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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】カテーテル挿入装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20220105BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20220105BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61M5/158 500K
A61M5/142 522
A61M25/06 500
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020035128
(22)【出願日】2020-03-02
(62)【分割の表示】P 2016563972の分割
【原出願日】2015-04-23
(65)【公開番号】P2020096955
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】61/983,982
(32)【優先日】2014-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル コール
(72)【発明者】
【氏名】マイケル クレイトン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ルーサー
【審査官】伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0099521(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0326454(US,A1)
【文献】国際公開第2013/086439(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0088509(US,A1)
【文献】特表2010-501281(JP,A)
【文献】特表2013-523233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/158
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル挿入装置であって、
ベースを有するハウジング、
前記ベースに対して第1の後退位置と第2の伸長位置との間で移動可能なカテーテルハブを有するカテーテル、
前記カテーテル内の導入ニードルであって、前記導入ニードルが前記カテーテルの遠位端から伸長する第1の位置と前記導入ニードルが前記カテーテル内に後退させられる第2の位置との間で移動可能である導入ニードル、
前記ハウジング内に配置されたスプリング、
前記スプリングを圧縮された状態で保持するスプリングリテーナ、及び
前記装置を作動させるアクチュエータを備え、
前記アクチュエータは前記カテーテルハブと結合され、前記カテーテル及びニードルが前記ハウジング内に引き込まれている第1の位置と、前記カテーテル及びニードルが前記ハウジングから伸長する第2の位置との間で移動可能であり、
前記アクチュエータの前記第2の位置への移動は、前記スプリングリテーナから前記スプリングを解放し、前記スプリングは、前記導入ニードルと係合して前記導入ニードルを前記カテーテルの遠位端から引き込むことを特徴とするカテーテル挿入装置。
【請求項2】
前記スプリングリテーナは、前記ベースと接触する第1の部分と、前記スプリングと係合する第2の部分とを有していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アクチュエータが前記第2の位置にあるとき、前記カテーテルハブは前記スプリングリテーナに接触して、前記スプリングを解放することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記スプリングリテーナは変形可能であり、且つ、前記スプリングの端部に係合する外側に延在するタブを備える複数の脚部を含み、そして、
前記カテーテルハブは、前記タブを偏向させ且つ前記スプリングを解放するべく前記スプリングリテーナに係合することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記スプリングは、前記導入ニードルの遠位端が前記カテーテル内に配置され、リザーバに接続された前記導入ニードルが患者に流体を供給するために前記カテーテルに流体を供給する位置まで、前記カテーテルに対して前記導入ニードルを後退させるように拡張可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記スプリングは、前記アクチュエータが第1の位置にあるとき、前記ベースと前記脚部の前記タブとの間で圧縮された状態で捕獲され、そして、
前記カテーテルハブは、前記スプリングリテーナに接触して前記タブを内向きに偏向させて前記スプリングリテーナから前記スプリングを解放し、それによって前記スプリングが前記ニードルと係合し、前記スプリングが前記ニードルを後退させることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記カテーテルハブは、第1の端部に摩擦嵌合によって前記導入ニードルを受け入れる寸法のスロットを有し、それにより、前記ニードルは前記第2の位置に移動中に前記カテーテルハブによって運ばれ、そして、
前記スプリングは、前記ニードルに接触し、前記ニードルを前記カテーテルハブから離し、前記導入ニードルを前記カテーテルハブから引き離すことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記導入ニードルは、リザーバに接続された接続部を有し、前記接続部は、前記導入ニードルから半径方向外側に伸張し、前記スプリングは、前記導入ニードルを引き込むために前記接続部と係合することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記導入ニードルが前記カテーテルに流体を供給するための前記後退位置にあるとき、前記導入ニードルの遠位端は、前記カテーテルの近位端に配置されることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記アクチュエータは、軸方向に延びるスロットを有し、前記スロットは、前記第1の位置と前記第2の位置との間を滑るための前記接続部を受け入れることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記アクチュエータは、前記スプリングが伸長位置