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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】熱固定可能なテキスタイル面状形成物
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20220105BHJP
   D04H 11/00 20060101ALI20220105BHJP
   A41D 27/06 20060101ALI20220105BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B32B5/26
D04H11/00
A41D27/06 F
A41D27/00 Z
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020047183
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2020152109
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2020-03-18
(31)【優先権主張番号】10 2019 106 995.5
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501479868
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Carl Freudenberg KG
【住所又は居所原語表記】Hoehnerweg 2-4, D-69469 Weinheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン トラーザー
(72)【発明者】
【氏名】ユタ ヴォー クアン
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ ドブリノフ ドブレフ
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-143368(JP,U)
【文献】特開平05-195401(JP,A)
【文献】特開2002-249972(JP,A)
【文献】特開昭57-029601(JP,A)
【文献】特開平02-001305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
D04H11/00
A41D27/00-27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンからなるメルトブロー繊維不織布をベースとする基材材料(2)を含む、殊にテキスタイル産業において、固定可能な芯地、裏地および/または表地として使用することができる熱固定可能なテキスタイル面状形成物であって、前記基材材料(2)が、片側にフロック繊維(3)を有し、前記フロック繊維(3)とは反対側に溶融接着剤(4)を有し、前記テキスタイル面状形成物は、伸縮性が、DIN EN ISO13934-1に準拠して、少なくとも1つの方向で3Nの力で測定して、少なくとも2%であり、かつ通気性が、DIN EN ISO9237に準拠して、100Paで測定して、20l/m s超または10l/m s未満である、熱固定可能なテキスタイル面状形成物(1)。
【請求項2】
ウェブ品として形成されていることを特徴とする、請求項1記載のテキスタイル面状形成物(1)。
【請求項3】
通気性が、DIN EN ISO9237に準拠して、100Paで測定して、20l/ms~2000l/m超であることを特徴とする、請求項1または2記載のテキスタイル面状形成物(1)。
【請求項4】
前記溶融接着剤(4)が、熱可塑性ポリマー、殊にポリアミド(PA)、コポリアミド、ポリエステル(PES)、コポリエステル、酢酸エチルビニル(EVA)およびそのコポリマー(EVAC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、非晶質ポリアルファオレフィン(APAO)、ポリウレタン(PU)、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のテキスタイル面状形成物(1)。
【請求項5】
前記フロック繊維(3)が、接着剤(5)により前記基材材料(2)に固定されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のテキスタイル面状形成物(1)。
【請求項6】
