm/min・atm以下である。He透過度が10cm/min・atm以下であるセパレータは、電解液中においてZnの透過(典型的には亜鉛イオン又は亜鉛酸イオンの透過)を極めて効果的に抑制することができる。このように本態様のセパレータは、Zn透過が顕著に抑制されることで、亜鉛二次電池に用いた場合に亜鉛デンドライトの成長を効果的に抑制できるものと原理的に考えられる。He透過度は、セパレータの一方の面にHeガスを供給してセパレータにHeガスを透過させる工程と、He透過度を算出して水酸化物イオン伝導セパレータの緻密性を評価する工程とを経て測定される。He透過度は、単位時間あたりのHeガスの透過量F、Heガス透過時にセパレータに加わる差圧P、及びHeガスが透過する膜面積Sを用いて、F/(P×S)の式により算出する。このようにHeガスを用いてガス透過性の評価を行うことにより、極めて高いレベルでの緻密性の有無を評価することができ、その結果、水酸化物イオン以外の物質(特に亜鉛デンドライト成長を引き起こすZn)を極力透過させない(極微量しか透過させない)といった高度な緻密性を効果的に評価することができる。これは、Heガスが、ガスを構成しうる多種多様な原子ないし分子の中でも最も小さい構成単位を有しており、しかも反応性が極めて低いためである。すなわち、Heは、分子を形成することなく、He原子単体でHeガスを構成する。この点、水素ガスはH2分子により構成されるため、ガス構成単位としてはHe原子単体の方がより小さい。そもそもH2ガスは可燃性ガスのため危険である。そして、上述した式により定義されるHeガス透過度という指標を採用することで、様々な試料サイズや測定条件の相違を問わず、緻密性に関する客観的な評価を簡便に行うことができる。こうして、セパレータが亜鉛二次電池用セパレータに適した十分に高い緻密性を有するのか否かを簡便、安全かつ効果的に評価することができる。He透過度の測定は、後述する例1の評価7に示される手順に従って好ましく行うことができる。
【0025】
一般的に知られているように、LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。水酸化物基本層は主として金属元素(典型的には金属イオン)とOH基で構成される。LDHの中間層は、陰イオン及びH2Oで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH-及び/又はCO3
2-を含む。また、LDHはその固有の性質に起因して優れたイオン伝導性を有する。
【0026】
一般的に、LDHは、M2+
1-xM3+
x(OH)2An-
x/n・mH2O(式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An-はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数であり、xは0.1~0.4であり、mは0以上である)の基本組成式で代表されるものとして知られている。上記基本組成式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An-は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH-及びCO3
2-が挙げられる。したがって、上記基本組成式において、M2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An-がOH-及び/又はCO3
2-を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1~0.4であるが、好ましくは0.2~0.35である。mは水のモル数を意味する任意の数であり、0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である。もっとも、上記基本組成式は、一般にLDHに関して代表的に例示される「基本組成」の式にすぎず、構成イオンを適宜置き換え可能なものである。例えば、上記基本組成式においてM3+の一部または全部を4価またはそれ以上の価数の陽イオンで置き換えてもよく、その場合は、上記一般式における陰イオンAn-の係数x/nは適宜変更されてよい。
【0027】