に解放されたときに前記スプリングを受け入れるための環状キャビティを形成する内側壁および外側壁を有することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記内側壁は、前記導入ニードルを受け入れる長手方向のスロットを有し、前記外側壁は、前記後退位置で前記接続部を受け入れる長手方向のスロットを有することを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記導入ニードルの前記接続部は、前記スロットを通って伸張し、前記導入ニードルを引っ込めるために前記スプリングが解放されると、前記スロットの長手方向に前記スロット内に滑ることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記スプリングは、前記スプリングリテーナから分離されたときに前記内側壁の周りを摺動し、前記ニードルの前記接続部に接触して、前記ニードルを引き込むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
カテーテル挿入装置であって、
ベースを有するハウジング、
軸方向に伸張するスロットを有し、前記ベースに結合されるアクチュエータ、
前記アクチュエータに結合されたカテーテルハブ及び前記カテーテルハブに接続されたカテーテルであって、前記アクチュエータ及び前記カテーテルハブは、前記ハウジング内に配置された第1の位置と、前記カテーテルが前記ハウジングから伸長している第2の位置との間で移動可能である、カテーテルハブ及びカテーテル、
前記アクチュエータの前記スロットに摺動可能に収容される導入ニードルであって、前記アクチュエータおよびカテーテルハブに対する第1の伸張位置と、第2の後退位置との間で摺動可能であり、前記導入ニードルが前記後退位置にあるとき、リザーバに接続された前記導入ニードルによって流体を前記カテーテルに供給する、導入ニードル、
スプリングと、前記スプリングを圧縮された状態で保持するスプリングリテーナであって、前記アクチュエータは、前記第2の位置に移動したとき、前記スプリングを前記スプリングリテーナから解放して、前記スプリングを伸張させ、前記スプリングは、前記導入ニードルと係合して前記導入ニードルを前記スロット内で前記後退位置に引き込むように構成される、スプリングとスプリングリテーナ、を備えるカテーテル挿入装置。
【請求項16】
前記スプリングリテーナは、前記カテーテルハブに結合され、前記カテーテルハブが前記第2の位置に移動されると、前記カテーテルハブから分離可能であることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記スプリングリテーナは、前記ハウジングに対して摺動可能であり、第1の位置と第2の位置との間で移動可能であることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記スプリングリテーナは、外向きに延在する脚部と、前記スプリングを保持する内側に伸張するフックを備えた移動可能なラッチを有し、前記スプリングは、前記脚部と前記フックとの間で、圧縮された状態で保持されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記移動可能なラッチは、前記カテーテルハブが前記ハウジングの前記ベースに接触したとき前記スプリングを解放し、前記スプリングは前記導入ニードルを引き込むことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記導入ニードルは、前記リザーバに接続された接続部を有し、前記接続部は、前記導入ニードルから半径方向外側に伸張し、前記スプリングは前記導入ニードルを引き込むために前記接続部と係合することを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項21】
前記導入ニードルが前記カテーテルに流体を供給するために前記後退位置にあるとき、前記導入ニードルの遠位端は、前記カテーテルの近位端に配置されることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記アクチュエータは、軸方向に伸張するスロットを有し、前記スロットは、前記第1の位置と前記第2の位置との間を摺動するための前記接続部を受入れることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項23】
アクチュエータは、前記スプリングが伸張位置に解放されるときに、前記スプリングを収容するための環状キャビティを形成する内側壁および外側壁を有することを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項24】
前記内側壁および前記外側壁は、前記導入ニードルおよび接続部を後退位置に収容する長手方向スロットを有することを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記導入ニードルの前記接続部は、前記スロットを通って伸張し、前記スプリングが解放されて前記導入ニードルを引っ込めるときに前記スロット内を摺動することを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記スプリングは、前記スプリングリテーナから解放されたときに、前記内側壁の周りを摺動し、前記ニードルの前記接続部に接触して、前記ニードルを引き込むことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項27】
カテーテル挿入装置であって、
ベースを有するハウジング、
前記ベースに対して第1の後退位置と第2の伸長位置との間で移動可能なカテーテル、
前記カテーテル内に受け入れられ、前記ベースに対して第1の後退位置と第2の伸長位置との間で移動可能であり、リザーバに接続された接続部を有する導入ニードル、
前記ハウジング内に配置されたスプリング、
前記スプリングを圧縮状態に保持する、前記ハウジング内のスプリングリテーナ、
前記ベースに対して移動可能なアクチュエータであって、前記カテーテルは前記アクチュエータに結合されたカテーテルハブを有しており、前記カテーテルは、前記アクチュエータとともに移動可能であり、前記導入ニードルの前記接続部は前記アクチュエータから伸長し、前記アクチュエータ内に摺動可能に受入れられており、前記カテーテルおよびニードルが前記ベース内のそれぞれの第1の位置に存する第1の位置と、前記スプリングリテーナから前記スプリングを解放するための、前記カテーテルおよびニードルがそれぞれの第2の位置に存する第2の位置との間で移動可能であり、前記スプリングが解放されると、前記ニードルが前記アクチュエータに引き込まれる、アクチュエータ、を備えることを特徴とするカテーテル挿入装置。