前記フロック繊維(3)が、前記基材材料(2)を部分的に覆うのみであり、好適には規則的または不規則的なパターンを形成することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のテキスタイル面状形成物(1)。
【請求項7】
坪量が、DIN EN29073に準拠して測定して、10g/m~400g/mの範囲にあることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のテキスタイル面状形成物(1)。
【請求項8】
厚さが、DIN EN ISO9073-2に準拠して、0.5mm~1.6mmであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のテキスタイル面状形成物(1)。
【請求項9】
係数が、DIN53835に準拠して、25%の伸び率で測定して、20N未満であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のテキスタイル面状形成物(1)。
【請求項10】
テキスタイル産業における、固定可能な芯地、裏地および/または表地としての、請求項1からまでのいずれか1項記載のテキスタイル面状形成物(1)の使用。
【請求項11】
以下の工程:
A) メルトブロー繊維不織布をベースとする基材材料を用意する工程、
B) フロック繊維(3)を前記基材材料の片側に施与する工程、
C) 溶融接着剤(4)を前記フロック繊維(3)とは反対の前記基材材料側に施与する工程
を含む、請求項1からまでのいずれか1項記載のテキスタイル面状形成物(1)を製造する方法。
【請求項12】
工程A)における前記基材材料を用意する工程が、補助基材、例えばスパンボンド不織布上で前記基材材料を固定する工程を含み、前記補助基材が、工程B)における前記フロック繊維(3)を施与する工程の後に再び除去されることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
工程B)における前記フロック繊維(3)を施与する工程が、接着剤を施与する上流工程を含むことを特徴とする、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
方法工程C)が方法工程B)の前に実施されることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殊にテキスタイル産業において固定可能な芯地、裏地および/または表地として使用可能な熱固定可能なテキスタイル面状形成物に関する。該テキスタイル面状形成物は、感触が非常に心地よい点で優れており、同時に、厚さを小さく伸縮性を高くして製造することが可能である。さらに本発明は、該テキスタイル面状形成物の製造と、テキスタイル用の芯地、裏地および/または表地としてのその使用とに関する。
【0002】
芯地は、衣服の目に見えない骨格である。芯地は、適切なフィット性と最適な着心地とをもたらす。用途に応じて、芯地は、加工性を補助し、機能性を上げ、衣服を安定させる。衣服の他に、これらの機能は、工業用テキスタイル用途、例えば、家具産業、クッション産業および家庭用テキスタイル産業で利用できる。
【0003】
裏地とは、テキスタイル、例えば衣服または皮革製品用の裏生地として使用される素材である。テキスタイル技術において、裏生地とは、ニードリング、キルティングおよび/または熱固定によりテキスタイルの内側に固定されるテキスタイル面状形成物を表す。よって、裏生地とは、上着における身体側に向いた内側の素材層である。裏生地は、衣服の内側を、より持続的に、より快適に、かつ/またはより暖かく、あるいはより上品にする機能を有し得る。さらに、衣服の裏生地は、多くの場合、流行的側面も有する。衣服の他に、テキスタイル裏生地は、帽子、スーツケース、ハンドバックおよびその他の容器にも使用されている。
【0004】
表地とは、外部から見えるテキスタイルの外側の素材層として使用される素材である。
【0005】
芯地、裏地および/または表地の有利な特性プロファイルは、用途に応じて、柔軟さ、弾力性、手触り、耐洗濯性および手入れ耐性、ならびに/または使用時の十分な耐摩耗性である。先に挙げた素材は、一般的に、不織布、織物、経編物(Gewirken)または同等のテキスタイル面状形成物からなる。殊に芯地には、多くの場合、接着材料が設けられており、それにより、芯地は、多くの場合、熱的に高温により、および/または圧力により表地と接着することが可能である(固定芯地)。そのようにして、芯地が表地に積層化される。前述の様々なテキスタイル面状形成物は、製造方法に応じて、異なる特性プロファイルを有する。織物は、経糸方向および緯糸方向のスレッド/ヤーンからなり、経編物は、メリヤス編み(Maschenbindung)によりテキスタイル面状形成物へと結合されるスレッド/ヤーンからなる。不織布は、重なって繊維パイル(Faserflor)になった単一繊維からなり、これらの繊維は、機械的、化学的、または熱的に結合される。