例えば、LDHの水酸化物基本層は、Ni、Ti、OH基、及び場合により不可避不純物で構成されてもよい。LDHの中間層は、上述のとおり、陰イオン及びH2Oで構成される。水酸化物基本層と中間層の交互積層構造自体は一般的に知られるLDHの交互積層構造と基本的に同じであるが、本態様のLDHは、LDHの水酸化物基本層を主としてNi、Ti及びOH基で構成することで、優れた耐アルカリ性を呈することができる。その理由は必ずしも定かではないが、本態様のLDHにはアルカリ溶液に溶出しやすいと考えられる元素(例えばAl)が意図的又は積極的に添加されていないためと考えられる。そうでありながらも、本態様のLDHは、アルカリ二次電池用セパレータとしての使用に適した高いイオン伝導性も呈することができる。LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。不可避不純物は製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。上記のとおり、Ni及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合には、対応するLDHは、一般式:Ni2+
1-xTi4+
x(OH)2An-
2x/n・mH2O(式中、An-はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+やTi4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
【0028】
あるいは、LDHの水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含むものであってもよい。中間層は、上述のとおり、陰イオン及びH2Oで構成される。水酸化物基本層と中間層の交互積層構造自体は一般的に知られるLDHの交互積層構造と基本的に同じであるが、本態様のLDHは、LDHの水酸化物基本層をNi、Al、Ti及びOH基を含む所定の元素ないしイオンで構成することで、優れた耐アルカリ性を呈することができる。その理由は必ずしも定かではないが、本態様のLDHは、従来はアルカリ溶液に溶出しやすいと考えられていたAlが、Ni及びTiとの何らかの相互作用によりアルカリ溶液に溶出しにくくなるためと考えられる。そうでありながらも、本態様のLDHは、アルカリ二次電池用セパレータとしての使用に適した高いイオン伝導性も呈することができる。LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含んでいさえすれば、他の元素ないしイオンを含んでいてもよい。もっとも、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましい。すなわち、水酸化物基本層は、主としてNi、Al、Ti及びOH基からなるのが好ましい。したがって、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti、OH基及び場合により不可避不純物で構成されるのが典型的である。不可避不純物は製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Al3+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合には、対応するLDHは、一般式:Ni2+
1-x-yAl3+
xTi4+
y(OH)2An-
(x+2y)/n・mH2O(式中、An-はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+、Al3+、Ti4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
【0029】
多孔質基材は透水性及びガス透過性を有し、それ故亜鉛二次電池に組み込まれた場合に、電解液がLDHに到達可能となることはいうまでもないが、多孔質基材があることでLDHセパレータ14bにより安定に水酸化物イオンを保持することも可能となる。また、多孔質基材により強度を付与できるため、LDHセパレータ14bを薄くして低抵抗化を図ることもできる。
【0030】
多孔質基材は高分子材料で構成されるのが好ましい。高分子多孔質基材には、1)フレキシブル性を有する(それ故薄くしても割れにくい)、2)気孔率を高くしやすい、3)伝導率を高くしやすい(気孔率を高めながら厚さを薄くできるため)、4)製造及びハンドリングしやすいといった利点がある。また、上記1)のフレキシブル性に由来する利点を活かして、5)高分子材料製の多孔質基材を含むLDHセパレータ14bを簡単に折り曲げる又は封止接合することができ、それにより後述するように複合層14(又は14’)外縁の少なくとも1辺が閉じた状態を容易に形成できるとの利点もある(折り曲げの場合には外縁1辺の封止工程を減らせるとの利点ももたらす)。高分子材料の好ましい例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、親水化したフッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等)、セルロース、ナイロン、ポリエチレン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。