【請求項28】
前記カテーテルハブは、前記アクチュエータに接触する第1の端部と第2の遠位端とを有し、前記カテーテルが前記カテーテルハブと結合されることを特徴とする請求項27に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2014年4月24日に出願された米国仮特許出願第61 /983,982号からの35 USC§119(e)に基づく優先権を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、カテーテル挿入装置及びカテーテル挿入装置を含む注入セットに向けられている。本発明は、特に、患者にカテーテルを導入し、カテーテルが装置のハウジングに対して伸長位置に移動されると自動的に挿入ニードルを後退させる注入セット又は他の配送装置で使用するためのカテーテル挿入装置に向けられている。本発明はまた、カテーテルを患者に挿入し、そして挿入ニードルを自動的に後退させるのにアクチュエータが配備されている手動操作のカテーテル挿入装置に向けられている。本発明はさらに、本発明のカテーテル挿入装置を使用してカテーテルを挿入する方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、必要なときにインスリン産生の適切なレベルを糖尿病患者が維持することができないことに起因する、血糖の高いレベルによって特徴づけられる疾患群である。糖尿病を有する人は、彼らのグルコース(ぶどう糖)レベルの制御を維持するために、毎日のインスリン療法のいくつかのフォームを必要とする。糖尿病は、それが処理されていない場合、影響を受けている患者には危険なことであり、それは重大な健康上の合併症と早死につながり得る。しかしながら、このような合併症は、糖尿病を制御し、合併症のリスクを軽減するための1つ以上の治療の選択肢を利用することによって、最小限に抑えることができる。
【0004】
糖尿病患者のための治療の選択肢は、特殊な食事療法、経口薬及び/又はインスリン療法を含んでいる。糖尿病治療の主な目標は、糖尿病患者の血糖又は糖のレベルを制御することである。しかしながら、適切な糖尿病管理を維持することは、糖尿病患者の活動とバランスされねばならないので、複雑であるかもしれない。
【0005】
1型糖尿病の治療のためには、毎日のインスリン療法の二つの主要な方法がある。第1の方法では、糖尿病患者は、必要なときにインスリンを自己注入するために、注射器又はインスリンペンを使用している。この方法は、各注入のためのニードル穿刺を必要とし、糖尿病患者は1日3?4回の注射が必要な場合がある。インスリンを注入するために使用される注射器及びインスリンペンは、使用が比較的簡単で、費用効果がある。
【0006】
インスリン療法及び管理糖尿病のための別の有効な方法は、インスリンポンプが用いられる注入療法すなわち注入ポンプ療法である。インスリンポンプは、必要なインスリンを産生する、非糖尿病の人の正常に動作している膵臓の機能及び挙動により密接に一致させるために、速度を変化させての糖尿病患者へのインスリンの連続注入を提供することができ、及び当該インスリンポンプは、糖尿病患者が糖尿病患者の個々のニーズに基づいて目標範囲内に彼/彼女の血糖値を維持するのを助けることができる。
【0007】
注入ポンプ療法は、糖尿病患者の皮膚を穿刺し、それを通して、インスリンの注入が行われる、典型的には、注入ニードル又は可撓性のカテーテルの形態である、注入カニューレを必要とする。注入ポンプ療法は、連続的なインスリンの注入、高精度の投与、及びプログラム可能な配送スケジュールの利点を提供する。
【0008】
注入療法では、インスリンの投与量は、典型的には、基本レートで、かつボーラス用量で投与される。インスリンが基本レートで投与される場合、インスリンは、典型的には、夜間、食事や休憩の間の一貫性のある範囲内で、糖尿病患者の血糖値を維持するために、24時間にわたって連続的に配送される。インスリンポンプはまた、昼と夜の異なる時間に応じて変化させるために、インスリンの基本レートをプログラムすることが可能であってもよい。対照的に、ボーラス用量は、典型的には、糖尿病患者が食事を消費し、そして消費された炭水化物のバランスを取るために、単一の追加のインスリン注射を一般に提供するときに投与される。インスリンポンプは、糖尿病患者によって消費される食事の量や種類に応じて、ボーラス用量の量を糖尿病患者がプログラムするのを可能にするように構成されてもよい。加えて、インスリンポンプはまた、糖尿病患者が、消費される特定の食事のためのボーラス用量を算出する時点で、低血糖値を補償するために、インスリンの修正又は補足のボーラス用量を注入するのを可能にするように構成されてもよい。
【0009】
インスリンポンプは、有利には、単一の注射よりも長い期間をかけてインスリンを配送し、典型的にその結果、推奨される血糖範囲内の変動が少なくなることに帰す。加えて、インスリンポンプは、糖尿病患者が耐えねばならないニードル穿刺の数を減らし、糖尿病患者の生活の質を高めるための、糖尿病の管理を改善することができる。
【0010】
一般的に、糖尿病患者が複数の直接注射(multiple direct injections:MDIs)又はポンプを使用しているかどうかにかかわらず、糖尿病患者は、睡眠からの覚醒時に空腹時血糖薬(fasting blood glucose medication:FBGM)を取り、また、修正用量が必要かを決定するために、各食事中や後の血液中のグルコースをテストする。加えて、糖尿病患者は、例えば、睡眠前に軽食を食べた後、修正用量が必要であるかどうかを決定するために、睡眠前に血液中のグルコースについてテストすることができる。
【0011】
注入療法を容易にする、2つのタイプのインスリンポンプ、すなわち、従来のポンプ及びパッチポンプが、一般的に、存在する。従来のポンプは、ポンプ内のリザーバからユーザの皮膚にインスリンを搬送する、典型的には、注入セット、チューブセット又はポンプセットと呼ばれる、使い捨ての構成要素の使用を必要としている。注入セットは、ポンプコネクタ、ある長さのチューブ、及びカニューレのハブ、すなわち、ベースからなり、ハブからは中空の金属注入ニードル又は可撓性のプラスチックカテーテルの形態のカニューレが延びている。ベースは、典型的には、使用時に皮膚表面上にベースを保持する接着剤を有している。カニューレは、手動で、又は、手動又は自動挿入装置の助けを借りて皮膚に挿入され得る。挿入装置は、ユーザによって必要とされる別個のユニットであってもよい。
【0012】