【0006】
現在、薄く、透明な、柔軟な、または開放的な表地が、衣服産業において、特に婦人用上着およびスポーツウェアでトレンドとなっている。そのような表地を補助するためには、非常に軽く、その構造が開放的な素材が向いている。
【0007】
伸縮性の表地が使用される場合、または衣服に伸縮特性を付与することが望ましい場合、伸縮性テキスタイル面状形成物の使用が有利である。
【0008】
米国特許第8323764号明細書には、(a)部分的に結合した伸縮性エラストマー材料の液滴から構成される多孔性または微孔性織物層であって、内部表面および外部表面を有するものと、(b)層表面に部分的に埋め込まれているバラ繊維とを含む柔軟な加工物が記載されている。この製造は、鋳型を使用することにより行われる(専用の金型、または対象もしくは成形材料を成形するための別の装置)。
【0009】
記載されている加工物は、面状または三次元形態で存在し、かつその構造が使用される鋳型により定められた、両側にフロック加工された伸縮性材料である。その製造には、複雑なプロセスおよび高コストな設備が必要であり、すなわち、特定の鋳型と、エラストマーが施与されるまでフロック繊維が一時的に固定される特殊な層とが使用される必要がある。さらに、伸縮性になるようにフロック加工された表面またはコーティングを作製するために鋳型を使用する必要がある。この製品の場合、通気性はエラストマー液滴を噴霧することにより達成され、これらの液滴の隙間が、細孔として機能して、通気性をもたらす。これは、ゲル/水溶液に固定した一部のフロック繊維のみが最終製品に残り、それにより廃棄率が上昇することを意味する。さらに、エラストマー液滴が噴霧される場合、多孔性および通気性は、このエラストマーコーティングの厚さが非常に小さい場合に可能であるにすぎない。これにより、材料の機械的強度が非常に低くなる。さらに、三次元形状のフロック加工において、例えば窪んだ部分において、均一な厚みのフロック加工を達成することができない。
【0010】
米国特許第9596897号明細書には、伸縮性ベース層と、伸縮性取付層(Montageschicht)と、取付層の表面に施与されたフロック加工部とを含む、衣服品用のウエストバンドが記載されている。記載のウエストバンドは、以下の欠点を有する:ウエスト領域(ベース層30)で衣服を支えるために、「伸縮性接着テープ」(取付層40)が使用されるか、または高温溶融膜によりベース層30とニードリングまたは接着された伸縮性の緯編物(Gestrick)が使用される。接着層50を、20~30秒にわたる圧力(40~60psi)および熱(150~170°F/66~77℃)により、ベース層30および取付層40の双方と結合することが提案されている。接着温度が非常に低い場合、わずか60℃だとしても、衣服をアイロンがけすることも洗濯することも不可能である。バンド11およびベース層30を、継ぎ目を通して衣服本体(18)に固定し、それにより、フロック加工された表面を衣服の本体に直接固定する可能性を除外することも提案されている。
【0011】
米国特許出願公開第20090271914号明細書には、エラストマー接着剤から製造され、かつエラストマー接着剤に埋め込まれたフロック繊維の端部によりフロック加工されている支持バンド(Stuetzbaender)を含む衣服が記載されている。さらに、静電気式または機械式の装置を使用して製造されるフロック繊維を有する衣服を製造する方法が記載されている。この方法の主な欠点は、切断後に衣服部分のフロック加工をすぐ実施することができるように、衣服製造者が、例えば、接着剤スクリーン印刷、接着剤噴霧、フロック材料施与、空気洗浄/濾過、熱による接着剤乾燥または硬化の分野における必要な技術/設備および専門知識を得る必要があることである。
【0012】
本発明の課題は、先に挙げた欠点を少なくとも部分的に克服することである。
【0013】
前記課題は、メルトブロー繊維不織布をベースとする基材材料を含む、殊にテキスタイル産業において、固定可能な芯地、裏地および/または表地として使用することができる熱固定可能なテキスタイル面状形成物であって、基材材料が、片側にフロック繊維を有し、フロック繊維とは反対側に溶融接着剤を有する、熱固定可能なテキスタイル面状形成物により解決される。
【0014】