上述した各種の好ましい材料はいずれも電池の電解液に対する耐性として耐アルカリ性を有するものである。特に好ましい高分子材料は、耐熱水性、耐酸性及び耐アルカリ性に優れ、しかも低コストである点から、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンであり、最も好ましくはポリプロピレンである。多孔質基材が高分子材料で構成される場合、LDH層が多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれている(例えば多孔質基材内部の大半又はほぼ全部の孔がLDHで埋まっている)のが特に好ましい。この場合における高分子多孔質基材の好ましい厚さは、5~200μmであり、より好ましくは5~100μm、さらに好ましくは5~30μmである。このような高分子多孔質基材として、リチウム電池用セパレータとして市販されているような微多孔膜を好ましく用いることができ、あるいは市販のセロハンも使用可能である。
【0031】
多孔質基材は、最大100μm以下の平均気孔径を有するのが好ましく、より好ましくは最大50μm以下であり、例えば、典型的には0.001~1.5μm、より典型的には0.001~1.25μm、さらに典型的には0.001~1.0μm、特に典型的には0.001~0.75μm、最も典型的には0.001~0.5μmである。これらの範囲内とすることで多孔質基材に所望の透水性、及び支持体としての強度を確保しながら、ガス不透過性を呈する程に緻密なLDHセパレータを形成することができる。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行うことができる。この測定に用いる電子顕微鏡画像の倍率は20000倍以上であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から近い順に上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得ることができる。測長には、SEMのソフトウェアの測長機能や画像解析ソフト(例えば、Photoshop、Adobe社製)等を用いることができる。
【0032】
多孔質基材は、10~60%の気孔率を有するのが好ましく、より好ましくは15~55%、さらに好ましくは20~50%である。これらの範囲内とすることで多孔質基材に所望の透水性、及び支持体としての強度を確保しながら、ガス不透過性を呈する程に緻密なLDHセパレータを形成することができる。多孔質基材の気孔率はアルキメデス法により好ましく測定することができる。もっとも、多孔質基材が高分子材料で構成され、LDHが多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれている場合、多孔質基材の気孔率は30~60%が好ましく、より好ましくは40~60%である。
【0033】
LDHセパレータ14bの製造方法は特に限定されず、既に知られるLDH含有機能層及び複合材料(すなわちLDHセパレータ)の製造方法(例えば特許文献1~3を参照)の諸条件を適宜変更することにより作製することができる。例えば、(1)多孔質基材を用意し、(2)多孔質基材に酸化チタンゾル或いはアルミナ及びチタニアの混合ゾルを塗布して熱処理することで酸化チタン層或いはアルミナ・チタニア層を形成させ、(3)ニッケルイオン(Ni2+)及び尿素を含む原料水溶液に多孔質基材を浸漬させ、(4)原料水溶液中で多孔質基材を水熱処理して、LDH含有機能層を多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成させることにより、LDH含有機能層及び複合材料(すなわちLDHセパレータ)を製造することができる。特に、上記工程(2)において酸化チタン層或いはアルミナ・チタニア層を多孔質基材に形成することで、LDHの原料を与えるのみならず、LDH結晶成長の起点として機能させて多孔質基材の表面に高度に緻密化されたLDH含有機能層をムラなく均一に形成することができる。また、上記工程(3)において尿素が存在することで、尿素の加水分解を利用してアンモニアが溶液中に発生することによりpH値が上昇し、共存する金属イオンが水酸化物を形成することによりLDHを得ることができる。また、加水分解に二酸化炭素の発生を伴うため、陰イオンが炭酸イオン型のLDHを得ることができる。
【0034】
特に、多孔質基材が高分子材料で構成され、機能層が多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれている複合材料(すなわちLDHセパレータ)を作製する場合、上記(2)におけるアルミナ及びチタニアの混合ゾルの基材への塗布を、混合ゾルを基材内部の全体又は大部分に浸透させるような手法で行うのが好ましい。こうすることで最終的に多孔質基材内部の大半又はほぼ全部の孔をLDHで埋めることができる。好ましい塗布手法の例としては、ディップコート、ろ過コート等が挙げられ、特に好ましくはディップコートである。ディップコート等の塗布回数を調整することで、混合ゾルの付着量を調整することができる。ディップコート等により混合ゾルが塗布された基材は、乾燥させた後、上記(3)及び(4)の工程を実施すればよい。