インスリンポンプの別のタイプは、パッチポンプである。従来の注入ポンプや注入セットの組み合わせとは異なり、パッチポンプは、患者の皮膚の注入部位に接着剤で取り付けられ、別の注入又はチューブセットの使用を必要としない単一のハウジング内に、これを、流体リザーバ、ポンピング機構及び自動的にカニューレを挿入するための機構を含む流体構成要素のほとんど又は全てを組み合わせた統合装置である。インスリンを含むパッチポンプは、皮膚に付着し、統合された皮下カニューレを介して一定の期間にわたってインスリンを配送する。いくつかのパッチポンプは、他が完全に自己完結されつつ、(ブランド名OmniPod(登録商標)下でInsulet社から販売されている一つの装置のような)別々の制御器装置とワイヤレスで、通信することができる。このような装置は、インスリンリザーバが使い尽くされ、そうでなく、カニューレ又は注入部位での制限のような合併症が生じた場合には、3日毎のように、頻繁に置き換えられている。
【0013】
パッチポンプは、糖尿病患者によって着用される自己完結型のユニットであるべく設計されているので、ユーザの活動を妨害しないように、できるだけ小さいことが好ましい。従って、ユーザーへの不快感を最小限にするためには、パッチポンプの全体の厚さを最小限にすることが好ましいであろう。しかしながら、パッチポンプの厚さを最小化するためには、その構成部品が、可能な限り縮小されるべきである。そのような部品は、自動的にユーザの皮膚にカニューレを挿入するための挿入機構である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
挿入機構の高さを最小にするため、いくつかの従来型の挿入機構は、皮膚の表面から鋭角、例えば、30-45度にカニューレを挿入するように構成されている。しかしながら、これは、カニューレ挿入の最小の長さを必要とするので、皮膚の表面に垂直又は垂直に近くにカニューレを挿入することが好ましいかもしれない。換言すれば、カニューレの最小の長さが、ユーザの皮膚に挿入されている状態で、ユーザは、カニューレの早期のねじれ(kinking)のようなより快適且つより少ない合併症を経験することができる。しかし、皮膚の表面に対して垂直にカニューレを挿入するべく挿入機構を構成するのに伴う一つの問題は、挿入機構の全体の高さ、したがって、パッチポンプ自体の全体の高さを増加させことである。
【0015】
したがって、パッチポンプのような挿入機構が組み込まれている装置の全体の高さを低減するために、その高さを最小化又は縮小させつつ、ユーザの皮膚の表面に垂直又は垂直に近くカニューレをコスト効率よく挿入することができる、パッチポンプにおけるように、限られたスペース環境で使用するための改良された挿入機構への必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、注入セット又はパッチポンプで使用するためのカテーテル挿入装置に向けられている。本発明は、特に、挿入ニードルを用いてカテーテルを患者へ挿入するべく手動で押され、そして、カテーテルが所定の深さに配置されたとき、挿入ニードルをカテーテルから自動的に後退させるアクチュエータを有するカテーテル挿入装置に向けられている。
【0017】
本発明の一実施形態は、カテーテルを配置し、そして、ユーザーによる一回の操作で挿入ニードルを後退させる、自己完結型のカテーテル挿入、すなわち、導入装置を有する注入セットを提供する。
【0018】
本発明の別の特徴は、患者にカテーテルを挿入するのにユーザによって押下される、手動操作のアクチュエータを有するカテーテル挿入装置を提供することであり、当該アクチュエータは、導入ニードルを装置のハウジング内に後退させるために、カテーテルが伸長位置に移動されるとき、自動的に導入ニードルを解放する。
【0019】
本発明の別の特徴は、カテーテル及び挿入ニードルが第1の後退位置と第2の伸長位置との間で移動可能であるカテーテル挿入装置を提供することである。カテーテルハブは、第2の位置への移動中に挿入ニードルを受入れ、ニードルは、そこで、少なくとも部品的にカテーテルハブから後退する。カテーテル及び挿入ニードルが配置されているとき、カテーテル及びカテーテルハブに対してニードルを後退させるために、スプリングが設けられてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態では、スプリングが最初は圧縮された状態にあり、カテーテルの配置後に、アクチュエータの動きによって解放される。スプリングは、ハウジングのベース又はアクチュエータに取り付けられてもよい。一実施形態では、スプリング及びスプリングリテーナはハウジングに結合され、カテーテル及びニードルが配置されているときに、カテーテルハブがスプリングリテーナに接触し、且つその後にニードルをアクチュエータ内に後退させるスプリングから分離させるように構成されている。
【0021】
別の実施形態では、スプリング及びスプリングリテーナは、アクチュエータに結合されている。スプリングは、カテーテル及び挿入ニードルが患者の皮膚を穿刺する伸長位置へのアクチュエータの移動中に、スプリングリテーナによって圧縮された状態に保持されている。スプリングリテーナは、カテーテル及びニードルがスプリングリテーナをスプリングから解放し係合解除するべく完全に延伸されたとき、ハウジングのベースに接触している。スプリングは、その後、拡大し、ニードルをベースから離して運び、そして、カテーテルからニードルを後退させることができる。
【0022】
これら及び他の本発明の態様は、基本的に、ベースを有するハウジング、ハウジングに対して第1の後退位置と第2の伸長位置との間で移動可能なカテーテル、カテーテル内の導入ニードルであって、ベースに対して第1の後退位置と第2の伸長位置との間で移動可能である導入ニードル、装置を作動させるアクチュエータを有するカテーテル挿入装置を提供することによって達成される。スプリング及びスプリングリテーナは、スプリングを初期の圧縮された状態で保持するためにハウジング内に配置されている。カテーテル及びニードルはアクチュエータに結合されていて、カテーテル及びニードルがハウジング内に引き込まれている第1の位置とカテーテル及びニードルがハウジングから伸長する第2の位置との間で移動可能であり、ニードルをアクチュエータ内に自動的に引き込むべくアクチュエータが第2の位置に移動されたとき、リテーナは、スプリングを解放する。
【0023】