本発明によるテキスタイル面状形成物についての利点は、これが、フロック繊維を有するウェブ品(Bahnenware)の形態で容易に製造可能である点にある。よって、本発明の好ましい実施形態において、テキスタイル面状形成物は、ウェブ品として形成されている。既製品のフロック加工された衣服に対する大きな利点は、フロック加工されたウェブ品を使用することにより、衣服製造者が、煩雑なフロック加工技術を適用する必要なく、切断および溶融するだけで、フロック加工された繊維表面を衣服に作製することができることである。
【0015】
様々な密度グレードのメルトブロー繊維不織布を使用することにより通気性を容易に得ることが可能であることがさらに有利である。後のフロック加工プロセスにおいて、接着剤をメルトブロー繊維に施与することができ、それにより、これらの間の領域は、空いたままになり、通気(空気透過性)孔として機能することができる。
【0016】
本発明によると、テキスタイル面状形成物は、メルトブロー繊維不織布をベースとする基材材料を有する。ここで、「をベースとする」という用語は、基材材料の総重量を基準として少なくとも90重量%であることを意味する。本発明によると、メルトブロー繊維という用語は、溶融した熱可塑性材料を高速ガス(例えば空気)のもとで多数の微細な、通常は円形の形をしたノズルキャピラリに通して溶融繊維として押出成形することにより製造される繊維であると理解される。このアプローチにより、繊維の直径が減少する。その後、メルトブロー繊維が高速ガス流により運ばれ、捕集表面に堆積し、ランダム分布した繊維からのメルトブロー繊維不織布が形成される。メルトブロー法は、よく知られており、様々な特許および刊行物、例えば、V.A.Wendt、E.L.BooneおよびC.D.FluhartyのNRL報告書4364「Herstellung von superfeinen organischen Fasern」、K.D.Lawrence、R.T.LukasおよびJ.A.JungeのNRL報告書5265「eine verbesserte Vorrichtung fuer die Bildung von superfeinen Thermoplastic Fibers」、ならびにBuntin等の1974年11月19日付与の米国特許第3,849,241号明細書に記載されている。ここでは、これらの発行物を参照として取り入れて援用する。
【0017】
メルトブロー繊維不織布についてさらに有利であるのは、多くの微細な繊維を理由に、接着剤の結合が、従来の不織布よりも著しく良好である点である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、メルトブロー繊維は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ならびにポリウレタン、それらのコポリマーおよび/または混合物からなる群より選択されるポリマーから形成されている。ここで、ポリウレタンが、特に高い伸縮性を有するため、特に好ましい。熱可塑性エラストマー、殊に熱可塑性エラストマー状のポリエステル、ポリオレフィンおよび/またはポリウレタンが同様に好ましい。熱可塑性エラストマー(TPE、エラストプラスト(Elastoplaste)と称されることもある)は、室温では従来のエラストマーと同等に挙動するが、熱を供給すると塑性変形し、それにより熱可塑性挙動を示すプラスチックである。
【0019】
さらなる本発明の好ましい実施形態において、メルトブロー繊維は、繊維のタイターが、0.2~5dtex、好適には0.5~3dtex、殊に0.5~2dtexである。
【0020】
テキスタイル面状形成物におけるメルトブロー繊維の割合は、それぞれテキスタイル面状形成物の総重量を基準として、好適には少なくとも10重量%、さらに好ましくは20重量%~60重量%、殊に25重量%~55重量%である。
【0021】
本発明によると、基材材料は、片側にフロック繊維を有する。フロック繊維は、バラ繊維の形態で、下地、ここでは基材材料に施与される、長さの短い繊維である。繊維の厚さおよび長さに応じて、所望の機能、外観または感触に相応して、ビロードのように柔らかい表面から摩耗しづらい表面までを作製することができる。フロック繊維は、あらゆる天然または合成材料から形成されてもよい。合成材料は、好適には、ナイロン、ポリアミド、ポリエステル、例えばテレフタレートポリマーを含み、天然材料は、例えば、木綿、絹、ビスコースおよび/またはウールを含む。
【0022】
フロック繊維の長さは、必要に応じて変化してもよい。フロック繊維は、長さが、0.3mm~1.5mm、好適には0.4mm~0.75mm、殊に0.4mm~0.6mmの範囲にあることが好ましい。
【0023】