【0035】
本発明の別の好ましい態様によれば、
図2A及び2Bに示されるように、複合層14’が保液部材及びLDHで構成され、LDH及び保液部材がLDHセパレータ14cをなしていてもよい。そして、LDHセパレータ14cが水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するように(それ故水酸化物イオン伝導性を呈するLDHセパレータとして機能するように)、LDHが保液部材の少なくとも一部の孔を塞いでいる。この場合、複合層14’はLDHセパレータ14c単独で構成されることになる。したがって、この態様は、保液部材を多孔質基材の代替基材として用いることで、多孔質基材を不要にした態様であるといえ、部品数の減少により製造コストを低減できるとの利点がある。このLDHセパレータ14cは上述したLDHセパレータ14bにおいて多孔質基材の代わりに保液部材を用いた構成に相当する。LDHセパレータ14cの厚さは、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは5~100μm、さらに好ましくは5~30μmである。この厚さの点を除いて、LDHセパレータ14bに関連して説明したLDHに関する各種好ましい態様はそのままLDHセパレータ14cに当てはまる。したがって、LDHセパレータ14cの製造も、多孔質基材の代わりに保液部材(例えば不織布)を用いること以外はLDHセパレータ14bと同様にして行うことができる。
【0036】
いずれの態様においても、典型的には、複合層14(又は14’)は四辺形(典型的には四角形)の形状を有する。この場合、複合層14(又は14’)の外縁の少なくとも2辺が閉じられているのが好ましい。こうすることで、亜鉛二次電池に搭載された場合に、負極活物質層12を正極から確実に隔離することができ、亜鉛デンドライトの伸展をより効果的に防止することができる。ただし、負極構造体10(又は10’)が集電体延出部13aを有する場合においては、集電体延出部13aの延出を可能とするため、上記閉じられる少なくとも2辺は集電体延出部13aに接しない辺であることが望まれる。
【0037】
ところで、複合層14(又は14’)の外縁の1辺又は2辺は開放されていてもよい。例えば、複合層14(又は14’)の外縁の上端1辺を開放させておいても、亜鉛二次電池作製時にその上端1辺に電解液が達しないように液を注入すれば、当該上端1辺には電解液が無いことになるため、液漏れや亜鉛デンドライト伸展の問題を回避することができる。これに関連して、負極構造体10(又は10’)は、その中に電解液をも入れた状態で密閉容器内に正極とともに収容されることにより、密閉型亜鉛二次電池の主要構成部品として機能しうる。このため、密閉性は最終的に収容されることになる密閉容器において確保すれば足りるので、負極構造体10(又は10’)自体は上部開放型の簡素な構成であることができる。また、複合層14(又は14’)の外縁の1辺を開放させておくことで、そこから集電体延出部13aを延出させることもできる。集電体延出部13aを延出させるための開放された外縁1辺は、上部開放部を与える上端1辺であってもよいし、それ以外の外縁1辺であってもよい。
【0038】
いずれにしても、複合層14(又は14’)の外縁の少なくとも2辺が、1対の複合層14(又は14’)の封止、又は複合層14(又は14’)の折り曲げにより、閉じられているのが好ましい。封止手法の好ましい例としては、接着剤、熱溶着、超音波溶着、接着テープ、封止テープ、及びそれらの組合せが挙げられる。特に、高分子材料製の多孔質基材を含むLDHセパレータ14bや不織布等の保液部材を含むLDHセパレータ14cはフレキシブル性を有するが故に折り曲げやすいとの利点を有するため、複合層14(又は14’)を長尺状に形成してそれを折り曲げることで、外縁の1辺が閉じた状態を形成するのが好ましい。熱溶着及び超音波溶着は市販のヒートシーラー等を用いて行えばよいが、複合層14の封止の場合、外周部分を構成するLDHセパレータ14bの間に保液部材14aの外周部分を挟み込むようにして熱溶着及び超音波溶着を行うのが、より効果的な封止を行える点で好ましい。一方、接着剤、接着テープ及び封止テープは市販品を用いればよいが、アルカリ電解液中での劣化を防ぐため、耐アルカリ性を有する樹脂を含むものが好ましい。かかる観点から、好ましい接着剤の例としては、エポキシ樹脂系接着剤、天然樹脂系接着剤、変性オレフィン樹脂系接着剤、及び変成シリコーン樹脂系接着剤が挙げられ、中でもエポキシ樹脂系接着剤が耐アルカリ性に特に優れる点でより好ましい。エポキシ樹脂系接着剤の製品例としては、エポキシ接着剤Hysol(登録商標)(Henkel製)が挙げられる。