本発明の種々の態様は、ベース、カテーテル、導入ニードル及びアクチュエータを有するハウジングを備えるカテーテル挿入装置を提供することによって達成される。カテーテルは、アクチュエータに結合され、ハウジングに対する第1の後退位置と第2の伸長位置との間で移動可能である。導入ニードルは、カテーテル内に配置され、ベースに対する第1の後退位置と第2の伸長位置との間で移動可能である。スプリング及びスプリングリテーナは、初期の圧縮状態でスプリングを保持するためにハウジング内に配置されている。ニードルは、アクチュエータ内に摺動可能に受入れられ、ここでアクチュエータは、カテーテル及びニードルがハウジング内のそれぞれの第1の位置にある第1の位置と、カテーテル及びニードルがそれぞれの第2の位置にあり、且つカテーテルハブがスプリングを解放するべくスプリングリテーナに係合する第2位置との間で移動可能である。ニードルキャリアが、カテーテルの末端部に解放可能に結合されている。ニードルキャリアは、ニードルをアクチュエータに後退させるべくスプリングが解放されたとき、カテーテルから分離される。
【0024】
本発明の特徴はまた、ベースと、ベースに結合されたアクチュエータを有するハウジングを備えたカテーテル挿入装置によって提供される。カテーテルハブは、アクチュエータ及びカテーテルハブに結合されたカテーテルに結合され、アクチュエータ及びカテーテルハブは、カテーテルがベース内に配置されている第1の位置とアクチュエータが第2の位置にあるときカテーテルがベースから伸長している第2の位置との間で移動可能である。導入ニードルは、アクチュエータに摺動可能に収容され、アクチュエータ及びカテーテルホルダに対しての第1の伸長位置とニードルキャリアがカテーテルハブに解放可能に結合された第2の後退位置との間で摺動可能にアクチュエータに収容されている。スプリング及び圧縮された状態でスプリングを保持するスプリングリテーナは、ハウジング内に位置されている。カテーテルハブは、カテーテル及びカテーテルハブが第2の位置に移動されたとき、ニードルを自動的に後退させるべくスプリングを解放するように構成されている。
【0025】
本発明のこれら及び他の態様は、本発明の種々の実施形態を示す添付の図面と併せての、本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の種々の目的、利点及び例示的な実施形態の新規な特徴は、添付の図面と併せて読めば、以下の詳細な説明からより容易に理解されるであろう。
図1図1は、明確化のために透明なカバーで示されている、低プロフィールカニューレ挿入装置を組み込んでいるパッチポンプの斜視図である。
図2図2は、カバーと共に示された、図1のパッチポンプの種々の構成要素の分解図である。
図3図3は、カバーなしで示された、可撓性リザーバを有するパッチポンプの代替設計の斜視図である。
図4図4は、図3のパッチポンプのパッチポンプ流体アーキテクチャ及び計量サブシステム図である。
図5図5は、本発明の一実施形態において、カテーテル挿入装置を含んでいるパッチポンプ又は注入セットの斜視図である。
図6図6は、配置位置にあるアクチュエータを示しているパッチポンプの斜視図である。
図7図7は、本発明の一実施形態において、カテーテル挿入装置のアクチュエータの斜視図である。
図8図8は、スプリングが圧縮された状態でスプリング初期位置にある挿入装置を示す部品断面図である。
図9図9は、挿入ニードルがニードルキャリアに結合された状態にあるニードルカテーテル挿入装置を示す部品斜視図である。
図10図10は、延伸され、部品的に配置された位置にあるカテーテル及びニードルを示す断面図である。
図11図11は、配置位置にあり、カテーテルハブが、スプリングを解放するべくスプリングリテーナに係合しているカテーテル及びニードルを示す断面図である。
図12図12は、ニードルリテーナからニードルを分離するために、ハウジングの内側壁に係合している挿入ニードルの接続部品を示す部品断面図である。
図13図13は、後退位置にあるニードルを示す断面図である。
図14図14は、アクチュエータに結合されたスプリングアセンブリを示す、本発明の第2の実施形態における斜視図である。
図15図15は、初期の圧縮された状態にあるアクチュエータ及びスプリングアセンブリを示す断面図である。
図16図16は、配置位置にあるアクチュエータ、カテーテル及びニードルを示す断面図である。
図17図17は、カテーテルからニードルを後退させるために解放されたスプリングを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の一実施形態によるパッチポンプ1の例示的な実施形態の斜視図である。パッチポンプ1は、明確化のために、シースルーカバーで示されており、パッチポンプ1を形成するために組み立てられる種々の構成要素を示している。図2は、図1のパッチポンプの種々の構成要素の分解図であり、固体カバー2を備えて示されている。パッチポンプ1の種々の構成要素は、インスリンを貯留するリザーバ4、リザーバ4からインスリンを送出するポンプ3、
【0028】
一つ以上のバッテリの形態の電源5、カテーテルを備える挿入ニードルをユーザの皮膚内へ挿入する挿入機構7、スマートフォンを含む、リモートコントローラやコンピュータなどの外部装置へのオプションの通信機能を備えた回路基板の形態の制御エレクトロニクス8、ボーラス投与を含む、インスリン投与を作動させるカバー2の投与ボタン6、及び、上記の種々の構成要素が固定具91を介して取り付けらるベース9を含んでもよい。パッチポンプ1はまた、リザーバ4から送出されたインスリンを注入部位に移送する種々の流体コネクタラインを含んでいる。
【0029】
挿入機構は種々の構成で生じることが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、挿入機構は、ソフトカテーテルを皮膚に挿入する。これらの実施形態では、通常、ソフトカテーテルは、剛性の挿入ニードルに支持されている。挿入ニードルはソフトカテーテルと共に皮膚に挿入され、次いで皮膚から後退され、皮膚にソフトカテーテルを残す。他の実施形態では、ソフトカテーテルは設けられておらず、挿入ニードルが皮膚に残り、注入が完了するまで、インスリンを配送するためのインスリン流路の一部を形成する。挿入ニードルは、典型的には中空であり、それらがインスリン流路の一部を形成する場合には中空である必要がある。しかしながら、ソフトカテーテルを支持し、その後に後退する挿入ニードルは、中実又は中空であってもよい。挿入ニードルがソフトカテーテルを配置し、そして後退するが、インスリンの流路の一部を残す場合は、挿入ニードルは、中空であるべきである。しかしながら、挿入ニードルがソフトカテーテルを配置した後、後退するが、インスリン流路の一部を形成しない場合には、挿入ニードルは中実又は中空であってもよい。いずれの場合においても、挿入ニードルは、皮膚を確実に穿刺するのに十分な剛性であることが好ましく、そうでなければ、ユーザに快適さを提供するのに十分な柔軟さに形成されでもよい。
【0030】