同様に、フロック繊維のタイターも、必要に応じて変化してもよい。フロック繊維は、タイターが、0.5dtex~3dtex、好適には0.9dtex~1.7dtex、殊に0.9dtex~1.3dtexの範囲にあることが好ましい。
【0024】
さらに、フロック繊維は、線形であっても、または非線形であってもよい。よって、フロック繊維は、例えば、巻かれていても、捲縮されていても、および/または湾曲していてもよい。フロック繊維は、基材材料に対して実質的に垂直であることが好ましい。しかしながら、代替的には、フロック繊維は、ランダムに配向されていても、角度が付けられていても、および/または実質的に平行に配置されていてもよい。フロック加工に使用される繊維は、フィラメントを所望の長さに切断することより製造されてもよい。切断により生じた繊維端部は、滑らかでも、または滑らかでなくても、例えばギザギザになっていてもよい。
【0025】
フロック繊維は、接着剤により基材材料に固定されていることが好ましい。適切な接着剤は、例えば、アクリレート、ポリウレタン、シリコーンおよび/またはゴムをベースとする接着剤である。ここで、「をベースとする」という用語は、少なくとも50重量%の割合と理解される。本発明によると、アクリレート、ポリウレタンおよび/またはシリコーンをベースとする接着剤が特に好ましい。接着剤が硬化性接着剤であることは都合が良い。
【0026】
好ましい実施形態において、接着剤は架橋剤を有する。テキスタイル面状形成物において、接着剤は架橋剤により架橋されていることが好ましい。好ましい架橋剤は、「ブロック化されたイソシアネート」である。「ブロック化されたイソシアネート」という用語は、慣用的な意味に準じて、イソシアネートが、接着剤との接触に際して、ブロック化剤、殊にアルコールとの付加化合物(ウレタン)および/またはアミンとの付加化合物(尿素)として存在している状態を表す。この付加化合物は、比較的高い温度においてイソシアネートを再び放出することができ、それにより接着剤の架橋を開始することができる。
【0027】
ブロック化されたイソシアネートを使用することにより、架橋のタイミングを選択的に調整することができる。これにより、架橋がすでにコーティングプロセスの間に起こることでコーティングが不規則的になり得ることを防止することができる。さらに、ブロック化されたイソシアネートを使用することにより、個別に架橋度を調整することができる。これにより接着剤の品質が改善される。
【0028】
本発明によると、特に好ましいブロック化剤は、3.5-ジメチルピラゾール(DMP)、アセト酢酸、マロンエステル、ブタノンオキシム、第二級アミン、カプロラクタム,フェノール、アルコールおよびそれらの混合物からなる群より選択される。ここで、DMPが極めて特に好ましい。というのも、DMPは、ポリマーの優れた架橋をもたらし、毒性ではなく、120℃~130℃の低い温度ですでに脱ブロック化するからである。
【0029】
イソシアネートは、1個以上のイソシアネート基にブロック化して存在していてもよい。
【0030】
一実施形態において、接着剤は、イソシアネートによってのみ架橋される。しかしながら、イソシアネートの代わりに、またはイソシアネートに加えて、接着剤を、別の架橋剤、例えば、アジリジン、ポリイソシアネート、カルボジイミド、糖類、アクリルアミド、エポキシド、アミン、オキサゾリン、尿素誘導体、ヒドラジンおよび/またはカルボン酸ヒドラジンにより架橋することも考えられる。
【0031】
熱架橋接着剤が好ましい。これは、架橋を選択的に制御することができるため、湿式架橋接着剤よりも有利である。
【0032】
特に好ましい実施形態において、テキスタイル面状形成物は、熱可塑性TPU、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリオレフィン、木綿、ウール、ビスコース、リヨセルをベースとするメルトブロー繊維不織布を、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリオレフィン、木綿、絹、ウールおよび/またはビスコースをベースとするフロック繊維と、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニルまたはポリウレタンをベースとする溶融接着剤と、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ゴムおよび/またはシリコーンをベースとする架橋接着剤と組み合わせて有する。
【0033】
ここで、「をベースとする」とは、それぞれ50重量%超の重量割合を意味する。
【0034】
テキスタイル面状形成物の良好な伸縮率(伸び率)を得るためには、接着剤の伸縮復元率が、基材材料の伸縮復元率よりも低くないと有利である。