【0039】
上述したいずれの態様においても、LDHセパレータ14b又は14cと負極活物質層12の端部とが直接的又は間接的に密着する構造を有しており、それによりLDHセパレータ14b又は14cと負極活物質層12の端部との間に電解液溜まりを許容する余剰空間が存在しないようにしてもよい。すなわち、LDHセパレータ14b又は14cと負極活物質層12の端部との間に余分な電解液が多量に存在すると、充電反応時に負極活物質層12(ZnO層)の端部で金属Znが集中的に析出し、放電反応時にその金属ZnがZn(OH)4
2-となって拡散して負極中央部でZnOとして析出することで、負極板の形状変化を引き起こしうる。そこで、電解液溜まりを許容する余剰空間を無くすことで充放電の繰り返しに伴う負極板(特に負極活物質層12)の形状変化を効果的に防止することができる。なお、LDHセパレータ14bと負極活物質層12の端部との間には、電解液溜まりを許容する余剰空間を与えないような形で保液部材14aが存在していてもよい。また、LDHセパレータ14b又は14cと負極活物質層12の端部との間に樹脂を充填することで電解液溜まりを許容する余剰空間を無くしてもよい。
【0040】
亜鉛二次電池
本発明の負極構造体は亜鉛二次電池に適用されるのが好ましい。したがって、本発明の好ましい態様によれば、正極と、負極構造体と、電解液とを備え、LDHセパレータを介して正極と負極活物質層が互いに隔離される、亜鉛二次電池が提供される。本発明の亜鉛二次電池は、亜鉛を負極として用い、かつ、電解液(典型的にはアルカリ金属水酸化物水溶液)を用いた二次電池であれば特に限定されない。したがって、ニッケル亜鉛二次電池、酸化銀亜鉛二次電池、酸化マンガン亜鉛二次電池、亜鉛空気二次電池、その他各種のアルカリ亜鉛二次電池であることができる。例えば、正極が水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含み、それにより亜鉛二次電池がニッケル亜鉛二次電池をなすのが好ましい。あるいは、正極が空気極であり、それにより亜鉛二次電池が亜鉛空気二次電池をなしてもよい。
【実施例】
【0041】
本発明に用いることが可能なLDHセパレータを以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0042】
例1
高分子多孔質基材を用いて、Ni、Al及びTi含有LDHを含むLDHセパレータを以下の手順により作製し、評価した。
【0043】
(1)高分子多孔質基材の準備
気孔率50%、平均気孔径0.1μm及び厚さ20μmの市販のポリプロピレン製多孔質基材を、2.0cm×2.0cmの大きさになるように切り出した。
【0044】
(2)高分子多孔質基材へのアルミナ・チタニアゾルコート
無定形アルミナ溶液(Al-ML15、多木化学株式会社製)と酸化チタンゾル溶液(M6、多木化学株式会社製)をTi/Al(モル比)=2となるように混合して混合ゾルを作製した。混合ゾルを、上記(1)で用意された基材へディップコートにより塗布した。ディップコートは、混合ゾル100mlに基材を浸漬させてから垂直に引き上げ、90℃の乾燥機中で5分間乾燥させることにより行った。
【0045】
(3)原料水溶液の作製
原料として、硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO3)2・6H2O、関東化学株式会社製、及び尿素((NH2)2CO、シグマアルドリッチ製)を用意した。0.015mol/Lとなるように、硝酸ニッケル六水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO3
-(モル比)=16の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
【0046】
(4)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(オートクレーブ容器、内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に原料水溶液とディップコートされた基材を共に封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度120℃で24時間水熱処理を施すことにより基材表面と内部にLDHの形成を行った。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、LDHを多孔質基材中に組み込まれた形で得た。こうしてLDHセパレータを得た。