図3は、可撓性のリザーバ4Aを有するパッチポンプ1Aのための代替設計の斜視図であり、カバーなしで示されている。このような構成は、可撓性リザーバ4Aがパッチポンプ1A内の空隙を充填する状態で、パッチポンプ1Aの外形寸法をさらに低減することができる。パッチポンプ1Aは、ユーザの皮膚の表面に、典型的には、90度未満の鋭角で、カニューレを挿入する従来のカニューレ挿入装置7Aを備えて示されている。パッチポンプ1Aは、バッテリの形態の電源5A、インスリンの量を監視し、低容量を検出する能力を含む計量サブシステム41、装置の構成要素を制御する制御エレクトロニクス8A、及びリザーバ4Aを充填するため再充填注射器45を受入れるためのリザーバ充填ポート43をさらに含んでいる。
【0031】
図4は、図3のパッチポンプ1Aのパッチポンプ流体アーキテクチャ及び計量サブシステムダイアグラムである。パッチポンプ1Aのための電力貯蔵サブシステムは、バッテリ5Aを含んでいる。パッチポンプ1Aの制御エレクトロニクス8Aは、パッチポンプ1Aの作動を制御するマイクロコントローラ81、検出エレクトロニクス82、ポンプ及びバルブのコントローラ83、検出エレクトロニクス85、及び配置エレクトロニクス87を含むことができる。パッチポンプ1Aは、リザーバ4A、リザーバ4Aの容量センサ48、リザーバ4Aを充填する充填注射器45を受入れるためのリザーバ充填ポート43を含み得る流体工学サブシステムを含む。流体工学サブシステムは、ポンプ及びバルブアクチュエータ411と統合ポンプ及びバルブ機構413を備えた計量システムを含むことができる。流体工学サブシステムは、さらに、閉塞センサ、配置アクチュエータ、並びにユーザの皮膚上の注入部位に挿入するためのカニューレ47を含むことができる。図1及び図2のパッチポンプのためのアーキテクチャは、図4に示されているのと同じ又は同様である。
【0032】
本発明は、注入セット又はパッチポンプで使用するためのカテーテル挿入装置に向けられている。本発明は、特に、患者にカテーテルを挿入するために手動で押され、挿入ニードルをカテーテルからアクチュエータへ後退させるスプリングを自動的に解放するアクチュエータを有するカテーテル挿入装置に向けられている。
【0033】
図5~13を参照するに、パッチポンプ(本明細書ではまた注入セット10と称される)がその必要がある患者への薬剤又は医薬を導入するために設けられている。本発明の注入セットは、他の薬剤又は医薬品を患者に配送し得るが、インスリン注入システムで使用され得る。注入セットは、当技術分野で知られているように、患者への薬物又は医薬の拡大された配送のために、適切な分配機構、貯蔵容器及び計量装置を含んでいる。本発明は、挿入装置を使用してのカテーテルの挿入方法にさらに向けられている。
【0034】
ハウジング12は、患者にインスリン、薬物、薬剤又は他の薬剤を配送するための流体供給源すなわちリザーバと計量機構とを収容する内部キャビティを有するベース14を有している。カテーテル挿入装置18は、ハウジング12及びベース14内に取り付けられている。図示の実施形態では、ベース14は、患者に薬剤を配送するために患者の皮膚に接触するように構成されている。
【0035】
カテーテル挿入装置18は、アクチュエータ26、カテーテル28として示されている配送装置、及び挿入ニードル30を含んでいる。図示されるように、本発明の実施形態において、配送装置は、患者への最小限の不快感を伴って患者の皮膚を通してインスリン又は他の薬剤、医薬品を配送するのに適した大きさと長さを有する、当技術分野で知られるような、可撓性のカテーテル28である。可撓性カテーテルは、一般に、患者への不快感を低減することが好ましい。他の実施形態において、配送装置は、剛性カニューレ又は管腔であり得る。
【0036】
カテーテル28は、第1の近位端部32及び第2の遠位の外側端部34を有している。流体通路は、患者にインスリン又は他の薬剤又は医薬を配送するため端部間に延在している。カテーテル28の第1の端部32は、図8に示されるように、カテーテルハブ36に結合されている。カテーテルハブ36は、示された実施形態では、ハウジング12内での摺り運動のために実質的に円筒の形状を有している。カテーテルハブ36は、第1の端部38と第2の端部40との間に延在し、概ね漏斗状の部材42を受入れるキャビティを有する通路を有している。漏斗状の部材42は、第1の近位端部32において、カテーテル28をカテーテルハブ36に摩擦嵌め又は接着剤によって結合させるべくカテーテル28の通路内に挿入されるネック44を有している。漏斗状の部材42は、隔壁48を備える上端部46を有している。
【0037】
挿入ニードル30は、カテーテル28の通路内に受入れられ、図8に示すように、カテーテル28の末端部34を越えて延在する長さを有している。図示の実施形態における挿入ニードル30は、カテーテル28及び患者へのインスリン又は他の薬剤を配送するための内部通路を有する鋼カニューレである。挿入ニードル30は、図10に示されるように、患者の皮膚内への可撓性のカテーテル28の挿入を補助するべく患者の皮膚を穿刺するための鋭い先端52を備える先の尖った末端部50を有している。挿入ニードル30は、当技術分野で知られているように、挿入ニードル30とカテーテル28との間に液密シールを提供するべく隔壁48を通過している。図8に示すように、挿入ニードル30は、患者にインスリン又は薬剤を配送するためにハウジング12内に含まれている、配送装置及び図3に示された供給源のような流体供給源に接続された接続部54を有している。図に示すように、挿入ニードル30は、アクチュエータ26及びハウジング12内で摺動自在に実質的に直線方向に取り付けられている。図示されたな一実施形態では、挿入ニードル30はベース14の平面に実質的に垂直な方向に移行する。接続部54は、ニードル30がカテーテルハブ36とカテーテル28と共に分離されるまで移行するように、摩擦嵌合によって、カテーテルハブ36内のスロット又はノッチ内に受入れられている。
【0038】
アクチュエータ26は、使用、患者へのカテーテル28の配置及び挿入の際に、患者によって押下又は作動されるボタンや他の手動作動部材の形態である。アクチュエータ26は、図8に示した第1の位置から図10及び11に示される作動又は配置位置に移動可能である。図示の実施形態におけるアクチュエータ26は、略円筒形状を有しており、ハウジング12の上面における開口部56内に摺動自在に収容されている。
【0039】
図示の実施形態では、アクチュエータ26は、上部壁60と底部末端部62とを有する円筒形の外側の側壁58を有している。外向きに延在する破断可能な又は弾性のタブ20が、図7及び9に示すように、アクチュエータ26を押し下げるのに所定の力を必要とするべくハウジング内の対応する凹部22内に受入れられている。円筒状の側壁58は、内側の環状キャビティ64を画定している。本発明の一実施形態では、実質的に円筒形の内側スリーブ66が、側壁58の末端部62に向かって上部壁60から延在し、外側の側壁58から内側に間隔を置いて配置されている。スリーブ66は、側壁58と同心であり、環状キャビティ64を画定するように内側に間隔が置かれている。一実施形態では、スリーブ66の端部が底部末端部62からカテーテルハブ36の寸法を補完する距離だけ離間され、その結果、ハブ36が、図8に示されるように、アクチュエータ内に受入れられるように、スリーブ66が側壁64の長さよりも短い長さを有している。