【0035】
好ましい実施形態において、本発明によるテキスタイル面状形成物は、伸縮率が、DIN EN ISO13934-1に準拠して、少なくとも1つの方向で3Nの力で測定して、少なくとも2%、例えば2%~50%、さらに好ましくは10%~20%である。
【0036】
好ましい実施形態において、本発明によるテキスタイル面状形成物は、永久伸び率が、DIN53835に準拠して、少なくとも1つの方向で測定して、少なくとも0.1%、例えば2%~20%、さらに好ましくは1%~5%である。
【0037】
フロック繊維は、基材材料を全面的に覆っているか、または部分的に覆っているのみでもよい。基材材料が部分的に覆われているのみの場合、フロック繊維は、規則的なパターンを形成していても、または不規則的なパターンを形成していてもよい。基材材料が部分的に覆われているのみの場合に有利であることは、テキスタイル面状形成物の空気透過性または通気性が容易に調整可能である点である。さらに、これにより、係数および伸び挙動の選択的な調整も可能になる。
【0038】
本発明の一実施形態において、テキスタイル面状形成物は、通気性が、DIN EN ISO9237に準拠して、100Paで測定して、20l/ms超、例えば20l/ms~2000l/msである。別の実施形態において、通気性がより低いと、例えば、20l/ms未満、さらに好ましくは10l/ms未満、さらに好ましくは5l/ms未満、殊に約0l/msであると望ましいであろう。
【0039】
基材材料へのフロック繊維の施与は、様々な方法で、例えば静電気式および/または機械式のフロック加工により行うことが可能である。
【0040】
本発明によると、静電気式のフロック加工が好ましい。これはよく知られており、バラ状のフロック繊維が使用されて、接着剤がコーティングされた基材材料に電場で施与される。
【0041】
本発明によると、基材材料は、フロック繊維とは反対側に溶融接着剤を有する。高温接着剤、高温接着物質、または英語でホットメルトとも称される溶融接着剤は、久しく知られている。一般的に、溶融接着剤とは、溶融状態で接着面に施与され、冷却時に急速に凝固し、それにより迅速に強度を確立する、実質的に溶媒不含の製品であると理解される。本発明によると、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリアミド(PA)、コポリアミド、ポリエステル(PES)、コポリエステル、酢酸エチルビニル(EVA)およびそのコポリマー(EVAC)、ポリオレフィン、殊にポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、非晶質ポリアルファオレフィン(APAO)、ポリウレタン(PU)、ならびにそれらの混合物が、溶融接着剤として使用されることが好ましい。本発明によると、コポリアミド、コポリエステルおよびポリウレタンが特に好ましい。
【0042】
基本的に、溶融接着剤の接着作用は、これが、熱可塑性ポリマーとして可逆的に溶着可能であり、液状の溶融物として、溶融プロセスにより低下したその粘度を理由に、被接着面を濡らし、それにより被接着面に対する粘着性を生み出すことができることに基づく。これに続く冷却の結果、溶融接着剤は再び凝固して固形物になり、この固形物は、高い凝集力を有し、かつこのように接着面への結合を確立する。接着が起こった後、粘弾性ポリマーが、冷却プロセスの後にも、その体積変化と、それに関連する機械的応力の生成により粘着性を維持する役割を果たす。凝集力が生成されることにより、下地間に結合力が仲介される。
【0043】
一実施形態において、粉末形態の溶融接着剤が使用される。粒径は、印刷面積、例えば結合ドットの所望のサイズ次第である。ドットパターンの場合、粒径は、0μm超~500μmで変化し得る。基本的に、溶融接着剤の粒径は、均一ではなく、一定の分布に従う。すなわち、常に粒径スペクトルが存在する。粒径は、所望の施与量、ドットサイズおよびドット分布に合わせてあると都合が良い。
【0044】
粉末形態の溶融接着剤は、散布施与により施与可能であり、これは殊に、全体的に通気性のテキスタイル複合材料を製造するための多孔性下地を接着する際に都合が良い。さらに、散布施与について有利であるのは、これがラージスケールでの適用にとって容易な施与方法であることである。例えば、ポリアミド、ポリエステルまたはポリウレタンからなる、熱活性化された粉末は、すでに低温で接着可能であるため、熱敏感性の下地、例えば高級なテキスタイルの穏やかな積層化に適している。活性化状態での良好な流れ特性のおかげで、低圧および短い押圧時間でも良好な結合が確立され、それでいて、織物内にしみ通るリスクは低いままである。