【0047】
(5)評価
得られたLDHセパレータに対して以下に示される各種評価を行った。
【0048】
評価1:LDHセパレータの同定
X線回折装置(リガク社製 RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10~70°の測定条件で、LDHセパレータの結晶相を測定してXRDプロファイルを得た。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35-0964に記載されるLDH(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定を行った。
【0049】
評価2:微構造の観察
LDHセパレータの表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM-6610LV、JEOL社製)を用いて10~20kVの加速電圧で観察した。また、イオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製、IM4000によって、LDHセパレータの断面研磨面を得た後に、この断面研磨面の微構造を表面微構造の観察と同様の条件でSEMにより観察した。
【0050】
評価3:元素分析評価(EDS)
クロスセクションポリッシャ(CP)により、LDHセパレータの断面研磨面が観察できるように研磨した。FE-SEM(ULTRA55、カールツァイス製)により、LDHセパレータの断面イメージを10000倍の倍率で1視野取得した。この断面イメージの基材表面のLDH膜と基材内部のLDH部分(点分析)についてEDS分析装置(NORAN System SIX、サーモフィッシャーサイエンティフィック製)により、加速電圧15kVの条件にて、元素分析を行った。
【0051】
評価4:耐アルカリ性評価
6mol/Lの水酸化カリウム水溶液に酸化亜鉛を溶解させて、0.4mol/Lの濃度で酸化亜鉛を含む5mol/Lの水酸化カリウム水溶液を得た。こうして得られた水酸化カリウム水溶液15mlをテフロン(登録商標)製密閉容器に入れた。1cm×0.6cmのサイズのLDHセパレータを密閉容器の底に設置し、蓋を閉めた。その後、70℃で3週間(すなわち504時間)又は7週間(すなわち1176時間)保持した後、LDHセパレータを密閉容器から取り出した。取り出したLDHセパレータに対して、室温で1晩乾燥させた。得られた試料をSEMによる微構造観察およびXRDによる結晶構造観察を行った。
【0052】
評価5:イオン伝導率の測定
電解液中でのLDHセパレータの伝導率を
図4に示される電気化学測定系を用いて以下のようにして測定した。LDHセパレータ試料Sを両側から厚み1mmシリコーンパッキン40で挟み、内径6mmのPTFE製フランジ型セル42に組み込んだ。電極46として、#100メッシュのニッケル金網をセル42内に直径6mmの円筒状にして組み込み、電極間距離が2.2mmになるようにした。電解液44として、6MのKOH水溶液をセル42内に充填した。電気化学測定システム(ポテンショ/ガルバノスタッド-周波数応答アナライザ、ソーラトロン社製1287A型及び1255B型)を用い、周波数範囲は1MHz~0.1Hz、印加電圧は10mVの条件で測定を行い、実数軸の切片をLDHセパレータ試料Sの抵抗とした。上記同様の測定をLDH膜の付いていない多孔質基材のみに対しても行い、多孔質基材のみの抵抗も求めた。LDHセパレータ試料Sの抵抗と基材のみの抵抗の差をLDH膜の抵抗とした。LDH膜の抵抗と、LDHの膜厚及び面積を用いて伝導率を求めた。
【0053】
評価6:緻密性判定試験
LDHセパレータがガス不透過性を呈する程の緻密性を有することを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、
図5A及び5Bに示されるように、蓋の無いアクリル容器130と、このアクリル容器130の蓋として機能しうる形状及びサイズのアルミナ治具132とを用意した。アクリル容器130にはその中にガスを供給するためのガス供給口130aが形成されている。また、アルミナ治具132には直径5mmの開口部132aが形成されており、この開口部132aの外周に沿って試料載置用の窪み132bが形成されてなる。アルミナ治具132の窪み132bにエポキシ接着剤134を塗布し、この窪み132bにLDHセパレータ試料136を載置してアルミナ治具132に気密かつ液密に接着させた。そして、LDHセパレータ試料136が接合されたアルミナ治具132を、アクリル容器130の開放部を完全に塞ぐようにシリコーン接着剤138を用いて気密かつ液密にアクリル容器130の上端に接着させて、測定用密閉容器140を得た。