【0040】
図示の実施形態では、アクチュエータ26を受入れるためのキャビティ70又は通路を画定するため、且つ、ハウジング12及びベース14に対してのアクチュエータ26の摺り移動を許容するために、円筒状の壁68がハウジング12内に設けられている。一実施形態では、円筒壁68はベース14に一体的に形成されている。円筒形の側壁68には、上端部に凹部と、図12に示されるように、ベース14又はその近くに底端部に向けて凹部又はリブ24が設けられている。外側に延在する戻り止め20が側壁58から外側に突出するように設けられてもよく、そして、配置位置にアクチュエータを保持するためにそれぞれの凹部に受入れられる寸法を有することができる。アクチュエータを配置位置に保持又はロックするために、壁部68の内面における対応する凹部又はタブと嵌合するフック25などによるような他のメカニズムが用いられてもよい。
【0041】
挿入ニードル30は、カテーテルハブ36の一部として形成されているニードルキャリアに結合されている。図示の実施形態では、ニードルキャリアは、内側壁81のキャビティ74内を摺動するスリーブを形成する円筒状の形状を有している。ニードルキャリアは、図10に示され、カテーテルハブ36の下方への移動が挿入ニードル30を第2の伸長位置に運ぶように、ニードル30の接続部54を受入れるための寸法を有しているV字状のノッチ76によって形成される。接続部54は、摩擦嵌合によってノッチ76に受入れられる。図示の実施形態では、ニードル30の接続部54は、ニードル30の主要な長手方向部分に対して実質的に垂直に延在しており、使用中にカテーテルに流体を導入するための流体供給源に接続されている。図8及び図9に示されるように、アクチュエータ26の内側スリーブ66は、ニードル30の接続部54がアクチュエータ26内でスロット80の長手方向寸法に沿って直線方向に摺動するように、長手方向のスロット80を有している。
【0042】
ハウジング12には、図8に示されるように、アクチュエータのカテーテルハブ36と内側スリーブ66のための軸方向通路82を形成するべく壁68と同心の内側壁81が設けられている。一実施形態では、内側壁81は、接続部83によってベース14に接続されている。内側壁81は、アクチュエータ26が第1の位置と第2位置との間で移動している間、アクチュエータ26を受入れて案内するためにハウジング12の上面に上部端を有している。図8及び10に示すように、内側壁81は、ベース14に隣接する底端部に、接続部83によって形成された開口部84を含んでいる。図示された実施形態では、アクチュエータ26の内側スリーブ66の末端部は、カテーテルハブ36に結合されており、その結果、カテーテルハブ36は装置が配置されたときにアクチュエータ26と共に伸長位置に移動する。
【0043】
付勢部材が、底壁に対して挿入ニードル30を上向きに付勢するべく設けられている。スプリング90及びスプリングリテーナ92が、ハウジング12内及び内側壁68によって画定されたキャビティ70内に設けられている。図8、10及び11に示すように、スプリング90は、内側壁81、キャビティ70の中心軸、及びカテーテル28及びニードル30のためにベース14に設けられた開口部を包囲するコイルスプリングである。スプリングリテーナ92は、カテーテル28及びニードル30を受入れる開口部96を備える底壁94を有する、可撓性すなわち変形可能な材料から作ることができる。少なくとも一つ、典型的には三つの可撓性で屈曲可能な脚部98が、底壁94から上方に延在している。各脚部98には、底面102、上面104及び内面106を有し、外側に延在するタブ100が設けられている。底面102は、休止位置において図8及び図10に示されるように、タブ100とベース14との間にスプリング90を捕捉するべくベース14に実質的に平行に延在している。初期位置における内面106は、図8に示される外側の位置に脚部98を保持するべく、内側壁81の外縁部に接触している。図示の実施形態では、スプリング90は、
【0044】
図10に示されるように、スプリング90がスプリングリテーナ92を上向き方向に付勢し、そして内側壁81の底端部に接触させるように、最初は、圧縮された状態にある。図示の実施形態では、脚部98は、スプリング90を圧縮された状態に保持するべく、図8に示された位置に向けて屈曲された脚部98を保持するように、内側壁81の外面に係合している。図示の実施形態では、内側壁81の底縁部は、脚部98の内側面106の僅かに外向きのテーパを補完する僅かなテーパを有している。
【0045】
使用中に、注入セットは、所望の位置に接着剤により患者の皮膚に対して配置される。最初に、アクチュエータ26は、図8に示される位置にあり、カテーテル28とニードル30とがハウジング12内に引き込まれた状態で、ハウジング12の上面上に延在している。装置は、ユーザによりアクチュエータ26に下方向に押下することによって配置される。アクチュエータ26への下向きの力は、取り外し可能にカテーテルハブ36に結合されている状態のニードル30と共に、カテーテルハブ36を図10に示す伸長位置に押す。ここでは、カテーテルハブ36の末端部がスプリングリテーナ92の底壁94に接触し、ニードル30及びカテーテルが患者の皮膚を穿刺する。この時点で、アクチュエータ26のさらなる移動は、スプリングリテーナ92をベース14に向かい内側壁81から離れる図11に示す位置に、下方に押圧する。図12に示すように、内側壁81は、ニードル30の接続部54が内側壁81の長さに沿って摺動するのを可能にする長手方向のスロット108を有している。図12においては、スプリングリテーナ92は、明確化のために示されていない。スプリングリテーナ92は、図8に示されるように、通常、スプリング90と共に配置されている。スロット108の底縁部110は、ニードル30をカテーテルハブ36から分離するべくアクチュエータ26が図11に示される位置に移動されるにつれ、接触部54が底縁部110に接触するような距離だけベース14から離されている。図11に示す位置にアクチュエータ26及びカテーテルハブ36を下方へ移動させると、図12に示されるように、ニードルキャリア36のノッチ76から接続部54を分離させ、接続部54とニードル30が内側壁81及び内側スリーブ66内のスプリング90によって後退させることを可能にする。この位置では、タブ100の内面106は内側壁81から分離され、その結果、タブ100は互いに及びスプリングリテーナ92の中心軸に向かって内向きに撓み、タブ100の底面102は、スプリングの端部から分離され、それによって、スプリング90が図13に示される位置に拡張することを許容する。底面102に係合しているスプリング90は、スプリング90がタブ100の上を摺動するように、脚部98を内側に付勢している。スプリング90の拡張は、スプリング90の上端部がニードル30の接続部54に係合し、そしてニードル30をカテーテル28から内側スリーブ66のキャビティ内に後退させることを可能にする。好ましい実施形態では、ニードル30は、カテーテル28を介して薬剤を患者に供給するために、少なくとも部品的にカテーテル38内に留まる。