【0045】
溶融接着剤は、ペースト印刷法、ダブルドット法およびホットメルト法によっても、メルトブロー繊維不織布に施与することが可能である。本発明によると、ペースト印刷法が特に好ましい。というのも、これにより、手触りおよび伸縮性が特に良好に維持されるからである。
【0046】
メルトブロー繊維不織布をベース材料として使用することに基づき、本発明によるテキスタイル面状形成物の坪量を非常に低く調整することができる。DIN EN29073に準拠して測定して、10g/m~400g/m、好適には25g/m~200g/m、殊に30g/m~100g/mの範囲の坪量が、多くの用途に実用的であることが判明した。
【0047】
テキスタイル面状形成物は、厚さが、DIN EN ISO9073-2に準拠して、0.5mm~1.6mm、好適には0.5mm~0.9mmであることがさらに好ましい。
【0048】
テキスタイル面状形成物は、係数が、DIN53835に準拠して、25%の伸び率で測定して、20N未満、例えば1N~20N、好適には2N~10Nであることがさらに好ましい。テキスタイル面状形成物の係数が比較的低いことが有利である。というのも、面状形成物が、大きな力を入れることなく伸びることができ、それによりぴったりと体の輪郭に合うからである。
【0049】
その特殊な特性に基づき、本発明によるテキスタイル面状形成物は、テキスタイル産業において、固定可能な芯地、裏地および/または表地として適している。本発明によるメルトブロー繊維不織布と組み合わせるのに好ましい芯地は、天然もしくは合成ヤーンまたはそれらの組み合わせからの編まれた、または織られた伸縮性の織物より選択される。これらの素材は、高伸縮性のヤーンを有していてもよい。本発明によるメルトブロー繊維不織布と組み合わせるのに好ましい裏地は、動物由来の伸縮性本革または合成皮革より選択される。本発明によるメルトブロー繊維不織布と組み合わせるのに好ましい表地は、積層化された織物またはバラ状の膜より選択される。
【0050】
本発明は、以下の工程:
A) メルトブロー繊維不織布をベースとする基材材料を用意する工程、
B) フロック繊維を基材材料の片側に施与する工程、
C) 溶融接着剤をフロック繊維とは反対の基材材料側に施与する工程
を含む、本発明による熱固定可能なテキスタイル面状形成物を製造する方法にも関する。
【0051】
本発明による方法の利点は、メルトブロー繊維不織布が、未成形の状態、すなわち平らな状態でフロック加工可能であることである。これにより、最大限のフロック繊維密度を達成することができる。
【0052】
工程A)における基材材料を用意する工程は、不織布原料、好適にはポリウレタンをメルトブローすることにより行うことが可能である。好ましい実施形態において、基材材料は、補助基材、例えばスパンボンド不織布上に形成され、それにより、より高い安定性およびより容易なさらなる加工性がもたらされる。よって、基材材料を用意する工程は、補助基材上で基材材料を固定する工程を含むことが好ましい。
【0053】
続いて、本発明の一実施形態では、工程B)においてフロック繊維を基材材料の片側に施与する工程が行われる。フロック繊維を施与する工程は、接着剤を施与する上流工程を含むことが好ましい。
【0054】
本発明によると、静電気式のフロック加工が好ましい。ここで、フロック繊維は、電場において、接着剤がコーティングされた基材材料に施与される。補助基材が使用される場合、接着剤およびフロック繊維は、補助基材とは反対の基材材料側に施与される。接着剤を施与する工程は、スクリーン印刷、スプレーガンまたは浸漬浴により行うことが可能である。基材材料の表面は、好適には滑らかであっても、または非常に僅かにエンボス加工されていても、または溝入れ加工されていてもよい。電気力線(Feldlinie)により、フロック繊維は、所望の角度に、好適には垂直に配向して、均一なテキスタイル表面をもたらす。続いて、接着剤を硬化させ、フロック加工を定着させることができる。過剰および未結合のフロック繊維は、真空により除去されてもよい。
【0055】
同様に、フロック繊維を固定するためには、機械式のフロック加工も考えられる。そのために、接着剤が設けられた基材材料を、一連のローラ、好適には多角形のローラを介して送り、これらのローラによりこれらの基材材料を振動させる。この振動によりフロック繊維を接着剤に植え付けることができる。
【0056】
補助基材が使用されている場合には、フロック加工の後に補助基材を除去し、その後に、溶融接着剤をフロック繊維とは反対の基材材料側に施与することができる(方法工程C)。溶融接着剤は、ペースト印刷法、ダブルドット法、散布法およびホットメルト法により、メルトブロー繊維不織布に施与されてもよい。本発明によると、ペースト印刷法が特に好ましい。