この測定用密閉容器140を水槽142に入れ、アクリル容器130のガス供給口130aを圧力計144及び流量計146に接続して、ヘリウムガスをアクリル容器130内に供給可能に構成した。水槽142に水143を入れて測定用密閉容器140を完全に水没させた。このとき、測定用密閉容器140の内部は気密性及び液密性が十分に確保されており、LDHセパレータ試料136の一方の側が測定用密閉容器140の内部空間に露出する一方、LDHセパレータ試料136の他方の側が水槽142内の水に接触している。この状態で、アクリル容器130内にガス供給口130aを介してヘリウムガスを測定用密閉容器140内に導入した。圧力計144及び流量計146を制御してLDHセパレータ試料136内外の差圧が0.5atmとなる(すなわちヘリウムガスに接する側に加わる圧力が反対側に加わる水圧よりも0.5atm高くなる)ようにして、LDHセパレータ試料136から水中にヘリウムガスの泡が発生するか否かを観察した。その結果、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった場合に、LDHセパレータ試料136はガス不透過性を呈する程に高い緻密性を有するものと判定した。
【0054】
評価7:He透過測定
He透過性の観点からLDHセパレータの緻密性を評価すべくHe透過試験を以下のとおり行った。まず、
図6A及び
図6Bに示されるHe透過度測定系310を構築した。He透過度測定系310は、Heガスを充填したガスボンベからのHeガスが圧力計312及び流量計314(デジタルフローメーター)を介して試料ホルダ316に供給され、この試料ホルダ316に保持されたLDHセパレータ318の一方の面から他方の面に透過させて排出させるように構成した。
【0055】
試料ホルダ316は、ガス供給口316a、密閉空間316b及びガス排出口316cを備えた構造を有するものであり、次のようにして組み立てた。まず、LDHセパレータ318の外周に沿って接着剤322を塗布して、中央に開口部を有する治具324(ABS樹脂製)に取り付けた。この治具324の上端及び下端に密封部材326a,326bとしてブチルゴム製のパッキンを配設し、さらに密封部材326a,326bの外側から、フランジからなる開口部を備えた支持部材328a,328b(PTFE製)で挟持した。こうして、LDHセパレータ318、治具324、密封部材326a及び支持部材328aにより密閉空間316bを区画した。支持部材328a,328bを、ガス排出口316c以外の部分からHeガスの漏れが生じないように、ネジを用いた締結手段330で互いに堅く締め付けた。こうして組み立てられた試料ホルダ316のガス供給口316aに、継手332を介してガス供給管334を接続した。
【0056】
次いで、He透過度測定系310にガス供給管334を経てHeガスを供給し、試料ホルダ316内に保持されたLDHセパレータ318に透過させた。このとき、圧力計312及び流量計314によりガス供給圧と流量をモニタリングした。Heガスの透過を1~30分間行った後、He透過度を算出した。He透過度の算出は、単位時間あたりのHeガスの透過量F(cm3/min)、Heガス透過時にLDHセパレータに加わる差圧P(atm)、及びHeガスが透過する膜面積S(cm2)を用いて、F/(P×S)の式により算出した。Heガスの透過量F(cm3/min)は流量計314から直接読み取った。また、差圧Pは圧力計312から読み取ったゲージ圧を用いた。なお、Heガスは差圧Pが0.05~0.90atmの範囲内となるように供給された。
【0057】
(6)評価結果
評価結果は以下のとおりであった。
‐評価1:得られたXRDプロファイルから、LDHセパレータに含まれる結晶相はLDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。
‐評価2:LDHセパレータの断面微構造のSEM画像は
図7に示されるとおりであった。
図7から分かるように、LDHが多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれていること、すなわち多孔質基材の孔が万遍なくLDHで埋まっていることが観察された。
‐評価3:EDS元素分析の結果、LDHセパレータから、LDH構成元素であるC、Al、Ti及びNiが検出された。すなわち、Al、Ti及びNiは水酸化物基本層の構成元素である一方、CはLDHの中間層を構成する陰イオンであるCO
3
2-に対応する。
‐評価4:70℃の水酸化カリウム水溶液に3週間ないし7週間浸漬させた後においても、LDHセパレータの微構造に変化はみられなかった。
‐評価5:LDHセパレータの伝導率は2.0mS/cmであった。
‐評価6:LDHセパレータはガス不透過性を呈する程に高い緻密性を有することが確認された。
‐評価7:LDHセパレータのHe透過度は0.0cm/min・atmであった。