【0046】
図14~17に示す本発明の別の実施形態では、カテーテル挿入装置が、先の実施形態と同様にハウジング122とベース144とを有する注入セット120内に含まれている。アクチュエータ126は、ハウジング122の開口部128に摺動可能に受入れられている。
【0047】
カテーテル130は、アクチュエータ126に結合されているカテーテルハブ132に結合されている。アクチュエータ126は、外側壁134と内側壁136を含んでいる。内側壁136は、導入ニードル142の接続部140を摺動可能に受入れるための長手方向のスロット138を含んでいる。外側壁134は、図15~17に示されるように、接続部140を受入れるためのスロット138に整列された長手方向のスロット139を含んでいる。ニードル142は、カテーテルハブ132内に受入れられた隔壁144を貫通して延在している。漏斗がカテーテルハブ132で受入れられ、そして、前の実施形態と同様にカテーテル130に接続されている。一実施形態において、カテーテル130は、患者に物質を導入するのに適した可撓性のカテーテルである。ハウジング122は、前の実施形態におけるのと同じく滑るようにアクチュエータ126を受入れるため、キャビティ148を画定する内側壁146を有している。スロット150は、ニードル142の接続部140が図15に示される後退位置と図16に示される伸長位置との間で摺動するように、内側壁146の長手方向の長さ延在している。ニードル142は、前の実施形態と同様に、リザーバとポンプに接続されている可撓性の供給チューブ143に接続されている。
【0048】
付勢部材は、ニードル142をベース144から離して付勢し、カテーテル130に対してニードル142を後退させるべく設けられている。スプリング152及びスプリングリテーナ154が、カテーテル130からニードル142を後退させる付勢部材を画定するべく、アクチュエータ126に結合されている。図示の実施形態では、スプリング152は、最初は圧縮された状態でカテーテルハブ132を囲っているのコイルスプリングである。本実施形態では、スプリングリテーナ154は、カテーテルハブ132から半径方向外向きに延在し、そしてスプリング152の底端部に接触する表面を形成している外方延在フランジの形態である。スプリングリテーナ154は、カテーテルハブ132に一体的に形成されてもよい。環状のディスク156が外側壁134と内側壁136との間に形成された環状キャビティ内で内側壁136を摺動する。ディスク156は、スプリング152の上端部に接触する表面を画定している。ディスク156の上面は、ニードル142の接続部140を受入れる半径方向に延在する凹部を含んでいる。移動可能なラッチ158が、図15に示すように、スプリングリテーナ154に結合されている。図14に示されるように、3つのラッチ158が、ディスク156の周囲に等間隔に配置されている。移動可能なラッチ158は、図15に示すように、ディスク156の上面に引っ掛けるための内向きに延在するフック160を備える上端部を有している。ラッチ158の底端部は外側に延在する脚部162を有している。一実施形態では、移動可能なラッチ158は、フック160がディスク156を解放して係合解除させるべく、半径方向外側に移動することができるように、脚部162の末端部の周りに旋回することができる。
【0049】
使用中、注入セット120は患者の皮膚上の所望の位置に配置される。アクチュエータ126が、カテーテル130及びニードル142を配置すべく、に患者の皮膚に向かって手動で下方に押し下げられる。下向きの力は、カテーテル130及び挿入ニードル140が患者の皮膚を穿刺するように、カテーテルハブ132とディスク156を図16に示されるようにベース144に向かって押圧する。アクチュエータ126は、ラッチ158がベース144に接触し、そしてディスク156から外れるべく外側に旋回する、図16に示す位置に移動され、それによって、ディスク156及びスプリング152を解放する。スプリング152は、その後、拡張し、図17に示される後退位置にディスク156及びニードル142を運ぶ。
【0050】
一実施形態では、それぞれのラッチ158がスプリングリテーナ154に結合されるか、又は一体的に形成され、カテーテルホルダ132から外方に離間されている。カテーテルホルダー132の下方への動きは、ラッチ158の底端部が延伸配置位置で底壁124に接触するのを生じさせる。底壁124へのラッチ158の接触は、ラッチ158のスプリングリテーナ154から離れる外側への旋回運動を引き起こし、スプリングリテーナ154及びスプリング152を解放することになる。アクチュエータ126の下方への移動及びディスク156に加えられる力は、ラッチ158のフック160とディスク156の間の緊張を解放し、フック160がディスク156から分離することを可能にしている。一実施形態では、休止位置にあるラッチ158は、図16に示される位置において、カテーテルハブ132から外向きにある角度で延在している。図15に示される装填位置にあるラッチ158は、フック160がディスク156に係合するように内側に押し込まれている。スプリング152は、フック160が図15に示されるラッチ位置に保持されるように、フック160と接触させてディスク156を付勢している。カテーテルハブ132とディスク156の下向きの力は、ディスク156からフック160を係合解除させるために、ラッチ158がカテーテルハブ132から離れて移動するのを可能にするべく、スプリング152の張力を解放することができる。
【0051】
種々の実施形態が図示され説明されたが、種々の変更及び修正が、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることは、当業者によって理解されるであろう。
図1
図2
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図11
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