【0057】
本発明の代替的な実施形態において、方法工程C)は、方法工程B)の前に実施される。
【0058】
よって、本発明は、以下の工程:
A′) メルトブロー繊維不織布をベースとする基材材料を用意する工程、
B′) 溶融接着剤を基材材料の片側に施与する工程、
C′) フロック繊維を溶融接着剤とは反対の基材材料側に施与する工程
を含む、本発明による熱固定可能なテキスタイル面状形成物を製造する方法にも関する。
【0059】
好ましい実施形態において、基材材料は、補助基材、例えばスパンボンド不織布上に形成される。補助基材が使用される場合、溶融接着剤は、補助基材とは反対の基材材料側に施与され、後者のものは、フロック繊維を施与する前に再び除去される。
【0060】
この方法変法でも、フロック繊維を施与する工程は、接着剤を施与する上流工程を含むことが好ましい。
【0061】
実施例
本発明による様々なテキスタイル面状形成物を製造した。そのために、熱可塑性ポリウレタンを含有するメルトブロー繊維不織布をベースとする基材材料を、75g/mの重量で用意した。この基材材料はメルトブロー技術により製造し、フロック繊維(PA6.6、長さ0.4mm、タイター0.9dtex)を基材材料の片側に施与した。ここで、フロック繊維を様々な接着剤により基材材料に固定した。接着剤としては、以下の表に挙げる接着剤を使用した。続いて、コポリアミドをベースとする溶融接着剤を、水性分散液の形態で、回転式スクリーン印刷法によりフロック繊維とは反対の基材材料側に施与した。
【0062】
以下の表には、得られたテキスタイル面状形成物の特性が示されている。
【0063】
【表1】
【0064】
表1の説明
1.接着剤
タイプ1:架橋剤なしの、水をベースとするアクリレート系
タイプ2:ブロックトイソシアネート架橋剤(140℃超の脱ブロック化温度を必要とする)ありの、水をベースとするアクリレート系
タイプ3.1:HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)トライマーイソシアネート架橋剤(120℃未満の脱ブロック化温度を必要とする)ありの、水をベースとするアクリレート系
タイプ3.2:架橋剤(120℃未満の脱ブロック化温度を必要とする)ありの、水をベースとするPU系
2.伸縮性
伸縮性をDIN EN ISO13934-1:2013に準拠して測定する。評価を以下の通り行う:
15N~20Nの引張力で25%の伸び率
** 10N~15Nの引張力で25%の伸び率
*** 10N未満の引張力で25%の伸び率
3.永久伸び率
永久伸び率をDIN53835に準拠して測定する。評価を以下の通り行う:
永久伸び率3%未満
** 永久伸び率3~4%
*** 永久伸び率5%
4.耐洗濯性
耐洗濯性をDIN EN ISO6330:2012に準拠して測定する。評価を以下の通り行う:
10回の洗濯後に、6~7重量%の重量損失
** 10回の洗濯後に、3~5重量%の重量損失
*** 10回の洗濯後に、3重量%未満の重量損失
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】フロック繊維コーティングを全面に有するテキスタイル面状形成物1を示す。
図2】パターンとして形成されたフロック繊維コーティングを有するテキスタイル面状形成物1を示す。
図3】パターンとして形成されたフロック繊維コーティングを有するテキスタイル面状形成物1の表面の写真を示す。
【0066】
図面の説明
図1は、フロック繊維コーティングを全面に有する本発明による熱固定可能なテキスタイル面状形成物1を示す。このテキスタイル面状形成物は、メルトブロー繊維不織布をベースとする基材材料2を含み、ここで、基材材料2は、片側に全面的に施与されたフロック繊維3を有し、フロック繊維3とは反対側に溶融接着剤4を有する。ここで、フロック繊維3は、接着剤5により基材材料2に固定されている。
【0067】
図2は、パターンとして形成されたフロック繊維コーティングを有する本発明による熱固定可能なテキスタイル面状形成物1を示す。このテキスタイル面状形成物は、メルトブロー繊維不織布をベースとする基材材料2を含み、ここで、基材材料2は、片側にパターンの形態で施与されたフロック繊維3を有し、フロック繊維3とは反対側に溶融接着剤4を有する。ここで、フロック繊維3は、接着剤5により基材材料2に固定されている。
【0068】
図3は、パターンとして形成されたフロック繊維コーティングを有するテキスタイル面状形成物1の表面の写真を示す。
図1
図2
図3